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特許7177209有機アミノジシラン前駆体、及びそれを含む膜の堆積方法
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  • 特許-有機アミノジシラン前駆体、及びそれを含む膜の堆積方法 図1
  • 特許-有機アミノジシラン前駆体、及びそれを含む膜の堆積方法 図2
  • 特許-有機アミノジシラン前駆体、及びそれを含む膜の堆積方法 図3
  • 特許-有機アミノジシラン前駆体、及びそれを含む膜の堆積方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】有機アミノジシラン前駆体、及びそれを含む膜の堆積方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20221115BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20221115BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20221115BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20221115BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20221115BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/205
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/455
C23C16/24
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021069016
(22)【出願日】2021-04-15
(62)【分割の表示】P 2018129282の分割
【原出願日】2013-06-03
(65)【公開番号】P2021122047
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】61/654,508
(32)【優先日】2012-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/902,300
(32)【優先日】2013-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シャオ
(72)【発明者】
【氏名】シンチャン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ピー.スペンス
(72)【発明者】
【氏名】ハリピン チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ビン
(72)【発明者】
【氏名】マーク レオナルド オニール
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェラルド マヨルガ
(72)【発明者】
【氏名】アヌパマ マリカージュナン
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516906(JP,A)
【文献】特開平11-147889(JP,A)
【文献】Heinz Schuh, 外3名,Disilanyl-amines ― Compounds Comprising the Structural Unit Si―Si―N, as Single-Source Precursors,Zeitschrift fur anorganische und allgemeine Chemie,1993年,Vol. 619,pp. 1347-1352,ISSN: 0044-2313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/205
H01L 21/316
H01L 21/318
C23C 16/455
C23C 16/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、気相成長でアモルファスシリコン膜又は結晶性シリコン膜を堆積する方法:
a.反応器に基材を与える工程;
b.前記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化1】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1;ここで、式IのR及びRの両方がイソプロピルであることはない);及び
c.パージガスを用いて前記反応器をパージする、又は前記反応器を排気する工程、
ここで、所望の厚みの前記膜が得られるまで、前記工程b~cを繰り返す。
【請求項2】
前記気相成長が、化学気相成長、低圧気相成長、プラズマ化学気相成長、サイクリック化学気相成長、プラズマサイクリック化学気相成長、原子層堆積、及びプラズマ原子層堆積からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
原子層堆積プロセスである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
プラズマサイクリック化学気相成長プロセスである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体が、ジ-sec-ブチルアミノジシラン、ジ-tert-ブチルアミノジシラン、2,6-ジメチルピペリジノジシラン、シクロヘキシル-イソ-プロピルアミノジシラン、及びジ-シクロヘキシルアミノジシランからなる群より選択される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体が、ジ-sec-ブチルアミノジシランを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体が、2,6-ジメチルピペリジノジシランを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アモルファスシリコン、結晶性シリコン、窒化ケイ素、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭窒化ケイ素及び酸窒化ケイ素の膜を含むが、これらに限定されないケイ素含有膜の堆積に用いることができる前駆体、特に有機アミノジシラン及びその組成物を本明細書で述べる。他の態様において、本明細書で述べるものは、集積回路デバイスの製造時にケイ素含有膜を堆積するためのこれらの有機アミノジシラン前駆体の使用である。これらの又は他の態様において、有機アミノジシラン前駆体を、様々な堆積プロセスに関して、例えば限定されないが原子層堆積(ALD)、化学気相成長(CVD)、プラズマ化学気相成長(PECVD)、低圧化学気相成長(LPCVD)及び常圧CVDに関して、用いることができる。
【背景技術】
【0002】
複数の種類の化合物を、ケイ素含有膜用の前駆体、例えば限定されないが、酸化ケイ素膜、炭素ドープ酸化ケイ素膜、又は窒化ケイ素膜用の前駆体として用いることができる。前駆体としての使用に適切なこれらの化合物の例としては、シラン、クロロシラン、ポリシラザン、アミノシラン及びアジドシランが挙げられる。また、不活性キャリアガス又は希釈剤、例えば限定されないが、ヘリウム、水素、窒素等を用いて、前駆体を反応チャンバーに提供する。
【0003】
低圧化学気相成長(LPCVD)プロセスは、ケイ素含有膜の堆積に関して半導体産業で用いられる、比較的幅広く受け入れられている方法の1つである。アンモニアを用いる低圧化学気相成長(LPCVD)では、適度な成長速度及び均質性を得るために、750℃超の堆積温度が必要となる場合がある。改良した膜特性を与えるために、比較的高い堆積温度が通常用いられる。窒化ケイ素又は他のケイ素含有膜を成長させるための比較的一般的な産業的方法の1つは、前駆体のシラン、ジクロロシラン及び/又はアンモニアを用いる、750℃超の温度でのホットウォール反応器(hot wall reactor)内での低圧化学気相成長による。しかし、この方法を用いることには複数の欠点が存在している。例えば、ある種の前駆体、例えばシランは、自然発火性である。これは、取り扱い時及び使用時に問題点を提示する場合がある。また、シラン及びジクロロシランから堆積した膜は、ある種の不純物を含有する場合がある。例えば、ジクロロシランを用いて堆積した膜は、ある種の不純物、例えば塩素及び塩化アンモニウムを含有する場合があり、これらは堆積プロセスの間に副生成物として形成される。シランを用いて堆積した膜は、水素を含有する場合がある。
【0004】
窒化ケイ素膜を堆積するのに用いられる前駆体、例えばBTBAS及びクロロシランは、通常、550℃超の温度で膜を堆積させる。半導体デバイスの縮小化及び低いサーマルバジェット(thermal budget)の傾向には、比較的低い処理温度及び比較的高い堆積速度が必要とされている。ケイ素膜を堆積させる温度は、格子中へのイオン拡散を防ぐために、特に金属化層(metallization layer)を有する基材に関して、また多くの3-5族デバイス及び2-6族デバイスにおいて、格子へのイオン拡散を防ぐために、低下させるべきである。したがって、550℃以下又は更には室温において、CVD、ALD又は他のプロセスにより堆積を可能とする、十分に化学的に反応性のある、ケイ素含有膜の堆積のための前駆体、例えば酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、又は窒化ケイ素膜の堆積のための前駆体を与える必要性が、本分野において存在している。
【0005】
非特許文献1は、Si-Si-N構造単位を有する、窒化ケイ素膜のPECVD用の潜在的単一源前駆体(potential single-source precursor)について述べている。その構造単位には、例えば(EtN)HSi-SiH, (EtN)HSi-SiH(NEt、[(i-Pr)N]HSi-SiH、 及び[(i-Pr)N]HSi-SiH[N(i-Pr)]が挙げられる。前駆体の1,2-ビス(ジ-i-プロピルアミン)ジシラン(BIPADS)を、窒化ケイ素膜のPECVD堆積用に用いている。BIPADS前駆体からの生成膜は、1.631~1.814の範囲の屈折率を示し、かつ低い炭素含量及び非常に低い酸素含量であり、高いSi結合水素含量であった。
【0006】
非特許文献2は、完全に水素化したSi結合を有する複数の開鎖かつ環状のジアミノジシランに関する、高収率での合成を記載している。
【0007】
特許文献1は、ジシラン(Si)及び亜酸化窒素を用いたPECVDプロセスでの低温での高品質SiO膜の堆積について記載している。
【0008】
特許文献2及び3は、塩素を含まず、かつ((R)HN)-Si-Si-(NH(R)){上記式中、RはC~Cのヒドロカルビルを独立して表している}の式を有するヘキサキス(モノヒドロカルビラミノ)ジシラン又はシラン化合物の組成物及び調製方法について記載している。このヘキサキス(モノヒドロカルビラミノ)ジシラン前駆体を、窒化ケイ素膜又は酸窒化ケイ素膜の堆積に用いる。
【0009】
特許文献4は、Si(NMeY{式中、Yは、H、Cl、又はアミノ基からなる群より選択される}の式を有するペンタキス(ジメチルアミノ)ジシラン化合物、及びSiN又はSiONのケイ素含有エッチング停止膜又はケイ素含有ゲート膜を製造するためのその用途について記載している。
【0010】
