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特許71779323D印刷のための低粘度UV硬化性調合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】3D印刷のための低粘度UV硬化性調合物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/129 20170101AFI20221116BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20221116BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221116BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221116BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20221116BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B29C64/129
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C08F290/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021526550
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 US2019061285
(87)【国際公開番号】W WO2020106526
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】62/769,493
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガナパティアッパン, シヴァパキア
(72)【発明者】
【氏名】ヴォラ, アンキット
(72)【発明者】
【氏名】フー, ボイ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517922(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047615(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/074773(WO,A1)
【文献】特表2018-538152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/112,64/129,64/20,
64/30,64/314,64/40
B33Y 10/00,30/00,50/00,70/00,80/00
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造プロセスにおける液体前駆体であって、
メタ(アクリレート)官能性オリゴマーと、
反応性希釈剤と、
メタ(アクリルアミド)モノマーと、
N,N ジエチルアクリルアミドモノマー又はN,N ジメチルアクリルアミドモノマーあるいはその双方と、
を含
反応性希釈剤と、メタ(アクリルアミド)モノマーと、N,N ジエチルアクリルアミドモノマー又はN,N ジメチルアクリルアミドモノマーあるいはその双方とが、液体前駆体の70-80%である、液体前駆体。
【請求項2】
反応性希釈剤がメタ(アクリレート)モノマーを含む、請求項1に記載の液体前駆体。
【請求項3】
メタ(アクリレート)モノマーが、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族、直鎖状、及び/又は分岐状のメタ(アクリレート)モノマーを含む、請求項2に記載の液体前駆体。
【請求項4】
液体前駆体、N-ビニルピロリドンを含まない、請求項1に記載の液体前駆体。
【請求項5】
液体前駆体におけるオリゴマーが、メタ(アクリレート)官能性オリゴマーのみであり、メタ(アクリレート)官能性オリゴマーが、液体前駆体の20-30%を占める、請求項1に記載の液体前駆体。
【請求項6】
メタ(アクリレート)官能性オリゴマーが、液体前駆体の20-25%を占める、請求項5に記載の液体前駆体。
【請求項7】
光開始剤、光増感剤、及び/又は酸素捕捉剤を含む、請求項1に記載の液体前駆体。
