(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/62 20060101AFI20221117BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20221117BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221117BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20221117BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C11D1/62
A01N33/12 101
A01P3/00
C11D1/722
C11D3/50
(21)【出願番号】P 2018167363
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】窪田 優香
(72)【発明者】
【氏名】五味 満裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧
(72)【発明者】
【氏名】山岡 あずさ
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-316491(JP,A)
【文献】特開2017-008137(JP,A)
【文献】特開2017-114967(JP,A)
【文献】特開2017-095610(JP,A)
【文献】特開2017-095607(JP,A)
【文献】特開2008-303318(JP,A)
【文献】特開2005-097511(JP,A)
【文献】特開2019-182936(JP,A)
【文献】特開2018-203998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
A01P 3/00
A01N 33/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に示す化合物
【化1】
[一般式(1)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R
3及びR
4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R
5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]及び
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
を含む洗浄剤組成物
(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。
【請求項2】
前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
更にl-カルボンを含む、請求項1
又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
水洗トイレの便器の洗浄に使用される、請求項1~
3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
下記一般式(1)に示す化合物
【化2】
[一般式(1)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R
3及びR
4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R
5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]を含む洗浄剤組成物
(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)の安全性を向上させる方法であって、
洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物と
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる、安全性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌剤を含みながらも、経口毒性や皮膚刺激性が低く、高い安全性を有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレの便器等の硬質表面に付着する汚れを除去し、衛生的な環境を作り出すために、様々な洗浄剤組成物が使用されている。例えば、水洗トイレ用の洗浄剤組成物としては、水洗トイレの手洗い部、便器表面、貯水タンク内等に設置することにより、フラッシュ水に洗浄剤を溶出できるように設計された洗浄剤組成物が使用されている。
【0003】
従来の洗浄剤組成物では、黒ずみ等の微生物由来の汚れを防ぐ目的で、除菌剤としてジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムクロライドが広く使用されている。従来、テトラアルキルアンモニウムクロライドを含む洗浄剤組成物の性能向上を試みて、様々な組成検討がなされている。例えば、特許文献1には、硬質表面用洗浄組成物において、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドと特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルを併用することにより、洗浄力を向上できることが開示されている。
【0004】
一方、テトラアルキルアンモニウムクロライド等の除菌剤は、低濃度では安全性が高いが、高濃度になると、皮膚刺激等を生じさせることがある。通常、除菌剤を含む洗浄剤組成物は、使用時には除菌剤は低濃度であるため、使用時の安全性は確保できている。但し、通常、洗浄剤組成物は配合成分が濃縮された状態で提供されるため、除菌剤を含む洗浄剤組成物では、安全性に配慮した組成設計が必要になる。しかしながら、除菌剤を含む洗浄剤組成物において、安全性を高めた組成設計については未だ検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、除菌剤を含みながらも、経口毒性や皮膚刺激性が低く、高い安全性を有する洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、洗浄剤組成物において、一般式(1)に示す化合物とポリオキシアルキレンアルキルエーテルを組み合わせて配合することによって、経口毒性や皮膚刺激性が低く、高い安全性を具備できることを見出した。更に、テトラアルキルアンモニウムクロライドとl-カルボンを含む洗浄剤組成物では、経時的に変色(黄変)が生じるが、洗浄剤組成物において、一般式(1)に示す化合物及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルと共にl-カルボンを配合すると、経時的に変色を抑制でき、優れた安定性を備え得ることをも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 下記一般式(1)に示す化合物
