(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20221117BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20221117BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H01B7/00 301
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2020500377
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2019002951
(87)【国際公開番号】W WO2019159684
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018026658
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】押野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】前野 耕一
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
(72)【発明者】
【氏名】池田 英行
(72)【発明者】
【氏名】亀井 好一
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/001921(WO,A1)
【文献】特開2016-119785(JP,A)
【文献】特開2017-060253(JP,A)
【文献】特開平08-196016(JP,A)
【文献】特開2010-166750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/00-3/04
H01B 7/00-7/02 7/38-7/40
F16L 57/00
B60R 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートにより形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、
前記樹脂シートが折り曲げられる折曲部と、
前記樹脂シートを前記折曲部で折り曲げることにより、前記電線の延び方向に沿って延在して前記電線を収容する収容部を形成する複数の壁部と、を備え、
前記壁部の前記電線の延び方向における端部から所定の間隔を隔てた位置の前記折曲部に溝が形成され
、
前記所定の間隔は、前記電線の延び方向に沿って延在し、前記所定の間隔における前記折曲部には、前記溝が形成されていない電線用外装体。
【請求項2】
前記複数の壁は、前記電線の延び方向に分岐部及び/又は曲げ部を有し、前記複数の壁部のうち少なくとも1つの壁部が前記分岐部及び/又は曲げ部で分割されており、
前記溝は、前記分割された分割端部から所定の間隔を隔てた位置の前記折曲部に形成されている請求項1記載の電線用外装体。
【請求項3】
前記所定の間隔は、1mm以上10mm以下である請求項1又は2記載の電線用外装体。
【請求項4】
前記溝は、前記電線の延び方向に沿って直線状又は略直線状に形成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の電線用外装体。
【請求項5】
前記溝の深さが、前記樹脂シートの厚さの30%以上80%以下である請求項1乃至4のいずれか1項記載の電線用外装体。
【請求項6】
前記溝における前記樹脂シートの密度が、前記樹脂シートの厚み方向に面する上面及び下面において当該溝以外の前記樹脂シートよりも高く、かつ400Kg/m
3以上1200Kg/m
3以下である請求項1乃至5のいずれか1項記載の電線用外装体。
【請求項7】
前記壁部の前記電線の延び方向における端部から所定の間隔を隔てた位置の
、前記折曲部
の前記樹脂シートの厚み方向における高さが、前記電線の延び方向における端部から所定の間隔の間に収まる位置の
、前記折曲部
の前記樹脂シートの厚み方向における高さ
と異なる請求項1乃至6のいずれか1項記載の電線用外装体。
【請求項8】
外装体付きワイヤーハーネスであって、
ワイヤーハーネスと、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の電線用外装体と、を備え、
前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されている外装体付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の外周に装着される電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に配索される電線の外周に装着される電線用外装体として、2枚の板状部材の間に中空構造が形成された中空板材を筒状に折り曲げ、当該筒状内部に電線束を収容することにより、電線束を外部から保護するプロテクタが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このプロテクタは、板状部材における周方向の一方端から他方端にわたって設けられた切り込みにより折目が形成されており、当該折目に沿って板状部材を折り曲げることにより組み立てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のプロテクタは、プロテクタを車体等に取り付ける際や車両の走行時等の振動等により折目に応力がかかると、折目に沿って板状部材が破断することによりプロテクタが破損し、電線束の保護機能が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、破損を防止して電線の保護機能の低下を抑制することができる電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電線用外装体は、樹脂シートにより形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、前記樹脂シートが折り曲げられる折曲部と、前記樹脂シートを前記折曲部で折り曲げることにより、前記電線の延び方向に沿って延在して前記電線を収容する収容部を形成する複数の壁部と、を備え、前記壁部の前記電線の延び方向における端部から所定の間隔を隔てた位置の前記折曲部に溝が形成されている。