【請求項8】
液体前駆体が、メタ(アクリレート)官能性オリゴマー、反応性希釈剤、メタ(アクリルアミド)モノマー、及びN-ビニル含有モノマーと、場合によっては、光開始剤、光増感剤、及び/又は酸素捕捉剤のうちの一又は複数とからなる、請求項1に記載の液体前駆体。
【請求項9】
研磨パッドの研磨層を製造する方法であって、
研磨層の複数の副層を3Dプリンタを用いて連続的に堆積させることであって、複数の副層の各副層が、
液体前駆体材料をノズルから吐出することであって、液体前駆体材料が、メタ(アクリレート)官能性オリゴマー、反応性希釈剤、メタ(アクリルアミド)モノマーと、N,N ジエチルアクリルアミドモノマー又はN,N ジメチルアクリルアミドモノマーあるいはその双方とを含反応性希釈剤と、メタ(アクリルアミド)モノマーと、N,N ジエチルアクリルアミドモノマー又はN,N ジメチルアクリルアミドモノマーあるいはその双方とが、液体前駆体材料の70-80%である、液体前駆体材料をノズルから吐出すること、及び
液体前駆体材料を硬化して、液体前駆体材料を凝固させて、副層の凝固した研磨層材料を形成することであって、凝固した研磨層材料の吸水率が、室温の水に4日間浸漬させた後、元の重量の10%未満である、副層の凝固した研磨層材料を形成することにより堆積される、
研磨層の複数の副層を3Dプリンタを用いて連続的に堆積させることを含む、
方法。
【請求項10】
液体前駆体材料におけるオリゴマーが、メタ(アクリレート)官能性オリゴマーのみであり、複数の副層の各副層の厚さが、研磨層の総厚の50%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応性希釈剤が、メタ(アクリレート)モノマーであり、液体前駆体の化学的に反応する部分は、メタ(アクリレート)官能性オリゴマーと、メタ(アクリレート)モノマーと、メタ(アクリルアミド)モノマーと、N,N ジメチルアクリルアミドモノマー又はN,N ジエチルアクリルアミドモノマーあるいはその双方とのみを含み、複数の副層の各副層の厚さが、研磨層の総厚の1%未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反応性希釈剤がメタ(アクリレート)モノマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
液体前駆体材料が、N-ビニルピロリドンを含まない、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
メタ(アクリレート)官能性オリゴマーが、液体前駆体材料の20-30%を占める、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
液体前駆体材料が、メタ(アクリレート)官能性オリゴマー、反応性希釈剤、メタ(アクリルアミド)モノマー、及びN,N ジエチルアクリルアミドモノマー又はN,N ジメチルアクリルアミドモノマーあるいはその双方と、場合によっては、光開始剤、光増感剤、及び/又は酸素捕捉剤のうちの一又は複数とからなる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造、より具体的には、付加製造システムにおける吐出のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固体自由形状製造又は3D印刷としても知られる付加製造(AM)は、原材料(例えば、粉末、液体、懸濁液、又は融解固形物)を連続的に分注して2次元の層を形成することから3次元の対象物を作り上げる製造プロセスを意味する。対照的に、従来の機械加工技術は、物品がストック材料(例えば、木片、プラスチック、複合材料、又は金属)から切り出されるサブトラクティブプロセスを含む。
【0003】
化学機械研磨用の研磨パッドは、典型的には、ポリウレタン材料を型成形又は鋳造することにより作製される。型成形の場合、研磨パッドは、例えば射出成形によって1つずつ作製され得る。鋳造の場合、液体前駆体が鋳造され、硬化されて固形物になり、その後この固形物が、個別のパッド片にスライスされる。これらのパッド片は次いで、最終的な厚さに機械加工され得る。溝が、研磨面に機械加工され得るか、又は、射出成形プロセスの一部として形成され得る。
【0004】
