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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】化粧料用白色顔料、化粧料
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/37 20060101AFI20221115BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20221115BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C01B25/37 J
A61Q1/02
A61K8/29
A61Q1/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020547926
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013799
(87)【国際公開番号】W WO2020059190
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018176255
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩國 真弓
(72)【発明者】
【氏名】芦▲高▼ 圭史
(72)【発明者】
【氏名】三輪 直也
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/147888(WO,A1)
【文献】特開2013-095888(JP,A)
【文献】特開2008-056535(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180797(WO,A1)
【文献】特公昭49-001720(JP,B1)
【文献】特開平10-046135(JP,A)
【文献】ONODA, Hiroaki et al.,Preparation of titanium phosphates with additives in hydrothermal process and their powder propertie,International Journal of Cosmetic Science,2013年,35,pp.196-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/37
A61Q 1/02
A61Q 1/12
A61K 8/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸チタン粉体からなる化粧料用白色顔料であって、
前記リン酸チタン粉体はリン酸チタンの結晶粒子からなり、
前記結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上であり、
前記結晶粒子は板状結晶粒子である化粧料用白色顔料。
【請求項2】
前記板状結晶粒子の平均厚さは0.01μm以上4μm以下であり、
前記板状結晶粒子の平均一次粒子径を前記平均厚さで除した値であるアスペクト比は5以上である請求項記載の化粧料用白色顔料。
【請求項3】
前記リン酸チタン粉体の平均一次粒子径は0.05μm以上20μm以下である請求項1または2記載の化粧料用白色顔料。
【請求項4】
請求項1記載の化粧料用白色顔料を含む組成物からなる化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料用白色顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料用白色顔料は、他の顔料と混合して化粧料の組成物を得る際のベース顔料である。従来、化粧料用白色顔料としては、一般的に酸化チタン(IV)(TiO2、二酸化チタン。以下、単に「酸化チタン」とも称する。)が用いられている。
特許文献1には、辺の大きさが0.05~0.2μm、厚さ方向が0.02~0.1μmの寸法を有する棒状粒子が集合及び/又は結合した扇状のルチル型酸化チタン粒子が更に凝集して形成され、その凝集粒子の粒径が0.1~5.0μm、平均摩擦係数(MIU値)が0.2以上0.7未満であることを特徴とするルチル型酸化チタン凝集粒子が開示されている。そして、このルチル型酸化チタン凝集粒子によれば、化粧料、特にメークアップ化粧料に配合した場合、肌になめらかに塗布することができ、肌へのきしみ感やざらつき感がなく、適度な着色力と隠蔽力により白浮きせずに自然な素肌感を演出する効果を奏することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4684970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたルチル型酸化チタン凝集粒子からなる化粧料用白色顔料には、これを含む化粧料の塗布膜のべたつきの無さおよび化粧もちの良さという点で改善の余地がある。