【0008】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記複数の壁は、前記電線の延び方向に分岐部及び/又は曲げ部を有し、前記複数の壁部のうち少なくとも1つの壁部が前記分岐部及び/又は曲げ部で分割されており、前記溝は、前記分割された分割端部から所定の間隔を隔てた位置の前記折曲部に形成されている。
【0009】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記所定の間隔は、1mm以上10mm以下である。
【0010】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記溝は、前記電線の延び方向に沿って直線状又は略直線状に形成されている。
【0011】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記溝の深さが、前記樹脂シートの厚さの30%以上80%以下である。
【0012】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記溝における前記樹脂シートの密度が、前記樹脂シートの厚み方向に面する上面及び下面において当該溝以外の前記樹脂シートよりも高く、かつ400Kg/m3以上1200Kg/m3以下である。
【0013】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記壁部の前記電線の延び方向における端部から所定の間隔を隔てた位置の前記折曲部と、前記電線の延び方向における端部から所定の間隔の間に収まる位置の前記折曲部とは、前記樹脂シートの厚み方向における高さが異なる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の外装体付きワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネスと、前記電線用外装体と、を備え、前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスによれば、破損を防止して電線の保護機能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る外装体を展開した状態で示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る外装体の引裂試験に用いられる樹脂シートを示すための図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る外装体における間隔と引裂き強度との関係を示すための図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る外装体を展開した状態で示す平面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る外装体の曲げ部の拡大平面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る外装体の折曲部の拡大平面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る外装体の折曲部の第1の変形例を説明するための拡大平面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る外装体の折曲部の第2の変形例を説明するための拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
はじめに、
図1乃至
図4を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネスの構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1を示す斜視図である。
【0019】
なお、本発明の第1の実施の形態では、説明の便宜上、外装体3の長手方向(長さ方向)を「X」とし、外装体3の短手方向(幅方向)を「Y」とする。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス1は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス2と、当該ワイヤーハーネス2の外周に装着される電線用外装体(以下、「外装体」ともいう。)3と、を備える。ワイヤーハーネス2は、外装体3によって外部環境から保護されている。なお、
図1においては、ワイヤーハーネス2を1本の円柱形状で示しているが、ワイヤーハーネス2は、1本以上の電線を備えたものである。
【0021】
次いで、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3について説明する。
図2は、
図1に示す外装体3を展開した状態で示す斜視図である。なお、
図2は、
図1に示す外装体3の外面を展開した状態で示す。
【0022】
図1に示すように、外装体3は、ワイヤーハーネス(電線)2の延び方向(長手方向X)に沿って延在する複数の壁部4を備えている。この複数の壁部4に囲まれて形成された空間がワイヤーハーネス2を収容する収容部5となっている。外装体3は、短手方向Yの断面形状が四角形状又は略四角形状となっている。
【0023】
図2に示すように、複数の壁部4は、1枚の樹脂シート(例えば、熱可塑性樹脂発泡シート)SPを折曲部20a~20dで折り曲げることにより一体的に形成されている。すなわち、この樹脂シートSPを折曲部20a~20dで折り曲げることにより、複数の壁部4が形成されている。
【0024】
複数の壁部4は、底壁部41と、底壁部41の端縁から折曲部20aを介して連設された側壁部42と、底壁部41の端縁から折曲部20bを介して連設された側壁部43と、側壁部42の端縁から折曲部20cを介して連設された内側蓋壁部44と、側壁部43の端縁から折曲部20dを介して連設された外側蓋壁部45とを有している。
【0025】