研磨パッドは、3D印刷技法によっても製造され得る。液体前駆体材料は、支持体の上方を移動するノズルから分注され、硬化されて、研磨パッドの層が形成され得る。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、付加製造プロセスにおける分注のための液体前駆体材料は、メタ(アクリレート)官能性オリゴマー、反応性希釈剤、メタ(アクリルアミド)モノマー、及びN-ビニル含有モノマーを含む。
【0006】
別の態様では、研磨パッドの研磨層を製造する方法は、3Dプリンタを用いて研磨層の複数の副層を連続的に堆積させることを含む。複数の副層の各副層は、液体前駆体材料をノズルから吐出することであって、前駆体材料が、メタ(アクリレート)官能性オリゴマー、反応性希釈剤、メタ(アクリルアミド)モノマー、及びN-ビニル含有モノマーを含む、液体前駆体材料をノズルから吐出すること、及び前駆体材料を硬化して、副層の凝固した研磨層を形成することにより堆積される。
【0007】
潜在的な利点には、以下の一又は複数が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0008】
前駆体材料は、減少した粘度を有し得るが、迅速な硬化、高い弾性率、及び高い最大引張強さ(UTS)も有し得る。さらに、これらの特性は、最終的な硬化部品の吸水率を低く維持しながら達成され得る。さらに、高分子量(MW)オリゴマーのより高いローディングが加えられることにより、より頑丈な層(すなわち、UTSを維持しながらより高い破断伸びを有する層)が可能になり得る。調合物の組成を調整することにより、室温の水に4日間浸漬させた後に、アクリルアミド又はN-ビニル含有モノマーを含むUV硬化性調合物の吸水率を元の重量の<10%に減少させることが可能である。インクジェットに基づく3D印刷技法によって作製される部品にとって、これは特に望ましい。
【0009】
一又は複数の実施態様の詳細が、添付図面及び以下の説明に明記される。他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例示的な付加製造システムを示す概略断面側面図である。
図2】対照UV架橋性調合物を列挙した表である。
図3】アクリルアミド及びN-ビニルモノマーを含む複数の調合物を列挙した表である。
図4】3D印刷された複数の調合物を列挙した表である。
図5図4の調合物の3D印刷された試験片の機械的特性を列挙した表である。
図6A-6B】例示の研磨パッドの概略断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々な図面における類似の参照記号は、類似の要素を示している。
【0012】
光に基づく硬化、例えばUV硬化を使用する多くの3D印刷技法には、低粘度の調合物が非常に望ましい。これは、最終的な調合物の粘度がジェット温度(60-90℃)で10-20cPである必要があるインクジェットに基づく3D印刷技法にとって重要であり得る。従来、このような低粘度を達成するために、調合物のほとんど(~70-80%)は低粘度の反応性希釈剤であり、調合物のわずか20-25%が、必要な機械的特性を最終的な層に提供する高粘度のオリゴマーである。よって、ほとんどの場合、逐次重合技法によって得ることができるより頑丈な材料とは対照的に、インクジェットに基づく3D技法によって得られる最終的なUV硬化層は非常に脆性で硬い。
【0013】
UV硬化性層に使用されるほとんどの反応性希釈剤は、アクリレート及びメタクリレートモノマーと、モノ、ジ、トリ、又はテトラ官能性の反応性(メタ)アクリレート基との組み合わせである。このように通常使用されるアクリレートモノマーの一つは、~8cPのRT粘度と~90CのTgとを有するイソボルニルアクリレートである。シクロヘキシルメタクリレート及びメチルメタクリレートのような低粘度の他のメタクリレートモノマーも、反応性希釈剤として使用される。しかしながら、これらのモノマーに基づく調合物は、メタクリレート基の反応性が遅いため、硬化が非常に遅いか、又は硬化を完了するために非常に高線量の放射線を必要とする。このため、このようなモノマーを調合物に大量に使用することは実用的ではない。
【0014】
しかしながら、アクリルアミドとN-ビニル含有モノマー、例えば、N,N ジメチルアクリルアミド、N,N ジエチルアクリルアミド及びN-ビニルピロリドンとを含む調合物は、これらの問題に対処することができる。
【0015】