特許文献5は、ヘキサキス(モノアルキルアミノ)ジシラン、例えばヘキサキス(エチルアミノ)ジシランをケイ素源として用いて、かつオゾンを酸化剤として用いる、二酸化ケイ素含有薄膜を基材に堆積する方法について記載している。その成長速度は、約1.1Å/サイクルである。
【0011】
特許文献6は、ヘキサクロロジシランをケイ素源として用いて、かつ水を酸化剤として用いて、触媒、例えばピリジンの存在下で、二酸化ケイ素含有薄膜を基材に堆積する方法について記載している。その成長速度は、50~140℃の基材温度で、2.6~0.6Å/サイクルの範囲である。
【0012】
特許文献7は、2つのSi原子を有するアミノシラン系ガス、例えばヘキサキスエチルアミノジシラン(C1236Si)を用いて薄膜に関するシード層を形成する方法を記載している。次の式を有する他のアミノシランを用いることもできる:(1)(R)N)Si6-n-m(R{nは、アミノ基の数であり、mはアルキル基の数である}、又は(2)(R)NH)Si6-n-m(R{nは、アミノ基の数であり、mはアルキル基の数である}。式(1)及び(2)では、R、R、R=CH、C、Cであり、R=R=R、又は互いに同じでなくてもよく、nは1~6の範囲の整数であり、かつm=0及び1~5である。
【0013】
特許文献8~13は、少なくとも1つのジシラン誘導体を含むシラン前駆体について記載しており、これはアルキルアミノ官能基及び/又はジアルキルアミノ官能基で完全に置換されている。上記事項に加えて、本分野では、少数のモノジアルキルアミノジシランが報告されており、例えばジメチルアミノジシラン(CAS#14396-26-0P)、ジエチルアミノジシラン(CAS#132905-0-5)、及びジ-イソ-プロピルアミノジシラン(CAS#151625-25-1)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第5,660,895号
【文献】米国特許第7,019,159号
【文献】米国特許第7,064,083号
【文献】米国特許第8,153,832号
【文献】米国特許出願公開第2009/0209081号
【文献】米国特許第7,077,904号
【文献】米国特許出願公開第2013/0109155号
【文献】米国特許第7,446,217号
【文献】米国特許第7,531,679号
【文献】米国特許第7,713,346号
【文献】米国特許第7,786,320号
【文献】米国特許第7,887,883号
【文献】米国特許第7,910,765号
【非特許文献】
【0015】
【文献】“Disilanyl-amines-Compounds Comprising the Structure Unit Si-Si-N, as Single-Source Precursors for Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition (PE-CVD) of Silicon Nitride”, Schuh et al., Zeitschrift Fuer Anorganische und Allgemeine Chemie, 619 (1993), pp. 1347-52
【文献】“1,2-ジシランdiyl Bis(triflate), F3CSO3-SiH2-SiH2-O3SCF3, as the Key Intermediate for a Facile Preparation of Open-Chain and Cyclic 1,1- and 1,2-Diaminodisilanes”, Soelder et al., Inorganic Chemistry, 36 (1997), pp. 1758-63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本明細書に記載するものは、Si-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する有機アミノジシラン前駆体、及びそれらを含む組成物、並びにこれを用いる、ケイ素含有膜を基材の少なくとも一部に形成するためにそれらを用いる方法である。ここで、ケイ素含有膜としては、例えば限定されないが、アモルファスシリコン、結晶性シリコン、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素及びこれらの組合せが挙げられる。さらに、本明細書に記載されるものは、ここに記載される有機アミノジシランを含む組成物であって、その有機アミノジシランが、アミン、ハロゲン、比較的高い分子量の物質種、及び微量の金属から選択される少なくとも1種を実質的に有さない組成物である。これらの実施態様、又は他の実施態様において、この組成物はさらに溶媒を有していてもよい。また、本明細書に開示するものは、ケイ素含有膜又はケイ素含有コーティングを処理対象上に、例えば半導体ウェハー上に、形成するための方法である。本明細書に記載した方法の1つの実施態様では、酸化ケイ素膜、炭素ドープ酸化ケイ素膜を基材上に生成するための条件において、堆積チャンバーで、有機アミノジシラン前駆体及び酸素含有源を用いて、ケイ素及び酸素を含む膜を基材に堆積させる。本明細書に記載した方法の他の1つの実施態様では、窒化ケイ素膜を基材に生成するための条件において、堆積チャンバーで、式Iを有する有機アミノジシラン前駆体及び窒素含有前駆体を用いて、ケイ素及び窒素を含む膜を基材に堆積させる。さらなる実施態様では、ここに記載される有機アミノジシランを、金属含有膜のためのドーパントとして、例えば限定されないが、金属酸化物膜又は金属窒化物膜のためのドーパントとして、用いることもできる。本明細書に記載した組成物及び方法では、ここに記載される式を有する有機アミノジシランを、ケイ素含有前駆体の少なくとも1種として用いる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの態様において、本明細書に記載される有機アミノジシラン前駆体は、次の式Iで表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する有機アミノジシラン前駆体の少なくとも1種を含む:
【化1】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2)。
式Iの特定の実施態様では、R及びRは、共に結合して環を形成する。1つの特定の実施態様では、R及びRは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基から選択され、かつ結合して環を形成する。式Iの別の態様では、R及びRは、結合して環を形成しない。式Iの特定の態様では、R及びRは、それらがイソ-プロピルにならないという条件の下で、同じである。他の実施態様では、R及びRは、異なる。
【0018】
他の1つの態様では、(a)次の式Iで表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体、及び(b)溶媒を含有する組成物が与えられる:
【化2】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2)。
ここに記載した組成物の特定の実施態様において、典型的な溶媒としては、限定されないが、エーテル、第三級アミン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第三級アミノエーテル、及びこれらの組合せが挙げられる。特定の実施態様では、有機アミノジシランの沸点と溶媒の沸点との差は、40℃以下である。
【0019】
他の1つの態様では、次の工程を含む、基材の少なくとも1つの表面にケイ素含有膜を形成する方法が与えられる:
反応チャンバーに上記基材の上記少なくとも1つの表面を与える工程;及び
次の式Iで表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を用いて、化学気相成長プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスによって、上記少なくとも1つの表面に上記ケイ素含有膜を形成する工程:
【化3】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2)。
1つの特定の実施態様では、R及びRは、同じである。他の実施態様では、R及びRは、異なる。上記実施態様又は他の実施態様において、共に結合して環を形成する。さらなる実施態様では、式Iの別の態様では、R及びRは、結合して環を形成しない。
【0020】
他の1つの態様では、次の工程を含む、原子層堆積プロセス又はALD類似プロセスによって酸化ケイ素膜、炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成するための方法が与えられる:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化4】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.上記反応器を、パージガスでパージする工程;
d.上記反応器に、酸素含有源を導入する工程;及び
e.上記反応器を、パージガスでパージする工程;
ここで、上記膜の所望の厚みが得られるまで、b~eの工程を繰り返す。
特定の実施態様では、R及びRは、同じである。他の実施態様では、R及びRは、異なる。上記実施態様又は他の実施態様において、共に結合して環を形成する。さらなる実施態様では、式Iの別の態様では、R及びRは、結合して環を形成しない。
【0021】
さらなる態様では、次の工程を含む、酸化ケイ素膜及び炭素ドープ酸化ケイ素から選択される膜を、CVDプロセスを用いて基材の少なくとも1つの表面に形成するための方法が与えられる:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化5】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);及び
c.酸素含有源を与えて、上記少なくとも1つの表面に上記膜を堆積する工程。
特定の実施態様では、R及びRは、同じである。他の実施態様では、R及びRは、異なる。上記実施態様又は他の実施態様において、共に結合して環を形成する。さらなる実施態様では、式Iの別の態様では、R及びRは、結合して環を形成しない。
【0022】
他の態様では、次の工程を含む、原子層堆積プロセスを用いて窒化ケイ素膜を形成する方法が与えられる:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化6】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.上記反応器を、パージガスでパージする工程;
d.上記反応器に、窒素含有源を導入する工程;及び
e.上記反応器を、パージガスでパージする工程;
ここで、上記膜の所望の厚みが得られるまで、b~eの工程を繰り返す。
特定の実施態様では、R及びRは、同じである。他の実施態様では、R及びRは、異なる。上記実施態様又は他の実施態様において、共に結合して環を形成する。さらなる実施態様では、式Iの別の態様では、R及びRは、結合して環を形成しない。
【0023】
さらなる態様では、次の工程を含む、CVDプロセスを用いて基材の少なくとも1つの表面に窒化ケイ素膜を形成するための方法が与えられる:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体及び窒素含有源を導入する工程:
