(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】基板加熱装置および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20221118BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20221118BHJP
F27B 9/24 20060101ALI20221118BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/30 567
F27B9/24 R
H05K3/00 Z
(21)【出願番号】P 2018153499
(22)【出願日】2018-08-17
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小西 清孝
(72)【発明者】
【氏名】末兼 大輔
(72)【発明者】
【氏名】細田 浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-145067(JP,U)
【文献】特開2015-151320(JP,A)
【文献】特開昭63-181321(JP,A)
【文献】特表2016-534558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/027
F27B 9/24
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を塗布した基板を収容可能な収容空間が内部に形成されたチャンバと、
前記収容空間に配置されるとともに、前記基板を加熱可能な基板加熱部と、
前記基板における前記溶液の塗布面と、前記チャンバにおいて前記塗布面と対向する対向面との間に少なくとも配置されたガラスと、を含
み、
前記チャンバの上部には、前記ガラスを前記チャンバへ取り付ける取付部が設けられ、
平面視で、前記取付部は、前記基板を避けた位置に配置されており、
前記ガラスにおいて前記チャンバの周壁及び底板に設けられるガラス周壁及びガラス底板は、互いに一体に結合されることにより上方に開放する箱状をなしている
基板加熱装置。
【請求項2】
前記ガラスは、石英の含有率が50%以上である
請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項3】
前記ガラスの赤外線の吸収率は、近赤外線波長領域(1μm以上2.5μm未満)で30%以上であり、遠赤外線波長領域(2.5μm以上5μm以下)で90%以上である
請求項1または2に記載の基板加熱装置。
【請求項4】
前記基板は、ポリイミドを形成するための溶液が塗布された基板である
請求項1から3のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項5】
前記チャンバは、
前記基板の上方に位置し、前記対向面を形成する天板と、
前記基板の下方に位置し、前記天板と対向する底板と、
前記基板の周囲を囲む周壁と、を含み、
前記ガラスは、前記チャンバの前記天板、前記底板および前記周壁のそれぞれに設けられている
請求項1から4のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項6】
前記ガラスの厚さは、0.5mm以上10mm以下である
請求項1から5のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項7】
前記ガラスの熱膨張係数は、0℃以上750℃以下の範囲において15×10
-7/K以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項8】
前記基板加熱部は、前記チャンバの天板に支持された赤外線ヒータを含み、
前記ガラスは、前記天板と前記赤外線ヒータとの間に配置されている
請求項1から7のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の基板加熱装置を含む基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板加熱装置および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイス用の基板として、ガラス基板に代わりフレキシブル性を有した樹脂基板の市場ニーズがある。例えば、このような樹脂基板は、ポリイミド膜を用いる。例えば、ポリイミド膜は、基板にポリイミドの前駆体の溶液を塗布した後、基板を加熱する工程(加熱工程)を経て形成される。例えば、ポリイミドの前駆体の溶液としては、ポリアミック酸と溶媒とを含むポリアミック酸ワニスがある。このポリアミック酸を加熱硬化させることでポリイミドを得ることができる(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
一方、被処理基板が配置される加熱処理空間を囲繞部材と、被処理基板を加熱する熱板と、を備えた熱処理装置がある(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2には、囲繞部材に非処理基板から発生する不純物の付着防止膜を設けている。例えば、付着防止膜は、フッ素系樹脂を主成分とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-129774号公報
【文献】特開2005-19593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の開示技術によれば、フォトレジスト加熱時に発生する昇華物のユニットへの付着を低減することができる。
しかしながら、特許文献2の付着防止膜はフッ素系樹脂を主成分とするものであるため、基板の加熱温度によっては付着防止膜の適用が困難となる可能性が高い。例えば、基板の加熱温度が300℃以上の場合、付着防止膜としてフッ素系樹脂を用いることは困難となる。そのため、付着防止膜としてフッ素系樹脂を用いた場合、基板の加熱温度を狭い範囲で設定する必要が生じ、基板の加熱温度が制限されやすい。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、基板の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することが可能な基板加熱装置および基板処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る基板加熱装置は、溶液を塗布した基板を収容可能な収容空間が内部に形成されたチャンバと、前記収容空間に配置されるとともに、前記基板を加熱可能な基板加熱部と、前記基板における前記溶液の塗布面と、前記チャンバにおいて前記塗布面と対向する対向面との間に少なくとも配置されたガラスと、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、基板における溶液の塗布面と、チャンバにおいて塗布面と対向する対向面との間に少なくとも配置されたガラスを含むことで、基板の塗布面からチャンバの対向面へ向かうヒュームをガラスで遮ることができるため、チャンバの対向面(チャンバ内部)への昇華物の付着を抑制することができる。加えて、ガラスの耐熱温度(連続使用温度)は樹脂よりも高いため、基板の加熱温度をより広い範囲で設定することができ、基板の加熱温度が制限されにくい。したがって、基板の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することができる。
【0008】
上記の基板加熱装置において、前記ガラスは、石英の含有率が50%以上であってもよい。
この構成によれば、石英の含有率が50%未満の場合と比較して、ガラスの耐熱温度を向上させることができる。したがって、基板の加熱温度を更に広い範囲で設定することができ、基板の加熱温度が更に制限されにくい。
【0009】
上記の基板加熱装置において、前記ガラスの赤外線の吸収率は、近赤外線波長領域(1μm以上2.5μm未満)で30%以上であり、遠赤外線波長領域(2.5μm以上5μm以下)で90%以上であってもよい。
この構成によれば、ガラスの近赤外線の吸収率が30%以上であることにより、ガラスの近赤外線の吸収率が30%未満の場合と比較して、近赤外線の吸収によるガラスの加熱を促進することができる。加えて、ガラスの遠赤外線の吸収率が90%以上であることにより、ガラスの遠赤外線の吸収率が90%未満の場合と比較して、遠赤外線の吸収によるガラスの加熱を促進することができる。このようにガラスの加熱を促進することにより、基板の塗布面からチャンバの対向面へ向かうヒュームがガラスの表面で冷却されて昇華物となることを抑制することができる。したがって、ガラスへの昇華物の付着を抑制することができる。
【0010】
上記の基板加熱装置において、前記基板は、ポリイミドを形成するための溶液が塗布された基板であってもよい。
この構成によれば、ポリイミドの形成時において、基板の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することができる。
【0011】
上記の基板加熱装置において、前記チャンバは、前記基板の上方に位置し、前記対向面を形成する天板と、前記基板の下方に位置し、前記天板と対向する底板と、前記基板の周囲を囲む周壁と、を含み、前記ガラスは、前記チャンバの前記天板、前記底板および前記周壁のそれぞれに設けられていてもよい。
この構成によれば、基板の塗布面からチャンバの天板、底板および周壁のそれぞれへ向かうヒュームをガラスで遮ることができるため、チャンバの天板、底板および周壁のそれぞれへの昇華物の付着を抑制することができる。
【0012】
上記の基板加熱装置において、前記ガラスの厚さは、0.5mm以上10mm以下であってもよい。
この構成によれば、ガラスの厚さが0.5mm以上であることにより、ガラスの厚さが0.5mm未満の場合と比較して、ガラスで赤外線を吸収しやすいため、ガラスの加熱を促進し、ガラスへの昇華物の付着を抑制しやすい。加えて、ガラスの厚さが10mm以下であることにより、ガラスの厚さが10mmを超える場合と比較して、熱を伝えやすいため、ガラスが割れにくい。
【0013】
上記の基板加熱装置において、前記ガラスの熱膨張係数は、0℃以上750℃以下の範囲において15×10-7/K以下であってもよい。
この構成によれば、ガラスの熱膨張係数が0℃以上750℃以下の範囲において15×10-7/Kを超える場合と比較して、ガラスの寸法変化が小さいため、ガラスを支持しやすい。例えば、ガラスを支持部材で挟むことにより支持する場合には、ガラスと支持部材との擦れによる異物の発生を抑制することができる。
【0014】
上記の基板加熱装置において、前記基板加熱部は、前記チャンバの天板に支持された赤外線ヒータを含み、前記ガラスは、前記天板と前記赤外線ヒータとの間に配置されていてもよい。
この構成によれば、ガラスを基板と赤外線ヒータとの間に配置した場合と比較して、赤外線ヒータから基板へ向かう赤外線がガラスで遮られにくいため(赤外線が基板へ直接向かいやすいため)、基板の加熱を促進しやすい。ところで、オーブンで熱風を循環させて基板を加熱する方式であると、熱風の循環によって基板の収容空間に異物が巻き上げられる可能性がある。これに対し、この構成によれば、基板の収容空間の雰囲気を減圧した状態で基板を加熱することができるため、基板の収容空間に異物が巻き上げられるリスクを低減することができる。したがって、チャンバの内面又は基板に異物が付着することを抑制する上で好適である。
【0015】
上記の基板加熱装置において、前記チャンバの上部には、前記ガラスを前記チャンバへ取り付ける取付部が設けられ、平面視で、前記取付部は、前記基板を避けた位置に配置されていてもよい。
この構成によれば、平面視で取付部を基板と重なる位置に配置した場合と比較して、ガラスと取付部との擦れにより異物が発生しても、異物が基板に落下することを抑制することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る基板処理システムは、上記の基板加熱装置を含むことを特徴とする。
この構成によれば、基板処理システムにおいて、基板の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することが可能な基板加熱装置および基板処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態に係る基板加熱装置の斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る基板加熱装置における加熱ユニット、断熱部材、カバー部材およびガラス構造体の断面を含む図である。
【
図3】ホットプレート及びその周辺構造を示す側面図である。
【
