(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】異常検出装置および固定構造
(51)【国際特許分類】
G01N 22/02 20060101AFI20221116BHJP
F16B 31/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01N22/02 A
F16B31/00 Z
(21)【出願番号】P 2018227890
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌人
(72)【発明者】
【氏名】美濃谷 直志
(72)【発明者】
【氏名】松永 恵里
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-210234(JP,A)
【文献】特開2009-064111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0190267(US,A1)
【文献】特開2018-013431(JP,A)
【文献】特開2011-141150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
G01L 5/00-5/28
F16B 1/00-47/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体で構成され、部品を固定するボルト、ナット、およびワッシャーと、
絶縁体で構成され、前記部品と前記ワッシャーとの間に配置されるスペーサと
を備える固定構造の異常を検出する異常検出装置であって、
前記固定構造に電磁波を放射する送信アンテナと、
前記固定構造で反射した電磁波を受信する受信アンテナと、
前記送信アンテナより放射される電磁波の周波数を変えて前記受信アンテナにより受信される定在波の周波数特性を取得し、その周波数特性を正常な状態における周波数特性と比較することで前記固定構造の異常を検出する異常検出器と
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記固定構造は、
前記部品上に形成される絶縁性材料と、
前記絶縁性材料上に形成され、前記ワッシャーと電気的に接続される導電性材料と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記固定構造は、
前記ナット側にも前記スペーサおよび前記ワッシャーを備え、
前記ボルト側の前記導電性材料の形状が平面アンテナ形状である
ことを特徴とする請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナと前記部品の距離を測定する測距センサを備え、
前記異常検出器は、前記測距センサにより測定された距離が正常な状態における距離と同じであることを確認したのち、前記固定構造の異常を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の異常検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の
異常検出装置を備えることを特徴とする固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置および固定構造に関し、主として、ボルトやナットなどの留め具の異常を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や鉄塔などの構造物の鋼材の留め具として使用されているボルトとナットは、構造物の振動により緩むことがあり大きな事故の引き金となる。これを防ぐために非特許文献1のようにボルト・ナットを固定した時の回転軸方向の角度をマークする方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「ネジ緩みの早期発見のポイント」、2018年11月12日検索、インターネット<URL:http://maintenance119.com/screw/point03_scr.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1の方法では点検者が目視で確認できるようにボルト・ナットの個所まで近づく必要があるため橋の下や鉄塔の上部に設置されたボルト・ナットの点検への適用は難しい。また、ボルトとナットのどちらが回転するか不明なためボルト・ナット両方を点検する必要がある。さらに、ボルト・ナットが360度の整数倍回転した緩みの場合であっても同じ場所にマークが戻るため緩みがない場合と変化が無いように見える。屋外の構造物に標識したマークは紫外線や風雪により劣化し見えなくなる可能性もある。
【0005】
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、ボルトやナットなどの留め具の異常を検出するのに好適な異常検出装置および固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の態様に係る発明は、導体で構成され、部品を固定するボルト、ナット、およびワッシャーと、絶縁体で構成され、前記部品と前記ワッシャーとの間に配置されるスペーサとを備える固定構造の異常を検出する異常検出装置であって、前記固定構造に電磁波を放射する送信アンテナと、前記固定構造で反射した電磁波を受信する受信アンテナと、前記送信アンテナより放射される電磁波の周波数を変えて前記受信アンテナにより受信される定在波の周波数特性を取得し、その周波数特性を正常な状態における周波数特性と比較することで前記固定構造の異常を検出する異常検出器とを備えることを要旨とする。
【0007】
第2の態様に係る発明は、第1の態様に係る発明において、前記固定構造が、前記部品上に形成される絶縁性材料と、前記絶縁性材料上に形成され、前記ワッシャーと電気的に接続される導電性材料とを備えることを要旨とする。
