(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20221116BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221116BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20221116BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/00 E
B32B15/08 Z
B29C55/02
(21)【出願番号】P 2019537681
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031179
(87)【国際公開番号】W WO2019039550
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017160982
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福原 直人
(72)【発明者】
【氏名】向尾 良樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 祥晃
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-110518(JP,A)
【文献】特開2007-168377(JP,A)
【文献】特開2012-213911(JP,A)
【文献】特開2009-155413(JP,A)
【文献】特開2004-330575(JP,A)
【文献】特開2017-105125(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113601(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/157908(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/080124(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/076398(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/139950(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182750(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00-49/46
49/58-49/68
49/72-51/28
51/42
51/46
55/00-55/30
61/00-61/10
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸フィルムおよび金属層を有し、全光線透過率が50%以下である積層体であって、
前記延伸フィルムは、
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上であるポリメタクリル酸メチルを40質量%以上70質量%以下含む(メタ)アクリル系樹脂
100質量部、並びにアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とが結合した(メタ)アクリル系ブロック共重合体を0.5質量部以上4質量部以下含み、ヘーズが1%以下
であり、85℃で30分間保持した前後の寸法変化率が0.05%以下である、
積層体。
【請求項2】
前記延伸フィルムはフェノキシ系樹脂を含み、前記延伸フィルムにおける前記フェノキシ系樹脂の含有量が前記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して3質量部以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記延伸フィルムは紫外線吸収剤を含み、前記延伸フィルムにおける前記紫外線吸収剤の含有量が前記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.1~10質量部である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記延伸フィルムの厚さが5~200μmである、請求項1~
3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記金属層が、インジウム、アルミニウム、クロム、金、銀および錫からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~
4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記金属層の厚さが10~500nmである、請求項1~
5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
耐衝撃強度が4J以上である、請求項1~
6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記延伸フィルムと前記金属層とが接する、請求項1~
7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
厚さが5~500μmである、請求項1~
8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載の積層体からなる金属調加飾フィルム。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれかに記載の積層体および被着体を有する成形体。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上であるポリメタクリル酸メチルを40質量%以上70質量%以下含む(メタ)アクリル系樹脂
100質量部、並びにアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とが結合した(メタ)アクリル系ブロック共重合体0.5質量部以上4質量部以下を含む原反フィルムを1.5~8.0倍に延伸して前記延伸フィルムを製造する工程、および、前記延伸フィルムに金属層を形成する工程を有する、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製の自動車のホイールキャップ、バンパー、エンブレムなどに対して金属光沢を付与するには、樹脂製の部材に直接金属メッキなどをした後、透明な艶塗料を塗装することが一般的な方法であった。
【0003】
しかしながら、金属メッキおよび塗装はコストが高く、また環境衛生の点に問題があった。また、塗装は厚みのばらつきが大きいため一定した外観が得にくく、安定した品質を提供することが困難であった。このような問題を解決するものとして、金属メッキの代わりに、基材フィルムに金属薄膜層を形成して金属調加飾フィルムを製造し、塗装の代わりに金属調加飾フィルムを被着体に貼合する方法がある。
【0004】
例えば特許文献1には、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム、アクリル系樹脂フィルムまたはポリカーボネート系樹脂フィルムからなり、かつ裏面の最大高さ平均Rtmが0.1~2.0μmで、ヘーズ値が0.1~4.0%である透明樹脂フィルムの裏面に、錫、金およびインジウムの中から選ばれる少なくとも1種を含む金属蒸着層を有する金属調シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、透明なアクリルフィルムを基体シートとし、その上に金属薄膜層を形成し、さらにその上にプラスチックシートを積層した金属薄膜インサートフィルムを、所望の形状に予備成形した後、金属薄膜インサートフィルムを金型内に挿入し、プラスチックシート側に成形樹脂を射出して一体化する金属薄膜インサートフィルム成形品の製造方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、主鎖に環構造を有し、ガラス転移温度が120℃以上のアクリル樹脂を主成分とする基材フィルムの少なくとも片面に、透明導電層を有する透明導電性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-110518号公報
【文献】特開平10-180795号公報
【文献】特開2008-179677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のアクリルフィルム層および金属層を有する積層体は、被着体に貼合した後、所望の形状に打ち抜いて余った部分を切り取る際に、切り取り面からクラック(罅)および/または割れが生じていた。また、用いるアクリルフィルムによっては金属調の光沢が損なわれる場合があった。さらに、特許文献3に開示されるような透明導電性フィルムは透明性が高く、金属調の光沢に乏しいため、金属調加飾フィルムとしては不適当であった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み為されたものであって、耐打ち抜き性および金属調の光沢に優れる積層体および当該積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下の態様を包含する本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記[1]~[12]に関する。
【0011】
[1]延伸フィルムおよび金属層を有し、全光線透過率が50%以下である積層体であって、前記延伸フィルムは(メタ)アクリル系樹脂を含み、ヘーズが1%以下である、積層体。