図1に示すように、底壁部41は、側壁部42と側壁部43との間に配置され、底壁部41の端縁から折曲部20aを介して側壁部42が立設され、底壁部41の端縁から折曲部20bを介して側壁部43が立設されている。
【0026】
内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とは、ワイヤーハーネス2の外周方向(
図1の短手方向Y)において互いに重なり合い、当該重なり合った部分が壁面重ね合わせ部46となっている。具体的には、壁面重ね合わせ部46は、外側蓋壁部45の端縁45aから短手方向Yの中央付近までの端部45bを内側蓋壁部44の上から覆い重ね合わせた部分である。この壁面重ね合わせ部46において、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とが接合手段により接合されている。なお、接合手段としては、例えば、接着剤や粘着テープ等の接着手段、超音波溶着、熱溶着等の溶着手段、係止部材、リベット等を用いた嵌合手段、ホッチキス等を用いた貫通固定手段等を挙げることができる。
【0027】
内側蓋壁部44は、側壁部42の端縁から折曲部20cを介して底壁部41と平行又は略平行に配置されており、重ね合わせ部46において内側(収容部5側)に配置されている。
【0028】
外側蓋壁部45は、底壁部41と対向しており、側壁部43の端縁から折曲部20dを介して底壁部41と平行又は略平行に配置され、重ね合わせ部46において外側に配置されている。外側蓋壁部45は、内側蓋壁部44の上側に配置された状態で端縁45aが側壁部42と略面一に配置されている。
【0029】
図2に示すように、折曲部20a~20dには、樹脂シートSPの厚さが減少した溝21a~21dが形成されている。溝21a~21dは、折曲部20a~20dに沿って切り込みが形成されたハーフカット部である。
【0030】
溝21a~21dは、壁部4の電線の延び方向(長手方向X)における一方の端部4aから間隔S1及び他方の端部4bから間隔S2を隔てた位置の折曲部20a~20dに沿って直線状又は略直線状に形成されている。
【0031】
具体的には、溝21aは、間隔S1及び間隔S2における折曲部20a以外の折曲部20aに形成されている。溝21bは、間隔S1及び間隔S2における折曲部20bを除く折曲部20bに形成されている。溝21cは、間隔S1及び間隔S2における折曲部20cを除く折曲部20cに形成されている。溝21dは、間隔S1及び間隔S2における折曲部20dを除く折曲部20dに形成されている。すなわち、間隔S1における折曲部20a~20d及び間隔S2における折曲部20a~20dには、溝21a~21dが形成されていない。
【0032】
間隔S1及び間隔S2は、折曲部20a~20dに応力がかかった場合に折曲部20a~20dから樹脂シートSPの破断を抑制しつつ、折曲部20a~20dの折り曲げ加工性を得る点から、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2~5mmであることが特に好ましい。
【0033】
溝21a~21dの深さは、樹脂シートSPの破断を抑制する点及び折曲部20a~20dの折り曲げ加工性を得る点から、樹脂シートSPの厚さの30%以上80%以下であることが好ましい。
【0034】
収容部5は、底壁部41、側壁部42,43、内側蓋壁部44及び外側蓋壁部45により、壁部4の一方の端部4aと他方の端部4bが貫通した筒状に形成されている。収容部5の短手方向Yの断面形状は、四角形状又は略四角形状となっている。また、収容部5の短手方向Yの断面積は、長手方向Xのいずれにおいても同一又は略同一となっている。
【0035】
次いで、
図1及び
図2を参照して、上述した外装体3の形成方法、及び外装体3へワイヤーハーネス2を装着して外装体付きワイヤーハーネス1を形成する方法についてそれぞれ説明する。
【0036】
外装体3の形成方法では、先ず、外装体3を形成するための母材となる樹脂シートSPから、外装体3に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工としては、例えば、低コスト化と加工簡易性の点から、トムソン刃金型での打ち抜き等が挙げられる。
【0037】
また、打ち抜かれた外装体3に相当する部分のうち、溝21a~21dに対応する部分にハーフカット成形を施す。ハーフカット成形を施すことにより、溝21a~21dを形成し、折曲部20a~20dに良好な折り曲げ加工性を付与し、折り曲げ位置の精度を向上させる。
【0038】
上記のように形成された外装体3をワイヤーハーネス2へ装着する方法では、先ず、底壁部41に対して側壁部42,43が略垂直となるように、折曲部20a,20bで折り曲げる。折曲部20a,20bで折り曲げると、側壁部42と側壁部43との間が長手方向Xに沿って上方に開口した形状となる。
【0039】
折曲部20a,20bを折り曲げた後、底壁部41にワイヤーハーネス2を載置し、底壁部41に対して内側蓋壁部44が略平行となるように、折曲部20cで折り曲げる。次に、底壁部41に対して外側蓋壁部45が略平行となるように、折曲部20dで折り曲げる。折曲部20dで外側蓋壁部45を折り曲げると、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とが重なって壁面重ね合わせ部46となる。また、側壁部42と側壁部43間の開口が塞がれて収容部5が形成されるとともに、収容部5内にワイヤーハーネス2が挿通された状態で収容される。壁面重ね合わせ部46において、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とを接合することにより、側壁部42と側壁部43との間の開口が塞がれた状態が固定され、外装体3がワイヤーハーネス2の外周に装着される。
【0040】
なお、外装体3は、ワイヤーハーネス2を構成する複数の電線を分散しないように固定するための固定用テープの外周に装着されていてもよく、固定用テープを使用していない複数の電線の外周に装着されていてもよい。また、外装体3は、1本の電線の外周に装着されていてもよい。
【0041】
