(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】成膜装置、検知装置、検知方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221115BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/24 G
(21)【出願番号】P 2020166057
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】上田 利幸
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直次郎
(72)【発明者】
【氏名】神野 紘隆
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070493(JP,A)
【文献】特表2020-520549(JP,A)
【文献】特開2018-003143(JP,A)
【文献】特開2020-141121(JP,A)
【文献】特開2003-293132(JP,A)
【文献】特開2013-147715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板を吸着する吸着板と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクが載置されるマスク台と、
前記吸着板に吸着された前記基板と前記マスク台に載置された前記マスクとの、前記基板の被成膜面に沿った平面における相対位置を調整することでアライメントを行うアライメント手段と、
前記吸着板を前記マスク台に対して前記平面と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記マスク台に載置された前記マスクの前記交差方向における位置を検知する検知手段と、
を備え
、
前記検知手段は、前記吸着板が基板を吸着していない状態で、前記交差方向における前記マスクの位置を検知することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記アライメントを行う時の前記交差方向における前記吸着板の位置を決定する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記マスク台に載置された前記マスクから所定の距離となる前記交差方向における前記吸着板の位置を決定する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検知手段による検知を開始するための前記交差方向における前記吸着板の検知開始位置を決定することを特徴とする請求項2または3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検知手段による過去の検知結果に基づいて、前記検知開始位置を決定することを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記マスク台に載置された前記マスクの種類を特定する特定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記特定手段で特定した前記マスクの前記種類に基づいて、前記検知開始位置を設定することを特徴とする請求項4または5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記吸着板を、前記検知開始位置から前記マスク台に近接するように、前記交差方向において相対的に移動し、
前記検知手段は、前記検知開始位置から、前記吸着板が前記マスク台に載置された前記マスクに接触する接触位置までの、前記吸着板の変位量に基づいて、前記交差方向における前記マスクの位置を検知することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記移動手段は、前記吸着板が基板を吸着していない状態で、前記吸着板を前記検知開始位置に移動することを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記移動手段は、前記チャンバの内部が真空に保持されている状態で、前記吸着板を前記検知開始位置に移動することを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記検知手段は、前記チャンバの内部が真空に保持されている状態で、前記交差方向における前記マスクの位置を検知することを特徴とする
請求項1から9のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記検知手段は、前記吸着板の側に設けられ、前記マスクとの接触を検出するタッチセンサを含むことを特徴とする
請求項1から10のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記タッチセンサは、前記吸着板の吸着面に前記基板が接触したことを検出することを特徴とする
請求項11に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記検知手段は、前記交差方向における前記吸着板と前記マスク台との距離を測定する測距センサを含むことを特徴とする
請求項1から12のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記検知手段は、前記吸着板の側に設けられ、前記マスクとの接触を検出するタッチセンサを含み、
前記移動手段は、前記吸着板が基板を吸着していない状態で、前記吸着板を第1位置に移動し、
前記移動手段は、前記交差方向において前記吸着板が前記マスク台に近接するように、前記第1位置から少なくとも前記タッチセンサが接触を検出する第2位置まで、前記吸着板を相対的に移動し、
前記検知手段は、前記第1位置から前記第2位置までの前記吸着板の変位量に基づいて、前記交差方向における前記マスクの位置を検知する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記吸着板と前記マスク台との平行度を判定する判定手段を備えることを特徴とする
請求項1から14のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記チャンバの内部が真空に保持されている状態で、前記吸着板と前記マスク台との相対的な傾きを調整する調整手段をさらに備えることを特徴とする
請求項15に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記吸着板は静電チャックであることを特徴とする
請求項1から16のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜する成膜手段を備えることを特徴とする
請求項1から17のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項19】
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板を吸着可能な吸着板と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクが載置されるマスク台と、
前記吸着板に吸着された前記基板と前記マスク台に載置された前記マスクとの、前記基板の被成膜面に沿った平面における相対位置を調整することでアライメントを行うアライメント手段と、
前記吸着板を前記マスク台に対して前記平面と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、
を備える成膜装置に取り付けられる検知装置であって、
前記マスク台に載置された前記マスクの前記交差方向における位置を検知する検知手段、
を備え
、
前記検知手段は、前記吸着板が基板を吸着していない状態で、前記交差方向における前記マスクの位置を検知することを特徴とする検知装置。
【請求項20】
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板を吸着可能な吸着板と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクが載置されるマスク台と、
記吸着板に吸着された前記基板と前記マスク台に載置された前記マスクとの、前記基板の被成膜面に沿った平面における相対位置を調整することでアライメントを行うアライメント手段と、
を備える成膜装置の検知方法であって、
前記吸着板を前記マスク台に対して前記平面と交差する交差方向に相対的に移動させる移動工程と、
前記吸着板が基板を吸着していない状態で、前記マスク台に載置された前記マスクの前記交差方向における位置を検知する検知工程と、
を含むことを特徴とする検知方法。
【請求項21】
前記移動工程は、
前記吸着板が基板を吸着していない状態で、前記吸着板を第1位置に移動する第1移動工程と、
前記交差方向において前記吸着板が前記マスク台に近接するように、前記第1位置から少なくとも前記吸着板が前記マスクに接触する第2位置まで、前記吸着板を相対的に移動する第2移動工程と、を含み、
前記検知工程は、前記第1位置から前記第2位置までの前記吸着板の変位量に基づいて、前記交差方向における前記マスクの位置を検知することを特徴とする
請求項20に記載の検知方法。
【請求項22】
請求項20または21に記載の検知方法によって前記交差方向における前記マスクの位置を検知する工程と、
前記検知工程における検知結果に基づいて決定される前記交差方向におけるアライメント位置に前記吸着板を移動させて、前記吸着板に吸着された前記基板と前記マスク台に載置された前記マスクとのアライメントを行うアライメント工程と、
前記マスクを介して前記基板上に成膜する成膜工程と、を有する、
