(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】渦抑制装置を備えたポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20221117BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20221117BHJP
F04D 29/52 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F04D29/66 F
F04D13/00 A
F04D29/52 A
(21)【出願番号】P 2018244780
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018002282
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】内田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】江藤 文宣
(72)【発明者】
【氏名】越智 雅規
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008549(JP,A)
【文献】特開平05-172079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 13/00
F04D 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込水槽内の水を揚水するポンプにおいて、
鉛直方向に延びる主軸と、
前記主軸に固定された羽根車と、
内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングの外側に配置された複数の縦棒および複数の縦リブを備え、
前記複数の縦棒および前記複数の縦リブは、同じ高さに位置し、かつ前記吸込水槽内の水の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、
前記複数の縦棒は、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で配置されており、
前記複数の縦リブは、前記ポンプケーシングの外周面に固定されており、
前記複数の縦棒および前記複数の縦リブは、前記主軸の軸方向から見たときに、ポンプ据付床に形成された開口の内側に位置しており、
前記複数の縦棒は、前記複数の縦リブにそれぞれ隣接して配置されて
おり、
前記縦棒および前記縦リブは、互いに離れており、
前記縦棒は、前記縦リブよりも前記ポンプケーシングの半径方向において外側に配置されていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記複数の縦棒および前記複数の縦リブは、前記主軸の軸心を通る前記水の流れ方向と平行な直線に関して対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記縦棒は、前記主軸の軸心と前記縦リブとを結ぶ線の延長線上、または前記延長線よりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記ポンプケーシングは、下方に開口した吸込口を有する吸込ベルマウスを含み、
前記ポンプケーシングの吐出し側の口径をdとしたとき、前記縦棒の上端は、前記吸込ベルマウスの下端から0.8d以上、かつ運転開始水位以下の範囲内に位置していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記縦棒の下端は、前記羽根車の上端よりも下方に位置していることを特徴とする請求項4に記載のポンプ。
【請求項6】
前記ポンプケーシングの外側に配置された半円筒体をさらに備え、
前記半円筒体は、前記吸込水槽内の水の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、
前記半円筒体は、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定されており、
前記半円筒体は、前記主軸の軸方向から見たときに、ポンプ据付床に形成された開口の内側に位置しており、
前記半円筒体は、前記主軸と平行に延びる内周面を有することを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項7】
前記ポンプケーシングは、下方に開口した吸込口を有する吸込ベルマウスを含み、
前記半円筒体は前記吸込ベルマウスに固定されていることを特徴とする請求項6に記載のポンプ。
【請求項8】
前記主軸の軸心と前記半円筒体の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度は120°~180°であることを特徴とする請求項6または7に記載のポンプ。
【請求項9】
前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で前記ポンプケーシングに固定された円弧部材をさらに備え、
前記円弧部材は、前記ポンプケーシングの外周面の周方向に沿って湾曲しており、
前記円弧部材は、前記半円筒体の上方に配置されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項10】
前記主軸の軸心と前記円弧部材の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度は120°~180°であることを特徴とする請求項9に記載のポンプ。
【請求項11】