[2]前記延伸フィルムはエラストマーを含み、前記延伸フィルムにおける前記エラストマーの含有量が前記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して30質量部以下である、上記[1]に記載の積層体。
[3]前記延伸フィルムは紫外線吸収剤を含み、前記延伸フィルムにおける前記紫外線吸収剤の含有量が前記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.1~10質量部である、上記[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記延伸フィルムは、85℃で30分間保持した前後の寸法変化率が0.1%以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]前記延伸フィルムの厚さが5~200μmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]前記金属層が、インジウム、アルミニウム、クロム、金、銀および錫からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]前記金属層の厚さが10~500nmである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]耐衝撃強度が4J以上である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]前記延伸フィルムと前記金属層とが接する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]厚さが5~500μmである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の積層体。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層体からなる金属調加飾フィルム。
[12]上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層体および被着体を有する成形体。
[13]上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、(メタ)アクリル系樹脂を含む原反フィルムを1.5~8.0倍に延伸して前記延伸フィルムを製造する工程、および、前記延伸フィルムに金属層を形成する工程を有する、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐打ち抜き性および金属調の光沢に優れる積層体および当該積層体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。
【0014】
本発明の積層体は、延伸フィルムおよび金属層を有し、全光線透過率が50%以下である。そして、前記延伸フィルムは(メタ)アクリル系樹脂を含み、ヘーズが1%以下である。
【0015】
(延伸フィルム)
延伸フィルムは(メタ)アクリル系樹脂を含む。(メタ)アクリル系樹脂としてはポリメタクリル酸メチル、スチレン-メタクリル酸メチル樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル系樹脂とはメタクリル系樹脂および/またはアクリル系樹脂を指す。(メタ)アクリル系樹脂は、イミド環化、ラクトン環化、メタクリル酸変性などにより改質した耐熱性(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。また、延伸フィルムはこれらの(メタ)アクリル系樹脂を1種または2種以上含んでもよい。
【0016】
(メタ)アクリル系樹脂におけるメタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、よりさらに好ましくは99質量%以上であり、特に好ましく100質量%である。つまり、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位の割合が、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
【0017】
係るメタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-へキシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-へキシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;エテン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-オクテン等のオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセン等の共役ジエン;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらの単量体は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(メタ)アクリル系樹脂は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が好ましくは65%以上、より好ましくは70~90%、さらに好ましくは72~85%である。シンジオタクティシティ(rr)が65%以上の場合、得られる積層体の表面硬度および耐熱性が高まる。(メタ)アクリル系樹脂のシンジオタクティシティ(rr)は、実施例において後述する方法により求めることができる。
【0019】
延伸フィルムは、耐熱性および表面硬度の観点から、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である(メタ)アクリル系樹脂を、10質量%以上含むことが好ましく、40質量%以上含むことがより好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましく、55質量%以上含むことがよりさらに好ましい。一方、成形性と製品コストの観点からは、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40000~200000、より好ましくは60000~150000、さらに好ましくは70000~120000である。また、(メタ)アクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、Mw/Mn)は、好ましくは1.0~1.8、より好ましくは1.0~1.4、特に好ましくは1.03~1.3である。係る範囲内の分子量(Mw)または分子量分布(Mw/Mn)を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いると、延伸フィルムが力学強度に優れるものとなる。MwおよびMw/Mnは、製造時に使用する重合開始剤の種類および/または量を調整することによって制御できる。
MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算した値であり、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。
【0021】
(メタ)アクリル系樹脂の製造方法は特に限定されず、メタクリル酸メチルを好ましくは80質量%以上含有する1種または複数種の単量体を、適した条件で重合することで得られる。
【0022】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の観点から、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上であり、特に好ましくは122℃以上である。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121(2012)に準拠して求めることができ、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。
【0023】
延伸フィルムは(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂を含んでもよい。(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート等のポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、スチレン-マレイミド樹脂、スチレン系熱可塑エラストマー等の芳香族ビニル系樹脂またはその水素添加物;非晶性ポリオレフィン、結晶相を微細化した透明なポリオレフィン、エチレン-メタクリル酸メチル樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸などで部分変性されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルサルホン系樹脂;トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂;ポリフェニレンオキサイド系樹脂;フェノキシ系樹脂などが挙げられる。延伸フィルムはこれらの樹脂を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。これらの中でも延伸フィルムはポリカーボネート系樹脂および/またはフェノキシ系樹脂を含むことが好ましい。延伸フィルムがポリカーボネート系樹脂および/またはフェノキシ系樹脂を含むことで、フィルムの寸法変化率が小さくなり延伸性も優れたフィルムになり、積層体の金属調の光沢もさらに良好となる。
【0024】
延伸フィルムが(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂を含む場合、その含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下であり、よりさらに好ましくは3質量部以下である。(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂の含有量が係る範囲にあることで、積層体の表面硬度および耐候性が優れたものとなる。