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1によれば、溝21a~21dは、壁部4の一方の端部4aから間隔S1を隔てた位置から壁部4の他方の端部4bから間隔S2を隔てた位置まで形成されているため、折曲部20a~20dに応力がかかっても樹脂シートSPが引裂かれて破断するのを抑制することができる。すなわち、外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1は、折曲部20a~20dに応力がかかった際、樹脂シートSPの引裂きの起点となる壁部4の端部4a,4bに溝21a~21dが形成されていないため、樹脂シートSPが引裂かれることによる外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1の破損を抑制して、ワイヤーハーネス2の保護機能の低下を抑制することができる。
【0042】
外装体3に用いられる樹脂シートSPは折り曲げが可能であれば、特に限定されず、樹脂種としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれも使用することができる。このうち、軽量性、形状設計の自由度、コスト等の点で、熱可塑性樹脂発泡シートが好ましい。熱可塑性樹脂発泡シートの具体的な樹脂種については、特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0043】
外装体3に用いられる熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、特に限定されず、例えば、軽量性と機械的強度とのバランスを向上させる点から200Kg/m3以上700Kg/m3以下が好ましく、300Kg/m3以上600Kg/m3以下がより好ましく、350Kg/m3以上550Kg/m3以下が特に好ましい。なお、熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、JIS K 7222に基づいて測定する。
【0044】
熱可塑性樹脂発泡シートの厚さは、特に限定されず、例えば、折り曲げ容易性と機械的強度の点から、0.50mm以上4.0mm以下が好ましく、0.8mm以上2.5mm以下が特に好ましい。
【0045】
また、熱可塑性樹脂発泡シートには、両面又は片面に、非発泡層が形成されていてもよい。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートは、発泡層と該発泡層上に形成された非発泡層とを有する構成としてもよい。熱可塑性樹脂発泡シートの表面に非発泡層が形成されていることにより、外装体3の機械的強度が向上して、収容されるワイヤーハーネス2の保護性能がより向上する。外装体3の機械的強度を確実に向上させる点から、両面に非発泡層が形成されることが好ましい。非発泡層の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上100μm以下が挙げられる。
【0046】
熱可塑性樹脂発泡シートのショア硬さ(HSC)は、特に限定されないが、機械的強度の点から、例えば、60以上100以下が好ましい。
【0047】
次いで、
図3及び
図4を参照して、外装体3の溝21a~21dの強度について説明する。具体的には、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3に用いられる樹脂シート及び比較例に係る樹脂シートに対して引張試験を行い、樹脂シートの引裂き強度の変化を評価した。また、本発明の第1の実施の形態における樹脂シートと比較例に係る樹脂シートの折り曲げ加工性について評価した。その評価結果について説明する。
【0048】
引張試験は、
図3に示すように、縦L1の長さが40mm、横L2の長さが50mm、厚さ1.5mmの樹脂シートSPに対して、溝21が形成されていない長さ(間隔S)を異ならせて試験を行った。具体的には、上述した間隔S1及び間隔S2に溝21a~21dが形成された樹脂シートに相当する樹脂シートとして、樹脂シートの一方の端部から他方の端部まで溝21が形成された樹脂シート(比較例1)SP、すなわち、間隔Sが0mmの樹脂シートSPに対して行った。また、上述した本発明の第1の実施の形態に係る外装体3に用いられる樹脂シート、すなわち、間隔S1及び間隔S2における折曲部20a~20dに溝21a~21dが形成されていない樹脂シートとして、樹脂シートの一方の端部から所定の間隔を除く部分に溝が形成された樹脂シートSP(実施例1~実施例4)に対して行った。
【0049】
実施例1~実施例4の樹脂シートSPは、一方の端部から溝21が形成されていない間隔Sが異なる樹脂シートであり、実施例1は、溝21が形成されていない間隔Sが1mmの樹脂シートSPである。実施例2は、溝21が形成されていない間隔Sが2mmの樹脂シートSPである。実施例3は、溝21が形成されていない間隔Sが5mmの樹脂シートSPである。実施例4は、溝21が形成されていない間隔Sが10mmの樹脂シートSPである。
【0050】
引張試験は、比較例1、実施例1~実施例4の樹脂シートSPをそれぞれ3枚作製し、
図3に示すように、作成した樹脂シートSPの間隔S側の端部を冶具M1及び冶具M2に固定して行う。冶具M1及び冶具M2は、幅L3の大きさが25mmの冶具であり、樹脂シートSPの溝21に直交する方向において互いに離間する距離L4が20mmとなるように配置されている。冶具M1及び冶具M2には、樹脂シートSPを保持する幅L5の大きさが12.5mmとなるように樹脂シートSPを固定した。そして、冶具M1及び冶具M2を分速50mmで相対する方向(矢印A方向及び矢印B方向)へ引っ張り、樹脂シートSPが引裂かれた時の最大強度(以下、「引裂き強度」ともいう。)を測定した。また、比較例1、実施例1~実施例4における引裂き強度の平均値を算出し、間隔Sの違いに対する引裂き強度の変化を評価した。溝21が形成されていない間隔Sと引裂き強度との関係を
図4に示す。
【0051】
折り曲げ加工性の評価は、比較例1、実施例1~実施例4の樹脂シートSP(厚さ:1.5mm、溝21の深さ:1.2mm)をそれぞれ3枚作製し、作成した樹脂シートSPを溝21で180度折り曲げた状態で5秒間保持した後、開放し、開放から30秒後に開いた角度を測定することにより行った。比較例1、実施例1~実施例4の引裂き強度の平均値と折り曲げ加工性の評価結果を表1に示す。なお、折り曲げ加工性は、開放から30秒後に開いた角度が95度未満を「◎」(折り曲げ加工性:優)、開いた角度が95度以上105度未満を「○」(折り曲げ加工性:良)、開いた角度が105度以上を「△」(折り曲げ加工性:可)として示した。
