IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社堀場製作所の特許一覧

特許7177088粒子形状分析方法、顕微鏡および顕微鏡システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】粒子形状分析方法、顕微鏡および顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20221115BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/28 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019562163
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048134
(87)【国際公開番号】W WO2019131875
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2017254584
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 久
(72)【発明者】
【氏名】舘野 宏志
(72)【発明者】
【氏名】樋口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】森 哲也
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175276(JP,A)
【文献】特開2008-192617(JP,A)
【文献】特開昭63-190238(JP,A)
【文献】特開平11-096956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の寸法よりも山谷の高さの差が小さい凹凸を有する試料台を選択し、
前記試料台の前記凹凸がある面に粒子状の前記試料を配置し、
前記試料台を発光素子に載置し、
照射源から前記試料台を介して前記発光素子に荷電粒子を照射し、
照射された荷電粒子により前記発光素子から放射された光が、前記照射源と前記試料台との間に配置されており前記試料台と対向する反射面を有する反射鏡により反射した反射光を受光し、
前記照射源から照射する荷電粒子により前記試料台を走査し、
前記荷電粒子が前記試料台を照射した位置と、受光した光とを関連付けて画像を形成し、
形成した画像に基づいて前記試料の形状を分析する
粒子形状分析方法。
【請求項2】
前記試料台は、板状の試料保持部と、該試料保持部の一面の周縁部に配置されたスペーサとを有し、
前記発光素子は前記試料台とは別体である
請求項1の粒子形状分析方法。
【請求項3】
荷電粒子を照射する照射源と、
発光素子と、
試料の寸法よりも山谷の高さの差が小さい凹凸がある面を有し、前記発光素子に載置される試料台と、
前記照射源と前記試料台との間に配置されており、前記試料台と対向する反射面を有する反射鏡と、
前記発光素子から放射されて前記反射鏡が反射した光を受光する受光部と、
前記荷電粒子が前記試料台に照射する位置を走査させる走査部と、
前記走査部の走査により前記荷電粒子が前記試料台に照射した位置と、前記受光部が受光した光とを関連付けて画像を形成するための情報を、前記試料台の前記凹凸がある面に配置された粒子状の前記試料の形状を分析する粒子形状分析部に出力する出力部と
を備える顕微鏡。
【請求項4】
前記試料台は、板状をなす試料保持部と、前記試料保持部の一面の周縁部に配置されているスペーサとを有する
請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記試料保持部は、前記荷電粒子と、前記発光素子により放射される光とが透過可能であ
請求項4に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記発光素子が放射する光の一部を選択する光選択部を有し、
前記出力部は、前記走査部の走査により、前記荷電粒子が前記試料台に照射した位置と、前記光選択部が選択した光とを関連付けて画像を形成するための情報を出力する
請求項3から請求項5のいずれか一つに記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記荷電粒子が前記試料台または前記試料台に配置された試料に当たることにより発生して前記反射鏡に入射する反射電子の量を測定する反射電子測定部と、
前記走査部の走査により、前記荷電粒子が前記試料台に照射した位置と、前記反射電子測定部が測定した反射電子の量とを関連付けて画像を形成するための情報を出力する第2出力部とを備える、
請求項から請求項のいずれか一つに記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記荷電粒子が前記試料台または前記試料台に配置された試料に当たることにより発生する二次電子を光に変換して検出する二次電子検出器と、
前記走査部の走査により、前記荷電粒子が前記試料台に照射した位置と、前記二次電子検出器が検出した二次電子の量とを関連付けて画像を形成するための情報を出力する第3出力部とを備える、
請求項から請求項のいずれか一つに記載の顕微鏡。
【請求項9】
請求項から請求項のいずれか一つに記載の顕微鏡と、
前記出力部から取得した情報に基づいて画像を形成する画像形成部と、前記粒子形状分析部と、前記画像形成部が形成した画像または前記粒子形状分析部が分析した形状を出力する粒子形状出力部とを有する情報処理装置と、
前記粒子形状出力部から取得した画像または形状を表示する表示装置とを備える
顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子形状分析方法、顕微鏡および顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走査透過型電子顕微鏡が、さまざまな試料の観察に使用されている。走査透過型電子顕微鏡を用いて取得した透過像を用いる粒子計測手法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-62636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走査透過型電子顕微鏡を用いて微細な粒子状試料を観察する場合には、電子線が試料を透過してしまうため、透過像のコントラストが低くなる場合がある。コントラストの低い画像においては試料の外形形状の境界が不明確であるため、微細な粒子状試料の粒子計測を行なうことは難しい。