【0025】
延伸フィルムはエラストマーを含んでもよい。エラストマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系弾性体粒子、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とが結合した(メタ)アクリル系ブロック共重合体等の(メタ)アクリル系エラストマー;シリコーン系エラストマー;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。これらのエラストマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、積層体が耐打ち抜き性および金属調の光沢にさらに優れるという点から、(メタ)アクリル系エラストマーが好ましく、(メタ)アクリル系弾性体粒子がより好ましい。また、延伸フィルムが紫外線吸収剤を含有する場合には、エラストマーとして(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含むことが好ましい。延伸フィルムが(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含むことで、紫外線吸収剤による金型汚れやロール汚れを抑制でき、連続生産性を向上させることができる。
【0026】
延伸フィルムにおけるエラストマーの含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して好ましくは30質量部以下、より好ましくは19質量部以下、さらに好ましくは9質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。エラストマーの含有量が係る範囲にあることで、積層体が金属調の光沢にさらに優れ、表面硬度が向上する傾向となる。一方積層体の耐打ち抜き性を向上させ、紫外線吸収剤を含有する場合に紫外線吸収剤による金型汚れやロール汚れを抑制して連続生産性を向上させる観点からは、延伸フィルムにおけるエラストマーの含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。
なお、上記含有量の範囲はエラストマーを含まない態様を包含する。
【0027】
(メタ)アクリル系エラストマーの例を挙げると、例えば、アクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含むアクリル系弾性重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系エラストマーは当該アクリル系弾性重合体のみからなっていてもよいし、例えば後述する(メタ)アクリル系弾性体粒子のように、アクリル系弾性重合体を含むものであってもよい。当該アクリル系弾性重合体において、アクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位の含有量は、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは70~99.8質量%である。当該アクリル酸非環状アルキルエステルにおける非環状アルキル基は、炭素数4~8のもの、具体的には、例えばn-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基およびこれらの異性体基などが好ましい。また、当該アクリル系弾性重合体はアクリル酸非環状アルキルエステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよく、このような単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル;スチレン、アルキルスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;2-クロロエチルビニルエーテル;(メタ)アクリル酸エチレングリコール、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ-トリエチレングリコールアクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコールアクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
アクリル系弾性重合体は、上記のアクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位とをランダムに有するものであってもよい。当該架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル、マレイン酸ジアリル、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1.6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを挙げることができる。アクリル系弾性重合体における架橋性単量体に由来する構造単位の含有率は、靭性の観点から、好ましくは0.2~30質量%、より好ましくは0.3~10質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
【0029】
(メタ)アクリル系エラストマーの好ましい一態様である(メタ)アクリル系弾性体粒子は、単一重合体からなる粒子であってもよいし、異なる弾性率の重合体が少なくとも2つ層を形成した粒子であってもよい。(メタ)アクリル系弾性体粒子は、積層体の更なる耐打ち抜き性の観点から、ジエン系単量体に由来する構造単位を主成分として含む重合体および/または前述のアクリル系弾性重合体(アクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含む重合体)を含有する層と他の重合体を含有する層とからなる多層構造のコアシェル粒子であることが好ましく、アクリル系弾性重合体を含有する層とその外側を覆うメタクリル系重合体を含有する層とからなる2層構造のコアシェル粒子、または、メタクリル系重合体を含有する層と、その外側を覆うアクリル系弾性重合体を含有する層と、そのさらに外側を覆うメタクリル系重合体を含有する層とからなる3層構造のコアシェル粒子であることがより好ましく、耐熱性の観点から、3層構造のコアシェル粒子であることがさらに好ましい。
【0030】
コアシェル粒子を構成するメタクリル系重合体は、メタクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含む重合体であることが好ましい。当該メタクリル系重合体において、メタクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位の含有量は流動性および耐熱性の観点から、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%である。当該メタクリル酸非環状アルキルエステルは、流動性および耐熱性の観点から、メタクリル酸メチルであることが好ましく、コアシェル粒子を構成するメタクリル系重合体は、メタクリル酸メチル単位を80~100質量%含有することが最も好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル系弾性体粒子は、その数平均粒径が、好ましくは10~250nm、より好ましくは20~150nm、さらに好ましくは40~130nmである。(メタ)アクリル系弾性体粒子の数平均粒径が係る範囲にあることで、積層体が耐打ち抜き性および金属調の光沢にさらに優れ、延伸したときに白化が生じにくくなる。なお、(メタ)アクリル系弾性体粒子の数平均粒径は、(メタ)アクリル系弾性体粒子をメタクリル系樹脂に溶融混練してなる試料を酸化ルテニウムで染色して観察される顕微鏡写真に基づいて決定することができる。ここで、酸化ルテニウムはアクリル系弾性重合体を含有する層を染色するが、メタクリル系重合体を含有する層を染色しないので、上述の2層構造のコアシェル粒子や3層構造のコアシェル粒子の数平均粒径は、最外側にあるメタクリル系重合体を含有する層の厚さを含まない値に相当すると推定される。
【0032】
(メタ)アクリル系弾性体粒子の製造方法に特に制限はなく、公知の手法(例えば、国際公開第2016/121868号、国際公開第2014/167868号等)に準じた方法により製造することができる。
【0033】
(メタ)アクリル系エラストマーの他の一態様であるアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とが結合した(メタ)アクリル系ブロック共重合体において、重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)の結合形態に特に制限はなく、例えば(b1)-(b2)で表現されるジブロック共重合体;(b1)-(b2)-(b1)または(b2)-(b1)-(b2)で表現されるトリブロック共重合体;(b1)-((b2)-(b1))n、(b1)-((b2)-(b1))n-(b2)、(b2)-((b1)-(b2))n(nは整数)等で表現されるマルチブロック共重合体;((b1)-(b2))n-X、((b2)-(b1))n-X(Xはカップリング残基)等で表現されるスターブロック共重合体などが挙げられる。生産性の観点から、(b1)-(b2)で表現されるジブロック共重合体、(b2)-(b1)-(b2)または(b1)-(b2)-(b1)で表現されるトリブロック共重合体が好ましく、溶融時の樹脂組成物の流動性、並びに積層体の表面平滑性およびヘーズの観点から、(b2)-(b1)-(b2)で表現されるトリブロック共重合体がより好ましい。この場合、重合体ブロック(b1)の両末端に結合する2つの重合体ブロック(b2)は、構成する単量体の種類、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合、重量平均分子量および立体規則性の其々が独立に、同一であっても異なっていてもよい。また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体は他の重合体ブロックをさらに含有してもよい。
