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  • 特許-スラリー貯留撹拌装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】スラリー貯留撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 33/40 20220101AFI20221116BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20221116BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20221116BHJP
   B01F 25/00 20220101ALI20221116BHJP
【FI】
B01F33/40
B01D19/00 102
B01F23/50
B01F25/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020029961
(22)【出願日】2020-02-26
(62)【分割の表示】P 2019540104の分割
【原出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020078802
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018041554
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 章博
(72)【発明者】
【氏名】西村 和則
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-023630(JP,U)
【文献】実開昭60-067129(JP,U)
【文献】実開平03-102235(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 33/40
B01F 23/50
B01F 25/00
B01D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子と溶媒とを含むスラリーを貯留する容器を備えるスラリー貯留撹拌装置であって、
前記容器は、前記容器の内側に設けられ、前記容器に供給される気体を通過させて前記スラリーに微細泡を発生させる多孔質体で構成された内壁を有し
記内壁は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜部を有し、下方に向かって縮径しており、
前記容器の底部側の少なくとも一部は、前記内壁を少なくともその一部に有する内装体と、該内装体の外側に設けられた外装体との二重構造を有し、
前記内装体と前記外装体とは離間して設けられており、
前記外装体には、前記内装体と前記外装体との間の空間に前記気体を供給する供給口が設けられているスラリー貯留撹拌装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスラリー貯留撹拌装置であって、
前記供給口が前記外装体の底部に設けられているスラリー貯留撹拌装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスラリー貯留撹拌装置であって、
前記内装体及び前記外装体は、前記容器の底部側とは反対側の本体部から分離可能に構成されているスラリー貯留撹拌装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のスラリー貯留撹拌装置であって、
前記容器内に消泡装置をさらに備えるスラリー貯留撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーを撹拌しながら貯留するスラリー貯留撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な分野の製造工程における中間段階の形態の一つとして、粉末と溶媒とを混合したスラリーがよく知られている。例えば、粉末冶金、磁心、磁石等の原料となる粉末を乾式成形や湿式成形する際に、湿式成形では粉末と油等の溶媒とを混合したスラリーを使用し、乾式成形では粉末と水等の溶媒とを混合したスラリーを使用する。
【0003】
粉末と溶媒との混合で一般的に用いられるボールミルでは、濃度が均一なスラリーを得るため長時間の混合を行うと、アルミナ製ボールやジルコニア製ボールや鉄製ボールといった混合媒体が磨耗し、スラリーに混入する問題があった。また、特に比重が溶媒と比べて数倍以上大きい金属粒子では、混合を停止すると、容器内においてスラリー中の粒子と溶媒とが分離しやすい問題があった。
【0004】
特許文献1では、アトマイズチャンバー内に貯留する金属粒子と溶媒(水)とからなるスラリーに不活性ガス等を供給し、バブリングによって撹拌することで、スラリー中の金属粒子の濃度を均一に保持することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-264107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたアトマイズチャンバーの構造を図4に示す。アトマイズチャンバー120は、下方のコーン(円錐)部140にφ28mmの給気口180を20個分散して配置して構成されている。給気口180へ所定の流量で絶えず供給される不活性ガスによって、アトマイズチャンバー120内のスラリーSをバブリングして撹拌する。