前記円弧部材は、互いに離間した第1の円弧部材および第2の円弧部材を備えており、前記第1の円弧部材および前記第2の円弧部材は、前記主軸の軸心を通る前記水の流れ方向と平行な直線に関して対称に配置されていることを特徴とする請求項9に記載のポンプ。
【請求項12】
前記縦棒の全体および前記縦リブの全体は、前記主軸に沿って延びている、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込水槽内の水を揚水する用途に使用されるポンプに関し、特に空気吸込渦の発生を抑制する渦抑制装置を備えたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
河川や下水などを排水するポンプ設備では、上流側の浸水対策対象区域流入水路などの経年的な不等沈下に伴い、ポンプ設備の吸込水槽の低水位化が求められている。また、近年のゲリラ豪雨のような突発的な降雨の対策として、ポンプの揚水能力の向上も求められている。
【0003】
しかしながら、ポンプの吸込口においては、水位の低下(水面が吸込口に近くなる)に伴い、吸込水槽内の水の自由表面に渦が発生することがある。その渦がポンプに引き込まれると、空気吸込渦となり、ポンプ内部に空気が侵入することとなる。特に、水面からポンプの吸込口まで連続的に延びる連続渦は、ポンプの異常振動を引き起こす有害な空気吸込渦である。このような有害な空気吸込渦が発生すると、ポンプが故障するおそれがある。そのため、空気を吸い込まないよう、吸込水槽の底面レベルを低くして、ポンプの吸込口の位置を下げたり、吸水位に制限を設け、その水位以下でのポンプの運転は行わないようにすることが従来から行われている。
【0004】
しかしながら、吸込水槽の底面レベルを低くする方法では、土木工事費および建築費が高価になる。また、既設のポンプ設備を改修する場合は、工事期間が長くなり、ポンプ設備を運用しながらの土木工事を含む改修工事は現実的に不可能であった。さらに、吸込口が吸込水槽の底面に近づくと、吸込水槽の底面や側壁からの水中渦が発生し易くなる。
【0005】
その他の渦防止対策として、水平方向に開口する吸い込み筒をポンプの吸込口に接続する(特許文献1参照)などの種々の試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、吸込口を筒体で覆う構造であるため、ポンプの吸い込み損失が大きくなる。つまり、配管損失または効率低下をもたらし、ポンプの排水性能を低下させるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、ポンプの吸い込み性能を損なうことなく、吸込水槽での有害な空気吸込渦の発生を効果的に防止することができるポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、吸込水槽内の水を揚水するポンプにおいて、鉛直方向に延びる主軸と、前記主軸に固定された羽根車と、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの外側に配置された複数の縦棒および複数の縦リブを備え、前記複数の縦棒および前記複数の縦リブは、同じ高さに位置し、かつ前記吸込水槽内の水の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、前記複数の縦棒は、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で配置されており、前記複数の縦リブは、前記ポンプケーシングの外周面に固定されており、前記複数の縦棒および前記複数の縦リブは、前記主軸の軸方向から見たときに、ポンプ据付床に形成された開口の内側に位置しており、前記複数の縦棒は、前記複数の縦リブにそれぞれ隣接して配置されており、前記縦棒および前記縦リブは、互いに離れており、前記縦棒は、前記縦リブよりも前記ポンプケーシングの半径方向において外側に配置されていることを特徴とするポンプである。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記複数の縦棒および前記複数の縦リブは、前記主軸の軸心を通る前記水の流れ方向と平行な直線に関して対称に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記縦棒は、前記主軸の軸心と前記縦リブとを結ぶ線の延長線上、または前記延長線よりも下流側に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプケーシングは、下方に開口した吸込口を有する吸込ベルマウスを含み、前記ポンプケーシングの吐出し側の口径をdとしたとき、前記縦棒の上端は、前記吸込ベルマウスの下端から0.8d以上、かつ運転開始水位以下の範囲内に位置していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記縦棒の下端は、前記羽根車の上端よりも下方に位置していることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、吸込水槽内の水を揚水するポンプにおいて、鉛直方向に延びる主軸と、前記主軸に固定された羽根車と、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの外側に配置された半円筒体とを備え、前記半円筒体は、前記吸込水槽内の水の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、前記半円筒体は、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定されており、前記半円筒体は、前記主軸の軸方向から見たときに、ポンプ据付床に形成された開口の内側に位置しており、前記半円筒体は、前記主軸と平行に延びる内周面を有することを特徴とするポンプである。