【0005】
一つの側面では、微細な粒子状の試料の形状を分析することが可能な、粒子形状分析方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる粒子形状分析方法は、試料の寸法よりも山谷の高さの差が小さい凹凸を有する試料台を選択し、前記試料台の前記凹凸がある面に粒子状の前記試料を配置し、前記試料台を発光素子に載置し、照射源から前記試料台を介して前記発光素子に荷電粒子を照射し、照射された荷電粒子により前記発光素子から放射された光が、前記照射源と前記試料台との間に配置されており前記試料台と対向する反射面を有する反射鏡により反射した反射光を受光し、前記照射源から照射する荷電粒子により前記試料台を走査し、前記荷電粒子が前記試料台を照射した位置と、受光した光とを関連付けて画像を形成し、形成した画像に基づいて前記試料の形状を分析する。
【0007】
本発明においては、照射源から照射する荷電粒子と、発光素子から放射される光とによる二重の影絵により、粒子状の試料の外形形状を鮮明に示す、高いコントラストの画像を生成できる。生成された画像に基づいて分析を行なうことにより、粒子状の試料の形状を好適に分析する粒子形状分析方法を提供できる。
【0008】
本発明においては、照射源から照射する荷電粒子と、荷電粒子に励起された発光素子から放射される光とによる二重の影絵により、粒子状の試料の外形形状を鮮明に示す画像を形成するための情報を出力する顕微鏡を提供できる。顕微鏡から出力された情報に基づいて、粒子形状分析部は、試料の形状を正確に分析できる。
【0009】
本発明においては、被測定物である試料を保持する試料保持部を有することにより、試料を分散させた状態で観察できる。
【0010】
本発明においては、発光素子から放射される光を選択的に出力することにより、粒子計測に不要な光を除去できる。
【0011】
本発明においては、照射源から照射する電子線と、発光素子から放射される光とによる二重の影絵による画像を生成するための情報と、試料の成分を判定できる反射電子量の分布を示す画像を生成するための情報とを同時に出力できる。
【0012】
本発明においては、照射源から照射する電子線と、発光素子から放射される光とによる二重の影絵による画像を生成するための情報と、二次電子像とを生成するための情報とを同時に出力できる。
【0013】
本発明においては、照射源から照射する荷電粒子と、発光素子から放射される光とによる二重の影絵により、粒子状の試料の外形形状を鮮明に示す、高いコントラストの画像を生成し、生成した画像に基づいて分析を行なうことにより、粒子状の試料の形状を正確に分析する顕微鏡システムを提供できる。
【発明の効果】
【0014】
一つの側面では、微細な粒子状の試料の形状を分析することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】顕微鏡システムの構成図である。
図2】顕微鏡システムの構成図である。
図3】試料台の分解斜視図である。
図4A】試料台および発光素子の作用を説明する説明図である。
図4B】試料台および発光素子の作用を説明する説明図である。
図5A】試料台および発光素子の作用を説明する説明図である。
図5B】試料台および発光素子の作用を説明する説明図である。
図6】表示装置に表示される画面の例を説明する説明図である。
図7】実施の形態2の顕微鏡システムの構成図である。
図8】実施の形態3の顕微鏡システムの構成図である。
図9A】実施の形態3の表示装置に表示される画像部の例を説明する説明図である。
図9B】実施の形態3の表示装置に表示される画像部の例を説明する説明図である。
図9C】実施の形態3の表示装置に表示される画像部の例を説明する説明図である。
図10】実施の形態4の顕微鏡システムの構成図である。
図11】プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図12】顕微鏡システムの機能ブロック図である。
図13】顕微鏡システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は、顕微鏡システム10の構成図である。顕微鏡システム10は、顕微鏡11および情報処理装置70を備える。情報処理装置70には、液晶ディスプレイ等の表示装置78およびマウス等の入力装置79が接続されている。
【0017】
顕微鏡11は、走査型透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)であり、鏡筒部20と、鏡筒部20に隣接する試料室28と、鏡筒部20および試料室28の外側に配置された、受光部53、走査制御部25および第1出力部571とを備える。鏡筒部20は、照射源21、集束レンズ22、走査部23および対物レンズ24を有する。集束レンズ22および対物レンズ24は、コイルを用いた磁気レンズ、または、電極を用いた静電レンズ等である。
【0018】
試料室28は、反射鏡30および発光素子43を有する。反射鏡30および発光素子43の詳細については、後述する。発光素子43に、試料49を載せた試料台40が載置される。試料台40は発光素子43に間接的に載置されていてもよく、例えば、発光素子43は、保護膜で覆われており、試料台40は保護膜を介して間接的に試料台40が載置されても良い。保護膜は、発光素子43の表面に固定されていても良いし、着脱可能であっても良い。
【0019】
鏡筒部20と試料室28とは、出射口27を介して接続されている。鏡筒部20および試料室28には図示しない真空ポンプが接続されており、内部が減圧される。
【0020】
照射源21は、電子線等、陽子線、アルファ線、または、イオン粒子線等の荷電粒子を、照射する。イオン粒子線は、たとえばヘリウムイオン線、または、炭素イオン線である。以下の説明では、照射源21が電子線を放出する電子銃である場合を例にして説明する。照射源21から出射口27を通過して試料台40に向けて照射される電子線を図1中に破線の太矢印で示す。
【0021】
照射源21の加速電圧は、5kVから20kVである。この加速電圧は、たとえば透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)に比べて小さいため、比較的小型軽量の鏡筒部29を有する顕微鏡11を実現できる。
【0022】
集束レンズ22は、照射源21から照射された電子線を細く集束する。走査部23は、走査制御部25による制御に基づいて電子線の向きを偏向させる。対物レンズ24は、電子線をさらに細く集束する。