【0034】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体を構成する重合体ブロック(b1)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。重合体ブロック(b1)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、積層体の更なる耐打ち抜き性の観点から、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0035】
係るアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これらのアクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、重合体ブロック(b1)を形成できる。中でも、経済性、更なる耐打ち抜き性などの観点から、重合体ブロック(b1)はアクリル酸n-ブチルを単独で重合したものが好ましい。
【0036】
重合体ブロック(b1)はアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、積層体の更なる耐打ち抜き性の観点から、その割合は好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
【0037】
係るアクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらのアクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上併用して前述のアクリル酸エステルと共重合することで重合体ブロック(b1)を形成できる。
【0038】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体における重合体ブロック(b1)の割合は、透明性、積層体の表面硬度、成形加工性、積層体の表面平滑性、耐衝撃性、耐熱性の観点から、重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)の合計100質量%に対して、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは57質量%以下であり、さらに好ましくは53質量%以下である。また、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0039】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体を構成する重合体ブロック(b2)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。重合体ブロック(b2)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、流動性および耐熱性の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0040】
係るメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらのメタクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0041】
重合体ブロック(b2)はメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、流動性および耐熱性の観点から、その割合は好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特好ましくは0質量%である。
【0042】
係るメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらのメタクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を併用して前述のメタクリル酸エステルと共重合することで重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0043】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体における重合体ブロック(b2)の割合は、透明性、積層体の表面硬度、成形加工性、積層体の表面平滑性、耐衝撃性の観点から、重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)の合計100質量%に対して、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは43質量%以上であり、さらに好ましくは47質量%以上である。また、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0044】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体の製造方法は特に限定されず、公知の手法(例えば、国際公開第2016/121868号、特開2017-78168号公報等)に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用され、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いてアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法;有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いて有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法;有機希土類金属錯体を重合開始剤として用いて重合する方法;α-ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用いて銅化合物の存在下でラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。
【0045】
延伸フィルムは添加剤を含んでもよい。添加剤の種類は特に限定されず、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、高分子加工助剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、艶消し剤、充填剤、耐衝撃助剤、可塑剤などが挙げられる。添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で併用してもよい。延伸フィルムは、延伸フィルムの成形性を高める観点から、高分子加工助剤を含むことが好ましい。これらの添加剤は有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよいが、樹脂組成物中での分散性の観点から、有機化合物が好ましい。
【0046】
延伸フィルムにおける添加剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下である。添加剤の含有量が係る範囲にあることで、耐衝撃性や表面硬度に優れる積層体となる。
【0047】
ここで、単層の透明フィルムが加飾フィルム等として使用されるとき、通常、一方の面からのみ光が照射される。他方、本発明の積層体は金属層を有するため、延伸フィルムは、入射した光と金属層で反射された光に曝され、光による劣化が進行しやすい。よって、延伸フィルムは、通常の透明フィルムよりもさらに高い耐候性が求められるため、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。延伸フィルムにおける紫外線吸収剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.3~5質量部であり、さらに好ましくは0.5~3質量部である。紫外線吸収剤の含有量が係る範囲にあることで、耐候性に優れ、長期間保管しても白化が生じにくい積層体が得られる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で併用してもよい。これらの中でも、長期安定性の観点から、トリアゾール系化合物および/またはトリアジン系化合物が好ましい。また、さらに耐候性を高める観点から、紫外線吸収剤に光安定剤および/または酸化防止剤を併用することも好ましい。光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0048】
高分子加工助剤としては、乳化重合法によって製造することができる、0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子を用いることができる。延伸フィルムが高分子加工助剤を含むことで、樹脂組成物を成形する際、厚さ精度および製膜安定性が向上し、フィッシュアイ欠点を低減できる。高分子加工助剤の代表的な商品としては、カネエースPAシリーズ(カネカ社製)、メタブレン(登録商標)Pシリーズ(三菱ケミカル社製)、パラロイドKシリーズ(ダウ・ケミカル社製)などが挙げられる。これらの中でも、延伸フィルムのフィッシュアイ欠点の低減、製膜時の成形安定性、特にフィルム端部の成形安定性向上という観点から、メタクリル酸メチルを60~90質量%、アクリル酸アルキルを10~40質量%含有する高分子加工助剤が好ましく、メタブレン(登録商標)P530A、P550A、パラロイドK125がより好ましく、メタブレン(登録商標)P550Aが特に好ましい。