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記ポンプケーシングは、下方に開口した吸込口を有する吸込ベルマウスを含み、前記半円筒体は前記吸込ベルマウスに固定されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記主軸の軸心と前記半円筒体の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度は120°~180°であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で前記ポンプケーシングに固定された円弧部材をさらに備え、前記円弧部材は、前記ポンプケーシングの外周面の周方向に沿って湾曲しており、前記円弧部材は、前記半円筒体の上方に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記主軸の軸心と前記円弧部材の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度は120°~180°であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記円弧部材は、互いに離間した第1の円弧部材および第2の円弧部材を備えており、前記第1の円弧部材および前記第2の円弧部材は、前記主軸の軸心を通る前記水の流れ方向と平行な直線に関して対称に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、上記複数の縦棒および複数の縦リブをさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
縦棒および縦リブは、主軸の下流側に設けられ、吸い込み損失をほとんどもたらさないで、ポンプの揚水能力を低下させることなく、空気吸込渦の発生を抑制することができる。また、ポンプ自身が縦棒および縦リブを備えているため、吸込水槽への締結は不要であり、吸込水槽の補強工事は不要である。さらに、縦棒と縦リブを組み合わせることによって、吸込水槽の幅広い水位および幅広い流速において、空気吸込渦の発生を抑制することができる。
【0014】
同様に、半円筒体および円弧部材は、主軸の下流側に設けられ、吸い込み損失をほとんどもたらさないので、ポンプの揚水能力を低下させることなく、空気吸込渦の発生を抑制することができる。また、半円筒体および円弧部材は、ポンプケーシングに設置されるので、吸込水槽への締結は不要であり、吸込水槽の補強工事は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】渦抑制装置を備えたポンプの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】揚水管の下流側に発生するカルマン渦を示す図である。
【
図3】ポンプ口径に関連付けられた各寸法の例を示す図である。
【
図4】
図3に示すポンプと吸込水槽を上から見た図である。
【
図5】第1の空気吸込渦抑制装置としての縦棒および縦リブ、および第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体を示す側面図である。
【
図9】縦棒のさらに他の固定方法を示す模式図である。
【
図11】ポンプケーシングまたは揚水管によって分流された水の流れを示す図である。
【
図12】カルマン渦から吸込口へ向かう流れを示す図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、半円筒体の断面形状の変形例を示す模式図である。
【
図14】ポンプの他の実施形態を示す側面図である。
【
図16】ポンプのさらに他の実施形態を示す上面図である。
【
図17】
図1に示す複数の水中渦抑制板を下から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は立軸ポンプに関するものであるが、本発明はこれらの実施形態に限らず、横軸ポンプにも使用することができる。さらに本発明は、コラムパイプ式の水中ポンプにも使用することができる。
図1は、渦抑制装置を備えたポンプの一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、ポンプ20は、鉛直方向に延びる主軸32と、主軸32に固定された羽根車31と、内部に羽根車31を収容するポンプケーシング27と、ポンプケーシング27の上端に接続された揚水管28と、揚水管28の上端に接続された吐出曲管30とを備えている。ポンプケーシング27は、揚水管28によって吸込水槽1内に吊り下げられている。ポンプケーシング27は、吸込ベルマウス22と、インペラケーシング21と、吐出ボウル24とを備える。吐出ボウル24の上端は、揚水管28の下端に接続されている。吸込ベルマウス22は、下方に開口した吸込口22aを有している。吸込ベルマウス22の上端はインペラケーシング21の下端に接続されている。羽根車31は、インペラケーシング21および吐出ボウル24内に収容されている。
【0017】
揚水管28は、吸込水槽1の上壁を構成するポンプ据付床2に形成された開口5を通して下方に延びている。ポンプ20は、吊り下げ管33をさらに備えており、揚水管28の上端には吊り下げ管33が固定されている。吊り下げ管33は、ポンプ据付床2に設置されたポンプベース35に固定されている。揚水管28は、吊り下げ管33およびポンプベース35を介してポンプ据付床2に固定されている。主軸32は、吐出曲管30、揚水管28、およびポンプケーシング27を通って鉛直方向に延びており、その下端は、ポンプケーシング27内に位置している。
