(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20221115BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
(21)【出願番号】P 2019552791
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2018041098
(87)【国際公開番号】W WO2019093296
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017215136
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉武 誠
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161779(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079502(WO,A1)
【文献】特開平11-236508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08L 83/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)成分:
(A)脂肪族不飽和結合を有する一価炭化水素基を一分子中に少なくとも一つ含有する化合物、
(B)珪素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも二つ含有する化合物、
(C)第一のヒドロシリル化触媒、及び
(D)白金、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムを含み、その活性を示す温度が、(C)成分の活性を示す温度よりも30℃以上高い温度である第二のヒドロシリル化触媒、
を含有し
、前記(C)成分は活性を示すが、前記(D)成分は活性を示さない温度に加熱し、次いで、(D)成分が活性を示す温度で加熱する、ステップ硬化するための組成物。
【請求項2】
上記(D)成分が、白金、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムのカルベン錯体またはβジケトナト錯体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記(A)成分または(B)成分の少なくとも1つが、オルガノポリシロキサンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が、下記平均組成式(1):
R
1
aR
2
bSiO
(4-a―b)/2 (1)
(式中、R
1は炭素数2~12のアルケニル基であり、R
2は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、水酸基およびアルコキシ基から選択される基であり、aおよびbは次の条件:1≦a+b≦3及び0.001≦a/(a+b)≦0.33を満たす数である)
で表されるオルガノポリシロキサンであり、前記(B)成分が、下記平均組成式(2):
H
cR
3
dSiO
(4-c-d)/2 (2)
(式中、R
3は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基およびアルコキシ基から選択される基であり、cおよびdは次の条件:1≦c+d≦3及び0.01≦c/(c+d)≦0.33を満たす数である)
で表されるオルガノポリシロキサンである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、下記平均単位式(3):
(HR
4
2SiO
1/2)
e(R
4
3SiO
1/2)
f(HR
4SiO
2/2)
g(R
4
2SiO
2/2)
h(HSiO
3/2)
i(R
4SiO
3/2)
j(SiO
4/2)
k(R
5O
1/2)
l (3)
(式中、R
4は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基およびアルコキシ基から選択される基であり、R
5は水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、e,f、g、h、i、j、kおよびlは次の条件:e+f+g+h+i+j+k=1、0≦l≦0.1、0.01≦e+g+i≦0.2、0.01≦e≦0.6、0.01≦g≦0.6、0≦i≦0.4、0.01≦e+f≦0.8、0.01≦g+h≦0.8、0≦i+j≦0.6を満たす数である)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記(C)成分と前記(D)成分中の白金金属量のモル比((C)/(D))が0.01~0.8である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
下記工程
(i)請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の組成物を、前記(C)成分は活性を示すが前記(D)成分は活性を示さない温度で加熱し、第一のヒドロシリル化反応のみを行い半硬化物を得る工程、および
(ii)得られた半硬化物を前記(D)成分が活性を示す温度で加熱し、第二のヒドロシリル化反応を行って硬化物を得る工程