【化1】
[一般式(1)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R
3及びR
4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R
5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]及び
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
を含む洗浄剤組成物。
項2. 前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである、項1に記載の洗浄剤組成物。
項3. 前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルである、項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
項4. 更にl-カルボンを含む、項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
項5. 水洗トイレの便器の洗浄に使用される、項1~4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
項6. 下記一般式(1)に示す化合物
【化2】
[一般式(1)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R
3及びR
4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R
5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]を含む洗浄剤組成物の安全性を向上させる方法であって、
洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させる、安全性向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤組成物は、特定の構造の除菌剤(一般式(1)に示す化合物)とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを組み合わせて含むことによって、除菌剤を含んでいながらも、経口毒性や皮膚刺激性が低く、高い安全性を有することが可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】試験例3において、実施例1及び比較例1の洗浄剤組成物を60℃で2週間保存した後に外観を観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.洗浄剤組成物
本発明の洗浄剤組成物は、一般式(1)に示す化合物、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むことを特徴とする。以下、本発明の洗浄剤組成物について詳述する。
【0012】
[一般式(1)に示す化合物]
本発明の洗浄剤組成物は、除菌剤として、下記一般式(1)に示す化合物を含む。下記一般式(1)に示す化合物は、単独では、テトラアルキルアンモニウムクロライドに比べて、経口毒性や皮膚刺激性が高いが、本発明の洗浄剤組成物では、下記一般式(1)に示す化合物と共にポリオキシアルキレンアルキルエーテルを配合することによって、経口毒性や皮膚刺激性が低く、高い安全性を備えさせることが可能になっている。
【0013】
【0014】
一般式(1)において、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示す。R1及びR2を構成するアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。また、R1及びR2を構成するアルキル基の炭素数としては、優れた除菌作用を発揮させつつ、より一層高い安全性を備えさせるという観点から、好ましくは8~16、更に好ましくは8~14、特に好ましくは8~12が挙げられる。
【0015】
一般式(1)において、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示す。R3及びR4を構成するアルキル基の炭素数が3又は4である場合、当該アルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。また、R3及びR4を構成するアルキル基の炭素数としては、優れた除菌作用を発揮させつつ、より一層高い安全性を備えさせるという観点から、好ましくは1~3、更に好ましくは1又は2、特に好ましくは1が挙げられる。
【0016】
一般式(1)において、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。R5を構成するアルキル基の炭素数が3又は4である場合、当該アルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。また、R5としては、優れた除菌作用を発揮させつつ、より一層高い安全性を備えさせるという観点から、好ましくは炭素数1~4のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基、特に好ましくはメチル基が挙げられる。
【0017】