【0008】
第3の態様に係る発明は、第2の態様に係る発明において、前記固定構造が、前記ナット側にも前記スペーサおよび前記ワッシャーを備え、前記ボルト側の前記導電性材料の形状が平面アンテナ形状であることを要旨とする。
【0009】
第4の態様に係る発明は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る発明において、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナと前記部品の距離を測定する測距センサを備え、前記異常検出器が、前記測距センサにより測定された距離が正常な状態における距離と同じであることを確認したのち、前記固定構造の異常を検出することを要旨とする。
【0010】
第5の実施形態に係る発明は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る異常検出装置を備えることを特徴とする固定構造であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボルトやナットなどの留め具の異常を検出するのに好適な異常検出装置および固定構造を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態における固定構造の一例を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態における固定構造を点検する様子を示す図である。
【
図3】第1の実施形態における異常検出装置の機能ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態における異常検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態における固定構造を点検する様子を示す図である。
【
図6】第3の実施形態における固定構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
≪第1の実施形態≫
図1は、第1の実施形態における固定構造20の一例を示す斜視図である。ここでは、橋梁や鉄塔などの構造物の鋼材の留め具としてボルト21とナット22(図示せず)を使用している場合を例示している。具体的には、二つの鋼板25・26を多数のボルト21とナット22で固定している。ボルト21の下にはワッシャー23とスペーサ24を入れている。
【0015】
図2は、第1の実施形態における固定構造20を異常検出装置10を用いて点検する様子を示している。
図2の固定構造20は、
図1のA-A線に沿う断面構成を示している。
【0016】
固定構造20は、導体で構成され、鋼板25・26を固定するボルト21、ナット22、およびワッシャー23と、絶縁体で構成され、鋼板25・26とワッシャー23との間に配置されるスペーサ24とを備える。鋼板25・26は、電気伝導性の高い部品の一例である。鋼板25・26に空けられた孔Hにボルト21が挿入され、反対側に突出したボルト21のねじが切られた部分21cにナット22が嵌められて固定される。ボルト21の首部21aは、直接、鋼板25に接触しない。ボルト21の径は、孔Hの径よりもが小さいので、通常、ボルト21と鋼板25・26は電気的に導通しない。ボルト21が孔Hに対して偏心して挿入され、ボルト21が孔Hと接触してしまうおそれがある場合は、ボルト21の首下部分21bを被覆加工してもよい。ワッシャー23とスペーサ24の径は特に限定されるものではなく、ボルト21の径と同程度であってもよい。
【0017】
異常検出装置10は、固定構造20の異常を検出する装置であって、固定構造20に電磁波を放射する送信アンテナ11と、固定構造20で反射した電磁波を受信する受信アンテナ12と、送信アンテナ11より放射される電磁波の周波数を変えて受信アンテナ12により受信される定在波の周波数特性を取得し、その周波数特性を正常な状態における周波数特性と比較することで固定構造20の異常を検出する異常検出器13とを備える。以下、固定構造20の異常を検出する方法について具体的に説明する。
【0018】
ボルト21とナット22が正常に鋼板25・26に固定されている状態では、金属製の鋼板25・26と導体で構成されるワッシャー23はスペーサ24を介してボルト21により機械的に固定されており、ボルト21は鋼板25・26の反対側のナット22により機械的に固定されている。また、ナット22は鋼板25・26と電気的に接触している。この状態では、ワッシャー23とボルト21を信号線、鋼板25・26をグランドプレーンとして、ワッシャー23・ボルト21・鋼板25・26をボルト21により短絡された伝送線とみなすことができる。このため、送信アンテナ11から放射される電磁波の波長が、ワッシャー23の半径をスペーサ24の誘電率の平方根で除算した電気長と、鋼板25・26の厚さを鋼板25・26とボルト21の間の誘電体の誘電率の平方根で除算した電気長の和の4倍の整数倍となった場合に定在波が発生する。
【0019】
ナット22が緩んだ状態では、正常な状態では短絡であったナット22と鋼板25・26の間に寄生容量が生じるため、定在波が発生する電磁波の周波数が変化する。この定在波の発生する周波数の変化を検出することによりボルト21・ナット22の固定の異常を検出することができる。
【0020】
送信アンテナ11から放射された電磁波の一部はワッシャー23により反射され受信アンテナ12に到達する。反射の強度は定在波の発生により強くなったり弱くなったりするため、定在波の発生する周波数が変化すると反射強度の周波数特性も変化する。
【0021】
