(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】融雪システム、発熱部材、及び発熱部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 11/26 20060101AFI20221117BHJP
E01C 5/22 20060101ALI20221117BHJP
E01C 11/24 20060101ALI20221117BHJP
H05B 6/74 20060101ALI20221117BHJP
H05B 6/64 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E01C11/26 Z
E01C5/22
E01C11/24
H05B6/74 A
H05B6/64 Z
(21)【出願番号】P 2018229692
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】河邊 伸二
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-082600(JP,A)
【文献】特開2010-157696(JP,A)
【文献】特開2017-206811(JP,A)
【文献】特開2006-138172(JP,A)
【文献】特開2009-097160(JP,A)
【文献】実開昭52-079051(JP,U)
【文献】実開昭60-124097(JP,U)
【文献】特開平10-196004(JP,A)
【文献】特開2002-021013(JP,A)
【文献】特開2015-018854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E01H 1/00-15/00
H01B 3/00-3/14
H01Q 15/00-19/32
H05K 9/00
H05B 6/64、6/74、6/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の電波を発信する電波発信機と、前記電波発信機に一端を接続した電波伝送体と、前記電波伝送体から漏えいして一定方向に照射される所定の周波数の電波を吸収し
、発熱する電波吸収発熱体
と、を備えた融雪システムであって、
前記電波吸収発熱体は、比誘電率及び比透磁率が均一の材料によって形成されており、吸水性を有し、電波照射方向に直交する方向に拡がる断面積が前記電波を照射される側から遠ざかる方向に向けて増加していることを特徴とする
融雪システム。
【請求項2】
前記電波吸収発熱体は、前記電波を照射される側の端部が電波照射方向に直交する方向に直線状に延びており、前記端部の両側から前記電波を照射される側から遠ざかる方向に延びる側面の間隔が前記電波を照射される側から遠ざかる方向に大きくなるウェッジ形状であることを特徴とする請求項1に記載の
融雪システム。
【請求項3】
前記電波吸収発熱体は、頂点が前記電波を照射される側に位置する四角錘形状であることを特徴とする請求項
1に記載の
融雪システム。
【請求項4】
前記電波吸収発熱体は、所定の周波数の電波が照射されると、この電波が照射される側とは反対側
である表面が温度上昇することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の
融雪システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の融雪システムに利用される発熱部材であって、
前記電波吸収発熱体と、
樹脂製であり、
前記電波吸収発熱体の前記電波が照射される側
である裏面に当接して配置され、前記電波吸収発熱体を支持する基材
と、
を備えていることを特徴とする発熱部材。
【請求項6】
前記基材は、発泡体に成形されていることを特徴とする請求項
5に記載の
発熱部材。
【請求項7】
前記基材は、比誘電率が1.0~1.5であることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の
発熱部材。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の発熱部材の製造方法であって、
水平方向に広がる断面における空間が下方から上方に向けて増加する凹部が形成された
前記基材を前記凹部が上方を向いて開口するように配置する第1工程と、
第1工程後に前記凹部に流動性を有する電波吸収発熱材料を流し込む第2工程と、