【0018】
主軸32は、外軸受45および水中軸受41によって回転可能に支持されている。外軸受45は、吐出曲管30の上部に固定され、主軸32の上部を支持している。水中軸受41は、吐出ボウル24内に収容され、主軸32の下部を支持している。吐出ボウル24の内部には内側ボウル25が配置されており、内側ボウル25は、複数のガイドベーン37によって吐出ボウル24に連結されている。水中軸受41は、支持部材41aを介して内側ボウル25の内周面に固定されている。
【0019】
主軸32は吐出曲管30から上方に突出して、図示しない原動機(例えばモータ)に連結されている。この原動機により主軸32および羽根車31が回転するように構成されている。複数のガイドベーン37は、羽根車31の上方(吐出側)に配置されている。吐出ボウル24の内周面と内側ボウル25の外周面との間には水の流路が形成されている。羽根車31が回転すると、吸込水槽1内の水が吸込ベルマウス22の吸込口22aから吸い込まれる。水は、羽根車31の回転により、吐出ボウル24、揚水管28、吐出曲管30を通って図示しない吐出配管に移送される。
【0020】
ポンプ20は、空気吸込渦の発生を抑制する第1の空気吸込渦抑制装置としての複数の縦棒61および複数の縦リブ62と、第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71をさらに備えている。
図1では、1つの縦棒61および1つの縦リブ62のみが図示されている。縦棒61、縦リブ62、および半円筒体71は、ポンプケーシング27の外側に配置されている。主軸32の軸方向から見たときに、縦棒61、縦リブ62、および半円筒体71は、開口5の内側に位置している。したがって、ポンプ20のメンテナンスまたは修理を行うときに、ポンプ20の全体を開口5を通じて引き上げることができる。縦棒61、縦リブ62、および半円筒体71は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されている。
【0021】
ポンプ20の揚水能力の向上に伴い、吸込水槽1の水路流速が高くなり、結果として吸込水槽1の底面から水中渦が発生し易くなる。そこで、ポンプ20は、吸込ベルマウス22の下部に、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する水中渦を抑制する水中渦抑制装置としての複数の水中渦抑制板49を備えている。水中渦抑制板49は平板状の部材である。
【0022】
図2に示すように、空気吸込渦は、自由表面を形成する水の流れが揚水管28または吐出ボウル24によって分流されるときに生じるカルマン渦7が発達して生じる。したがって、カルマン渦7は、揚水管28または吐出ボウル24の下流側に発生する。また、カルマン渦7は、水の流れによって下流側に流される。したがって、縦棒61、縦リブ62、および半円筒体71は、主軸32の下流側に配置される。
【0023】
図3は、ポンプ口径に関連付けられた各寸法の例を示す図であり、
図4は、
図3に示すポンプ20と吸込水槽1を上から見た図である。
図3に示すように、ポンプ口径(本実施形態ではポンプケーシング27の吐出し側の口径)をdとすると、吸込ベルマウス22の下端(すなわちポンプケーシング27の下端)から吸込水槽1の底面までの距離は、一般に0.5d以上であり、一例として0.75d~1.0dの範囲内である。ポンプ20の中心(主軸32の軸心O)から吸込水槽1の後壁までの距離は1.5d以下である。開口5の直径は、ポンプ口径dによって概ね決まる値であるが、一実施形態では1.6d~2.1dの範囲内である。
図4に示すように、吸込水槽1の水路幅は3.0d程度である。これらの寸法で設計した場合、ポンプ20が運転可能な吸込水槽1の最低水位LWLは、従来のポンプに比べて、0.5d~0.9d程度低くすることができる。
【0024】
図5は、第1の空気吸込渦抑制装置としての縦棒61および縦リブ62、および第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71を示す側面図であり、
図6は、
図5のA-A線断面図である。
図5では、複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。
図5および
図6に示すように、ポンプ20は、複数の縦棒61と、複数の縦リブ62とを備えている。本実施形態では、2つの縦棒61と、2つの縦リブ62が設けられているが、縦棒61および縦リブ62の数は本実施形態に限定されない。
【0025】
各縦棒61は全体として主軸32に沿って延びている。同様に、各縦リブ62は全体として主軸32に沿って延びている。2つの縦棒61および2つの縦リブ62は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。縦棒61および縦リブ62は、全体として鉛直方向に延びており、それらの一部が湾曲してもよい。本実施形態では、縦棒61の一部はポンプケーシング27の外周面に沿って湾曲しているが、縦棒61の形状はこの実施形態に限定されない。一実施形態では、縦棒61は、主軸32と平行に延びる直線形状を有していてもよい。
【0026】
縦棒61は、一般に円形の断面形状を有し、主軸32の軸方向に延びている。各縦棒61は、ポンプケーシング27の外周面との間に隙間が存在した状態で配置されている。本実施形態では、各縦棒61は、複数のブラケット65によってポンプケーシング27の外周面に連結されている。すなわち、縦棒61とポンプケーシング27の外周面との間に隙間が存在した状態で、各縦棒61はポンプケーシング27に固定されている。
【0027】
一実施形態では、縦棒61は、揚水管28や吊り下げ管33に固定されてもよい。