【化7】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.窒素含有源を与える工程であって、上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体と、上記窒素含有源とを反応させて、上記膜を上記少なくとも1つの表面に堆積させる工程。
特定の実施態様では、R及びRは、同じである。他の実施態様では、R及びRは、異なる。上記実施態様又は他の実施態様において、共に結合して環を形成する。さらなる実施態様では、式Iの別の態様では、R及びRは、結合して環を形成しない。
【0024】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様において、このプロセスは、アモルファスシリコン膜又は結晶性シリコン膜を、サイクリックCVD法を用いて堆積する。この実施態様では、この方法は、次の工程を含む:
1以上の基材を反応器に配置し、これを周囲温度から約700℃の範囲の1以上の温度に加熱する工程;
次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化8】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);及び
還元剤源を上記反応器に与えて、上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させて、そしてケイ素含有膜を上記1以上の基材に堆積させる工程。
この還元剤は、水素、水素プラズマ、塩化水素からなる群より選択される。このCVD法の特定の実施態様では、この反応器は、導入工程の間に、10mTorr~760Torrの範囲の圧力に維持される。上記の工程を、ここに記載した方法に関して1サイクルと定義し、所望の厚みの膜が得られるまで、この工程のサイクルを繰り返すことができる。特定の実施態様では、R及びRは、同じである。他の実施態様では、R及びRは、異なる。上記実施態様又は他の実施態様において、共に結合して環を形成する。さらなる実施態様では、式Iの別の態様では、R及びRは、結合して環を形成しない。
【0025】
他の1つの態様において、アモルファスシリコン膜又は結晶性シリコン膜を、原子層堆積プロセス又はサイクリック化学気相成長プロセスによって形成するための方法が与えられる。この方法は、次の工程を含む:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化9】
(ここで、R及びRは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、及びC~C10のアリール基から選択され;R及びRは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、及びC~C10のアリール基から選択され;かつR及びR、R及びR、R及びR、若しくはR及びRのいずれか1つ又は全ては、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成し、又はこれら全てがそれらの環を形成しない);
ここで、上記膜の所望の厚みが得られるまで、bの工程を繰り返す。
特定の実施態様では、上記膜の厚みは、1Å以上、1~10000Å、1~1000Å、又は1~100Åとなることができる。
【0026】
他の1つの態様について、式Iを有する1種以上の有機アミノジシラン前駆体を含むケイ素含有膜を堆積させるための容器が、本明細書に記載される。1つの特定の実施態様では、その容器は、CVD又はALDプロセスのために反応器への1種以上の前駆体の供給を可能とするのに適切なバルブ及び取付具を備えた、少なくとも1つの耐圧容器(好ましくはステンレス鋼製)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、ジ-イソ-プロピルアミノジシランのTGA/DSCグラフを示しており、TGAは、この化合物が揮発性であることを示し、またDSCは、これが約157℃の沸点を有することを示している。
図2図2は、実施例3で記載された、PMADSを用いてホウケイ酸ガラスに堆積したアモルファスSi膜のラマンスペクトルを示している。
図3図3は、DIPADS及びオゾンを用いた300℃の温度での酸化ケイ素膜の形成に関して、DIPADSの堆積速度とパルス時間との関係を示してる。
図4図4は、DIPADS及びオゾンを用いた300℃の温度での酸化ケイ素膜に関して、厚みとサイクル数との関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載した有機アミノジシランを、前駆体として用いて、化学量論的なケイ素含有膜及び非化学量論的なケイ素含有膜、例えば限定されないが、アモルファスシリコン、結晶性シリコン、酸化ケイ素、酸炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素及び酸窒化炭化ケイ素を形成する。また、これらの前駆体を、例えば、金属含有膜のためのドーパントとして用いることもできる。半導体プロセスで用いられる有機アミノジシラン前駆体は、通常、高純度の揮発性液体前駆体化学物質であり、これらを気化させ、そして堆積チャンバー又は反応器にガスとして提供して、CVD又はALDプロセスにより、半導体デバイス用のケイ素含有膜を堆積させる。堆積のための前駆体材料の選択は、所望の生成ケイ素含有材料又は膜に依存する。例えば、前駆体材料を、その化学元素の内容、化学元素の化学量論比及び/又はCVD下で形成する生成ケイ素含有膜若しくは生成ケイ素含有コーティングに関して、選択することができる。また、前駆体材料を、様々な他の特徴、例えばコスト、比較的低い毒性、取扱い性、室温で液相を維持する性能、揮発性、分子量及び/又は他の考慮事項に関して選択することができる。ある種の実施態様では、本明細書に記載した前駆体を、あらゆる手段で反応器システムに提供することができ、好ましくは堆積チャンバー又は反応器への液相の前駆体の提供を可能とする適切なバルブ及び取付具を備えた耐圧ステンレス鋼容器を用いて、反応器システムに提供することができる。
【0029】
本明細書に記載した有機アミノジシラン前駆体は、マイクロエレクトロニクス製造プロセスにおけるCVD又はALD前駆体としてそれらを理想的に適切とする、反応性及び安定性のバランスを示す。反応性に関して、ある種の前駆体では、気化させ、そして反応器に提供して基材に膜として堆積させるのに、高すぎる沸点を有する場合がある。比較的に高い沸点を有する前駆体では、所定の減圧度の下で、提供容器及び提供ラインを前駆体の沸点以上に加熱して、容器、ライン又はこの両方への凝縮物又は粒子の形成を、防ぐことが必要となる。安定性に関して、他の前駆体は、分解するにしたがって、シラン(SiH)又はジシラン(Si)を形成する場合がある。シランは、室温で自然発火性であり、又はそれは自発的に燃焼することがあり、これは安全性の問題と取扱いの問題を提示する。さらに、シラン又はジシラン及び他の副生成物の形成は、前駆体の純度を低下させる。また、1~2%程の小さな化学的純度の変化が、信頼性のある半導体製造のためには許容できないものとみなされる場合がある。ある種の実施態様では、本明細書に記載した式Iを有する有機アミノジシラン前駆体は、6ヶ月以上又は1年以上の期間で保存した後に、2wt%以下、1wt%以下又は0.5wt%以下の副生成物(例えば、対応するビス-ジシランの副生成物)を含み、これは保存安定性の指標である。上記の利点に加えて、ある種の実施態様、例えばALD堆積法、ALD類似堆積法、PEALD堆積法、又はCCVD堆積法を用いて、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、又はシリコン膜を堆積する実施態様では、本明細書に記載された有機アミノジシラン前駆体は、比較的低い堆積温度で、例えば500℃以下、400℃以下、300℃以下、200℃以下、100℃以下、又は50℃以下で、高密度材料を堆積できる場合がある。1つの特定の実施態様では、有機アミノジシラン前駆体、例えばジ-イソ-プロピルアミノジシラン、ジ-sec-ブチルアミノジシラン、又は2,6-ジメチルピペリジノジシランを用いて、ALD又はPEALDによって、50℃以下で、又は周囲温度若しくは室温(例えば25℃)程の低い温度で、ケイ素含有膜を堆積することができる。
【0030】
1つの実施態様では、ここに記載された式Iを有する有機アミノジシラン及び溶媒を含む、ケイ素含有膜形成用の組成物が本明細書に記載される。あらゆる理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載された組成物は、純粋な有機アミノジシランと比較して1以上の利点を与えることができると考えられる。これらの利点としては、半導体プロセスにおける有機アミノジシランの良好な利用法、長期間での保管にわたる良好な安定性、フラッシュ気化による比較的清浄な気化、及び/又は直接液体注入(DLI)化学気相成長プロセスでの全体的な良好な安定性が挙げられる。この組成物における有機アミノジシランの重量百分率は、残部を溶媒として、1~99%の範囲となることができ、この溶媒は、その有機アミノジシランと反応せず、かつその有機アミノジシランと近い沸点を有する。後者に関して、組成物中の有機アミノジシランと溶媒との沸点の差は、40℃以下、より好ましくは20℃以下又は10℃以下である。典型的な組成物としては、限定されないが、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン(沸点約157C)及びオクタン(沸点125~126℃)の混合物、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン(沸点約157C)及びエチルシクロヘキサン(沸点130~132C)の混合物、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン(沸点約157C)及びトルエン(沸点115C)、ジ-sec-ブチルアミノジシラン及びデカン(沸点174C)の混合物、ジ-sec-ブチルアミノジシラン及びデカンの混合物、ジ-sec-ブチルアミノジシラン及び2,2’-オキシビス(N,N-ジメチルエタンアミン(沸点189C)の混合物が挙げられる。
【0031】
1つの態様では、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体が与えられる:
【化10】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2)。
n=2のさらなる1つの実施態様において、R及びR、R及びR、又はR及びRのいずれか1つ以上又は全てが結合して環を作ることができる。式Iの特定の実施態様では、R及びRは、それらが共にイソ-プロピルにはならないという条件で、同じである。他の実施態様では、R及びRは異なる。1つの実施態様では、R及びRは直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキル基から選択され、かつ結合して環を形成する。さらなる実施態様では、R及びRは環を形成する結合をしない。
【0032】
n=1の式Aの有機アミノジシラン前駆体に関して、有機アミノジシラン前駆体は次の式IAを有し、ここでR及びRは上述の通りであり、また結合して環を形成する場合がある。
【化11】
【0033】
n=2の式Aの有機アミノジシラン前駆体に関して、有機アミノジシラン前駆体は次の式IBを有し、ここでRは上述のRと等しく、R及びRは上述の通りであり、また結合して環を形成する場合がある。
【化12】
【0034】