を備えていることを特徴とする発熱部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収発熱体、この発熱体を支持する基材、及びこれらを備えた発熱部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の発熱ブロックを開示している。この発熱ブロックは、降雪地域の各戸の敷地内通路等に敷設され、融雪に利用される。この発熱ブロックは所定の周波数の電波を漏洩する電波伝送体の上方に配置される。この発熱ブロックは、電波伝送体から漏洩した所定の周波数の電波が照射されることによって、電波を吸収して発熱する。この発熱ブロックは、通路等に敷設された施工状態において、上方から見た平面視が正方形状であり、所定の厚みを有している。この発熱ブロックは、施工状態において、下方から上方に向けて、基材、電波吸収発熱体、及び電波を反射する反射材の順に積層して形成されている。基材は砂モルタルで形成されている。電波吸収発熱体は電波を吸収するスラグを骨材としたモルタルによって平板状に形成されている。また、電波吸収発熱体は、防水剤が添加され、モルタル等の撥水性を向上させ水の侵入を低減している。このため、この発熱ブロックは、被水しても、電波吸収発熱体の含水が抑えられて比誘電率及び比透磁率の変化が少なく発熱性能の低下を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の電波吸収発熱体は、平板状であるため、電波吸収発熱体の厚さや、電波伝送体からの距離が電波吸収性能、つまり発熱性能に大きく影響する。このため、良好な発熱性能を得るためには、電波吸収発熱体の製造精度や発熱ブロックの施工精度を高くしなければならず、手間やコストが増加してしまう。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、被水しても良好に発熱することができるとともに、製造及び施工における手間やコストの低減を図ることができる電波吸収発熱体及び発熱部材を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の電波吸収発熱体は、一定方向に照射される所定の周波数の電波を吸収して発熱する電波吸収発熱体であって、
吸水性を有し、電波照射方向に直交する方向に拡がる断面における比誘電率又は比透磁率の少なくとも一方が前記電波を照射される側から遠ざかる方向に向けて増加していることを特徴とする。
【0007】
この電波吸収発熱体は、電波照射方向に直交する方向に広がる断面における比誘電率又は比透磁率の少なくとも一方が前記電波を照射される側から遠ざかる方向に向けて増加するため、電波照射方向における施工位置がずれたり、被水して含水したりしても、所定の周波数の電波を電波吸収発熱体の厚さ方向のどこかで吸収し発熱することができる。このため、この電波吸収発熱体は、製造精度や施工精度を厳しく管理しなくても良好に発熱することができる。
【0008】
第2発明の電波吸収発熱体は、一定方向に向けて照射される所定の周波数の電波を吸収して発熱する電波吸収発熱体であって、
比誘電率及び比透磁率が均一の材料によって形成されており、吸水性を有し、電波照射方向に直交する方向に拡がる断面積が前記電波を照射される側から遠ざかる方向に向けて増加していることを特徴とする。
【0009】
この電波吸収発熱体は、比誘電率及び比透磁率が均一の材料によって形成されており、電波照射方向に直交する方向に拡がる断面積が前記電波を照射される側から遠ざかる方向に向けて増加しているため、等価比誘電率及び等価比透磁率が下方から上方に向けて増加している。このため、この電波吸収発熱体は電波照射方向のどこかで所定の周波数の電波を吸収し発熱することができる。また、この電波吸収発熱体は、電波照射方向における施工位置がずれたり、被水して含水したりしても、所定の周波数の電波を電波照射方向のどこかで吸収し発熱することができる。このため、この電波吸収発熱体は製造精度や施工精度を厳しく管理しなくても良好に発熱することができる。
【0010】
ここでいう「均一」とは完全に一様であることに限らず、発熱性能に支障を生じない範囲においてばらついていてもよい。
【0011】
したがって、第1発明及び第2発明の電波吸収発熱体は、被水しても良好に発熱することができるとともに、製造及び施工における手間やコストの低減を図ることができる。
【0012】
第3発明の基材は、樹脂製であり、第1発明又は第2発明の電波吸収発熱体の前記電波が照射される側の裏面に当接して配置され、前記電波吸収発熱体を支持することを特徴とする。
【0013】
この基材は樹脂製であるため含水し難い。このため、この基材は被水した際に比誘電率又は比透磁率の変化を抑えることができる。
【0014】
第4発明の発熱部材の製造方法は、水平方向に広がる断面における空間が下方から上方に向けて増加する凹部が形成された第3発明の基材を前記凹部が上方を向いて開口するように配置する第1工程と、
第1工程後に前記凹部に流動性を有する電波吸収発熱材料を流し込む第2工程と、
を備えていることを特徴とする。
【0015】
この発熱部材の製造方法は、所定の周波数の電波を効率的に吸収して発熱する発熱部材を施工現場で容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1の融雪システムを示す斜視図である。
【
図2】実施例1の発熱部材及び電波伝送体の断面を示す断面斜視図である。
【
図3】電波伝送体から漏えいした電波の電界の方向を示す概略図である。
【
図4】(A)はウェッジ形状の電波吸収発熱体の寸法を示す斜視図であり、(B)は(A)のXY平面内の断面を示す断面図である。
【
図5】ウェッジ形状の電波吸収発熱体の特性の近似計算する際の模式図である。
【
図6】多層型電波吸収体の構成を示す概念図である。
【
図7】ウェッジ形状の電波吸収発熱体及び平板型電波吸収発熱体の反射減衰量を示すグラフである。
【
図9】供試体への電波の入射方向を示す概略図である。
【
