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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】負荷電流検出回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/08 20060101AFI20221116BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20221116BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/687 A
G01R19/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019023384
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020136716
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 賢一
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0207605(US,A1)
【文献】特開2018-014577(JP,A)
【文献】特開平06-013820(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1576859(CN,A)
【文献】特開2009-156835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R19/00-19/32
H02H3/08-3/253
H03K17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートが駆動端子に接続されドレインが第1電源端子に接続されソースが電圧出力端子に接続された第1極性の出力用の第1トランジスタに流れる負荷電流を検出する負荷電流検出回路において、
ゲートが前記駆動端子に接続されドレインが前記第1電源に接続されソースが第1ノードに接続され前記第1トランジスタと相似構造の第1極性の第2トランジスタと、
前記第1ノードと前記電圧出力端子の間に接続された検出抵抗と、
ドレインとゲートが第2ノードに接続されソースが前記第1ノードに接続された第1極性の第3トランジスタと、
ゲートが前記第2ノードに接続されソースが前記電圧出力端子に接続された第1極性の第4トランジスタと、
ゲートが前記第2ノードに接続されソースが前記第4トランジスタのドレインに接続されドレインが第3ノードに接続された第1極性の第5トランジスタと、
前記第2ノードと前記第1電源端子より高い電圧の第2電源端子の間に接続され前記第2ノードに定電流を供給する第1電流源回路と、
前記第3ノードと前記第2電源端子の間に接続され前記第3ノードに前記定電流を供給する第2電流源回路と、
前記第3ノードと前記第2電源端子の間に接続され前記第3トランジスタのドレイン電流と前記第4トランジスタのドレイン電流の差分電流を前記第3ノードに供給する第3電流源回路と、
を備え、前記差分電流をミラーした電流が電流出力端子から検出電流として出力されることを特徴とする負荷電流検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷電流検出回路において、
前記第5トランジスタは、前記定電流がドレインに流れるときゲート・ソース間電圧が0Vとなるデプレッション型であることを特徴とする負荷電流検出回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の負荷電流検出回路において、
前記第1電流源回路は、前記定電流を外部電流端子から取り込む第2極性の第8トランジスタと、該第8トランジスタにカレントミラー接続されドレインが前記第2ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第9トランジスタで構成され、
前記第2電流源回路は、前記第8トランジスタと、前記第8トランジスタにカレントミラー接続されドレインが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第10トランジスタで構成され、
前記第3電流源回路は、前記第3ノードにドレインとゲートが接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第11トランジスタで構成されている、
ことを特徴とする負荷電流検出回路。
【請求項4】
請求項3に記載の負荷電流検出回路において、
前記第1電流源回路を、ゲートとドレインが前記外部電流端子に接続されソースが第4ノードに接続された第2極性の第6トランジスタと、ゲートが前記外部電流端子に接続されドレインが前記第2ノードに接続された第2極性の第7トランジスタと、ゲートとドレインが前記第4ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第8トランジスタと、ゲートが前記第4ノードに接続されドレインが前記第7トランジスタのソースに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第9トランジスタとからなる回路に置き換えたことを特徴とする負荷電流検出回路。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の負荷電流検出回路において、
ゲートが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第12トランジスタと、ゲートが前記外部電流端子に接続されソースが前記第12トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記電流出力端子に接続された第2極性の第13トランジスタと、を備えることを特徴とする負荷電流検出回路。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の負荷電流検出回路において、
