(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】食品トレー
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20221116BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20221116BHJP
B65D 1/36 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B65D85/50 140
B65D81/34 U
B65D1/36
(21)【出願番号】P 2019022390
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3146274(JP,U)
【文献】特開2019-142567(JP,A)
【文献】特開2010-202219(JP,A)
【文献】特開2010-36906(JP,A)
【文献】登録実用新案第3052161(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0206074(US,A1)
【文献】国際公開第99/059897(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 81/34
B65D 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍焼きおにぎり及び/又は冷凍おにぎりを収容するための個別トレーが複数設けられた食品トレーであって、
前記個別トレーは、深さの異なる二段底面を有し、
深さの浅い底面は食材を寝かせた状態で収容することができる第一収容部として機能し、
深さの深い底面は食材を立てた状態で収容することができる第二収容部として機能し、
さらに、前記個別トレーは、前記食品トレーの中央に設けられたミシン目を挟んで鏡対称に配置され、
前記個別トレーの周囲には、
第一収容部に食材を寝かせた状態で前記中央に設けられたミシン目に沿って食品トレーを折り畳んだ際に、相対する個別トレーの周囲に設けられた凸部または凹部と互いに嵌合する凹部または凸部が設けられている、食品トレー。
【請求項2】
前記食品トレーには、前記個別トレー並びに前記凸部または凹部を囲うようにミシン目が設けられ、
該ミシン目は前記食品トレーの中央に設けられたミシン目を挟んで鏡対称に設けられている、請求項1記載の食品トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品トレーに関する。より詳しくは、加熱調理に際して蒸し効果を付与することができる食品トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活や生活スタイルなどの変化に伴い、様々な食品が販売されている。なかでも冷凍食品は、調理の手軽さ、味や品質が良いことから、消費者に受け入れられ順調に売り上げを伸ばしている。
【0003】
冷凍食品は喫食時に最適な食感となるように、様々な工夫が施されている。例えば、唐揚げやとんかつなどの衣付きの冷凍食品は、揚げたての食感を味わえるように、衣に粒状澱粉組成物を混ぜ込む方法などが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、喫食時に最適な食感を得るために、容器にも工夫が施されている。例えば、電子レンジで加熱調理すると水滴が発生する。発生した水滴が食材の表面に付着すると、付着した部分が浸軟してしまい、食感が変わってしまう。そのため、発生した水滴との接触を避けるために、容器に溝等を設ける方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、冷凍食品の中には、表面がカリッとした食感ではなく、ふっくらとした食感が最適なものもある。このような食品に対しては、蓋つきの容器に収容することで、解凍した際に発生する水蒸気を利用して蒸し上げる方法が知られている(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2015-167479号公報
【文献】特許4159645号公報
【文献】特開2017-178335号公報
【0007】
ところで、消費者の中には幾つかの食材が少量ずつ入ったバラエティーパックを求める者もいる。バラエティーパックの問題点としては、食材ごとに最適食感となる調理方法が異なる点である。この問題に対しては、添加物などによって調理方法を一元化しても、各食材が求める食感となるのであれば特に問題とはならない。
【0008】
しかし、添加剤などで対応できない場合、例えば蒸す必要のない食材と蒸す必要のある食材とでは、別の解決方法が必要となる。この問題を解決する方法としては、蒸す必要のある食材についてのみ蓋を設ける方法が考えられる。しかし、一部の食材にのみ蓋を設けるとなると、工程数が増えるために費用がかさみ、増加した費用を商品価格に転嫁しなければならないといった問題がある。
【0009】
他の解決方法としては、蒸す必要のない食材も含めてすべての食材に蓋を設ける方法が考えられる。かかる場合、蒸す必要のない食材については加熱調理時に蓋材を撤去すればよい。しかし、すべての食材に蓋材を設けるとなると、包材費用がかさむといった問題がある。また、消費者はいちいち蓋材を撤去しなければならないという煩わしさがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、調理方法の異なる食材であっても、従来からある食品トレーに対して新たな部材を設けることなく、それぞれの食材に適した調理を行うことができ、喫食時に最適な食感を再現することができる包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題解決のため、本発明の食品トレーは、食品を収容するための個別トレーが複数設けられた食品トレーであって、前記個別トレーは、前記食品トレーの中央に設けられたミシン目を挟んで鏡対称に配置され、前記個別トレーの周囲には、前記中央に設けられたミシン目に沿って食品トレーを折り畳んだ際に、相対する収容部の周囲に設けられた凸部または凹部と互いに嵌合する凹部または凸部が設けられている。