図1は、3D印刷プロセスを使用して部品、例えば研磨パッドを製造するための例示のシステム10の簡略図である。システム10は、上に部品が製造される支持体20と、液滴吐出プリントヘッド30とを含み、液滴吐出プリントヘッド30は一又は複数のノズル32を含む。液体前駆体材料の液滴34は、一又は複数のノズル32から吐出され得る。液滴吐出プリンタは、インクジェットプリンタに類似していることがあるが、インクではなく前駆体材料を使用する。プリントヘッド30及びノズル32は、(矢印Aで示すように)支持体20全体を平行移動する。例えば、プリントヘッド30は、線形トラック36上に支持され、線形アクチュエータ38、例えばスクリュードライブモータによってトラック36に沿って動かされる。あるいは、プリントヘッド30は静止状態であり得、支持体20はモータによって水平に移動され得る。
【0016】
ある実装態様では、支持体20は垂直アクチュエータ22によって移動され得る。例えば、各層が堆積された後、支持体20は、堆積されたばかりの層の厚さに等しい距離だけ低下され得る。代替的に、又は追加的に、プリントヘッド30は、例えば、垂直変位の一部又はすべてを提供するために垂直に移動され得る。これは、ノズル32と、上に液滴34が堆積されている表面との間の均一な距離を確実にすることができ、これにより、製造の均一性を改善し、制御電子装置を簡潔にすることができる。
【0017】
支持体20は堅い基部であってよい、又は例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の層等の柔軟性のある膜であってよい。支持体20が膜である場合には、支持体20は、物品の一部を形成し得る。例えば、支持体20は、バッキング層を、又はバッキング層と研磨パッドの研磨層との間の層を形成し得る。あるいは、部品を支持体20から取り除くことができる。
【0018】
図1は、単一のノズル32を示しているが、実際には、プリントヘッド30は、独立して制御可能なノズルの線形配列を含み得る。ノズルは、支持体表面に平行に、かつプリントヘッド30の運動方向に対して斜め又は垂直な方向に延在し得る。ノズル32の配列は、支持体20の構築エリアの幅に広がることができる。
【0019】
システム10はまた、放射線42を放出して、液体前駆体材料34を凝固、例えば硬化させるためのエネルギー源40を含む。例えば、エネルギー源40は、一又は複数のUVランプを含み得る。例えば、エネルギー源40は、直線配列のLED、例えばUV発光ダイオードを含み得る。直線配列のLEDは、支持体20の構築エリアの幅に広がることができる。エネルギー源40はまた、支持体20全体を、例えばプリントヘッド30と同じ方向において平行移動し得る。例えば、プリントヘッド30及びエネルギー源40は、1ユニットとして移動される共通フレーム上に支持され得るか、又はプリント30及びエネルギー源40は、同じ又は異なるトラックに沿って独立して移動可能であり得る。
【0020】
凝固は重合によって実現可能である。例えば、パッド前駆体材料の層50はモノマーであってよく、モノマーはUV硬化によってインシトゥで重合させることができる。パッド前駆体材料は、実質的に堆積の直後に硬化し得るが、パッド前駆体材料の全層50が堆積した後に、全層50を同時に硬化させることもできる。
【0021】
製造プロセスでは、材料の薄層が徐々に堆積され、凝固する。例えば、前駆体材料の液滴34は、ノズル32から吐出されて、層50を形成する。堆積させた第1の層50aにおいて、ノズル34は支持体20上に噴出し得る。その次に堆積させた層50bにおいては、ノズル34はすでに凝固した材料56上に吐出し得る。各層50が凝固した後、完全な3次元部品、例えば研磨パッドが製造されるまで、新たな層が前の堆積層の上に堆積する。各層50は、部品の総厚の50%未満(例えば10%未満、例えば5%未満、例えば1%未満)である。
【0022】
プリントヘッド30が支持体に対して移動する場合に、各層が、コンピュータ60上の非一時的なコンピュータ可読媒体、例えば、3D描画コンピュータプログラムにデータとして格納されたパターンで適用されるよう、コンピュータ60はさまざまなノズル34からの液滴の吐出を制御し得る。コンピュータ60は、例えばプリントヘッド30及び/又はエネルギー源40の平行移動速度を制御するために、さまざまなアクチュエータを制御することができ、例えば放射線42の強度を制御して、それによって硬化速度を制御するためにエネルギー源40を制御することができ、支持体20の垂直アクチュエータを制御することができる。