図10】ウェッジ形状の電波吸収発熱体の山数と反射減衰量の関係を示すグラフである。
【
図11】ウェッジ形状の電波吸収発熱体の山数と散乱量の関係を示すグラフである。
【
図12】砂:スラグ比を変化させたときの周波数と反射減衰量の関係を示すグラフである。
【
図13】第2溝部に電波伝送体を埋設する状態を示す斜視図である。
【
図14】第1溝部に基材を配置した状態を示す斜視図である。
【
図15】基材の各凹部に流動性を有するスラグモルタルを流し込んだ状態を示す斜視図である。
【
図16】スラグモルタル上に電波反射材を配置した状態を示す斜視図である。
【
図17】電波反射材の上から保護材となる流動性を有する砂モルタルを流し込んだ状態を示す斜視図である。
【
図18】下層から上層に向けて比誘電率又は比透磁率が増加した平板状の電波吸収発熱体を示す斜視図である。
【
図19】四角錘形状の電波吸収発熱体を示す斜視図である。
【
図20】電波伝送体が延びている方向に平行な方向に複数のスロットが延びている電波伝送体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
第2発明の電波吸収発熱体は、前記電波を照射される側の端部が電波照射方向に直交する方向に直線状に延びており、前記端部の両側から前記電波を照射される側から遠ざかる方向に延びる側面の間隔が前記電波を照射される側から遠ざかる方向に大きくなるウェッジ形状であり得る。この場合、電波吸収発熱体の電波照射方向に直交する方向に直線状に延びている端部を照射する所定の周波数の電波の電界Eの方向に交差するように電波吸収発熱体を配置すると、電波を良好に吸収し発熱することができる。なお、
図3に示すように、電波の電界Eの方向は、後述する電波伝送体20に形成されたスロット21が延びている方向に直交する。
【0019】
第2発明の電波吸収発熱体は、頂点が前記電波を照射される側に位置する四角錘形状であり得る。この場合、照射する所定の周波数の電波の電界Eの方向に関わらず、電波吸収発熱体が電波を良好に吸収し発熱することができる。このため、電波吸収発熱体は電界Eの方向を考慮せずに施工することができる。
【0020】
第1発明及び第2発明の電波吸収発熱体は、所定の周波数の電波が照射されると、この電波が照射される側とは反対側の表面が温度上昇し得る。この電波吸収発熱体を融雪システムに利用すれば、良好に雪を溶かすことができる。
【0021】
第3発明の基材は発泡体に成形され得る。この場合、この基材は、発泡体であるため、断熱性が高く、下方に逃げる熱を抑制することができる。また、この基材は、発泡体にすることによって、比誘電率を低くすることができる。なお、比誘電率の低い材質を発泡して基材を形成するとよい。
【0022】
第3発明の基材は、比誘電率が1.0~1.5であり得る。この場合、この基材による電波の吸収や反射が少なくなるため、電波吸収発熱体まで電波が到達し易く電波吸収体が良好に発熱することができる。なお、基材の比誘電率は1.0~1.3が好ましく、さらに好ましくは、1.0~1.1がよい。基材の比誘電率は1.0に近い程、電波の吸収や反射が少なくなり、電波吸収体が良好に発熱することができる。
【0023】
次に、本発明の電波吸収発熱体、基材、及びこれらを備えた発熱部材の製造方法を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<実施例1>
実施例1の電波吸収発熱体43、基材41、及びこれらを備えた発熱部材40は、
図1及び
図2に示すように、融雪システムに利用される。融雪システムは、電波発信機10、電波伝送体20、及び発熱ブロック30を具備している。この発熱ブロック30は、発熱部材40を有しており、降雪地域の各戸の敷地内通路等に敷設される。
【0025】
電波発信機10は所定の周波数(2.45GHz)の電波を発信する。電波伝送体20は、電波発信機10に一端が接続され、一方向に延びるステンレス製の角型鋼管である。電波伝送体20は延びている方向に直交する断面形状が横長四角形状である。この断面形状は、短辺の外寸が50.0mm、短辺の内寸が46.8mmであり、長辺の外寸が100mm、長辺の内寸が96.8mmである。
【0026】
電波伝送体20は、発熱ブロック30の下方に配置された施工状態において、上面に複数のスロット21が形成されている。スロット21はスリット状の孔である。スロット21は電波伝送体20が延びている方向に直交する方向に延びている。スロット21は、幅が3mmであり、長さが30mmである。また、スロット21は10mm間隔で形成されている。電波伝送体20は各スロット21から上方に向けて電波が漏えいする。電波伝送体20から漏えいする電波の電界Eの方向は、
図3に示すように、スロット21が延びている方向に直交する。つまり、電波伝送体20から漏えいする電波の電界Eの方向は電波伝送体20が延びている方向と平行である。電波伝送体20の上面に発熱ブロック30の下面(基材41の下面)の中央部が当接した状態で後述する発熱ブロック30が通路等に敷設される。
【0027】
発熱ブロック30は、
図2に示すように、発熱部材40、電波反射材50、及び保護材60を有している。発熱部材40は電波吸収発熱体43と基材41を備えている。この発熱ブロック30は、通路等に敷設された施工状態において、上方から見た平面視(以下、「平面視」と言う。)が正方形状(一辺が300mm)である。