【0052】
【0053】
表1に示すように、引裂き強度の平均は、比較例の樹脂シートSPでは引裂き強度が116.1N、実施例1の樹脂シートSPでは引裂き強度が165.8N、実施例2の樹脂シートSPでは引裂き強度が189.1N、実施例3の樹脂シートSPでは引裂き強度が194.3N、実施例4の樹脂シートSPでは引裂き強度が219.3Nとなった。また、
図4に示すように、溝21が形成されていない間隔が大きいほど引裂き強度が強いことが分かる。特に、引裂き強度は、溝21が形成されていない間隔Sが0mm以上2mm以下の範囲で強度の変化が大きいことが分かる。
【0054】
折り曲げ加工性においては、表1に示すように、比較例の樹脂シートSP、実施例1の樹脂シートSP、実施例2の樹脂シートSPが「折り曲げ加工性:優」となった。一方、実施例3の樹脂シートSPでは、折り曲げ後に開いた角度がやや大きく「折り曲げ加工性:良」となった。実施例4の樹脂シートSPは、折り曲げ後に開いた角度がさらに大きく「折り曲げ加工性:可」となった。
【0055】
以上のことから、一方の端部から溝が形成されていない実施例1~実施例4の樹脂シートSPは、引裂き強度が強く、外装体として優れていると評価できる。このため、間隔S1及び間隔S2に溝21a~21dが形成されていない本発明の第1の実施の形態に係る外装体3は、ワイヤーハーネス2の外周に装着される外装体として優れていると評価できる。一方、実施例3の樹脂シートSP及び実施例4の樹脂シートSP、すなわち、溝が形成されていない間隔が10mm以上では、折り曲げ後に開いた角度が105度以上となり、折り曲げ加工性にやや劣る傾向が認められた。このため、折曲部20a~20dの折り曲げ加工性を得る点から、特に間隔S1及び間隔S2は、2~5mmであることが好ましい。
【0056】
次に、
図5乃至
図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。まず、
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネスの構成について説明する。
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス101を示す斜視図である。
【0057】
なお、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス101は、上述の本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1において、ワイヤーハーネスが曲げられて配索されていることに対応して壁部4に曲げ部を形成したものであり、その他の部分の構成は同様である。そこで、以下では、上述の本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1と同一の又は類似する構成等については上述の外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0058】
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス101は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス102と、当該ワイヤーハーネス102の外周に装着される外装体103と、を備える。外装体付きワイヤーハーネス101では、ワイヤーハーネス102が延び方向X1に沿って曲げられて配索されていることに対応して、外装体103には、ワイヤーハーネス102の延び方向X1に沿って曲げられて形成されている。
【0059】
次いで、
図5乃至
図7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103について説明する。
図6は、
図5に示す外装体103を展開した状態で示す平面図である。
図7は、
図6に示す曲げ部150a,150bの拡大平面図である。なお、
図6及び
図7は、
図5に示す外装体103の外面を展開した状態で示す。
【0060】
図5に示すように、外装体103は、ワイヤーハーネス102の延び方向X1に沿って延在する複数の壁部104を備えている。この複数の壁部104に囲まれて形成された空間がワイヤーハーネス102を収容する収容部105となっている。
【0061】
図5及び
図6に示すように、複数の壁部104は、1枚の樹脂シートSPを折曲部120a~120dで折り曲げることにより一体的に形成されている。すなわち、この樹脂シートSPを折曲部120a~120dで折り曲げることにより、複数の壁部104が形成されている。
【0062】
複数の壁部104は、底壁部141と、底壁部141の端縁から折曲部120aを介して連設された側壁部142と、底壁部141の端縁から折曲部120bを介して連設された側壁部143と、側壁部142の先端から折曲部120cを介して連設された内側蓋壁部144と、側壁部143の先端から折曲部120dを介して連設された外側蓋壁部145とを有している。また、複数の壁部104は、ワイヤーハーネス102が延び方向X1に沿って曲げられて配索されていることに対応して、所定の曲げ角度からなる曲げ部150a,150bを有している。
【0063】
底壁部141は、側壁部142と側壁部143との間に配置され、底壁部141の端縁から折曲部120aを介して側壁部142が立設され、底壁部141の端縁から折曲部120bを介して側壁部143が立設されている。また、底壁部141は、外装体103のワイヤーハーネス102の延び方向X1における一方の端部104aから他方の端部104bまで一体の状態で延びている。すなわち、底壁部141は、曲げ部150a,150bを跨いでワイヤーハーネス102の延び方向X1に沿って設けられている。
【0064】
図6に示すように、側壁部142は、外装体103に曲げ部150aを形成するために、曲げ部150aを境に、第1の部位142aと第2の部位142bに分割されている。第1の部位142aと第2の部位142bは、曲げ部150aを境に隣接している。第1の部位142aと第2の部位142bは、いずれも曲げ部150aに分割端部152a,152bが位置している。第1の部位142aは一方の端部104aから分割端部152aまで延在し、第2の部位142bは他方の端部104bから分割端部152bまで延在している。