図5】搬送ローラ、基板及びホットプレートの配置関係を説明するための図である。
【
図7】ホットプレートと赤外線反射部との着脱構造を示す斜視図である。
【
図8】
図3において赤外線反射部を取り外した状態を示す側面図である。
【
図10】ホットプレートにおける加熱制御の一例を説明するための図である。
【
図11】第一実施形態に係る基板加熱装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図12】
図11に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
【
図13】
図12に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
【
図14】第一実施形態に係るガラス天板の取付部と基板との配置関係を説明するための図である。
【
図15】第一実施形態に係るガラス周壁およびガラス底板の配置構造を説明するための図である。
【
図16】第二実施形態に係る基板加熱装置における加熱ユニット、断熱部材、カバー部材およびガラス構造体の断面を含む図である。
【
図17】第二実施形態に係る基板加熱装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図18】
図17に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
【
図19】
図18に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX方向、水平面内においてX方向と直交する方向をY方向、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ方向とする。
【0020】
(第一実施形態)
<基板加熱装置>
図1は、第一実施形態に係る基板加熱装置1の斜視図である。
図1に示すように、基板加熱装置1は、チャンバ2、基板搬出入部24、圧力調整部3、ガス供給部4、ガス拡散部60(
図2参照)、ホットプレート5、赤外線ヒータ6、位置調整部7、搬送部8、温度検知部9、圧力検知部14、気体液化回収部11、赤外線反射部30、加熱ユニット80、断熱部材26、カバー部材27、ガラス構造体90及び制御部15を備えている。制御部15は、基板加熱装置1の構成要素を統括制御する。
図1においては、チャンバ2の一部(天板21の一部を除く部分)、基板搬出入部24及びガス供給部4を二点鎖線で示している。
【0021】
<チャンバ>
チャンバ2は、基板10、ホットプレート5、赤外線ヒータ6及びガラス構造体90を収容可能である。チャンバ2の内部には、基板10を収容可能な収容空間2Sが形成されている。基板10、ホットプレート5及び赤外線ヒータ6は、共通のチャンバ2に収容されている。チャンバ2は、直方体の箱状に形成されている。具体的に、チャンバ2は、矩形板状の天板21と、天板21と対向する矩形板状の底板22と、天板21及び底板22の外周縁に繋がる矩形枠状の周壁23とによって形成されている。例えば、周壁23の-X方向側には、チャンバ2に対して基板10の搬入及び搬出をするための基板搬出入口23aが設けられている。
【0022】
チャンバ2は、基板10を密閉空間で収容可能に構成されている。例えば、天板21、底板22及び周壁23の各接続部を溶接等で隙間なく結合することで、チャンバ2内の気密性を向上することができる。
【0023】
チャンバ2の内面は、赤外線ヒータ6からの赤外線を反射するチャンバ側反射面2a(
図2参照)とされている。例えば、チャンバ2の内面は、ステンレス鋼等の金属による鏡面(反射面)とされている。これにより、チャンバ2の内面が赤外線を吸収可能とされている場合と比較して、チャンバ2内の温度均一性を高めることができる。なお、チャンバ2の内面は、アルミニウムによる鏡面とされていてもよい。
【0024】
チャンバ側反射面2aは、チャンバ2の内面全体に設けられている。チャンバ側反射面2aは、鏡面仕上げを施されている。具体的に、チャンバ側反射面2aの表面粗さ(Ra)は、0.01μm程度、Rmax0.1μm程度とされている。なお、チャンバ側反射面2aの表面粗さ(Ra)は、東京精密社製の測定機器(サーフコム1500SD2)で測定している。
【0025】
<基板搬出入部>
基板搬出入部24は、周壁23の-X方向側に設けられている。基板搬出入部24は、収容空間2Sに基板10を搬入可能とするとともに、収容空間2Sから基板10を排出可能とする。例えば、基板搬出入部24は、基板搬出入口23aを開閉可能に移動可能とされている。例えば、基板搬出入部24は、基板搬出入口23aを開閉可能なシャッターである。具体的に、基板搬出入部24は、周壁23に沿う方向(Z方向又はY方向)に移動可能とされている。
【0026】
<圧力調整部>
圧力調整部3は、チャンバ2内の圧力を調整可能である。圧力調整部3は、チャンバ2に接続された真空配管3aを含む。真空配管3aは、Z方向に延在する円筒状の配管である。例えば、真空配管3aは、X方向に間隔をあけて複数配置されている。
図1においては、1つの真空配管3aのみを示している。なお、真空配管3aの設置数は限定されない。
【0027】
図1に示す真空配管3aは、底板22の-X方向側の基板搬出入口23a寄りの部分に接続されている。なお、真空配管3aの接続部位は、底板22の-X方向側の基板搬出入口23a寄りの部分に限定されない。真空配管3aは、チャンバ2に接続されていればよい。
【0028】
例えば、圧力調整部3は、ポンプ機構等の圧力調整機構を備えている。圧力調整機構は、真空ポンプ13を備えている。真空ポンプ13は、真空配管3aにおいてチャンバ2との接続部(上端部)とは反対側の部分(下端部)から延びるラインに接続されている。
【0029】
圧力調整部3は、ポリイミド膜(ポリイミド)を形成するための溶液(以下「ポリイミド形成用液」という。)が塗布された基板10の収容空間2Sの雰囲気の圧力を調整可能である。例えば、ポリイミド形成用液は、ポリアミック酸又はポリイミドパウダーを含む。ポリイミド形成用液は、矩形板状をなす基板10の第一面10a(上面)にのみ塗布されている。
なお、基板10への塗布物(被処理物)は、ポリイミド形成用液に限定されず、基板10に所定の膜を形成するためのものであればよい。
【0030】
また、圧力調整部3は、収容空間2Sの雰囲気の圧力を調整可能とするものであるが、別途、この圧力調整部3内には、収容空間2Sに窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスを供給する機構(以下「不活性ガス供給機構」ともいう。)が設けられていてもよい。これにより、収容空間2Sを所望の圧力条件とするよう調整することができる。後述する基板加熱方法における、収容工程、基板加熱工程、およびチャンバ加熱工程の各工程において、このような圧力条件の調整が行われてもよい。
また、後述するガス供給部4のように、圧力調整部3とは別に不活性ガス供給機構が設けられていてもよい。
【0031】
<ガス供給部>
ガス供給部4は、チャンバ2の内部雰囲気の状態を調整可能である。ガス供給部4は、チャンバ2に接続されたガス供給配管4aを含む。ガス供給配管4aは、X方向に延在する円筒状の配管である。ガス供給配管4aは、周壁23の+X方向側の天板21寄りの部分に接続されている。なお、ガス供給配管4aの接続部位は、周壁23の+X方向側の天板21寄りの部分に限定されない。ガス供給配管4aは、チャンバ2に接続されていればよい。
【0032】
ガス供給部4は、収容空間2Sに不活性ガスを供給することによって収容空間2Sの状態を調整可能である。ガス供給部4は、窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスをチャンバ2内へ供給する。なお、ガス供給部4は、基板降温時にガスを供給することで、前記ガスを基板冷却に使用してもよい。
【0033】
ガス供給部4により、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を調整することができる。チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度(質量基準)は、低いほど好ましい。具体的には、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を、100ppm以下とすることが好ましく、20ppm以下とすることがより好ましい。
例えば、後述のように、基板10に塗布されたポリイミド形成用液を硬化するときの雰囲気において、このように酸素濃度を好ましい上限以下とすることにより、ポリイミド形成用液の硬化を進行しやすくすることができる。
【0034】
<ガス拡散部>
図2に示すように、ガス供給配管4aの-X方向側は、チャンバ2内に突出している。ガス拡散部60は、チャンバ2内におけるガス供給配管4aの突出端に接続されている。ガス拡散部60は、チャンバ2内において天板21寄りの部分に配置されている。ガス拡散部60は、チャンバ2内において赤外線ヒータ6と搬送部8との間に配置されている。ガス拡散部60は、ガス供給配管4aから供給される不活性ガスを基板10に向けて拡散する。
【0035】
ガス拡散部60は、X方向に延在する円筒状の拡散管61と、拡散管61の-X方向端を閉塞する蓋部62と、拡散管61の+X方向端とガス供給配管4aの-X方向端(突出端)とを連結する連結部63と、を備えている。拡散管61の外径は、ガス供給配管4aの外径よりも大きい。拡散管61の-Z方向側(下側)には、複数の細孔(不図示)が形成されている。すなわち、拡散管61の下部は、ポーラス状(多孔質体)とされている。ガス供給配管4aの内部空間は、連結部63を介して拡散管61内に連通している。
【0036】
ガス供給配管4aから供給される不活性ガスは、連結部63を介して拡散管61内に入り込む。拡散管61内に入り込んだ不活性ガスは、拡散管61の下部に形成された複数の細孔を通過して下方に拡散される。すなわち、ガス供給配管4aから供給される不活性ガスは、拡散管61を通過することにより、基板10に向けて拡散される。
【0037】
<ホットプレート(第一加熱部)>
図1に示すように、ホットプレート5は、チャンバ2内の下方に配置されている。ホットプレート5は、基板10の一方面側に配置されるとともに、基板10を加熱可能な基板加熱部である。ホットプレート5は、基板10を第一の温度で加熱可能である。ホットプレート5は、基板10を段階的に加熱可能である。例えば、第一の温度を含む温度範囲は、20℃以上かつ300℃以下の範囲である。ホットプレート5は、基板10の第一面10aとは反対側の第二面10b(下面)の側に配置されている。ホットプレート5は、チャンバ2の底板22の側に配置されている。
【0038】
ホットプレート5は、矩形板状をなしている。ホットプレート5は、赤外線反射部30を下方から支持可能である。
【0039】
図3は、ホットプレート5及びその周辺構造を示す側面図である。
図3に示すように、ホットプレート5は、加熱源であるヒータ5bと、ヒータ5bを覆うベースプレート5cと、を備えている。
ヒータ5bは、XY平面に平行な面状発熱体である。
ベースプレート5cは、ヒータ5bを上方から覆うアッパープレート5dと、ヒータ5bを下方から覆うロアプレート5eと、を備えている。アッパープレート5d及びロアプレート5eは、矩形板状をなしている。アッパープレート5dの厚みは、ロアプレート5eの厚みよりも厚くなっている。
【0040】
なお、
図3において、符号18はホットプレート5におけるヒータの温度を検知可能なヒータ温度検知部、符号19はホットプレート5におけるアッパープレート5dの温度を検知可能なプレート温度検知部をそれぞれ示す。例えば、ヒータ温度検知部18及びプレート温度検知部19は、熱電対等の接触式温度センサである。
【0041】
図4は、ホットプレート5の上面図である。
図4に示すように、ホットプレート5(すなわち、アッパープレート5d)は、赤外線反射部30(
図3参照)を載置可能な載置面5a(上面)を備えている。載置面5aは、赤外線反射部30の裏面に沿う平坦面をなしている。載置面5aは、アルマイト処理を施されている。載置面5aは、載置面5aの面内で区画された複数(例えば、本実施形態では4つ)の載置領域A1,A2,A3,A4を含んでいる。載置領域A1,A2,A3,A4は、平面視でX方向に長手を有する長方形形状をなしている。なお、載置領域A1,A2,A3,A4の数は4つに限定されず、適宜変更することができる。
【0042】
<赤外線ヒータ(第二加熱部)>
図1に示すように、赤外線ヒータ6は、チャンバ2内の上方に配置されている。赤外線ヒータ6は、基板10を赤外線によって加熱可能である。赤外線ヒータ6は、基板10の他方面側に配置されるとともに、基板10を加熱可能な基板加熱部である。赤外線ヒータ6は、第一の温度よりも高い第二の温度で基板10を加熱可能である。赤外線ヒータ6は、ホットプレート5とは別個独立して設けられている。赤外線ヒータ6は、基板10を段階的に加熱可能である。例えば、第二の温度を含む温度範囲は、200℃以上かつ600℃以下の範囲である。赤外線ヒータ6は、基板10の第一面10aの側に配置されている。赤外線ヒータ6は、チャンバ2の天板21の側に配置されている。