【0049】
高分子加工助剤を構成する重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましい。
【0050】
高分子加工助剤は、単層粒子である場合、極限粘度が3~6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎると樹脂組成物の溶融流動性の低下を招きやすい。
【0051】
延伸フィルムの基となる(メタ)アクリル系樹脂を含む原反フィルムの成形方法は特に制限されないが、例えば、溶融押出法が好ましく挙げられる。溶融押出法は特に制限されず、当該技術分野において知られている溶融押出法によって行うことができ、例えば、Tダイ法、インフレーション法などを用いることができる。このとき、成形温度は、150~350℃であることが好ましく、200~300℃であることがより好ましく、240~280℃であることがさらに好ましい。
【0052】
Tダイ法によって原反フィルムを成形する場合、公知の単軸押出機または二軸押出機の先端部にTダイを接続し、フィルム状に押出された原反フィルムを得ることができる。
【0053】
押出機は、1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることで、開放ベント部から分解物や揮発成分を吸引することができ、得られた樹脂組成物の品質を向上できる。また、押出機は、異物を除去するためにポリマーフィルターを有することが好ましい。ポリマーフィルターの構造としては、例えばリーフディスク型およびキャンドル型等が挙げられる。さらに、押出機は、樹脂組成物の吐出量を安定化させるためにギアポンプを有することが好ましい。ギアポンプとしては公知のものを使用することができる。押出機が開放ベント部、ギアポンプおよびポリマーフィルターを有する場合、異物を低減し、且つベントアップを抑制する観点から、押出機-ギアポンプ-ポリマーフィルター-ダイの順番で接続することが好ましい。また、押出機における樹脂組成物の劣化を防ぐため、押出機内に窒素を通じながら成形することが好ましい。
【0054】
原反フィルムを製造する一実施形態として、延伸フィルムの表面平滑性および厚さ均一性の観点から、押し出されたフィルム状溶融樹脂を、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間に引き取り挟圧することが好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。鏡面ロールは金属剛体ロールおよび金属弾性ロールの組合せであることがより好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルト間の線圧は、表面平滑性の観点から、好ましくは10N/mm以上であり、より好ましく30N/mm以上である。鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は、表面平滑性、ヘーズ、外観などの観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。また、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。
【0055】
また、原反フィルムを製造する他の実施形態として、押し出されたフィルム状溶融樹脂は、延伸フィルムの表面平滑性および厚さ均一性の観点から、密着補助手段により鏡面ロールに接触かつ密着させ、冷却、固化させることが好ましい。密着補助装置としては、例えば静電密着装置、エアナイフ、エアチャンバー、バキュームチャンバーなどが挙げられる。これらのうち、製造安定性の観点から、密着補助装置として静電密着装置を用いることが好ましい。
【0056】
密着補助装置としてエッジピニングとワイヤーピニングを併用する場合、エッジピニングとワイヤーピニングを、上流側からこの順で配置することが好ましい。また、ワイヤーピニングは、鏡面ロール上の溶融樹脂の温度がガラス転移温度となる位置を含めこれより下流側であって、鏡面ロールから剥離する位置より上流側に配置することがより好ましい。
【0057】
原反フィルムの厚さは、生産性の観点から、好ましくは40~500μmであり、より好ましくは80~400μmであり、さらに好ましくは100~300μm、よりさらに好ましくは120~200μmである。ここで、原反フィルムの厚さとは、原反フィルムの全幅に対して中心部分50mmの平均値とする。
【0058】
原反フィルムは、フィルム状に成形された後、延伸処理を施され、延伸フィルムとなる。延伸フィルムは一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよいが、積層体の耐打ち抜き性をさらに高める観点から、二軸延伸フィルムが好ましい。延伸処理によってフィルムの機械的強度が向上し、耐打ち抜き性が向上する。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。係る延伸処理は、予熱工程、延伸工程、熱固定工程をこの順番で有することが好ましく、予熱工程、延伸工程、熱固定工程、弛緩工程をこの順番で有することがより好ましい。
【0059】
予熱工程において、原反フィルムの温度は好ましくは原反フィルムのガラス転移温度以上かつガラス転移温度より40℃高い温度以下であり、より好ましくは原反フィルムのガラス転移温度より5℃高い温度以上かつガラス転移温度より30℃高い温度以下である。予熱工程における原反フィルムの温度が係る範囲にあることで、延伸フィルム製造時の延伸工程において破断が生じにくくなり、生産性が向上し、かつ積層体が延伸性に優れる。原反フィルムが複数のガラス転移温度を有する場合、最も高い値を上記原反フィルムの温度範囲の基準として採用することができる。
【0060】
延伸工程において、原反フィルムの温度(延伸温度)は好ましくは原反フィルムのガラス転移温度より5℃高い温度以上かつガラス転移温度より40℃高い温度以下であり、より好ましくは原反フィルムのガラス転移温度より10℃高い温度以上かつガラス転移温度より35℃高い温度以下であり、さらに好ましくは原反フィルムのガラス転移温度より20℃高い温度以上かつガラス転移温度より30℃高い温度以下である。特に好ましくは、原反フィルムのガラス転移温度より22℃高い温度以上、かつ当該ガラス転移温度より27℃高い温度以下である。延伸工程における原反フィルムの温度が係る範囲にあることで、係る延伸工程において破断が生じにくくなり、生産性が向上し、かつ積層体が延伸性に優れる。原反フィルムが複数のガラス転移温度を有する場合、最も高い値を上記原反フィルムの温度範囲の基準として採用することができる。
【0061】
延伸工程において、延伸倍率は好ましくは1.5~8.0倍であり、より好ましくは2.0~6.0倍であり、さらに好ましくは2.5~4.0倍である。延伸倍率が1.5倍以上であることで、積層体の耐打ち抜き性がさらに向上する。また、延伸倍率が8.0倍以下、特には4.0倍以下であることで、積層体が延伸性に優れ、積層体を三次元表面加飾成形(Three dimension Overlay Method:TOM成形)やインサート成形に供しても破断が生じにくくなる。なお、延伸倍率とは、延伸前の面積に対する延伸後の面積の比を意味する。
【0062】
延伸工程において、延伸の速度は好ましくは100~5000%/分であり、より好ましくは500~2000%/分である。延伸速度が係る範囲にあることで、延伸フィルム製造時の延伸工程において破断が生じにくくなり、かつ生産性が向上する。
【0063】
延伸処理は延伸工程の後に熱固定工程を有することが好ましい。熱固定によって、延伸性に優れる積層体を得ることができる。熱固定時の温度は好ましくは原反フィルムのガラス転移温度より40℃低い温度以上かつガラス転移温度以下であり、より好ましくは原反フィルムのガラス転移温度より30℃低い温度以上かつガラス転移温度より10℃低い温度以下である。
【0064】
延伸処理は熱固定工程の後に弛緩工程をさらに有することが好ましい。弛緩工程によって、延伸性により優れる積層体を得ることができる。弛緩率は好ましくは0.1~5%であり、より好ましくは0.5~2%である。
【0065】
延伸フィルムの厚さは、コストや表面硬度の観点から、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは10~100μmであり、さらに好ましくは20~80μmであり、よりさらに好ましくは30~60μmである。
【0066】
延伸フィルムはヘーズが1%以下であり、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.4%以下である。延伸フィルムのヘーズが1%を超えると金属調の光沢に乏しい積層体となるおそれがある。延伸フィルムのヘーズは、延伸フィルムが含む樹脂やエラストマーの種類および量、並びに延伸温度や延伸倍率を適切に調整することで制御できる。延伸フィルムのヘーズはJIS K 7136(2000)に準拠して求めることができ、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。
【0067】
延伸フィルムは、85℃で30分間保持した前後の寸法変化率が好ましくは0.1%以下であり、より好ましくは0.08%以下であり、さらに好ましくは0.06%以下であり、よりさらに好ましくは0.05%以下であり、特に好ましくは0.04%以下である。また、好ましくは0.005%以上であり、より好ましくは0.01%以上であり、さらに好ましくは0.02%以上である。延伸フィルムの寸法変化率が係る範囲にあると、積層体が延伸性に優れ、積層体をTOM成形やインサート成形に供しても破断が生じにくくなる。また、耐打ち抜き性にさらに優れる。延伸フィルムを85℃で30分間保持した前後の寸法変化率は、応力・歪制御型熱機械分析装置を用いて求めることができ、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。延伸フィルムを85℃で30分間保持した前後の寸法変化率は、延伸フィルムが含む樹脂やエラストマーの種類および量、並びに延伸温度や延伸倍率、熱固定温度、弛緩率などを適切に調整することで制御できる。