【0007】
しかしながら、アトマイズチャンバーの構造上、給気口180間にバブリングが及ばない領域があり、そこでは撹拌が不十分となるため、粒子がアトマイズチャンバー120の底部に沈殿し易い問題があった。
【0008】
もともとアトマイズチャンバー120内のスラリーSの撹拌を目的とするため、扱うスラリーは溶媒を多く含むものであり、スラリー濃度(溶媒中での粉末の質量濃度)はせいぜい10質量%程度にすぎない。粉末の回収を効率良く行うには、溶媒量を少なくしてスラリー濃度を高めるのが望ましいが、特許文献1に記載されたアトマイズチャンバー120の構造では、沈殿の問題が一層顕著となって粒子の分散が不均一になり易くて、スラリー濃度が60質量%以上の高濃度のスラリーを扱うには不向きであるといった問題もあった
【0009】
そこで本発明は、高濃度のスラリーであっても簡便な手段で容器内において十分に流動させることができて、撹拌性に優れるスラリー貯留撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一実施形態において、粒子と溶媒とを含むスラリーを貯留する容器 を備えるスラリー貯留撹拌装置であって、
前記容器は、前記容器の内側に設けられ、前記容器に供給される気体を通過させて 前記スラリーに微細泡を発生させる多孔質体で構成された内壁 を有するスラリー貯留撹拌装置に関する。
【0011】
一実施形態において、前記容器は、底部に向かって断面積が縮小する錐体部を有することが好ましい。
【0012】
一実施形態において、前記内壁は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜部を有することが好ましい。
【0013】
一実施形態において、前記容器の底部側の少なくとも一部は、前記内壁を少なくともその一部に有する内装体と、該内装体の外側に設けられた外装体との二重構造を有することが好ましい。
【0014】
一実施形態において、前記内装体と前記外装体とは離間して設けられており、前記外装体の底部には、前記内装体と前記外装体との間の空間に前記気体を供給する供給口が設けられていることが好ましい。
【0015】
一実施形態において、前記内装体及び前記外装体は、前記容器の底部側とは反対側の本体部から分離可能に構成されていることが好ましい。
【0016】
一実施形態において、前記スラリー貯留撹拌装置は、前記容器内に消泡装置 をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高濃度のスラリーであっても簡便な手段で容器内において十分に流動させることができて、撹拌性に優れ、溶媒中への粉末の分散の不均一が生じ難いスラリー貯留撹拌装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るスラリー貯留撹拌装置の構造を示す図である。
図2】本発明のスラリー貯留撹拌装置の容器を構成する内装体の構造例を示す図である。
図3】本発明のスラリー貯留撹拌装置の容器を構成する第2錐体部と円筒部とが一体となった本体部の構造例を示す図である。
図4】従来のスラリー貯留撹拌装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係るスラリー貯留撹拌装置について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論可能である。また説明に使用した図面は、発明の要旨の理解が容易なように要部を主に記載し、細部については適宜省略するなどしている。
【0020】
本発明の一実施形態に係るスラリー貯留撹拌装置の構造を図1に示す。なお、図1においては構造が分かり易いように容器の一部を切断した状態を示し、また気体を吸引し圧縮して容器へ送出するコンプレッサーや、容器とコンプレッサーとを繋ぐ管路、あるいは補強用の梁等を省略し、気体の流路を矢印で示している。
【0021】
スラリー貯留撹拌装置1は、容器60を備える。容器60は、Z方向(鉛直方向)の上側では円筒形状の円筒部61を有し、下側では下方(底部)へ向かって次第に断面積が縮小する円錐形状の錐体部62を有する。さらに容器60は、容器60の内側に設けられ、多孔質体で構成された内壁25を有する。容器60の底部側の円錐形状部分(錐体部62)の少なくとも一部は、内装体10とその外側に設けた外装体20との二重構造を有する。内装体10の少なくとも一部は、細かい開気孔(以下細孔と呼ぶ)を有する多孔質体で構成された内壁25を含む。内装体10全体が内壁25で構成されていてもよい。Z方向(鉛直方向)の上側の円筒部61と下側(底部側)の錐体部62とを有する容器60は、支持脚により、その下部を設置面よりも上方に位置させて立設可能としている。なお円筒部61は本発明において必須ではないが、それによって容器60の大容量化と省スペース化を図ることが出来る。また、容器60の底部の形状は円錐形状に限らず、円筒部61がそのまま下方に伸びた円柱状でもよい。円柱状の場合の底部側の先端は、断面コの字状でも断面U字状でもよい。
【0022】