一般式(1)に示す化合物として、具体的には、ジヘキシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジドデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジテトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジオクタデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。これらの中でも、優れた除菌作用を発揮させつつ、より一層高い安全性を備えさせるという観点から、好ましくはジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート(一般式(1)において、R1及びR2がデシル基、R3及びR4がメチル基、R5がメチル基である化合物)が挙げられる。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物において、一般式(1)に示す化合物は、1種の構造のものを単独で使用してもよく、2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物における一般式(1)に示す化合物の含有量については、付与すべき除菌作用、使用時の希釈倍率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、5~10重量%、好ましくは10~40重量%、更に好ましくは15~30重量%が挙げられる。
【0020】
[ポリオキシアルキレンアルキルエーテル]
本発明の洗浄剤組成物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む。本発明の洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、前記一般式(1)に示す化合物の経口毒性や皮膚刺激性を低下させ、高い安全性を備えさせる役割を果たす。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ノニオン性界面活性剤であるので、洗浄作用を付与する役割も果たす。
【0021】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとは、ポリオキシアルキレン鎖とアルキル基がエーテル結合している化合物である。
【0022】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖のいずれであってもよい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドがランダム付加されてものであってもよく、これらがブロック付加されたものであってもよい。
【0023】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるポリオキシアルキレン鎖として、より一層高い安全性を備えさせるという観点から、好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖が挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖におけるポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとの付加モル数の比率については、特に制限されないが、例えば、ポリプロピレンオキサイドの付加モル数:ポリエチレンオキサイドの付加モル数として、1:0.3~15、好ましくは1:0.5~8、更に好ましくは1:1~5が挙げられる。
【0024】
ポリオキシアルキレン鎖のアルキレンキサイドの付加モル数としては、例えば、3~50、好ましくは8~40、更に好ましくは10~30、特に好ましくは15~25が挙げられる。
【0025】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、当該アルキル基の炭素数としては、例えば、6~24、好ましくは8~18、更に好ましくは8~16が挙げられる。
【0026】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、具体的には、POEアルキル(C6)エーテル、POEアルキル(C10)エーテル、POEアルキル(C12)エーテル、POEアルキル(C14)エーテル、POEアルキル(C16)エーテル、POEアルキル(C20)エーテル、POEアルキル(C22)エーテル、POEアルキル(C24)エーテル、POPアルキル(C6)エーテル、POPアルキル(C10)エーテル、POPアルキル(C12)エーテル、POPアルキル(C14)エーテル、POPアルキル(C16)エーテル、POPアルキル(C20)エーテル、POPアルキル(C22)エーテル、POPアルキル(C24)エーテル、POE・POPアルキル(C6)エーテル、POE・POPアルキル(C10)エーテル、POE・POPアルキル(C12)エーテル、POE・POPアルキル(C14)エーテル、POE・POPアルキル(C16)エーテル、POE・POPアルキル(C20)エーテル、POE・POPアルキル(C22)エーテル、POE・POPアルキル(C24)エーテル等が挙げられる。ここで、「POE」はポリオキシエチレン、「POP」はポリオキシプロピレンを示し、括弧書きで記しているCの後ろの数値はアルキル基の炭素数を示す。
【0027】
本発明で使用されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの好適な例として、下記一般式(2)に示す化合物が挙げられる。
【0028】
【0029】
一般式(2)において、R7は、炭素数6~24、好ましくは8~18、更に好ましくは8~16の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。
【0030】
一般式(2)において、nは0~50、好ましくは0~40、より好ましくは0~30、更に好ましくは0~25の整数;mは0~50、好ましくは0~40、より好ましくは0~30、更に好ましくは0~25の整数;且つn+mは3~50、好ましくは8~40、より好ましくは10~30、更に好ましくは15~25を示す。一般式(2)におけるn及びmとして、より一層高い安全性を備えさせるという観点から、特に好ましくは、nが8~20、mが1~8、且つn+mが12~24、最も好ましくはnが13~19、mが2~7、且つn+mが18~22が挙げられる。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、1種の構造のものを単独で使用してもよく、2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量については、一般式(1)に示す化合物の含有量、使用時の希釈倍率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~60重量%、好ましくは20~55重量%、更に好ましくは30~50重量%が挙げられる。
【0033】