を含有する、硬化物を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応によって硬化し得る組成物、ヒドロシリル化反応によって硬化される硬化物の製造方法、及び前記方法によって得られた硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応は、ヒドロシリル基(―SiH)と脂肪族不飽和基との間の付加反応であり、有機ケイ素化合物合成の重要な手段として広く使用されている。特にオルガノポリシロキサンを用いる反応においては、オルガノポリシロキサンを架橋させてシリコーン材料を作成する際の重要な反応として用いられている。反応は光や熱でもおこるが、通常は過酸化物などのラジカル反応開始剤や、ヘキサクロロ白金(IV)酸などの遷移金属錯体触媒が用いられている。
【0003】
シリコーン材料は耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性などの優れた性能を有することから、種々の用途に用いられている。シリコーン材料の用途の一つである感圧接着剤は、日用品や医療用品、さらには電子製品の接着などに広く用いられている。シリコーン感圧接着剤には、不飽和基を有するオルガノポリシロキサンをオルガノハイドロジェンポリシロキサンで架橋したオルガノポリシロキサン硬化物が使用されるが(特許文献1)、接着性が高く、十分な強度を有するシリコーン感圧接着剤を得るためには、十分に重合度の高いオルガノポリシロキサン硬化物を使用する必要がある。しかし、従来のオルガノポリシロキサン硬化物の作成方法では、硬化物の重合度が低いか、架橋が十分ではないなどの場合があり、得られたシリコーン感圧接着剤の接着性や機械強度に劣るものであった。
【0004】
一般に、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いてヒドロシリル化反応による硬化を行う際には、使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造によって、硬化物の分子量や架橋密度に大きな相違が生じる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、珪素原子に結合した水素原子を含有し、MH単位(-OSiR2H)またはDH単位(―OSiRH-)と呼ばれる部分構造を有している。MH単位は主にオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖末端に存在し、MH単位が反応することにより分子鎖の延長が行われる。一方でDH単位はオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖中に存在し、DH単位が反応することにより架橋反応が行われる。しかし、現在の技術ではMH単位とDH単位の反応を分離して行うことは困難であり、MH単位/DH単位の反応制御による分子設計は行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の目的は、密着性が高く、十分な機械的強度を有するオルガノポリシロキサン硬化物を得ることができる、ヒドロシリル化反応性組成物及びこれを用いた硬化物の製造方法を提供することにあり、特にオルガノハイドロジェンポリシロキサンのMH単位/DH単位の反応制御によって分子設計を行うことができる、ヒドロシリル化反応性組成物及びこれを用いた硬化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の組成物は、下記(A)~(D)成分:(A)脂肪族不飽和結合を有する一価炭化水素基を一分子中に少なくとも一つ含有する化合物;(B)珪素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも二つ含有する化合物;(C)第一のヒドロシリル化触媒及び(D)白金、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムを含み、その活性を示す温度が、(C)成分の活性を示す温度よりも30℃以上高い温度である第二のヒドロシリル化触媒、を含有する組成物である。
【0008】
上記(D)成分は、好ましくは、白金、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムのカルベン錯体またはβジケトナト錯体である。また、上記(A)成分または(B)成分の少なくとも1つが、オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0009】
前記(A)成分は、下記平均組成式(1):
R1
aR2
bSiO(4-a―b)/2 (1)
(式中、R1は炭素数2~12のアルケニル基であり、R2は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、水酸基およびアルコキシ基から選択される基であり、aおよびbは次の条件:1≦a+b≦3及び0.001≦a/(a+b)≦0.33を満たす数である)で表されるオルガノポリシロキサンであり、
前記(B)成分は、下記平均組成式(2):
HcR3
dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基およびアルコキシ基から選択される基であり、cおよびdは次の条件:1≦c+d≦3及び0.01≦c/(c+d)≦0.33を満たす数である)
で表されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0010】
さらに前記(B)成分は、下記平均単位式(3):
(HR4
2SiO1/2)e(R4
3SiO1/2)f(HR4SiO2/2)g(R4