本発明の課題は、化粧料の塗布膜のべたつきが少なくでき、化粧もちも良くできる化粧料用白色顔料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、リン酸チタン粉体からなる化粧料用白色顔料であって、リン酸チタン粉体はリン酸チタンの結晶粒子からなり、結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上である化粧料用白色顔料を提供する。
【発明の効果】
【0006】
この発明の一態様の化粧料用白色顔料は、結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上であることにより、これを含む化粧料の塗布膜のべたつきが少なくなり、化粧もちも良くなることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1で得られた粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】実施例3で得られた粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔一態様の化粧料用白色顔料について〕
上述のように、本発明の一態様の化粧料用白色顔料は、リン酸チタン粉体からなる化粧料用白色顔料であって、リン酸チタン粉体はリン酸チタンの結晶粒子からなり、結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上である。
一態様の化粧料用白色顔料としては、JIS Z 8715に準拠して測定される白色度が92.91以上であるリン酸チタン粉体からなるものが挙げられる。
【0009】
一態様の化粧料用白色顔料としては、屈折率が1.67以上1.83以下であるリン酸チタン粉体からなるものが挙げられる。
一態様の化粧料用白色顔料としては、リン酸チタン粉体からなる化粧料用白色顔料であって、リン酸チタン粉体はリン酸チタンの結晶粒子からなり、リン酸チタン粉体の平均摩擦係数(MIU)が1.45未満であるものが挙げられる。
一態様の化粧料用白色顔料としては、結晶粒子が板状結晶粒子であるものが挙げられる。
【0010】
一態様の化粧料用白色顔料としては、板状結晶粒子の平均厚さが0.01μm以上4μm以下あり、板状結晶粒子の平均一次粒子径を平均厚さで除した値であるアスペクト比が5以上であるものが挙げられる。
一態様の化粧料用白色顔料としては、リン酸チタン粉体の平均一次粒子径が0.05μm以上20μm以下であるものが挙げられる。
一態様の化粧料用白色顔料を含む組成物は化粧料として用いることができる。
【0011】
〔実施形態〕
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
【0012】
[第一実施形態]
第一実施形態の化粧料用白色顔料はリン酸チタン粉体からなる。このリン酸チタン粉体はリン酸チタン結晶粒子からなる。このリン酸チタン結晶粒子は板状結晶粒子である。この板状結晶の平均一次粒子径(例えば、画像解析法により板面を円に換算した場合の直径を粒子径として計測した値)は0.05μm以上20μm以下であり、平均厚さは0.01μm以上4μm以下である。この板状結晶のアスペクト比(平均一次粒子径を平均厚さで除した値)は5以上である。
【0013】
また、このリン酸チタン粉体のJIS Z 8715に準拠して測定される白色度は100.51である。
また、このリン酸チタン粉体の屈折率は1.79である。
また、このリン酸チタン粉体のJIS K 5101-13に準拠して測定される吸油量は116ml/100gである。このリン酸チタン粉体は、リン酸チタン結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上である。
【0014】
この実施形態の化粧料用白色顔料は、白色度が100.51と高いため、他の顔料と混合して化粧料の組成物を得る際のベース顔料として、高い機能が発揮できる。
この実施形態の化粧料用白色顔料は、屈折率が1.79と、人の肌の屈折率(1.5)より適度に高いため、これを化粧料の組成物に含ませることで、適度なカバー力で白浮きしない自然な仕上がりが実現できる化粧料を得ることができる。
【0015】
この実施形態の化粧料用白色顔料は、リン酸チタンの結晶粒子からなるリン酸チタン粉体で構成され、結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上であるため、これを含む化粧料は、塗布膜のべたつきが少ないとともに、皮脂により化粧崩れしにくいものとなる。