前記第1電流源回路は、ゲートとソースが前記第2ノードに接続されドレインが第5ノードに接続されたデプレッション型で第1極性の第14トランジスタで構成され、
前記第2電流源回路は、前記第1電流源回路の電流がミラーされる第2極性の第10トランジスタで構成され、
前記第3電流源回路は、ドレインとゲートが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第11トランジスタで構成されている、
ことを特徴とする負荷電流検出回路。
【請求項7】
請求項6に記載の負荷電流検出回路において、
ゲートが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第12トランジスタと、ゲートが前記第5ノードに接続されソースが前記第12トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記電流出力端子に接続された第2極性の第13トランジスタと、を備えることを特徴とする負荷電流検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲートが駆動端子に接続されソースが電圧出力端子に接続された出力トランジスタに流れる負荷電流を検出する負荷電流検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の負荷電流検出回路として、図5に示す回路(特許文献1の図6や特許文献2の図1)が一般的に用いられている。また、特にデプレッション型トランジスタを使用した回路として、図6に示す負荷電流検出回路(特許文献1の図2)が考案されている。
【0003】
図5に示す負荷電流検出回路は、ゲートが駆動端子3に接続されソースが電圧出力端子2に接続されドレインが第1電源端子1に接続されたNMOSの出力トランジスタM1の負荷電流を検出する回路であり、ゲートが入力端子3に接続されドレインが第1電源端子1に接続されたNMOSの検出トランジスタM2と、ドレインが検出トランジスタM2のソースに接続されソースが電流出力端子9に接続されたNMOSトランジスタM21と、非反転入力端子が電圧出力端子2に接続され反転入力端子がトランジスタM21のドレインに接続され出力端子がトランジスタM21のゲートに接続されたオペアンプ10とを備える。検出トランジスタM2は出力トランジスタM1と構造相似(例えばサイズ比がM1:M2=1000:1)となっている。オペアンプ10とNMOSトランジスタM21はバッファ回路を構成している。
【0004】
このため、出力トランジスタM1のソースと検出トランジスタM2のソースは、オペアンプ10によって同一電圧に制御されるので、両トランジスタM1、M2のゲート・ソース間電圧が同一となり、ドレイン・ソース間電圧も同一となるので、検出トランジスタM2には出力トランジスタM1とのサイズ比に応じた電流が流れる。この電流はトランジスタM21のドレインに流入しソースより電流出力端子9に検出電流Ioutとして出力される。
【0005】
図6に示す負荷電流検出回路は、検出トランジスタM2のソースと電圧出力端子2の間に検出抵抗R1接続している。そして、ゲートとドレインを共通接続したNMOSトランジスタM3のソースを検出トランジスタM2のソースと検出抵抗R1の共通接続点に接続している。また、ゲートをトランジスタM3のゲートに接続したNMOSトランジスタM4のソースを電圧出力端子2に接続している。さらに、トランジスタM3と第1電源端子1の間にソースとゲートを共通接続したデプレッション型型のPMOSトランジスタM22を電流源として接続し、トランジスタM4と第1電源端子1の間にソースとゲートを共通接続したデプレッション型のPMOSトランジスタM23を別の電流源として接続している。電流出力端子9はトランジスタM4のドレインとトランジスタM23のソースの共通接続点に接続される。
【0006】
この負荷電流検出回路では、検出トランジスタM2に流れる電流が検出抵抗R1に流れることで、トランジスタM3とM4のゲート・ソース間の電圧に差が生じるので、その差分に応じた電流が電流出力端子9から検出電流Ioutとして出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-039573号公報
【文献】特開平06-180332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図5で説明した負荷電流検出回路において、検出電流Ioutを他の回路で利用するためには、バッファを構成するトランジスタM21のソースとGNDの間に抵抗を挿入して検出電流Ioutを電圧に変換して出力させたり、あるいはそのトランジスタM21のソースとGNDの間にカレントミラー回路を構成してカレントミラー比に応じた電流が得られるようにする必要がある。
【0009】
しかし、このように構成した負荷電流検出回路において電圧出力端子2がGNDに短絡した場合、出力トランジスタM1のソースはGND電圧となるが、検出トランジスタM2のソースはGNDとの間にトランジスタM21と前述した検出電流を取り出す手段として抵抗やカレントミラー回路が挿入されているため、検出トランジスタM2のソースはGNDより高い電圧となってしまう。
【0010】
このため、出力トランジスタM1と検出トランジスタM2が同一の駆動電圧で動作する関係が成り立たず、検出トランジスタM2は出力トランジスタM1の相対比に応じた電流を流すことができない。つまり、この負荷電流検出回路は、電圧出力端子2が短絡した時に正常に機能しない問題がある。また、この負荷電流検出回路ではオペアンプ10を使用するため、回路規模が大きくなるという問題もある。