図1では、錐体部62が、底部側の第1錐体部62aと、上側の第2錐体部62bとを組み合わせ連結して構成された例を示している。第2錐体部62bは、円筒部61と一体となって容器60の本体部65を構成する。内装体10及び外装体20を含む底部側の第1錐体部62aは、容器60の本体部65から分離可能に構成されている。下方の第1錐体部62aと上方の第2錐体部62bとはフランジ継手80によってボルトで締結固定され、継手部分はフランジ間のパッキンによりシールされている。第1錐体部62aの内壁25は、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部5aを有していて、第2錐体部62bの内側も同様に傾斜部5bとなっていて、全体として下方に向かって縮経している。図示した例では、第1錐体部62aと第2錐体部62bとが連結して一体となった錐体部62の内側が連続して一定に傾斜する側面となっているが、スラリーの撹拌に影響しない程度であれば、つなぎ部分に多少の段差があっても良い。
【0023】
第1錐体部62aは、内装体10と、その外周に外装体20を有する二重構造となっていて、内装体10と外装体20とは本体部65との連結部を除き離間して配置されている。内装体10と外装体20との間の空間15は、バブリングのための空気や不活性ガスなど、容器60中のスラリーSへ供給される気体が流入する経路となっている。外装体20の底部には、内装体10と外装体20との間の空間15に気体を供給する供給口30が設けられている。本実施形態では、内装体10は第1錐体部62aの内側の傾斜部5aをなす多孔質体で構成された内壁25を含んでいて、コンプレッサーから空間15へ送出された気体を通して容器60内のスラリーへ微細泡を供給する。尚、この第1錐体部62aでは、内装体10(すなわち内壁25)の周方向の全周(傾斜部5aの全周)が多孔質体で形成されていることが好ましい。
【0024】
図2は第1錐体部62aを構成する内装体10の一部断面図であり、図3は円筒部61と第2錐体部62bとが一体となった本体部65の一部断面図である。第1錐体部62a(内装体10)と第2錐体部62bの内面のそれぞれが所定の傾斜角度θ1、θ2をもって形成されている。傾斜部5a、5bの鉛直方向に対する傾斜角度θ1、θ2は、スラリーの撹拌を考慮すればそれぞれ25~50°であるのが好ましい。より好ましくは25~40°である。なお傾斜角度θ1、θ2は同じであっても良いし異なっていても良いが、傾斜角度をθ1≧θ2となるように構成するのが好ましい。
【0025】
図2に示すように、内装体10は中空有底の椀状となっており、内装体10を構成する内壁25の傾斜部5aがスラリーSをとり囲むように構成されていている。コンプレッサーから供給される気体は多孔質体で構成された内装体10の多数の経路(細孔)を通じてスラリーS中に吹き込まれる。多孔質体からスラリーS中に多数の微細な気泡が分散し、それが上昇することによって容器60中の底部から上部まで微細泡が及んで、スラリーSを強制的に撹拌して流動状態とすることが出来る。供給する気体は空気、あるは窒素などの不活性ガスであって、コンプレッサーから供給される気体の最大圧力を0.05~0.6MPa、スラリー1リットルに対する気体の流量を、2リットル/min以上とするのが好ましい。
【0026】
内装体10を容器60の下部(底部側)に設けることで、容器60の上部側で円筒部61の内面の近傍で粒子が沈降しても、沈降した粒子は第2錐体部62bの傾斜部5bに沿って内装体10に至り、多孔質体からの気泡で再びスラリーSに分散及び対流されるため、容器60内にて粒子が堆積するのを防ぐことが出来る。なお錐体部62では、多孔質体の内装体10が傾斜部5a、5bの内表面のうち10%以上の面積を占めるのが好ましい。より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
【0027】
内装体10を構成する多孔質体は、少なくともスラリーの溶媒を通さない程度の流体抵抗を有し、スラリーを貯留した状態で荷重に耐え得るものであれば良い。好ましい材質は、アルミナ、ムライト等のセラミック材料、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料、チタン、スレンレス等の金属材料のいずれかである。成形性、加工性を考慮すれば、樹脂材料や、金属材料が好ましく、耐摩耗性、耐腐食性の観点からステンレス系等の金属材料で形成するのが好ましい。容器60のスラリーと接する他の部分等の材質も、耐摩耗性、耐腐食性の観点からステンレス系等の金属材料で形成するのが好ましい。
【0028】
多孔質体における細孔の径や形状、あるいは分布等の形態は、多孔質体の形成方法によって様々であるが、本発明において多孔質体の細孔の平均気孔径は、少なくともスラリーの溶媒を通さず、微細泡の形成の効果が得られれば良く、限定はされない。細孔が占める割合(空隙率)もまた同様である。多孔質体が市販のものであれば製造者による公称値を参考に選定すればよい。平均気孔径は、例えば3μm以上30μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下がより好ましい。また気孔率は30%以上であるのが好ましく、より好ましくは35%以上である。
【0029】
容器60の天井の少なくとも一部は、スラリーを構成する溶媒や粉末を供給可能なように開閉可能な蓋構造となっているのが好ましい。またスラリーSを容器外へ送出するのに、容器60の天井側からポンプと接続する送出管路をスラリーS中に浸漬させ、スラリーSを撹拌しながら、後工程の成形機や乾燥機等の機器へ送出しても良い。あるいは、内装体10の底部にスラリーSを送出する送出口を設け、容器60の外部から外装体20を越えて送出口に接続した送出管路を通じて容器60の外部にスラリーSを送出してもよい。
【0030】