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、検知装置、検知方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に蒸着物質が成膜される。成膜の前処理としてマスクと基板とのアライメントが行われ、両者が重ね合わされる。特許文献1には、静電チャック等の吸着板に基板を吸着させた状態で、基板とマスクとを接近させてアライメントを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、複数の基板に蒸着を行った結果、マスクが汚損したためマスクを交換する場合があるが、マスクごとの厚みの個体差に起因して、厚みの異なるマスクに交換される場合がある。このため、マスクと基板とのアライメントを行う際に、マスクの厚みに個体差があってもマスクと基板とが接触しないようにマスクと基板との距離を大きくとる必要があり、基板とマスクとのアライメントの精度が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、基板とマスクとのアライメントの精度の低下を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板を吸着する吸着板と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクが載置されるマスク台と、
前記吸着板に吸着された前記基板と前記マスク台に載置された前記マスクとの、前記基板の被成膜面に沿った平面における相対位置を調整することでアライメントを行うアライメント手段と、
前記吸着板を前記マスク台に対して前記平面と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記マスク台に載置された前記マスクの前記交差方向における位置を検知する検知手段と、
を備え、
前記検知手段は、前記吸着板が基板を吸着していない状態で、前記交差方向における前記マスクの位置を検知することを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板とマスクとのアライメントの精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図7】吸着板を用いた基板とマスクとの重ね合わせのプロセスの説明図。
【
図8】(A)~(C)は吸着板15とマスク台5との間の相対的な傾きの説明図。
【
図12】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【
図13】(A)はマスクが設置されていない状態の真空チャンバ、(B)はマスクの交換前の真空チャンバ、(C)~(D)はマスクの交換後の真空チャンバを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ラインの構成の一部を示す模式図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられるもので、基板100が成膜ブロック301に順次搬送され、基板100に有機ELの成膜が行われる。
【0011】
成膜ブロック301には、平面視で八角形の形状を有する搬送室302の周囲に、基板100に対する成膜処理が行われる複数の成膜室303a~303dと、使用前後のマスクが収納されるマスク格納室305とが配置されている。搬送室302には、基板100を搬送する搬送ロボット302aが配置されている。搬送ロボット302aは、基板100を保持するハンドと、ハンドを水平方向に移動する多関節アームとを含む。換言すれば、成膜ブロック301は、搬送ロボット302aの周囲を取り囲むように複数の成膜室303a~303dが配置されたクラスタ型の成膜ユニットである。なお、成膜室303a~303dを総称する場合、或いは、区別しない場合は成膜室303と表記する。
【0012】
基板100の搬送方向(矢印方向)で、成膜ブロック301の上流側、下流側には、それぞれ、バッファ室306、旋回室307、受渡室308が配置されている。製造過程において、各室は真空状態に維持される。なお、
図1においては成膜ブロック301を1つしか図示していないが、本実施形態に係る製造ラインは複数の成膜ブロック301を有しており、複数の成膜ブロック301が、バッファ室306、旋回室307、受渡室308で構成される連結装置で連結された構成を有する。なお、連結装置の構成はこれに限定はされず、例えばバッファ室306又は受渡室308のみで構成されていてもよい。
【0013】
搬送ロボット302aは、上流側の受渡室308から搬送室302への基板100の搬入、成膜室303間での基板100の搬送、マスク格納室305と成膜室303との間でのマスクの搬送、及び、搬送室302から下流側のバッファ室306への基板100の搬出、を行う。
【0014】
バッファ室306は、製造ラインの稼働状況に応じて基板100を一時的に格納するための室である。バッファ室306には、カセットとも呼ばれる基板収納棚と、昇降機構とが設けられる。基板収納棚は、複数枚の基板100を基板100の被処理面(被成膜面)が重力方向下方を向く水平状態を保ったまま収納可能な多段構造を有する。昇降機構は、基板100が搬入又は搬出される段を搬送位置に合わせるために、基板収納棚を昇降させる。これにより、バッファ室306には複数の基板100を一時的に収容し、滞留させることができる。
【0015】
旋回室307は基板100の向きを変更する装置を備えている。本実施形態では、旋回室307は、旋回室307に設けられた搬送ロボットによって基板100の向きを180度回転させる。旋回室307に設けられた搬送ロボットが、バッファ室306で受け取った基板100を支持した状態で180度旋回し受渡室308に引き渡すことで、バッファ室306内と受渡室308とで基板の前端と後端が入れ替わる。これにより、成膜室303に基板100を搬入する際の向きが、各成膜ブロック301で同じ向きになるため、基板100に対する成膜のスキャン方向やマスクの向きを各成膜ブロック301において一致させることができる。このような構成とすることで、各成膜ブロック301においてマスク格納室305にマスクを設置する向きを揃えることができ、マスクの管理が簡易化されユーザビリティを高めることができる。
【0016】
製造ラインの制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置300と、各構成を制御する制御装置14a~14d、309、310とを含み、これらは有線又は無線の通信回線300aを介して通信可能である。制御装置14a~14dは、成膜室303a~303dに対応して設けられ、後述する成膜装置1を制御する。なお、制御装置14a~14dを総称する場合、或いは、区別しない場合は制御装置14と表記する。
【0017】
制御装置309は搬送ロボット302aを制御する。制御装置310は旋回室307の装置を制御する。上位装置300は、基板100に関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置14、309、310に送信し、各制御装置14、309、310は受信した指示に基づき各構成を制御する。
【0018】
<成膜装置の概要>
図2は一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜室303に設けられる成膜装置1は、基板100に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク101を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1で成膜が行われる基板100の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板100に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。
【0019】
成膜装置1は、内部を真空に保持可能な箱型の真空チャンバ3(単にチャンバとも呼ぶ)を有する。真空チャンバ3の内部空間3aは、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ3は不図示の真空ポンプに接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。真空チャンバ3の内部空間3aには、基板100を水平姿勢で支持する基板支持ユニット6、マスク101を支持するマスク台5、成膜ユニット4、プレートユニット9、吸着板15が配置される。マスク101は、基板100上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、マスク台5の上に載置されている。なお、マスク台5は、マスク101を所定の位置に固定する他の形態の手段に置換可能である。マスク101としては、枠状のマスクフレームに数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔が溶接固定された構造を有するマスクを用いることができる。マスク101の材質は特に限定はされないが、インバー材などの熱膨張係数の小さい金属を用いることが好ましい。成膜処理は、基板100がマスク101の上に載置され、基板100とマスク101とが互いに重ね合わされた状態で行われる。
【0020】
プレートユニット9は、冷却プレート10と磁石プレート11とを備える。冷却プレート10は磁石プレート11の下に、磁石プレート11に対してZ方向に変位可能に吊り下げられている。冷却プレート10は、成膜時に後述する吸着板15と接触することにより、成膜時に吸着板15に吸着された基板100を冷却する機能を有する。冷却プレート10は水冷機構等を備えて積極的に基板100を冷却するものに限定はされず、水冷機構等は設けられていないものの吸着板15と接触することによって基板100の熱を奪うような板状部材であってもよい。磁石プレート11は、磁力によってマスク101を引き寄せるプレートであり、基板100の上面に載置されて、成膜時に基板100とマスク101の密着性を向上する。
【0021】
なお、冷却プレート10と磁石プレート11は適宜省略されてもよい。例えば、吸着板15に冷却機構が設けられている場合、冷却プレート10はなくてもよい。また、吸着板15がマスク101を吸着する場合、磁石プレート11はなくてもよい。
【0022】
成膜ユニット4は、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成され、蒸着物質を基板100に蒸着する蒸着源である。より具体的には、本実施形態では、成膜ユニット4は複数のノズル(不図示)がX方向に並んで配置され、それぞれのノズルから蒸着材料が放出されるリニア蒸発源である。例えば、リニア蒸発源は、蒸発源移動機構(不図示)によってY方向(装置の奥行き方向)に往復移動される。本実施形態では、成膜ユニット4が後述するアライメント装置2と同一の真空チャンバ3に設けられている。しかしながら、アライメントが行われる真空チャンバ3とは別のチャンバで成膜処理を行う実施形態では、成膜ユニット4は真空チャンバ3には配置されない。