【0011】
図6に示す負荷電流検出回路では、その回路が動作するためには最低でも、デプレッション型のトランジスタM22、M23のソース・ドレイン間電圧と、トランジスタM3のゲート・ソース電圧と、検出抵抗R1に生じる電圧降下の和に相当する電圧が、出力トランジスタM1のドレイン・ソース間に生じる必要がある。
【0012】
しかし、負荷4に第1電源端子1からの電流を高効率に供給することが必要であるので、出力トランジスタM1にはON抵抗の小さいトランジスタが一般的に用いられることから、負荷電流が小さくなると出力トランジスタM1のドレイン・ソース間電圧が低くなり、上記した和に相当する電圧が生ぜず、負荷電流検出回路が機能しない問題がある。
【0013】
また、この負荷電流検出回路は、電圧出力端子2に流れる負荷電流の変化を、電流出力端子9と電圧出力端子2の間の電圧差として出力するため、過電流リミットのように一定値を超えたかどうかの判定は容易にできるが、電圧出力端子2に流れる負荷電流と電流出力端子9に得られる検出電流Ioutの関係が非線形となり、かつその相関にはデプレッション型のトランジスタM22、M23のチャネル長変調効果(λ特性)が関わるため、電圧出力端子2に流れる検出電流Ioutを連続的にモニタする用途には容易に使用できない。
【0014】
本発明の目的は、負荷電流が少ないときでもその負荷電流を正確に検出でき、電圧出力端子がGNDに短絡した場合でもその電圧出力端子に流れる負荷電流を検出でき、回路規模も小さくできるようにした負荷電流検出回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、ゲートが駆動端子に接続されドレインが第1電源端子に接続されソースが電圧出力端子に接続された第1極性の出力用の第1トランジスタに流れる負荷電流を検出する負荷電流検出回路において、ゲートが前記駆動端子に接続されドレインが前記第1電源に接続されソースが第1ノードに接続され前記第1トランジスタと相似構造の第1極性の第2トランジスタと、前記第1ノードと前記電圧出力端子の間に接続された検出抵抗と、ドレインとゲートが第2ノードに接続されソースが前記第1ノードに接続された第1極性の第3トランジスタと、ゲートが前記第2ノードに接続されソースが前記電圧出力端子に接続された第1極性の第4トランジスタと、ゲートが前記第2ノードに接続されソースが前記第4トランジスタのドレインに接続されドレインが第3ノードに接続された第1極性の第5トランジスタと、前記第2ノードと前記第1電源端子より高い電圧の第2電源端子の間に接続され前記第2ノードに定電流を供給する第1電流源回路と、前記第3ノードと前記第2電源端子の間に接続され前記第3ノードに前記定電流を供給する第2電流源回路と、前記第3ノードと前記第2電源端子の間に接続され前記第3トランジスタのドレイン電流と前記第4トランジスタのドレイン電流の差分電流を前記第3ノードに供給する第3電流源回路と、を備え、前記差分電流をミラーした電流が電流出力端子から検出電流として出力されることを特徴とする。
【0016】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の負荷電流検出回路において、前記第5トランジスタは、前記定電流がドレインに流れるときゲート・ソース間電圧が0Vとなるデプレッション型であることを特徴とする。
【0017】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の負荷電流検出回路において、前記第1電流源回路は、前記定電流を外部電流端子から取り込む第2極性の第8トランジスタと、該第8トランジスタにカレントミラー接続されドレインが前記第2ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第9トランジスタで構成され、前記第2電流源回路は、前記第8トランジスタと、前記第8トランジスタにカレントミラー接続されドレインが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第10トランジスタで構成され、前記第3電流源回路は、前記第3ノードにドレインとゲートが接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第11トランジスタで構成されている、ことを特徴とする。
【0018】
請求項4にかかる発明は、請求項3に記載の負荷電流検出回路において、前記第1電流源回路を、ゲートとドレインが前記外部電流端子に接続されソースが第4ノードに接続された第2極性の第6トランジスタと、ゲートが前記外部電流端子に接続されドレインが前記第2ノードに接続された第2極性の第7トランジスタと、ゲートとドレインが前記第4ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第8トランジスタと、ゲートが前記第4ノードに接続されドレインが前記第7トランジスタのソースに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第9トランジスタとからなる回路に置き換えたことを特徴とする。
【0019】
請求項5にかかる発明は、請求項3又は4に記載の負荷電流検出回路において、ゲートが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第12トランジスタと、ゲートが前記外部電流端子に接続されソースが前記第12トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記電流出力端子に接続された第2極性の第13トランジスタと、を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項6にかかる発明は、請求項1又は2に記載の負荷電流検出回路において、前記第1電流源回路は、ゲートとソースが前記第2ノードに接続されドレインが第5ノードに接続されたデプレッション型で第1極性の第14トランジスタで構成され、前記第2電流源回路は、前記第1電流源回路の電流がミラーされる第2極性の第10トランジスタで構成され、前記第3電流源回路は、ドレインとゲートが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第11トランジスタで構成されている、ことを特徴とする。