2SiO2/2)h(HSiO3/2)i(R4SiO3/2)j(SiO4/2)k(R5O1/2)l (3)
(式中、R4は脂肪族不飽和基を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基およびアルコキシ基から選択される基であり、R5は水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、e,f、g、h、i、j、kおよびlは次の条件:e+f+g+h+i+j+k=1、0≦l≦0.1、0.01≦e+g+i≦0.2、0.01≦e≦0.6、0.01≦g≦0.6、0≦i≦0.4、0.01≦e+f≦0.8、0.01≦g+h≦0.8、0≦i+j≦0.6を満たす数である)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
【0011】
前記(C)成分と前記(D)成分のモル比((C)/(D))は0.01~0.8であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の組成物は、前記(C)成分は活性を示すが、前期(D)成分は活性を示さない温度に加熱し、次いで、(D)成分が活性を示す温度で加熱するステップ硬化するための組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明の硬化物を形成する方法は、下記工程(i)および(ii):
(i)前記組成物を前記(C)成分は活性を示すが前記(D)成分は活性を示さない温度で加熱し、第一のヒドロシリル化反応のみを行い半硬化物を得る工程;および(ii)得られた半硬化物を前記(D)成分が活性を示す温度で加熱し、第二のヒドロシリル化反応を行って硬化物を得る工程;を含有する。
【0014】
さらに本発明の半硬化物は、前記組成物を前記(C)成分は活性を示すが前記(D)成分は活性を示さない温度で加熱し、第一のヒドロシリル化反応のみを行うことにより得られる。また本発明の硬化物は、前記工程(i)および(ii)を含有する方法によって得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物は、密着性が高く、十分な機械的強度を有するオルガノポリシロキサン硬化物を得ることができる。また、本発明の方法によれば、MH単位(たとえば、(CH3)2HSiO1/2単位)を先に反応させて分子鎖を延長した後にDH単位(たとえば(CH3)HSiO2/2単位)を反応させることにより、有機溶剤なしで安定的な半硬化状態をつくりだすことができるため、材料の成形性に優れ、また十分に分子量を増大させた後に架橋による硬化反応を行うことができるため、得られる材料(硬化物)の物性を改良することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(組成物)
本発明の組成物は、下記(A)~(D)成分を含有する。以下順に述べる。
(A)成分
本発明の組成物は、脂肪族不飽和結合を有する一価炭化水素基を一分子中に少なくとも一つ含有する化合物((A)成分)を含有する。(A)成分は、ヒドロシリル化反応の際に、ヒドロシリル基(―SiH)が付加する脂肪族不飽和基を含有する化合物である。(A)成分の例としては、アルケニル基を有する直鎖または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、アルケニル基を含有するポリエーテル、アルケニル基を含有するポリオレフィンおよびアルケニル基を含有するポリエステルが挙げられる。これらのうちでも、下記平均組成式(1)を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0017】
R1
aR2
bSiO(4-a―b)/2 (1)
【0018】
平均組成式(1)中、R1は炭素数2~12のアルケニル基である。具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が挙げられ、これらのうちでもビニル基、アリル基またはヘキセニル基が好ましい。R2は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、水酸基およびアルコキシ基から選択される基である。炭素数1~12の一価炭化水素基は、その水素原子の一部がハロゲン原子または水酸基で置換されていてもよい。炭素数1~12の一価炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基などのアラルキル基、およびこれらのアリール基またはアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
【0019】
aおよびbは次の条件:1≦a+b≦3及び0.001≦a/(a+b)≦0.33を満たす数である。これは、a+bが1以上であると、硬化物の柔軟性が高くなるからであり、3以下であると、硬化物の機械強度が高くなるからである。また、a/(a+b)が0.001以上であると硬化物の機械強度が高くなるからであり、0.33以下であると硬化物の柔軟性が高くなるからである。
【0020】
このようなオルガノポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、分岐鎖状または環状が例示される。オルガノポリシロキサンは、このような分子構造を有する一種または二種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0021】
このような(A)成分としては、一般式:R6
3SiO(R6
2SiO)m1SiR6
3