本明細書に記載した式中、また明細書を通じて、用語「アルキル」は、1~20、1~12又は1~6の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の官能基を意味する。典型的なアルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-ペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソ-ヘキシル及びネオ-ヘキシルが挙げられる。ある種の実施態様では、アルキル基は、自身に結合している1つ以上の官能基、例えば限定されないが、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はこれらの組み合わせを有する場合がある。他の実施態様では、アルキル基は、自身に結合する1つ以上の官能基を有さない。
【0035】
式中、また明細書を通じて、用語「環状アルキル」は、3~10、4~10又は5~10の炭素原子を有する環状官能基を意味する。典型的な環状アルキル基としては、限定されないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0036】
式中、また明細書を通じて、用語「アリール」は、5~12の炭素原子又は6~10の炭素原子を有する芳香族の環状官能基を意味する。典型的なアリール基としては、限定されないが、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、及びo-トリルが挙げられる。
【0037】
式中、また明細書を通じて、用語「アルケニル基」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、且つ3~10、3~6又は3~4の炭素原子を有する基を意味する。
【0038】
式中、また明細書を通じて、用語「アルキニル基」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有し、且つ3~10、3~6又は3~4の炭素原子を有する基を意味する。
【0039】
式中、また明細書を通じて、用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合しており(例えばR-O)、且つ1~10、1~6又は1~4の炭素原子を有することができるアルキル基を意味する。典型的なアルコキシ基としては、限定されないが、メトキシ(-OCH)、エトキシ(-OCHCH)、n-プロポキシ(-OCHCHCH)及びイソ-プロポキシ(-OCHMe)が挙げられる。
【0040】
式中、また明細書を通じて、用語「ジアルキルアミノ基」は、窒素原子に結合している2つのアルキル基を有し、且つ1~10、2~6又は2~4の炭素原子を有する基を意味する。
【0041】
ここで用いられる場合、用語「電子求引基」は、Si-N結合から電子を求引するように機能する原子又はその基について述べている。適切な電子求引基の例としては、限定されないが、ニトリル(CN)が挙げられる。ある種の実施態様では、電子求引置換基は、式Iのいずれか1つ中のNに隣接又は近接させることができる。電子求引基のさらなる非限定的な例としては、F、Cl、Br、I、CN、NO、RSO及び/又はRSOが挙げられ、ここでRは、C~C10のアルキル基とすることができ、例えば限定されないが、メチル基又は他の1つの基とすることができる。
【0042】
ある種の実施態様では、式I中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、アリール基及び/又は電子求引基の1つ以上が、置換されている場合があり、又は例えば水素原子の代わりに置換した1つ以上の原子若しくはその原子の基を有する場合がある。典型的な置換基の例としては、限定されないが、酸素、硫黄、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、I又はBr)、窒素及びリンが挙げられる。他の実施態様では、式I中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノアリール基及び/又は電子求引基の1つ以上が、置換されていない場合がある。
【0043】
特定の実施態様では、Rは、C~C10のアルキル基、好ましくは分岐鎖のC~Cアルキル基、例えばイソ-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル(アミル)から選択され、Rは水素であり、n=2である。これらの特定の実施態様の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:
【化13】
【0044】
特定の実施態様では、式IにおけるR及びRは結合して環状構造を形成する。これらの実施態様では、Rは水素ではない。例えば、R及びRが結合して環を形成する実施態様では、Rは(水素置換基の代わりに)Rに連結するための結合部を有してもよい。そして特定の実施態様では、Rは、例えば、C~C10のアルキル部位、C~C10のアルケニル部位、又は直鎖若しくは分岐鎖のC~C10のアルキニル部位から選択することができる。これらの実施態様又は他の実施態様では、その環状構造は、不飽和構造又は飽和構造となることができ、例えば環状アルキル環、又はアリール環となることができる。さらに、これらの実施態様では、環状構造は、置換構造又は非置換構造となることもできる。1つの特定の実施態様では、有機アミノジシランは、置換脂肪族環、例えば5~10の炭素原子を有するヘテロ原子含有環状官能基、及び少なくとも1つの窒素原子を有することができる。これらの特定の実施態様の例としては、限定されないが、1,2-ビス(ピペリジノ)ジシラン(Rがプロピル、かつRがMe)、1,2-ビス(ピペリジノ)ジシラン(Rがプロピル、かつRがEt)、2,6-ジメチルピペリジノジシラン(Rがイソ-プロピル、かつRがsec-ブチル)、及び2,5-ジメチルピペリジノジシラン(R及びRがイソ-プロピル)が挙げられる。
【0045】
式Iの特定の実施態様では、Rは、C~C10のアルキル基、好ましくは分岐鎖のC~Cアルキル基、例えばイソ-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル(アミル)から選択され、RはC~C10のアルキル基、好ましくはC~Cのアルキル基から選択され、n=2である。これらの特定の実施態様の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:
【化14】
【0046】
式Iの特定の実施態様では、n=2であり、R及びRは、結合して、さらに脂肪族環を形成する。これらはさらに置換される場合があり、又は置換されない場合がある。これらの実施態様の典型的な構造を、以下に示す:
【化15】
【0047】
式Iの特定の実施態様では、n=2であり、R及びRは、結合して、さらに脂肪族環を形成する。これらはさらに置換される場合があり、又は置換されない場合がある。これらの実施態様の典型的な構造を、以下に示す:
【化16】
【0048】
他の実施態様では、式IにおいてR及びRは結合しない。
【0049】
特定の実施態様では、式Iを有する上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体は、酸素原子又は窒素原子を含む1以上の置換基を有する。この実施態様又は他の実施態様では、置換基R及びRは式Iにおいて酸素原子又は窒素原子を通じて結合して、環状構造を形成する。
【0050】
これは理論に拘束されないが、有機アミノジシラン前駆体、例えばSi-N結合、Si-Si結合、及びSiH基を有し、本明細書に記載した式Iで表される有機アミノジシランは、Si-N結合及びSi-Si結合のみ、又はSi-Cl結合及びSi-Si結合のみを有する公知の有機アミノジシラン前駆体よりも有利であると考えられる。この点に関して、4つから5つのSi-H基、1つのSi-N結合、及び1つのSi-Si結合を有するここに記載されている有機アミノジシランは、反応性が高くなり、他の公知の有機アミノジシラン前駆体、例えばヘキサクロロジシランよりも堆積温度を低くさせると考えられる。本明細書に記載した式1の前駆体の特有の構造が、堆積温度を、例えば400℃以下、300℃以下、200℃以下、100℃以下、又は25℃に低下させると考えられる。
【0051】
ある種の実施態様では、式Iを有する有機アミノジシランを、モノクロロジシラン(MCDS)若しくはモノブロモジシラン(MBDS)、又は低分子ジアルキルアミノジシラン、例えばジ-イソ-プロピルアミノジシラン又はジ-sec-ブチルアミノジシランと、次の式IIを有するアミンとを、有機溶媒又は溶媒混合物中で反応させることによって、調製することができる。
【0052】
【化17】
【0053】
式II中で、R及びRは、式Iにおいて記載された置換基と同じである。次の反応式(1)は、反応機構又は合成経路の非限定的な例を与えており、これを用いて上記式Iを有する有機アミノジシランを作製することができる。反応式(1)の反応を、有機溶媒を用いて(例えば、有機溶媒の存在下で)、又は有機溶媒を用いずに(例えば、有機溶媒の不在下で)実行することができる。有機溶媒を用いる実施態様において、適切な有機溶媒の例としては、限定されないが、炭化水素、例えばヘキサン、オクタン、トルエン、並びにジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン(THF)等のエーテルが挙げられる。これらの実施態様、又は他の実施態様では、反応温度は、約-70℃から、溶媒を用いる場合用いる溶媒の沸点までの範囲である。例えば、生成する有機アミノジシランを、全ての副生成物及び存在するならばあらゆる溶媒を除去した後で、減圧蒸留によって精製することができる。
【0054】
【化18】
【0055】
反応式(1)は、モノハロジシラン(XSiHSiH、ここでX=Cl、Br、I)と式IIで表される第二級アミンとの反応を用いる、式Iを有する有機アミノジシランを作製するための合成経路の1つである。他の合成経路を用いて、これらの有機アミノジシランを作製することができ、例えばモノアミノクロロジシランを金属水素化物を用いて還元することによって、又はモノアミノクロロジシランの不均化、又はジシランと第二級アミンとの触媒の存在下での反応によって、作製することができる。
【0056】
ケイ素含有膜又はケイ素含有コーティングを形成するために用いる方法は、堆積プロセスである。本明細書で開示した方法に関して適切な堆積プロセスの例としては、限定されないが、サイクリックCVD(CCVD)、MOCVD(有機金属CVD)、熱化学気相成長、プラズマ化学気相成長(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)、高密度PECVD、光支援CVD(photon assisted CVD)、プラズマ-光支援(PPECVD)、低温化学気相成長、化学支援気相成長(chemical assisted vapor deposition)、ホットフィラメント化学気相成長、液体ポリマー前駆体のCVD、超臨界流体からの堆積、及び低エネルギーCVD(LECVD)が挙げられる。ある種の実施態様では、金属含有膜を、原子層堆積(ALD)プロセス、プラズマALD(PEALD)プロセス、又はプラズマサイクリックCVD(PECCVD)プロセスによって堆積させる。本明細書で用いられる場合、用語「化学気相成長プロセス」は、基材を、1種以上の揮発性前駆体に露出させ、1以上の揮発性前駆体を、基材表面で反応させ且つ/又は分解させて、所望の堆積物を生成する、あらゆるプロセスについて言及している。本明細書で用いられる場合、用語「原子層堆積プロセス」は、様々な組成の基材に材料の膜を堆積させる、自己制限的な(例えば、各反応サイクルで堆積される膜材料の量が一定である)、順次的な表面化学反応について言及している。本明細書で用いられる、前駆体、試薬及び物質源は、「ガス状」として記載される場合があるが、前駆体は、不活性ガスを用いて又は不活性ガスを用いずに、直接気化、バブリング又は昇華によって、反応器に輸送される、液体又は固体のいずれかであってよいことが理解される。いくつかの場合では、揮発した前駆体は、プラズマ発生器を通過することができる。1つの実施態様では、ケイ素含有膜を、ALDプロセスを用いて堆積させる。他の一つの実施態様では、ケイ素含有膜を、CCVDプロセスを用いて堆積させる。さらなる実施態様では、ケイ素含有膜を、熱CVDプロセスを用いて堆積させる。本明細書で用いる場合、用語「反応器」は、限定を含まずに、反応チャンバー又は堆積チャンバーを含む。