【0028】
基材41は発泡スチロール(発泡ポリエチレン)製である。つまり、基材41は樹脂製の発泡体である。この基材41は、発泡倍率を調整することによって、比誘電率を1~1.5にすることができる。発泡倍率を50倍にした発泡スチロール製の基材41の比誘電率及び比透磁率を表1に示す。
【0029】
【0030】
基材41の外形は直方体である。基材41は、平面視が正方形状(一辺が300mm)であり、上下方向の厚さが130mmである。基材41は、平面視において、平行な2辺に亘って一方向に延びた9個の凹部41Aが平行に間隔を空けずに並んで形成されている。各凹部41Aは、発熱ブロック30(基材41)を通路等に敷設した施工状態において、上方を向いて開口している。各凹部41Aは、施工状態において、凹部41Aが延びている方向に直交する断面形状が逆二等辺三角形状である。各凹部41Aの最下端部の深さは70mmである。これら凹部41Aは後述するウェッジ形状の電波吸収発熱体43が嵌まり込んだ状態になる。また、基材41は、施工状態において、各凹部41Aの下端よりも下方に60mmの厚さを有している。
【0031】
基材41は電波伝送体20が延びている方向に直交する方向に各凹部41Aが延びるように通路等に敷設される。つまり、各凹部41Aは電波伝送体20に形成された複数のスロット21が延びている方向と平行な方向に延びるように施工される。また、基材41は下面の中央部が電波伝送体20の上面に当接した状態で施工される。このように、電波伝送体20の上面に下面が当接するように施工された基材41は、電波吸収発熱体43の下面に当接した状態で電波吸収発熱体43の下方に配置され、電波吸収発熱体43を支持する。
【0032】
電波吸収発熱体43はスラグを骨材としたモルタル(以下、「スラグモルタル43C」と言う。)により形成されている。スラグは、電波を吸収し、熱に変換する性質を持った電気炉酸化スラグである。スラグモルタル43Cは、比誘電率及び比透磁率が均一になるように、スラグ、セメント及び水を混錬して形成されている。スラグモルタル43Cのスラグ、セメント及び水の調合(質量比)を表2に示す。
このスラグモルタル43Cは硬化した状態で吸水性を有している。
【0033】
【0034】
ここで、セメントは普通ポルトランドセメントであるが、他のポルトランドセメントや、混合セメントや、エコセメントや、特殊セメントであってもよい。なお、ポルトランドセメントには、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、及びこれらそれぞれについて低アルカリ形タイプが含まれる。また、混合セメントには、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントが含まれる。また、エコセメントには、普通エコセメント、速硬エコセメントが含まれる。また、特殊セメントには、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、グラウト用セメント、油井セメントが含まれる。
【0035】
一つの発熱ブロック30において、電波吸収発熱体43は、一方向に平行に並んで延びた9個の凸部43Aによって形成されている。各凸部43Aは、発熱ブロック30(電波吸収発熱体43)を通路等に敷設した施工状態において、下方に向けて突出している。各凸部43Aは、施工状態において、下端の頂部43Bが水平方向に直線上に延びている。また、この状態において、各凸部43Aは頂部43Bに直交する断面形状が逆二等辺三角形状である。つまり、各凸部43Aは、施工状態において、下端(電波を照射される側の端部)が水平方向(電波照射方向に直交する方向)に直線状に延びており、下端の両側から斜め上方(電波を照射される側から遠ざかる方向)に延びる平面状の側面が下方から上方(電波を照射される側から遠ざかる方向)に向けて連続的に大きくなるウェッジ形状である。各凸部43Aは、施工状態における上下方向の寸法が70mmであり、頂部43Bが延びている方向の寸法は300mmである。
【0036】
各凸部43Aは、施工状態において、基材41に形成された各凹部41Aに嵌合した状態になる。つまり、各凸部43Aは、施工状態において、電波伝送体20が延びている方向に直交する方向(スロット21が延びている方向)に平行に延びている。また、電波吸収発熱体43は、電波伝送体20の上面に下面が当接した基材41に支持されるため、電波吸収発熱体43の下端の頂部43Bが電波伝送体20の上面から60mm離れた位置に延びた状態に配置される。さらにウェッジ形状の各凸部43Aは上下方向の寸法が周波数2.45GHzの電波の半波長より大きい70mmである。
【0037】
この電波吸収発熱体43は、上面(電波が照射される側とは反対側の表面)の近傍で周波数2.45GHzの電波を最も吸収しやすいように等価比誘電率と等価比透磁率を調整することによって、電波伝送体20から漏えいする周波数2.45GHzの電波を上端部近傍で吸収して発熱し、上面が温度上昇する。
【0038】
電波反射材50は、発熱ブロック30を通路等に敷設した施工状態において、電波吸収発熱体43の上面に配置される。電波反射材50は溶接金網の一部を欠損させて電波反射性能を高めた欠損金網である(