【0043】
赤外線ヒータ6は、天板21に支持されている。赤外線ヒータ6と天板21との間には、赤外線ヒータ6の支持部材(不図示)が設けられている。赤外線ヒータ6は、チャンバ2内の天板21寄りで定位置に固定されている。例えば、赤外線ヒータ6のピーク波長範囲は、1.0μm以上かつ4μm以下の範囲である。なお、赤外線ヒータ6のピーク波長範囲は、上記範囲に限らず、要求仕様に応じて種々の範囲に設定することができる。
【0044】
赤外線ヒータ6の昇温レートは、ホットプレート5の昇温レートよりも大きい。
例えば、ホットプレート5の昇温レートは、0.2℃/sec程度である。
例えば、赤外線ヒータ6の昇温レートは、4℃/sec程度である。
【0045】
赤外線ヒータ6の降温レートは、ホットプレート5の降温レートよりも大きい。
例えば、ホットプレート5の降温レートは、0.05℃/sec程度である。
例えば、赤外線ヒータ6の降温レートは、2℃/sec程度である。
【0046】
<位置調整部>
位置調整部7は、チャンバ2の下方に配置されている。位置調整部7は、ホットプレート5及び赤外線ヒータ6と基板10との相対位置を調整可能である。位置調整部7は、移動部7aと駆動部7bとを備える。移動部7aは、上下(Z方向)に延びる柱状の部材である。移動部7aの上端は、ホットプレート5の下面に固定されている。駆動部7bは、移動部7aを上下に移動可能とする。移動部7aは、基板10をホットプレート5と赤外線ヒータ6との間で移動可能とする。具体的に、移動部7aは、基板10が赤外線反射部30に支持された状態で、駆動部7bの駆動によって、基板10を上下に移動させる(
図12及び
図13参照)。
【0047】
駆動部7bは、チャンバ2の外部に配置されている。そのため、仮に駆動部7bの駆動に伴いパーティクルが発生したとしても、チャンバ2内を密閉空間とすることによって、チャンバ2内へのパーティクルの侵入を回避することができる。
【0048】
<搬送部>
搬送部8は、チャンバ2内において、ホットプレート5と赤外線ヒータ6との間に配置されている。搬送部8は、基板10を搬送可能である。搬送部8には、移動部7aを通過可能とする通過部8hが形成されている。搬送部8は、基板10の搬送方向であるX方向に沿って配置された複数の搬送ローラ8aを備えている。
【0049】
複数の搬送ローラ8aは、周壁23の+Y方向側と-Y方向側とに離反して配置されている。すなわち、通過部8hは、周壁23の+Y方向側の搬送ローラ8aと、周壁23の-Y方向側の搬送ローラ8aとの間の空間である。
【0050】
例えば、周壁23の+Y方向側及び-Y方向側のそれぞれには、Y方向に延びる複数のシャフト(不図示)がX方向に沿って間隔をあけて配置されている。各搬送ローラ8aは、駆動機構(不図示)によって、各シャフトの回りに回転駆動されるようになっている。
【0051】
図5は、搬送ローラ8a、基板10及びホットプレート5の配置関係を説明するための図である。
図5は、基板加熱装置1(
図1参照)の上面図に相当する。便宜上、
図5においては、チャンバ2を二点鎖線で示す。
図5において、符号L1は、周壁23の+Y方向側の搬送ローラ8aと、周壁23の-Y方向側の搬送ローラ8aとが離反する間隔(以下「ローラ離反間隔」という。)である。また、符号L2は、基板10のY方向の長さ(以下「基板長さ」という。)である。また、符号L3は、ホットプレート5のY方向の長さ(以下「ホットプレート長さ」という。)である。なお、ホットプレート長さL3は、赤外線反射部30のY方向の長さと実質的に同じ長さである。
【0052】
図5に示すように、ローラ離反間隔L1は、基板長さL2よりも小さくかつホットプレート長さL3よりも大きい(L3<L1<L2)。ローラ離反間隔L1がホットプレート長さL3よりも大きいことによって、移動部7aは、ホットプレート5及び赤外線反射部30と共に通過部8hを通過できるようになっている(
図12及び
図13参照)。
【0053】
<温度検知部>
図1に示すように、温度検知部9は、チャンバ2外に配置されている。温度検知部9は、基板10の温度を検知可能である。具体的に、温度検知部9は、天板21の上部に設置されている。天板21には、不図示の窓が取り付けられている。温度検知部9は、天板21の窓越しに基板10の温度を検知する。例えば、温度検知部9は、放射温度計等の非接触温度センサである。なお、
図1では温度検知部9を1つのみ図示しているが、温度検知部9の数は1つに限らず、複数であってもよい。例えば、複数の温度検知部9を天板21の中央部及び四隅に配置することが好ましい。なお、温度検知部9は、チャンバ2内に配置されていてもよい。この場合、温度検知部9は、熱電対等の接触式温度センサであってもよい。
【0054】
<圧力検知部>
圧力検知部14は、収容空間2Sの圧力(以下「チャンバ内圧力」ともいう。)を検知可能である。例えば、圧力検知部14の本体部(センサ)は、チャンバ2内に配置されている。例えば、圧力検知部14の表示部(圧力表示器)は、チャンバ2外に配置されている。例えば、圧力検知部14は、デジタル圧力センサである。なお、
図1では圧力検知部14を1つのみ図示しているが、圧力検知部14の数は1つに限らず、複数であってもよい。
【0055】
<気体液化回収部>
気体液化回収部11は、圧力調整部3(真空ポンプ13)のラインに接続されている。気体液化回収部11は、圧力調整部3のラインにおいて真空ポンプ13よりも下流側に配置されている。気体液化回収部11は、真空配管3aを通る気体を液化するとともに、基板10に塗布されたポリイミド形成用液から揮発した溶媒を回収可能である。
【0056】
仮に、気体液化回収部11が圧力調整部3のラインにおいて真空ポンプ13よりも上流側に配置されている場合、上流側で液化した液体が次の減圧時に気化されることがあり、真空引き時間が遅延してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、気体液化回収部11が圧力調整部3のラインにおいて真空ポンプ13よりも下流側に配置されていることで、下流側で液化した液体は次の減圧時に気化されることがないため、真空引き時間が遅延することを回避することができる。
【0057】
<揺動部>
なお、基板加熱装置1は、基板10を揺動可能な揺動部(不図示)を更に備えていてもよい。例えば、揺動部は、基板10が加熱されている状態において、基板10をXY平面に沿う方向又はZ方向に沿う方向に揺動させる。これにより、基板10を揺動させつつ加熱することができるため、基板10の温度均一性を高めることができる。
例えば、揺動部は、位置調整部7に設けられていてもよい。なお、揺動部の配置位置は、限定されない。
【0058】
<赤外線反射部>
赤外線反射部30は、赤外線ヒータ6からホットプレート5に向かう赤外線を反射するホットプレート側反射面30aを備えている。ホットプレート側反射面30aは、ホットプレート5と赤外線ヒータ6との間に配置されている。
【0059】
ホットプレート側反射面30aは、鏡面仕上げを施されている。具体的に、ホットプレート側反射面30aの表面粗さ(Ra)は、0.01μm程度、Rmax0.1μm程度とされている。なお、ホットプレート側反射面30aの表面粗さ(Ra)は、東京精密社製の測定機器(サーフコム1500SD2)で測定している。
【0060】
図6は、赤外線反射部30の上面図である。
図6に示すように、ホットプレート側反射面30aには、基板10を支持可能な複数(例えば、本実施形態では80個)の基板支持凸部35(
図1では図示略)が設けられている。なお、基板支持凸部35の数は80個に限定されず、適宜変更することができる。
【0061】
基板支持凸部35は、円柱状のピンである。なお、基板支持凸部35は、円柱状に限定されない。例えば、基板支持凸部35は、セラミックボール等の球状体であってもよい。また、基板支持凸部35は、角柱状であってもよく、適宜変更することができる。
【0062】
複数の基板支持凸部35は、ホットプレート側反射面30aの面内においてX方向及びY方向に一定の間隔をあけて配置されている。例えば、基板支持凸部35の配置間隔は、50mm程度とされている。例えば、基板支持凸部35の高さは、0.1mm程度とされている。例えば、基板支持凸部35の高さは、0.05mm~3mmの範囲で調整可能である。なお、基板支持凸部35の配置間隔、基板支持凸部35の高さは上記寸法に限定されず、ホットプレート側反射面30aと基板10との間に隙間を形成した状態で基板10を支持可能な範囲において適宜変更することができる。
【0063】
赤外線反射部30は、複数(例えば、本実施形態では4つ)の載置領域A1,A2,A3,A4(
図3参照)ごとに分割された複数(例えば、本実施形態では4つ)の赤外線反射板31,32,33,34を備えている。なお、赤外線反射板31,32,33,34の数は4つに限定されず、適宜変更することができる。例えば、赤外線反射板は1枚のみであってもよい。
【0064】
複数の赤外線反射板31,32,33,34は、互いに実質的に同じ大きさとされている。これにより、各載置領域A1,A2,A3,A4(
図3参照)において載置する赤外線反射板31,32,33,34を共用することができる。なお、赤外線反射板31,32,33,34の大きさは、互いに異ならせてもよく、適宜変更することができる。
【0065】
赤外線反射板31,32,33,34は、X方向に長手を有する長方形板状をなしている。1つの赤外線反射板31,32,33,34には、5行4列(すなわち、X方向に5個かつY方向に4個)の計20個の基板支持凸部35が配置されている。
【0066】
隣り合う2つの赤外線反射板31,32,33,34は、間隔S1,S2をあけて配置されている。間隔S1は、隣り合う2つの赤外線反射板31,32,33,34の熱膨張を許容しうる大きさとされている。具体的に、X方向に隣り合う2つの赤外線反射板31,32,33,34の間隔S1は、X方向への赤外線反射板31,32,33,34の膨張を吸収可能な大きさとされている。Y方向に隣り合う2つの赤外線反射板31,32,33,34の間隔S2は、Y方向への赤外線反射板31,32,33,34の膨張を吸収可能な大きさとされている。
【0067】
なお、赤外線反射板31,32,33,34の配置構造は上記に限らない。例えば、赤外線反射板31,32,33,34を側面から付勢部材で押し付けて固定してもよい。例えば、付勢部材としては、赤外線反射板31,32,33,34の膨張を吸収可能に伸縮するバネを用いることができる。
また、赤外線反射部30をG6サイズ(縦150cm×横185cm)以上の1枚の板部材とした場合には、前記板部材を側面からバネ等の付勢部材で押し付けて固定してもよい。ところで、前記板部材がG6サイズ以上であると、前記板部材1枚でもかなりの重量がある。しかし、前記板部材を側面からバネ等の付勢部材で押し付けて固定することによって、前記板部材を容易に固定することができる。
【0068】
<ホットプレートと赤外線反射部との着脱構造>
図7は、ホットプレート5と赤外線反射部30との着脱構造40を示す斜視図である。
図8は、
図3において赤外線反射部30を取り外した状態を示す側面図である。なお、
図7では、第一載置領域A1及び第二載置領域A2にそれぞれ第一赤外線反射板31及び第二赤外線反射板32が配置されており、第三載置領域A3に第三赤外線反射板33を載置しようとする状態を示している。
【0069】
図7に示すように、ホットプレート5と赤外線反射部30(
図6参照)との間には、赤外線反射部30をホットプレート5に着脱可能とする着脱構造40が設けられている。
着脱構造40は、載置面5aから突出する突出部41と、赤外線反射部30に形成されるとともに突出部41が挿し込まれる挿込部42と、を備えている。
【0070】
突出部41は、載置領域A1,A2,A3,A4におけるY方向中央に配置されている。突出部41は、第一凸部41aと、載置面5aの面内で第一凸部41aからX方向に離反する第二凸部41bと、を備えている。
【0071】
第一凸部41a及び第二凸部41bは、1つの載置領域A1,A2,A3,A4につき1つずつ配置されている。第一凸部41aは、載置領域A1,A2,A3,A4における-X方向側に配置されている。第二凸部41bは、載置領域A1,A2,A3,A4における+X方向側に配置されている。
図8に示すように、第一凸部41a及び第二凸部41bは、実質的に同じ高さとなっている。
【0072】
第一凸部41a及び第二凸部41bは、円柱状のピンである。なお、第一凸部41a及び第二凸部41bは、円柱状に限定されない。例えば、第一凸部41a及び第二凸部41bは、角柱状であってもよく、適宜変更することができる。