この実施形態の化粧料用白色顔料は、リン酸チタンの板状結晶粒子からなるリン酸チタン粉体で構成され、リン酸チタン粉体の平均一次粒子径が0.05μm以上20μm以下であり、この板状結晶粒子の平均厚さが0.01μm以上4μm以下であり、アスペクト比が5以上である。また、リン酸チタン粉体の平均摩擦係数(MIU)が1.45未満である。そのため、これを含む化粧料は滑り性に優れたものとなる。
【0016】
このリン酸チタン粉体は、例えば、以下の方法で得ることができる。
先ず、硫酸チタン水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が5以上21以下となる割合で混合して混合液を得る。次に、この混合液を密閉容器内に入れて、温度を100℃以上160℃以下の範囲内の値に保持し、所定時間(例えば、5時間以上)反応させる。つまり、水熱合成を行う。なお、密閉容器内の圧力は、加圧温度によって自然に決まる大気圧以上の圧力となっている。これにより、リン酸チタンの結晶粒子を含むスラリーを得る。
次に、得られたスラリーを冷却した後、スラリーから固形分(リン酸チタンの結晶粒子)を分離する。得られた固形分を、アンモニア水(水酸化アンモニウム)からなる洗浄液で洗浄した後、乾燥させる。
【0017】
[第二実施形態]
第二実施形態の化粧料用白色顔料はリン酸チタン粉体からなる。このリン酸チタン粉体はリン酸チタン結晶粒子からなる。このリン酸チタン結晶粒子は板状結晶粒子である。この板状結晶の平均一次粒子径(例えば、画像解析法により板面を円に換算した場合の直径を粒子径として計測した値)は0.05μm以上20μm以下であり、平均厚さは0.01μm以上4μm以下である。この板状結晶のアスペクト比(平均一次粒子径を平均厚さで除した値)は5以上である。
【0018】
また、このリン酸チタン粉体のJIS Z 8715に準拠して測定される白色度は96.32~97.47である。
また、このリン酸チタン粉体の屈折率は1.73~1.83である。
また、このリン酸チタン粉体のJIS K 5101-13に準拠して測定される吸油量は45ml/100g以上77ml/100g以下である。このリン酸チタン粉体は、リン酸チタン結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上である。
【0019】
この実施形態の化粧料用白色顔料は、白色度が96.32~97.47と高いため、他の顔料と混合して化粧料の組成物を得る際のベース顔料として、高い機能が発揮できる。
この実施形態の化粧料用白色顔料は、屈折率が1.73~1.83と、人の肌の屈折率(1.5)より適度に高いため、これを化粧料の組成物に含ませることで、適度なカバー力で白浮きしない自然な仕上がりが実現できる化粧料を得ることができる。
この実施形態の化粧料用白色顔料は、リン酸チタンの結晶粒子からなるリン酸チタン粉体で構成され、結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)が2.0以上であるため、これを含む化粧料は、塗布膜のべたつきが少ないとともに、皮脂により化粧崩れしにくいものとなる。
【0020】
この実施形態の化粧料用白色顔料は、リン酸チタンの板状結晶粒子からなるリン酸チタン粉体で構成され、リン酸チタン粉体の平均一次粒子径が0.05μm以上20μm以下であり、この板状結晶粒子の平均厚さが0.01μm以上4μm以下であり、アスペクト比が5以上である。また、リン酸チタン粉体の平均摩擦係数(MIU)が1.45未満である。そのため、これを含む化粧料は滑り性に優れたものとなる。つまり、この実施形態の化粧料用白色顔料を含むことで、化粧料を肌に滑らかに塗布することができる。
【0021】
このリン酸チタン粉体は、例えば、以下の方法で得ることができる。
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が5以上21以下となる割合で混合して混合液を得る。次に、この混合液を密閉容器内に入れて、温度を100℃以上160℃以下の範囲内の値に保持し、所定時間(例えば、5時間以上)反応させる。つまり、水熱合成を行う。なお、密閉容器内の圧力は、加圧温度によって自然に決まる大気圧以上の圧力となっている。これにより、リン酸チタンの結晶粒子を含むスラリーを得る。
【0022】
次に、得られたスラリーを冷却した後、スラリーから固形分(リン酸チタンの結晶粒子)を分離する。得られた固形分を、水で洗浄した後、乾燥させる。
なお、上記各実施形態では、結晶性リン酸チタン粉体を得る際のチタン源として、硫酸チタンおよび硫酸チタニルを用いた例が記載されているが、チタン源の他の例としてはペルオキソチタン酸が挙げられる。
化粧料用白色顔料をなす結晶性リン酸チタン粉体は、平均一次粒子径が0.10μm以上20μm以下で、アスペクト比が5以上であるリン酸チタンの板状結晶粒子からなることが好ましく、より好ましい平均一次粒子径は0.2μm以上10μm以下であり、より好ましいアスペクト比は9以上である。また、化粧料用白色顔料をなすリン酸チタン粉体を構成する結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)は、3.0以上であることが好ましい。