【0023】
<アライメント装置>
成膜装置1は、基板100とマスク101とのアライメントを行うアライメント装置2を備える。アライメント装置2は、基板支持ユニット6、吸着板15、位置調整ユニット20、距離調整ユニット22、プレートユニット昇降ユニット13、計測ユニット7、8、調整ユニット17、フローティング部19、検出ユニット16を備える。以下、アライメント装置の各構成について説明する。
【0024】
(基板支持ユニット)
アライメント装置2は、基板100の周縁部を支持する基板支持ユニット6を備える。
図2に加えて
図3を参照して説明する。
図3は基板支持ユニット6及び吸着板15の説明図であり、これらを下側から見た図である。
【0025】
基板支持ユニット6は、その外枠を構成する複数のベース部61a~61dと、ベース部61a~61dから内側へ突出した複数の載置部62及び63を備える。なお、載置部62及び63は「受け爪」又は「フィンガ」とも呼ばれることがある。ベース部61a~61dは、それぞれ支持軸R3により支持されている。複数の載置部62は基板100の周縁部の長辺側を受けるようにベース部61a~61dに間隔を置いて配置される。また、複数の載置部63は、基板100の周縁部の短辺側を受けるようにベース部61a~61dに間隔を置いて配置されている。搬送ロボット302aにより成膜装置1に搬入された基板100は、複数の載置部62及び63によって支持される。以下、ベース部61a~61dを総称する場合、或いは、区別しない場合はベース部61と表記する。
【0026】
本実施形態では、複数の載置部62及び63は板バネで構成されており、複数の載置部62及び63により支持されている基板100を吸着板15に吸着させる際には、板バネの弾性力により基板100を吸着板15に対して押し付けることができる。
【0027】
なお、
図3の例では4つのベース部61により部分的に切り欠きがある矩形の枠体が構成されているが、これには限定されず、ベース部61は矩形状の基板100の外周を取り囲むような切れ目のない矩形枠体であってもよい。ただし、複数のベース部61により切り欠きが設けられることで、搬送ロボット302aが載置部62及び63へと基板100を受け渡す際に、搬送ロボット302aがベース部61を避けて退避することができる。これにより、基板100の搬送及び受け渡しの効率を向上させることができる。
【0028】
なお、基板支持ユニット6には、複数の載置部62及び63に対応して複数のクランプ部が設けられ、載置部62及び63に載置された基板100の周縁部をクランプ部により挟んで保持する態様が採用されてもよい。
【0029】
(吸着板)
引き続き
図2及び3を参照する。アライメント装置2は、真空チャンバ3の内部に設けられ、基板100を吸着可能な吸着板15を備える。本実施形態では、吸着板15は、基板支持ユニット6とプレートユニット9との間に設けられ、1つまたは複数の支持軸R1により支持されている。本実施形態では、吸着板15は、4つの支持軸R1により支持されている。一実施形態において、支持軸R1は円柱形状のシャフトである。
【0030】
また、本実施形態では、吸着板15は、基板100を静電気力によって吸着する静電チャックである。例えば、吸着板15は、セラミックス材質のマトリックス(基体とも呼ばれる)の内部に金属電極などの電気回路が埋め込まれた構造を有する。例えば、電極配置領域151に配置された金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)電圧が印加されると、セラミックスマトリックスを通じて基板100に分極電荷が誘導され、基板100と吸着板15との間の静電気的な引力(静電気力)により、基板100が吸着板15の吸着面150に吸着固定される。
【0031】
なお、電極配置領域151は適宜設定可能である。例えば、本実施形態では複数の電極配置領域151が互いに離間して設けられているが、1つの電極配置領域151が吸着板15の吸着面150の略全面に渡って形成されてもよい。
【0032】
また、吸着板15には、吸着板15と基板100との接触を検出する複数のタッチセンサ1621が埋設されている。本実施形態では、合計9つのタッチセンサ1621が設けられている。吸着板15の周縁部では、両長辺に沿ってそれぞれ4つずつが設けられ、吸着板15の中央部に1つが設けられている。このように、吸着板15の複数箇所にタッチセンサ1621が設けられることにより、基板100の全面が吸着面150に吸着されたことを確認することができる。なお、タッチセンサ1621の数や配置は適宜変更可能である。
【0033】
また、本実施形態では、タッチセンサ1621は、自身と対象との接触をメカニカルに検出する。一例として、タッチセンサ1621は、その先端部がバネ等に付勢され、先端部が基板100等と接触していない状態では先端部が吸着面150から突出するように設けられる。そして、基板100がタッチセンサ1621の先端部に接触すると、先端部が基板100に押されて吸着板15側へと引っ込み、内部の接点と接触することで所定の電気信号が出力されるように構成される。なお、先端部の形状は特に限定されず、ボタン形状やロッド形状であり得る。対象と接触していない状態の先端部が吸着面150から突出する長さを適当に設定することにより、タッチセンサ1621は実質的に吸着板15と基板100との接触を検出することができる。また、複数のタッチセンサ1621は、後述するように、吸着板15及びマスク台5の間の平行度を検出する検出ユニット16を構成する(<検出ユニット>参照)。
【0034】
また、本実施形態では、吸着板15には、基板100の吸着板15への吸着状態を確認するファイバセンサ1622が設けられる。ファイバセンサ1622は、発光部1622a及び受光部1622bを含む。発光部1622a及び受光部1622bは、吸着板15の下方、例えば吸着板15の数mm~数十mm下方に光路1622cを形成するように設けられる。基板100の一部が吸着板15に吸着されていない場合、重力によって当該一部が下方に撓む。吸着板15への基板100の吸着処理を行った後で基板100に撓みが発生している場合には、その撓みの部分が光路1622cを遮ることにより、基板100の撓みが検出される。すなわち、基板100の吸着が適切に行われていないことを検出することができる。なお、ファイバセンサ1622は省略されてもよい。
【0035】
また、吸着板15には複数の開口152が形成されており、後述する計測ユニット(第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8)が複数の開口152を介して後述するマスクマークを撮像する。
【0036】
図4を併せて参照する。
図4は、吸着板15から支持軸R1に至る構造を模式的に示している。また、
図4は、吸着板の電気配線の説明図であり、吸着板15の電極配置領域151に配置される電極へ電気を供給するための配線が示されている。本実施形態の場合、吸着板15を支持する複数の支持軸R1が中空の筒状に形成されている。そして、プラス(+)及びマイナス(-)電圧を印加するための電線153がその内部を通過するように配線されている。
図4の例では、プラス(+)及びマイナス(-)電圧を印加するための電線153がそれぞれ1本ずつ、計2本示されている。また、支持軸R1の下部から真空チャンバ3に延出した電線153は、吸着板15の短辺に沿って延び、短辺の略中央に設けられた電気接続部154に接続する。つまり、電線153は、支持軸R1を介して真空チャンバ3の外部から内部へと導かれ、電気接続部154と接続する。また、電線153から電気接続部154へと供給された電力が、電極配置領域151に配置された各電極へと供給される。
【0037】
また、本実施形態では、4本の支持軸R1が設けられており、これらの支持軸R1を通って、各種の電線(ケーブル)が真空チャンバ3の内部へと導かれる。一実施形態において、対角に設けられた2本の支持軸R1の内側を、吸着板15へと電気を供給する電線153がそれぞれ通過し、残りの2本の支持軸R1の内側を、タッチセンサ1621や後述するファイバセンサ1622等のケーブルが束ねられた状態で通過する。
【0038】
(位置調整ユニット)
アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100、あるいは、吸着板15によって吸着された基板100と、マスク101との相対位置を調整する位置調整ユニット20を備える。位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6または吸着板15をX-Y平面上で変位することにより、マスク101に対する基板100の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット20は、マスク101と基板100の水平位置を調整するユニットであるとも言える。例えば、位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向に変位することができる。本実施形態では、マスク101の位置を固定し、基板100を変位してこれらの相対位置を調整するが、マスク101を変位させて調整してもよく、或いは、基板100とマスク101の双方を変位させてもよい。基板100またはマスク101の変位するX-Y平面は、基板100の被成膜面(
図2において基板100の下を向く面)に沿った平面の一例である。基板100は自重によって撓むことがあるため、基板100の被成膜面がX-Y平面と平行ではないことがある。その場合でも、被成膜面に沿った平面として、位置調整ユニット20による調整が行われる平面が適宜設定される。また、平面における相対位置の調整や、水平位置の調整とは、ある平面に基板100とマスク101とを射影したときに、各射影の当該平面での位置を調整することを意味し、同一平面に基板100とマスク101とが配置されることを意味するものではない。
【0039】
本実施形態では、位置調整ユニット20は、固定プレート20aと、可動プレート20bと、これらのプレートの間に配置された複数のアクチュエータ201とを備える。固定プレート20aは真空チャンバ3の上壁部30上に固定されている。また、可動プレート20b上にはフレーム状の架台21が搭載されており、架台21には距離調整ユニット22及びプレートユニット昇降ユニット13が支持されている。アクチュエータ201により可動プレート20bを固定プレート20aに対して水平方向に変位すると、架台21、距離調整ユニット22及びプレートユニット昇降ユニット13が一体的に変位する。