【0023】
液滴34の液体前駆体材料は、アクリルアミドと、例えば、N,N ジメチルアクリルアミド、N,N ジエチルアクリルアミド及び/又はN-ビニルピロリドンなどのN-ビニル含有モノマーとを含む調合物であり得る。そのような調合物は、付加製造、例えばインクジェットに基づく3D印刷においてUV硬化性層を形成するのに適した低粘度を有し得る。しかしながら、調合物は、他の3D印刷技法、例えば、光造形法(SLA)又はデジタル光処理(DLP)にも使用され得る。さらに、調合物は、他の用途、例えば他の物品上のコーティング、例えば保護コーティングにも適用可能であり得る。これらの3D印刷部品の潜在的な用途には、機能及びプロトタイピングの用途、並びに半導体製造用の化学機械平坦化(CMP)用の研磨パッドの製造が含まれる。
【0024】
アクリルアミド及びN-ビニルモノマーなどのUV硬化性モノマーは、これらのモノマーの水溶性が高いため、ヒドロゲルなどの高吸水システムの3D印刷以外のUV硬化性調合物に以前は使用された。驚くべきことに、そのような調合物は減少した粘度を有し得るが、迅速な硬化、高い弾性率、及び高い最大引張強さ(UTS)も有し得ることが発見された。さらに、これらの特性は、最終的な硬化部品の水分吸収を低く維持しながら達成され得る。さらに、高分子量(MW)オリゴマーのより高いローディングが加えられることにより、より頑丈な層(すなわち、UTSを維持しながらより高い破断伸びを有する層)が可能になり得る。調合物の組成を調整することにより、室温の水に4日間浸漬させた後に、アクリルアミド又はN-ビニル含有モノマーを含むUV硬化性調合物の水分吸収を元の重量の<10%に減少させることが可能である。インクジェットに基づく3D印刷技法によって作製される部品にとって、これは特に望ましい。
【0025】
調合物には、メタ(アクリレート)官能性オリゴマー、反応性希釈剤、メタ(アクリルアミド)モノマー、及びN-ビニル含有モノマーが含まれる。反応性希釈剤は、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族、直鎖状、又は分岐状のメタ(アクリレート)モノマーであり得る。N-ビニル含有モノマーは、N,N ジメチルアクリルアミド、N,N ジエチルアクリルアミド及び/又はN-ビニルピロリドンを含み得る。調合物は、光開始剤、光増感剤、及び/又は酸素捕捉剤を含み、パフォーマンスを改善し得る。しかしながら、調合物の化学的に反応する部分は、メタ(アクリレート)官能性オリゴマー、反応性希釈剤、メタ(アクリルアミド)モノマー、N-ビニル含有モノマーのみを含み得る、例えばそれらからなる。
【0026】
図2は、EB270オリゴマー(脂肪族ウレタンアクリレート)及びBR744BTオリゴマー(脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート)を使用した対照UV架橋性調合物を列挙した表である。モノマー1はイソボルニルアクリレート(IBOA)である。モノマー3は、「SR 351 LV」の商品名でSartomer Americasから入手可能な低粘度のトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)である。光開始剤(PI)は、米国ノースカロライナ州Charlotteに本社があるIGM Resins USA社から入手可能なOmniradTM819である。オリゴマー、モノマー1、モノマー3、及び光開始剤の重量パーセント(%)が示されている。図2から5の表において、粘度は70℃でセンチポアズ(cP)で示される。最大引張強さ(UTS)はミリパスカル(MPa)で示される。% EIは、破断点伸びのパーセントである。貯蔵弾性率は、30℃(E30)、60℃(E60)、及び90℃(E90)で示される。
【0027】
図2の表に示されているとおり、代表的なオリゴマーのうちの二つについては、2つのモデル調合物の粘度が高すぎ、ラピッドプロトタイピング又は3D印刷による機能部品の製造には機械的特性がまだ不十分である。
【0028】
図3は、図2の表中の対照調合物よりも低い粘度及び良好な機械的特性を有する、アクリルアミド及びN-ビニルモノマーを含む複数の調合物を列挙した表である。モノマーDEAAは、N,N-ジエチルアクリルアミドである。モノマーDMAAは、N,N-ジメチルアクリルアミドである。モノマーNVPは、N-ビニルピロリドンである。オリゴマー、モノマー1、モノマー2、モノマー3、モノマー4、及び光開始剤(PI)の重量パーセント(%)が括弧中に示されている。