【0023】
なお、この比(吸油量/比表面積)が大きいほど、この粉体を含む化粧料は、化粧料の塗布膜のべたつきが少なく、皮脂による化粧崩れがしにくいものになるが、この比が大きすぎると、化粧品の製造時のコンパウンドの粘度、嵩密度等の変動が大きくなる問題が生じるため、この観点からは200.0以下とすることが好ましい。
平均摩擦係数(MIU)は1.40以下であることが好ましく、1.35以下であることがより好ましい。なお、平均摩擦係数(MIU)が小さい粉体ほど、これを含む化粧料を肌により滑らかに塗布することができるが、小さすぎると肌への密着性が良くないため、この観点からは0.20以上とすることが好ましく、0.65以上とすることがより好ましい。
【0024】
[化粧料について]
粉体の白色顔料を含む組成物からなる化粧料(以下、「化粧料組成物」と称する。)としては、ファンデーション、白粉、頬紅、アイカラー等のメークアップ化粧料、美白パウダー、ボディパウダー等のスキンケア化粧料が例示できる。第一実施形態および第二実施形態の白色顔料は、これらの化粧料組成物の白色顔料として好適なものとなる。
なお、用途がファンデーション等の添加剤の場合は、カバー力及びツヤなどが求められるため、平均一次粒子径が1μm以上20μm以下のリン酸チタン粉体を用いることが好ましい。
【実施例
【0025】
[実施例1]
先ず、硫酸チタン水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が13となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を密閉容器(内容積100mL)内に入れて、温度を110℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を29%のアンモニア水(アンモニウム塩の水溶液)で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
【0026】
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO42・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体の白色度を、(株)島津製作所の紫外可視分光光度計「UV-2450」を用い、照明D65、視野2°の条件で測定したところ、100.51であった。つまり、得られた粉体のJIS Z 8715に準拠して測定された白色度は100.51であった。
【0027】
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図1に示すように、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。走査型電子顕微鏡の画像から、得られた粉体を構成する結晶粒子の平均厚さを測定したところ0.017μmであった。走査型電子顕微鏡の画像を、株式会社マウンテック製の画像解析ソフト「Mac-View ver.4」を用いて解析することにより、得られた粉体を構成する結晶粒子の平均一次粒子径を測定したところ0.24μmであった。これらの測定値を用いた計算(0.24/0.017)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は14であった。
得られた粉体の屈折率を以下の方法で測定したところ、1.79であった。
【0028】
先ず、得られた粉体と、ポリメタクリル酸メチル(膜基体:膜のベースとなる透明な樹脂)を、N-メチルピロリドン(膜基体を溶解可能な溶媒)に入れて混合し、粉体を分散させ、ポリメタクリル酸メチルを溶解させた液体を得た。この液体を、粉体の含有率を変化させて複数得た。これらの液体を用いて、PETフィルム上に、厚さが600μmの塗膜を形成し、80℃で乾燥することで、粉体と樹脂のみからなる膜を形成した。冷却後に、この膜をPETフィルムから剥離した。
【0029】
このようにして得られた複数の膜の屈折率を、Metricon社製の屈折計「Prism Coupler モデル2010/M」を用い、光源として波長632.8nmのヘリウム・ネオンレーザー光を用いて測定した。複数の膜の屈折率の測定値を、横軸を粉体の含有率(体積%)、縦軸を屈折率としたグラフ上にプロットし、各プロットを直線で近似した。この直線を粉体の含有率が100%となる点まで外挿した点における屈折率の値を、粉体の屈折率とした。
【0030】
得られた粉体の100g当たりの吸油量を、JIS K 5101-13に準拠した方法で測定したところ、116ml/100gであった。また、得られた粉体の比表面積を、株式会社マウンテックの全自動比表面積測定装置「Macsorb(登録商標)HM-1210」を用い、BET流動法で測定したところ、25.0m2/gであった。これらの測定値を用いた計算(116/25.0)により、得られた粉体を構成する結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)は4.6であった。