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサンおよび/または平均単位式:
(R7SiO3/2)o(R7
2SiO2/2)p(R7
3SiO1/2)q(SiO4/2)r(XO1/2)s
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンが好ましい。式中、各R6およびR7は独立に、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。ただし、一分子中、R6の少なくとも2個、またはR7の少なくとも2個はアルケニル基である。このアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。また、式中、m1は5~1,000の範囲内の整数である。また、式中、oは正数であり、pは0又は正数であり、qは0又は正数であり、rは0又は正数であり、sは0又は正数であり、かつ、p/oは0~10の範囲内の数であり、q/oは0~5の範囲内の数であり、r/(o+p+q+r)は0~0.3の範囲内の数であり、s/(o+p+q+r)は0~0.4の範囲内の数である。
【0022】
(B)成分
本発明の組成物は、珪素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも二つ含有する化合物((B)成分)を含有する。(B)成分は、ヒドロシリル化反応の際に、前記(A)成分中の脂肪族不飽和炭化水素基に付加するヒドロシリル基(―SiH)を含有する化合物である。(B)成分としては、下記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0023】
HcR3
dSiO(4-c-d)/2 (2)
【0024】
平均組成式(2)中、R3は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基およびアルコキシ基から選択される基である。炭素数1~12の炭化水素基は、その水素原子の一部がハロゲン原子または水酸基で置換されていてもよい。炭素数1~12の一価炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基などのアラルキル基、およびこれらのアリール基またはアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンタノキシ基、ヘキサノキシ基、オクタノキシ基などが挙げられる。
【0025】
cおよびdは次の条件:1≦c+d≦3及び0.01≦c/(c+d)≦0.33を満たす数であり、好ましくは、次の条件:1.5≦c+d≦2.5及び0.05≦c/(c+d)≦0.2を満たす数である。これは、c+dが1以上であると、硬化物の柔軟性が高くなるからであり、3以下であると、硬化物の機械強度が高くなるからである。また、c/(c+d)が1.5以上であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、0.33以下であると、硬化物の柔軟性が高くなるからである。
【0026】
前記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンの粘度は限定されないが、25℃における粘度が1~10,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、1~1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0027】
このような前記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1-(3-グリシドキシプロピル)-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジ(3-グリシドキシプロピル)-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-(3-グリシドキシプロピル)-5-トリメトキシシリルエチル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシランの加水分解縮合物、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
【0028】
前記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンとして、さらに次のようなオルガノポリシロキサンも例示される。なお、式中、Me、Phは、それぞれ、メチル基、フェニル基を示し、m2は1~100の整数であり、n2は1~50の整数であり、b2、c2、d2、e2はそれぞれ正の数であり、ただし、一分子中のb2、c2、d2、e2の合計は1である。
HMe2SiO(Ph2SiO)m2SiMe2H
HMePhSiO(Ph2SiO)m2SiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m2(MePhSiO)n2SiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m2(Me2SiO)n2SiMePhH
(HMe2SiO1/2)b2(PhSiO3/2)c2
(HMePhSiO1/2)b2(PhSiO3/2)c2
(HMePhSiO1/2)b2(HMe2SiO1/2)c2(PhSiO3/2)d2
(HMe2SiO1/2)b2(Ph2SiO2/2)c2(PhSiO3/2)d2
(HMePhSiO1/2)b2(Ph2SiO2/2)c2(PhSiO3/2)d2