【0073】
図7に示すように、挿込部42は、赤外線反射板31,32,33,34における短手方向中央(すなわち、赤外線反射板31,32,33,34を載置面5aへ載置したときのY方向中央)に配置されている。挿込部42は、第一凸部41aが挿し込まれる第一凹部42aと、少なくとも第一凸部41aと第二凸部41bとの離反方向(X方向)への赤外線反射部30の膨張又は収縮を許容するように第二凸部41bが挿し込まれる第二凹部42bと、を備えている。
【0074】
第一凹部42a及び第二凹部42bは、1つの赤外線反射板31,32,33,34につき1つずつ配置されている。第一凹部42aは、赤外線反射板31,32,33,34における長手方向一方側(すなわち、赤外線反射板を載置面5aへ載置したときの-X方向側)に配置されている。第二凹部42bは、赤外線反射板31,32,33,34における長手方向他方側(すなわち、赤外線反射板31,32,33,34を載置面5aへ載置したときの+X方向側)に配置されている。
【0075】
第一凹部42aは、前記ピンが着脱可能に挿し込まれるように赤外線反射板31,32,33,34の厚み方向に窪む凹部である。第一凹部42aは、第一凸部41aの外形と実質的に同じ内形を有している。第一凹部42aは、平面視円形状をなしている。なお、第一凹部42aは、平面視円形状に限定されない。例えば、第一凹部42aは、平面視矩形状であってもよく、前記ピンの形状に合わせて適宜変更することができる。
【0076】
第二凹部42bは、前記ピンが着脱可能に挿し込まれるように赤外線反射板31,32,33,34の厚み方向に窪む凹部である。第二凹部42bは、第二凸部41bのX方向における外形よりも大きい内形を有し、かつ第二凸部41bのY方向における外形と実質的に同じ内形を有している。第二凹部42bは、平面視でX方向に長手を有する長円形状をなしている。なお、第二凹部42bは、平面視でX方向に長手を有する形状に限定されない。例えば、第二凹部42bは、平面視でX方向に長手を有する長方形形状であってもよく、前記ピンの形状に合わせて適宜変更することができる。
【0077】
なお、着脱構造40は、載置面5aから突出する突出部41と、赤外線反射部30に形成されるとともに突出部41が挿し込まれる挿込部42と、を備えていることに限らない。例えば、着脱構造は、赤外線反射部30の下面から突出する凸部と、載置面5aに形成されるとともに前記凸部が挿し込まれる凹部と、を備えていてもよい。
【0078】
<冷却機構>
図3に示すように、基板加熱装置1は、ホットプレート5を冷却可能な冷却機構50を更に備えている。
図9は、冷却機構50を示す上面図である。なお、
図9においては、便宜上、突出部41等の図示を省略している。
図9に示すように、冷却機構50は、ホットプレート5の内部に配置されるとともに、冷媒を通過可能とする冷媒通過部51を備えている。例えば、冷媒は、空気である。なお、冷媒は、空気等の気体に限定されない。例えば、冷媒は、水等の液体であってもよい。
【0079】
冷媒通過部51は、載置面5aと平行な一方向に延びるとともに、載置面5aと平行でかつ前記一方向と交差する方向に並ぶ複数(例えば、本実施形態では7本)の冷却通路51a,51bを備えている。すなわち、冷媒通過部51は、X方向に延びるとともにY方向に並ぶ複数の冷却通路51a,51bを備えている。
【0080】
複数の冷却通路51a,51bは、冷媒をホットプレート5の一端側から他端側に通過させる複数(例えば、本実施形態では4本)の第一冷却通路51aと、冷媒をホットプレート5の他端側から一端側に通過させる複数(例えば、本実施形態では3本)の第二冷却通路51bと、である。すなわち、第一冷却通路51aを通る冷媒は、ホットプレート5の-X方向側から+X方向側に向けて流れる。第二冷却通路51bを通る冷媒は、ホットプレート5の+X方向側から-X方向側に向けて流れる。
【0081】
第一冷却通路51aと第二冷却通路51bとは、載置面5aと平行でかつ前記第一方向と交差する方向に1つずつ交互に配置されている。すなわち、第一冷却通路51aと第二冷却通路51bとは、Y方向に1つずつ交互に配置されている。
【0082】
冷媒通過部51は、ホットプレート5の一端側と他端側とにおいて複数の冷却通路51a,51bに連結される冷却マニホールド52,53を更に備えている。冷却マニホールド52,53は、ホットプレート5の-X方向側において複数の冷却通路51a,51bに連結される第一マニホールド52と、ホットプレート5の+X方向側において複数の冷却通路51a,51bに連結される第二マニホールド53と、を備えている。
【0083】
第一マニホールド52は、複数の第一冷却通路51aの上流端(-X方向端)を連結するようにY方向に延びる第一上流連結路52aと、複数の第二冷却通路51bの下流端(-X方向端)を連結するようにY方向に延びる第二下流連結路52bと、を備えている。第一マニホールド52には、第一上流連結路52aに接続された第一上流配管54aと、第二下流連結路52bに接続された第二下流配管54bと、を備えた第一配管部54が設けられている。
【0084】
第二マニホールド53は、複数の第一冷却通路51aの下流端を連結するようにY方向に延びる第一下流連結路53aと、複数の第二冷却通路51bの上流端を連結するようにY方向に延びる第二上流連結路53bと、を備えている。第二マニホールド53には、第一下流連結路53aに接続された第一下流配管55aと、第二上流連結路53bに接続された第二上流配管55bと、を備えた第二配管部55が設けられている。
【0085】
例えば、第一上流配管54aの内部空間には、不図示の送風機によって空気が導入されるようになっている。これにより、送風機からの空気は、第一上流配管54a、第一上流連結路52aを経て複数の第一冷却通路51aをそれぞれ+X方向側に向けて流れた後、第一下流連結路53a、第一下流配管55aを経て外部に排出されるようになっている。
一方、第二上流配管55bの内部空間には、不図示の送風機によって空気が導入されるようになっている。これにより、送風機からの空気は、第二上流配管55b、第二上流連結路53bを経て複数の第二冷却通路51bをそれぞれ-X方向側に向けて流れた後、第二下流連結路52b、第二下流配管54bを経て外部に排出されるようになっている。
なお、空気の導入は、送風機に限らず、ドライエアーによる圧縮空気で行ってもよい。
図3及び
図8においては、第二下流連結路52b及び第二上流連結路53bなどの図示を省略している。
【0086】
<補助加熱部>
基板加熱装置1は、冷却マニホールド52,53を選択的に加熱可能な補助加熱部を更に備えている。
図10は、ホットプレート5における加熱制御の一例を説明するための図である。
図10に示すように、ホットプレート5には、複数(例えは、本実施形態では3つ)の加熱領域H1,H2,H3が配置されている。具体的に、ホットプレート5のX方向中央部には、平面視で正方形状をなす第一加熱領域H1が配置されている。ホットプレート5の-X方向側であって第一マニホールド52寄りには、平面視でY方向に長手を有する長方形形状をなす第二加熱領域H2が配置されている。ホットプレート5の+X方向側であって第二マニホールド53寄りには、第二加熱領域H2と実質的に同じ形状を有する第三加熱領域H3が配置されている。なお、加熱領域H1,H2,H3の数は、3つに限定されず、適宜変更することができる。
【0087】
ホットプレート5は、第一加熱領域H1、第二加熱領域H2及び第三加熱領域H3の少なくとも一つを選択的に加熱可能となっている。制御部15(
図1参照)は、ホットプレート5を制御して、第一加熱領域H1、第二加熱領域H2及び第三加熱領域H3の少なくとも一つを選択的に加熱させる。例えば、冷却マニホールド52,53付近が降温しそうな場合には、制御部15は、ホットプレート5を制御して、第一マニホールド52及び第二マニホールド53の少なくとも一つの近傍(すなわち、ホットプレート5における第二加熱領域H2及び第三加熱領域H3の少なくとも一つ)を選択的に加熱させる。ホットプレート5における第二加熱領域H2及び第三加熱領域H3は、補助加熱部として機能する。
【0088】
なお、補助加熱部として機能する領域は、第二加熱領域H2及び第三加熱領域H3であることに限定されない。例えば、補助加熱部は、ホットプレート5とは別体のヒータであってもよい。また、補助加熱部は、前記領域と前記ヒータとの組み合わせであってもよく、適宜変更することができる。
【0089】
<加熱ユニット>
図2に示すように、加熱ユニット80は、チャンバ加熱部81、真空配管加熱部82、ガス供給配管加熱部83及び基板搬出入部加熱部84を備えている。例えば、加熱ユニット80は、各構成要素の加熱部材として、可撓性を有する面状発熱体を含む。例えば、面状発熱体は、ラバーヒーターである。なお、加熱部材は、ラバーヒーターに限らず、ホットプレートであってもよいし、ラバーヒーターとホットプレートの組み合わせであってもよく、適宜変更することができる。
【0090】
加熱ユニット80は、チャンバ加熱部81、真空配管加熱部82、ガス供給配管加熱部83及び基板搬出入部加熱部84の少なくとも一つを選択的に加熱可能となっている。制御部15(
図1参照)は、加熱ユニット80を制御して、チャンバ加熱部81、真空配管加熱部82、ガス供給配管加熱部83及び基板搬出入部加熱部84の少なくとも一つを選択的に加熱させる。例えば、真空配管3aの内面が降温しそうな場合には、制御部15は、加熱ユニット80を制御して、真空配管加熱部82を選択的に加熱させる。
【0091】
<チャンバ加熱部>
チャンバ加熱部81は、チャンバ2の内面の少なくとも一部を加熱可能である。実施形態において、チャンバ加熱部81は、チャンバ2の周壁23にのみ配置されている。チャンバ加熱部81は、チャンバ2の周壁23の外面に沿う面状発熱体である。実施形態において、チャンバ加熱部81は、チャンバ2の周壁23の外面全体を覆っている。例えば、チャンバ加熱部81をチャンバ2の周壁23の外面全体に被覆させた状態でチャンバ2の周壁23を加熱することによって、チャンバ2の周壁23の内面の温度の面内均一性を高めることができる。
【0092】
例えば、チャンバ加熱部81は、チャンバ2の周壁23の内面の温度が40℃以上かつ150℃以下の範囲になるよう加熱可能である。基板10にポリイミド形成用液が塗布されている場合において、チャンバ2の周壁23の内面に昇華物が付着することを抑制する観点からは、チャンバ2の周壁23の内面の温度を75℃以上かつ105℃以下の範囲に設定することが好ましく、90℃に設定することが特に好ましい。なお、チャンバ2の周壁23の内面の温度は、上記範囲に限らず、チャンバ2の収容空間2S中のヒュームがチャンバ2の周壁23の内面で冷却されて昇華物となることを抑制し得る範囲で設定されればよい。
【0093】
<真空配管加熱部>
真空配管加熱部82は、真空配管3aの内面の少なくとも一部を加熱可能である。実施形態において、真空配管加熱部82は、真空配管3aの外面に沿う面状発熱体である。実施形態において、真空配管加熱部82は、真空配管3aの外面全体を覆っている。例えば、真空配管加熱部82を真空配管3aの外面全体に被覆させた状態で真空配管3aを加熱することによって、真空配管3aの内面の温度の面内均一性を高めることができる。
【0094】
<ガス供給配管加熱部>
ガス供給配管加熱部83は、ガス供給配管4aの内面の少なくとも一部を加熱可能である。実施形態において、ガス供給配管加熱部83は、ガス供給配管4aの外面に沿う面状発熱体である。実施形態において、ガス供給配管加熱部83は、ガス供給配管4aの外面全体を覆っている。例えば、ガス供給配管加熱部83をガス供給配管4aの外面全体に被覆させた状態でガス供給配管4aを加熱することによって、ガス供給配管4aの内面の温度の面内均一性を高めることができる。
【0095】
<基板搬出入部加熱部>
基板搬出入部加熱部84は、基板搬出入部24の少なくとも一部を加熱可能である。実施形態において、基板搬出入部加熱部84は、基板搬出入部24の外面に沿う面状発熱体である。実施形態において、基板搬出入部加熱部84は、基板搬出入部24の外面全体を覆っている。
【0096】
<断熱部材>
断熱部材26は、チャンバ加熱部81の少なくとも一部をチャンバ2の外方から覆っている。実施形態において、断熱部材26は、チャンバ断熱部材26a、真空配管断熱部材26b、ガス供給配管断熱部材26c及び基板搬出入部断熱部材26dを備えている。例えば、断熱部材26は、各構成要素の加熱部を覆う断熱材を含む。例えば、断熱材は、発泡系断熱材である。なお、断熱材は、発泡系断熱材に限らず、繊維系断熱材であってもよいし、複数層の板ガラスの隙間に空気を介在させた構造であってもよく、適宜変更することができる。
【0097】