【0040】
複数のアクチュエータ201は、例えば、可動プレート20bをX方向に変位可能なアクチュエータ及び可動プレート20bをY方向に変位可能なアクチュエータ等を含み、これらの移動量を制御することにより、可動プレート20bをX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向に変位することができる。例えば、複数のアクチュエータ201は、駆動源であるモータと、モータの駆動力を直線運動に変換するボールねじ機構等の機構を含み得る。
【0041】
(距離調整ユニット)
距離調整ユニット22は、吸着板15及び基板支持ユニット6を昇降することで、それらとマスク台5との距離を調整し、基板100とマスク101とを基板100の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット22は、基板100とマスク101とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする。なお、距離調整ユニット22によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニットは、マスク101と基板100の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。Z方向は、基板100の被成膜面に沿った平面(本実施形態ではX-Y平面)に交差する交差方向の一例である。被成膜面に沿った平面がX-Y平面である場合、Z方向の成分を含んでいれば、吸着板15の移動する方向はX-Y平面に垂直でなくてもよい。すなわち、距離調整ユニット22は、基板100の被成膜面に沿った平面に交差する任意の交差方向に、吸着板15を昇降する。
【0042】
図2に示すように、距離調整ユニット22は第1昇降プレート220を備える。架台21の側部にはZ方向に延びるガイドレール21aが形成されており、第1昇降プレート220はガイドレール21aに沿ってZ方向(上下方向)に昇降自在である。
【0043】
第1昇降プレート220は、複数の支持軸R1を介して吸着板15を支持している。第1昇降プレート220が昇降するとそれに伴って吸着板15が昇降する。換言すれば、第1昇降プレート220は吸着板15を支持する複数の支持軸R1を支持しており、第1昇降プレート220の昇降により複数の支持軸R1が同期して昇降し、吸着板15がその平行度を保った状態で昇降する。また、第1昇降プレート220は、複数のアクチュエータ65及び複数の支持軸R3を介して基板支持ユニット6を支持している。第1昇降プレート220が昇降するとそれに伴って基板支持ユニット6が昇降する。また、複数のアクチュエータ65は、接続する複数の支持軸R3を鉛直方向に移動可能である。基板支持ユニット6は複数のアクチュエータ65により吸着板15に対して鉛直方向に相対的に移動する。複数のアクチュエータ65は、例えばモータとボールねじ機構等により、支持軸R3を鉛直方向に移動可能に構成されてもよい。
【0044】
第1昇降プレート220の昇降についてより具体的に説明する。距離調整ユニット22は、架台21に支持され、第1昇降プレート220を昇降するアクチュエータとしての駆動ユニット221を備えている。駆動ユニット221は、駆動源であるモータ221aの駆動力を第1昇降プレート220に伝達する機構である。駆動ユニット221の伝達機構として、本実施形態では、ボールねじ軸221bとボールナット221cとを有するボールねじ機構が採用されている。ボールねじ軸221bはZ方向に延設され、モータ221aの駆動力によりZ方向の軸周りに回転する。ボールナット221cは第1昇降プレート220に固定されており、ボールねじ軸221bと噛み合っている。ボールねじ軸221bの回転とその回転方向の切り替えによって、第1昇降プレート220をZ方向に昇降することができる。第1昇降プレート220の昇降量は、例えば、各モータ221aの回転量を検知するロータリエンコーダ等のセンサの検知結果から制御することができる。これにより、基板100を吸着して支持している吸着板15のZ方向における位置を制御し、基板100とマスク101との接触、離隔を制御することができる。また、第1昇降プレート220の上部には、後述する調整ユニット17が設けられている。
【0045】
なお、本実施形態の距離調整ユニットは、マスク台5の位置を固定し、基板支持ユニット6及び吸着板15を移動してこれらのZ方向の距離を調整するが、これに限定はされない。基板支持ユニット6または吸着板15の位置を固定し、マスク台5を移動させて調整してもよく、或いは、基板支持ユニット6、吸着板15、及びマスク台5のそれぞれを移動させて互いの距離を調整してもよい。
【0046】
(プレートユニット昇降ユニット)
プレートユニット昇降ユニット13は、真空チャンバ3の外部に配置された第2昇降プレート12を昇降させることで、第2昇降プレート12に連結され、真空チャンバ3の内部に配置されたプレートユニット9を昇降する。プレートユニット9は1つまたは複数の支持軸R2を介して第2昇降プレート12と連結されている。本実施形態では、プレートユニット9は2つの支持軸R2により支持されている。支持軸R2は、磁石プレート11から上方に延設されており上壁部30の開口部、固定プレート20a及び可動プレート20bの各開口部、及び、第1昇降プレート220の開口部を通過して第2昇降プレート12に連結されている。
【0047】
第2昇降プレート12は案内軸12aに沿ってZ方向に昇降自在である。プレートユニット昇降ユニット13は、架台21に支持され、第2昇降プレート12を昇降する駆動機構を備えている。プレートユニット昇降ユニット13の備える駆動機構は、駆動源であるモータ13aの駆動力を第2昇降プレート12に伝達する機構である。プレートユニット昇降ユニット13の伝達機構として、本実施形態では、ボールねじ軸13bとボールナット13cとを有するボールねじ機構が採用されている。ボールねじ軸13bはZ方向に延設され、モータ13aの駆動力によりZ方向の軸周りに回転する。ボールナット13cは第2昇降プレート12に固定されており、ボールねじ軸13bと噛み合っている。ボールねじ軸13bの回転とその回転方向の切り替えによって、第2昇降プレート12をZ方向に昇降することができる。第2昇降プレート12の昇降量は、例えば、各モータ13aの回転量を検知するロータリエンコーダ等のセンサの検知結果から制御することができる。これにより、プレートユニット9のZ方向における位置を制御し、プレートユニット9と基板100との接触、離隔を制御することができる。
【0048】
前述した各支持軸R1~R3が通過する真空チャンバ3の上壁部30の開口部は、各支持軸R1~R3がX方向及びY方向に変位可能な大きさを有している。真空チャンバ3の気密性を維持するため、各支持軸R1~R3が通過する上壁部30の開口部にはベローズ等が設けられる。例えば、第1昇降プレート220を支持する支持軸R1は、ベローズ31(
図4等参照)で覆われる。
【0049】
(計測ユニット)
アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100とマスク101の位置ずれを計測する計測ユニット(第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8)を備える。
図2に加えて
図5を参照して説明する。
図5は第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8の説明図であり、基板100とマスク101の位置ずれの計測態様を示している。本実施形態の第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8はいずれも画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8は、上壁部30の上方に配置され、上壁部30に形成された窓部(不図示)を介して真空チャンバ3内の画像を撮像可能である。
【0050】
基板100には基板ラフアライメントマーク100a及び基板ファインアライメントマーク100bが形成されており、マスク101にはマスクラフアライメントマーク101a及びマスクファインマーク101bが形成されている。以下、基板ラフアライメントマーク100aを基板ラフマーク100aと呼び、基板ファインアライメントマーク100bを基板ファインマーク100bと呼び、両者をまとめて基板マークと呼ぶことがある。また、マスクラフアライメントマーク101aをマスクラフマーク101aと呼び、マスクファインアライメントマーク101bをマスクファインマーク101bと呼び、両者をまとめてマスクマークと呼ぶことがある。
【0051】
基板ラフマーク100aは、基板100の短辺中央部に形成されている。基板ファインマーク100bは、基板100の四隅に形成されている。マスクラフマーク101aは、基板ラフマーク100aに対応してマスク101の短辺中央部に形成されている。また、マスクファインマーク101bは基板ファインマーク100bに対応してマスク101の四隅に形成されている。
【0052】
第2計測ユニット8は、対応する基板ファインマーク100bとマスクファインマーク101bの各組(本実施形態では4組)を撮像するように4つ設けられている(第2計測ユニット8a~8d)。第2計測ユニット8は、相対的に視野が狭いが高い解像度(例えば数μmのオーダ)を有する高倍率CCDカメラ(ファインカメラ)であり、基板100とマスク101との位置ずれを高精度で計測する。第1計測ユニット7は、1つ設けられており、対応する基板ラフマーク100aとマスクラフマーク101aの各組(本実施形態では2組)を撮像する。
【0053】
第1計測ユニット7は、相対的に視野が広いが低い解像度を有する低倍率CCDカメラ(ラフカメラ)であり、基板100とマスク101との大まかな位置ずれを計測する。
図5の例では2組の基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの組を1つの第1計測ユニット7でまとめて撮像する構成を示したが、これに限定はされない。第2計測ユニット8と同様に、基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの各組をそれぞれ撮影するように、それぞれの組に対応する位置に第1計測ユニット7を2つ設けてもよい。
【0054】