【0023】
走査制御部25は、電子線が試料台40を照射する位置を順次変化させて、電子線により試料台40の所定の観察範囲を走査する。
【0024】
発光素子43は、照射源21から照射される電子線に励起されて、光を発生する。以下の説明では、発光素子43が、有機結晶、有機液体または無機結晶等のシンチレータである場合を例にして説明する。
【0025】
反射鏡30は、発光素子43に対向する反射面32と、通過孔31とを有する。反射鏡30は、鏡筒部20の出射口27に固定され、電子線が通過孔31を通過するように配置されている。反射面32は、回転楕円体面の鏡面であり、試料台40の上側を覆うように配置されている。
【0026】
反射鏡30は、たとえばアルミニウム等の金属製である。反射鏡30は、鏡筒部20に対して電気的に導通されている。そのため、いわゆるチャージアップにより、電荷を帯びて電子線の経路に影響を与えることが防止される。反射面32の一方の焦点に、前述した発光素子43が配置されている。
【0027】
受光部53は、反射面32の他方の焦点に配置された入射面52を有する。受光部53は、入射面52を介して反射面32で反射した反射光の強度を取得する。受光部53は、入射面52の表面に光学フィルタ54を有しても良い。
【0028】
なお、受光部53は、受光した光を分光して、各波長の光の強度を取得する分光部531を備えていてもよい。受光部53は、所定の波長の光を透過する内蔵光学フィルタを備えていても良い。内蔵光学フィルタを備えることにより、受光部53は内蔵光学フィルタを通過した光の強度を取得できる。
【0029】
分光部531および内蔵光学フィルタは、画像の形成に用いる光の波長を選択する光選択部の例示である。光選択部を使用することにより、受光部53は発光素子43から放射された光を選択的に取得し、それ以外の計測に不要な光を除去できる。
【0030】
電子線が照射された場合に、カソードルミネッセンスにより試料49自体が発光する場合がある。鮮明な画像を形成するためには、発光素子43が放射する光と、試料49が放射する光とを区別し、いずれか一方の光を用いて画像を形成することが望ましい。
【0031】
試料49が放射する光の波長は、試料49の成分によって定まる。発光素子43が放射する光の波長は、発光素子43の成分によって定まる。したがって、波長に基づいて試料49が放射する光と、発光素子43が放射する光とを分けることができる。
【0032】
たとえば、発光素子43が放射する光の波長を選択的に透過する光学フィルタ54、または分光部531を使用することにより、試料49が放射する光の影響を除去した画像を形成できる。その反対に、発光素子43が放射する光の波長を選択的に遮蔽する光学フィルタ54または分光部531を使用することにより、試料49が放射する光を選択的に用いて画像を形成できる。
【0033】
受光部53の代わりに、光電子増倍管を使用しても良い。光電子増倍管を使用する場合、光電子増倍管の受光面を、反射面32の他方の焦点に配置する。
【0034】
具体的には、たとえば第1出力部571は電子線の走査位置を示す座標データと、光の強度を示すデータとを組にして関連付けた状態で順次出力する。電子線の走査位置とその順番が定まっている場合には、第1出力部571は光の強度を示すデータのみを順次出力しても良い。この場合、情報処理装置70はデータの順番に基づいて、走査位置と光の強度とを関連付けることができる。
【0035】
第1出力部571は、その他任意のプロトコルに基づいて、電子線の走査位置および光の強度を関連付けて、または他の装置(情報処理装置70)が関連付けを行なえる状態で出力しても良い。
【0036】
図2は、顕微鏡システム10の構成図である。図2においては、情報処理装置70の構成を中心に示す。情報処理装置70は、CPU(Central Processing Unit)71、主記憶装置72、補助記憶装置73、入力I/F(Interface)74、出力I/F75、顕微鏡I/F76およびバスを備える。本実施の形態の情報処理装置70は汎用のパソコンまたはタブレット等の情報処理装置である。情報処理装置70は、顕微鏡システム10専用のハードウェアであっても良い。
【0037】
CPU71は、本実施の形態にかかるプログラムを実行する演算制御装置である。CPU71には、一または複数のCPU等が使用される。CPU71は、バスを介して情報処理装置70を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0038】
主記憶装置72は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の記憶装置である。主記憶装置72には、情報処理装置70が行なう処理の途中で必要な情報および情報処理装置70で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0039】
補助記憶装置73は、フラッシュメモリ等の記憶装置である。補助記憶装置73には、CPU71に実行させるプログラムおよびプログラムの実行に必要な各種情報が保存される。出力I/F75は、表示装置78に表示する画像データを出力するインターフェイスである。入力I/F74は、入力装置79からの入力を取得するインターフェイスである。顕微鏡I/F76は、顕微鏡11の第1出力部571との通信を行なうインターフェイスである。
【0040】
CPU71は、第1出力部571から取得した情報を主記憶装置72または補助記憶装置73に記憶する。走査制御部25の制御により所定の観察範囲の走査が終了した後に、CPU71は記憶した情報に基づいて反射光の強度分布を示す画像を形成する。CPU71は、出力I/F75を介して表示装置78に画像を表示させる。
【0041】
なお、表示部93と入力部94とは、一体のタッチパネルであってもよい。表示部93および入力部94は、情報処理装置70と一体の構成でも良い。
【0042】
図3は、試料台40の分解斜視図である。試料台40は、試料保持部41およびスペーサ42を備える。試料保持部41は、照射源21が照射する電子線、および、発光素子43により放射される光が十分に透過可能であり、かつ導電性を有する。試料保持部41の詳細については、後述する。
【0043】
試料保持部41の裏面に、円筒状のスペーサ42が積層されている。スペーサ42は、試料保持部41を平坦な状態に保持して、試料台40を取り扱い易くする補強枠の機能を果たす。ユーザは、スペーサ42の側面を保持して、試料台40を試料室28に出し入れする等の作業を行なう。
【0044】