【0068】
延伸フィルムは、後述する機能層との接着力を向上させるために、延伸フィルムの少なくとも一方の面に表面処理を行うことができる。係る表面処理としては、当該技術分野において知られている方法、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの活性化処理を用いることができる。
【0069】
(金属層)
本発明の積層体が有する金属層としては、例えば、金属および/または金属酸化物からなるものなどが挙げられる。上記金属としては、例えば、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどが挙げられる。また、上記金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、珪素酸化物、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウムなどが挙げられる。これらの金属および/または金属酸化物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。これらの中で、優れた金属調の光沢を有し、また積層体が延伸性に優れるという観点から、金属層は、インジウム、アルミニウム、クロム、金、銀および錫からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、インジウムを含むことがより好ましい。金属層における金属および金属酸化物の合計の含有量は、好ましくは、90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上であり、よりさらに好ましくは99.99質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0070】
金属層の厚さは好ましくは10~500nmであり、より好ましくは30~300nmであり、さらに好ましくは40~250nmであり、よりさらに好ましくは50~200nmである。金属層の厚さが係る範囲にあることで、積層体の金属調の光沢がさらに優れ、また積層体をTOM成形およびインサート成形で延伸しても美麗な金属調の光沢を維持でき、本発明の積層体を有する成形体が金属調の光沢に優れる。
【0071】
(積層体)
本発明の積層体は全光線透過率が50%以下であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。全光線透過率が50%を超えると金属調の光沢に乏しい積層体となるおそれがある。一方で、積層体の成形性からは、全光線透過率は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは1%以上である。積層体の全光線透過率は、JIS K 7136(2000)に準拠して求めることができ、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。
【0072】
本発明の積層体は、耐衝撃強度が好ましくは2J以上であり、より好ましくは3J以上であり、さらに好ましくは4J以上であり、よりさらに好ましくは5J以上であり、よりさらに好ましくは6J以上である。耐衝撃性が係る範囲にあることで、積層体が耐打ち抜き性にさらに優れる傾向となる。積層体の耐衝撃強度は実施例において後述する方法により求めることができる。
【0073】
積層体は、低コストおよび低環境負荷であることなどから、延伸フィルムと金属層が接することが好ましいが、延伸フィルムと金属層の間にアンカー層を有してもよい。延伸フィルムと金属層の間にアンカー層を有することで、延伸フィルムと金属層の密着性を向上させることができ、また積層体の金属層側に粘接着剤層を設ける場合には、粘接着剤から延伸フィルムを保護し、延伸フィルムの白化を抑制することができる。アンカー層の材質としては、例えば、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などが挙げられる。アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの方法が挙げられる。
【0074】
本発明の積層体は延伸フィルムおよび金属層のみからなっていてもよいが、延伸フィルムおよび金属層以外の層をさらに有してもよい。延伸フィルムおよび金属層以外の層としては、例えばトップコート層、ハードコート層、アンカー層、易接着層、粘接着層、印刷層などの機能層が挙げられる。積層体におけるこれらの層の位置は特に限定されないが、積層体の金属層側を被着体に貼合する場合、トップコート層およびハードコート層は延伸フィルムの層において金属層とは逆の面に設けられることが好ましい。また、アンカー層は延伸フィルムと金属層の間に設けられることが好ましい。さらに、粘接着層は金属層において延伸フィルムとは逆の面に設けられることが好ましく、易接着層は金属層と粘接着層の間に設けられることが好ましい。積層体がこれらの層、特に粘接着層を有することで、積層体の延伸性が向上するため好ましい。
【0075】
印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いることが好ましい。印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などが挙げられる。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。印刷層は、表現したい図柄に応じて、全面的に設ける場合や部分的に設ける場合もある。
【0076】
粘接着層としては、延伸フィルムに適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用できるが、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを含むものが好ましく、アクリル系樹脂を含むものがより好ましい。粘接着層の形成方法としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などが挙げられる。粘接着層の乾燥後の厚さは、粘接着性および取扱性の観点から、好ましくは1~200μmであり、より好ましくは10~150μmであり、さらに好ましくは20~100μmであり、よりさらに好ましくは30~70μmである。
【0077】
積層体の厚さは、コストおよび表面硬度の観点から、好ましくは5~500μmであり、より好ましくは10~300μmであり、さらに好ましくは20~100μmであり、よりさらに好ましくは30~60μmである。
【0078】
本発明の積層体の製造方法に特に制限はなく、例えば、上記のような延伸フィルムに金属層を形成することで製造することができる。延伸フィルムに金属層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング、化学気相堆積などが挙げられる。真空蒸着法を用いる場合、金属層の厚さ精度を向上させる観点から、真空度は0.1Pa以下であることが好ましく、0.01Pa以下であることがより好ましい。
【0079】
(成形体)
本発明の成形体は、本発明の積層体および被着体を有する。成形体の好ましい実施形態として、被着体の表面に本発明の積層体が設けられてなり、被着体の表面に本発明の積層体の金属層側が対向するように本発明の積層体を設けることがより好ましい。成形体は、本発明の積層体を被着体の表面に有することで、表面平滑性、表面硬度、および金属調の光沢に優れる。被着体としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木質基材または非木質基材などが挙げられる。
【0080】
被着体に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、他の(メタ)アクリル系樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0081】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂などが挙げられる。非木質基材としては、例えば、ケナフ繊維からなる基材や炭素繊維からなる基材などが挙げられる。
【0082】
成形体の製造方法は特に制限されず、例えば、本発明の積層体を加熱して、被着体の表面に真空成形、圧空成形、圧縮成形またはTOM成形する方法が挙げられる。また、本発明の積層体をプリフォームし、金型に挿入し、金属層側に溶融樹脂を射出成形するインサート成形または射出成形同時貼合法によって成形体を製造することもできる。
【0083】
(用途)
本発明の積層体および成形体の用途は特に限定されず、例えば、バンパー、エンブレム、車両外装、車両内装等の車両加飾部品;壁材、ウィンドウフィルム、窓枠、浴室壁材等の建材部品;食器、玩具、楽器等の日用雑貨;掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電加飾部品;キッチンドア表装材等のインテリア部材;船舶部材などが挙げられる。
【0084】
中でも、本発明の積層体は、耐打ち抜き性および金属調の光沢に優れるので、意匠性の要求される成形品に好適に使用できる。また、本発明の積層体は、金属調加飾フィルムとして、金属調加飾用途に特に好適に使用できる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせてなるすべての態様を包含している。
【0086】