【0021】
請求項7にかかる発明は、請求項6に記載の負荷電流検出回路において、ゲートが前記第3ノードに接続されソースが前記第2電源端子に接続された第2極性の第12トランジスタと、ゲートが前記第5ノードに接続されソースが前記第12トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記電流出力端子に接続された第2極性の第13トランジスタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1電源端子及びその第1電源端子よりも電圧の高い第2電源端子を使用するので、電圧出力端子に流れる負荷電流が少ないときでも正確な電流を得ることができる。また、電圧出力端子がGNDに短絡した場合でも第5トランジスタによって第4トランジスタを飽和領域で動作させることができるので、電圧出力端子に流れる電流を検出できる。さらに、オペアンプを使用しないので回路規模も小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施例の負荷駆動制御回路の回路図である。
図2】本発明の第2実施例の負荷駆動制御回路の回路図である。
図3】本発明の第3実施例の負荷駆動制御回路の回路図である。
図4】本発明の第4実施例の負荷駆動制御回路の回路図である。
図5】従来の負荷駆動制御回路の回路図である。
図6】従来の別の例の負荷駆動制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施例>
図1に本発明の第1実施例に係る負荷駆動制御回路を示す。以下で説明するMOSトランジスタは、特別に指摘しない限りエンハンスメント型である。M1はNMOSの出力トランジスタであり、ゲートが駆動端子3に接続され、ドレインが第1電源端子1に接続され、ソースが電圧出力端子2に接続されている。第1電源端子1の電圧はVdd1である。M2は出力トランジスタM1と構造相似(サイズ比が例えばM1:M2=1000:1)のNMOSの検出トランジスタであり、ゲートが駆動端子3に接続され、ドレインが第1電源端子1に接続され、ソースがノードN1に接続されている。ノードN1と電圧出力端子2との間には検出抵抗R1が接続されている。負荷4は電圧出力端子2と接地GNDの間に接続されている。また、駆動端子3にはチャージポンプ5から電源が供給されてON/OFF信号(“H”/“L”)を出力する負荷駆動制御回路6が接続されている。
【0025】
両トランジスタM1、M2は構造相似のトランジスタであるので、ゲート・ソース間電圧とドレイン・ソース間電圧が等しければ、検出トランジスタM2には出力トランジスタM1とのサイズ比に応じた電流が流れる。そのサイズ比が上記のように、M1:M2=1000:1であれば、出力トランジスタM1に1Aの電流が流れたとき、検出トランジスタM2には1mAの電流が流れる。
【0026】
ただし実際には、両トランジスタM1、M2のソース間に検出抵抗R1が接続されているため、検出トランジスタM2のゲート・ソース間電圧とドレイン・ソース間電圧は、検出抵抗R1による電圧VR1の降下分だけ、出力トランジスタM1のそれらよりも小さくなり、両トランジスタM1、M2のドレイン電流Id1、Id2の相対比は、サイズ比からずれて誤差が生じる。
【0027】
そこで、両トランジスタM1、M2のサイズ比をなるべく大きく設定し、かつ検出抵抗R1の抵抗値をなるべく小さい値に設定することで、過電流保護が働く最大電流時であっても、検出抵抗R1の両端に生じる最大電圧が100mV程度以下になるように抑える必要がある。例えば、出力トランジスタM1の通常動作時の電流が1.5A、過電流リミットが3Aであるとすれば、検出抵抗R1の値を20Ωに設定する。
【0028】
これにより、通常の負荷駆動時では、出力トランジスタM1を流れるドレイン電流Id1(負荷電流)は0A~1.5Aの範囲で変化し、検出トランジスタM2のドレイン電流Id2は0A~1.5mAで変化する。このため、検出抵抗R1に生じる電圧は、通常の負荷動作時は0V~30mVの範囲で変化し、過電流リミットの3Aの時は検出トランジスタM2に3mAが流れるので60mVの電圧となる。
【0029】
M3、M4は検出抵抗R1に流れる電流を検出するためにカレントミラー接続されたNMOSトランジスタである。トランジスタM3はゲートとドレインがノードN2に接続され、ソースがノードN1に接続されている。トランジスタM4はゲートがノードN2に接続され、ソースは電圧出力端子2に接続されている。
【0030】
M5はそのトランジスタM3、M4のドレイン電圧を揃えるため接続されたデプレッション型のNMOSトランジスタであり、ゲートがノードN2に接続され、ソースがトランジスタM4のドレインに接続され、ドレインがノードN3に接続されている。
【0031】
M6、M7は外部電流端子7から供給される定電流IrefをトランジスタM7にミラーするようカレントミラー接続されたPMOSトランジスタである。トランジスタM6はゲートとドレインが外部電流端子7に接続され、ソースがノードN4に接続されている。トランジスタM7はゲートが外部電流端子7に接続され、ドレインがノードN2に接続されている。
【0032】