図16参照)。電波反射材50は、通路等に敷設した施工状態において、電波伝送体20が延びている方向に直交する方向に欠損部51が延びるように配置される。
【0039】
保護材60は、電波反射材50の上から電波吸収発熱体43の上面に流し込まれた砂モルタルである。砂モルタルの調合(質量比)を表3に示す。保護材60は、電波反射材50を発熱部材40に対して所定の位置に固定すると共に、発熱ブロック30の上面を形成している。保護材60の厚さは8mmである。この保護材60は少なくとも上面が露出した状態で施工される。
【0040】
【0041】
<ウェッジ型電波吸収発熱体43の特性>
次に、上述したウェッジ形状の電波吸収発熱体43(以下、「ウェッジ型電波吸収発熱体43」と言う。)の特性について説明する。
【0042】
図4(A)にウェッジ型電波吸収発熱体43の一つの凸部43Aの寸法を示す。ウェッジ型電波吸収発熱体43の一つの凸部43AのZ軸方向の長さをa、底面のX軸方向の長さをb、Y軸方向の長さをc、Z軸上の位置zにおけるX軸方向の長さをb
zとする。このウェッジ型電波吸収発熱体43の凸部43Aを
図5に示すように十分に薄い層に分割する。分割した各層の比誘電率及び比透磁率を平均化して、均一な電気特性を持つ平板として扱うことでウェッジ型電波吸収発熱体43の特性を近似計算で算出できる。このとき、平均化した比誘電率を等価比誘電率、平均化した比透磁率を等価比透磁率という。なお、
図5における下方を向いた白抜き矢印は照射される電波の方向を示している。Z軸上の位置zにおけるXY平面内の断面を
図4(B)に示す。この断面における電波吸収発熱材料の占有面積S
uと空気の占有面積S
aは、それぞれ式(1)、式(2)で表される。
【0043】
【0044】
この面積比で比誘電率の平均を求めると式(3)のように表され、比透磁率の平均を求めると式(4)のように表される。
【0045】
【0046】
多層型電波吸収体の構成を
図6に示す。1層目の規格化入力インピーダンス及び2層目の規格化入力インピーダンスは式(5)、式(6)で表される。
【0047】
【0048】
ここで、
【0049】
【0050】
式(5)~式(7)をN層まで拡大すると、式(8)、式(9)で表される。
【0051】
【0052】
式(5)~式(9)で算出したZN、空気の特性インピーダンスZ0を用いて反射係数S及び反射減衰量RL(dB)を式(10)、式(11)で表すことができる。
【0053】
【0054】
以上の式を用いてウェッジ型電波吸収発熱体43の反射減衰量を算出すると
図7に示すようになる。従来の平板型電波吸収発熱体の反射減衰量と比較すると、広い周波数帯で目的(基準)の反射減衰量を満たすことができる。このことから製造上の誤差や含水で比誘電率及び比透磁率に変化があっても目的の反射減衰量を満たすことができると考える。
【0055】
次に、供試体83を用いて反射減衰量を測定した結果を説明する。
<供試体83>
供試体83の底辺は、300×300mmとする。高さは周波数2.45GHzの電波の半波長より大きい70mmとする。電波が照射される中心に凸部83Aの頂部83Bが位置するように、底面積に収まる凸部83Aの数(以下、山数とする)は奇数とする。
【0056】
スラグモルタル43Cの調合(容積比)を表4に、作製条件を表5に示す。使用する供試体83の山数は、製造上のコストを考慮して9を最大数とし、細骨材として用いる山砂とスラグの比(以下、砂:スラグ比とする)=0:10の調合で山数1、3、5、7、9の供試体83を作製する。砂:スラグ比の変化と反射減衰量の関係を明らかにするため、砂:スラグ比=2:8、4:6の調合でも山数9を製造する。
【0057】
【0058】
【0059】
蛍光X線による無機元素の定性分析により得られたスラグの成分を酸化物に換算した質量比で表6に示す。使用したスラグの粒径は0.3~0.6mmで、セメントは普通ポルトランドセメントとする。
【0060】
供試体83は、気中養生1日、水中養生5日とし、その後100度の恒温恒湿器で72時間以上乾燥させた。
【0061】
【0062】
<測定方法>
アーチ型測定装置90を
図8に、供試体83への電波の入射方向を
図9で示す。本測定では、アーチ型測定装置90を用いてSパラメータ測定法により反射減衰量を測定する。電波はネットワークアナライザ95のポート1から発信され、同軸ケーブルを介して送信アンテナ(ダブルリジッドホーンアンテナ)91によって供試体83に照射される。照射された電波は供試体83により反射・吸収されるか、供試体83を透過する。透過した電波は金属製の供試体設置台92に反射され、供試体83表面で反射された電波とともに受信アンテナ93で受信されて、同軸ケーブルを介してポート1に受信される。
【0063】
このとき、ポート1における入射波をα1、反射波をβ1とすると反射係数は式(12)で示される。
【0064】
【0065】
式(12)で示される反射係数はベクトル量であるので実部をa、虚部をb、虚数単位をjとすると、式(13)で表せる。これをスカラー量の反射係数に変換すると式(14)となる。式(14)のスカラー量の反射係数を用いて式(15)から反射減衰量RL(dB)を算出する。
【0066】
【0067】
図8に示すアーチ型測定装置90により