試料保持部41は、電子線および光を十分に透過する膜である。試料保持部41に薄い膜を使用することにより、電子線および光の透過率が高くなる。
【0045】
試料保持部41の厚さは、被測定物である試料49の保持と、電子線および光の透過性とを両立できる厚さである。具体的には、数百ナノメートルオーダ、たとえば500ナノメートル程度か、それ以下の厚さであることが望ましい。試料49がナノメートルオーダの微細な寸法の粒子であっても、落下させずに保持して観察できる試料台40を実現できる。
【0046】
試料保持部41は、試料49を載せる際、および試料台40を発光素子43に載置する際に、破損しにくい程度の強度を有することが望ましい。試料台40の取り扱いが容易で、顕微鏡11のユーザが扱いやすい試料台40を実現できる。
【0047】
試料保持部41は、試料室28に対して電気的に導通されていることが望ましい。試料保持部41がいわゆるチャージアップにより電荷を帯びて電子線の軌跡を曲げることにより、観察画像に歪み等の悪影響を与えることが防止される。
【0048】
試料保持部41は、たとえば電子顕微鏡用のグリッドメッシュの一面に、電子線と発光素子43により放射される光との両方が透過可能な膜を積層または貼付して、グリッドメッシュの孔を塞いだものである。膜により、グリッドメッシュのメッシュ間隔よりも小さい粒子状の試料を分析できる。この膜の一例としては、カーボン系の膜(例えば、グラフェンやカーボンナノシート)がある。
【0049】
試料保持部41は、グリッドメッシュの孔を、樹脂で埋めたものであっても良い。試料保持部41は、ガラス板または樹脂製シートの一面に透明電極(ITO:Indium Tin Oxide)等の、電子線と発光素子43により放射される光との両方が透過可能な導体を形成したものでも良い。
【0050】
被測定物である試料49は、試料保持部41の表面に配置される。試料49は、たとえばナノメートルオーダの粒子である。試料49を水等の液体中に分散させ、試料保持部41の表面に滴下した後に、乾燥することで、試料49を分散させた状態で試料保持部41の表面に付着させることができる。なお、前述の準備作業をスムーズに行なうために、試料保持部41は、親水性を有することが望ましい。
【0051】
試料保持部41は、表面に試料49の寸法に比べて山谷の高さの差が小さい凸凹を有することが望ましい。試料49が凸凹に引っかかることにより、液体を乾燥させる際に試料49が凝集し、形状観察、特に寸法算出と粒径算出が困難になることを防ぐことができる。観察する試料49の寸法に応じて、凸凹の大きさの異なる試料保持部41を用いた試料台40を、ユーザが選択して使用してもよい。
【0052】
試料49を試料保持部41の表面に付着させた後に、試料49の上面を試料保護膜で覆っても良い。試料保護膜は、電子線と発光素子43により放射される光との両方が透過可能な膜である。試料保護膜で覆うことにより、照射する電子線により試料49が飛散することを防止できる。試料保護膜を使用する場合、試料保持部41と、試料49と、試料保護膜との合計の厚さが、500ナノメートル以下であることが望ましい。
【0053】
図3においては、円板状の試料保持部41を示すが、試料保持部41は長方形等の任意の形状であってもよい。スペーサ42は、電子線と発光素子の光を透過する板状のものであってもよい。
【0054】
図1に戻って説明を続ける。試料室28内に、台座部46および移動機構47が設けられている。台座部46に、発光素子43が取り付けられている。発光素子43の表面は水平な平面である。試料台40は、発光素子43に載置される。移動機構47、台座部46および発光素子43の高さは、電子線の経路と発光素子43の表面との交点が、反射面32の一方の焦点に合うように定められている。
【0055】
ユーザは、試料室28の外側から移動機構47を水平方向に動作させて、試料台40が電子線により走査される場所、すなわち顕微鏡システム10を用いた観察を行なう場所を変更することができる。
【0056】
図4A図4B図5Aおよび図5Bは、試料台40および発光素子43の作用を説明する説明図である。図4Aは、試料台40に電子線を照射する状態を示す。図4A中の下向き矢印AからHは、照射源21から試料台40に照射される電子線を示す。走査制御部25および走査部23の作用により、電子線の向きは順次変化して、試料台40上を走査する。AからHの文字は、電子線が照射される順番を示す。本実施の形態においては、電子線の走査角度は狭いため、それぞれの電子線は試料台40の表面に対して略垂直に入射する。
【0057】
たとえば下向き矢印A等で示すように、試料49が存在しない位置を照射する電子線は、試料保持部41および試料保持部41と発光素子43との間の空洞を透過して、発光素子43に到達する。一方、下向き矢印B等で示すように、試料49が存在する位置を照射する電子線は、試料49により反射または吸収されて、発光素子43に到達しない。そのため、照射源21から照射される電子線は、図4A中に黒塗りで示す部分を通過しない。
【0058】
図5Aおよび図5Bは、電子線による発光素子43の発光状態を示す。図5Aにおいて格子線のハッチングで示す二等辺三角形状の部分は、電子線が照射されたことにより発光した発光素子43から放射された光を示す。すなわち、発光素子43は、試料49の形状に対応する影絵状の部分では光を放射せず、その周囲の部分では光を発する。発光素子43から発生した光は、発光した位置から放射状に拡がる。
【0059】
AからHの文字は、発光素子43の発光を引き起こした電子線に対応する。たとえば、図4AにおいてAで示す電子線は、発光素子43に到達して図5AにAで示す光を発生させる。図4AにおいてBで示す電子線は、試料49にあたって、反射または吸収されて、発光素子43に到達しないため、光を発生させない。
【0060】
試料49の近傍を通過したGの電子線により生じた光の一部は、図5Aに示すように試料49により妨げられる。そのため、図5A中に黒塗りで示すように、試料49は発光素子43から放射された光に影を作る。試料49の影にならなかった光は、反射面32で反射されて入射面52に入射し、受光部53で検出される。以上により、試料49は、電子線と光とによる二重の影絵を形成する。
【0061】
図4Bおよび図5Bは、中央に示す小さい粒子状の試料49に電子線が照射された場合を示す。なお、図4Bおよび図5Bにおいては、他の部分に照射される電子線およびそれらの電子線により放射される光については、図示を省略する。
【0062】