図7は、縦棒61の他の固定方法を示す模式図であり、
図8は、
図7のB-B線断面図である。
図7および
図8に示すように、本実施形態の複数のブラケット65は、L字型の形状を有している。複数のブラケット65は、吊り下げ管33のフランジ33aおよび揚水管28のフランジ28aに取り付けられている。2つの縦棒61のそれぞれは、複数の固定具67によって、フランジ33aに取り付けられたブラケット65、およびフランジ28aに取り付けられたブラケット65に固定されている。固定具67の例として、UボルトやUバンド等が挙げられる。本実施形態では、4つのブラケット65および4つの固定具67が設けられているが、ブラケット65および固定具67の数は、本実施形態に限定されない。
【0028】
図9は、縦棒61のさらに他の固定方法を示す模式図であり、
図10は、
図9のC-C線断面図である。
図9および
図10に示すように、本実施形態のブラケット65は、平板状の形状を有しており、環状部68と、複数の縦棒保持部69を備えている。複数の縦棒保持部69は、環状部68の外周面に接続されており、環状部68と一体に形成されている。複数の縦棒保持部69のそれぞれは、貫通孔69aを有している。ブラケット65は、吊り下げ管33のフランジ33aと揚水管28のフランジ28bとの間に挟まれて固定されている。各縦棒61は、各貫通孔69aに挿入され、縦棒保持部69に固定される。本実施形態では、ブラケット65は、2つの縦棒保持部69および2つの貫通孔69aを有しているが、縦棒保持部69および貫通孔69aの数は、縦棒61の数に基づいて決定されるため、本実施形態に限定されない。
【0029】
図3に示す各寸法の例に従えば、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端から0.8d~1.75dの範囲内に位置している。縦棒61の下端は、羽根車31(
図1参照)の上端よりも下方に位置している。
【0030】
上述のように、吸込水槽1の水位の低下に伴い、吸込水槽1の自由表面にカルマン渦7(
図2参照)が発生することがある。カルマン渦7の発生を抑制するためには、縦棒61の上端は、カルマン渦7が発生するときの吸込水槽1の水位よりも上に位置する必要がある。吸込水槽1の水路幅が3.0d程度かつポンプ20の中心(主軸32の軸心O)から吸込水槽1の後壁までの距離が1.5d以下の場合等において、従来のポンプの最低水位は、一般に2.5d以上の水位である。この従来のポンプの最低水位より高い水位では、一般にカルマン渦7は発生しないが、吸込水槽1の形状によってはカルマン渦7が発生する可能性がある。
図3に示す各寸法の例に従えば、本実施形態のポンプ20は従来のポンプの最低水位より低い水位でも運転するため、縦棒61の上端は、従来のポンプの最低水位以下の位置となる。これは、ポンプ20の運転開始後に吸込水槽1の水位が低下したときにカルマン渦7の発生を抑制するためである。
図3によれば、吸込ベルマウス22の下端から吸込水槽1の底面までの距離は、0.75d~1.0dの範囲内であるため、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端から0.8d以上、かつ運転開始水位以下の範囲内に位置する。一実施形態では、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端から0.8d~1.75dに位置する。
【0031】
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態では、縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面に沿って湾曲した形状を有し、主軸32の軸方向に延びている。縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面に固定されており、ポンプケーシング27の外周面からポンプケーシング27の径方向外側に突出している。一実施形態では、縦リブ62の上部は、揚水管28の外周面に固定されてもよい。さらに一実施形態では、縦リブ62は、ポンプケーシング27および/または揚水管28と一体に形成されてもよい。
【0032】
2つの縦棒61は、2つの縦リブ62にそれぞれ隣接して配置されている。各縦棒61は、隣接する縦リブ62よりも主軸32の軸心Oから離れた位置にある。すなわち、主軸32の軸心Oと縦棒61との距離は、主軸32の軸心Oと縦リブ62との距離よりも長い。縦棒61と同様に、縦リブ62の上端は、カルマン渦7が発生するときの吸込水槽1の水位よりも上に位置する必要がある。
図5に示す実施形態では、縦リブ62は、縦棒61よりも短いが、一実施形態では、縦リブ62は、縦棒61と同じ長さでもよく、または縦棒61より長くてもよい。
【0033】
図6において、2つの縦棒61は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して主軸32の下流側に位置しており、主軸32の軸心Oを通る水の流れ方向と平行な直線RLに関して対称に配置されている。同様に、2つの縦リブ62は、水の流れ方向に関して主軸32の下流側に位置しており、主軸32の軸心Oを通る水の流れ方向と平行な直線RLに関して対称に配置されている。本実施形態では、2つの縦棒61および2つの縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面上の水の流れの剥離点よりも下流側に配置されている。
【0034】