また、本発明の洗浄剤組成物において、一般式(1)に示す化合物に対するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの比率は、前述する各成分の含有量に応じて定まるが、より一層高い安全性を備えさせるという観点から、例えば、一般式(1)に示す化合物100重量部当たり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが50~400重量部、好ましくは100~300重量部、更に好ましくは150~250重量部が挙げられる。
【0034】
[香料]
本発明の洗浄剤組成物には、必要に応じて、香料が含まれていてもよい。本発明の洗浄剤組成物に香料が含まれる場合には、使用する空間に芳香を付与することが可能になる。
本発明で使用される香料は、洗浄剤組成物の用途に応じて、所望の芳香を呈する香料成分を適宜選択すればよい。香料としては、例えば、天然香料の他、炭化水素系香料、エーテル系香料、エステル系香料、アルコール系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料等の合成香料が挙げられる。
【0035】
天然香料としては、例えば、ミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、イランイラン油、パチュリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ボアドローズ油、チョウジ油、ユーカリ油、セダー油、ラベンダー油、ビャクダン油、ベチバー油、ゼラニウム油、ラブダナム油、ローズ油、ジャスミン油、リッツアキュベバ油等が挙げられる。また、ケトン系香料としては、例えば、l-カルボン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、アセトイン、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メチルヘプテノン、コアボン、カンファー、メントン、d-プレゴン、ピペリトン、フェンチョン、ゲラニルアセトン、マルトール、エチルマルトール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフラノン、プリカトン、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、ベンジルケトン等が挙げられる。また、炭化水素系香料としては、例えば、リモネン、α-ピネン、カンフェン、p-サイメン、フェンチェン等が挙げられる。また、エーテル系香料としては、例えば、テトラヒドロ-2,4-ジメチル-4-フェニルフラン、1,8-シネオール、ローズオキサイド、セドロールメチルエーテル(セドランバー)、p-クレジルメチルエーテル、イソアミルフエェニルエチルエーテル、4-フェニル-2,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン、アネトール等が挙げられる。また、エステル系香料としては、例えば、ゲラニルアセテート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、ブチルアセテート、エチル2-メチルブチレート、イソアミルアセテート、エチル2-メチルペンタノエート(マンザネート)、ヘキシルアセテート、アリルヘキサノエート、トリシクロデセニルプロピオネート(VERTOPRO;フロロシクレン)、アリルヘプタノエート、イソボルニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、2-ter-ブチルシクロヘキシルアセテート(ナルシドール)等が挙げられる。また、アルコール系香料としては、例えば、リナノール、3-オクタノール、2,6-ジメチル-ヘプタノール、10-ウンデセノール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、セドロール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキサン-1-メタノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、ネロリドール、9-デセノール、シス-3-ヘキセノール、トランス-2-ヘキセノール、オイゲノール等が挙げられる。また、アルデヒド系香料としては、例えば、シトロネラール、オクタナール、パラアルデハイド、ベンズアルデヒド、アルデヒドC-6、アルデヒドC-7、アルデヒドC-8、アルデヒドC-9、アルデヒドC-10、トリプラール、p-エチルジメチルヒドロシンナミックアルデヒド(フローラゾン)、2-トリデセナール、アルデヒドC11等が挙げられる。
【0036】
これらの香料は、単品香料として1種単独で使用してもよく、また調合香料として2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
これらの香料の内、l-カルボンは、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムクロライドを含む洗浄剤組成物に配合すると、経時的な変色(黄変)が生じることが、本発明者によって確認されている。これに対して、本発明の洗浄剤組成物にl-カルボンを配合しても、経時的な変色を抑制して、外観を安定に維持することができる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の洗浄剤組成物に配合する香料の好適な例として、l-カルボンが挙げられる。l-カルボンは、精製されたものであってもよいが、l-カルボンを含む精油の状態で使用してもよい。l-カルボンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、スペアミント油等が挙げられる。なお、本明細書におけるl-カルボンを含む精油の含有量や比率に関する記載は、l-カルボンを含む精油を使用する場合は、当該精油に含まれるl-カルボン量に換算した値である。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物にl-カルボンを配合する場合、l-カルボンと他の香料を組み合わせて配合してもよい。l-カルボンはミント系香料の構成原料として適しているので、本発明の洗浄剤組成物で使用される香料の好適な例として、l-カルボンと他の香料を組み合わせて調香されたミント系香料が挙げられる。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物において、l-カルボンと他の香料を組み合わせて使用する場合、それらの比率については特に制限されないが、例えば、香料の総量(l-カルボンと他の香料の合計量)100重量部当たり、l-カルボンが5重量部以上、好ましくは10~60重量部、更に好ましくは15~40重量部が挙げられる。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物において、香料を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0超~30重量%、好ましくは2~20重量%、更に好ましくは5~15重量%が挙げられる。