(HMePhSiO1/2)b2(HMe2SiO1/2)c2(Ph2SiO2/2)d2(PhSiO3/2)e2
【0029】
前記(B)成分は、さらに下記平均単位式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
【0030】
(HR4
2SiO1/2)e(R4
3SiO1/2)f(HR4SiO2/2)g(R4
2SiO2/2)h(HSiO3/2)i(R4SiO3/2)j(SiO4/2)k(R5O1/2)l (3)
【0031】
平均単位式(3)中、R4は炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基およびアルコキシ基から選択される基である(ただし炭化水素基はアルケニル基及びアルケニル基を有する基を含まない)。炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基およびアルコキシ基については、前記と同様である。R5は水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが例示される。e,f、g、h、i、j、kおよびlは次の条件:e+f+g+h+i+j+k=1、0≦l≦0.1、0.01≦e+g+i≦0.2、0.01≦e≦0.6、0.01≦g≦0.6、0≦i≦0.4、0.01≦e+f≦0.8、0.01≦g+h≦0.8、0≦i+j≦0.6を満たす数である。
【0032】
なお、前記の「HR4
2SiO1/2」、「R4
3SiO1/2」、「HR4SiO2/2」、「R42SiO2/2」、「HSiO3/2」、「R4SiO3/2」および「SiO4/2」の各構成単位は、それぞれMH単位,M単位、DH単位、D単位、TH単位、T単位、Q単位と呼ばれるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの部分構造の単位であり、「R5O1/2」は、D単位、DH単位、T単位、TH単位、またはQ単位中の酸素原子と結合する基であり、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水酸基(Si―OH)あるいはオルガノポリシロキサン製造中に未反応で残った珪素原子結合アルコキシ基を意味する。MH単位は主にオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖末端に存在し、DH単位はオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖中に存在する。
【0033】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~5モルの範囲内となる量であり、好ましくは、0.5~2モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物の柔軟性が高くなるからである。
【0034】
(C)成分
本発明の組成物は、比較的低い温度においても組成物中で活性を示す、第一のヒドロシリル化触媒((C)成分)を含有する。(C)成分は本組成物を半硬化するためのヒドロシリル化反応用触媒である。なお、「半硬化」とは、室温で流動性を有する増粘体または室温では非流動性だが100℃では流動性を示す熱可塑体を意味する。ここで増粘体とは、25℃での粘度が組成物の初期粘度の1.5倍~100倍の間であることを意味する。また、熱可塑体とは、100℃での粘度が1,000,000mPa・s以下であることを意味する。なお、(C)成分は、後述する(D)成分に対して、30℃以上低い温度で活性を示すヒドロシリル化反応触媒であり、好適には、(D)成分である白金、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムのカルベン錯体またはβジケトナト錯体以外の白金系ヒドロシリル化触媒から選ばれることが好ましい。
【0035】
第一のヒドロシリル化触媒の例としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、イリジウム系触媒、ルテニウム系触媒、および鉄系触媒が挙げられ、好ましくは、白金系触媒であって、後述する(D)成分に該当しないものである。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系化合物が例示され、特に白金のアルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0036】
(C)成分の触媒は、触媒の量、種類及び組成物の種類によっても異なるが、通常、室温以上、または25℃以上、あるいは30℃以上で、かつ120℃以下、または100℃以下、あるいは80℃以下、場合によっては60℃以下において組成物中で活性を示し、ヒドロシリル化反応を促進する。(C)成分の含有量は、触媒の種類及び組成物の種類によって異なるが、通常は本組成物に対して、この触媒中の金属原子が重量単位で0.01~50ppmの範囲内となる量であり、好ましくは0.1~30ppmの範囲内となる量である。一例として、(C)成分の含有量は、(B)成分が平均組成式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合には、該オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のMH単位を十分にヒドロシリル化できる量である。
【0037】
(D)成分