吸込水槽1の水位が高いときは、吸込水槽1内の水の流速は低く、吸込水槽1の水位が低くなると、吸込水槽1内の水の流速が高くなる。カルマン渦7の発生個所は、吸込水槽1の水位、および揚水時の吸込水槽1内の水の流速によって変化する。カルマン渦7は、吸込水槽1内の水の流速が低いとき、ポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近に発生し易い。
【0035】
図11は、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流された水の流れを示す図である。
図11の矢印に示すように、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流されたポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近の水は、縦リブ62に衝突することによってその流れを乱される。結果として、縦リブ62は、ポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近におけるカルマン渦7の発生を抑制することができる。
【0036】
縦リブ62は、吸込水槽1の水位が高いとき(吸込水槽1内の水の流速が低いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。一例として、縦リブ62は、その高さ(ポンプケーシング27の径方向の長さ)が0.1d程度であり、かつその幅(ポンプケーシング27の周方向の長さ)が0.1d程度であるとき、カルマン渦7の発生を効果的に抑制できる。
【0037】
縦リブ62に衝突してその流れを乱された水は、ポンプケーシング27の外側に流され、ポンプケーシング27から離れた位置にカルマン渦7を発生させることがある。また、吸込水槽1の水位が比較的低いとき(吸込水槽1内の水の流速が高いとき)、ポンプケーシング27から離れた位置にカルマン渦7が発生し易いことが知られている。そこで、このようなカルマン渦7の発生を抑制するために、本実施形態では、縦棒61は、縦リブ62よりも半径方向において外側に配置されている。
図11の矢印に示すように、縦リブ62に衝突してポンプケーシング27の外側に流された水や、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流された水の一部は、縦棒61に衝突し、縦棒61と縦リブ62の間を流れ、あるいは縦棒61の周りを流れるため、その流れが乱される。結果として、縦棒61は、ポンプケーシング27から離れた位置におけるカルマン渦7の発生を抑制することができる。
【0038】
縦棒61は、縦リブ62が空気吸込渦の発生を抑制することができる吸込水槽1の水位範囲から吸込水槽1の水位がさらに低下したとき(すなわち、吸込水槽1内の水の流速が高いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。また、縦リブ62に衝突してポンプケーシング27の外側に流された水によって発生するカルマン渦7は、縦リブ62よりも下流側に発生する。そのため、縦棒61は、主軸32の軸心Oと縦リブ62とを結ぶ線の延長線よりも下流側(
図6参照)に配置されている。一実施形態では、縦棒61は、上記延長線上に配置されてもよい。
【0039】
主軸32の軸心Oと2つの縦リブ62とを結ぶ2つの線がなす角度θ0は、主軸32の軸心Oと2つの縦棒61とを結ぶ2つの線がなす角度θ1よりも大きいか、あるいは等しい(θ0≧θ1)。本実施形態では、
図6に示すように、角度θ0は、角度θ1よりも大きい。θ0およびθ1の値が30°~120°程度のとき、縦リブ62と縦棒61との組み合わせは、カルマン渦7の発生を効果的に抑制できる。
【0040】
一実施形態では、縦棒61の断面形状は、四角形、L字型などの多角形であってもよい。上述した各実施形態の縦リブ62は四角形の断面形状を有しているが、縦リブ62の断面形状はこの形状に限定されない。一実施形態では、縦リブ62の断面形状は三角形または円形であってもよい。
【0041】
上述した各実施形態における第1の空気吸込渦抑制装置を構成する複数の縦棒61と複数の縦リブ62との組み合わせは、吸込水槽1の幅広い水位および幅広い流速において、カルマン渦7の発生を抑制し、空気吸込渦の発生を抑制することができる。
【0042】
図5および
図6に示すように、第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71は、縦棒61と縦リブ62の下方に配置されている。半円筒体71は、ポンプケーシング27の外周面と半円筒体71との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット75によってポンプケーシング27に固定されている。半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。
【0043】
半円筒体71は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されており、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されている。
図6に示すように、主軸32の軸方向から見たときに、半円筒体71の全体は開口5の内側に位置している。
【0044】
本実施形態では、半円筒体71は、複数のブラケット75を介して吸込ベルマウス22に固定されており、吸込ベルマウス22の外周面の一部を囲むように配置されているが、半円筒体71の構成は、この実施形態に限定されない。例えば、半円筒体71は、その下端が吸込ベルマウス22の下端よりも下に位置するように配置されてもよく、その下端が吸込ベルマウス22の下端と同じ高さに位置するように配置されてもよい。さらに一実施形態では、半円筒体71は吐出ボウル24に固定されてもよい。
【0045】