本実施形態では、第1計測ユニット7の計測結果に基づいて基板100とマスク101との大まかな位置調整を行った後、第2計測ユニット8の計測結果に基づいて基板100とマスク101との精密な位置調整を行う。
【0055】
(調整ユニット)
アライメント装置2は、調整ユニット17を備える。
図6は、調整ユニット17(調整装置)の説明図である。調整ユニット17は、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを調整するユニットである。本実施形態では、調整ユニット17は、吸着板15を動かすことにより、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを調整する。さらに言えば、複数の支持軸R1のうち少なくとも一部の支持軸R1の軸方向の位置を調整することにより、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを調整する。
【0056】
調整ユニット17は、作業者により操作される複数の操作部171を有する。本実施形態では、複数の操作部171が、複数の支持軸R1のそれぞれに対応して設けられる。そして、操作部171が操作されると、対応する支持軸R1が他の支持軸R1と独立にその軸方向である鉛直方向に移動する。すなわち、複数の操作部171はそれぞれ、対応する支持軸R1が吸着板15を支持する鉛直方向の位置を独立に調整することができる。このため、作業者が操作部171を操作することで吸着板15とマスク台5との相対的な傾きが調整される。調整の自由度を上げるためには、複数の支持軸R1のそれぞれに操作部171が設けられることが好ましいが、少なくとも1つの支持軸R1に操作部171が設けられれば吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを一定の範囲で調整することができる。
【0057】
本実施形態では、操作部171は、支持軸R1をその軸方向である鉛直方向に移動させる調整ナットである。調整ナットと支持軸R1に形成されたネジ山172が噛み合うように設けられており、作業者により調整ナットが回されると、支持軸R1が移動する。
【0058】
また、本実施形態では、操作部171は、真空チャンバ3の外部に設けられる。具体的には、支持軸R1がスライドブッシュ173を介して第1昇降プレート220に支持されており、スライドブッシュ173の上側に操作部171が設けられている。操作部171が真空チャンバ3の外部に設けられることにより、真空チャンバ3の内部が真空に保持されている状態で、作業者が調整ユニット17による調整を行うことができる。
【0059】
また、支持軸R1と吸着板15との間には、支持軸R1に対する吸着板15の角度を可変に支持軸R1及び吸着板15を接続する屈曲部18が設けられている。本実施形態では、屈曲部18は球面軸受であり、球状部181と、球状部181を摺動可能に受ける軸受部182とを含む。
【0060】
本実施形態では、複数の支持軸R1は鉛直方向(軸方向)にのみ移動可能に構成されている。そのため、
図6の左側に示す状態ST1のように吸着板15が水平に保たれている状態と、
図6の右側に示す状態ST2のように吸着板15が傾いている状態とでは、支持軸R1に対する吸着板15のなす角度が異なる。本実施形態では、屈曲部18で支持軸R1に対して吸着板15が屈曲することにより、吸着板15が傾いた状態でも支持軸R1が吸着板15を支持することができる。なお、屈曲部18は、ユニバーサルジョイント等、2つの部材をその接続角度を変更可能に接続する構造を適宜設定可能である。
【0061】
ここで、調整ユニット17の構成を距離調整ユニット22と比較して説明する。距離調整ユニット22の第1昇降プレート220が昇降する場合、第1昇降プレート220に支持されている複数の支持軸R1を全て同じ量だけ昇降する、つまり、複数の支持軸R1を同期して昇降する。そのため、吸着板15のマスク台5に対する平行度ないしは相対的な傾きが保たれた状態で吸着板15が昇降する。一方、調整ユニット17は、複数の支持軸R1のいずれかを、他の支持軸R1と独立に第1昇降プレート220に対して鉛直方向(軸方向)に移動させることができる。例えば、調整ユニット17は、3つの支持軸R1の位置を変更せずに、残りの1つの支持軸R1の軸方向の位置を調整することができる。これにより、調整ユニット17は複数の支持軸R1によって支持される吸着板15の傾きを調整することができる。
【0062】
(フローティング部)
アライメント装置2は、フローティング部19を備える。フローティング部19は、屈曲部18と吸着板15との間に設けられている。フローティング部19は、弾性部材191と、ブッシュ192と、軸部材193と、吸着板支持部194と、フランジ195とを含む。軸部材193は、屈曲部18から下方に延びて設けられる。ブッシュ192は、軸部材193と吸着板支持部194との間に介在するように設けられ、これらの間の摩擦を軽減したり、ガタツキを低減したりする。例えば、ブッシュ192は滑り性のよい金属焼結材等により形成される。吸着板支持部194は、吸着板15を支持する。弾性部材191は、吸着板支持部194と、軸部材193に設けられたフランジ195との間に設けられ、吸着板15の荷重を受けるように構成される。すなわち、フローティング部19は屈曲部18を介して支持軸R1に接続され、フローティング部19の弾性部材191が吸着板15を支持している。このように、支持軸R1がフローティング部19の弾性部材191を介して吸着板15を支持することにより、吸着板15がマスク101に接触する際にマスク101に加えられる荷重を軽減するともに、吸着板15とマスク101とが接触した際の吸着板15の逃げを確保することができる。
【0063】
(検出ユニット)
アライメント装置2は、検出ユニット16を備える。再び
図2及び
図3を参照する。検出ユニット16は、吸着板15及びマスク台5の間の平行度を検出する。平行度は、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きの程度を示す度合いである。本実施形態では、検出ユニット16は、吸着板15の側に設けられている、前述した複数のタッチセンサ1621を含んで構成される。複数のタッチセンサ1621は、先端部の吸着面150から突出する長さが互いに略等しくなるように、吸着板15に取り付けられる。タッチセンサ1621が吸着板15に取り付けられることで、大気圧によって真空チャンバ3が変形しても、吸着板15とタッチセンサ1621との相対位置に生じる変化を小さくすることができる。すなわち、真空状態となっても、タッチセンサ1621の先端部の突出長さはほとんど変化せず、互いに略等しいままに維持される。したがって、吸着板15が移動したときに、複数のタッチセンサ1621の全部がほぼ同時に反応すれば、平行度が高い、換言すると、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きが小さいと判断することができる。先端部の吸着面150から突出する長さを適当に変えることで、平行ではない所定の傾きを目標値として設定することもできる。検出ユニット16を用いた吸着板15の平行度の検出動作については後述する。また、本実施形態では、タッチセンサ1621が、吸着板15と基板100との接触の検出、及び、吸着板15及びマスク台5の間の平行度を検出の両方を実行する。これにより、これらを検出するセンサを別々に設ける場合と比べてセンサの数を削減することができる。
【0064】
<制御装置>
制御装置14は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置14は、処理部141、記憶部142、入出力インタフェース(I/O)143、通信部144、表示部145及び入力部146を備える。処理部141は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部142に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部142は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部141が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O143は、処理部141と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部144は通信回線300aを介して上位装置300又は他の制御装置14、309、310等と通信を行う通信デバイスであり、処理部141は通信部144を介して上位装置300から情報を受信し、或いは、上位装置300へ情報を送信する。表示部145は、例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示する。入力部146は、例えばキーボードやポインティングデバイスであり、ユーザからの各種入力を受け付ける。なお、制御装置14、309、310や上位装置300の全部又は一部がPLCやASIC、FPGAで構成されてもよい。
【0065】
<基板とマスクの重ね合わせのプロセス>
図7は、吸着板15を用いた基板100とマスク101との重ね合わせのプロセスの説明図である。
図7は、プロセスの各状態を示している。
【0066】
状態ST100は、搬送ロボット302aにより成膜装置1内に基板100が搬入され、搬送ロボット302aが退避した後の状態である。このとき、基板100は基板支持ユニット6により支持されている。
【0067】
状態ST101は、吸着板15による基板100の吸着の準備段階として、基板支持ユニット6が上昇した状態である。基板支持ユニット6は、状態ST100から、アクチュエータ65により吸着板15に接近するように上昇する。状態ST101では、基板支持ユニット6によって支持されている基板100の周縁部は、吸着板15に接触しているか、或いは、わずかに離間した位置にある。一方、基板100の中央部は、自重により撓んでいるため、周縁部と比較して吸着板15から離間した位置にある。
【0068】
状態ST102は、吸着板15により基板100が吸着された状態である。吸着板15の電極配置領域151に配置された電極に電圧が印加されることにより、静電気力によって基板100が吸着板15に吸着される。
【0069】