実施形態において、チャンバ断熱部材26aは、チャンバ加熱部81の外面全体を覆っている。真空配管断熱部材26bは、真空配管加熱部82の外面全体を覆っている。ガス供給配管断熱部材26cは、ガス供給配管加熱部83の外面全体を覆っている。基板搬出入部断熱部材26dは、基板搬出入部加熱部84の外面全体を覆っている。
【0098】
<カバー部材>
カバー部材27は、断熱部材26の少なくとも一部をチャンバ2の外方から覆っている。実施形態において、カバー部材27は、チャンバカバー部材27a、真空配管カバー部材27b、ガス供給配管カバー部材27c及び基板搬出入部カバー部材27dを備えている。例えば、カバー部材27は、各構成要素の断熱部材を覆う保護材を含む。例えば、保護材は、金属製である。なお、保護材は、金属製に限らず、樹脂製であってもよく、適宜変更することができる。
【0099】
実施形態において、チャンバカバー部材27aは、チャンバ断熱部材26aの外面全体を覆っている。真空配管カバー部材27bは、真空配管断熱部材26bの外面全体を覆っている。ガス供給配管カバー部材27cは、ガス供給配管断熱部材26cの外面全体を覆っている。基板搬出入部カバー部材27dは、基板搬出入部断熱部材26dの外面全体を覆っている。
【0100】
<ガラス構造体>
図2に示すように、ガラス構造体90(ガラス)は、ガラス天板91、ガラス底板92及びガラス周壁93を備えている。ガラス構造体90は、チャンバ2の天板21、底板22及び周壁23のそれぞれに臨むように設けられている。例えば、ガラス構造体は、ネオセラムで形成されている。なお、ガラス構造体90は、ネオセラムに限らず、石英ガラスで形成されていてもよい。また、ガラス構造体90は、ネオセラムと石英ガラスとの組み合わせで形成されていてもよく、適宜変更することができる。
【0101】
例えば、ガラス構造体90の石英の含有量は、50%以上である。ガラスは、石英の含有量が多いほど(100%に近づくほど)、耐熱温度が向上する。ガラス構造体90の耐熱温度を向上する観点からは、石英の含有量を70%以上とすることが好ましく、90%以上とすることが更に好ましい。なお、ガラス構造体90の石英の含有量は、上記範囲に限らず、基板10の加熱温度を広い範囲で設定することができ、基板10の加熱温度が制限されにくくなるように設定されればよい。
【0102】
例えば、ガラス構造体90の赤外線の吸収率は、近赤外線波長領域(1μm以上2.5μm未満)で30%以上であり、遠赤外線波長領域(2.5μm以上5μm以下)で90%以上である。ガラスは、赤外線の吸収率が高いほど(100%に近づくほど)、赤外線の吸収によるガラスの加熱が促進される。ガラス構造体90の加熱を促進する観点からは、近赤外線の吸収率を50%以上とすることが好ましく、70%以上とすることが更に好ましい。また、遠赤外線の吸収率を95%以上とすることが好ましい。なお、ガラス構造体90の赤外線の吸収率は、上記範囲に限らず、チャンバ2の収容空間2S中のヒュームがガラス構造体90の表面で冷却されて昇華物となることを抑制し得る範囲で設定されればよい。
【0103】
例えば、ガラス構造体90の厚さt1は、0.5mm以上10mm以下である。
図2においては、ガラス構造体90の厚さt1としてガラス天板91の厚さを示す。ガラス構造体90を構成するガラス天板91、ガラス底板92およびガラス周壁93は、それぞれ実質的に同じ厚さとされている。ガラスは、厚さが0.5mm未満の場合、赤外線を吸収しにくくなりガラスの加熱が促進されにくくなる。ガラスは、厚さが10mmを超えると、熱を伝えにくくなり割れやすくなる。そのため、加熱が促進されやすく且つ割れにくいガラス構造体90を得る観点からは、ガラス構造体90の厚さt1を1mm以上5mm以下の範囲に設定することが好ましく、3mmに設定することが特に好ましい。なお、ガラス構造体90の厚さt1は、上記範囲に限らず、ガラス構造体90への昇華物の付着を抑制し得る範囲で設定されればよい。
【0104】
例えば、ガラス構造体90の熱膨張係数は、0℃以上750℃以下の範囲において15×10-7/K以下である。ガラス構造体90の寸法変化を小さくする観点からは、ガラス構造体90の熱膨張係数を0℃以上750℃以下の範囲において10×10-7/K以下とすることが好ましく、5×10-7/K以下とすることが更に好ましい。なお、ガラス構造体90の熱膨張係数は、上記範囲に限らず、ガラス構造体90を支持し得る範囲で設定されればよい。
【0105】
<ガラス天板>
ガラス天板91は、基板10の第一面10a(溶液の塗布面)と、チャンバ2において第一面10aと対向する対向面21a(天板21の下面)との間に配置されている。ガラス天板91は、チャンバ2の天板21と赤外線ヒータ6との間に配置されている。ガラス天板91は、チャンバ2の天板21に支持されている。ガラス天板91と天板21との間には、ガラス天板91の支持部材(不図示)が設けられている。ガラス天板91は、チャンバ2内の天板21寄りで定位置に固定されている。
【0106】
ガラス天板91は、X方向に長手を有する長方形板状をなしている。ガラス天板91は、チャンバ2の周壁23と間隔G1をあけて配置されている。間隔G1は、ガラス天板91の熱膨張を許容しうる大きさとされている。具体的に、間隔G1は、X方向へのガラス天板91の膨張を吸収可能な大きさとされている。図示はしないが、Y方向におけるガラス天板91と周壁23との間隔は、Y方向へのガラス天板91の膨張を吸収可能な大きさとされている。
【0107】
<ガラス底板>
ガラス底板92は、チャンバ2の底板22の上面に配置されている。ガラス底板92は、底板22に支持されている。ガラス底板92は、不図示の支持部材によって底板22の上面の定位置に固定されている。
【0108】
ガラス底板92は、X方向に長手を有する長方形板状をなしている。ガラス底板92は、チャンバ2の周壁23と間隔G2をあけて配置されている。間隔G2は、ガラス底板92の熱膨張を許容しうる大きさとされている。具体的に、間隔G2は、X方向へのガラス底板92の膨張を吸収可能な大きさとされている。図示はしないが、Y方向におけるガラス底板92と周壁23との間隔は、Y方向へのガラス底板92の膨張を吸収可能な大きさとされている。
【0109】
<ガラス周壁>
ガラス周壁93は、チャンバ2の周壁23に臨む位置に配置されている。ガラス周壁93は、周壁23に支持されている。ガラス周壁93は、不図示の支持部材によって周壁23寄りで定位置に固定されている。
【0110】
ガラス周壁93は、周壁23と間隔G2をあけて配置されている。ガラス周壁93の下端は、ガラス底板92の外周縁に連結されている。ガラス周壁93は、ガラス底板92から上方に起立している。ガラス周壁93は、ガラス底板92の外形に沿う矩形枠状をなしている。ガラス周壁93の上部は、基板搬出入口23aを避ける外形とされている。
【0111】
<基板加熱方法>
次に、本実施形態に係る基板加熱方法を説明する。本実施形態では、上記の基板加熱装置1を用いて基板10を加熱する。基板加熱装置1の各部で行われる動作は、制御部15によって制御される。
【0112】
図11は、第一実施形態に係る基板加熱装置1の動作の一例を説明するための図である。
図12は、
図11に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置1の動作説明図である。
図13は、
図12に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置1の動作説明図である。
【0113】
便宜上、
図11~
図13においては、基板加熱装置1の構成要素のうち、基板搬出入部24、圧力調整部3、ガス供給部4、ガス拡散部60、温度検知部9、圧力検知部14、気体液化回収部11、冷却機構50、加熱ユニット80、断熱部材26、カバー部材27、ガラス構造体90及び制御部15の図示を省略する。
【0114】
本実施形態に係る基板加熱方法は、収容工程、基板加熱工程、およびチャンバ加熱工程を含む。
図11に示すように、収容工程では、ポリイミド形成用液を塗布した基板10をチャンバ2の内部の収容空間2Sに収容する。
【0115】
収容工程では、基板10を搬送ローラ8aに配置する。収容工程では、ホットプレート5は、底板22寄りに位置している。収容工程では、ホットプレート5及び基板10は、ホットプレート5の熱が基板10に伝わらない程度に離反している。収容工程では、ホットプレート5の電源はオンになっている。例えば、ホットプレート5の温度は、200℃程度になっている。収容工程では、赤外線ヒータ6の電源はオフになっている。
【0116】
収容工程の後、基板加熱工程に進む。基板加熱工程では、基板10の収容空間2Sの雰囲気の圧力を適切に制御しつつ、基板10を適切な温度で加熱する。基板加熱工程では、基板10の一方側に配置されているホットプレート5と基板10の他方側に配置されている赤外線ヒータ6とを用いて基板10を加熱する。
基板加熱工程は、第一加熱工程、第二加熱工程および第三加熱工程を含む。
【0117】
第一加熱工程では、基板10の収容空間2Sの雰囲気を1000Pa以上とする。例えば、第一加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を大気圧(1013hPa)とする。第一加熱工程では、ポリイミド膜の生成過程で昇華物の発生を抑えるよう、チャンバ内圧力を上昇させる。なお、第一加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1000Pa以上大気圧以下とすることもできるし、大気圧より大きくすることもできる。
【0118】
第一加熱工程では、ホットプレート5を用いて基板10を加熱する。
図12に示すように、第一加熱工程では、ホットプレート5を上方に移動させて、基板10を赤外線反射部30のホットプレート側反射面30aに載置させる。
【0119】
具体的に、基板10をホットプレート側反射面30aに設けられた基板支持凸部35(
図3参照)に支持させる。これにより、ホットプレート側反射面30aは基板10の第二面10bに近接するため、ホットプレート5の熱が赤外線反射部30を介して基板10に伝わるようになる。例えば、第一加熱工程において、ホットプレート5の温度は、200℃を維持している。そのため、基板温度は、200℃まで上昇可能とされている。一方、第一加熱工程において、赤外線ヒータ6の電源はオフのままとなっている。
【0120】
なお、第一加熱工程において、ホットプレート5は、通過部8h(
図1参照)内に位置している。便宜上、
図12において、移動前(収容工程時の位置)のホットプレート5を二点鎖線、移動後(第一加熱工程時の位置)のホットプレート5を実線で示す。
【0121】
第一加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1000Pa以上とした状態で、基板10を25℃以上250℃以下の温度に加熱する(第一加熱制御)。これにより、基板10に塗布されたポリイミド形成用液のイミド化前の分子鎖を配向させる。例えば、第一加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を大気圧とした状態で、基板10を200℃まで加熱する。例えば、第一加熱工程では、基板10の加熱時間を0.5min以上40min以下とする。
【0122】
第一加熱工程の後、第二加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1Pa以上1000Pa未満とする。例えば、第二加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1Pa以上20Pa以下とする。第二加熱工程では、基板10に塗布されたポリイミド形成用液が揮発するまでチャンバ内圧力を下降させる。なお、第二加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を500Pa以下とすることもできるし、300Pa以下とすることもできるし、100Pa以下とすることもできる。
【0123】
第二加熱工程では、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を可及的に低くする。例えば、第二加熱工程では、チャンバ2内の真空度を20Pa以下とする。これにより、チャンバ2内の酸素濃度を100ppm以下とすることができる。
【0124】
第二加熱工程では、ホットプレート5とは別個独立して設けられている赤外線ヒータ6を用いて基板10を加熱する。
図13に示すように、第二加熱工程では、ホットプレート5を第一加熱工程時の位置よりも更に上方に移動させて、基板10を赤外線ヒータ6に近接させる。
【0125】
例えば、第二加熱工程において、ホットプレート5の温度は、200℃を維持している。また、第二加熱工程において、赤外線ヒータ6の電源はオンとされる。例えば、赤外線ヒータ6は、600℃で基板10を加熱可能である。そのため、基板温度は、600℃まで上昇可能とされている。第二加熱工程では、第一加熱工程時よりも基板10が赤外線ヒータ6に近づくため、赤外線ヒータ6の熱が基板10に十分に伝わるようになる。