【0057】
ある種の実施態様では、本明細書に開示した方法は、反応器に導入する前に且つ/又は導入中に前駆体を分離しておくALD法又はCCVD法を用いることによって、前駆体の前反応を回避する。これに関連して、堆積技術、例えばALDプロセス又はCCVDプロセスを用いて、ケイ素含有膜を堆積させる。1つの実施態様では、基材表面を、ケイ素含有前駆体、酸素源、窒素含有源、又は他の前駆体若しくは試薬の1種以上に交互にさらすことによって、ALDプロセスを通じて、膜を堆積させる。膜の成長は、表面反応の自己制限的な制御、各前駆体又は試薬のパルス長さ、及び堆積温度によって進む。しかし、基材の表面が飽和すると、膜の成長は停止する。
【0058】
ある種の実施態様において、本明細書に記載した方法は、上記の式Iを有する有機アミノジシラン前駆体以外の、1種以上の追加のケイ素含有前駆体をさらに含む。追加のケイ素含有前駆体の例としては、限定されないが、有機ケイ素化合物、例えばモノアミノシラン(例えば、ジ-イソ-プロピルアミノシラン、ジ-sec-ブチルアミノシラン、フェニルメチルアミノシラン);オルガノケイ素化合物、例えば、トリシリルアミン(TSA):モノアミノシラン(ジ-イソ-プロピルアミノシラン、 ジ-sec-ブチルアミノシラン、フェニルメチルアミノシラン);シロキサン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)及びジメチルシロキサン(DMSO));有機シラン(例えばメチルシラン、ジメチルシラン、ビニルトリメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジシリルメタン、2,4-ジシラペンタン、1,4-ジシラブタン、2,5-ジシラへキサン、2,2-ジシリルプロパン、1,3,5-トリシラシクロヘキサン及びこれら化合物のフッ素化された誘導体);フェニル含有有機ケイ素化合物(例えば、ジメチルフェニルシラン及びジフェニルメチルシラン);酸素含有有機ケイ素化合物(例えば、ジメチルジメトキシシラン;1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン;1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン;1,3,5,7-テトラシラ-4-オキソ-へプタン、2,4,6,8-テトラシラ-3,7-ジオキソ-ノナン、2,2-ジメチル-2,4,6,8-テトラシラ-3,7-ジオキソ-ノナン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、[1,3,5,7,9]-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7-テトラシラ-2,6-ジオキソ-シクロオクタン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,3-ジメチルジシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメトキシジシロキサン及びこれら化合物のフッ素化された誘導体)が挙げられる。
【0059】
堆積方法に応じて、ある種の実施態様では、1種以上のケイ素含有前駆体を、所定のモル体積で又は約0.1~約1000マイクロモルで、反応器に導入することができる。この実施態様又は他の実施態様では、ケイ素含有前駆体及び/又は有機アミノジシラン前駆体を、所定の時間間隔で反応器に導入することができる。ある種の実施態様では、その時間間隔は、約0.001~約500秒の範囲となる。
【0060】
ある種の実施態様では、本明細書に記載した方法を用いて堆積させるケイ素含有膜を、酸素含有源、酸素を含む前駆体又は試薬を用いて酸素の存在下で形成させる。酸素含有源は、少なくとも1種の酸素含有源の形態で反応器に導入させることができ、且つ/又は堆積プロセスで用いる他の前駆体に付随して存在させることができる。適切な酸素含有源ガスとしては、例えば水(HO)(例えば、脱イオン水、精製水、及び/又は蒸留水)、酸素(O)、酸素プラズマ、オゾン(O)、NO、NO、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)及びこれらの組合せを挙げることができる。ある種の実施態様では、酸素含有源は、約1~約2000sccm又は約1~約1000sccmの範囲の流量で反応器に導入する酸素源を含む。酸素含有源を、約0.1秒~約100秒の範囲の時間で導入することができる。1つの特定の実施態様では、酸素源は、10℃以上の温度を持つ水を含む。膜をALDプロセス又はサイクリックCVDプロセスによって堆積させる実施態様において、前駆体パルスは、0.01秒超であるパルス時間を有することができ、且つ酸素含有源が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができ、さらに水のパルス時間が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができる。さらなる他の1つの実施態様では、パルスとパルスの間のパージ時間は、0秒程度まで低くすることができ、又はその間にパージをしないで連続的にパルスさせることができる。酸素含有源又は酸素含有試薬を、ケイ素前駆体に対して1:1の比より小さな分子総量で与えて、それにより少なくともいてiの炭素を、堆積させたままのケイ素含有膜に保持させる。
【0061】
ある種の実施態様では、ケイ素含有膜は、ケイ素及び窒素を含む。これらの実施態様では、本明細書に記載した方法を用いて堆積させるケイ素含有膜を、窒素含有源の存在下で形成させる。窒素含有源を、少なくとも1種の窒素含有源の形態で、反応器に導入させることができ、且つ/又は堆積プロセスで用いる他の前駆体に付随して存在させることができる。適切な窒素含有源としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ及びこれらの混合物が挙げられる。ある種の実施態様において、窒素含有源は、約1~約2000sccm又は約1~約1000sccmの範囲の流量で反応器に導入するアンモニアプラズマ、又は水素/窒素プラズマ源ガスを含む。窒素含有源を、約0.1秒~約100秒の範囲の時間で導入することができる。膜をALDプロセス又はサイクリックCVDプロセスによって堆積させる実施態様において、前駆体パルスは、0.01秒超であるパルス時間を有することができ、且つ窒素含有源が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができ、さらに水のパルス時間が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができる。さらなる他の1つの実施態様では、パルスとパルスとの間のパージ時間は、0秒程度まで低くすることができ、又は間にパージをしないで連続的にパルスさせることができる。
【0062】
本明細書で開示した堆積方法は、1種以上のパージガスを伴う場合がある。未反応の反応物及び/又は反応副生成物をパージするために用いるパージガスは、不活性ガスであり、これは前駆体と反応しない。典型的なパージガスとしては、限定されないが、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H)及びこれらの混合物が挙げられる。ある種の実施態様では、パージガス、例えばArを、約0.1秒~1000秒の間に、約10~約2000sccmの範囲の流量で反応器に供給することができ、それにより反応器に残留している場合がある未反応の材料及びあらゆる副生成物を、パージすることができる。
【0063】
前駆体、酸素含有源、窒素含有源並びに/又は他の前駆体、他の物質源ガス及び/若しくは試薬を供給する各工程を、それらを供給する時間を変えることによって実行し、生成ケイ素含有膜の化学両論的な組成を変えることができる。
【0064】
エネルギーを、前駆体、窒素含有源、還元剤、他の前駆体又はこれらの組合せの少なくとも1つに適用して、反応を誘導し、そしてケイ素含有膜又はコーティングを基材に形成させる。そのようなエネルギーは、限定されないが、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子線、光子、リモートプラズマ法及びこれらの組合せによって与えることができる。ある種の実施態様では、二次高周波(secondary rf frequency)源を用いて、プラズマ特性を基材表面で変えることができる。堆積にプラズマを伴う実施態様では、プラズマ生成プロセスは、プラズマを反応器で直接的に生成させる直接プラズマ生成プロセス、あるいはプラズマを反応器の外部で生成させて反応器に供給するリモートプラズマ生成プロセスを、含むことができる。
【0065】
この有機アミノジシラン前駆体及び/又は他のケイ素含有前駆体を、反応チャンバー、例えばCVD反応器又はALD反応器に、様々な方法で提供することができる。1つの実施態様では、液体提供システムを用いることができる。別の実施態様では、液体提供プロセスとフラッシュ気化プロセスが組み合わされたユニット、例えばターボ気化器(MSP Corporation製、ショアビュー、ミネソタ州、米国)を用いて、低揮発度物質を容量分析的に供給することを可能とする。これは、前駆体の熱的分解のない状態で再現性のある輸送及び堆積をもたらすことができる。液体提供配合物中において、本明細書に記載された前駆体は、そのままの液体形態で提供することができ、あるいは、この前駆体を含む溶媒配合物中又は組成物中で使用することができる。それゆえ、ある種の実施態様において、その前駆体配合物は、基材上に膜を形成する特定の最終用途において所望であり且つ有利となるような、適切な特性を有する溶媒成分を含むことができる。
【0066】