M8、M9、M10はトランジスタM6に流れる定電流IrefをトランジスタM9、M10にミラーするようカレントミラー接続されたPMOSトランジスタである。トランジスタM8はゲートとドレインがノードN4に接続され、ソースが電圧Vdd2(Vdd2>Vdd1)の第2電源端子8に接続されている。トランジスタM9はゲートがノードN4に接続され、ドレインがトランジスタM7のソースに接続され、ソースが第2電源端子8に接続されている。トランジスタM10はゲートがノードN4に接続されドレインがノードN3に接続され、ソースが第2電源端子8に接続されている。トランジスタM8、M9からなるカレントミラー回路、あるいはトランジスタM6~M9からなるカスコード接続のカレントミラー回路は、請求項記載の第1電流源回路を構成している。トランジスタM8、M10からなるカレントミラー回路は請求項記載の第2電流源回路を構成している。
【0033】
M11、M12はノードN3から流出する電流の一部を電流出力端子9にミラーして出力するようカレントミラー接続されたPMOSトランジスタである。トランジスタM11はゲートとドレインがノードN3に接続され、ソースが第2電源端子8に接続されている。トランジスタM12はゲートがノードN3に接続され、ドレインが電流出力端子9に接続され、ソースが第2電源端子8に接続されている。トランジスタM11は請求項記載の第3電流源回路を構成している。
【0034】
外部電流端子7から供給される定電流Irefの値は、小さいほど消費電流を減らせる利点がある。しかし、検出抵抗R1に生じる電圧変化によりトランジスタM4に流れる電流の増減に対して著しく小さいと、検出電流Ioutと検出トランジスタM2のドレイン電流Id2との比例関係の線形性が損なわれることになるため、過電流リミット時に流れる負荷電流の増分程度、例えば10μA程度に設定する。
【0035】
また、トランジスタM3、M4は、その飽和ドレイン電圧が検出抵抗R1に生じる電圧VR1より数倍大きくないと、検出電流Ioutと検出トランジスタM2のドレイン電流Id2との比例関係の線形性が損なわれる。このためには、そのトランジスタM3、M4の利得係数βn(=μ・Cox・(W/L))が高いことは不適であり、最大でも1000μA/V程度に利得係数βnを抑える必要がある。μはキャリア移動度、Coxは絶縁ゲートの単位容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長である。しかし、利得係数βnが低過ぎると検出感度が落ちてしまうことから、実用的には400~1000μA/V程度が適切である。
【0036】
トランジスタM5、M7には、電圧出力端子2と接地GNDとの短絡時や負荷駆動をしていないOFF時に、電源電圧Vdd2に相当する電圧が、それぞれのドレイン・ソース間に印加される。そこで、トランジスタM5、M7には電源電圧Vdd2より十分に高い耐圧のトランジスタを用いる。また、トランジスタM5は、そのドレイン・ソース間に定電流Irefが流れるとき、ゲートとソースが同一電圧になるようなサイズに調整されている。
【0037】
電源電圧Vdd2としては、両トランジスタM1、M2のゲート駆動用に用意されたチャージポンプ回路5の出力電圧を直接接続し、あるいは図示しないON/OFF制御のスイッチを介して接続して利用する。
【0038】
さて、負荷駆動制御回路6から駆動端子3に入力する信号が“H”になると、両トランジスタM1、M2がON状態となる。ここで、出力トランジスタM1がドレイン電流Id1で負荷4を駆動している状態について考える。このとき、検出トランジスタM2のドレイン電流Id2は、出力トランジスタM1のドレイン電流Id1の1/1000となって、検出抵抗R1を経由して電圧出力端子2に流れる。
【0039】
電圧出力端子2の電圧Voutは、出力トランジスタM1のON抵抗と電圧出力端子2に流れる負荷電流により決まる。通常では出力トランジスタM1には、損失低減の目的からON抵抗の小さいトランジスタが使用されるので、電圧出力端子2の電圧Voutは出力トランジスタM1のドレインに印加する電源電圧Vdd1よりも数百mVだけ低い電圧となっている。
【0040】
検出抵抗R1には、検出トランジスタM2のドレイン電流Id2の他にトランジスタM3からの定電流Irefも流れ込んでいるので、検出抵抗R1に生じる電圧VR1は以下の式で表せる。
VR1=R1×(Id2+Iref) (1)
【0041】
定電流Irefが流れている際のトランジスタM3のゲート・ソース間電圧をVgs3とすると、トランジスタM4のゲート・ソース間電圧Vgs4は以下の式となる。
Vgs4=Vgs3+VR1 (2)
【0042】
トランジスタM3のドレイン・ソース間電圧Vds3は、そのトランジスタM3の「閾値電圧+飽和ドレイン電圧」である。トランジスタM3、M4のドレインがトランジスタM5のゲート・ソースを介して接続されていることから、トランジスタM4のドレイン電圧はトランジスタM3のドレイン電圧にほぼ等しい。また、トランジスタM3、M4のドレイン電流に関しては、チャネル長変調効果の影響はとても小さいと判断できる。
【0043】
よって、チャネル長変調効果を省いて、トランジスタM3のドレイン電流をId3(=Iref)、トランジスタM4のドレイン電流をId4、トランジスタM3、M4の閾値電圧をVtnとすると、ドレイン電流Id3、Id4は、それぞれ以下のようになる。
Id3=(βn/2)×(Vgs3-Vtn) (3)
Id4=(βn/2)×(Vgs4-Vtn) (4)
【0044】
トランジスタM3の飽和ドレイン電圧をVef3とすると、ゲートとドレインが共通接続されたトランジスタM3はVds3=Vgs3であるので、
Vef3=Vgs3-Vtn (5)
となり、この飽和ドレイン電圧Vef3を用いて表すと、式(3)、(4)は以下のようになる。
Id3=(βn/2)×(Vef3) (6)
Id4=(βn/2)×(Vgs3+VR1-Vtn)
=(βn/2)×(Vef3+VR1) (7)
【0045】