【0126】
なお、第二加熱工程において、ホットプレート5は、搬送ローラ8a(
図1に示す通過部8h)の上方かつ赤外線ヒータ6の下方に位置している。便宜上、
図13において、移動前(第一加熱工程時の位置)のホットプレート5を二点鎖線、移動後(第二加熱工程時の位置)のホットプレート5を実線で示す。
【0127】
第二加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1Pa以上1000Pa未満とした状態で、基板10を第一加熱工程における最高到達温度を超え且つ550℃以下の温度に加熱する(第二加熱制御)。これにより、基板10に塗布されたポリイミド形成用液のイミド化前の分子鎖を配向させる。または、ポリイミド形成用液をイミド化させる。例えば、第二加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1Pa以上20Pa以下とした状態で、基板10を300℃まで加熱する。第二加熱工程では、第一加熱工程で用いるホットプレート5よりも昇温レートが大きい赤外線ヒータ6を用いて基板10を加熱する。例えば、第二加熱工程では、赤外線ヒータ6の昇温レートを100℃/min以上とする。例えば、第二加熱工程では、基板10の加熱時間を2min以上40min以下とする。
【0128】
第二加熱工程の後、第三加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1Pa以上1000Pa未満とした状態で、基板10を第二加熱工程における最高到達温度よりも更に50℃以上高い温度まで加熱する(第三加熱制御)。これにより、基板10に塗布されたポリイミド形成用液のイミド化時の分子鎖を再配向(分子鎖が再配列)させる。例えば、第三加熱工程では、収容空間2Sの雰囲気を1Pa以上20Pa以下とした状態で、基板10を500℃まで加熱する。第三加熱工程では、赤外線ヒータ6を用いて基板10を加熱する。第三加熱工程では、基板10の加熱時間を2min以上40min以下とする。
【0129】
第二加熱工程および第三加熱工程では、ホットプレート5と赤外線ヒータ6との間に配置されているホットプレート側反射面30aを用いてホットプレート5に向かう赤外線を反射する。これにより、ホットプレート5に赤外線が吸収されることを回避することができる。なお、ホットプレート側反射面30aによって反射された赤外線の少なくとも一部は基板10に吸収される。
【0130】
加えて、第二加熱工程および第三加熱工程では、チャンバ2の内面に設けられたチャンバ側反射面2aにおいて赤外線が反射される。これにより、チャンバ2内の温度均一性を高めることができる。なお、チャンバ側反射面2aによって反射された赤外線の少なくとも一部は基板10に吸収される。
【0131】
加えて、第二加熱工程および第三加熱工程では、ホットプレート5を冷却する。例えば、第二加熱工程および第三加熱工程では、加熱部の内部に配置された冷媒通過部51に冷媒(空気)を通過させる(
図9参照)。
【0132】
第三加熱工程の後、基板10を冷却させる冷却工程を行う。例えば、冷却工程では、第三加熱工程の雰囲気、もしくは低酸素雰囲気を保った状態で、基板温度が第三加熱工程の温度から基板10を搬送可能な温度になるまで基板10を冷却する。冷却工程では、赤外線ヒータ6の電源をオフにする。例えば、冷却工程では、基板温度が250℃以下になるまで基板10を冷却する。例えば、冷却工程では、基板10を冷却する時間を1min以上5min以下とする。
【0133】
以上の工程を経ることにより、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の揮発又はイミド化を行うとともに、基板10に塗布されたポリイミド形成用液のイミド化時の分子鎖の再配列を行い、ポリイミド膜を形成することができる。
【0134】
実施形態においては、チャンバ2の収容空間2S中のヒュームがチャンバ2の内面で冷却されて昇華物となることを抑制する観点から、以下のチャンバ加熱工程を行う。
チャンバ加熱工程では、チャンバ2の内面の少なくとも一部を加熱する。実施形態において、チャンバ加熱工程では、チャンバ2の周壁23に配置されたチャンバ加熱部81を用いて、チャンバ2の周壁23の内面を加熱する(
図2参照)。例えば、チャンバ加熱工程では、チャンバ2の周壁23の内面の温度が40℃以上かつ150℃以下の範囲になるよう加熱する。例えば、チャンバ加熱工程は、少なくとも基板加熱工程の間、常時行われる。
【0135】
実施形態の基板加熱方法は、真空配管加熱工程、ガス供給配管加熱工程及び基板搬出入部加熱工程を更に含む。
真空配管加熱工程では、チャンバ2に接続された真空配管3aの内面の少なくとも一部を加熱する。実施形態において、真空配管加熱工程では、真空配管3aの外面を覆う真空配管加熱部82を用いて、真空配管3aの内面を加熱する(
図2参照)。例えば、真空配管加熱工程は、少なくとも基板加熱工程の間、常時行われる。
【0136】
ガス供給配管加熱工程では、ガス供給配管4aの内面の少なくとも一部を加熱する。実施形態において、ガス供給配管加熱工程では、ガス供給配管4aの外面を覆うガス供給配管加熱部83を用いて、ガス供給配管4aの内面を加熱する(
図2参照)。例えば、ガス供給配管加熱工程は、少なくとも基板加熱工程の間、常時行われる。
【0137】
基板搬出入部加熱工程では、基板搬出入部24の少なくとも一部を加熱可能する。実施形態において、基板搬出入部加熱工程では、基板搬出入部24の外面を覆う基板搬出入部加熱部84を用いて、基板搬出入部24を加熱する(
図2参照)。例えば、基板搬出入部加熱工程は、少なくとも基板加熱工程の間、常時行われる。
【0138】
<ガラス天板の取付部と基板との配置関係>
次に、本実施形態に係るガラス天板の取付部と基板との配置関係について説明する。本実施形態において、ガラス天板91は、支持部材(不図示)によってチャンバ2の天板21に吊り下げられている(
図2参照)。
【0139】
図14は、第一実施形態に係るガラス天板91の取付部95と基板10との配置関係を説明するための図である。
図14は、ガラス天板91を基板10の側から見た平面図(下面図)である。
図14に示すように、ガラス天板91および基板10のそれぞれは、X方向に長手を有する長方形板状をなしている。ガラス天板91の外形は、基板10の外形よりも大きい。ガラス天板91の四隅には、ガラス天板91を吊り下げるための支持部材の取付部95が設けられている。取付部95は、ガラス天板91を上下から挟むことにより支持している。取付部95は、チャンバ2(
図2参照)の上部に設けられている。平面視で、取付部95は、基板10を避けた位置に配置されている。平面視で、取付部95は、基板10の角部の外方に配置されている。
【0140】
<ガラス周壁およびガラス底壁の配置構造>
次に、本実施形態に係るガラス周壁およびガラス底壁の配置構造について説明する。本実施形態において、ガラス周壁93は、ガラス底壁92と一体に結合されている(
図2参照)。
【0141】
図15は、第一実施形態に係るガラス周壁93およびガラス底板92の配置構造を説明するための図である。
図15においては、チャンバ2の天板21などの図示を省略している。
図15に示すように、ガラス周壁93およびガラス底板92は、互いに一体に結合されることにより上方に開放する箱状をなしている。
図15において符号90Aは、ガラス周壁93およびガラス底板92が一体化された箱状体を示す。箱状体90Aは、チャンバ2の底板22の上面に設置可能な大きさとされている。箱状体90Aにおいて基板搬出入口23aに臨む部分には、開口93aが形成されている。
【0142】
以上のように、本実施形態によれば、基板加熱装置1は、溶液を塗布した基板10を収容可能な収容空間2Sが内部に形成されたチャンバ2と、収容空間2Sに配置されるとともに、基板10を加熱可能な基板加熱部5,6と、基板10における溶液の塗布面10aと、チャンバ2において塗布面10aと対向する対向面21aとの間に少なくとも配置されたガラス構造体90と、を含むことで以下の効果を奏する。
この構成によれば、基板10における溶液の塗布面10aと、チャンバ2において塗布面10aと対向する対向面21aとの間に少なくとも配置されたガラス構造体90を含むことで、基板10の塗布面10aからチャンバ2の対向面21aへ向かうヒューム(昇華物の元)をガラス構造体90で遮ることができるため、チャンバ2の対向面21a(チャンバ内部)への昇華物の付着を抑制することができる。加えて、ガラスの耐熱温度(連続使用温度)は樹脂よりも高いため、基板10の加熱温度をより広い範囲で設定することができ、基板10の加熱温度が制限されにくい。したがって、基板10の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することができる。例えば、ガラス構造体90をネオセラムで形成することで、ネオセラムの耐熱温度は750℃以上であるため、基板10の加熱温度をより広い範囲で設定することができる。
【0143】
また、ガラス構造体90は、石英の含有率が50%以上であることで、石英の含有率が50%未満の場合と比較して、ガラス構造体90の耐熱温度を向上させることができる。したがって、基板10の加熱温度を更に広い範囲で設定することができ、基板10の加熱温度が更に制限されにくい。
【0144】
また、ガラス構造体90の赤外線の吸収率は、近赤外線波長領域(1μm以上2.5μm未満)で30%以上であり、遠赤外線波長領域(2.5μm以上5μm以下)で90%以上であることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、ガラス構造体90の近赤外線の吸収率が30%以上であることにより、ガラス構造体90の近赤外線の吸収率が30%未満の場合と比較して、近赤外線の吸収によるガラス構造体90の加熱を促進することができる。加えて、ガラス構造体90の遠赤外線の吸収率が90%以上であることにより、ガラス構造体90の遠赤外線の吸収率が90%未満の場合と比較して、遠赤外線の吸収によるガラス構造体90の加熱を促進することができる。このようにガラス構造体90の加熱を促進することにより、基板10の塗布面10aからチャンバ2の対向面21aへ向かうヒュームがガラス構造体90の表面で冷却されて昇華物となることを抑制することができる。したがって、ガラス構造体90への昇華物の付着を抑制することができる。
【0145】
また、基板10は、ポリイミドを形成するための溶液が塗布された基板であることで、ポリイミドの形成時において、基板10の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することができる。
【0146】
また、チャンバ2は、基板10の上方に位置し、対向面21aを形成する天板21と、基板10の下方に位置し、天板21と対向する底板22と、基板10の周囲を囲む周壁23と、を含み、ガラス構造体90は、チャンバ2の天板21、底板22および周壁23のそれぞれに臨むように設けられていることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、基板10の塗布面10aからチャンバ2の天板21、底板22および周壁23のそれぞれへ向かうヒュームをガラス構造体90で遮ることができるため、チャンバ2の天板21、底板22および周壁23のそれぞれへの昇華物の付着を抑制することができる。
【0147】
また、ガラス構造体90の厚さt1は、0.5mm以上10mm以下であることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、ガラス構造体90の厚さt1が0.5mm以上であることにより、ガラス構造体90の厚さt1が0.5mm未満の場合と比較して、ガラス構造体90で赤外線を吸収しやすいため、ガラス構造体90の加熱を促進し、ガラス構造体90への昇華物の付着を抑制しやすい。加えて、ガラス構造体90の厚さt1が10mm以下であることにより、ガラス構造体90の厚さt1が10mmを超える場合と比較して、熱を伝えやすいため、ガラス構造体90が割れにくい。
【0148】
また、ガラス構造体90の熱膨張係数は、0℃以上750℃以下の範囲において15×10-7/K以下であることで、以下の効果を奏する。
ガラス構造体90の熱膨張係数が0℃以上750℃以下の範囲において15×10-7/Kを超える場合と比較して、ガラス構造体90の寸法変化が小さいため、ガラス構造体90を支持しやすい。例えば、ガラス構造体90を支持部材で挟むことにより支持する場合には、ガラス構造体90と支持部材との擦れによる異物の発生を抑制することができる。
【0149】