(重合転化率)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC-14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 Inert CAP 1(df=0.4μm、I.D.=0.25mm、長さ=60m)を繋ぎ、インジェクション温度180℃、検出器温度180℃、カラム温度を60℃で5分間保持、60℃から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して、200℃で10分間保持する条件にて測定し、その結果に基づいて重合転化率を算出した。
【0087】
(重量平均分子量Mw、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC-8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM-Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
【0088】
(三連子表示のシンジオタクティシティ(rr))
核磁気共鳴装置(Bruker社製、ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、室温(25℃)、積算回数64回の条件にて、1H-NMRスペクトルを測定した。そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6~0.95ppmの領域の面積AOと、0.6~1.35ppmの領域の面積AYとを計測し、次いで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)を式:(AO/AY)×100にて算出した。
【0089】
(ガラス転移温度(Tg))
JIS K 7121(2012)に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所社製、DSC-50(品番))を用いて、230℃まで一度昇温し、次いで室温(25℃)まで冷却し、その後、室温(25℃)から230℃までを10℃/分で昇温させる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
【0090】
(ヘーズ)
実施例で得た延伸フィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とし、ヘーズメーター(日本電色工業社製、SH7000)を用いて、JIS K 7136(2000)に準拠してヘーズを測定した。
【0091】
(寸法変化率)
実施例で得た延伸フィルムから40mm×5mmの試験片を切り出した。ここで、試験片の長手方向は、原反フィルムの幅方向と平行な方向とした。試験片の長手方向の両端部を一対のフィルムチャックで把持した。このとき一対のフィルムチャックの離間距離を24mmとした。一対のフィルムチャックによって延伸フィルムに引張荷重2gをかけ、これを熱機械分析装置(ティーエーインスツルメント社製、Q400EM)に取り付けた。
上記のように試験片をセットした状態で、試験片を25℃から85℃まで2℃/分の昇温速度で昇温し、85℃に到達した直後の試験片の長さ(LB)を測定した。その後、試験片を85℃で30分間保持し、保持した直後の試験片の長さ(LA)を測定した。そして、ΔLの値として(LA-LB)[単位:mm]の値を求め、下記式(1)で表される寸法変化率[単位:%]を、85℃で30分間保持した前後の寸法変化率とした。
寸法変化率(%)=ΔL[単位:mm]/24[単位:mm]×100・・・(1)
【0092】
(全光線透過率)
実施例で得た積層体を50mm×50mmに切り出して試験片とし、ヘーズメーター(日本電色工業社製、SH7000)を用いて、JIS K 7136(2000)に準拠して全光線透過率を測定した。
【0093】
(耐衝撃強度)
実施例で得た積層体を80mm×80mmに切り出して試験片とし、フィルムインパクトテスター(安田精機製作所社製、NO.181フィルムインパクトテスター)にセットして、球状の衝撃槌(半径12.7±0.2mm)を試験片に直角にあて、打ち抜きに要したエネルギー[単位:J]を耐衝撃強度とした。
【0094】
(耐打ち抜き性)
実施例で得た積層体を80mm×80mmに切り出して試験片とし、係る試験片および40mm×40mmの打ち抜き治具(トムソン刃)を打ち抜き装置(ダンベル社製、SDL-200)にセットし、試験片を40mm×40mmに打ち抜いた。打ち抜かれた試験片にクラック(罅)が無ければA、クラックがあればCと評価した。
【0095】
(200%延伸性)
実施例で得た積層体を100mm×100mmに切り出して試験片とし、二軸延伸複屈折測定装置(ヱトー社製、SDR-563K)にセットし、温度145℃、延伸速度3600%/分かつ延伸倍率200%の条件で延伸した。係る方法で5枚の試験片を延伸し、以下の通り評価した。
A:1枚も破断しなかった。
B:1枚または2枚が破断した。
C:3枚以上が破断した。
【0096】
(250%延伸性)
実施例で得た積層体を100mm×100mmに切り出して試験片とし、二軸延伸複屈折測定装置(ヱトー社製、SDR-563K)にセットし、温度145℃、延伸速度3600%/分かつ延伸倍率250%の条件で延伸した。係る方法で5枚の試験片を延伸し、以下の通り評価した。
A:1枚も破断しなかった。
B:1枚または2枚が破断した。
C:3枚以上が破断した。
【0097】
(外観)
実施例で得た積層体を白紙(FUJI xerox社製、C2r)上に載せ、蛍光灯下(200ルクス)で外観を目視で観察した。
【0098】
(製造例1)[(メタ)アクリル系樹脂(X1)の製造]
撹拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、蒸留精製されたメチルメタクリレート(MMA)100質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0052質量部、およびn-オクチルメルカプタン0.225質量部を入れ、撹拌して原料液を得た。この原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
配管を介してオートクレーブに接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持した状態で、まずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、温度140℃に維持した状態で、平均滞留時間150分となる流量で原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、同時に原料液の供給流量に相当する流量で槽型反応器から反応液を抜き出す連続流通方式の重合反応に切り替えた。連続流通方式に切り替えた後、定常状態における重合転化率は55質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の(メタ)アクリル系樹脂(X1)を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂(X1)の物性を表1に示す。
【0099】
(製造例2)[(メタ)アクリル系樹脂(X2)の製造]
撹拌翼と三方コックが取り付けられたガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温(25℃)下にて、トルエン2.9質量部、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.0045質量部、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液0.097質量部、および濃度1.3Mのsec-ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95質量%、n-ヘキサン5質量%)0.011質量部を仕込んだ。これらの原料に対して、撹拌しながら、20℃にて、蒸留精製されたMMA100質量部を30分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌したところ、溶液の色が黄色から無色に変化した。この時点におけるMMAの重合転化率は100%であった。得られた溶液にトルエン2.7質量部を加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール180質量部に注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、(メタ)アクリル系樹脂(X2)を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂(X2)の物性を表1に示す。
【0100】
【0101】
以下のフェノキシ樹脂を用意した。
Phenoxy1:新日鉄住金化学社製、YP-50S(品番)、MFR(230℃、3.8Kg、10分間;JIS K 7210-1(2014)準拠)=22g/10分、Mw=55000、Mw/Mn=2.5
【0102】
(製造例3)メタクリル系樹脂組成物(M1)
(メタ)アクリル系樹脂(X1)40質量部、(メタ)アクリル系樹脂(X2)60質量部、特開2017-78168号公報の参考例3を参照して得たトリブロック構造の(メタ)アクリル系ブロック共重合体1質量部、フェノキシ樹脂(Phenoxy1)1質量部、紫外線吸収剤(ADEKA社製、LA-F70)1質量部、および高分子加工助剤(三菱ケミカル社製、メタブレン(登録商標)P550A)2質量部をヘンシェルミキサーで混合し、260℃に設定したスクリュー径41mmのベント付き二軸押出機を用いて混練押出して、ガラス転移温度Tgが124℃であるメタクリル系樹脂組成物(M1)のペレットを得た。
【0103】
(製造例4)メタクリル系樹脂組成物(M2)