【0065】
側壁部143は、外装体103に曲げ部150bを形成するために、曲げ部150bを境に、第1の部位143aと第2の部位143bに分割されている。第1の部位143aと第2の部位143bは、曲げ部150bを境に隣接している。第1の部位143aと第2の部位143bは、いずれも曲げ部150bに分割端部153a,153bが位置している。第1の部位143aは一方の端部104aから分割端部153aまで延在し、第2の部位143bは他方の端部104bから分割端部153bまで延在している。
【0066】
内側蓋壁部144は、外装体103に曲げ部150aを形成するために、曲げ部150aを境に、第1の部位144aと第2の部位144bに分割されている。第1の部位144aと第2の部位144bは、曲げ部150aを境に隣接している。第1の部位144aと第2の部位144bは、いずれも曲げ部150aに分割端部154a,154bが位置している。第1の部位144aは一方の端部104aから分割端部154aまで延在し、第2の部位144bは他方の端部104bから分割端部154bまで延在している。また、
図5に示すように、内側蓋壁部144は、側壁部142から側壁部143又は側壁部143近傍まで、底壁部141に対して略平行に延びている。
【0067】
外側蓋壁部145は、底壁部141と対向しており、外装体103の一方の端部104aと曲げ部150a,150bとの間にて分割されて境界部160が形成されている。すなわち、外側蓋壁部145は、境界部160を境に第1の部位145aと第2の部位145bに分離されている。また、第1の部位145aと第2の部位145bは、境界部160を境に隣接している。
図6に示すように、第1の部位145aと第2の部位145bは、いずれも境界部160に境界端部155a,155bが位置している。境界端部155a,155bは、一方の端部104aと曲げ部150a,150bとの間に位置している。また、
図5に示すように、第1の部位145aは、一方の端部104aから境界部160まで延在し、第2の部位145bは、他方の端部104bから境界部160まで延在するとともに曲げ部150a,150bに対応する角度に曲げられて形成されている。
【0068】
図5及び
図6に示すように、外側蓋壁部145の第2の部位145bのうち、曲げ部150a,150bから境界端部155bまでの領域は、内側蓋壁部144の第1の部位144aの一部領域と平面視重なり合って、壁面重ね合わせ部146が形成されている。また、壁面重ね合わせ部146にて、外側蓋壁部145の第2の部位145bと内側蓋壁部144の第1の部位144aとが接合手段170で接合されている。
【0069】
曲げ部150aには、側壁部142の第1の部位142a及び第2の部位142bの分割端部152a,152bが所定の角度で配置されている。また、曲げ部150bには、側壁部143の第1の部位143a及び第2の部位143bの分割端部153a,153bが所定の角度で配置されている。そして、複数の壁部104は、曲げ部150a及び曲げ部150bにより、所定角度に曲げられてワイヤーハーネス102の延び方向X1に沿った形状に形成されている。
【0070】
図6及び
図7に示すように、折曲部120a~120dには、樹脂シートSPの厚さが減少した溝121a~121dが形成されている。溝121a~121dは、折曲部120a~120dに沿って切り込みが形成されたハーフカット部である。
【0071】
図6に示すように、溝121a~121dは、壁部104の一方の端部104aから間隔S3、及び、他方の端部4bから間隔S4を隔てた位置の折曲部20a~20dに沿って直線状又は略直線状に形成されている。また、
図7に示すように、溝121a~121dは、曲げ部150aから間隔S52,S54、曲げ部150bから間隔S53,境界部160からS55、曲げ部150aから間隔S62,S64、及び、曲げ部150bから間隔S63,S65を隔てた位置の折曲部120a~120dに沿って直線状又は略直線状に形成されている。
【0072】
具体的には、溝121aは、間隔S3,S4,S52,S62における折曲部120a以外の折曲部120aに形成されている。溝121bは、間隔S3,S4,S53,S63における折曲部120bを除く折曲部120bに形成されている。溝121cは、間隔S3,S4,S54,S64における折曲部120cを除く折曲部120cに形成されている。溝121dは、間隔S3,S4,S55,S65における折曲部120dを除く折曲部120dに形成されている。すなわち、間隔S3における折曲部120a~120d、間隔S4における折曲部120a~120d、間隔S52,S53,S54,S55、及び、間隔S62,S63,S64,S65には、溝121a~121dが形成されていない。
【0073】
次で、
図5乃至
図7を参照して、上述した外装体103の形成方法、及び外装体103へワイヤーハーネス102を装着して外装体付きワイヤーハーネス101を形成する方法についてそれぞれ説明する。
【0074】
外装体103の形成方法では、先ず、外装体103を形成するための母材となる樹脂シートSPから、外装体103に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。
【0075】
また、打ち抜かれた外装体103に相当する部分のうち、溝121a~121dに対応する部分にハーフカット成形を施す。ハーフカット成形を施すことにより、溝121a~121dを形成し、折曲部120a~120dに良好な折り曲げ加工性を付与し、折り曲げ位置の精度を向上させる。
【0076】
上記のように形成された外装体103をワイヤーハーネス102へ装着する方法では、先ず、母材から切り出した樹脂シートSPを、底壁部141に対して側壁部142,143が略垂直となるように、折曲部120a,120bで折り曲げる。折曲部120a,120bで折り曲げると、側壁部142と側壁部143との間が長手方向X1に沿って上方に開口した形状となる。
【0077】