カルマン渦7が発生すると、揚水の際に、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの強い流れが発生し、空気吸込渦に発達する。
図12は、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう流れを示す図である。
図12では、縦棒61、縦リブ62、および複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。
図12に示すように、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの流れF1は、半円筒体71によって内側の流れF2と外側の流れF3に分流される。内側の流れF2は、半円筒体71と吸込ベルマウス22の間に引き込まれる。半円筒体71は、内側の流れF2が外側の流れF3よりも強くなる位置に配置されている。
【0046】
空気吸込渦に発達しうる下向きの強い流れF1は、半円筒体71によって2つの流れF2,F3に分解される。さらに、半円筒体71と吸込ベルマウス22の間に引き込まれた内側の流れF2は、上流側から半円筒体71と吸込ベルマウス22との間の隙間に引き込まれた水の流れF4などによって乱される。このようにして勢いを失った内側の流れF2は、吸込口22aから吸い込まれる際に、吸込ベルマウス22の下端のエッジ部に衝突し、さらに乱される。
【0047】
このようにして、半円筒体71は、カルマン渦7から空気吸込渦に発達する過程の下向きの強い流れを破壊することができる。結果として、半円筒体71は、空気吸込渦の発生を抑制することができる。上述のように、半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。このような内周面71aは、上流側から流れてくる水を、半円筒体71と吸込ベルマウス22との間の隙間に引き込む効果を助長する。一例として、半円筒体71は、その高さ(主軸32と平行な方向の長さ)が0.2d~0.4d程度のとき、空気吸込渦の発生を効果的に抑制できる。
【0048】
本実施形態では、
図6に示すように、主軸32の軸心Oと半円筒体71の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度θ2は180°であるが、この角度θ2は180°に限定されず、120°~180°の範囲内で選択してもよい。
図13(a)および
図13(b)に示すように、半円筒体71は、その上端および下端から半径方向内側または半径方向外側に延びるフランジ71bを有してもよい。この場合も、半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。
【0049】
図14は、ポンプ20の他の実施形態を示す側面図であり、
図15は、
図14のD-D線断面図である。特に説明しない本実施形態に関する構成は、
図1乃至
図13を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図14では、複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。
図14および
図15に示すように、本実施形態のポンプ20は、円弧部材76をさらに備えている。本実施形態では、第2の空気吸込渦抑制装置は、半円筒体71および円弧部材76から構成される。円弧部材76は、半円筒体71の上方に配置され、かつ縦リブ62および縦棒61の下方に配置されている。一実施形態では、縦棒61の下端は、円弧部材76と接触していてもよい。さらに一実施形態では、縦棒61は円弧部材76に固定、連結されていてもよい。円弧部材76は、ポンプケーシング27の外周面の周方向に沿って湾曲している。本実施形態では、円弧部材76は、半円環状である。円弧部材76は、ポンプケーシング27の外周面と円弧部材76との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット77によりポンプケーシング27に固定されている。
【0050】
円弧部材76は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されており、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されている。
図15に示すように、円弧部材76は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。円弧部材76は、流れF1の進路を妨害する位置に配置されている。流れF1は、半円筒体71により分流される前に、円弧部材76に衝突することによって複数の流れF5に分流され、半円筒体71に入る流れが弱められる。結果として、空気吸込渦を生じる下向きの強い流れを弱めることができる。このように、円弧部材76と半円筒体71との組み合わせは、空気吸込渦の発生をより効果的に抑制することができる。
【0051】
図15に示すように、本実施形態では、主軸32の軸心Oと円弧部材76の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度θ3は180°であるが、この角度θ3は180°に限定されず、120°~180°の範囲内で選択してもよい。円弧部材76の断面形状は、円形、四角形、L字型などの多角形であってもよい。
【0052】
一実施形態では、
図16に示すように、円弧部材76は、互いに離間した第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bから構成されてもよい。特に説明しない本実施形態に関する構成は、
図14および
図15を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の円弧部材76A,76Bの周方向の長さは、