【0029】
DLP、SLA、及びポリジェット技法のような3D印刷技法では、ラピッドプロトタイピング又は機能部品の製造を可能にする低粘度の調合物が非常に望ましい。低粘度の調合物は、より扱いやすく、印刷時により高い解像度を提供する。このような低粘度を達成するために、インク組成物は、ほとんどが、例えば、少なくとも約50%、例えば70-80%が、低粘度の液体、例えば、メタ(アクリレート)モノマー、メタ(アクリルアミド)モノマー、及びN-ビニル含有モノマーであり得る。組成物の約20-30%、例えば20-25%は、必要な機械的特性を最終的な硬化層に提供する高粘度のオリゴマーであり得る。
【0030】
図4は、StratasysのConnex 500プリンタを使用して3D印刷され、タイプIV及びタイプVのドッグボーン及びDMAクーポン試料を形成する、複数の調合物(#10-14)を列挙した表である。印刷後、3D印刷された試料を90℃で1時間硬化し、この時点で試料を室温に冷却した。試料を室温で24時間置いた後、すべての試料の特性評価を行った。UTS、破断点伸び%、30℃及び90℃での貯蔵弾性率、並びに室温での浸漬試験の96時間後の吸水率について、試料を特性評価した。3D印刷した試料の好ましい値は、UTS、破断点伸び%、E30、E90、及び吸水率について、それぞれ25-35MPa、20-75%、~1GPa-1.5GPa、35-200MPa、及び>10%である。
【0031】
表4の表では、オリゴマー、モノマー1、モノマー2、モノマー3、モノマー4、及び光開始剤(PI)の重量パーセント(%)が括弧中に示されている。モノマーSR 420は、Sartomer Americasの非常に低粘度の単官能性アクリルモノマーである。モノマーTMCHAは、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレートである。モノマー1.4 BDDAは、1,4-ブタンジオール ジアクリレートである。
【0032】
図5は、図4の表の調合物#11-#14の3D印刷された試験片の機械的特性を列挙した表である。
【0033】
低粘度でアクリルアミド及びN-ビニルモノマーを含む調合物は、付加製造に特に望ましい。ポリジェット3D印刷技法を使用する調合物のこのような用途の一つは、より高い伸び及びUTSを有する先進的な化学気化研磨(CMP)パッドを作製することである。ジェット温度での調合物の粘度範囲は、10cPから25cPの間、例えば12cpから20cPの間、例えば13cpから16cPの間であり得る。このような調合物のジェット温度は、50℃と100℃の間、例えば55℃と80℃の間、例えば60℃と70℃の間であり得る。
【0034】
図6A及び6Bは、上記及び表3と4で検討された前駆体材料の調合物を使用する付加製造により製造され得る研磨パッド100を示している。図6Aに示すとおり、研磨パッド100は、上記の前駆体材料を使用する付加製造により製造された研磨層102からなる単層パッドであり得る。あるいは、図6Bに示す通り、研磨パッド100は、研磨層102及び少なくとも一つのバッキング層104を含むマルチレイヤパッドであり得る。
【0035】
研磨層102は、研磨プロセスにおいて不活性材料であり得る。研磨層102は、ショアDスケールの約40~80、例えば50~65の硬度を有し得る。いくつかの実装態様では、研磨層102は、均質な組成物の層であり得る。いくつかの実装態様では、研磨層102は、ポア、例えば小さなボイドを含む。ポアは、50~100ミクロンの幅であってよい。
【0036】
研磨層102は、80ミル以下、例えば50ミル以下、例えば25ミル以下の厚さD1を有し得る。調整プロセスによりカバー層がすり減りやすいため、研磨層102の厚さは、研磨パッド100に例えば3000回の研磨及び調整サイクルの有用な寿命が提供されるように選択され得る。
【0037】
顕微鏡スケールでは、研磨層102の研磨面106は、例えば2~4ミクロンrmsの粗い質感の表面を有し得る。例えば、研磨層102に研削プロセス又は調整プロセスを施して、粗い表面性状を生成することができる。加えて、3D印刷により、例えば200ミクロンまでの小さく均一な特徴部が提供され得る。