図4Bに破線で示すように、電子線は小さい試料49を透過して、発光素子43に到達する場合がある。このような小さい試料49に関しては、電子線の透過像のコントラストは低くなる。しかし、試料49を透過した電子線により放射された光は、図5Bに示すように、試料49により遮られて反射面32に到達せず、受光部53で検出されない。したがって、二重の影絵を用いることにより、電子線が透過してしまうような微細な試料49であっても、コントラストの高い透過像を得ることができる。
【0063】
図6は、表示装置78に表示される画面の例を示す説明図である。図6に示す画面には、画像部81と測定結果部82とが表示されている。
【0064】
前述のとおり、CPU71は電子線を照射した座標と、受光部53で検出された反射光の強度とを関連付けて、反射光の強度分布を示す画像、すなわち試料49の形状を示す画像を形成し、画像部81に表示する。図4A図4B図5Aおよび図5Bを使用して説明したように、電子線と光とによる二重の影絵により、粒子状の試料49の外形形状が画像部81に鮮明に表示される。
【0065】
なお、CPU71は、輪郭強調等の画像処理を行った画像を画像部81に表示しても良い。画像処理を行うことにより、ユーザが観察しやすい画像を表示装置78に表示できる。また以後の分析を行いやすい画像を生成できる。
【0066】
CPU71は、試料49の形状を示す画像に基づいて試料49の形状を分析する。試料49の形状を示す画像に基づく試料49の分析について説明する。図6においては、入力装置79を介してカーソル84を走査するユーザから、画像部81の中央部分に表示された粒子の選択を受け付けた場合の例を示す。CPU71は、たとえばエッジ検出等の公知の画像認識手法に基づいて、選択を受け付けた粒子の外形を検出して、外形線83を表示する。外形線83により、ユーザは意図した部分の選択が受け付けられたことを確認できる。
【0067】
CPU71は、選択を受け付けた試料49が、円形であるのか、楕円形であるのか、針状であるのか等、試料49の形状を解析する。さらにCPU71は、形状を解析した結果に基づいて選択を受け付けた試料49の寸法を算出する。たとえば、CPU71は外形線83の楕円近似を行なうことにより、長径、短径、扁平率、面積等の、粒子の寸法を算出する。なお、長径および短径は、粒子状の試料49の粒径の一例である。
【0068】
CPU71は、算出した結果を測定結果部82に表示する。CPU71は長径と短径と扁平率との代わりに、試料の形状を円形で近似した粒径を算出しても良い。なお、CPU71は、複数の粒子の選択を受け付けて、それぞれの粒子の測定結果を表示しても良い。
【0069】
CPU71は、画像部81の全域または所定の範囲内に表示された試料49を自動的に抽出して算出した試料49の寸法等の統計量を、測定結果部82に表示しても良い。CPU71は、入力装置79を介して受け付けた任意の部分の距離または面積等を算出して、測定結果部82に表示しても良い。CPU71は、画像部81と測定結果部82とを異なる表示装置78に表示しても良い。
【0070】
本実施の形態によると、電子線が試料49の形状に対応する影絵状に発光素子43に投影されて光を発生し、試料49の形状に対応する影絵状の光が反射面32で反射する。すなわち、試料49の形状は二重の影絵により取得されるため、電子線および光の散乱、回折等の影響を低減し、試料49の外形形状を鮮明に表示する顕微鏡11を提供できる。
【0071】
試料49は、通常の光学顕微鏡では観察できない、ナノミクロンオーダの微細な粒子であっても良い。電子線が透過してしまうような小さい粒子であっても、電子線と光との二重の影絵を用いることにより、コントラストの高い画像を得ることができる。
【0072】
反射面32が試料台40の上側を覆うように配置されているため、光が効率良く入射面52に入射するので、コントラストの高い画像を得ることができる。また、回転楕円面の反射鏡であれば、発光素子43から放射された光の多くを反射面32で反射させることができる。反射面32の一方の焦点に発光素子43の表面が、他方の焦点に入射面52が配置されているため、発光素子43から放射された光が、さらに、効率良く入射面52に入射する。
【0073】
試料49の形状を鮮明な画像で取得できるため、試料49の寸法を容易に測定できる。公知の画像処理技術を利用して、試料49の寸法を自動的に計測しても良い。公知の画像処理技術および統計処理技術を利用して、個々の粒子の形状および粒子の形状の統計値等を解析しても良い。
【0074】
反射鏡30は、通過孔31を有する代わりに、たとえば図1における通過孔31の位置で左右に分割されるなど複数に分割されて、電子線の経路を除いた場所に配置されても良い。また、反射鏡30は、たとえば図1における通過孔31の位置の右側の部分のみで構成され、通過孔31を有さなくても良い。
【0075】
[実施の形態2]
本実施の形態は反射面32が放物面である顕微鏡11に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。図7は、実施の形態2の顕微鏡システム10の構成図である。
【0076】
試料台40は、放物面である反射面32の焦点に配置されている。発光素子43から放射された光は、反射面32で反射して、平行光になる。入射面52は、反射面32で反射する平行光の太さに対応する大きさを有する。反射面32と入射面52との間に、受光絞り55が配置されている。
【0077】
図7に示すように、発光素子43から放射された光が試料49に当たった場合に、散乱が生じる場合がある。具体的には、試料49の寸法が光の波長の10分の1以下である場合にレイリー散乱が、試料49の寸法が光の波長と同程度以下である場合にミー散乱が、試料49の寸法が光の波長よりも大きい場合に回折散乱が生じる。反射面32側に散乱する散乱光は、表示装置78に表示される透過像のコントラストを低下させる可能性がある。
【0078】
散乱光は全方位的に発生するが、角度依存性がある。したがって、散乱光には強度が高い角度と、強度が低い角度とが存在する。受光絞り55の絞り量を調整することにより、強度が強い角度の散乱光が入射面52に到達することを妨げることができる。
【0079】
散乱光の強度が高い角度は、試料49の粒子径と、発光素子43が放射する光の波長とにより定まる。この角度は、回折・散乱理論に基づいて算出することが可能である。さらに、反射面32の焦点からずれた位置から散乱光が放射されることも考慮することにより、受光絞り55の開口サイズを適切に定めることができる。
【0080】