【0031】
得られた粉体の平均摩擦係数(MIU)を、カトーテック(株)の摩擦感テスター「KES-SE」で測定したところ1.37であった。この測定は、10mm角のシリコンセンサを用い、静荷重25g、走査速度1mm/secの条件で行った。
得られた粉体の嵩密度は0.13g/ml、比重は2.59であった。得られた粉体は光触媒活性がないものであった。
【0032】
得られた粉体を白色顔料として含む化粧料組成物を調合したところ、得られた粉体は、白色度が高い(100.51)ため、ベース顔料としての高い機能が発揮できた。また、得られた粉体の屈折率(1.79)が人の肌の屈折率(1.5)より適度に高いため、調合された化粧料組成物を用いることで、適度なカバー力で白浮きしない自然な仕上がりを得ることができた。さらに、得られた粉体の「吸油量/比表面積」が4.6である(2.0以上の範囲にある)ため、調合された化粧料組成物は、塗布膜のべたつきが少ないとともに、化粧持ちがよいものとなった。また、得られた粉体の結晶の形が板状(アスペクト比が14)であり、平均摩擦係数(MIU)が1.37であるため、調合された化粧料組成物は滑り性にも優れたものであった。つまり、この粉体を含むことで、化粧料を肌に滑らかに塗布することができた。
【0033】
[実施例2]
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が13となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を密閉容器(内容積100mL)内に入れて、温度を110℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を水で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
【0034】
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO42・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体の白色度を、(株)島津製作所の紫外可視分光光度計「UV-2450」を用い、照明D65、視野2°の条件で測定したところ、97.47であった。つまり、得られた粉体のJIS Z 8715に準拠して測定された白色度は97.47であった。
【0035】
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、実施例1と同様に、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。走査型電子顕微鏡の画像から、得られた粉体を構成する結晶粒子の平均厚さを測定したところ0.026μmであった。走査型電子顕微鏡の画像を、株式会社マウンテック製の画像解析ソフト「Mac-View ver.4」を用いて解析することにより、得られた粉体を構成する結晶粒子の平均一次粒子径を測定したところ0.30μmであった。これらの測定値を用いた計算(0.30/0.026)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は12であった。
【0036】
得られた粉体の屈折率を実施例1に記載した方法で測定したところ、1.83であった。つまり、得られた粉体のJIS K 7142に準拠して測定された屈折率は1.83であった。
得られた粉体の100g当たりの吸油量を、JIS K 5101-13に準拠した方法で測定したところ、77ml/100gであった。また、また、得られた粉体の比表面積を、株式会社マウンテックの全自動比表面積測定装置「Macsorb(登録商標)HM-1210」を用い、BET流動法で測定したところ、22.7m2/gであった。これらの測定値を用いた計算(77/22.7)により、得られた粉体を構成する結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)は3.4であった。
【0037】
得られた粉体の嵩密度は0.13g/ml、比重は2.59であった。得られた粉体は光触媒活性がないものであった。
得られた粉体を白色顔料として含む化粧料組成物を調合したところ、得られた粉体は、白色度が高い(97.47)ため、ベース顔料としての高い機能が発揮できた。また、得られた粉体の屈折率(1.83)が人の肌の屈折率(1.5)より適度に高いため、調合された化粧料組成物を用いることで、適度なカバー力で白浮きしない自然な仕上がりを得ることができた。さらに、得られた粉体の「吸油量/比表面積」が3.4である(2.0以上の範囲にある)ため、調合された化粧料組成物は、塗布膜のべたつきが少ないとともに、化粧持ちがよいものとなった。また、得られた粉体の結晶の形が板状(アスペクト比が12)であるため、調合された化粧料組成物は滑り性にも優れたものであった。