【0038】
研磨面106は顕微鏡スケールでは粗いことがあるが、研磨パッド自体の肉眼的スケールでは、研磨層106は良好な厚さ均一性を有し得る(この均一性は、研磨層の底面に対する研磨面106の高さの全体的な変動を指し、研磨層に意図的に形成されたいかなる肉眼的な溝又は貫通孔をも含むものではない)。例えば、厚さの非均一性は1ミル未満であり得る。
【0039】
場合によっては、研磨面106の少なくとも一部は、スラリーを運ぶために研磨面に形成された複数の溝108を含み得る。溝108は、溝に対応する位置に前駆体材料を単に吐出しないことによって形成することができる。溝108は、例えば同心円、直線、斜交平行、螺旋等のほぼすべてのパターンのものであってもよい。溝108があると仮定すると、研磨面106、すなわち溝108間の平坦域は、研磨パッド100の水平表面積全体の約25~90%になってもよい。したがって、溝108は、研磨パッド18の水平表面積全体の10~75%を占めてもよい。溝26間の平坦域は、約0.1~2.5mmの横幅を有し得る。
【0040】
いくつかの実装態様では、例えばバッキング層104がある場合、溝108は研磨層102を完全に貫通して延在し得る。一部の実装態様では、溝108は、研磨層102の厚さの約20~80%(例えば40%)を通って延在し得る。溝108の深さD2は0.25~1mmであってよい。例えば、50ミルの厚さの研磨層102を有する研磨パッド100では、溝108は約20ミルの深さD2であり得る。
【0041】
バッキング層104は、研磨層102よりも柔軟で、より圧縮性であり得る。バッキング層104は、ショアAスケールで80以下の硬度、例えば約60ショアAの硬度を有し得る。バッキング層104は、研磨層102よりも厚い、又は薄い、又は同じ厚さであってよい。
【0042】
例えば、バッキング層は、ボイドを有するポリウレタン又はポリシリコン等のオープンセル又はクローズセル発泡体であってよく、これにより加圧下でセルがつぶれ、バッキング層が圧縮される。適切なバッキング層の材料は、コネクチカット州ロジャースのロジャース社のPORON4701-30、又はRohm&Haas社のSUBA-IVである。バッキング層の硬度は、層材料と空隙率を選択することによって調節可能である。
【0043】
一部の実装態様では、バッキング層104も、3D印刷プロセスによって製造され得る。例えば、バッキング層104と研磨層102とは、付加製造システム10によって、1つの連続工程で製造されることも可能である。バッキング層104には、異なる前駆体材料を使用することによって、及び/又は異なる硬化量、例えば、異なるUV放射強度を使用することによって、研磨層102とは異なる硬度が与えられ得る。
【0044】
他の実装態様では、バッキング層104は、従来型のプロセスによって製造されてから、研磨層102に固定される。例えば、研磨層102は、感圧接着剤などである薄型接着層によって、バッキング層104に固定され得る。
【0045】
数々の実施態様が説明されてきた。それでもなお、本発明の本質及び範囲から逸脱することなく様々な改変が行われ得ることが、理解されよう。
【0046】
層の各層の厚さ、及び、ボクセルの各々のサイズは、実装態様ごとに変動し得る。一部の実装態様では、支持体20上に分注が行われる時に、各ボクセルは、例えば10μm~50μm(10μm~30μm、20μm~40μm、30μm~50μm、およそ20μm、およそ30μm、又はおよそ50μmなど)の幅を有し得る。各層は、所定の厚さを有し得る。この厚さは、例えば、0.10μm~125μm(例えば、0.1μm~1μm、1μm~10μm、10μm~20μm、10μm~40μm、40μm~80μm、80μm~125μm、およそ15μm、およそ25μm、およそ60μm、又はおよそ100μm)であり得る。
【0047】
研磨パッドは、円形又は何か他の形状のパッドとすることができる。
【0048】
エネルギー源は、異なる波長範囲を有する多数の光源を含み得る。例えば、エネルギー源は、2列のUV光源を含むことがあり、2列は異なる波長帯を有する。
【0049】
研磨パッドの製造に関連して装置について説明してきたが、この装置は、付加製造によるその他の物品の製造にも適合し得る。
【0050】
したがって、その他の実施態様も、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6B】