トランジスタM3のドレイン電流Id3とトランジスタM4のドレイン電流Id4の差分電流ΔIdは以下のように表せる。
ΔId=Id4-Id3
=(βn/2)×VR1×(VR1+2×Vef3) (8)
式(8)は電圧VR1の2次関数であるが、VR1よりも「2×Vef3」がある程度大きければ、「(βn/2)×(VR1+2×Vef3)」を係数としたVR1の1次関数とみなすことができる。
【0046】
このためには、前述したとおり、トランジスタM3、M4にその飽和ドレイン電圧Vef3が大きくなるように、利得係数βnが高過ぎないNMOSトランジスタを選択する必要がある。例えばトランジスタM3、M4の利得係数がβn=500μA/V、閾値電圧がVtn=0.7Vであり、定電流がIref=10μAであって、電圧VR1が0~60mV変動した場合について試算すると、線形近似からの誤差はおよそ±3%に収まり、ΔIdとVR1の関係を線形とみなすことができる。もちろん、VR1の2次式として差分電流ΔIdを算出してもよい。
【0047】
トランジスタM4のドレイン電流Id4は、トランジスタM5を経由してトランジスタM10とM11から供給される。このうちの定電流IrefがトランジスタM10から供給され、差分電流ΔIdがトランジスタM11から供給されることが理想である。しかし、トランジスタM9、M10のカレントミラー比(理想は1:1)のずれが大きいと、正確な差分の差分電流ΔIdがトランジスタM11から供給されない事になり、検出電流Ioutに誤差が生じてしまう。
【0048】
このことについて、本実施例では、トランジスタM8、M9にトランジスタM7、M9をカスコード接続していることから、トランジスタM9のソース・ドレイン間電圧Vsd9が、トランジスタM8のソース・ドレイン間電圧Vsd8にほぼ等しくなる(Vsd9≒Vsd8)。一方、トランジスタM10のソース・ドレイン間電圧Vsd10は、トランジスタM11のソース・ドレイン間電圧Vsd11に等しく(Vsd10≒Vsd11)なる。トランジスタM8、M11はドレイン電流の値が異なるために飽和ドレイン電圧値に違いはあるが、どちらもソース・ドレイン間電圧が「閾値電圧+飽和ドレイン電圧」となるため、トランジスタM9、M10の動作点は同様となるので、トランジスタM9、M10のカレントミラー比のずれは低く抑えられる。
【0049】
例えば、出力トランジスタM1のドレイン電流Id1=0のときは、トランジスタM3、M4のドレイン電流Id3、Id4は同じ10μAとなるので、
Vds3=Vgs3=Vgs4=(2×Iref/βn)1/2+Vtn
=900mV (9)
である。VR1=20mVのときのトランジスタM4のゲート・ソース間電圧Vgs4は、電圧Vds3よりも20mVだけ増大するので、
Vgs4=900mV+20mV=920mV (10)
となる。この電圧Vgs4を式(4)に当てはめると、Id4=12.1μAとなる。この電流Id4がトランジスタM10、M11から供給されることになる。
【0050】
トランジスタM9に定電流Iref=10μAが流れる場合にチャネル長変調係数λ(0.05V-1)の影響を考慮すると、ドレイン・ソース間電圧がトランジスタM9より少し小さいトランジスタM10のドレイン電流Id10は、10μAよりもわずかに少ないと考えられるが、説明を容易にするためにそのドレイン電流Id10も10μAであるとし、残りの2.1μAがトランジスタM11のドレイン電流Id11として流れるとすると、トランジスタM11のドレイン・ソース間電圧Vds11(=Vsg11)は、
Vds11=Vgs11=(2×Id11/βp)1/2+Vtp
=-792mV (11)
となる。Vtp=-0.7V、βp=500μA/Vである。
【0051】
トランジスタM6、M7、M8、M9はカスコード形式の電流源を構成しており、このように構成することでトランジスタM9のドレイン・ソース間電圧Vsd9はトランジスタM8のドレイン・ソース間電圧Vds8とほぼ等しくなる。つまりトランジスタM9もドレインとゲートを短絡させていないもののドレイン・ソース間電圧Vds9とゲート・ソース間電圧Vgs9が等しくなる。トランジスタM9のドレイン電流Id9を求める式はλを考慮して以下のようになる(Vgs9とVds9はソース基準で負として記述してるので、λの前は“-“になっている)。λ=0.05V-1である。
Id9=(βp/2)×(Vgs9-Vtp)2×(1-λ×Vds9)
=10μA (12)
【0052】
この式(12)はVgs9についての3次方程式であり、その解を求めることでId9=10μA時のVgs9(=Vds9)を求めることができるが、3次方程式を手計算で求めるのは容易でないので、表計算ソフトにより近似値を求めると、Vgs9≒-896mVとなる。これを用いるとId9≒10.034μAとなる。
【0053】
トランジスタM10のゲート・ソース間電圧Vgs10はトランジスタM9のゲート・ソース間電圧Vgs9に等しく、またドレイン・ソース間電圧Vds10はトランジスタM11のドレイン・ソース間電圧兼ゲート・ソース間電圧(Vds11=Vgs11)に等しいので、これらの値を代入してトランジスタM10のドレイン電流Id10を求めると、
Id10=(βp/2)×(Vgs10-Vtp)2×(1-λ×Vds10)
=9.983μA (13)
となる。
【0054】
以上のことからトランジスタM9とM10のドレイン電流の比を求めると、
Id10/Id9=9.983/10.034≒0.9949 (14)
となり、トランジスタM10の電流Id10はトランジスタM9の電流Id9より約0.51%少ないと算出される。このように値が0.5%を超えていることと、計算途中で近似していることから、上記したトランジスタM9、M10のカレントミラー比のずれは約0.6%と見積もることができる。この値は誤差として許容できる十分に小さい値であるということができる。
【0055】