【0041】
また、本発明の洗浄剤組成物において、香料として少なくともl-カルボンを含有させる場合、l-カルボンの含有量については、特に制限されないが、例えば、0超~5重量%、好ましくは0.2~3重量%、更に好ましくは0.5~2重量%が挙げられる。
【0042】
また、本発明の洗浄剤組成物において、香料として少なくともl-カルボンを含有させる場合、一般式(1)に示す化合物に対するl-カルボンの比率は、前述する各成分の含有量に応じて定まるが、経時的に生じる変色をより一層効果的に抑制させるという観点から、例えば、一般式(1)に示す化合物100重量部当たり、l-カルボンが0.1~20重量部、好ましくは0.5~15重量部、更に好ましくは1~10重量部が挙げられる。
【0043】
[有機溶剤]
本発明の洗浄剤組成物には、必要に応じて、有機溶剤が含まれていてもよい。本発明の洗浄剤組成物に有機溶剤が含まれる場合には、香料等の他の添加剤に対して分散性や溶解性を付与することが可能になる。
【0044】
有機溶剤の種類については、特に制限されないが、例えば、グリセリンポリオキシエチレン付加物(例えば、付加モル数が5~80、好ましくは10~40、更に好ましくは15~30のエチレンオキサイド3つが、グリセリンにエステル結合しているグリセリンポリオキシエチレン付加物);エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。
【0045】
これらの有機溶剤は、1種単独で使用していてもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
これらの有機溶剤の中でも、好ましくは多価アルコール、更に好ましくはグリセリンが挙げられる。
【0047】
本発明の洗浄剤組成物に有機溶剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、5~60重量%、好ましくは10~50重量%、更に好ましくは20~40重量%が挙げられる。
【0048】
[水]
本発明の洗浄剤組成物は、液状又はゲル状の場合であれば、水を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の洗浄剤組成物に水を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、1~40重量%、好ましくは3~30重量%、更に好ましくは5~20重量%が挙げられる。
【0050】
[界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外)]
本発明の洗浄剤組成物は、必要に応じて、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外の界面活性剤が含まれていてもよい。本発明の洗浄剤組成物にポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外の界面活性剤が含まれる場合には、界面活性作用による洗浄力を更に高めることが可能になる。
【0051】
界面活性剤の種類については、洗浄剤の成分として使用可能なものであることを限度として特に制限されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外)、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれを使用してもよい。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、炭素数10~20アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数10~20のアルケニルスルホン酸塩(αオレフィンスルホン酸)、炭素数10~20のアルキル基を有するアルキルスルホ酢酸塩、炭素数10~20のアルキル硫酸塩、炭素原子数10~20のアルカンスルホン酸塩等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外)としては、具体的には、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型界面活性剤、並びにグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル及びアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型界面活性剤等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキル(C6~C20)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C6~C20)ジメチルアンモニウム塩、及びアルキル(C6~C20)ジメチルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、アルキル(C6~C20)アミン塩、アルキル(C6~C20)アミンエチレンオキサイド付加物、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
両性界面活性剤としては、具体的には、炭素数10~16のアルキル基を有するアルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型界面活性剤、炭素数10~16のアルキル基を有するアルキルジメチルベタイン、ラウリルヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
前記各種の界面活性剤において、塩の形態としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、及び塩酸塩等の酸付加塩等が挙げられる。
【0057】