ユーザは、試料49の粒子径に応じて受光絞り55の絞り量を調整する。ユーザは、表示装置78に表示される画像を見て、受光絞り55の絞り量を調整しても良い。ユーザから受け付けた粒子径、または画像に基づいて算出した粒子径に基づいて、CPU71が受光絞り55の絞り量を調整しても良い。受光絞り55の調整と、画像の形成とを繰り返すことにより、受光絞り55の絞り量が適切になり、画像をさらに鮮明にできる。
【0081】
本実施の形態によると、散乱光の影響を低減した画像を表示する顕微鏡11を提供できる。これにより、光の波長と同程度以下の寸法の試料49の外形を明瞭に表示する顕微鏡11を提供できる。
【0082】
なお、受光部53はマトリクス状に配列された多数の画素を有する撮像素子であっても良い。
【0083】
[実施の形態3]
本実施の形態は、複数の手法による画像を同時に取得する顕微鏡11に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。図8は、実施の形態3の顕微鏡システム10の構成図である。図9Aから図9Cは、実施の形態3の表示装置78に表示される画像部81の例を説明する説明図である。本実施の形態の顕微鏡11は、光の分布を示す画像に加えて、後述する反射電子像および二次電子像を形成する。図9Aは光の分布を示す画像の模式図を、図9Bは反射電子像の模式図を、図9Cは二次電子像の模式図を示す。
【0084】
反射鏡30と、鏡筒部20および試料室28との間は、絶縁部材35により絶縁されている。反射鏡30は絶縁被覆を有する導体線62を介して反射電子測定部61に接続されている。反射電子測定部61は、第2出力部572に接続されている。第2出力部572は、情報処理装置70に接続されている。
【0085】
たとえば、反射電子測定部61は電流計であり、反射鏡30から図示しない接地線に流れる電流に基づいて反射電子量を測定する。または、反射電子測定部61は電圧計であり、反射鏡30と図示しない接地線との間の電圧に基づいて反射電子量を測定してもよい。なお、反射電子量を測定する理由については、後述する。
【0086】
電子線の経路、および、反射面32で反射した光と入射面52との間の経路を妨げない位置に、電子線が試料台40または試料49に当たることにより発生する二次電子を検出可能な二次電子検出器66が配置されている。二次電子検出器66は、第3出力部573に接続されている。第3出力部573は、情報処理装置70に接続されている。なお、二次電子を検出する理由については、後述する。
【0087】
図9Bを使用して、本実施の形態の顕微鏡11が形成する反射電子像について説明する。電子線が試料49に当たった場合、反射電子が発生する。発生する反射電子の量は、試料49を構成する元素の種類および組成等の成分によって異なる。反射鏡30に衝突した反射電子は、反射鏡30をマイナスに帯電させる。反射電子は、導体線62および反射電子測定部61を介して流出する。この際の電流値または電圧値に基づいて、反射電子測定部61が反射電子量を測定する。第2出力部572は、図示を省略する信号線を介して走査制御部25から取得した電子線の走査位置を示す座標データと、反射電子測定部61から取得した反射電子量とを関連付けて、または他の装置(情報処理装置70)が関連付けを行なえる状態で出力する。
【0088】
CPU71は、第2出力部572から取得した情報を主記憶装置72または補助記憶装置73に記憶する。走査制御部25の制御により1画面分の走査が終了した後に、CPU71は記憶した情報に基づいて反射電子量の分布を示す画像を形成する。
【0089】
図9Bにおいては、反射電子量の大小を、ハッチングの相違により模式的に示す。図9Bにおいては、上側の2個の粒子の成分は同一であり、下側の1個の成分は他の2個とは異なる。反射電子像を用いることにより、ユーザは、試料49同士の成分の相違の有無を判定できる。
【0090】
さまざまな既知成分を有する試料49の反射電子量をあらかじめデータベース化した成分分析DB(Database)136(図13参照)を参照することにより、CPU71は、未知の試料49の反射電子量に基づいて、その試料49の成分を特定することができる。成分は、試料49を構成する元素でも良いし、試料49の組成、すなわち試料49を構成する元素の構成比率でも良い。CPU71は、特定の成分を着色して画像部81に示しても良い。
【0091】
なお、反射電子を用いて画像形成および成分分析を行なう場合には、試料の原子番号と試料保持部の原子番号を離したい。したがって、試料保持部41は軽元素の材料により構成されていることが望ましい。軽元素は、反射電子の放出量が少ないためである。
【0092】
図9Cを使用して、本実施の形態の顕微鏡11が形成する二次電子像について説明する。電子線が試料49に当たった場合、前述の反射電子に加えて二次電子も生じる。二次電子のエネルギーは弱いため、試料49の内部で発生した二次電子は試料49の内部で吸収され、試料49の表面で発生した二次電子のみが試料49の外部に放出される。したがって、二次電子を用いることにより、試料49の表面の形状を示す表面画像を形成できる。
【0093】
二次電子を用いた画像形成について、さらに詳しく説明する。二次電子検出器66内のシンチレータにより、二次電子が光に変換される。同じく二次電子検出器66内の光電子増倍管により、シンチレータの発光量が検出される。第3出力部573は、走査制御部25から取得した電子線の走査位置と、二次電子検出器66から取得したシンチレータの発光量、すなわち二次電子の量とを関連付けて、または他の装置(情報処理装置70)が関連付けを行なえる状態で出力する。
【0094】
CPU71は、第3出力部573から取得した情報を主記憶装置72または補助記憶装置73に記憶する。走査制御部25の制御により1画面分の走査が終了した後に、CPU71は記憶した情報に基づいて二次電子量の分布を示す画像、すなわち二次電子像を形成する。二次電子像を用いることにより、ユーザは、試料49の表面の形状を見ることができる。
【0095】
なお、二次電子像を形成する場合には、試料保持部41は、試料室28に対して電気的に導通されていることが望ましい。試料保持部41が導通されておらず、いわゆるチャージアップにより電荷を帯びた場合には、二次電子像の画質が低下するからである。
【0096】
以上に説明したように、電子線による1回の走査により、発光素子43から発生する光の分布画像と、反射電子の分布画像と、二次電子像とを同時に取得することができる。試料台40の同一の箇所の画像を、3通りの方法で取得できるので、これらの画像を表示装置78に並列して表示することも、重畳して表示することも、適宜切り替えて表示することも可能である。
【0097】