本発明の組成物は、白金、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムを含み、その活性を示す温度が、(C)成分の活性を示す温度よりも30℃以上高い温度である第二のヒドロシリル化触媒((D)成分)を含有する。(D)成分の一例は、白金、ロジウム、ルテニウム、またはイリジウムのカルベン錯体またはβジケトナト錯体であり、白金系金属と錯化剤が強い相互作用を有することにより、(C)成分よりも、30℃以上高い温度でヒドロシリル化反応触媒活性を示す。これにより、温度差により、2段階で反応を進行させることができる。
【0038】
このような(D)成分のβジケトナト錯体としては、アセチルアセトナト(Hacac)、3-メチルアセチルアセトナト(Hmaa)、プロピオニルアセトナト(Hpra)、ベンゾイルアセトナト(Hbza)、トリフルオロアセチルアセトナト(Htfa)などを用いるが、特にアセチルアセトナト(Hacac)が錯化剤として好ましい。また、(D)成分のカルベン錯体としては、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフエニル)イミダゾールー2-イリデンおよび1,3-ビス(シクロヘキシル)イミダゾールー2-イリデンが錯化剤として好ましい。
【0039】
代表的には、(D)成分は、白金カルベン錯体触媒または白金βジケトナト錯体であり、たとえば、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)錯体、ビス(プロピオニルアセトナト)白金(II)錯体、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフエニル)イミダゾールー2-イリデン][1,3-ジビニルー1,1,3,3-テトラメチルジリルオキサン[白金(0)]錯体、[1,3-ビス(シクロヘキシル)イミダゾールー2-イリデン][1,3-ジビニルー1,1,3,3-テトラメチルジリルオキサン[白金(0)]錯体などが例示される。
【0040】
(D)成分は、(C)成分よりも30℃以上、好ましくは50℃以上高い温度で触媒活性を示す。このため、触媒活性を示す温度は、触媒の種類によって異なるが、通常80℃以上、好ましくは100℃、さらに好ましくは120℃以上である。
【0041】
(D)成分の含有量は、(C)成分によって半硬化された組成物をさらに硬化するのに必要な量である。一例として、(D)成分の含有量は、(B)成分が一般式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合には、該オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のDH単位を十分にヒドロシリル化できる量である。
【0042】
(C)成分と(D)成分中の白金金属量のモル比((C)/(D))は、通常0.01~100、好ましくは0.01~10、さらに好ましくは0.01~0.8である。両成分中の白金金属量のモル比が前記上限以下であると、高温下での硬化反応の加速ができるからであり、モル比が前記下限以上であると、短時間での低温での硬化反応を行えるからである。
【0043】
本組成物は、ヒドロシリル化反応抑制剤を含まないことが好ましい。通常、組成物のポットライフを向上し安定した組成物を得るために、ヒドロシリル化反応抑制剤が組成物中に添加される。しかし本発明者は、ヒドロシリル化反応抑制剤を添加せずに、温度によって触媒活性の異なる2種以上の触媒を極少量用いることで、MH単位の反応とDH単位の反応を分離し、MH単位の反応を選択的に行わせることによって半硬化樹脂を得ることができ、またMH単位/DH単位の反応制御による分子設計を行うことができることを見出した。
【0044】
(E)成分
本組成物は、必要に応じて、他のオルガノポリシロキサン、接着性付与剤、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填材;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;蛍光体、耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。無機質充填材は、組成物の増量あるいは物理的強度の補強、または導電性、熱伝導性などの機能を加えるために添加される。
【0045】
(硬化物を形成する方法)
本発明の別の形態は、ヒドロシリル化反応による硬化物を形成する方法であって、以下の工程を有する。
(i)前記組成物を(C)成分は活性を示すが(D)成分は活性を示さない温度で加熱し、第一のヒドロシリル化反応を行い半硬化物を得る工程、および
(ii)得られた半硬化物を(D)成分が活性を示す温度で加熱し、第二のヒドロシリル化反応を行ってシリコーン硬化物を得る工程。
【0046】
(工程(i))
工程(i)は、前記組成物を(C)成分は活性を示すが(D)成分は活性を示さない温度で加熱し、第一のヒドロシリル化反応のみを行い半硬化物を得る工程である。この温度では、第二のヒドロシリル化反応は起こらない。第一のヒドロシリル化は加熱せず室温でも進行するが、半硬化のスピードを速めたい場合には、加熱温度は、25℃以上、または30℃以上、場合によっては50℃以上に加熱することができる。また加熱温度は120℃以下、または100℃以下、場合によっては80℃以下である。
【0047】