本発明においてスラリーに用いる溶媒は、一般的な水やエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系や鉱物油、合成油、植物油等の油など特に限定は無い。また粉末も特に限定は無いが、例えば、ファインセラミックス材料、ソフトフェライト、ハードフェライトの磁性粉末や、SmCo磁石やNdFeB磁石等の磁性粉末、あるいはFe-Si合金、Fe-Cr合金、Fe-Cr-Si合金、Fe-Al合金、Fe-Al-Si合金、Fe-Al-Cr合金、Fe-Al-Cr-Si合金、Fe-Ni合金、Fe-M-B系合金(Mは少なくともSi,Cr,Al及びNiの少なくとも1種)の結晶質あるいは非晶質のFe基合金の磁性粉末、ステンレス鋼や超鋼などの非磁性金属粉末など、比重の大きな金属粉末であるほど、本発明の効果が顕著であり好ましい。
【0031】
粉末は、例えば粉砕法やガスアトマイズや水アトマイズ等のアトマイズ法で得られるもので、メジアン径d50で規定される平均粒径が0.5μmから200μm程度の粉末である。
【0032】
スラリー濃度(溶媒中での粉末の質量基準での濃度)は特に限定されず、10質量%以上でもよく、20質量%以上でもよく、30質量%以上でもよい。本実施形態に係るスラリー貯留撹拌装置によると、60質量%以上、70質量%以上、または80質量%以上といった高濃度のスラリーにも対応することができる。ただ、スラリー濃度が高すぎるとスラリーの撹拌性やハンドリング性等が低下するおそれがあるので、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0033】
次にスラリー貯留撹拌装置1によるスラリーの撹拌方法の一例を説明する。まず容器60内に、例えば水などの溶媒を容器60の天井側から供給する。容器60の近くに設けたコンプレッサーを作動させ、多孔質体の内装体10を介して溶媒に空気の微細泡を分散させてバブリングする。容器60の天井側から粉末や、必要に応じてバインダー(例えば、ポリエチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂等の有機バインダー)を投入し、必要ならさらに溶媒を加え、バブリングによって撹拌する。それによって溶媒中に粒子が均一に分散したスラリーを得ることが出来る。コンプレッサーを継続して稼動することで、撹拌状態を維持しながら容器60内にスラリーSを貯留することが出来る。また、コンプレッサーを停止しても再度稼動して撹拌を行えば、溶媒中に粒子が均一に分散したスラリーを得ることが出来る。当然、容器60内に溶媒と粉末や、必要に応じてバインダーを投入した後、コンプレッサーを作動させバブリングし撹拌しても良い。また、微細泡によるバブリングに加え、スラリー撹拌のための公知の部材(撹拌翼等)を併用してもよい。
【0034】
上記バインダーを含むスラリーに気体を吹き込む場合、気体を巻き込んだスラリーは泡立つことがある。そのような泡立ちを経たスラリーを噴霧乾燥すると、嵩密度が低い顆粒が形成されやすい。顆粒の嵩密度の低下防止や他の目的に応じて、容器60内で発生した気泡を消す消泡装置(図示せず)を設けることが好ましい。消泡装置としては、例えば容器60内で回転可能な撹拌翼や遠心撹拌体(例えば、特許第4418019号に記載された攪拌用回転体等)等の撹拌部を有する撹拌機が好適である。撹拌部を容器60内の上方に配置し、スラリー液面に上昇してくる泡を破壊することにより、スラリーの泡立ちを抑制することができる。撹拌機に代えて、又は撹拌機とともに、超音波照射による超音波音圧を利用して泡を破壊し消泡してもよい。
【実施例
【0035】
図1に示すスラリー貯留撹拌装置と同じ構造の装置を作製した。容器60は円筒部61と錐体部62とで構成されていて、円筒部61の直径はφ700mmで、支持脚を除く容器60の高さは900mmである。錐体部62において、第1錐体部62aを構成する内装体10(内壁25)の傾斜部5aの傾斜角度θ1と第2錐体部62bの傾斜部5bの傾斜角度θ2はそれぞれ30°であり、もって錐体部62の内面(スラリー接触面)は連続し傾斜角度が30°となっている。内装体10には市販のステンレス製多孔質体を使用した。目開きが5μmのステンレス製の網を多層に重ねて円錘体形状に成形したものである。錐体部62(62a、62b)の鉛直方向での高さは530mmであって、そのうち第1錐体部62aの高さを220mmとして、錐体部62(62a、62b)の傾斜部5a、5bのうち約30%を多孔質体の内装体10で構成した。
【0036】
イオン交換水を溶媒とし、粉末としてアトマイズ法で得られた磁性粉末を用いた。平均粒径d50が10μmのFe-Al-Cr合金の粉末である。容器60内にイオン交換水を貯めながらバブリングし、水の総量を125リットルとし、そこにFe-Al-Cr合金の磁性粉末を500kg投入して撹拌し、80質量%濃度のスラリーを作製した。撹拌中はコンプレッサーから0.5MPaの空気圧で、スラリー1リットルあたり3リットル/minの空気を供給した。
【0037】
スラリー貯留撹拌装置1を3日間、継続して稼動したが、容器60内で粒子と水とが分離することがなく、スラリーを抜いた後に、容器60の下部への粒子の沈殿、堆積は認められなかった。
【符号の説明】
【0038】
1 スラリー貯留撹拌装置
5a 第1錐体部の傾斜部
5b 第2錐体部の傾斜部
10 内装体
15 空間
20 外装体
25 内壁
60 容器
61 円筒部
62 錐体部
62a 第1錐体部
62b 第2錐体部
65 本体部
S スラリー

図1
図2
図3
図4