以上から、トランジスタM11には、トランジスタM4のドレイン電流Id4から定電流Irefを差し引いた誤差の少ない差分電流ΔIdが流れ、トランジスタM11とカレントミラー接続されたトランジスタM12を介して電流出力端子9から、検出電流Ioutとして出力される。
【0056】
以上の説明は、負荷4に定常状態の電流(≦1.5A)が流れる場合だけではなく、負荷4の抵抗が小さく過負荷状態で定常時より大きな電流の流れる状態でも成り立つものであり、検出抵抗R1に60mVの電圧が生じるように設定した過電流リミット(3A)未満の動作についてのものである。
【0057】
次に電圧出力端子2がGNDに短絡した場合について説明する。このときは、第2電源端子8と電圧出力端子2の間に、電源電圧Vdd1を越える電圧Vdd2が印加されることになる。このときも通常の負荷駆動時と同様に、トランジスタM3、M4、M9、M10、M11のドレイン・ソース間電圧が、ほぼ「閾値電圧+飽和ドレイン電圧」で動作することに変わりなく、それ以外の電圧はトランジスタM5、M7のドレイン・ソース間に印加され、通常の負荷駆動時と同様に動作する。
【0058】
通常、負荷駆動制御回路6には短絡時に両トランジスタM1、M2をOFFさせる保護回路(図示せず)が設けられているが、この保護回路へ電流出力端子9からの検出電流Ioutが過電流リミットを越えたことを知らせるのが本発明の負荷電流検出回路の役割である。つまり、過電流リミットに達して直ちに両トランジスタM1、M2がOFFするわけでなく、実際にOFFするまでに遅延を生じる。出力トランジスタM1にはその短絡期間中に過電流リミット(=3A)を越えた負荷電流が流れ続けるが、このような状況では負荷電流検出回路が正常に動作しないと、誤った信号が出力され保護回路が機能しない。
【0059】
図1の負荷電流検回路において、電圧出力端子2に仮に過電流リミット(=3A)の3倍の電流(=9A)が流れたとすると、20Ωの検出抵抗R1には9mAが流れるので、その電圧VR1=180mV(=20×0.009)となる。トランジスタM4は10μAの定電流Irefが流れるときのソース・ゲート間電圧Vgs4は式(9)に示したように900mVであるので、検出抵抗R1に180mVの電圧VR1が発生すると、
Vgs4=900mV+180mV=1080mV (15)
に上昇して、トランジスタM4のドレイン電流Id4は、
Id4=(βp/2)×(Vgs4-Vtn)=36μA (16)
となる。
【0060】
トランジスタM5は、ゲート・ソース間電圧Vgs5が0Vのときにドレイン電流Id5=10μAが流れるように設定されており、その閾値電圧をVtn=-0.4Vとするとβnは125μA/Vとなるので、これからトランジスタM5にドレイン電流Id5=36μAが流れた場合のゲート・ソース間電圧Vgs5を計算すると、
Vgs5=(2×Id5/βn)1/2+Vtn≒360mV (17)
となる。
【0061】
以上から、トランジスタM4のドレイン・ソース間電圧Vds4は、
Vds4=Vgs4-Vgs5
=1080mV-360mV=720mV (18)
となる。
【0062】
このように、トランジスタM4はドレイン電流がId4=36μAだけながれるときの飽和ドレイン電圧が380mVであるので、電圧出力端子2に過電流リミットの設定値(=9A)より大きな負荷電流が流れても、トランジスタM4は飽和領域で動作し本発明の負荷電流検出回路は正常に機能する。
【0063】
なお、出力トランジスタM1がOFF状態のとき既に短絡していて、その後に出力トランジスタM1をONさせた場合は、電圧出力端子2はGND電圧のまま短絡状態となる。また、定常状態で負荷駆動していた途中で短絡した場合は、電圧出力端子2の電圧は急激に低下し、アンダーシュートして過渡的には負電圧となる。
【0064】
しかし、電圧出力端子2が負電圧になっても、上記の短絡時の動作説明に何ら矛盾が生じるものでなく、第2電源端子8と電圧出力端子2の間の電圧が増加し、その分トランジスタM5、M7のドレイン・ソース間電圧が増えるのみであり、電圧出力端子2が負電圧になっても本発明の負荷電流検出回路は正常に動作する。
【0065】
次に出力トランジスタM1がOFF状態のときは、両トランジスタM1、M2のゲート電圧は“L”で、両トランジスタM1、M2は共にOFFしており、負荷4に電流は流れず、電圧出力端子2の電圧はほぼGND電圧に等しい。この際、本発明の負荷電流検出回路の状態は第2電源端子8の接続状況により異なる。
【0066】
前述したとおり、第2電源端子8には両トランジスタM1、M2のゲート制御用の電源となるチャージポンプ回路5の出力を利用することになるが、チャージポンプ回路5の出力と第2電源端子8の間に両トランジスタM1、M2のON/OFFに同期したスイッチが設けられていて、OFF状態で第2電源端子8が高インピーダンスになるのであれば、本発明の負荷電流検出回路のトランジスタはすべてOFFしており動作を停止する。
【0067】
一方、チャージポンプ回路5の出力と第2電源端子8の間にスイッチがない場合は、チャージポンプ回路5を両トランジスタM1、M2のOFFに同期させてOFFさせないのであれば、第2電源端子8の電圧は負荷駆動時と同じになっており、またチャージポンプ回路5をOFFさせた場合でも、第2電源端子8の電圧はチャージポンプ回路5を介して第1電源端子1よりダイオードの順方向電圧2個分の電圧にクランプされるときは、いずれの場合も第2電源端子8は本発明の負荷電流検出回路に電流を供給可能であり、この場合はさらに外部電流端子7に定電流Irefが供給されているか否かによって異なる。
【0068】
両トランジスタM1、M2のON/OFFに同期して外部から供給される定電流IrefもON/OFFするようになっている場合は、外部電流端子7に電流Irefは流れず、トランジスタM3、M4のゲート電圧はGND電圧に近い値になっており、本発明の負荷電流検出回路に電流は流れず動作を停止する。