式Iを有する前駆体を用いる実施態様では、本明細書に記載した式Iを有する有機アミノジシラン前駆体及び溶媒を含む組成物において選択される溶媒又は溶媒混合物は、その有機アミノジシランと反応しない。その組成物中の重量%による溶媒の量は、0.5~99.5wt%又は10~75wt%の範囲である。この実施態様又は他の実施態様において、溶媒は、式Iの有機アミノジシランの沸点(b.p.)に近いb.p.を有し、又は溶媒のb.p.と式Iの有機アミノシランのb.p.との差は、40℃以下、30℃以下、20℃以下、又は10℃である。あるいは、その沸点の差は、次を任意の端点とする範囲になる:0℃、10℃、20℃、30℃又は40℃。b.p.差の適切な範囲の例としては、限定されないが、0~40℃、20~30℃、又は10~30℃である。組成物中の適切な溶媒の例としては、限定されないが、エーテル(例えば、1,4-ジオキサン、ジブチルエーテル)、第三級アミン(例えば、ピリジン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)、ニトリル(例えば、ベンゾニトリル)、アルキル炭化水素(例えば、オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、メシチレン)、第三級アミノエーテル(例えば、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル)又はこれらの混合物が挙げられる。非限定的ないくつかの典型的な組成物の例としては、限定されないが、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン(b.p.約157℃)及びオクタン(b.p.125~126℃)を含む組成物;ジ-イソ-プロピルアミノジシラン(b.p.約157℃)及びエチルシクロヘキサン(b.p.130~132℃)を含む組成物;ジ-イソ-プロピルアミノジシラン(b.p.約157℃)及びトルエン(b.p.115℃)を含む組成物;ジ-sec-ブチルアミノジシラン及びデカン(b.p.174℃)を含む組成物;ジ-sec-ブチルアミノジシラン及びデカン(b.p.174℃)を含む組成物;ジ-sec-ブチルアミノジシラン及び2,2’-オキシビス(N,N-ジメチルエタンアミン(沸点189C)を含む組成物が挙げられる。
【0067】
他の1つの実施態様における、式Iを有する1種以上の有機アミノジシラン前駆体を含むケイ素含有膜を堆積するための容器について、本明細書で記載する。1つの特定の実施態様では、その容器は、CVDプロセス又はALDプロセスのための反応器に1種以上の前駆体を提供することを可能とするための適切なバルブ及び治具を備えた、少なくとも1つの耐圧容器(好ましくはステンレス鋼製)を有する。この実施態様又は他の実施態様では、式Iのいずれかを有する有機アミノジシラン前駆体を、ステンレス鋼から構成された耐圧容器で与え、そしてその前駆体の純度は、大部分の半導体用途に適切となる98wt%以上、又は99.5wt%以上である。ある種の実施態様では、そのような容器が、前駆体と、望むのであれば1種以上の追加の前駆体とを混合するための手段を有することもできる。これらの実施態様又は他の実施態様では、容器の内容物を、追加の前駆体と事前に混合することができる。あるいは、有機アミノシシラン前駆体及び/又は他の前駆体を、別個の容器に保持することができ、又は有機アミノシシラン前駆体と他の前駆体との分離を保存中に維持するための分離手段を有する単一の容器に、保持することができる。
【0068】
本明細書に記載した方法の1つの実施態様では、サイクリック堆積プロセス、例えばCCVD、ALD又はPEALDを用いることができ、ここでは、本明細書に記載した式を有する有機アミノジシラン前駆体から選択される少なくとも1種のケイ素含有前駆体、及び随意に窒素含有源、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマを用いることができる。
【0069】
ある種の実施態様では、前駆体容器から反応チャンバーに連結するガスラインを、プロセスの必要性に応じて、1以上の温度に加熱し、本明細書に記載した式を有する有機アミノジシラン前駆体の容器を、バブリングのために1以上の温度で維持する。他の実施態様では、本明細書に記載した式を有する少なくとも1種のケイ素含有前駆体を含有する溶液を、直接液体注入(direct liquid injection)のために1以上の温度で維持した気化器に注入する。
【0070】
アルゴン及び/又は他のガスの流れを、キャリアガスとして用いて、前駆体パルスの間の反応チャンバーへの少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体の蒸気の提供を、促進することができる。特定の実施態様では、反応チャンバーのプロセス圧力は、約1Torrである。
【0071】
典型的なALD又はCCVDプロセスでは、基材、例えば限定しないが、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、フレキシブル基材、又は金属窒化物基材を、反応チャンバー内のヒーター台で加熱し、これを初めにケイ素含有前駆体にさらして、この有機アミノジシランを基材の表面に化学的に吸着させる。パージガス、例えば窒素、アルゴン、又は他の不活性ガスは、未吸着の余分な有機アミノジシランをプロセスチャンバーからパージする。十分なパージの後で、酸素含有源を、反応チャンバーに導入して、吸着した表面と反応させた後で、他の1つのパージガスによって、チャンバーから反応副生成物を除去することができる。このプロセスサイクルを、所望の膜厚さを得るように繰り返すことができる。他の実施態様では、減圧下での排出を用いて、未吸着の余分な有機アミノジシランをプロセスチャンバーから除去することができる。ポンプによる十分な排気の後で、酸素含有源を反応チャンバーに導入して、吸着した表面と反応させた後、もう一度ポンプによって排出することで、チャンバーから反応副生成物を除去することができる。さらに、他の実施態様では、有機アミノジシラン及び酸素含有源を、反応チャンバーに同時に流して、基材表面で反応させて酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素を堆積させることができる。サイクリックCVDの特定の実施態様では、パージ工程は行われない。
【0072】
この実施態様、又は他の実施態様において、本明細書に記載した方法の工程を、様々な順番で実行でき、順次的に又は同時に(例えば、他の1つの工程の少なくとも一部の間に)実行でき、そしてこれらのあらゆる組合せで実行することができると理解される。前駆体及び窒素含有前駆体源ガスを提供するそれぞれの工程を、それらを供給するための時間の持続時間を変えることによって実行して、生成ケイ素含有膜の化学量論的組成を変えることができる。
【0073】
本明細書に開示した方法の他の1つの実施態様では、ケイ素及び窒素の両方を含有する膜を、次の工程を含む、ALD堆積法、PEALD堆積法、CCVD堆積法又はPECCVD堆積法を用いて形成する:
a.基材をALD反応器に与える工程;
b.上記ALD反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化19】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を、基材に化学吸着させる工程;
d.未吸着の上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を、パージガスを用いてパージする工程;
e.窒素含有源を、加熱した上記基材上の前記有機アミノジシラン前駆体に与えて、上記吸着した少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体と反応させる工程;及び
f.随意に、あらゆる未反応の窒素含有源をパージ又は排気する工程。
【0074】
他の1つの態様では、次の工程を含む、PEALD堆積法又はPECCVD堆積法によって、酸化ケイ素膜及び炭素ドープ酸化ケイ素膜から選択される膜を形成するための方法が与えられる:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体及び酸素を導入する工程:
【化20】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.上記反応器を、酸素と共にパージガスでパージする工程;
d.RFプラズマを適用する工程;
e.上記反応器を、パージガスでパージする工程、又は上記反応器を排気して反応副生成物を除去する工程;
ここで、上記膜の所望の厚みが得られるまで、b~eの工程を繰り返す。
【0075】
本明細書に開示した方法の他の1つの実施態様では、ケイ素含有膜を、次の工程を含む、ALD堆積法を用いて形成する:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化21】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を、基材に化学吸着させる工程;
d.未吸着の上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を、パージガスを用いてパージする工程;
e.酸素含有源を、加熱した上記基材上の上記有機アミノジシラン前駆体に与えて、上記吸着した少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体と反応させる工程;及び
f.随意に、あらゆる未反応の酸素含有源をパージ又は排気する工程。
【0076】
さらなる態様では、次の工程を含む、PEALDプロセス又はPECCVDプロセスによって、窒化ケイ素膜又は炭窒化ケイ素膜を形成するための方法が与えられる:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体及び窒素含有源を導入する工程:
【化22】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.上記反応器を、上記窒素含有源と共にパージガスでパージする工程;
d.RFプラズマを適用する工程;及び
e.上記反応器をパージガスでパージして、又は上記反応器を排気して、未反応の有機アミノジシラン及び反応副生成物を除去する工程;
ここで、上記膜の所望の厚みが得られるまで、b~eの工程を繰り返す。
【0077】
ここに記載した方法に関して、上記の工程は1サイクルを構成し;このサイクルを、ケイ素含有膜の所望の厚みを得るまで繰り返すことができる。この実施態様又は他の実施態様において、本明細書に記載した方法の工程を、様々な順番で実行することができ、順次的に又は同時に(例えば、他の1つの工程の少なくとも一部の間に)実行でき、そしてこれらのあらゆる組合せで実行することができると理解される。前駆体及び酸素含有源又は窒素源を提供するそれぞれの工程を、それらを供給するための時間の持続時間を変えることによって実行して、生成するケイ素含有膜の化学量論的組成を変えることができる。ただし、ここでは、利用可能なケイ素に対して、常に酸素を化学量論量よりも少なくして用いる。
【0078】
多成分のケイ素含有膜に関して、他の前駆体、例えばケイ素含有前駆体、窒素含有前駆体、還元剤及び/又は他の試薬を、反応チャンバーに交互に導入することができる。
【0079】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様では、ケイ素含有膜を、熱CVDプロセスを用いて堆積させる。この実施態様では、この方法は、次のステップを含む:
a.周囲温度から約700℃までの範囲の1点以上の温度に加熱した反応器に、1以上の基材を配置するステップ;
b.次の式Iで表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入するステップ:
【化23】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);及び
c.酸素含有源を、上記反応器に与えて、上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、そして上記1以上の基材にケイ素含有膜を堆積させるステップ。
このCVD法のある種の実施態様では、上記反応器を、上記導入工程の間に10mTorr~760Torrの範囲の圧力で維持する。ここ記載した方法に関して、上記の工程は1サイクルを構成し;このサイクルを、ケイ素含有膜の所望の厚みを得るまで繰り返すことができる。この実施態様又は他の実施態様において、本明細書に記載した方法の工程を、様々な順番で実行することができ、順次的に又は同時に(例えば、他の1つの工程の少なくとも一部の間に)実行でき、そしてこれらのあらゆる組合せで実行することができると理解される。前駆体及び酸素含有源又は窒素源を提供するそれぞれの工程を、それらを供給するための時間の持続時間を変えることによって実行して、生成するケイ素含有膜の化学量論的組成を変えることができる。ただし、ここでは、利用可能なケイ素に対して、常に酸素を化学量論量よりも少なくして用いる。