そこで、ボルト21・ナット22が固定された状態で、はじめの周波数特性(初期状態の正常な周波数特性)を異常検出器13で取得し記憶する。このとき、受信アンテナ12はワッシャー23で反射された電磁波だけでなく鋼板25・26で反射された電磁波も受信する。送信アンテナ11・受信アンテナ12と鋼板25・26の距離が変化すると鋼板25・26で反射される電磁波も変化するため、はじめの周波数特性を取得したときの送信アンテナ11・受信アンテナ12と鋼板25・26の距離を測距センサ14で測定し記憶する。
【0022】
点検時は、測距センサ14で送信アンテナ11・受信アンテナ12と鋼板25・26の距離を測定し、その距離がはじめの周波数特性を取得したときの距離と同じであることを確認したのち、異常検出器13で周波数特性を取得する。ここで、異常検出器13で取得した周波数特性がはじめの周波数特性から変化していなければボルト21・ナット22の固定が正常な状態であると判断する。一方、異常検出器13で取得した周波数特性がはじめの周波数特性から変化していればボルト21・ナット22の固定が異常な状態であると判断し、その旨をPCやタブレットなどの外部装置に通知する。
【0023】
図3は、第1の実施形態における異常検出装置10の機能ブロック図である。この異常検出装置10は、固定構造20の異常を検出する装置であって、
図3に示すように、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、異常検出器13と、測距センサ14とを備える。異常検出器13は、記憶部13Aと、取得部13Bと、通信部13Cと、制御部13Dとを備える。記憶部13Aは、各種のデータ(例えば、正常な状態の周波数のピークを含む周波数範囲を示すデータ)を記憶する記憶装置である。取得部13Bは、測距センサ14のセンサ値を取得する機能部である。通信部13Cは、PCやタブレットなどの外部装置と通信を行う機能部である。制御部13Dは、送信アンテナ11や受信アンテナ12などの各部を制御するとともに、異常を検出するために必要な各種の制御処理を実施する機能部である。
【0024】
図4は、第1の実施形態における異常検出装置10の動作例を示すフローチャートである。以下、
図4を用いて異常検出装置10の構成をその動作とともに説明する。
【0025】
まず、点検対象である固定構造20に異常検出装置10を近づけ、固定構造20と異常検出装置10との間の距離を測定する(ステップS1→S2)。次いで、固定構造20と異常検出装置10との間の距離が所定の距離になったことを確認すると、送信アンテナ11から電磁波を放射し、電磁波の周波数を変化させ、定在波を発生させ、そのときの周波数特性を記憶する(ステップS3→S4→S5→S6→S7)。所定の距離とは、具体的には、はじめの周波数特性を取得したときの送信アンテナ11・受信アンテナ12と鋼板25・26の距離(初期状態の距離)である。次いで、このように記憶した周波数特性をはじめに記憶しておいた周波数特性と比較する(ステップS8→S9)。このとき、両者の変化量が閾値より小さい場合は、ボルト21・ナット22の緩みなし(正常)と判断する(ステップS9→S10)。一方、両者の変化量が閾値より大きい場合は、ボルト21・ナット22の緩みあり(異常)と判断する(ステップS9→S11)。例えば、電磁波の強度がピークとなる周波数を検出し、ピークが消失するとかピークがシフトする現象が起こったときに、ボルト21・ナット22の緩みあり(異常)と判断するようになっている。
【0026】
なお、ここでは、固定構造20と異常検出装置10との間の距離が初期状態の距離になったことを確認することとしているが、これに限定されるものではない。すなわち、異常検出装置10が測距センサ14を使用して反射強度の距離補正(推定)を行うようにしてもよい。
【0027】
以上のように、第1の実施形態によれば、ボルト21とナット22が正常に固定されている際の周波数特性と比較した結果に基づいてボルト21とナット22の緩みを検出することが可能である。そのため、遠隔から目視監視が難しい個所に設置されたボルト21・ナット22の一方の測定で緩みを検出でき、360度の整数倍回転した緩みも検出できる。
【0028】
≪第2の実施形態≫
以下、第2の実施形態について説明する。以下の説明では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、同じ点については詳しい説明を割愛する。
【0029】
図5は、第2の実施形態における固定構造20を点検する様子を示す図である。第1の実施形態とは、定在波の発生する周波数を変換する導電性材料27とスペーサ24の厚さより薄い絶縁性材料28を加えたところが異なる。その他は第1の実施形態と同じである。
【0030】
一般にボルト21・ワッシャー23のサイズは構造物によって決まるため、所望の定在波を発生させることが難しい場合がある。そこで、第2の実施形態では、
図5に示すように、ボルト21・ワッシャー23と導電性材料27を電気的に接続している。これにより、ワッシャー23の半径をスペーサ24の誘電率の平方根で除算した電気長と、鋼板25・26の厚さを鋼板25・26とボルト21の間の誘電体の誘電率の平方根で除算した電気長に、導電性材料27の長さを絶縁性材料28の誘電率の平方根で除算した電気長を加えた長さの4倍の整数倍を波長とする周波数で定在波が発生する。そのため、導電性材料27の長さを調整することで所望の定在波を発生させることが可能である。
【0031】
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同じ原理で、ボルト21とナット22が正常に固定されている際の周波数特性と比較した結果に基づいてボルト21とナット22の緩みを検出することが可能である。また、導電性材料27の長さを調整することで所望の定在波を発生させることが可能である。
【0032】
なお、
図5では、ボルト21・ワッシャー23の左側だけに導電性材料27・絶縁性材料28を描いているが、導電性材料27・絶縁性材料28を設ける領域は適宜調整することが可能である。ボルト21側と同様、ナット22側に導電性材料27・絶縁性材料28を設けることも可能である。
【0033】