また、基板加熱部5,6は、チャンバ2の天板21に支持された赤外線ヒータ6を含み、ガラス天板91は、天板21と赤外線ヒータ6との間に配置されていることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、ガラス天板91を基板10と赤外線ヒータ6との間に配置した場合と比較して、赤外線ヒータ6から基板10へ向かう赤外線がガラス天板91で遮られにくいため(赤外線が基板10へ直接向かいやすいため)、基板10の加熱を促進しやすい。ところで、オーブンで熱風を循環させて基板を加熱する方式であると、熱風の循環によって基板の収容空間に異物が巻き上げられる可能性がある。これに対し、この構成によれば、収容空間2Sの雰囲気を減圧した状態で基板10を加熱することができるため、収容空間2Sに異物が巻き上げられるリスクを低減することができる。したがって、チャンバ2の内面又は基板10に異物が付着することを抑制する上で好適である。
【0150】
また、チャンバ2の上部には、ガラス天板91をチャンバ2へ取り付ける取付部95が設けられ、平面視で、取付部95は、基板10を避けた位置に配置されていることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、平面視で取付部95を基板10と重なる位置に配置した場合と比較して、ガラス天板91と取付部95との擦れにより異物が発生しても、異物が基板10に落下することを抑制することができる。
【0151】
また、基板加熱部5,6は、基板10の一方面側に配置されたホットプレート5と、基板10の他方面側に配置されるとともに、基板10を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータ6と、を含んでいることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、赤外線ヒータ6が基板10の他方面側に配置されることで、赤外線ヒータ6から発せられた熱が、基板10の他方面側から一方面側に向けて伝わるようになるため、ホットプレート5による加熱と赤外線ヒータ6による加熱とが相まって、基板10をより一層効果的に加熱することができる。加えて、基板10の一方面側に配置されたホットプレート5によって、基板10の加熱温度を基板10の面内で均一化させることができるため、膜特性を向上させることができる。例えば、ホットプレート5の一面と基板10の第二面10bとを当接させた状態で基板10を加熱することによって、基板10の加熱温度の面内均一性を高めることができる。
【0152】
また、チャンバ2の内面の少なくとも一部は、赤外線を反射するチャンバ側反射面2aとされていることで、以下の効果を奏する。チャンバ側反射面2aによって反射された赤外線の少なくとも一部は基板10に吸収されるため、基板10の加熱を促進することができる。一方、チャンバ側反射面2aによって反射された赤外線による基板10の温度上昇分を踏まえて、赤外線ヒータ6の出力を低減することができる。
【0153】
また、ホットプレート5が20℃以上かつ300℃以下の範囲で基板10を加熱可能であることで、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の溶媒除去やポリイミド形成用液の予備硬化等を安定して行うことができる。加えて、赤外線ヒータ6が200℃以上かつ600℃以下の範囲で基板10を加熱可能であることで、基板10に塗布されたポリイミド形成用液をより一層安定して硬化させることができる。加えて、ポリイミド形成用液のイミド化時の分子鎖の再配列を安定して行うことができ、膜特性を一段と向上させることができる。
【0154】
また、ホットプレート5と赤外線ヒータ6との間に配置されるとともに、ホットプレート5に向かう赤外線を反射するホットプレート側反射面30aを有する赤外線反射部30を含み、ホットプレート5は、赤外線反射部30を載置可能な載置面5aを含んでいることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、ホットプレート5と赤外線ヒータ6との間に配置されるとともにホットプレート5に向かう赤外線を反射するホットプレート側反射面30aを含むことで、ホットプレート5に赤外線が吸収されることを回避することができるため、赤外線によるホットプレート5の昇温を抑制することができる。そのため、赤外線によるホットプレート5の昇温に伴うホットプレート5の降温時間を考慮する必要がない。したがって、ホットプレート5の降温に要するタクトタイムを短縮化することができる。加えて、ホットプレート側反射面30aによって反射された赤外線の少なくとも一部は基板10に吸収されるため、基板10の加熱を促進することができる。一方、ホットプレート側反射面30aによって反射された赤外線による基板10の温度上昇分を踏まえて、赤外線ヒータ6の出力を低減することができる。加えて、ホットプレート5は、赤外線反射部30を載置可能な載置面5aを含むことで、収容空間2Sの雰囲気を減圧して真空状態とした場合、ホットプレート5における載置面5aと赤外線反射部30との間を真空断熱することができる。すなわち、載置面5aと赤外線反射部30との界面における隙間を断熱層として機能させることができる。そのため、赤外線によるホットプレート5の昇温を抑制することができる。一方、収容空間2Sに窒素を供給(N2パージ)した場合、載置面5aと赤外線反射部30との間の真空断熱を解除することができる。そのため、ホットプレート5が降温しているときは赤外線反射部30も降温していると推定することができる。
【0155】
また、基板10の第一面10aにのみポリイミド形成用液が塗布されており、ホットプレート5が基板10の第一面10aとは反対側の第二面10bの側に配置されていることで、以下の効果を奏する。ホットプレート5から発せられた熱が、基板10の第二面10bの側から第一面10aの側に向けて伝わるようになるため、基板10を効果的に加熱することができる。加えて、ホットプレート5で基板10を加熱している間に、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の溶媒除去やポリイミド形成用液の予備硬化、成膜時のガス抜き等を効率良く行うことができる。
【0156】
また、ホットプレート5及び赤外線ヒータ6の双方が基板10を段階的に加熱可能であることで、以下の効果を奏する。ホットプレート5及び赤外線ヒータ6が基板10を一定の温度でのみ加熱可能な場合と比較して、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の硬化条件に適合するように、基板10を効率良く加熱することができる。例えば、基板10に塗布されたポリイミド形成用液を段階的に乾燥させ、良好に硬化させることができる。
【0157】
また、ホットプレート5及び赤外線ヒータ6と基板10との相対位置を調整可能な位置調整部7を含むことで、前記位置調整部7を備えない場合と比較して、基板10の加熱温度を調整し易くなる。例えば、基板10の加熱温度を高くする場合にはホットプレート5及び赤外線ヒータ6と基板10とを近接させ、基板10の加熱温度を低くする場合にはホットプレート5及び赤外線ヒータ6と基板10とを離反させることができる。したがって、基板10を段階的に加熱し易くなる。
【0158】
また、位置調整部7は、基板10をホットプレート5と赤外線ヒータ6との間で移動可能とする移動部7aを含むことで、以下の効果を奏する。基板10をホットプレート5と赤外線ヒータ6との間で移動させることによって、ホットプレート5及び赤外線ヒータ6の少なくとも一方を定位置に配置した状態で、基板10の加熱温度を調整することができる。したがって、ホットプレート5及び赤外線ヒータ6の少なくとも一方を移動可能とする装置を別途設ける必要がないため、簡素な構成で基板10の加熱温度を調整することができる。
【0159】
また、ホットプレート5と赤外線ヒータ6との間には、基板10を搬送可能とする搬送部8が設けられており、搬送部8には、移動部7aを通過可能とする通過部8hが形成されていることで、以下の効果を奏する。基板10をホットプレート5と赤外線ヒータ6との間で移動させる場合に、通過部8hを通過させることができるため、搬送部8を迂回して基板10を移動させる必要がない。したがって、搬送部8を迂回して基板10を移動させるための装置を別途設ける必要がないため、簡素な構成で基板10の移動をスムーズに行うことができる。
【0160】
また、基板10の温度を検知可能な温度検知部9を含むことで、基板10の温度をリアルタイムで把握することができる。例えば、温度検知部9の検知結果に基づいて基板10を加熱することによって、基板10の温度が目標値からずれることを抑制することができる。
【0161】
また、基板10及び基板加熱部5,6が共通のチャンバ2に収容されていることで、共通のチャンバ2内で基板10への基板加熱部5,6による加熱処理を一括することができる。例えば、共通のチャンバ2内で基板10へのホットプレート5による加熱処理と赤外線ヒータ6による加熱処理とを一括して行うことができる。すなわち、ホットプレート及び赤外線ヒータが互いに異なるチャンバに収容された場合のように、異なる2つのチャンバ間で基板を搬送させるための時間を要しない。したがって、基板10の加熱処理をより一層効率良く行うことができる。また、異なる2つのチャンバを備えた場合と比較して、装置全体を小型化することができる。
【0162】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、
図16~
図19を用いて説明する。
第二実施形態では、第一実施形態に対して、位置調整部207の構成が特に異なる。
図16~
図19において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図16は、第二実施形態に係る基板加熱装置201における加熱ユニット80、断熱部材26、カバー部材27及びガラス構造体90の断面を含む、
図2に相当する図である。
【0163】
<位置調整部>
図16に示すように、位置調整部207は、収容部270、移動部275及び駆動部279を備えている。
収容部270は、チャンバ2の下側に配置されている。収容部270は、移動部275及び駆動部279を収容可能である。収容部270は、直方体の箱状に形成される。具体的に、収容部270は、矩形板状の第一支持板271と、第一支持板271と対向する矩形板状の第二支持板272と、第一支持板271及び第二支持板272の外周縁に繋がるとともに移動部275及び駆動部279の周囲を囲むように覆う囲い板273とによって形成されている。なお、囲い板273は設けられていなくてもよい。すなわち、位置調整部207は、少なくとも第一支持板271、移動部275及び駆動部279を備えていればよい。例えば、装置全体を覆う外装カバーが設けられていてもよい。
【0164】
第一支持板271の外周縁は、チャンバ2の周壁23の下端に接続されている。第一支持板271は、チャンバ2の底板としても機能する。第一支持板271には、ホットプレート205が配置されている。具体的に、ホットプレート205は、チャンバ2内で第一支持板271に支持されている。
【0165】
囲い板273と周壁23とは、上下に連続して連なっている。チャンバ2は、基板10を密閉空間で収容可能に構成されている。例えば、天板21、底板としての第一支持板271、及び周壁23の各接続部を溶接等で隙間なく結合することで、チャンバ2内の気密性を向上することができる。
【0166】
移動部275は、ピン276、伸縮管277及び基台278を備える。
ピン276は、基板10の第二面10bを支持可能かつ第二面10bの法線方向(Z方向)に移動可能である。ピン276は、上下に延びる棒状の部材である。ピン276の先端(上端)は、基板10の第二面10bに当接可能かつ基板10の第二面10bから離反可能とされている。
【0167】
ピン276は、第二面10bと平行な方向(X方向及びY方向)に間隔を空けて複数設けられている。複数のピン276は、それぞれ略同じ長さに形成されている。複数のピン276の先端は、第二面10bと平行な面内(XY平面内)に配置されている。
【0168】
伸縮管277は、第一支持板271と基台278との間に設けられている。伸縮管277は、ピン276の周囲を囲むように覆うとともに、上下に延びる管状の部材である。伸縮管277は、第一支持板271と基台278との間で上下に伸縮自在とされている。例えば、伸縮管277は、真空ベローズである。
【0169】
伸縮管277は、複数のピン276と同じ数だけ複数設けられている。複数の伸縮管277の先端(上端)は、第一支持板271に固定されている。具体的に、第一支持板271には、第一支持板271を厚み方向に開口する複数の挿通孔271hが形成されている。各挿通孔271hの内径は、各伸縮管277の外径と略同じ大きさとされている。例えば、各伸縮管277の先端は、第一支持板271の各挿通孔271hに嵌合固定されている。
【0170】