【0012】
さらに、上記構成において、個別トレー並びに前記凸部または凹部を囲うようにミシン目が設けられ、該ミシン目は前記食品トレーの中央に設けられたミシン目を挟んで鏡対称に設けられていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、食品トレーを中央に設けられたミシン目に沿って折り曲げることで、簡易的に閉じられた空間を形成することができる。この閉じられた空間内に食材を入れて加熱することで、食材から出た水蒸気が空間内に充満し、食材を蒸すことができる。また、個別トレーの周囲に互いに嵌合する凹凸を設けることで、折り畳まれた容器の浮き上がりを防止し、閉じられた空間を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の食品トレーに対して別部材を新たに設けることなく、食品トレーを折り畳むか折り畳まないかで、調理方法を変えることができる。これにより、食材に適した調理が可能となり、喫食時に最適な食感を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態にかかる食品トレーを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態にかかる食品トレーであって、食材を寝かせて収容した状態を示す平面図である。
【
図3】本実施形態にかかる食品トレーの説明図であって、(a)は
図1におけるX方向から見た図、(b)は
図1におけるY方向から見た図である。。
【
図4】本実施形態にかかる食品トレーの使用方法を説明するための説明図であって、食材が2つの場合の図面である。
【
図5】本実施形態にかかる食品トレーの他の使用方法を説明するための説明図であって、食材が2つの場合の図面である。
【
図6】
図4に係る使用方法のうち、食材が1つの場合を説明するための説明図である。
【
図7】
図5に係る使用方法のうち、食材が1つの場合を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは調理方法の異なる食材として、蒸し調理の必要な冷凍おにぎりと、蒸し調理の必要ない冷凍焼きおにぎりを例に説明する。
【0017】
図1~3に示すように、本実施形態にかかる食品トレー1は、複数の個別トレー1a~1d(
図1の例では4つ)がフランジ10を介して連接した形状となっている。各個別トレー1a~1dはフランジ10に設けられたミシン目20によって、個別に分離可能となっている。本実施形態にかかる食品トレー1を構成する個別トレー1a~1dの基本形状は、左右対称であることを除き、すべて同一となっている。また、各個別トレー1a~1dは、中心線Mを基準に、左右鏡対称となるように配置されている。さらに、各個別トレー1a~1dの配置に合わせて、個別トレーのフランジ10周囲に設けられたミシン目20も、食品トレー1の中央に設けられた中心線Mを挟んで鏡対称に設けられている。
【0018】
続いて、個別トレー1a~1dについて説明する。個別トレー1a~1dは食品を収容するためのものであり、側壁12及び底面14を有している。本実施形態にかかる個別トレー1a~1dは、平面視略台形形状となっている。また、個別トレー1a~1dの側壁12と底面14とは、所定の曲率半径Rを介して接続されている。ここで、曲率半径Rとしては、0.1~20mmが好ましく、3~5mmがより好ましい。
【0019】
本実施形態にかかる個別トレー1a~1dの底面14の一部は、台形形状の一辺に沿って所定の幅で段差となった第二底面15を有する。そして、当該第二底面15より、個別トレー1a~1dはトレー内部に側壁12と底面14に囲われた収容部(以下、「第一収容部18」という。)以外に、側壁12と第二底面15に囲われた第二収容部19を備えている。なお、第一収容部18には食材を寝かせた状態で、第二収容部19には食材を立たせた状態で、それぞれ収容させることができる。
【0020】
一方、台形の上底と斜辺に相当する辺同士の交差する位置の底面は、第一収容部の底面よりも一部盛り上がった形状となっている(
図1の符号30が相当)。本実施形態においては、略扇子形状に盛り上がった形状となっている。これにより、
図2に示すように、第一収容部18に食材を寝かせて置いても、食材が容器内で移動するのを防ぐことができる。なお、食材の動きを制御するための形状は、食材に応じて適宜変更可能であるが、曲面で構成されていることが好ましい。これにより、食材の形状が崩れたり、傷ついたりすることを防ぐことができる。
【0021】
各個別トレー1a~1dの側壁12及び底面14,15には、トレーの内側から外側に向けて複数の溝40が設けられている。また、側壁12に設けられた溝40の一端は、底面15に達するまで設けられている。これにより、加熱時に発生する結露と食材との接触を低減することができるとともに、トレーに強度を付与することができる。溝40の断面形状としては、半円形状、三角形状などがあげられる。また、溝に代えてリブを形成してもよい。
【0022】
図1~3から明らかなように、本実施形態にかかる個別トレー1a~1dのフランジ四角には、係合手段50が設けられている。係合手段50は、後述するように左右鏡対象の収容部18同士を重ね合わせた際に、個別トレー同士を仮固着するためのものである。本実施形態にかかる係合手段50としては既存の技術を用いることができるが、一例としては、凹部と凸部による嵌合方法を用いることができる。また、係合手段50の数は特に制限されないが、四角に設けられていることが望ましい。