これらの界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本発明の洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと他の界面活性剤を組み合わせて使用する場合、それらの比率については特に制限されないが、例えば、界面活性剤の総量(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと他の界面活性剤の合計量)100重量部当たり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが50重量部以上、好ましくは70~200重量部、更に好ましくは80~100重量部が挙げられる。
【0059】
本発明の洗浄剤組成物に界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外)を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0超~30重量%、好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%が挙げられる。
【0060】
[その他の成分]
本発明の洗浄剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、更に必要に応じて、着色料(有色顔料、染料)、酵素、殺菌剤、キレート剤、消臭剤、油性成分の乳化可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、ゲル化剤、成形性向上剤、緩衝剤、白濁化剤、消泡剤、滑沢剤、コーティング剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
[形態]
本発明の洗浄剤組成物の形態については、特に制限されず、その用途に応じて適性設定すればよいが、例えば、液体状、固体状(粉末状、錠剤状等)、半固形状(ペースト状、ゲル状等)、エアゾール状等が挙げられる。これらの形態の中でも、好ましくは液体状、半固体状、更に好ましくは液体状が挙げられる。
【0062】
[被洗浄物]
本発明の洗浄剤組成物の洗浄対象については、除菌や汚れ除去が求められるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、トイレ(便器、トイレの床)、浴室、台所、厨房、排水管、貯水設備(プール、人工池等)等の、水との接触が可能な硬質表面が挙げられる。これらの中でも、水洗トイレの便器は、黒ずみ等の微生物由来の汚れが付き易く、除菌が求められている洗浄対象であるため、本発明の洗浄剤組成物は、水洗トイレの便器用の洗浄剤として好適である。
【0063】
本発明の洗浄剤組成物を水洗トイレの便器の洗浄に使用する場合、本発明の洗浄剤組成物を便器にそのまま塗布して洗浄に使用してもよいが、フラッシュ水で希釈して、水洗トイレのフラッシュ時にフラッシュ水を用いた便器の洗浄に使用することが好ましい。本発明の洗浄剤組成物を水洗トイレの便器の洗浄用として、フラッシュ水に希釈して使用する場合、その希釈倍率については、特に制限されないが、例えば1万~100万倍程度、好ましくは2万~50万倍程度が挙げられる。
【0064】
本発明の洗浄剤組成物を水洗トイレの便器の洗浄用としてフラッシュ水に希釈して使用する場合、本発明の洗浄剤組成物は、水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤、水洗トイレのインタンク用の洗浄剤、水洗トイレのリム部用の洗浄剤、便器表面に付着させて使用される洗浄剤等のいずれであってもよい。
【0065】
水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤とは、水洗トイレの手洗い部の上に設置して使用されるものであって、洗浄剤組成物が収容された容器に、手洗い部に供給された洗浄用のフラッシュ水と接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって便器を洗浄する洗浄剤である。本発明の洗浄剤組成物を水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤として使用する場合、本発明の洗浄剤組成物は液体状又は固体状であることが好ましい。
【0066】
水洗トイレのインタンク用の洗浄剤とは、水洗トイレの貯水タンク内に投入して使用されるものであって、貯水タンク内で洗浄用のフラッシュ水と接触することにより、当該洗浄剤組成物が溶出し、フラッシュ時に洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって便器を洗浄する洗浄剤である。本発明の洗浄剤組成物を水洗トイレのインタンク用の洗浄剤として使用する場合、本発明の洗浄剤組成物は固体状であることが好ましい。
【0067】
水洗トイレのリム部用の洗浄剤とは、水洗トイレのリム部に取り付けて使用されるものであって、洗浄剤組成物が収容された容器に、便器に放出されるフラッシュ水が接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって便器を洗浄する洗浄剤である。本発明の洗浄剤組成物を水洗トイレのリム部用の洗浄剤として使用する場合、本発明の洗浄剤組成物は液体状又は固体状であることが好ましい。
【0068】
便器表面に付着させて使用される洗浄剤とは、便器表面に付着させた状態で設置し、フラッシュ時に便器に放出されたフラッシュ水が接触し、洗浄剤組成物がフラッシュ水に溶出することにより便器を洗浄する洗浄剤である。本発明の洗浄剤組成物を、便器表面に付着させて使用される洗浄剤として使用する場合、便器表面への付着性を具備させるために、本発明の洗浄剤組成物はゲル状であることが好ましい。
【0069】
また、本発明の洗浄剤組成物を水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤又はリム部用の洗浄剤として使用する場合、当該洗浄剤組成物を収容する容器については、当該洗浄剤組成物を収容する収容部と、当該洗浄剤組成物を容器外に排出するための排出孔を備え、当該容器が水と接触すると、収容部内の当該洗浄剤組成物が当該排出孔を介して容器外に排出可能であることを限度として、その構造については、特に制限されず、水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤用の容器又はリム部用の洗浄剤用の容器として、従来使用されているものを用いることができる。例えば、オンタンク用の洗浄剤用の容器の構造については、特開2004-300861号、特開2006-283539号公報、特開2006-283540号公報等に開示されている。また、リム部用の洗浄剤用の容器の構造については、特表2003-517124号、特開2009-57769号、特開2010-242480号公報等に開示されている。但し、本発明の洗浄剤組成物を収容する容器の構造については、オンタンク用又はリム部用として使用し得る限り、これらの容器に限定されるものではない。