折曲部120a,120bを折り曲げた後、底壁部141にワイヤーハーネス102を載置し、底壁部141に対して、内側蓋壁部144の第1の部位144aと第2の部位144bが略平行となるように、内側蓋壁部144の第1の部位144aと第2の部位144bを折曲部120cで折り曲げる。
【0078】
次に、底壁部141に対して外側蓋壁部145の第1の部位145aが略平行となるように、外側蓋壁部145の第2の部位145bを折曲部120dで折り曲げる。外側蓋壁部145の第2の部位145bを折曲部120dで折り曲げると、外側蓋壁部145の第2の部位145bのうち、曲げ部150a,150bから境界部160までの領域は、内側蓋壁部144の第1の部位144aの一部の領域と重なり合って、壁面重ね合わせ部146が形成される。
【0079】
次に、底壁部141に対して外側蓋壁部145の第1の部位145aが略平行となるように、外側蓋壁部145の第1の部位145aを折曲部120dで折り曲げる。外側蓋壁部145の第1の部位145aを折曲部120dで折り曲げると、外装体103の一方の端部104aと曲げ部150a,150bとの間にて分割されて境界部160が形成されている外側蓋壁部145が形成される。すなわち、折曲部120dで外側蓋壁部145を折り曲げると、側壁部142、143の端部の間の開口が塞がれて収容部105が形成されるとともに、収容部105内にワイヤーハーネス102が挿通された状態で収容される。また、内側蓋壁部144と外側蓋壁部145とを接合手段170で接合することにより、側壁部142と側壁部143との間の開口が塞がれた状態が固定され、外装体103がワイヤーハーネス102の外周に装着される。
【0080】
上述のように、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス101によれば、溝121a~121dは、壁部104の一方の端部104aから間隔S3を隔てた位置から壁部104の他方の端部104bから間隔S4を隔てた位置まで形成されているため、上述の本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1と同様の効果を奏することができる。
【0081】
特に、本発明の第2の実施の形態に係る外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス101によれば、溝121a~121dは、所定の曲げ角度からなる曲げ部150a,150bあるいは境界部160から所定の間隔(S52,S53,S54,S55,S62,S63,S64,S65)を隔てた位置の折曲部120a~120dに沿って形成されている。すなわち、所定の間隔における折曲部120a~120dには溝121a~121dが形成されていないため、曲げ部150a,150b付近に応力がかかっても樹脂シートSPが引裂かれて外装体103及び外装体付きワイヤーハーネス101が破損するのを抑制することができる。
【0082】
なお、上記第2の実施の形態では、複数の壁部104が、ワイヤーハーネス102の延び方向X1に曲げ部150a,150bを有していたが、これに代えて、ワイヤーハーネスの延び方向にワイヤーハーネスが1以上に分岐する分岐部を有していてもよく、曲げ部と分岐部の両方を有していてもよい。
【0083】
次に、
図8から
図10を参照して、本発明の第1の実施の形態及び第2の実施の形態の変形例について説明する。まず、
図8及び
図9を参照して、本発明の実施の形態の折曲部20(20a~20d),120(120a~120d)の第1の変形例について説明する。
図8(a)は、本発明の実施の形態の折曲部20,120を示す拡大平面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のA-A線に沿う断面図である。
図9(a)は、本発明の実施の形態の折曲部の第1の変形例を示す拡大平面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のB-B線に沿う断面図である。
【0084】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、外装体3,103の折曲部20,120に形成された溝21,121は、樹脂シートSPの厚さTが減少したハーフカット部である場合について説明した。しかし、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、外装体3,103の折曲部220に形成された溝は、樹脂シートSPの厚さTが減少しない溝221でもよい。
【0085】
具体的には、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、
図8(b)に示すように、溝21,121は、外装体3,103の樹脂シートSPの上面3aから下面3bへ凹む形状を有し、溝21,121の樹脂シートSPの厚さT1は、溝21,121以外の樹脂シートSPの厚さTより薄くなっている(T>T1)。
【0086】
一方、
図9(b)に示すように、溝221は、外装体3,103の樹脂シートSPの上面3aから下面3bへ凹む形状を有するとともに、下面3bは、上面3aが凹んだ分だけ下方へ突出した形状を有している。すなわち、溝221の樹脂シートSPの厚さT2は、溝221以外の樹脂シートSPの厚さTと略同一の厚さである(T=T2)。このように、外装体3,103に形成された溝は、樹脂シートSPの厚さTが減少したものに限らず、樹脂シートSPの厚さTが減少しない溝でもよい。
【0087】
次に、
図8及び
図10を参照して、本発明の実施の形態の折曲部20(20a~20d),120(120a~120d)の第2の変形例について説明する。
図10(a)は、本発明の実施の形態の折曲部の第2の変形例を示す拡大平面図であり、
図10(b)は、
図10(a)のC-C線に沿う断面図である。
【0088】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、外装体3,103の折曲部20,120には溝21,121が形成されており、溝21,121は、壁部4,104の端部から所定の間隔Sにおける折曲部20,120以外の折曲部20,120に形成されている場合について説明した。しかし、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、間隔Sにおける折曲部320にも溝322が形成されていてもよい。