【0069】
しかし、OFF時にも外部電流端子7から定電流Irefが供給されている場合は、トランジスタM3~M10に電流が流れ本発明の負荷電流検出回路は負荷駆動時と同様に動作している。ただし、検出トランジスタM2のドレイン電流Id2は0Aなので、トランジスタM3、M4には定電流Irefがそれぞれ10μAだけ流れる。よって、トランジスタM11に電流は流れないので、トランジスタM12から電流は出力されない。また、トランジスタM3、M4を流れた合計電流20μAは電圧出力端子2を経由して負荷4に流れるが、負荷駆動時に流れる電流と比較して非常に少ない電流であり、負荷駆動への影響はない。例えば負荷4の抵抗値が10Ωであるとしても、その負荷4に発生する電圧は0.2mVであり、出力トランジスタM1のOFF時に電圧出力端子2がGND電圧であると見做すことに問題はない。
【0070】
<第2実施例>
図2は本発明の第2実施例を示したものである。第2実施例は、図1で説明した第1実施例において、トランジスタM12の出力側をカスコード構成にしたものである。トランジスタM12のドレインにPMOSトランジスタM13を追加接続して、そのトランジスタM13のゲートを外部電流端子7に接続し、ドレインを電流出力端子9に接続している。第1実施例では電流出力端子9が接続される先の回路構成と第2電源端子8の電圧により、トランジスタM12のソース・ドレイン間電圧が変わりチャネル長変調効果でトランジスタM11、M12のカレントミラー比が変動することがあるが、トランジスタM13を追加してカスコード接続にすることで、トランジスタM12のソース・ドレイン間電圧は一定となり、カレントミラー比の変動を低減できる。
【0071】
なお、この第2実施例は、第1の実施例とはトランジスタM13のみの相違であり、負荷電流検出に係る構成や動作は前述の第1実施例と同じであるため、説明は省略する。
【0072】
<第3実施例>
図3に本発明の第3実施例の負荷電流検出回路を示す。本実施例は、図1におけるノードN2にデプレッション型のNMOSトランジスタM14のソースとゲートを接続し、ドレインをノードN5に接続して、そのトランジスタM14を定電流Irefを生成する電流源として働かすものである。PMOSトランジスタM15はトランジスタM14で生成される定電流IrefをトランジスタM10にミラーするトランジスタであり、ゲートとドレインがノードN5に接続され、ソースが第2電源端子8に接続されている。トランジスタM10はゲートがノードN5に接続されている。その他は、図1で説明した第1実施例の負荷電流検出回路の構成と同じである。トランジスタM14は請求項記載の第1電流源回路を構成し、トランジスタM15、M10は請求項記載の第2電流源回路を構成し、トランジスタM11は請求項記載の第3電流源回路を構成している。
【0073】
トランジスタM14による定電流Irefの値は小さいほど消費電流を減らせる利点があるが、検出抵抗R1の電圧VR1の変化による電流の増減に対して著しく小さいと、検出電流Ioutと検出抵抗R1による差分電流ΔIdとの比例関係の線形性が損なわれることになる。そこで、過電流リミット時に流れる差分電流ΔIdの増分程度に設定し、この例でも10μA程度が適当である。
【0074】
また、デプレッション型の両トランジスタM5、M14には、短絡時や負荷駆動していないOFF時に、負荷駆動制御回路6の電源電圧相当の電圧がそれぞれのドレイン・ソース間に印加される。そこで、両トランジスタM5、M14には、電源電圧Vdd2より十分に高い耐圧のトランジスタを用いる。
【0075】
トランジスタM4のドレイン電流Id4は、トランジスタM5を経由してトランジスタM10、M11から供給され、このうち定電流Irefの分の電流がトランジスタM10から供給され、差分電流ΔIdに相当する電流がトランジスタM11から供給されることが理想である。しかし、トランジスタM15、M10のカレントミラー比のずれが大きいと、その差分がトランジスタM11から供給されることになり、検出電流Ioutに誤差が生じてしまう。しかし、トランジスタM15、M10は飽和ドレイン電圧値に違いはあるものの、どちらもソース・ドレイン間電圧が「閾値電圧+飽和ドレイン電圧」となるためカレントミラー比のずれは低く抑えられる。
【0076】
本実施例の負荷電流検出回路の通常動作、電圧出力端子2がGNDに短絡した場合の動作、短絡している状態で動作開始したときの動作、OFF時の状態などについては、図1で説明した第1実施例の負荷電流検出回路の場合と同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0077】
<第4実施例>
図4は本発明の第4実施例の負荷電流検出回路を示したものである。第4実施例の負荷電流検出回路は、図3で説明した第3実施例の負荷電流検出回路において、トランジスタM12の出力側をカスコード構成にしたものである。ここでは、トランジスタM12のドレインにPMOSトランジスタM13のソースを追加接続し、そのトランジスタM13のゲートをノードN5に接続し、ドレインを電流出力端子9に接続したものである。
【0078】
第4実施例の負荷電流検出回路の動作は、第3実施例で説明した負荷電流検出回路と同じであり、詳しい説明は省略する。
【符号の説明】
【0079】
1:第1電源端子、2:電圧出力端子、3:駆動端子、4:負荷、5:チャージポンプ回路、6:負荷駆動制御回路、7:外部電流端子、8:第2電源端子、9:電流出力端子
M1、M2、M3、M4:NMOSトランジスタ
M5:デプレッション型NMOSトランジスタ
M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M15:エンハンスメント型PMOSトランジスタ
M14:デプレッション型NMOSトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6