【0070】
また、前述の通り、本発明の洗浄剤組成がl-カルボンを含んでいても経時的な変色(黄変)を抑制できる。そのため、本発明の洗浄剤組成がl-カルボンを含んでいる場合に、内部を視認可能な透明な収容部(洗浄剤組成物を収容する収容部)を有する容器に収容しても、外観を損なうことなく安定に維持できるという利点がある。従って、本発明の洗浄剤組成物がl-カルボンを含む場合に、当該洗浄剤組成物を収容する容器の好適な例として、透明な収容部を有する容器が挙げられる。ここで、透明とは、無色透明と有色透明の双方が含まれる。
【0071】
また、青色透明の収容部を有する容器は、収容部に収容されている洗浄剤組成物が黄変すると、色調変化を見分け易く、経時的に黄変が生じ易い洗浄剤組成物を収容するには不向きな容器と考えられているが、本発明の洗浄剤組成物では、l-カルボンを含んでいても経時的な変色(黄変)を抑制できるので、青色透明の収容部を有する容器に収容しても、外観を安定に維持できる。従って、本発明の洗浄剤組成物がl-カルボンを含む場合に、当該洗浄剤組成物を収容する容器の好適な例として、青色透明な収容部を有する容器が挙げられる。
【0072】
2.洗浄剤組成物の安全性向上方法
本発明は、更に、前記一般式(1)に示す化合物を含む洗浄剤組成物の安全性を向上させる方法を提供する。当該方法は、具体的には、洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させることによって行われる。
【0073】
当該方法において「洗浄剤組成物の安全性」とは、経口毒性や皮膚刺激性が低い状態であることを指す。また、当該方法において使用される一般式(1)に示す化合物及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの種類や含有量、洗浄剤組成物に配合可能な他の成分の種類や含有量、洗浄剤組成物の形態の洗浄対象等については、前記「1.洗浄剤組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
なお、以下の参考試験例、試験例、及び製造例で使用した各成分の原料製品の情報等は、以下の通りである。
・ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート:商品名「リポカード210-80MSPG」(ライオン・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を使用した。後掲する表に示すジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートの濃度は、使用した原料製品(リポカード210-80MSPG)に含まれる溶媒を除いたジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート自体の濃度である。
・ジデシルジメチルアンモニウムクロライド:商品名「カチオンDDC-70PG」(三洋化成工業株式会社製)を使用した。後掲する表に示すジデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度は、使用した原料製品(カチオンDDC-70P)に含まれる溶媒を除いたジデシルジメチルアンモニウムクロライド自体の濃度である。
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルA:商品名「サンノニック FN-140」(三洋化成工業株式会社)(一般式(2)において、R7が炭素数10の直鎖状アルキル基、nが17程度、mが3程度である化合物)を使用した。
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルB:ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、一般式(2)において、R7が炭素数10の分岐状アルキル基、nが15、mが5である化合物を使用した。
【0076】
参考試験例1:除菌剤単独での安全性試験
1.経口毒性
8週齢の雌性ラットを用いて経口毒性の評価を行った。具体的には、先ず、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド及びジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートをそれぞれ蒸留水で5重量%となるように希釈したサンプル液を準備した。ラットを16時間絶食させた後に、サンプル液を2ml/100g体重となるように経口投与した。経口投与後に、ラットを通常の飼育環境で14日間飼育した。ラットの飼育期間中は、1日1回、死亡の有無を観察して記録した。各サンプル液につき5匹のラットを使用し、半数致死量(LD50)を算出した。
【0077】
2.皮膚刺激性
体重2~4kgのニュージーランドウサギを用いて皮膚刺激性の以下の方法で評価を行った。先ず、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド及びジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート0.5mlを含浸させたガーゼをそれぞれ準備した。ウサギの背部を剃毛し、前記で準備したガーゼを剃毛した背部に貼り合わせて非刺激性のテープで固定し、この状態で4時間飼育した。その後、ガーゼを取り除き、お湯でウサギの背部を洗浄し、引き続き14日間飼育した。ガーゼを取り除いてから14日間後に背部の紅斑及び浮腫の程度を観察し、以下の判定基準に従って紅斑の程度と浮腫の程度について、それぞれ0~8の範囲でスコア化した。本試験では、3匹のウサギを使用し、1匹のウサギの背部に2カ所の試験部位を設け、一方はジデシルジメチルアンモニウムクロライド、他方はジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートについて試験した(n=3)。
<判定基準>
刺激の強さ スコア
区分4:無し(Non-irritation) 0
区分3:軽度(Gently irritation) 0~<2.0