【0089】
すなわち、壁部4,104の電線の延び方向(長手方向X)における一方の端部4a,104aから所定の間隔S1,S3及び他方の端部4b,104bから所定の間隔S2,S4を隔てた位置の折曲部20,120と、一方の端部4a,14aから所定の間隔S1,S3及び他方の端部4b,104bから所定の間隔S2,S4の間に収まる位置の折曲部20,120とは、樹脂シートSPの厚み方向における高さが異なるように溝21,121及び溝322が形成されていてもよい(
図2及び
図6参照)。
【0090】
また、間隔S52,S53,S54,S55、及び、間隔S62,S63,S64,S65以外の折曲部120と、間隔S52,S53,S54,S55、及び、間隔S62,S63,S64,S65の折曲部120とは、樹脂シートSPの厚み方向における高さが異なるように溝が形成されていてもよい(
図7参照)。
【0091】
具体的には、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、
図8(b)に示すように、溝21,121は、間隔Sにおける折曲部20,120を除く折曲部20,120に形成されており、間隔Sにおける折曲部20,120には溝は形成されていない。
【0092】
一方、
図10(b)に示すように、間隔Sの折曲部320以外の折曲部320には、樹脂シートSPの厚さTが減少した21,121が形成されているとともに、間隔Sの折曲部320にも樹脂シートSPの厚さTが減少した溝322が形成されている。具体的には、溝322の樹脂シートSPの厚さT3は、樹脂シートSPの厚さTより薄く(T>T3)、溝21,121の樹脂シートSPの厚さT1よりも厚い(T1<T3)。このため、間隔Sの折曲部320以外の折曲部320と、間隔Sの折曲部320とは、樹脂シートSPの厚み方向における高さが異なり、樹脂シートSPの表面に段差が形成されている。このように、間隔Sの折曲部320にも溝322が形成されていてもよい。
【0093】
なお、間隔Sの折曲部320の溝322は、予め折曲部320に沿って切り込みを入れたハーフカット部である場合に限られない。例えば、折曲部320の間隔Sには溝322は形成されていないが、折曲部320を折り曲げた後に開放又は折り曲げる前の位置に戻した場合に、樹脂シートSPの厚さが減少することにより溝322が形成されてもよい。
【0094】
上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、溝21a~21d,121a~121dは、折曲部20a~20d,120a~120dに沿って切り込みを入れたハーフカット部である場合について説明したが、押し成形による押し成形部であってもよい。溝21a~21d,121a~121dが押し成形部である場合には、溝21a~21d,121a~121dの密度が溝21a~21d,121a~121dを除く複数の壁部4,104よりも密度が高い、高密度部となっていることが好ましい。具体的には、溝21a~21d,121a~121dにおける樹脂シートSPの密度は、外装体3,103の形状を安定的に維持しつつ折曲部20a~20d,120a~120dの折り曲げ加工性を得る点から、400Kg/m3以上1200Kg/m3以下が好ましく、500Kg/m3以上1200Kg/m3以下が特に好ましい。なお、樹脂シートSPの溝21a~21d,121a~121dの密度は、折り曲げた樹脂シートSPを平坦に戻し、溝21a~21d,121a~121dの部分から両側1mmの幅を切り出して、JIS K 7222に基づいて測定する。
【0095】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に係る外装体3,103及び外装体付きワイヤーハーネス1,101に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0096】
上述した本発明の実施の形態における溝21a~21d,121a~121dは、折曲部20a~20d,120a~120dに形成されている場合について説明したが、折曲部20a~20dの少なくとも1つの折曲部に溝が形成、又は、折曲部120a~120dの少なくとも1つの折曲部に溝が形成されていればよく、折曲部に形成された溝の数は適宜変更が可能である。
【0097】
また、上述した本発明の実施の形態における溝21a~21d,121a~121dは、折曲部20a~20d,120a~120dに沿って直線状又は略直線状に形成されている場合について説明したが、折曲部20a~20d,120a~120dに沿って所定の間隔毎に形成されていてもよい。また、溝21a~21d,121a~121dは、折曲部20a~20d,120a~120dに沿って破線又は点線に形成されていてもよい。すなわち、溝21a~21d,121a~121dの形状は適宜変更が可能である。
【0098】
さらに、上述した本発明の実施の形態における溝21a~21d,121a~121dは、折曲部20a~20d,120a~120dに沿って切り込みを入れたハーフカット部である場合について説明したが、樹脂シートSPの厚さが減少した部分であれば形成方法は適宜変更が可能である。
【0099】
また、上述した本発明の実施の形態における収容部5は、外装体3の短手方向Yの断面積は、長手方向Xのいずれにおいても同一又は略同一となっている場合について説明したが、収容部5,105は、ワイヤーハーネス2,102の形状に沿うように、拡径、縮径されていてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1,101 外装体付きワイヤーハーネス
2 ワイヤーハーネス
3,103 外装体
4,104 壁部
5,105 収容部
20(20a,20b,20c,20d) 折曲部
120(120a,120b,120c,120d) 折曲部
220,320 折曲部
21(21a,21b,21c,21d) 溝
121(121a,121b,121c,121d) 溝
221,322 溝
41,141 底壁部
42,43,142,143 側壁部
44,144 内側蓋壁部
45,145 外側蓋壁部
S,S1,S2 間隔
S52,S53,S54,S55 間隔
S62,S63,S64,S65 間隔
X 長手方向
Y 短手方向