なお、第1出力部571、第2出力部572および第3出力部573は、同一のハードウェアにより実現され、反射光の強度と、反射電子量と、二次電子量と、電子線の走査位置とを合わせて情報処理装置70に送信しても良い。
【0098】
本実施の形態によると、複数の手法による画像を同時に取得する顕微鏡11を提供できる。さまざまな手法で取得した画像を組み合わせることにより、たとえば試料49の寸法測定と、表面形状の観察とを同時に行なうことができる。
【0099】
本実施の形態の顕微鏡11の用途を、具体的を挙げて説明する。たとえば粉状サンプルが一種類の成分の粒子のみで構成されているか、それとも成分の異なる粒子の混合物であるかを、反射電子像に基づいて識別することができる。前述のデータベースを用いることにより、それぞれの粒子の成分を特定することができる。
【0100】
たとえば、アルミニウム粒子と鉄粒子が混合したサンプルについて、それぞれの成分の粒子の形状および寸法の相違の有無を識別することもできる。この際、図9Aに示す光の分布を示す画像を組み合わせて使用することにより、それぞれの粒子の寸法を正確に測定することができる。さらに図9Cに示す二次電子像を併用することにより、それぞれの粒子の表面の形状を対比することもできる。
【0101】
顕微鏡11は、反射電子の分布画像と二次電子像のいずれか一方を表示する機能を有しても良い。光の分布画像と反射電子の分布画像の組合せ、または光の分布画像と二次電子像の組合せを表示できる顕微鏡11を提供できる。
【0102】
試料保持部41は、リターディング電源44に接続されていても良い。リターディング電源44は、負の直流電圧を供給する電源装置である。リターディング電源44の電圧をリターディング電圧という。ユーザは、図示しないコントローラを操作して、試料保持部41に供給されるリターディング電圧を変更可能である。
【0103】
リターディング電圧により、反射鏡30と試料保持部41との間に減速電界が発生し、試料保持部41の直前で電子線が減速する。これにより、試料保持部41を透過する電子線の強度が弱くなる。その結果、発光素子43で発生する光も弱くなる。ユーザは、リターディング電圧を適宜調整することにより、表示装置78に表示される画像を調整できる。
【0104】
試料49の材質によっては、電子線が照射された試料49自体がカソードルミネッセンスにより光を発生する場合がある。このような場合には、ユーザがリターディング電圧を適宜調整して、試料49の発光と、発光素子43の発光とのコントラストが大きくなるように設定することができる。これにより、試料49の外形を鮮明に表示することができる。
【0105】
本実施の形態によると、カソードルミネッセンスにより光を発生する試料49の外形を鮮明に表示する顕微鏡11を提供できる。
【0106】
本実施の形態によると、カソードルミネッセンスにより光を発生する試料49の外形を鮮明に表示する顕微鏡11を提供できる。
【0107】
[実施の形態4]
本実施の形態は、画像形成機能を有する一体型の顕微鏡11に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。図10は、実施の形態4の顕微鏡システムの構成図である。
【0108】
顕微鏡11は、鏡筒部20、試料室28、走査制御部25、受光部53に加えて、制御部90を有する。制御部90は、CPU71、主記憶装置72、補助記憶装置73、制御I/F91、受光I/F92、表示部93、入力部94およびバスを備える。制御部90は、汎用のパソコンまたはタブレット等の情報処理装置であっても良い。
【0109】
CPU71、主記憶装置72、補助記憶装置73およびバスは、図2を使用して説明した実施の形態1の情報処理装置70中の各部分と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
制御I/F91は、走査制御部25に接続されており、走査部23の制御に関する情報の入出力を行なう。受光I/F92は、受光部53に接続されており、受光部53が受光した反射光の強度を取得する。表示部93は、たとえば液晶表示装置等である。入力部94は、たとえばマウス等である。表示部93と入力部94とは、一体となったタッチパネルであってもよい。
【0111】
図11は、プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。CPU71は、電子線を照射する位置を取得する(ステップS501)。CPU71は、制御I/F91を介してステップS501で取得した位置に電子線を照射する(ステップS502)。CPU71は、受光I/F92を介して反射光の強度を取得する(ステップS503)。CPU71はステップS503で取得した反射光の強度を、ステップS501で取得した位置と関連付けて、主記憶装置72または補助記憶装置73に記憶する。
【0112】
CPU71は、1画面分の走査が完了したか否かを判定する(ステップS504)。完了していないと判定した場合(ステップS504でNO)、CPU71はステップS501に戻る。完了したと判定した場合(ステップS504でYES)、CPU71は主記憶装置72または補助記憶装置73に記憶した情報に基づいて、反射光の分布を示す画像を形成する(ステップS505)。CPU71は、形成した画像を表示部93に表示する(ステップS506)。
【0113】
CPU71は、入力部94を介してユーザによる入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS507)。ユーザによる入力は、たとえば図6を使用して説明した、カーソル84による画像上の位置の指定である。
【0114】
ユーザによる入力を受け付けたと判定した場合(ステップS507でYES)、CPU71は画像認識を行ない、指定された位置に対応する粒子の輪郭線を抽出する(ステップS508)。CPU71は、抽出した輪郭線に基づいて、長径、短径、扁平率および面積等を算出する。CPU71は、算出した結果を表示部93に表示する(ステップS510)。
【0115】
ステップS510の終了後、ユーザは再走査を行なうか否かを判定する(ステップS511)。再走査するとユーザが判定した場合(ステップS511でYES)、CPU71はステップS501に戻る。再走査しないとユーザが判定した場合(ステップS511でNO)、CPU71は処理を終了する。
【0116】
本実施の形態によると、電子線の走査の制御と、画像の形成とを同一のCPU71で行なうので、たとえば画像上でユーザによる指定を受け付けた範囲のみを、再度走査する等、柔軟な走査が可能な顕微鏡11を実現できる。
【0117】
[実施の形態5]