状態ST103は、吸着板15に基板100が正常に吸着されているか否かを確認する際の状態である。基板支持ユニット6が降下し基板100から離れた状態で、基板100が吸着板15に吸着されているか否かがタッチセンサ1621の検出値に基づいて確認される。例えば、制御装置14は、吸着板15に埋設されている全てのタッチセンサ1621が基板100との接触を検出している場合に、基板100が吸着板15に正常に吸着されていると判断する。また、ファイバセンサ1622が設けられている場合は、ファイバセンサ1622からの出力に基づいて、基板100の吸着が正常に行われているかの判断を行ってもよい。
【0070】
状態ST104は、基板100とマスク101とのアライメント動作中の状態である。制御装置14は、距離調整ユニット22により吸着板15を降下させて基板100とマスク101とを接近させた状態で、位置調整ユニット20によりアライメント動作を実行する。
【0071】
状態ST105は、磁石プレート11により基板100とマスク101とをより密着させた状態である。制御装置14は、アライメント動作の終了後、プレートユニット昇降ユニット13によりプレートユニット9を降下させる。磁石プレート11が基板100マスク101に接近することにより、マスク101が基板100側に引き寄せられ、基板100とマスク101の密着性が向上する。
【0072】
以上説明した動作により、基板100及びマスク101の重ね合わせのプロセスが終了する。例えば、本プロセスの終了後、成膜ユニット4による蒸着処理が実行される。
【0073】
ところで、上記で説明したプロセスの中で基板100とマスク101とのアライメントを行うにあたっては、吸着板15とマスク台5との間の傾きがアライメントの精度に影響を及ぼすことがある。基板100とマスク101との距離を近づけてアライメントを行うことで、アライメントの精度を高めることができる。しかし、吸着板15とマスク台5との間に相対的な傾きがあると、基板100の一部がマスク101に接触する可能性があり、それによって基板100に傷等が生じるおそれが生じる。基板100の保護のために基板100とマスク101との距離を大きくする分だけ、アライメントの精度が低下しうる。そこで、一般に、真空チャンバ3の内部空間3aが大気圧の環境下で吸着板15とマスク台5との平行調整が行われることがある。大気圧環境下での平行調整は、例えば、基板支持ユニット6の連結部分にシムを挿入する等により行われる。
【0074】
図8(A)~
図8(C)は、吸着板15とマスク台5との間の相対的な傾きの説明図である。
図8(A)は、内部空間3aが大気圧の状態で傾き調整を行った後の状態を示している。
図8(A)で示す状態では、吸着板15とマスク台5とが略平行に保たれている。一方、
図8(B)は、
図8(A)で示す状態から内部空間3aの空気を排気して真空にした状態を示している。大気圧環境で吸着板15とマスク台5とを平行に調整しても、内部空間3aを真空にした際に真空チャンバ3の内外の圧力差により真空チャンバ3に歪等が生じ、吸着板15とマスク台5との間に傾きが発生してしまう場合がある。しかし、真空チャンバ3の内部空間3aが真空の場合、前述したような大気圧環境下での平行調整と同様の調整ができない場合がある。そこで、本実施形態では、真空チャンバ3の内部空間3aが真空の状態で吸着板15とマスク台5との間の傾きの調整を行うことにより、アライメント精度の低下を抑制している。
【0075】
<調整動作の説明>
図9は、処理部141の制御処理例を示すフローチャートであり、調整ユニット17による傾きの調整動作を行う際の処理を示している。例えば、本フローチャートは、大気圧環境下にあった真空チャンバ3の内部空間3aの空気が不図示の真空ポンプ等により排気され、内部空間3aが真空状態となった場合に実行される。また例えば、本フローチャートは、内部空間3aが真空状態となっている間、所定の周期で実行される。また例えば、本フローチャートは、マスク台5にマスク101が載置されておらず、吸着板15に基板100が吸着されておらず、基板支持ユニット6に基板100が支持されていない状態で実行される。
【0076】
ステップS1(以下、単にS1と表記する。他のステップについても同様とする。)で、処理部141は、吸着板15とマスク台5との間の平行度検出処理を実行する。本実施形態では、処理部141は、平行度検出処理において、吸着板15とマスク台5との間の平行度を検出し、検出した平行度が許容範囲内にあるか否かを判定する処理を行う。なお、本処理の具体例は後述する(
図11参照)。
【0077】
S2で、処理部141は、S1の処理結果に基づき、平行度が許容範囲内であればフローチャートを終了し、平行度が許容範囲内でなければS3に進む。例えば、
図8(B)で示すような状態の場合、S1において平行度、或いは傾きが許容範囲外であると判定され、S3の処理に進む。
【0078】
S3で、処理部141は、傾き調整を指示する。一実施形態において、処理部141は、表示部145により、作業者が吸着板15とマスク台5の傾きを調整するよう指示する旨の表示を行う。
図10は、表示部145の表示画面145aの例を示す図である。
図10の例では、傾き調整を指示する旨の表示の例として、「支持軸Cの操作部を操作して、支持軸Cを下げて下さい。」との文字列が示されている。処理部141は、この他、操作対象の支持軸R1の操作量、移動方向等の情報を表示してもよい。なお、処理部141は、上位装置300に傾き調整を指示する旨の情報を送信し、情報を受信した上位装置300が不図示の表示部等に調整を指示する旨の表示を行ってもよい。
【0079】
図8(C)は、吸着板15とマスク台5との間の相対的な傾きの説明図であり、真空チャンバ3の内部空間3aが真空の状態で作業者が調整ユニット17による傾き調整を行った後の状態を示す図である。
図8(B)で示す状態と比較すると、
図8(C)で示す状態では、図面の右側の支持軸R1が調整ユニット17により下方に移動している。これにより、吸着板15とマスク台5との間の傾きが低減されている。例えば、作業者は、このような調整ユニット17による作業をS3でなされた指示に基づいて実行する。
【0080】
S4で、処理部141は、調整終了を受け付ける。具体的には、処理部141は、吸着板15とマスク台5との傾き調整を行った作業者による、調整を終了した旨の入力を入力部146により受け付ける。例えば、処理部141は、作業者が
図10に示す「調整終了」ボタン145bをポインティングデバイス等の入力部146で選択した場合に、調整終了を受け付けたと判断してもよい。処理部141は、調整終了を受け付けると、S1に戻る。以上説明した処理により、吸着板15とマスク台5との平行度が許容範囲内に収まるまで、吸着板15とマスク台5との傾き調整が実行される。
【0081】
図11は、
図9の平行度検出処理の具体例を示すフローチャートである。S11で、処理部141は、距離調整ユニット22により吸着板15の下降を開始する。S12で、処理部141は、複数のタッチセンサ1621のうち、いずれかのタッチセンサ1621が接触を検出するか否かを確認し、接触が検出された場合はS13に進み、接触が検出されない場合はS12の判定を繰り返す。すなわち、処理部141は、S11で吸着板15の下降を開始してから、いずれかのタッチセンサ1621が接触を検出するまで吸着板15の下降を継続する。
【0082】
S13で、処理部141は、距離調整ユニット22により、吸着板15を所定量下降させる。つまり、処理部141は、いずれかのタッチセンサ1621が最初に接触を検出した状態から、所定量さらに吸着板15を下降させる。ここでの吸着板15の下降量は目的とする平行度に応じて適宜設定可能である。一実施形態では、例えば吸着板15を5~10mm下降させてもよい。なお、処理部141は、いずれかのタッチセンサ1621が接触を検出した時点で吸着板15を一時停止させ、そこから吸着板15を所定量下降させてもよい。また処理部141は、吸着板15を下降させている状態でいずれかのタッチセンサ1621が接触を検出してからさらに吸着板15が所定量下降した時点で吸着板15を停止してもよい。つまり、S11で開始する吸着板15の下降動作と、S13での吸着板15の下降動作は、連続した動作であってもよいし、それぞれ独立した動作であってもよい。
【0083】
S14で、処理部141は、全てのタッチセンサ1621が接触を検出したか否かを確認し、全てのタッチセンサ1621が接触を検出している場合はS15に進み、少なくとも1つのタッチセンサ1621が接触を検出していない場合はS16に進む。
【0084】
ここで、吸着板15とマスク台5とが平行である、或いはこれらの傾きが比較的小さい場合、吸着板15に設けられた全てのタッチセンサ1621はほぼ同時にマスク台5との接触を検出する。このため、S13で吸着板15を所定量下降させた時点で全てのタッチセンサ1621がマスク台5との接触を検出し得る。
【0085】
一方で、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きが比較的大きい場合、いずれかのタッチセンサ1621がマスク台5との接触を検出した時点でマスク台5との距離が比較的大きいタッチセンサ1621が存在することになる。
図8(B)の例で言えば、図面の左側のタッチセンサ1621がマスク台5に接触した時点で図面の右側のタッチセンサ1621はマスク台5との距離が比較的大きくなっている。このときのタッチセンサ1621とマスク台5との距離がS13における所定量よりも大きい場合には、S13で吸着板15を所定量降下させても、全てのタッチセンサ1621が接触を検出しないことになる。
【0086】
すなわち、いずれかのタッチセンサ1621が接触を検出した高さから、吸着板15を所定量下降させる間に全てのタッチセンサ1621が接触を検出したか否かを確認することにより、吸着板15とマスク台5との傾きが所定値よりも小さいか否かを確認することができる。したがって、ある観点から見れば、S13での吸着板15の下降量は、吸着板15とマスク台5との平行度(或いは傾き)の許容値に基づいて設定され得る。より高い平行度に調整する場合、つまり、平行度の許容範囲が狭い場合は、S13での吸着板15の下降量を小さく設定すればよい。
【0087】
S15で、処理部141は、平行度が許容範囲内であると判定する。一方、S16に進んだ場合、処理部141は、平行度が許容範囲外であると判定する。
【0088】
S17で、処理部141は、吸着板15を所定量上昇させフローチャートを終了する。なお、ここでの所定量は、S13での所定量とは異なる値であり得る。一実施形態において、処理部141は、S11で吸着板15の下降を開始する時点での高さまで吸着板15を上昇させる。