工程(i)により、組成物は半硬化状態となる。本発明では半硬化とは、室温では流動性を有する増粘体、または室温では非流動性だが100℃では流動性を示す熱可塑体を意味する。ここで増粘体とは、25℃での粘度が組成物の初期粘度の1.5倍から100倍の間であることを意味する。また、熱可塑体(反応性ホットメルト)とは、室温(25℃)では流動性を失ったような状態であるが、高温(例えば、120℃以上)に加熱すると再び溶融し、次いで硬化するものをいい、100℃での粘度が1,000,000mPa・s以下である。また、工程(i)によってB-ステージ化化合物を得ることもできる。ここでB-ステージとは、JIS K 6800に定義されているB-ステージ(熱硬化性樹脂の硬化中間体)の状態をいい、架橋性シリコーン組成物を不完全に硬化させることにより、溶剤により膨潤するものの、完全に溶解することがない状態をいう(以下、本明細書において、単に「B-ステージ」という)。組成物として、MH単位およびDH単位を含むオルガノポリシロキサンを含有する組成物を用いる場合には、工程(i)によって、MH単位のヒドロシリル化反応が優先的に進行し、分子鎖の延長が起こり、オルガノポリシロキサンの分子量が十分に高くなるために、組成物の流動性がなくなり、半硬化状態になると考えられる。
【0048】
(工程(ii))
工程(ii)は、前記半硬化状態の組成物を、(D)成分が活性を示す温度に加熱し、第二のヒドロシリル化反応を行い硬化物を得る工程である。好ましくは、工程(ii)の加熱温度は、工程(i)の温度よりも20℃以上高い温度であり、または、工程(ii)の加熱温度は、工程(i)の温度よりも30℃以上高い温度であり、さらに好ましくは、工程(ii)の加熱温度は、工程(i)の温度よりも50℃以上高い温度である。
【0049】
また、場合によっては、加熱温度は80℃以上、または100℃以上、または120℃以上である。同時に、場合によっては加熱温度は、200℃以下、または180℃以下、または160℃以下である。
【0050】
工程(ii)により、半硬化状態であった組成物は硬化物となり、種々の材料として用いることができる。組成物としてMH単位およびDH単位を含むオルガノポリシロキサンを含有する組成物を用いる場合には、工程(i)によって十分に分子鎖が延長されたオルガノポリシロキサンが第二のヒドロシリル化反応によって架橋されることとなり、架橋密度の高い硬化物を得ることができる。
【0051】
本発明の方法によって形成された硬化物は優れた物性を示し、特に密着性及び機械的強度に優れる。また、本発明の方法は安定な半硬化状態を経て、硬化物を得るため、様々な用途に用いることが可能である。例えば、フィルム基材、テープ状基材、またはシート状基材に本組成物を塗工した後、前記工程(i)と工程(ii)を経て、硬化を進行させることができる。また、本組成物を二つの基材の間に配置し、工程(i)と工程(ii)を連続して行い硬化して、両基材を強固に接着する場合と、前記基材の少なくとも一つの表面に本組成物を平滑に塗布し、工程(i)により半硬化させて、非流動化させた後、両基材を貼り合わせ、工程(ii)で更に硬化を進めて強固に接着する場合とがある。この硬化物の膜厚は限定されないが、好ましくは、1~100,000μmであり、より好ましくは50~30,000μmである。
【0052】
本発明の方法によって形成された硬化物は、感圧接着剤、接着剤プライマーなどの用途に用いることができる。
【実施例】
【0053】
下記成分を含有する組成物より硬化物を得た。なお、各平均組成式中、MeおよびViはそれぞれ、メチル基およびビニル基を表す。また、硬化物の硬さは、JIS K 6253-1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプAデュロメータ(以下、「ショア硬さ(ショアA)」と表記)またはJIS K 2220[1/4コーン(直読)]に準じた方法により硬化物の針入度を測定した。
【0054】
[実施例1]
平均単位式:(Me2ViSiO1/2)0.1(Me3SiO1/2)0.4(SiO4/2)0.5で示されるビニル末端分岐鎖ポリシロキサン(A-1)を58.5重量部、平均単位式:(Me3SiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56で示される分岐鎖ポリシロキサン(E-1)を14.0重量部、平均式:ViMe2SiO(SiMe2O)160SiMe2Viで示されるビニル末端直鎖ポリシロキサン(A-2)を1.8重量部、平均式:HMe2SiO(SiMe2O)400SiMe2Hで示される直鎖ポリシロキサン(B-1)を26.1重量部、平均式:Me3SiO(SiMe2O)30(SiMeHO)30SiMe3の直鎖ポリシロキサン(B-2)を4.7重量部、白金原子として0.2ppmの白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(C-1)、および白金原子として5ppmの、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)錯体(D-1)を含有する組成物が調製された。組成物の粘度は、3,500mPa・sであった。組成物を、90℃で30分加熱し、25℃では流動性がないが100℃では流動性のあるB-ステージ固形物を得た。得られたB-ステージ固形物は25℃で2ヶ月間保管されても、B-ステージ状態を保つものであった。B-ステージ固形物は150℃で10分以内の加熱によって、ショア硬さ(ショアA)80のシリコンエラストマーを得た。
【0055】
[実施例2]