また、上記の説明では、スペーサ24の厚さより薄い絶縁性材料28を加えることとしているが、絶縁性材料28の厚さは適宜調整することが可能である。すなわち、ボルト21・ワッシャー23と導電性材料27を電気的に接続する構成であればよい。
【0034】
≪第3の実施形態≫
以下、第3の実施形態について説明する。以下の説明では、第2の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、同じ点については詳しい説明を割愛する。
【0035】
図6(a)は、第3の実施形態における固定構造20の断面図であり、
図6(b)は、第3の実施形態における固定構造20の平面図である。第3の実施形態では、ナット22側にもスペーサ24aおよびワッシャー23aを備え、ボルト21側の導電性材料27の形状を平面アンテナ形状にして異常検出装置10のアンテナ11・12と結合効率を向上させ、異常検出装置10のアンテナ11・12を1種にした。
【0036】
導電性材料27で平面アンテナを形成することにより、導電性材料27の平面アンテナのメインローブの角度から放射される電磁波が効率よく平面アンテナに受信されると同時に反射される電磁波のエネルギーもメインローブの角度に放射される。このため、異常検出装置10のアンテナ11・12のメインローブと導電性材料27の平面アンテナのメインローブが重なる位置に異常検出装置10が設置されたとき、異常検出装置10の送信アンテナ11から放射されナット22で反射された電磁波を異常検出装置10の受信アンテナ12により効率よく受信することができる。反射の強度は定在波の発生により強くなったり弱くなったりするため、定在波の発生する周波数が変化すると反射強度の周波数特性も変化する。
【0037】
そこで、ボルト21・ナット22を固定された状態で、はじめの周波数特性を異常検出器13で取得し記憶する。その後は第1の実施形態と同様、異常検出器13で取得した周波数特性がはじめの周波数特性から変化していなければボルト21・ナット22の固定が正常な状態であると判断する。一方、異常検出器13で取得した周波数特性がはじめの周波数特性から変化していればボルト21・ナット22の固定が異常な状態であると判断し、その旨をPCやタブレットなどの外部装置に通知する。
【0038】
以上のように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同じ原理で、ボルト21とナット22が正常に固定されている際の周波数特性と比較した結果に基づいてボルト21とナット22の緩みを検出することが可能である。また、導電性材料27を平面アンテナ形状にして異常検出装置10のアンテナ11・12と結合効率を向上させることが可能である。
【0039】
なお、
図6(b)では、長方形のシンプルなアンテナ形状を例示しているが、アンテナ形状は円状や正方形など様々な形状を採用することができる。このようなアンテナ形状を採用する場合も、送信アンテナ11から放射される電磁波と共振するような波長となるように、図中のラインLの長さが実際に使う周波数を波長に換算したときの整数倍に対応する設計を行う。
【0040】
≪まとめ≫
以上のように、本発明の実施形態における異常検出装置10は、導体で構成され、鋼板25・26を固定するボルト21、ナット22、およびワッシャー23と、絶縁体で構成され、鋼板25・26とワッシャー23との間に配置されるスペーサ24とを備える固定構造20の異常を検出する異常検出装置10であって、固定構造20に電磁波を放射する送信アンテナ11と、固定構造20で反射した電磁波を受信する受信アンテナ12と、送信アンテナ11より放射される電磁波の周波数を変えて受信アンテナ12により受信される定在波の周波数特性を取得し、その周波数特性を正常な状態における周波数特性と比較することで固定構造20の異常を検出する異常検出器13とを備える。これにより、点検対象のボルト21・ナット22に対して、電磁波を放射して励起される定在波を受信アンテナ12で受信し、締まっている際の周波数特性と比較した変化から、ボルト21とナット22の緩みを検出することが可能である。
【0041】
また、固定構造20は、鋼板25・26上に形成される絶縁性材料28と、絶縁性材料28上に形成され、ワッシャー23と電気的に接続される導電性材料27とを備えてもよい。これにより、導電性材料27の長さを調整することで所望の定在波を発生させることが可能である。
【0042】
また、固定構造20は、ナット22側にもスペーサ24aおよびワッシャー23aを備え、ボルト21側の導電性材料27の形状が平面アンテナ形状であってもよい。これにより、導電性材料27を平面アンテナ形状にして異常検出装置10のアンテナ11・12と結合効率を向上させることが可能である。
【0043】
また、送信アンテナ11および受信アンテナ12と鋼板25・26の距離を測定する測距センサ14を備え、異常検出器13は、測距センサ14により測定された距離が正常な状態における距離と同じであることを確認したのち、固定構造20の異常を検出してもよい。すなわち、距離固定の定点測定の場合、測距センサ14は不要であるが、距離が変化した場合、測距センサ14を使用して反射強度の距離補正を行うことが可能である。
【0044】
なお、本発明はこのような異常検出装置10として実現することができるだけでなく、このような異常検出装置10の点検対象である固定構造20としても実現することができる。
【0045】
≪その他の実施形態≫
上記のように、いくつかの実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0046】
10 異常検出装置
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
13 異常検出器
14 測距センサ
20 固定構造
21 ボルト
22 ナット
23 ワッシャー
24 スペーサ
25 鋼板
26 鋼板
27 導電性材料
28 絶縁性材料