【0023】
次に、本実施形態にかかる食品トレー1の素材に説明する。本実施形態においては、冷凍耐性があり、電子レンジ等で加熱した際に融解したり変形したりしない素材であれば特に限定されない。例えば、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂といったポリエチレン樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)樹脂、エチレン-プロピレン共重合体(ブロックポリプロピレン)樹脂などのポリプロピレン系樹脂、その他オレフィンを主体とする共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、ホモポリスチレン(汎用ポリスチレン)樹脂、スチレン-メチルスチレン共重合体樹脂、スチレン-エチルスチレン共重合体樹脂、スチレン-ブチルスチレン共重合体樹脂、スチレン-ブタジエンブロック共重合体樹脂、スチレン-イソプレンブロック共重合体樹脂などのポリスチレン系樹脂などからなる発泡樹脂シートや非発泡な樹脂シート(樹脂フィルム)を採用することができる。これらの樹脂は単一でも組み合わされていても良く、例えば、ホモポリプロピレン樹脂とランダムポリプロピレン樹脂との混合樹脂やホモポリプロピレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂との混合樹脂、汎用ポリスチレン樹脂とその他のポリスチレン系樹脂との混合樹脂などによって構成された樹脂シートを採用することができる。このうち、加工性の観点からポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合樹脂が好ましい。
【0024】
本実施形態にかかる食品トレー1の成形としては、圧空成形、真空成形、深絞り成形、プレス成形、打ち抜き成形、射出成形などによって製造することができる。このうち圧空成形、真空成形、プレス成形が好ましい。
【0025】
次に本実施形態にかかるトレーの使用方法について説明する。本実施形態にかかる食品トレーは、食材に応じて形状を変えて使用することができる。
まず、おにぎりのように喫食時に食材全体がしっとり・ふっくらしていたほうが良い食材の場合について説明する。食材全体をしっとり・ふっくらさせるためには、本実施形態にかかる食品トレーを用いて蒸し状態を再現できれば良い。そこで、
図4に示すように、食品トレーのうち中心線Mを基準に左右いずれかのトレーにおにぎり(鎖線で表記)をセットする。ここでは右側のトレー(手前側のトレー)にセットした。
【0026】
続いて、おにぎりの載っていない側のトレーを向かって中心線Mで折り曲げ、開口部同士を重ね合わせる。このとき、中心線Mがミシン目20になっているため、折り曲げやすい。ミシン目20に沿って折り曲げた後、各個別トレーのフランジ10に設けられた凹部50と凸部50とを嵌合させる。嵌合することで、擬似的に閉じられた空間を形成することができる。
【0027】
次に、嵌合した状態で、食材を電子レンジで加熱調理する。電子レンジで加熱を行っていると、食材から蒸気が発生し、閉じられた空間内に充満する。これにより、蒸し状態を再現することができる。本発明を用いて調理するのに適した食材としては、蒸し鶏や蒸し野菜などが挙げられる。
【0028】
ところで、加熱を継続していると容器内の内圧が高まる。ここで、個別トレー同士は凹部50と凸部50の嵌合によって係合しているが、個別トレー同士のフランジ10は当接しているに過ぎない。そのため、閉じられた空間内の圧力が高まると、当接しているフランジ10同士の隙間から空気や蒸気が抜け出る。これにより容器の変形や破損を防ぐことができる。また、閉じられた空間内の蒸気量が過剰となるのを防ぎ、適度な蒸し状態を維持することができる。さらに、仮に容器を落としても容器同士が嵌合されているため、食材が容器から飛び出てしまうのを防ぐこともできる。
【0029】
一方、焼きおにぎりのように喫食時に表面が乾いていたほうが食感のよい食材の場合について説明する。食材の表面を乾かすためには、先ほどとは逆に蒸し状態とならないようにすればよい。そこで、食品トレーを折り畳まずにそのまま電子レンジで加熱調理すればよい。このとき、乾いた表面の割合を増やすために、食材と食品トレーとの接触面積を減らすことが好ましい。本実施形態において食材と食品トレーとの接触面積を減らすには、
図5に示すように、第二収容部19に焼きおにぎりを立てた状態で加熱調理すればよい。これにより、加熱時に発生する蒸気はレンジ内に放出されるため、食材の表面がしっとりとするのを防ぐことができる。また、リブ40によって容器表面に結露した水滴と食材との接触を極力回避することができるため、最適な食感を得ることができる。
【0030】
なお、上述の説明では、複数個の食材を調理する場合を例に説明したが、
図6,7に示すように、単独で加熱調理することも可能である。
【0031】
以上説明したように、本発明にかかる食品トレーは、従来の食品トレーに新たな部材を設けることなく、食材に応じた調理方法を行うことができる。これにより、喫食時に最適な食感を再現することができる。特に、バラエティーパックなどの、調理方法が異なる食材調理において本発明は有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 食品トレー
1a~1d 個別トレー
10 フランジ
12 側壁
14 底面
15 第二底面
18 第一収容部
19 第二収容部
20 ミシン目
40 溝
50 係合手段