【0038】
[実施例3]
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が11となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を密閉容器(内容積100mL)内に入れて、温度を130℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を水で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
【0039】
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO42・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体の白色度を、(株)島津製作所の紫外可視分光光度計「UV-2450」を用い、照明D65、視野2°の条件で測定したところ、96.32であった。つまり、得られた粉体のJIS Z 8715に準拠して測定された白色度は96.32であった。
【0040】
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図2に示すように、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。走査型電子顕微鏡の画像から、得られた粉体を構成する結晶粒子の平均厚さを測定したところ0.27μmであった。走査型電子顕微鏡の画像を、株式会社マウンテック製の画像解析ソフト「Mac-View ver.4」を用いて解析することにより、得られた粉体を構成する結晶粒子の平均一次粒子径を測定したところ3.04μmであった。これらの測定値を用いた計算(3.04/0.27)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は11であった。
【0041】
得られた粉体の屈折率を実施例1に記載した方法で測定したところ、1.73であった。
得られた粉体の100g当たりの吸油量を、JIS K 5101-13に準拠した方法で測定したところ、45ml/100gであった。また、得られた粉体の比表面積を、株式会社マウンテックの全自動比表面積測定装置「Macsorb(登録商標)HM-1210」を用い、BET流動法で測定したところ、1.65m2/gであった。これらの測定値を用いた計算(45/1.65)により、得られた粉体を構成する結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)は27.3であった。
【0042】
得られた粉体の平均摩擦係数(MIU)を、カトーテック(株)の摩擦感テスター「KES-SE」で測定したところ0.99であった。この測定は、10mm角のシリコンセンサを用い、静荷重25g、走査速度1mm/secの条件で行った。
得られた粉体の嵩密度は0.33g/ml、比重は2.59であった。得られた粉体は光触媒活性がないものであった。
【0043】
得られた粉体を白色顔料として含む化粧料組成物を調合したところ、得られた粉体は、白色度が高い(96.32)ため、ベース顔料としての高い機能が発揮できた。また、得られた粉体の屈折率(1.73)が人の肌の屈折率(1.5)より適度に高いため、調合された化粧料組成物を用いることで、適度なカバー力で白浮きしない自然な仕上がりを得ることができた。さらに、得られた粉体の「吸油量/比表面積」が27.3である(2.0以上の範囲にある)ため、調合された化粧料組成物は、塗布膜のべたつきが少ないとともに、化粧持ちがよいものとなった。
また、得られた粉体の結晶の形が板状(アスペクト比が11)であり、平均摩擦係数(MIU)が0.99であるため、調合された化粧料組成物は滑り性にも優れたものであった。つまり、この粉体を含むことで、化粧料を肌に滑らかに塗布することができた。
【0044】
[比較例1]
先ず、硫酸チタン水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が1.3となる割合で開放容器内に入れ、加熱しないで混合した。その結果、非晶質のゲルが生成し、開放容器内はゲルと水との混合物となった。
次に、水洗、濾過してゲルを回収した。このゲルを乾燥(温度105℃、24時間放置)して、ジェットミルにより解砕処理を行うことで、粉体を得た。
【0045】
得られた粉体を、X線回折装置及び蛍光X線分析装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi3(HPO44であるアモルファスリン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体の白色度を、(株)島津製作所の紫外可視分光光度計「UV-2450」を用い、照明D65、視野2°の条件で測定したところ、92.91であった。つまり、得られた粉体のJIS Z 8715に準拠して測定された白色度は92.91であった。