図9に示すX軸方向に散乱した電波を測定する。ネットワークアナライザ95のポート1から電波を発信し、同軸ケーブルを介して送信アンテナ91から供試体83に照射する。発信する電波の強度は約10dBmとする。供試体83の表面で斜め方向に反射した電波は受信アンテナ93(ダブルリジッドホーンアンテナ)を介してスペクトラムアナライザ96のポート2で受信される。受信アンテナ93は送信アンテナ91を中心として左右に15、30、45、60、75度の位置に設置する。全位置での反射量の合計をウェッジ型電波吸収発熱体43の散乱量として評価する。
【0068】
周波数2.45GHzにおける山数と反射減衰量の関係を
図10に、山数と散乱量の関係を
図11に示す。反射減衰量は山数9のとき最大の28.6dBをとる。15dB以上の反射減衰量があれば、十分に発熱するので、山数9は十分な発熱性能を有すると考える。しかし、ウェッジ型電波吸収発熱体43はその形状により凸部43Aの斜面に対して電波が斜入射する形にもなり得る。その場合、照射された電波が供試体83の表面で斜め方向に反射し、散乱するため、平板状の吸収体と比較して散乱の割合が高くなることが懸念され、反射減衰量が大きいだけでは吸収性能が高いとは言えない。
図11の散乱量を見ると山数が1のとき最大の-23.2dBmをとった後、急激に低下し、山数が3以上になると-26.5dBm~-26dBm付近で一定となる。また、電波暗室で一般的に用いるカーボンを含浸させたウレタン製のピラミッド型電波吸収体及び平板型電波吸収発熱体に電波を照射した際の散乱量は、それぞれ-25.9dBm、-25.4dBmであった。いずれも山数が3以上であれば下回っており、散乱量は十分に小さい。
【0069】
以上より、最も反射減衰量が高く、散乱量も-26.6dBmと十分小さい値をとる山数9が最も電波吸収性能の高いウェッジ型電波吸収発熱体43の形状であると考えられる。また、
図11より、1以外の山数でも十分小さい散乱量であり、十分な電波吸収性能を有していると考える。
【0070】
砂:スラグ比を変化させたときの周波数と反射減衰量の関係を
図12に示す。周波数2.45GHzにおいて反射減衰量は砂:スラグ比=0:10で最大の23.7dBをとった後、スラグの割合が少なくなるにつれて減少し、砂:スラグ比=4:6で最小の14.5dBをとる。
【0071】
スラグの割合が高いほど低周波帯で最大の反射減衰量に達し、その周波数は砂:スラグ比=4:6で約4.6GHz、2:8で約4.3GHz、0:10で約3.9GHzである。その後、約5GHz以上になると0:10~4:6のいずれの砂:スラグ比でも安定して20dB以上の反射減衰量をとる。
【0072】
式(5)~式(11)を用いると、電波吸収材の比誘電率及び比透磁率が大きいほど、最大の反射減衰量をとる周波数は低周波に推移すると分かる。スラグは山砂と比較して十分に比誘電率等が大きいため、スラグの割合が大きいほど比誘電率等が大きくなり、低周波帯の電波を吸収できる。
【0073】
測定範囲内において、最大の反射減衰量をとる周波数は2.45GHzより高周波にある。そこで、より比誘電率等が高いスラグへの変更や、焼成でスラグの比誘電率等を高める、スラグの一部をスラグより比誘電率等が高いカーボン等に置換する等を行って、最大の反射減衰量をとる周波数を2.45GHzより低周波に推移させれば、周波数2.45GHzにおいてより高い電波吸収性能を持つウェッジ型電波吸収発熱体43を製造できると考える。
【0074】
ウェッジ型電波吸収発熱体43は式(1)~式(11)に基づけば製造上の誤差が生じた場合も反射減衰量に大きな変化は無く、含水した場合も
図12から比誘電率の上昇により最大の反射減衰量をとる周波数が低周波に推移するため、反射減衰量は低下しないと考える。よって、測定結果より、製造上の誤差や含水による比誘電率の変化で反射減衰量が低下しにくいウェッジ型電波吸収発熱体43が設計できると考える。
【0075】
<融雪システムの施工方法>
上述した発熱ブロック30を複数個用意し、各戸の敷地に埋め込まれた電波伝送体20の上方に各発熱ブロック30を並べて敷設する施工方法によって融雪システムを完成させてもよいが、電波発信機10、電波伝送体20、及び発熱部材40を具備した融雪システムを次に説明する施工方法によって完成させることができる。なお、ここでは300mm幅の融雪システムを直線状に施工する場合について説明する。
【0076】
先ず、
図13に示すように、融雪システムを施工する各戸の敷地に電波伝送体20と発熱部材40とを埋め込むことができる溝100を直線状に形成する。この溝100は、第1溝部101と、第1溝部101の底面の中央に延びる第2溝部102によって形成されている。第1溝部101は、幅が300mmであり、発熱部材40の上側に形成される保護材60の上面が露出するように形成されている。第2溝部102は、電波伝送体20の長辺の外寸(100mm)と同じ幅であり、電波伝送体20の短辺の外寸(50.0mm)と同じ深さで形成されている。第1溝部101及び第2溝部102はコンクリートで固めて形成する。
【0077】
次に、
図13に示すように、第2溝部102に電波伝送体20の複数のスロット21が形成された面が上を向くように第2溝部102に電波伝送体20を埋設する。なお、電波伝送体20は一端が電波発信機10に接続されている。