【0089】
以上の処理により、吸着板15とマスク台5との間の平行度が許容範囲内か否かを判定することができる。なお、本実施形態では、処理部141は、S14で全てのタッチセンサ1621が接触を検出したか否かを確認しているが、予め定めた複数のタッチセンサ1621が接触を検出していればS15に進み平行度が許容範囲内であると判定してもよい。例えば、処理部141は、吸着板15の四隅に設けられたタッチセンサ1621が接触を検出していれば、平行度が許容範囲内であると判定してもよい。また、処理部141は、S14で予め定めた個数のタッチセンサ1621が接触を検出していれば、S15に進み平行度が許容範囲内であると判定してもよい。例えば、処理部141は、吸着板15に設けられている9個のタッチセンサ1621のうち、過半数の5個以上のタッチセンサ1621が接触を検出していれば、平行度が許容範囲内であると判定してもよい。
【0090】
<電子デバイスの製造方法>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。この例の場合、
図1に例示した成膜ブロック301が、製造ライン上に、例えば、3か所、設けられる。
【0091】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図12(A)は有機EL表示装置50の全体図、
図12(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0092】
図12(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0093】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0094】
図12(B)は、
図12(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0095】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図12(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0096】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0097】
図12(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0098】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0099】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0100】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0101】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0102】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。なお、本実施形態では、絶縁層59の形成までは大型基板に対して処理が行われ、絶縁層59の形成後に、基板53を分割する分割工程が実行される。
【0103】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室303に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1の電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0104】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室303に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0105】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室303において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室303において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室303において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0106】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室303に移動し、第2の電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室303~第6の成膜室303では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室303における第2の電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2の電極58までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0107】
ここで、第1の成膜室303~第6の成膜室303での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。ここで、各成膜室において行われるアライメント工程は、上述のアライメント工程の通り行われる。
【0108】
<マスクの位置の計測>
ここで、複数の基板100に対して蒸着処理を行う間に、マスク101が交換される場合がある。例えば、異なる種類の基板100に対して蒸着処理を行うために、異なるマスク101を使用することや、蒸着処理によってマスク101が汚損した場合に、マスク101が交換されることがある。マスク101やマスク台5の厚みには個体差があり、交換前後のマスク101またはマスク台5の厚みの違いによってアライメントの精度が低下し得る。基板100とマスク101との距離を近づけてアライメントを行うことで、アライメントの精度を高めることができる。しかし、マスク101やマスク台5の個体差によって、基板100の一部がマスク101に接触する可能性があり、それによって基板100に傷等が生じるおそれが生じる。基板100の保護のために基板100とマスク101との距離を大きくすると、その分だけアライメントの精度が低下し得る。
【0109】
そこで、本実施形態では、マスクの位置に関するパラメータを測定し、測定したパラメータをアライメント処理に用いる処理について説明する。
【0110】
図13(A)は、
図8~11の真空状態における吸着板15とマスク台5との平行度の調整処理を行った場合のマスク台5と吸着板15との位置関係を示す図である。
図13(A)は、タッチセンサ1621がマスク台5に接触している状態を示している。したがって、吸着板15に基板は吸着されていない。処理部141は、タッチセンサ1621が接触している状態での吸着板15の下降量を記憶する。
図13(A)では、具体的に下降量Zが記憶部142に記憶される。下降量は、ある基準から吸着板15のマスク台5の側の面までの距離を示すパラメータである。
図13(A)では、下降量Zは、真空チャンバ3の外側の基準線からの距離として示されている。しかし、下降量の基準は任意に設定される。例えば、吸着板15が上昇できる最大位置としてもよいし、あるいは、吸着板15の可動範囲の所定の位置を基準としてもよい。したがって、下降量は、実際に吸着板15が移動した距離と等しいわけではない。見方を変えると、下降量は、ある基準に対する吸着板15の位置に相当する。
【0111】
下降量Zが測定された後、吸着板15が上昇し、マスク台5に交換前のマスク101aが設置される。
図13(B)は、マスク交換前のマスク台5と吸着板15との位置関係を示す図である。
図13(B)では、マスク台5にマスク101aが載置されている。吸着板15に基板が吸着されていない点は、
図13(A)と同様である。ここで、処理部141は、タッチセンサ1621がマスク101aとの接触を検出するまで吸着板15を下降させる。そして、タッチセンサ1621が接触を検出すると、接触を検出した時の吸着板15の位置を基準点として、例えば吸着板15の下降量Zaを記憶部142に記憶する。そして、下降量ZとZaとから、マスクの厚みがZ-Zaであると特定することができる。換言すると、マスク101aの吸着板15の側の面は、マスク台5から距離Z-Zaだけ吸着板15に近い位置にあることがわかる。
【0112】
その後、
図7に示すように、基板100が基板支持ユニット6に配置され、吸着板15に吸着された基板100と、マスク台5に載置されたマスク101aのアライメント処理が行われる。ここで、マスク101aの吸着板15の側の面のZ方向における位置Za(前述の吸着板15の下降量Zaに相当)が、マスク101aと基板100とのアライメント処理において使用される。Z方向は、基板100の被成膜面に沿った平面に交差する交差方向であり、本実施形態では上下方向である。例えば、基板100の厚みをT、アライメント処理において、マスク101aと基板100とが接触しないように離間する距離をgapとして、位置Za-T-gapに基板100を吸着した吸着板15を下降させてアライメントを行う。これによって、マスク101aの厚みに応じた適切なZ方向における位置でマスク101aと基板100とのアライメントを行うことができる。
【0113】
図13(C)は、
図13(B)の後、マスク台5に載置されたマスク101aがマスク101bに交換され、真空チャンバ3の内部が真空になった状態を示す。マスクの交換後、処理部141は、
図13(B)で保存した下降量Zaから所定のマージンを確保する位置まで吸着板15を下降させる。
図13(C)の例では、所定のマージンをmとして、吸着板15を位置Za-mまで下降させる。そして、タッチセンサ1621によるマスクの検出を開始する。
【0114】
図13(C)の後、タッチセンサ1621がマスク101bを検出するまで吸着板15の下降を継続する。そして、
図13(D)に示すように接触を検出すると、接触を検出した時の吸着板15の位置を新たな基準点として、例えば吸着板15の下降量Zbを記憶部142に記憶する。そして、上述したアライメント工程において、下降量Zbを使用する。例えば、