【0046】
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察した。走査型電子顕微鏡の画像を、株式会社マウンテック製の画像解析ソフト「Mac-View ver.4」を用いて解析することにより、得られた粉体の平均一次粒子径を測定したところ0.05μmであった。
得られた粉体の屈折率を実施例1に記載した方法で測定したところ、1.67であった。
【0047】
得られた粉体の100g当たりの吸油量を、JIS K 5101-13に準拠した方法で測定したところ、72ml/100gであった。また、得られた粉体の比表面積を、株式会社マウンテックの全自動比表面積測定装置「Macsorb(登録商標)HM-1210」を用い、BET流動法で測定したところ、62.6m2/gであった。これらの測定値を用いた計算(72/62.6)により、得られた粉体を構成する結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)は1.2であった。
【0048】
得られた粉体は光触媒活性がないものであった。
得られた粉体を白色顔料として含む化粧料組成物を調合したところ、得られた粉体は、白色度が高いため、ベース顔料としての高い機能が発揮できた。また、得られた粉体の屈折率(1.67)が人の肌の屈折率(1.5)より適度に高いため、調合された化粧料組成物を用いることで、適度なカバー力で白浮きしない自然な仕上がりを得ることができた。
【0049】
ただし、得られた粉体の「吸油量/比表面積」が1.2である(2.0以上の範囲から外れる)ため、比較例1で調合された化粧料組成物は、実施例1~3で調合された化粧料組成物よりも、塗布膜のべたつきが多いとともに、皮脂により化粧崩れしやすいものとなった。また、得られた粉体がアモルファスリン酸チタン粒子からなるため、比較例1で調合された化粧料組成物は、実施例1~3で調合された化粧料組成物よりも滑り性の点で劣っていた。
[比較例2]
ルチル型の酸化チタン粉体として、テイカ(株)の微粒子酸化チタン「MT-500B」を入手した。この酸化チタン粉体の平均一次粒子径は35nm(カタログ値)である。この酸化チタン粉体の白色度を、(株)島津製作所の紫外可視分光光度計「UV-2450」を用い、照明D65、視野2°の条件で測定したところ、92.47であった。つまり、この酸化チタン粉体のJIS Z 8715に準拠して測定された白色度は92.47であった。
この酸化チタン粉体の屈折率を実施例1に記載した方法で測定したところ、2.6であった。
【0050】
この酸化チタン粉体の100g当たりの吸油量を、JIS K 5101-13に準拠した方法で測定したところ、62ml/100gであった。また、得られた粉体の比表面積を、株式会社マウンテックの全自動比表面積測定装置「Macsorb(登録商標)HM-1210」を用い、BET流動法で測定したところ、40.4m2/gであった。これらの測定値を用いた計算(62/40.4)により、得られた粉体を構成する結晶粒子の比表面積(m2/g)に対する吸油量(ml/100g)の比(吸油量/比表面積)は1.5であった。
【0051】
得られた粉体の平均摩擦係数(MIU)を、カトーテック(株)の摩擦感テスター「KES-SE」で測定したところ1.52であった。この測定は、10mm角のシリコンセンサを用い、静荷重25g、走査速度1mm/secの条件で行った。
この酸化チタン粉体を白色顔料として含む化粧料組成物を調合したところ、白色度が高いため、ベース顔料としての高い機能が発揮できた。しかし、酸化チタン粉体の屈折率(2.6)が人の肌の屈折率(1.5)よりも高すぎるため、調合された化粧料組成物は、カバー力はあるが、白浮きしやすいものとなった。さらに、得られた粉体の「吸油量/比表面積」が1.5である(2.0以上の範囲から外れる)ため、調合された化粧料組成物は、塗布膜のべたつきが多いとともに、皮脂により化粧崩れしやすいものとなった。
【0052】
また、酸化チタン粉体の結晶の形が板状でなく、平均摩擦係数(MIU)が1.52であるため、比較例2で調合された化粧料組成物は実施例1~3で調合された化粧料組成物よりも滑り性の点で劣っていた。
これらの実施例および比較例の物性等を表1にまとめて示す。
【0053】
【表1】
【0054】
以上の結果から、「吸油量/比表面積」が2.0以上である結晶性リン酸チタン粉体からなる化粧料用白色顔料は、「吸油量/比表面積」が2.0未満であるアモルファスリン酸チタン粉体からなる化粧料用白色顔料、酸化チタン粉体からなる化粧料用白色顔料よりも、これを含む化粧料の塗布膜のべたつきの無さおよび化粧もちの良さという点で優れていることが分かる。
図1
図2