【0078】
次に、
図14に示すように、平面視において、一辺が300mmの正方向である発泡スチロール製の複数の基材41を各凹部41Aが上方を向いて開口するように第1溝部101の全体に整列させて配置する。この際、電波伝送体20の複数のスロット21が延びている方向と平行な方向(電波伝送体20が延びている方向に直交する方向)に各凹部41Aが延びた状態になるように基材41を配置する(第1工程)。
【0079】
なお、基材は、平面視において、一辺が300mmであり、この辺に直交する他辺が300mmよりも長くてもよい。この場合、基材の長辺を第1溝部101が延びている方向に平行にして配置することによって、第1溝部101の全体に整列させる基材の個数を減らすことができる。
【0080】
次に、
図15に示すように、硬化前の流動性を有するスラグモルタル43Cを基材41の各凹部41Aに流し込む(第2工程)。この際、基材41の凹部41Aの上端よりも僅かに高い位置までスラグモルタル43Cを流し込む。流し込まれたスラグモルタル43Cが硬化することによってウェッジ型電波吸収発熱体43が形成される。
【0081】
次に、
図16に示すように、スラグモルタル43C上に電波反射材50である欠損金網を配置する。この際、電波伝送体20の複数のスロット21が延びている方向と平行な方向(電波伝送体20が延びている方向に直交する方向)に欠損金網の欠損部51が延びるように電波反射材50を配置する。
【0082】
次に、
図17に示すように、保護材60となる流動性を有する砂モルタル60Aを電波反射材50の上から流し込む。
【0083】
その後、電波吸収発熱体43であるスラグモルタル43C及び保護材60である砂モルタル60Aが硬化するまで放置し、融雪システムの施工が完了する。
【0084】
以上説明したように、実施例1のウェッジ型電波吸収発熱体43は、比誘電率及び比透磁率を均一にしたスラグモルタル43Cによって形成されている。また、このウェッジ型電波吸収発熱体43は吸水性を有している。このウェッジ型電波吸収発熱体43は、水平方向(電波照射方向に直交する方向)に拡がる断面積が下方から上方(電波を照射される側から遠ざかる方向)に向けて増加するように、下端部(電波を照射される側の端部)が水平方向(電波照射方向に直交する方向)に直線状に延びており、この下端部の両側から斜め上方(電波を照射される側から遠ざかる方向)に延びる側面の間隔が下方から上方(電波を照射される側から遠ざかる方向)に向けて大きくなっている。詳しくは、このウェッジ型電波吸収発熱体43は、下端の頂部43Bが水平方向に直線上に延び、この頂部43Bに直交する断面形状が逆二等辺三角形状である。さらに、このウェッジ型電波吸収発熱体43は、施工状態において、下面が電波伝送体20の上面に当接した基材41に支持されている。
【0085】
このように形成されたウェッジ型電波吸収発熱体43は、等価比誘電率及び等価比透磁率が下方から上方に向けて増加している。また、ウェッジ型電波吸収発熱体43の水平方向に直線状に延びている下端の頂部43Bを下方から照射する周波数2.45GHzの電波の電界Eの方向に交差するようにウェッジ型電波吸収発熱体43を配置しているため、電波を良好に吸収し発熱することができる。また、このウェッジ型電波吸収発熱体43は上下方向(電波照射方向)のどこかで周波数2.45GHzの電波を吸収し発熱することができる。つまり、このウェッジ型電波吸収発熱体43は、施工位置が上下方向にずれたり、被水して含水したりしても、周波数2.45GHzの電波をウェッジ型電波吸収発熱体43の上下方向(電波照射方向)のどこかで吸収し発熱することができる。このため、このウェッジ型電波吸収発熱体43は製造精度や施工精度を厳しく管理しなくても良好に発熱することができる。
【0086】
したがって、実施例1のウェッジ型電波吸収発熱体43は、被水しても良好に発熱することができるとともに、製造及び施工における手間やコストの低減を図ることができる。
【0087】
また、このウェッジ型電波吸収発熱体43は、基材41によって最適な位置に支持されているため、電波伝送体20から漏えいする電波を上端部近傍で吸収して発熱し、上面が温度上昇する。このため、このウェッジ型電波吸収発熱体43を備えた発熱部材40を具備した融雪システムは良好に雪を溶かすことができる。
【0088】
また、実施例1の基材41は、発泡スチロール製であり、比誘電率が1.0489である。また、この基材41は、施工状態において、ウェッジ型電波吸収発熱体43の下面(電波が照射される側の裏面)に当接して下方に配置され、ウェッジ型電波吸収発熱体43を支持する。
【0089】
このように、この基材41は、ウェッジ型電波吸収発熱体43を適切な高さに容易に施工することができる。また、この基材41は、発泡スチロール製であるため含水し難い。このため、この基材41は被水した際に比誘電率又は比透磁率の変化を抑えることができるため、ウェッジ型電波吸収発熱体43と基材41を一体として周波数2.45GHzの電波を吸収するように設計した場合、ウェッジ型電波吸収発熱体43が周波数2.45GHzの電波を確実に吸収し発熱することができる。また、この基材41は発泡スチロール製であるため比誘電率が低い。このため、この基材41はウェッジ型電波吸収発熱体43の電波吸収量への影響を砂モルタルと比べて小さくすることができるため、ウェッジ型電波吸収発熱体43が周波数2.45GHzの電波を効率的に吸収し発熱することができる。また、この基材41は、電波伝送体20の電波漏えい量への影響が小さくなるため、電波伝送体20の設計が容易になる。また、この基材41は、発泡スチロール製であるため、断熱性が高く、下方に逃げる熱を抑制することができる。