【0080】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様において、このプロセスは、アモルファスシリコン膜又は結晶性シリコン膜を、本明細書に記載した式Iの前駆体を用いて堆積する。この実施態様では、この方法は、次の工程を含む:
a.1以上の基材を反応器に配置し、これを周囲温度から約700℃の範囲の1以上の温度に加熱する工程;
b.次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化24】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.還元剤源を上記反応器に与えて、上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させて、そしてケイ素含有膜を1以上の基材に堆積させる工程。
還元剤は、水素、水素プラズマ、塩化水素からなる群より選択される。
このCVD法のある種の実施態様では、上記反応器を、上記導入工程の間に10mTorr~760Torrの範囲の圧力で維持する。ここに記載した方法に関して、上記の工程は1サイクルを構成し;このサイクルを、ケイ素含有膜の所望の厚みを得るまで繰り返すことができる。
【0081】
多成分のケイ素含有膜に関して、他の前駆体、例えばケイ素含有前駆体、窒素含有前駆体、酸素含有源、還元剤及び/又は他の試薬を、反応チャンバーに交互に導入することができる。
【0082】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様において、ケイ素含有膜を、熱CVDプロセスを用いて堆積する。この実施態様では、この方法は、次の工程を含む:
a.1以上の基材を反応器に配置し、これを周囲温度から約700℃の範囲の1以上の温度に加熱する工程;
b.次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化25】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.窒素含有源を、上記反応器に同時に与えて、上記少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、そして上記1以上の基材にケイ素含有膜を堆積させるステップ。このCVD法のある種の実施態様では、上記反応器を、上記導入工程の間に10mTorr~760Torrの範囲の圧力で維持する。
【0083】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様において、上記の有機アミノジシラン前駆体を用いて、ケイ素含有膜を堆積する。このケイ素含有膜は、アモルファス膜、結晶性シリコン膜又はこれらの組合せである。これらの実施態様では、それらケイ素含有膜を、次の工程を含む、ALD又はサイクリックCVDから選択される堆積方法を用いて形成する:
a.基材を反応器に配置し、これを周囲温度から約700℃の範囲の温度に加熱する工程;
b.次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化26】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.還元剤源を上記反応器に与えて、上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させて、そしてケイ素含有膜を1以上の基材に堆積させる工程、ここで還元剤は、水素、水素プラズマ、塩化水素からなる群より選択される。
ここに記載した方法に関して、上記の工程は1サイクルを構成し;このサイクルを、ケイ素含有膜の所望の厚みを得るまで繰り返すことができる。上記膜の所望の厚みは、1Å超、1~10000Åとなることができる。
【0084】
他の1つの態様において、アモルファスシリコン膜又は結晶性シリコン膜を、従来のケイ素前駆体よりも低い温度で原子層堆積プロセス又はサイクリック化学気相成長プロセス若しくは化学気相成長プロセスによって堆積する方法が与えられる。この方法は、次の工程を含む:
a.基材を反応器に与える工程;
b.上記反応器に、次の式Iによって表されるSi-N結合、Si-Si結合、及びSi-H基を有する少なくとも1種の有機アミノジシラン前駆体を導入する工程:
【化27】
(ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;Rは、水素、直鎖又は分岐鎖のC~C10のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのアルキニル基、C~Cのジアルキルアミノ基、C~C10のアリール基、直鎖又は分岐鎖のC~Cのフッ素化アルキル基、電子求引基、及びC~C10のアリール基から選択され;ここで、R及びRは、共に結合して置換若しくは非置換の芳香環、又は置換若しくは非置換の脂肪族環から選択される環を形成することができ;かつn=1又は2);
c.上記反応器を、パージガスでパージする工程、
ここで、上記シリコン膜の所望の厚みが得られるまで、工程b及びcを繰り返す。
【0085】
式Iの前駆体は、加熱によりHSi:二価基又はHSi:基を生成し、これはSi-Si結合を含むオリゴマーの形成、又は基材表面への固定を促進することができると考えられる。それらオリゴマー又は固定されたSiH又はSiHは、さらにアモルファスシリコン膜を形成することができる。この実施態様又は他の実施態様において、これらのオリゴマーは、その後のケイ素膜又は酸化ケイ素膜の堆積用のシード層として機能することができる。
【0086】
特定の実施態様では、本明細書に記載した式Iを有する有機アミノジシラン前駆体を、金属含有膜、例えば限定されないが、金属酸化物膜又は金属窒化物膜のドーパントとして用いることもできる。これらの実施態様では、金属含有膜を、ALDプロセス又はCVDプロセス、例えば本明細書に記載したプロセスによって、金属アルコキシド前駆体、金属アミド前駆体又は有機金属前駆体を用いて堆積する。本明細書に開示した方法と共に用いることができる適切な金属アルコキシド前駆体の例としては、限定されないが、第3族~第6族の金属アルコキシド、アルコキシ配位子とアルキル置換したシクロペンタジエニル配位子との両方を有する第3族~第6族の金属錯体、アルコキシ配位子とアルキル置換したピロリル配位子との両方を有する第3族~第6族の金属錯体、アルコキシ配位子とジケトナート配位子との両方を有する第3族~第6族の金属錯体、アルコキシ配位子とケトエステル配位子との両方を有する第3族~第6族の金属錯体が挙げられ;本明細書に開示した方法と共に用いることができる適切な金属アミド前駆体の例としては、限定されないが、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、(TDMAH)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT)、tert-ブチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET)、tert-ブチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT)、tert-ブチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、エチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET)、エチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT)、エチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT)、tert-アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TAIMAT)、tert-アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、tert-アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル、ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW)、ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン、ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン及びこれらの組合せが挙げられる。本明細書に開示した方法と共に用いることができる適切な有機金属前駆体の例としては、限定されないが、第3族金属シクロペンタジエニル又は第3族金属アルキルシクロペンタジエニルが挙げられる。ここでの典型的な第3族~第6族金属としては、限定されないが、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Yb、Lu、Ti、Hf、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWが挙げられる。
【0087】
ある種の実施態様では、生成するケイ素含有膜又はコーティングを、堆積後処理、例えば限定されないが、プラズマ処理、化学的処理、紫外線照射、電子線照射、及び/又は膜の1つ以上の特性に影響を与える他の処理にさらすことができる。
【0088】
ある種の実施態様では、本明細書に記載したケイ素含有膜は、6以下の誘電率を有する。これらの実施態様又は他の実施態様では、膜は、約5以下、約4以下又は約3.5以下の誘電率を有する場合がある。しかし、他の誘電率(例えば、より高い値又は低い値)を有する膜を、膜の所望の最終用途に応じて形成できることが想定される。本明細書に記載した有機アミノジシラン前駆体及びプロセスを用いて形成されるケイ素含有膜の例は、式Siを有し、ここで、原子百分率重量%で、Siは約10~約40%の範囲を有し;Oは約0%~約65%の範囲を有し;Cは約0%~約75%又は約0%~約50%の範囲を有し;Nは約0%~約75%又は約0%~約50%の範囲を有し;Hは約0%~約50%の範囲を有し、且つx+y+z+v+w=100原子重量%であり、これは例えばXPS又は他の手段で測定される。
【0089】
上述したように、本明細書に記載した方法を用いて、ケイ素含有膜を、基材の少なくとも一部に堆積させることができる。適切な基材の例としては、限定されないが、ケイ素、SiO、Si、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化した炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化した窒化ケイ素、炭化窒化ケイ素、水素化した炭化窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、フレキシブル基材、有機ポリマー、多孔性有機及び無機材料、金属(例えば銅及びアルミニウム)、及び拡散バリア層(例えば限定されないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWN)が挙げられる。この膜は、様々な続く処理ステップ、例えば化学機械平坦化(CMP)処理及び異方性エッチング処理と適合する。