前記A-1を33.8重量部、前記E-1を30.0重量部、前記A-2を21.8重量部、前記B-1を16.5重量部、前記B-2を3.0重量部、白金原子として0.1ppmの前記C-1および白金原子として2ppmの[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフエニル)イミダゾールー2-イリデン][1,3-ジビニルー1,1,3,3-テトラメチルジリルオキサン[白金(0)](D-2)を含有する組成物が調製された。組成物の粘度は、2,800mPa・sであった。組成物を、90℃で30分加熱し、25℃では流動性がないが100℃では流動性のあるB-ステージ固形物を得た。得られたB-ステージ固形物は25℃で2ヶ月間保管されても、B-ステージ状態を保つものであった。B-ステージ固形物は150℃で10分以内の加熱によって、ショア硬さ(ショアA)35のシリコンエラストマーを得た。
【0056】
[実施例3]
平均組成式:ViMe2SiO(SiMePhO)36SiMe2Viで示される
ビニル末端直鎖ポリシロキサン(A-3)を94.3重量%、平均組成式:(ViMe2SiO1/2)0.22(MeXSiO2/2)0.12(PhSiO3/2)0.66(式中、Xはグリシドキシプロピル基を表す)で示されるビニル基含有ポリシロキサン(A-4)を1.0重量%、分子式:Ph2Si(OSiMe2H)2で示される直鎖状ポリシロキサン(B-3)を3.9重量%、平均組成式:(HMeSiO2/2)4で示される環状ポリシロキサン(B-4)を0.8重量%、白金原子として0.2ppmの前記C-1、および白金原子として5ppmの前記D-1を含有する組成物が調整された。組成物の粘度は、6,000mPa・sであった。組成物を、80℃で30分加熱し、粘度が約12,000mPa・sの増粘体が得られた。得られた増粘体は、25℃で1ヶ月間保管された後に粘度が約18,000Pa・s増粘体で流動性を有していたが、150℃で10分以内の加熱によって、針入度が30のゲル硬化物を得た。
【0057】
[比較例1]
前記A-1を58.5重量部、前記E-1を14.0重量部、前記A-2を1.8重量部、前記B-1を26.1重量部、前記B-2を4.7重量部および白金原子として2ppmの前記C-1を含有する組成物が調製された。組成物の粘度は、3,500mPa・sであった。組成物を、90℃で30分加熱し、ショア硬さ(ショアA)80の硬化物を得た。また、より軟らかい硬化物を得るために、上記組成物を50℃で30分加熱したところ、ショア硬さ40の硬化物を得た。しかし得られた硬化物は、やわらかいものの100℃に加熱しても流動性を示さず、B-ステージ状態ではなかった。この硬化物は時間とともに徐々に硬さを増し、25℃で2週間後にはショア硬さ75(ショアA)となった。
【0058】
[比較例2]
前記A-1を33.8重量部、前記E-1を30.0重量部、前記A-2を21.8重量部、前記B-1を16.5重量部、前記B-2を3.0重量部、白金原子として2ppmの前記D-2を含有する組成物が調製された。組成物の粘度は、2,800mPa・sであった。組成物を、90℃で30分加熱したが、組成物に何も変化が見られなかった。組成物を120℃で30分加熱し、B-ステージ状態ではない、ショア硬さ(ショアA)30の硬化物を得た。
【0059】
[比較例3]
前記A-3を94.3重量%、前記A-4を1.0重量%、前記B-3を3.9重量%、前記B-4を0.8重量%、白金原子として2ppmの前記C-1を含有する組成物が調整された。組成物の粘度は、6,000mPa・sであった。組成物は調製後直ちに増粘し、30分後には非流動性となり、増粘体またはBステージ固形物は得られず、1日後には針入度が30のゲル硬化物を得た。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の組成物は、密着性が高く、十分な機械的強度を有するオルガノポリシロキサン硬化物を得ることができるので、画像表示装置の層間の接着剤や粘着剤として好適である。
【0061】
本組成物は、各種のポッティング剤、封止剤、接着剤・粘着剤として有用であり、好ましくは光学粘着剤・接着剤として有用であり、特に、半硬化/増粘体(B-stage材料含む)を経由して硬化させることで、配置時における組成物と最終的な硬化物の間での硬化収縮に伴う体積変化を抑制し、部材間の空隙や接着不良の問題を抑制できる利点がある。特に、本組成物は、ディスプレイ用光学粘着剤・接着剤として有用である。その硬化物は高温又は高温・高湿下で着色が少なく、濁りを生じにくいことから、ディスプレイの画像表示部と保護部との間の中間層を形成する材料として好適である。
【0062】
本組成物は、硬化性に優れ、高温高湿に曝されても、ポットライフを保ちながらも反応の際にはシャープな硬化特性を有し、かつ、透明性を維持し、濁りや着色を生じ難い硬化物を形成するので、光学ディスプレイ等の表示装置(タッチパネルを含む)や光半導体装置(Micro LEDを含む)に使用する接着剤や粘着剤として有用である。さらに、さらに、本組成物およびその半硬化物/増粘体(B-stage材料含む)は、光学ディスプレイ等に限らず、透明部材の貼り合わせ又は充填に制限なく利用することができ、たとえば、太陽電池セル、複層ガラス(スマートガラス)、光導波路、プロジェクターレンズ(複層型レンズ、偏光/光学フィルムの貼り合わせ)などの接着層に使用することができる。
【0063】
本発明にかかる組成物は、液状だけでなく、半硬化状態から最終的な硬化物を形成する際の硬化収縮が小さいため、ディスプレイや光学部材の欠陥、写りムラ等の表示不良を抑制できるという、シリコーン硬化物の一般的な長所を有することに加えて、硬化収縮に伴う問題を抑制でき、必要に応じて柔軟な性質を備え、接着部材への追従性が高い接着力を発現することから、部材間の剥離を有効に抑制し、平面表示面又は湾曲した表示面を有する車載ディスプレイ、上記のプロジェクターレンズを利用したヘッドアップディスプレイなどの光学接着層に好適に使用することができる。