図14および
図15を参照して説明した円弧部材76の周方向の長さよりも短い。
【0053】
第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、水の流れ方向に関して主軸32の下流側で、主軸32の軸心Oを通る水の流れ方向と平行な直線RL’に関して対称に配置されている。具体的には、第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、直線L1,L2上に配置されている。直線L1,L2は、直線RL’に対して45°程度の角度にあり、かつ主軸32の軸心Oを通る直線である。
【0054】
カルマン渦7は、直線L1,L2よりも吸込水槽1内の水の流れ方向の下流側に発生することが多い。そのため、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの流れF1の進路を妨害するために、第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、直線L1,L2上に配置されている。本実施形態の円弧部材76A,76Bと半円筒体71との組み合わせは、コンパクトな構成で空気吸込渦の発生を抑制することができる。
【0055】
半円筒体71または、半円筒体71と円弧部材76との組み合わせは、縦棒61と縦リブ62との組み合わせが空気吸込渦の発生を抑制することができる吸込水槽1の水位範囲から吸込水槽1の水位がさらに低下したとき(すなわち、吸込水槽1内の水の流速が高いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。したがって、半円筒体71および円弧部材76を、縦棒61および縦リブ62と組み合わせることによって、吸込水槽1のより幅広い水位およびより幅広い流速において、カルマン渦7の発生を抑制し、有害な空気吸込渦の発生を防止することができる。
【0056】
一実施形態では、ポンプ20は、縦棒61と縦リブ62との組み合わせのみを備えていてもよい。さらに、一実施形態では、ポンプ20は、半円筒体71のみ、または半円筒体71と円弧部材76との組み合わせのみを備えていてもよい。
【0057】
上述した各実施形態によれば、吸込ベルマウス22の吸込口22aに向かう水の流れを阻害するものは実質的に無く、吸い込み損失がほぼ無いため、上述した各実施形態の第1の空気吸込渦抑制装置(縦棒61および縦リブ62)および/または第2の空気吸込渦抑制装置(半円筒体71および/または円弧部材76)を備えたポンプ20は、揚水能力を低下させることなく、有害な空気吸込渦の発生を防止することができる。
【0058】
図17は、
図1に示す複数の水中渦抑制板49を下から見た図である。
図17に示すように、本実施形態では、4つの水中渦抑制板49が吸込ベルマウス22の下部に固定されている。4つの水中渦抑制板49のうち2つは吸込水槽1内の水の流れ方向と平行に配置され、他の2つは吸込水槽1内の水の流れ方向と垂直に配置されている。ただし、水中渦抑制板49の数は本実施形態に限定されない。
【0059】
複数の水中渦抑制板49の一端は、主軸32の軸心Oの延長線上で、互いに固定されており、複数の水中渦抑制板49のそれぞれの他端は、吸込ベルマウス22の内周面に固定されている。
図1に示すように、水中渦抑制板49は、吸込ベルマウス22の下端から下方に突出している。水中渦抑制板49の上端は、吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置にあり、かつ羽根車31よりも低い位置にある。
【0060】
このような水中渦抑制板49によれば、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する水中渦を抑制することができる。この水中渦は、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間の旋回流が発達して形成されるものであり、吸込ベルマウス22が吸込水槽1の底面の近くに位置しているときに発生しやすい。本実施形態のポンプ20は、水中渦の原因となる旋回流を水中渦抑制板49で消滅させることにより、水中渦の発生を効果的に抑制することができる。したがって、従来の構造よりも吸込ベルマウス22を低い位置に配置することができ、低水位での揚水が可能となる。本実施形態の水中渦抑制板49はポンプ20に取り付けることができるので、土木躯体である吸込水槽1への固定は不要であり、低コストかつ信頼性の高いポンプを提供することができる。
【0061】
上述した各実施形態の第1の空気吸込渦抑制装置(縦棒61および縦リブ62)、第2の空気吸込渦抑制装置(半円筒体71および円弧部材76)、および水中渦抑制板49は、特開2007-285253号公報に示すような羽根車の下方に水中軸受が配置されたポンプに適用してもよい。
【0062】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 吸込水槽
2 ポンプ据付床
5 開口
7 カルマン渦
20 ポンプ
21 インペラケーシング
22 吸込ベルマウス
22a 吸込口
24 吐出ボウル
25 内側ボウル
27 ポンプケーシング
28 揚水管
28a フランジ
28b フランジ
30 吐出曲管
31 羽根車
32 主軸
33 吊り下げ管
33a フランジ
35 ポンプベース
37 ガイドベーン
41 水中軸受
41a 支持部材
45 外軸受
49 水中渦抑制板
61 縦棒
62 縦リブ
65 ブラケット
67 固定具
68 環状部
69 縦棒保持部
69a 貫通孔
71 半円筒体
75 ブラケット
76 円弧部材
77 ブラケット