【0090】
堆積させた膜は、限定されないが、コンピューターチップ、光学デバイス、磁気情報ストレージ、支持材料又は支持基材へのコーティング、微小電気機械素子(MEMS)、ナノ電気機械素子、薄膜トランジスター(TFT)、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、IGZO及び液晶ディスプレイ(LCD)を含む用途を有する。
【0091】
次の実施例は、有機アミノジシラン前駆体の調製方法と共に、本明細書に記載した堆積させるケイ素含有膜の調製方法を例証し、決して限定することを意図していない。
【実施例
【0092】
以下の例では、特記しない限り、標準的な抵抗(8~12Ωcm)の単結晶シリコンウェハー基材に堆積させたサンプル膜から物性を得た。
【0093】
例1:モノクロロジシランからのジ-イソ-プロピルアミノジシラン(DIPADS)の合成
機械的撹拌器、コンデンサー、及び添加ロートを備えた3つ口丸底フラスコにおいて、1当量のモノクロロジシランのヘキサン溶液を、コールドバスを用いて-10℃に冷却した。撹拌しながら、2当量のイソ-プロピルアミンを、添加ロートから滴下して加えた。添加が完了した後に、反応混合物を室温まで温めた。この反応混合物を室温で2時間撹拌して、続いて濾過を行った。溶媒のヘキサンを濾液から蒸溜によって除去した。生成物であるジ-イソ-プロピルアミノジシランを、減圧蒸留によって得た。ガスクロマトグラフィ(GC)は、生成物が99%超の純度のジ-イソ-プロピルアミノジシラン(DIPADS)であることを示した[H-NMR(500MHz,C):δ=4.89(m、SiH),3.31(t、SiH),2.93(m、CHMe),1.00(d、CHMe)]。図1は、ジ-イソ-プロピルアミノジシランのTGA/DSCグラフを示しており、TGAは、この化合物が揮発性であることを示し、またDSCは、これが約157℃の沸点を有することを示している。
【0094】
式Iのさらなる有機アミノジシラン前駆体を、ジ-イソ-プロピルアミノジシランと、対応するアミンとの交換反応によって作製し、質量分析(MS:mass spectroscopy)によって特徴付けた。各有機アミノシラン前駆体の分子量(MW)、構造、及び対応するMSフラグメントピークを、それらを同定するために表1に与える。
【0095】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【0096】
例2:ジ-イソ-プロピルアミノジシランの熱安定性
ジイソプロピルアミノジシラン(DIPADS)の約2.0mlのサンプルを、乾燥した不活性条件の下で、4つのステンレス鋼管に装填した。この管に蓋をして、ラボオーブンに置き、4日間80℃で加熱した。4つの加熱したサンプルを、GCで解析し、加熱していない参照サンプルに対しての劣化の程度を確認した。これらのサンプルは、加熱後に99.15%の平均純度を有しており、99.24%の初期純度に対して0.09%の平均劣化率を示しており、またDIPADSが、その優れた熱安定性に起因してケイ素含有膜堆積用の前駆体として適切であることを証明している。ジ-sec-ブチルアミノジシラン及び2,6-ジメチルピペリジノジシランの両方が、両方のケイ素原子の周りでDIPASと同じ化学的環境を有することから、同様の熱安定性を持つであろうことが予想される。
【0097】
比較例2:ジエチルアミノジシラン(DEADS)の熱安定性
約2mlのジエチルアミノジシラン(DEADS)を、封止した2つのステンレス鋼管で80℃で3日間加熱した。加熱前後のサンプルのGC解析は、平均で4.4%の純度の低下を示した。ビス(ジエチルアミノ)ジシラン(ビス-DEADS)が、加熱の結果として3.0%まで生成した。ジシランを、GC-MSでも検出した。観察された劣化は、ジメチルアミノジシラン(DMADS)に関してAbediniら(Inorg. Chem. Vol 2, 608 (1963))によって報告されたものと、以下のように一致している。
2DEADS=ビス-DEADS+ジシラン
これは、DEADS及びDMADSの両方が、その不安定さに起因してケイ素含有膜を堆積するための前駆体として適切とはならない場合があることを示唆していると考えられる。
【0098】
例3:有機アミノジシランを用いたアモルファスシリコン膜のサイクリック化学気相成長 アモルファスシリコン膜を、有機アミノジシラン、例えばジイソプロピルアミノジシラン(DIPADS)及びフェニルメチルアミノジシラン(PMADS)を用いて、300~400℃の範囲の温度で、サイクリックCVDモードで、ホウケイ酸ガラス及びSi基材上の100nmのSi酸化物に堆積させた。この堆積プロセスは、表2に示す次の工程aから工程cで構成されており、1000回繰り返した。
【0099】
【表2】
【0100】
この例は、サイクリックCVD堆積を用いているが、当業者は、このプロセスを、前駆体を連続的に流す通常の熱CVDプロセスに変えることができる。堆積速度は、ケイ素前駆体流量(秒単位)の関数の膜厚(Å単位)として報告されている。プロセスパラメーター及び生成膜特性を、表3に与える。
【0101】
【表3】
【0102】
DIPADSを用いて400℃で堆積させた膜を、ラマン分光法によって解析した。この膜は、図2で与えているように、477cm-1でラマン散乱を有しており、アモルファスシリコン構造であることが確認された。
【0103】
例4:有機アミノジシランを用いた酸化ケイ素の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン(DIPADS)を用いて行った。この堆積を、実験室スケールのALDプロセスツールで行った。この有機アミノジシラン前駆体を、55℃の原料温度で、そのチャンバーに気相で供給した。全てのガス(パージガス、酸素含有源ガス、及び反応物ガス)及び前駆体ラインを加熱して、それにより前駆体流が凝縮のない状態を確実にした。ガス及び前駆体流量を、高速で作動するALDダイヤフラムバルブで制御した。堆積で用いた基材は、12インチの長さのケイ素ストリップであった。基材温度を確認するために熱電対をサンプルホルダーに取り付けた。オゾンを酸素含有源ガスとして用いて堆積を行った。表4に堆積パラメーターを与える。
【0104】
【表4】
【0105】
表4の工程aから工程fを、所望の厚みに到達するまで繰り返した。膜の厚み及び屈折率は、エリプソメーター(FilmTek 2000SE)を用いて、膜からの反射データを所定の物理的モデル(例えば、ローレンツ振動子モデル)にフィッティングすることによって、測定した。厚み不均一性%は、次の式を用いて6点の測定値から計算した:不均一性%=(最大-最小)/(2×平均)。膜密度は、X線反射率法(XRR)を用いて特徴付けた。表5は、生成した酸化ケイ素膜特性を要約しており、また膜組成及び密度を表6に与えている。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
堆積させた全ての膜が、酸化ケイ素に関して典型的な屈折率である1.44~1.46の範囲に入る屈折率を有していた。表6は、炭素含有率及び窒素含有率が、全ての膜についてXPS検出限界未満(<0.1%)であることを示している。さらに、DIPADSは、低温(100℃)で、ハロゲン化ジシラン前駆体、例えばSiClよりもずっと良好な高い堆積速度を示している。これは、ハロゲン化前駆体は、通常オゾン又は酸素に対する反応性があまり高くなく、オゾンを酸素含有源として用いた場合には、酸化ケイ素を堆積させるために高温(>400℃)を必要とするからである。典型的なハロゲン化前駆体は、水及び触媒、例えばピリジンを必要として、それゆえそれらは低温で粒子形成を起こしやすい。
【0109】
図3は、酸化ケイ素膜をDIPADS及びオゾンを用いて300℃で形成する場合の、堆積速度とDIPADSのパルス時間との関係性を示している。DIPADSが自己制限的な挙動を示しており、DIPADSが酸化ケイ素のALDについて適切な前駆体であることが確認される。
【0110】
図4は 酸化ケイ素膜をDIPADS及びオゾンを用いて300℃で形成する場合の、厚みとサイクル回数との関係性を示している。良好な直線関係を示しており、DIPADSが酸化ケイ素のALDについて適切な前駆体であることがさらに確認される。
【0111】
例5:有機アミノジシランを用いる酸化ケイ素膜のプラズマ原子層堆積
酸化ケイ素のALD堆積を、ASM Stellar 3000生産装置を用いて、300mmSiウェハー上に、DIPADS及びオゾンプラズマプロセスから行った。前駆体を、Arキャリアガスを用いて室温で供給する。酸素を、プロセス中で連続的に流して堆積時間を短くする。堆積温度を、30℃及び100℃に設定する。前駆体ラインを加熱して前駆体の凝縮を防いだ。チャンバーの圧力は、堆積の間3Torrにする。堆積の各工程及び堆積パラメーターを表7に与える。
【0112】
【表7】
【0113】
工程cから工程eを500回繰り返して、所望の厚みの膜を得る。堆積させた膜の厚み及び屈折率は、エリプソメーター(FilmTek 2000SE)を用いて、膜からの反射データを所定の物理的モデル(例えば、ローレンツ振動子モデル)にフィッティングすることによって、測定した。厚み不均一性%は、次の式を用いて9点の測定値から計算した:不均一性%=(最大-最小)/(2×平均)。表8は、生成した酸化ケイ素膜の特性を与える。
【0114】
【表8】
【0115】
DIPADSは、1.45~1.46の範囲の屈折率で示されるように、高品質の酸化ケイ素膜を堆積する。表8は、XPSによって炭素及び窒素が検出されないことを示している。膜密度は、XRRで測定した場合、2.1g/ccである。表8の結果は、DIPADSが、比較的低い温度でも、例えば30℃でも、ハロゲン化ジシラン前駆体、例えばSiClよりも優れた、良好な堆積速度を示すことを、表している。この良好な堆積速度は、本発明で規定された有機アミノジシランの高い化学的反応性に起因していると考えられる。
【0116】
例6:DIPADSの有機アミノジシランを用いる窒化ケイ素膜又は炭窒化ケイ素膜のプラズマ原子層堆積
ケイ素含有膜のALD堆積を、ASM Stellar 3000生産装置を用いて、300mmSiウェハー上に、DIPADS及び窒素-水素プラズマプロセスから行った。前駆体を、Arキャリアガスを用いて室温で供給した。堆積温度を、300℃に設定した。前駆体ラインを加熱して前駆体の凝縮を防いだ。チャンバーの圧力を、堆積の間3Torrにした。堆積の各工程及び堆積パラメーターを表9に与える。
【0117】
【表9】
【0118】
工程cから工程eを500回繰り返して、所望の厚みの膜を得る。厚み不均一性%は、次の式を用いて9点の測定値から計算した:不均一性%=(最大-最小)/(2×平均)。X線光電子分光法(XPS)を用いて膜組成を測定し、密度測定に関してはX線反射率法(XRR)を用いた。表10は、生成した膜の特性を与える。
【0119】
【表10】
【0120】
例7:有機アミノジシランを用いた酸化ケイ素膜のサイクリック化学気相成長
ケイ素含有膜を、PMADS及びオゾンを用いて、サイクリック化学気相成長モードで堆積させた。堆積の各工程は、以下の表11に示すとおりであり、堆積温度は300℃であった。
【0121】
【表11】
【0122】
工程bから工程cを500回繰り返して、所望の厚みの膜を得る。堆積させた膜は、1.48の屈折率及び2.3%の不均一性を有しており;堆積速度は、3.7Å/サイクルであった。有機アミノジシランの供給工程後にパージしないで酸化剤を投与したところ、堆積速度は向上し、また良好な均一性も与え、本発明で規定する有機アミノジシランの高い表面の化学反応性をさらに確認した。
図1
図2
図3
図4