(メタ)アクリル系樹脂(X1)85質量部、並びに特開2017-78168号公報の参考例3を参照して得たトリブロック構造の(メタ)アクリル系ブロック共重合体15質量部をヘンシェルミキサーで混合し、260℃に設定したスクリュー径41mmのベント付き二軸押出機を用いて混練押出して、ガラス転移温度Tgが118℃であるメタクリル系樹脂組成物(M2)のペレットを得た。
【0104】
(製造例5)メタクリル系樹脂組成物(M3)
国際公開第2016/139950号の参考例1および2を参照して得た、メタクリル酸メチル99質量%およびアクリル酸メチル1質量%からなる(メタ)アクリル系樹脂(X3)70質量部、並びに国際公開第2014/167868号の参考例1を参照して得た、動的光散乱法で測定した粒子径が0.23μmである3層構造の(メタ)アクリル系弾性体粒子30質量部をヘンシェルミキサーで混合し、260℃に設定したスクリュー径41mmのベント付き二軸押出機を用いて混練押出して、ガラス転移温度Tgが114℃であるメタクリル系樹脂組成物(M3)のペレットを得た。
【0105】
(製造例6)メタクリル系樹脂組成物(M4)
(メタ)アクリル系樹脂(X1)80質量部、(メタ)アクリル系樹脂(X2)20質量部、特開2017-78168号公報の参考例3を参照して得たトリブロック構造の(メタ)アクリル系ブロック共重合体1質量部、ポリカーボネート樹脂(住化ポリカーボネート社製、SD-POLYCA 401-40)0.8質量部、フェノキシ樹脂(Phenoxy1)2.5質量部、紫外線吸収剤(ADEKA社製、LA-F70)1質量部、および高分子加工助剤(三菱ケミカル社製、メタブレン(登録商標)P550A)2質量部をヘンシェルミキサーで混合し、260℃に設定したスクリュー径41mmのベント付き二軸押出機を用いて混練押出して、ガラス転移温度Tgが122℃であるメタクリル系樹脂組成物(M4)のペレットを得た。
【0106】
実施例1
(延伸フィルムの製造)
ペレット状のメタクリル系樹脂組成物(M1)を、Tダイを接続したφ65mmベント付単軸押出機で270℃で溶融し、幅700mmのTダイからシート状に押出した。ダイ吐出部から溶融状態の熱可塑性樹脂組成物がキャストロールに接触するまでの距離を30mmとし、押出された熱可塑性樹脂組成物を静電印加(エッジピニング、電圧4V、キャストロールとの接触点から垂直方向に5mm、かつTダイ側に10mmの位置)により225mm径のキャストロールに密着させ冷却して、厚さ130μmの原反フィルムとした。続いて、テンター式同時二軸延伸機に係る原反フィルムを導入し、147℃で予熱した。次いで係る原反フィルムに147℃で3.25倍(長手方向1.80倍かつ幅方向1.80倍)の同時二軸延伸を行った。このとき、延伸速度は長手方向および幅方向ともに1000%/分とした。その後、105℃まで冷却し、熱固定を1分間行い、40μmの延伸フィルムを得た。
【0107】
(積層体の製造)
得られた延伸フィルムに、真空蒸着装置(真空デバイス社製、VE-2030、抵抗加熱方式)を用いて、真空蒸着によって厚さ50nmのインジウム層を形成し、金属調加飾フィルムである積層体を得た。このとき、抵抗加熱にはバスケットヒーター(アルミナ92%)を用い、インジウムには純度99.99%かつ粒度1mmのものを用いた。蒸着条件は、真空度7×10-3Pa、速度0.8Å/secで10分間とした。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0108】
(成形体の製造)
得られた積層体を210mm×300mmに切り出して試験片とした。また、ポリスチレン樹脂製のクリップケース(プラス社製、CP-500、幅76mm×奥行き62mm×高さ40mm)を被着体とした。TOM成形装置(布施真空社製、NGF-0406T)に、係る被着体と試験片を、被着体の凸側に試験片の金属層が対向するようにセットして、予熱温度130℃かつ圧力差300kPaの条件でTOM成形を行い、成形体を得た。成形体において積層体は破断しておらず、成形体は美麗な金属調の光沢を有していた。
【0109】
実施例2
実施例1の積層体の製造において、インジウム層の厚さを40nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0110】
実施例3
実施例1の積層体の製造において、インジウム層の厚さを30nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していたが、全体的にインジウムの色が薄かった。
【0111】
実施例4
実施例1の延伸フィルムの製造において、熱固定を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0112】
実施例5
実施例1の原反フィルムの製造において、原反フィルムの厚さを180μmに変更し、延伸フィルムの製造において、延伸倍率を4.50倍(長手方向2.12倍かつ幅方向2.12倍)に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0113】
実施例6
(積層体の製造)
実施例1の原反フィルムの製造において、原反フィルムの厚さを250μmに変更し、延伸フィルムの製造において、延伸倍率を6.25倍(長手方向2.50倍かつ幅方向2.50倍)に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0114】
(成形体の製造1)
得られた積層体を210mm×300mmに切り出して試験片とした。また、ポリスチレン樹脂製のクリップケース(プラス社製、CP-500、幅76mm×奥行き62mm×高さ40mm)を被着体とした。TOM成形装置(布施真空社製、NGF-0406T)に、係る被着体と試験片を、被着体の凸側に試験片の金属層が対向するようにセットして、予熱温度130℃かつ圧力差300kPaの条件でTOM成形を行ったところ、積層体が破断した。
【0115】
(成形体の製造2)
得られた積層体を210mm×300mmに切り出し、金属層側に粘着剤(東亞合成社製、アロンタックS-1511X)を塗布し、厚さ50μmの粘着層を形成して試験片とした。また、ポリスチレン樹脂製のクリップケース(プラス社製、CP-500、幅76mm×奥行き62mm×高さ40mm)を被着体とした。TOM成形装置(布施真空社製、NGF-0406T)に、係る被着体と試験片を、被着体の凸側に試験片の金属層が対向するようにセットして、予熱温度130℃かつ圧力差300kPaの条件でTOM成形を行い、成形体を得た。成形体において積層体は破断しておらず、成形体は美麗な金属調の光沢を有していた。
【0116】
実施例7
実施例1の延伸フィルムの製造において、メタクリル系樹脂組成物(M1)を(メタ)アクリル系樹脂(X1)に変更し、さらに予熱温度および延伸温度を145℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0117】
実施例8
実施例7において、予熱温度および延伸温度を135℃、熱固定温度を95℃に変更したこと以外は実施例7と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0118】
実施例9
実施例1の延伸フィルムの製造において、メタクリル系樹脂組成物(M1)をメタクリル系樹脂組成物(M4)に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0119】
実施例10
実施例1の延伸フィルムの製造において、メタクリル系樹脂組成物(M1)をメタクリル系樹脂組成物(M4)に変更し、さらに延伸温度を150℃に変更、延伸倍率を5.30倍に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0120】
比較例1
実施例1の原反フィルムの製造において、静電印加を金属弾性ロールによる挟持に変更し、原反フィルムの厚さを40μmに変更し、延伸フィルムの製造において、延伸を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観をフィルム側から観察すると、美麗な金属調の光沢を有していた。
【0121】
比較例2
実施例7の原反フィルムの製造において、(メタ)アクリル系樹脂(X1)をメタクリル系樹脂組成物(M2)に変更し、原反フィルムの厚さを98μmに変更したこと以外は実施例7と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、反射光がゆらめいて見え、金属調の光沢が損なわれていた。
【0122】
比較例3
実施例7の原反フィルムの製造において、(メタ)アクリル系樹脂(X1)をメタクリル系樹脂組成物(M3)に変更し、原反フィルムの厚さを98μmに変更したこと以外は実施例7と同様にして積層体を製造した。評価結果を表2に示す。得られた積層体の外観を延伸フィルム側から観察すると、反射光がぼやけて滲んで見え、金属調の光沢が損なわれていた。
【0123】
【0124】
実施例1~10で得た積層体は、比較例1~3に対し、ヘーズが1%以下である延伸フィルムの層を有し、全光線透過率が50%以下であるため、耐打ち抜き性および金属調の光沢に優れていた。中でも、実施例1~5、7、9および10で得た積層体は200%延伸性に優れ、さらに実施例1~3、7、9および10で得た積層体は250%延伸性に優れていたため、絞り加工やその他立体的な成形、立体的な被着体への貼合において特に好適である。また、実施例1、2および4~10で得た積層体は、美麗な金属調の光沢を有し、かつ全体的にインジウムの色が濃く表れていた。
比較例1で得た積層体は、延伸フィルムの層を有さないため、耐打ち抜き性が劣る結果となった。
比較例2および3で得た積層体は、延伸フィルムのヘーズが1%超であるため、金属調の光沢が損なわれていた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の積層体は、耐打ち抜き性および金属調の光沢に優れており、金属調加飾フィルムなどとして利用可能である。