区分2:中等度(Moderate irritation) 2.0~<5.0
区分1:重度(Severe irritation) 5.0~8.0
【0078】
3.結果
結果を表1に示す。この結果から、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート単独では、経口毒性及び皮膚刺激性があり、特にジデシルジメチルアンモニウムクロライドの単独の場合に比べて、経口毒性が高いことが確認された。
【0079】
【0080】
試験例1:洗浄剤組成物の安全性試験
1.経口毒性
8週齢の雌性ラットを用いて経口毒性の評価を行った。具体的には、先ず、表2に示す洗浄剤組成物を蒸留水で50mg/mlになるように希釈したサンプル液を準備した。ラットを16時間絶食させた後に、サンプル液を2ml/100g体重(洗浄剤組成物1000mg/kg体重)となるように経口投与した。経口投与後に、ラットを通常の飼育環境で14日間飼育した。ラットの飼育期間中は、1日1回、死亡の有無を観察し、経口投与から14日後に死亡したラットの数を求めた。
【0081】
2.皮膚刺激性
表2に示す洗浄剤組成物0.5mlを含浸させたガーゼを使用したこと以外は、前記参考試験例1と同様の方法で、皮膚刺激性を評価した。
【0082】
3.結果
結果を表2に示す。ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートは単独では、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド単独の場合に比べて、経口毒性及び皮膚刺激性が高かったにも拘らず(前記参考試験例1参照)、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートとポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む洗浄剤組成物(実施例1)は、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドとポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む洗浄剤組成物(比較例1)に比べて、経口毒性及び皮膚刺激性が低くなっており、高い安全性を有していた。また、実施例1の洗浄剤組成物の投与量を300mg/kg体重となるように代えて経口毒性の試験を行ったところ、経口投与から14日後には全て(5匹)のラットは生存していた。
【0083】
【0084】
試験例2:洗浄剤組成物の除菌効力試験
被検菌株として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC12732)、及び大腸菌(Eschericha coli、NRBC3972)を用いて、以下の方法で除菌効力試験を行った。
【0085】
前培養した被検菌株をニュートリエントブロス培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)に約10
8cfu/mlとなるように懸濁し、菌液を調製した。50ml容の滅菌遠沈管(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)に、表3に示す各洗浄剤組成物を9.9ml分注した。その後、各遠沈管に菌液0.1mlをそれぞれ接種して10mlとし、25℃で3時間静置培養した。培養後に0.1ml採取し、適宜リン酸緩衝生理食塩水(和光純薬工業株式会社)を用いて希釈系列を調製した後、原液及び各希釈液0.1mlをそれぞれSCDLP寒天培地(Soybean-Casein Digest Agar with Lecithin&Polysorbate 80、日本製薬株式会社)に塗抹し、35℃で18~24時間培養して生菌数をそれぞれ測定した。また、ブランクとして、洗浄剤組成物の代わりに滅菌生理食塩水(大塚製薬株式会社)を使用して、前記と同条件で試験を行った。以下の算出式に従って、抗菌活性値を算出した。
【数1】
【0086】
結果を表3に示す。この結果、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートとポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む洗浄剤組成物(実施例1)は、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドとポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む洗浄剤組成物(比較例1)と同等の除菌効力があり、優れた除菌作用を発揮できることが確認された。
【0087】
【0088】
試験例3:洗浄剤組成物の安定性試験
表4に示す各洗浄剤組成物を調製した。調製直後の洗浄剤組成物は、いずれも無色透明であった。調製直後の各洗浄剤組成物60mlを75ml容のガラス製容器に収容して60℃で遮光条件下で2週間保存した。2週間保存後に洗浄剤組成物の外観を観察し、以下の判定基準に従って変色抑制効果を評価した。
<変色抑制効果の判定基準>
○:殆ど黄変していない。
△:僅かに黄変している。
×:明らかな黄変が認められる。
【0089】
結果を表4に示す。また、60℃で2週間保存した後の洗浄剤組成物(実施例1と比較例1)の外観を観察した写真を
図1に示す。この結果、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルと共に、l-カルボンを含む洗浄剤組成物(比較例1)では、60℃で2週間保存すると、明らかな黄変が認められた。これに対して、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルと共に、l-カルボンを含む洗浄剤組成物(実施例1)では、60℃で2週間保存しても、殆ど黄変しておらず、優れた保存安定性を有していた。なお、l-カルボンの代わりにl-カルボンを含まない調合香料を使用したこと以外は、比較例1と同組成の洗浄剤組成物を調製し、前記と同条件で試験したところ、60℃で2週間保存しても、黄変は認められなかった。
【0090】
【0091】
製造例
表5に示す組成の水洗トイレの便器用の洗浄剤組成物を調製した。得られた水洗トイレの便器用の洗浄剤組成物は、いずれも、経口毒性及び皮膚刺激性が低く、安全性が高かった。また、得られた水洗トイレの便器用の洗浄剤組成物は、いずれも、優れた除菌作用があった。また、製造例1~4及び6~15では、60℃で2週間保存しても黄変を抑制できていた。
【0092】