図12および図13は、実施の形態5の顕微鏡システム10の機能ブロック図である。なお、図12および図13においては、顕微鏡システム10を制御する機能ブロックは省略し、図8を使用して説明した第1出力部571、第2出力部572および第3出力部573から出力されたデータを処理して、表示装置78に表示する機能ブロックを示す。図12は、第1出力部571から出力された情報を処理する機能ブロックを主に示し、図13は、第2出力部572および第3出力部573から出力された情報を処理する機能ブロックを主に示す。
【0118】
それぞれの機能ブロックは、情報処理装置70が実行するプログラムによりソフトウェア的に実現されても良いし、電子回路によりハードウェア的に実現されても良い。図12および図13に示す機能ブロックの一部がソフトウェア的に実現され、他がハードウェア的に実現されても良い。機能ブロックは、全部が顕微鏡11の内部で実現されても良いし、全部が顕微鏡11に接続されたパソコン等の機器で実現されても良い。機能ブロックは、一部が顕微鏡11の内部で実現され、他が顕微鏡11に接続されたパソコン等の機器で実現されても良い。
【0119】
顕微鏡システム10は、前述の第1出力部571、第2出力部572、第3出力部573および表示装置78に加えて、光分析部120、反射電子分析部130および二次電子分析部140を備える。反射電子分析部130および二次電子分析部140の詳細については、後述する。
【0120】
光分析部120は、第1出力部571から出力された情報に基づいて分析を行なう。光分析部120は、第1受付部129、画像形成部121、粒子分析部123および粒子形状出力部128を含む。
【0121】
第1受付部129は、前述の第1出力部571から出力された情報を受け付ける。第1受付部129は、走査位置と光の強度とが関連付けられていない情報を受け付けた場合には、関連付ける処理を行なう。
【0122】
画像形成部121は、第1受付部129が受け付けた情報に基づいて、反射光の強度分布を示す画像、すなわち試料49の形状を示す画像を形成する。画像形成部121は、輪郭強調等の処理を行なう画像処理部122を含んでも良い。
【0123】
粒子分析部123は、画像形成部で形成された画像に基づいて粒子状の試料49を分析する。粒子分析部123は、粒子形状分析部124を含む。粒子形状分析部124は、粒子状の試料49の形状を分析する。粒子形状分析部124は、形状解析部125、寸法算出部126および粒径算出部127の全部または一部を含む。
【0124】
形状解析部125は、試料49の形状を解析する。具体的には、画像中の粒子が円形であるのか、楕円形であるのか、繊維上であるのか等、どのような形状であるのかを解析する。
【0125】
寸法算出部126は、形状解析部125が解析した形状に基づき、試料49のどの部分の寸法を測定するかを定め、該当する寸法を算出する。なお、寸法算出部126は形状解析部125が解析した結果を用いず、ユーザの指示に基づいて、試料49のどの部分の寸法を測定するかを定め、該当する寸法を算出しても良い。寸法算出部126は、カーソル等を介してユーザの指示を受け付けた部分の寸法を算出しても良い。
【0126】
粒径算出部127は、画像形成部121から取得した画像に基づいて、試料49の粒径を算出する。粒子形状出力部128は、画像形成部121が形成した画像または粒子形状分析部124が分析した粒子の形状もしくは寸法を表示装置78に出力する。
【0127】
図13を使用して説明を続ける。反射電子分析部130は、第2出力部572から出力された情報に基づいて分析を行なう。反射電子分析部130は、第2受付部139、反射電子像形成部131、成分分析部132、成分分析DB136および成分出力部138を含む。成分分析部132は、成分特定部133、元素同定部134、組成特定部135の全部または一部を含む。
【0128】
成分分析DB136は、さまざまな既知成分を有する試料49の反射電子量が記録されたデータベースである。成分分析DB136は、補助記憶装置73に記憶されていても良いし、ネットワークを介して接続された図示しない他のサーバコンピュータに記憶されていても良い。
【0129】
第2受付部139は、前述の第2出力部572から出力された情報を受け付ける。第2受付部139は、走査位置と反射電子量とが関連付けられていない情報を受け付けた場合には、関連付ける処理を行なう。
【0130】
反射電子像形成部131は、第2受付部139が受け付けた情報に基づいて、反射電子量の分布を示す画像を形成する。成分分析部132は、反射電子量に基づいて試料49の成分を分析する。成分分析部132は、反射電子像形成部131が形成した画像中の、ユーザによる指定を受け付けた特定の部分について成分を分析しても良いし、画像全体について成分を分析しても良い。
【0131】
成分特定部133は、反射電子量をキーとして成分分析DB136を検索することにより、成分分析DB136から試料49の成分を取得する。元素同定部134は、反射電子量をキーとして成分分析DB136を検索することにより、成分分析DB136から試料49を構成する元素を取得する。組成特定部135は、反射電子量をキーとして成分分析DB136を検索することにより、成分分析DB136から試料49の組成を取得する。
【0132】
成分出力部138は、反射電子像形成部131が形成した画像または成分分析部132が分析した試料49の成分を表示装置78に出力する。
【0133】
二次電子分析部140は、第3出力部573から出力された情報に基づいて分析を行なう。二次電子分析部140は、第3受付部149、表面画像形成部141、表面画像出力部148を含む。
【0134】
第3受付部149は、前述の第3出力部573から出力された情報を受け付ける。第3受付部149は、走査位置と二次電子の量とが関連付けられていない情報を受け付けた場合には、関連付ける処理を行なう。
【0135】
表面画像形成部141は、第3受付部149が受け付けた情報に基づいて、二次電子の量の分布を示す二次電子像を形成する。表面画像出力部148は、表面画像形成部141が形成した画像を、表示装置78に出力する。
【0136】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
10 顕微鏡システム
11 顕微鏡
21 照射源
23 走査部
28 試料室
30 反射鏡
40 試料台
43 発光素子
49 試料
53 受光部
124 粒子形状分析部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13