図7のST104において、基板100とマスク101とのアライメントを行う際の、Z方向の基板100の位置を決定するために使用する。これによって、マスク101aとマスク101bとの厚みが異なる場合であっても、マスクと基板100との間の距離を一定に保つことができ、アライメント精度の低下を防ぐことができる。具体的には、マスク101の個体差が位置Zaや位置Zbに反映されているため、離間距離gapを小さく設定することが容易となる。この結果、アライメント精度の低下を防ぐことができる。
【0115】
次に
図14を参照して、処理部141が実行する制御処理の一例を説明する。本フローチャートは、大気圧環境下にあった真空チャンバ3の内部空間3aの空気が不図示の真空ポンプ等により排気され、内部空間3aが真空状態となった場合に実行される。また例えば、本フローチャートは、マスクの交換をマスクの交換後の厚さを計測する際の処理を示している。
図14に示す処理は、例えば処理部141が記憶部142に格納されたプログラムを取得して実行することで実現されてもよいし、上位装置300と協働して実現されてもよい。
【0116】
まずS101で、処理部141は、記憶部142に記憶された、吸着板15のZ方向の位置に関する基準値を取得する。例えば、基準値は、上述したようにマスクを交換する前の、タッチセンサ1621がマスク101を検出した位置におけるZ方向の座標に対応してもよい。すなわち、一例では、S101の基準値は、
図13(B)の下降量Zaのように、吸着板15が交換前のマスク101から所定の距離(接触する場合はゼロ)となるような位置に、吸着板15を下降させるための下降量に対応する。あるいは、S101の基準値は、
図13(A)の下降量Zのように、マスク101を載置していない状態で、吸着板15がマスク台5から所定の距離となるような位置に、吸着板15を下降させるための下降量に対応する。あるいは、Z方向の位置に関する基準値は、マスク100に関わらず一定の値としてもよい。
【0117】
また別の例では、記憶部142に、マスク101の識別子(ID)とマスクの厚みの値とが対応付けてあらかじめ記録されている。この場合には、処理部141は、S101においてI/O143を介してマスク101のIDを指定するユーザ入力を受け付けてもよい。そして、
図13(A)のようなマスク101が存在しない場合の下降量Zと、受け付けたマスク101のIDに基づいて取得したマスクの厚みの値とから、吸着板15と交換後のマスク101との距離が所定値となる基準値を特定してもよい。あらかじめ記録されているマスクの厚みの値は、マスク101に使用されるマスク箔の種類ごとの厚みの公称値であってもよいし、これまでに測定したマスク101の種類ごとの厚みの平均値であってもよい。すなわち、一例では、S101の基準値は、吸着板15と交換後のマスク101との距離が所定値となると予想される位置に吸着板15を下降させるための下降量に対応する。
【0118】
なお、マスク101の種類を取得するために、処理部141は第1計測ユニット7を介して取得した画像を解析してマスク101の種類を特定してもよいし、マスク101がRFIDタグなどの通信部を有する場合には、通信部144を介してマスク101の種類を特定してもよい。
【0119】
続いて、処理部141は処理をS102に進め、取得した基準値に応じて所定の位置(検出開始位置)に吸着板15を下降させて、タッチセンサ1621が接触を検出したか否かの判定を開始する。マスク台5やマスク100に基づく下降量Z、Zaを基準値として用いる場合、
図13(C)に示すように、所定のマージンm(例えば1mm)を確保するために、基準値-mの位置に吸着板15を下降させてもよい。
【0120】
続いて、処理部141は処理をS103に進め、タッチセンサ1621が接触を検出したか否かを判定する検知処理を開始する。タッチセンサ1621が接触を検出していない場合(S103でNo)は、処理部141は処理をS104に進め、吸着板15を所定量下降させる。S104で吸着板15を所定量下降させた後、処理部141は処理をS103に戻し、タッチセンサ1621が接触を検出したか否かを判定する。なお、S104では、タッチセンサ1621がマスク101に接触する可能性があるZ方向の位置で吸着板15を下降させるため、S104における吸着板15の下降速度は、S102における吸着板15の下降速度より遅くてもよい。これによって、タッチセンサ1621がマスク101に勢いよく当接してマスク101が破損することを防ぐことができる。
【0121】
タッチセンサ1621が接触を検出したと判定した場合(S103でYes)は、処理部141は処理をS105に進め、センサが接触を検出した位置までの下降量を特定する。続いて、処理部141は処理をS106に進め、アライメントのためのZ方向の位置を調整する。例えば、上述したように、センサが接触を検出した位置をZ、基板100の厚みをT、マスク101aと基板100とが接触しないように離間する距離をgapとして、Z-T-gapの位置に吸着板15を下降させた後、上述したアライメント処理を行ってもよい。
【0122】
以上の処理により、マスク101の交換前後でマスクの厚みが変化した場合であっても、精度を落とすことなくアライメント処理を行うことができる。なお、本実施形態では、マスク台5と吸着板15とは平行であるものとしてマスクの位置の測定を行うものとして説明を行ったがこれに限定されない。例えば、
図14のS103でいずれかのタッチセンサ1621が接触を検出した場合、吸着板15を所定量下降させ、すべてのセンサが接触を検出したかを判定してもよい。すなわち、マスクの位置の測定に加えて、マスク台5と吸着板15との平行度の検出処理を行ってもよい。
【0123】
<他の実施形態>
上記実施形態では、真空チャンバ3の内部が真空に保持された状態においてマスクの位置を検知する処理を説明したが、真空チャンバ3の内部が真空に保たれていない状態においてマスクの位置を測定してもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、吸着板15とマスク台5とが平行に調整された後にマスクの位置の検知を行うものとして説明を行ったが、吸着板15とマスク台5とが平行でない場合であってもマスクの位置の検知を行ってもよい。例えば、吸着板15とマスク台5との間の距離を小さくしていった際に最初にマスク台5に接触する1つのタッチセンサ1621を使用して、マスク台5にマスク101が載置されている状態でマスク101と吸着板15とが所定の距離となる下降量Zを測定することでZ方向におけるマスクの位置を検知することができる。
【0125】
また、上記実施形態では、マスク台5に載置されたマスク101の位置を検知するためにタッチセンサ1621を使用する場合の処理について説明を行った。しかしながら、赤外線センサ、可視光センサ、超音波センサなどの他の種類の測距センサを使用してマスク101の位置を検知してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、吸着板15が基板100を吸着していない状態においてマスク101の位置を検知する処理について説明を行った。しかしながら、吸着板15が基板100を吸着している状態においてマスク101との距離を測定可能にセンサが配置されていれば、基板100を吸着している状態でマスクの位置を検知してもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、調整ユニット17は、作業者が手動で調整動作を実行可能に構成されているが、モータ等により支持軸R1の軸方向の位置を調整可能に構成されてもよい。例えば、各支持軸R1に個別にサーボモータを設け、個別のサーボモータが支持軸R1に設けられた操作部171を操作することにより(上記実施形態の例で言えばナットを回転させることにより)、各支持軸R1が独立に昇降してもよい。また、このような構成を採用する場合、個別のサーボモータを同期して駆動することにより、吸着板15全体の昇降を行ってもよい。なお、調整ユニット17がモータを備える場合は、モータや操作部171が真空チャンバ3の内部に設けられてもよい。ただし、これらが真空チャンバ3の外部に設けられあることにより、真空チャンバ3の内部におけるパーティクルの発生等を抑制することができる。
【0128】
また、上記実施形態では、吸着板15の傾きを調整することにより吸着板15とマスク台5との間の相対的な傾きを調整するが、マスク台5との傾きを調整することによりこれらの相対的な傾きが調整されてもよい。ただし、上記実施形態では、アルミ板等で構成されるマスク台5よりも相対的に高剛性のセラミック材料等で構成される吸着板15の側で傾きを調整することにより、調整をより確実に行うことができる。
【0129】
また、上記実施形態では、複数のタッチセンサ1621により吸着板15とマスク台5の平行度を検出しているが、平行度の検出は他のセンサにより実行されてもよい。例えば、複数の位置において、吸着板15とマスク台5との距離を測定可能な光学系のセンサ群(複数の測距センサ)が設けられてもよい。そして、各センサの検出結果の差、すなわち、測定位置における吸着板15とマスク台5との距離の差に基づいて、吸着板15とマスク台5との平行度が検出されてもよい。ただし、上記実施形態では、タッチセンサ1621を採用することにより、光学系のセンサを採用する場合と比べてセンサを小型化し、電気配線も簡略化することができる。なお、センサを小型化することで、電極配置領域151の面積をより大きくすることができ、吸着板15の吸着力を向上することができる。
【0130】
また、上記実施形態では、吸着板15は静電チャックであるが、吸着板15は他の構成であってもよい。例えば、吸着板15は、その表面に物理的な粘着性を持つ粘着チャック(PSC:Physical Sticky Chuck)等であってもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、マスク台5にマスク101が載置されておらず、吸着板15に基板100が吸着されておらず、基板支持ユニット6に基板100が支持されていない状態で調整動作が実行される。しかしながら、マスク台5にマスク101が載置された状態で調整動作が実行されてもよい。
【0132】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0133】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0134】
1 成膜装置、2 アライメント装置、5 マスク台、141 処理部、16 検出ユニット、100 基板、101 マスク、1621 タッチセンサ