【0090】
また、実施例1の発熱部材40の製造方法は、電波伝送体20の複数のスロット21が延びている方向と平行な方向(電波伝送体20が延びている方向に直交する方向)に発泡スチロール製の基材41に形成された各凹部41Aが延びるように、かつ各凹部41Aが上方を向いて開口するように基材41を配置する第1工程と、第1工程後に基材41の各凹部41Aに硬化前の流動性を有するスラグモルタル43Cを流し込む第2工程とを備えている。この発熱部材40の製造方法は、周波数2.45GHzの電波を効率的に吸収して発熱する発熱部材40を施工現場で容易に製造することができる。
【0091】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、ウェッジ型電波吸収発熱体43であったが、
図18に示すように、吸水性を有した複数の層を積層して平板状の電波吸収発熱体143を形成してもよい。この、電波吸収発熱体143は、各層におけるスラグ、セメント及び水の混合比率を変更して、下層から上層(電波を照射される側から遠ざかる方向)に向けて比誘電率又は比透磁率を増加している。この場合も、施工位置が上下方向にずれたり、被水して含水したりしても、所定の周波数の電波を電波吸収発熱体143の厚さ方向のどこかで吸収し発熱することができる。このため、この電波吸収発熱体143は、製造精度や施工精度を厳しく管理しなくても良好に発熱することができる。
図18において、実施例1と同一の構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0092】
(2)実施例1では、ウェッジ型電波吸収発熱体43であったが、
図19に示すように、施工状態において、下方に向けて突出した各凸部243Aを複数の四角錘形状で形成してもよい。つまり、頂点が電波を照射される側に位置する四角錘形状で各凸部243Aを形成している。この電波吸収発熱体243は、下方から照射する所定の周波数の電波の電界Eの方向に関わらず、電波吸収発熱体243が電波を良好に吸収し発熱することができる。このため、電波の電界Eの方向を考慮せずに電波吸収発熱体243を配置することができる。
図19において、実施例1と同一の構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0093】
(3)実施例1では、電波伝送体20が延びている方向に直交する方向に電波伝送体20の複数のスロット21が延びていたが、
図20に示すように、電波伝送体120の延びている方向に平行な方向に電波伝送体120の複数のスロット121が延びるようにしてもよい。より詳しくは、電波伝送体120の延びている方向に直交する断面形状における長辺の中央部よりも両端側にずれた位置の両側に交互に形成してもよい。この電波伝送体120から漏えいした電波の電界Eの方向は電波伝送体120が延びている方向に直交する方向になる。このため、ウェッジ型電波吸収発熱体43を電波伝送体120が延びている方向に平行に頂部43Bが延びるように電波伝送体120の上に配置することによって、ウェッジ型電波吸収発熱体43の発熱範囲を電波伝送体120が延びている方向に直交する方向に広くすることができる。
【0094】
(4)実施例1では、平面視において、一辺が300mmの正方向のウェッジ型電波吸収発熱体43において、9個の凸部43Aが形成されていたが、9個に限らず、2個以上の凸部を形成してもよい。
(5)実施例1では、ウェッジ型電波吸収発熱体43の凸部43Aの断面形状が逆二等辺三角形状であったが、電波吸収発熱体下端部が尖っていなくてもよい。また、側面が平面状であったが、内側に凹んだ湾曲面で形成されていてもよい。
(6)電波吸収発熱体の各凸部を四角錘の頂部を切断して先端部を平坦にした形状にしてもよい。例えば、四角錘の頂部を切断した先端部を電波照射方向に直交する面に沿って平坦にしてもよい。
(7)実施例1では、発泡スチロール製の基材41を備えていたが、比誘電率が1~1.5の素材であれば他の素材で基材を形成してもよい。例えば、基材を発泡ポリプロピレン、発泡ウレタンなどの発泡樹脂で形成してもよい。
(8)実施例1では、基材41はウェッジ型電波吸収発熱体43の電波が照射される側の裏面に当接して配置され、ウェッジ型電波吸収発熱体43を支持していたが、ウェッジ型電波吸収発熱体43のように、比誘電率、比透磁率、等価比誘電率、等価比透磁率が変化する電波吸収発熱体に限らず、これらが一定の電波吸収発熱体や形態が異なる電波吸収発熱体を基材が支持するようにしてもよい。
(9)実施例1では基材41を備えていたが、基材41を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…電波発信機
20,120…電波伝送体
21,121…スロット
30…発熱ブロック
40…発熱部材
41…基材
43,143,243…電波吸収発熱体