基台278は、第一支持板271と対向する板状の部材である。基台278の上面は、基板10の第二面10bに沿う平坦面をなしている。基台278の上面には、複数のピン276の基端(下端)及び複数の伸縮管277の基端(下端)が固定されている。
【0171】
複数のピン276の先端は、ホットプレート205を挿通可能とされている。ホットプレート205には、第一支持板271の各挿通孔271h(各伸縮管277の内部空間)に第二面10bの法線方向で重なる位置で、ホットプレート205を第二面10bの法線方向(ホットプレート205の厚み方向)に開口する複数の挿通孔205hが形成されている。
【0172】
複数のピン276の先端は、赤外線反射部230を挿通可能とされている。赤外線反射部230には、第一支持板271の各挿通孔271h(各伸縮管277の内部空間)に第二面10bの法線方向で重なる位置で、赤外線反射部230を第二面10bの法線方向(赤外線反射板の厚み方向)に開口する複数の挿通孔230hが形成されている。
【0173】
複数のピン276の先端は、各伸縮管277の内部空間、ホットプレート205の各挿通孔205h及び赤外線反射部230の各挿通孔230hを介して、基板10の第二面10bに当接可能とされている。そのため、複数のピン276の先端によって、基板10がXY平面に平行に支持されるようになっている。複数のピン276は、チャンバ2内に収容される基板10を支持しつつチャンバ2内のZ方向に移動するようになっている(
図17~
図19参照)。
【0174】
駆動部279は、チャンバ2の外部である収容部270内に配置されている。そのため、仮に駆動部279の駆動に伴いパーティクルが発生したとしても、チャンバ2内を密閉空間とすることによって、チャンバ2内へのパーティクルの侵入を回避することができる。
【0175】
<基板加熱方法>
次に、本実施形態に係る基板加熱方法を説明する。本実施形態では、上記の基板加熱装置201を用いて基板10を加熱する。基板加熱装置201の各部で行われる動作は、制御部15によって制御される。なお、第一実施形態と同様の工程については、その詳細な説明は省略する。
【0176】
図17は、第二実施形態に係る基板加熱装置201の動作の一例を説明するための図である。
図18は、
図17に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置201の動作説明図である。
図19は、
図18に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置201の動作説明図である。
【0177】
便宜上、
図17~
図19においては、基板加熱装置201の構成要素のうち、基板搬出入部24、圧力調整部3、ガス供給部4、ガス拡散部60、温度検知部9、圧力検知部14、気体液化回収部11、冷却機構50、加熱ユニット80、断熱部材26、カバー部材27、ガラス構造体90及び制御部15の図示を省略する。
【0178】
本実施形態に係る基板加熱方法は、収容工程、基板加熱工程、およびチャンバ加熱工程を含む。
図17に示すように、収容工程では、ポリイミド形成用液を塗布した基板10をチャンバ2の内部の収容空間2Sに収容する。
【0179】
収容工程では、基板10がホットプレート205から離反している。具体的に、各伸縮管277の内部空間、ホットプレート205の各挿通孔205h及び赤外線反射部230の各挿通孔230hを介して複数のピン276の先端を基板10の第二面10bに当接させるとともに、基板10を上昇させることによって、基板10をホットプレート205から離反させている。収容工程では、ホットプレート205及び基板10は、ホットプレート205の熱が基板10に伝わらない程度に離反している。収容工程において、ホットプレート205の電源はオンになっている。収容工程では、赤外線ヒータ6の電源はオフになっている。
【0180】
収容工程の後、基板加熱工程に進む。基板加熱工程では、基板10の一方側に配置されているホットプレート205と基板10の他方側に配置されている赤外線ヒータ6とを用いて基板10を加熱する。
基板加熱工程は、第一加熱工程、第二加熱工程および第三加熱工程を含む。
【0181】
第一加熱工程では、ホットプレート205を用いて基板10を加熱する。
図18に示すように、第一加熱工程では、複数のピン276の先端を基板10の第二面10bから離反させることによって、基板10を赤外線反射部230のホットプレート側反射面230aに載置させる。具体的に、基板10をホットプレート側反射面230aに設けられた基板支持凸部(不図示)に支持させる。これにより、ホットプレート側反射面230aは基板10の第二面10bに近接するため、ホットプレート205の熱が赤外線反射部230を介して基板10に伝わるようになる。例えば、第一加熱工程において、赤外線ヒータ6の電源はオフのままとなっている。
【0182】
第一加熱工程の後、第二加熱工程では、ホットプレート205とは別個独立して設けられている赤外線ヒータ6を用いて基板10を加熱する。
図19に示すように、第二加熱工程では、基板10を第一加熱工程時の位置よりも更に上昇させることによって、基板10を赤外線ヒータ6に近接させる。第二加熱工程において、赤外線ヒータ6の電源はオンとされる。第二加熱工程では、第一加熱工程時よりも基板10が赤外線ヒータ6に近づくため、赤外線ヒータ6の熱が基板10に十分に伝わるようになる。
【0183】
その後、第一実施形態と同様の工程を経ることにより、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の揮発又はイミド化を行うとともに、基板10に塗布されたポリイミド形成用液のイミド化時の分子鎖の再配列を行い、ポリイミド膜を形成することができる。
また、チャンバ2の収容空間2S中のヒュームがチャンバ2の内面で冷却されて昇華物となることを抑制する観点から、第一実施形態と同様のチャンバ加熱工程を行う。
【0184】
以上のように、本実施形態によれば、移動部275が基板10の第二面10bを支持可能かつ第二面10bの法線方向に移動可能な複数のピン276を含み、複数のピン276の先端が第二面10bと平行な面内に配置されていることで、以下の効果を奏する。基板10を安定して支持した状態で、基板10を加熱することができるため、基板10に塗布されたポリイミド形成用液を安定して硬化させることができる。
【0185】
また、ホットプレート205には、ホットプレート205を第二面10bの法線方向に開口する複数の挿通孔205hが形成されており、各ピン276の先端が各挿通孔205hを介して第二面10bに当接可能とされていることで、以下の効果を奏する。複数のピン276とホットプレート205との間での基板10の受け渡しを短時間で行うことができるため、基板10の加熱温度を効率良く調整することができる。
【0186】
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、基板加熱部は、基板の一方側に配置されたホットプレートと、基板の他方側に配置されるとともに、基板を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータと、を備えているが、これに限らない。例えば、基板加熱部は、基板の一方側に配置されたホットプレートのみを備えていてもよいし、基板の他方側に配置された赤外線ヒータのみを備えていてもよい。すなわち、基板加熱部は、基板の一方側及び他方側の少なくとも一方に配置されていればよい。
【0187】
また、上記実施形態においては、ガラス構造体90が、チャンバ2の天板21、底板22および周壁23のそれぞれに臨むように設けられているが、これに限らない。例えば、ガラス構造体は、チャンバ2の天板21のみに臨むように設けられていてもよい。すなわち、基板加熱装置は、基板10における溶液の塗布面10aと、チャンバ2において塗布面10aと対向する対向面21aとの間に少なくとも配置されたガラスを備えていればよい。ガラスは、チャンバ2の天板21、底板22および周壁23の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0188】
また、上記実施形態においては、ガラス天板91がチャンバ2の天板21と間隔をあけて配置されているが、これに限らない。例えば、ガラス天板91は、天板21に当接していてもよい。また、ガラス周壁93がチャンバ2の周壁23と間隔をあけて配置されているが、これに限らない。例えば、ガラス周壁93は、周壁23に当接していてもよい。
【0189】
また、上記実施形態においては、ガラス構造体90は、ガラス板の組み合わせで形成されているが、これに限らない。例えば、ガラス構造体は、チャンバ内面にコーティングされた膜であってもよい。
【0190】
また、上記実施形態においては、基板加熱方法が、収容工程、基板加熱工程、およびチャンバ加熱工程を含むが、これに限らない。例えば、基板加熱方法が、予備加熱工程を更に含んでいてもよい。予備加熱工程では、第一加熱工程の前(具体的には収容工程の前)、チャンバを100℃以上250℃以下の温度に予め加熱しておく(予備加熱制御)。この方法によれば、第一加熱工程における加熱条件に即座に移行することができるため、第一加熱工程を短時間で安定して行うことができる。
例えば、予備加熱工程では、チャンバを第一加熱工程における最高到達温度(例えば200℃)に予熱しておいてもよい。
【0191】
また、上記実施形態においては、チャンバ加熱部がチャンバの周壁にのみ配置されているが、これに限らない。例えば、チャンバ加熱部がチャンバの周壁に加え、チャンバの天板及び底板に配置されていてもよい。すなわち、チャンバ加熱部は、チャンバの内面の少なくとも一部を加熱可能であればよい。
【0192】
また、上記実施形態においては、反射面を有する赤外線反射部を備えているが、これに限らない。例えば、赤外線反射部を備えることなく、ホットプレートの上面が赤外線を反射する反射面とされていてもよい。
【0193】
また、上記実施形態においては、基板、ホットプレート及び赤外線ヒータが共通のチャンバに収容されているが、これに限らない。例えば、ホットプレート及び赤外線ヒータが互いに異なるチャンバに収容されていてもよい。
【0194】
また、上記実施形態においては、ホットプレート及び赤外線ヒータの双方が基板を段階的に加熱可能であるが、これに限らない。例えば、ホットプレート及び赤外線ヒータの少なくとも一方が、基板を段階的に加熱可能であってもよい。また、ホットプレート及び赤外線ヒータの双方が、基板を一定の温度でのみ加熱可能であってもよい。
【0195】
また、上記実施形態においては、搬送部として複数の搬送ローラを用いたが、これに限らない。例えば、搬送部としてベルトコンベアを用いてもよいし、リニアモータアクチュエータを用いてもよい。例えば、ベルトコンベア及びリニアモータアクチュエータは、X方向に継ぎ足し可能とされてもよい。これにより、X方向における基板の搬送距離を調整することができる。
【0196】
また、搬送部として
図5に示す構成(搬送部に通過部が形成されている構成)以外の構成を採用する場合には、ホットプレートの平面視サイズは、基板の平面視サイズと同等以上であってもよい。これにより、ホットプレートの平面視サイズが基板の平面視サイズよりも小さい場合と比較して、基板の加熱温度の面内均一性をより一層高めることができる。
【0197】
また、上記実施形態においては、収容工程及び第一加熱工程において、ホットプレートの電源はオンになっており、赤外線ヒータの電源はオフになっているが、これに限らない。例えば、収容工程及び第一加熱工程において、ホットプレート及び赤外線ヒータの電源がオンになっていてもよい。
【0198】
また、上記第一実施形態においては、基板加熱工程が、第一加熱工程、第二加熱工程および第三加熱工程の3つの加熱工程を含む例を挙げたが、これに限らない。例えば、基板加熱工程が、第一加熱工程および第二加熱工程の2つの加熱工程のみを含んでいてもよいし、4つ以上の加熱工程を含んでいてもよい。
【0199】
また、上記第二実施形態においては、複数のピンの先端が赤外線反射部を挿通可能とされている(すなわち、赤外線反射部には複数の挿通孔が形成されている)が、これに限らない。例えば、複数のピンの先端が赤外線反射部を挿通不能とされていてもよい。すなわち、赤外線反射部には挿通孔が形成されていなくてもよい。この場合、複数のピンの先端は、各伸縮管の内部空間及びホットプレートの各挿通孔を介して、赤外線反射部の裏面に当接可能とされる。そのため、複数のピンの先端によって、赤外線反射部がXY平面に平行に支持されるようになる。複数のピンは、赤外線反射部を介してチャンバ内に収容される基板を支持しつつチャンバ内のZ方向に移動する。
【0200】
また、上記実施形態の基板加熱装置を含む基板処理システムに本発明を適用してもよい。例えば、基板処理システムは、工場などの製造ラインに組み込まれて用いられ、基板の所定の領域に薄膜を形成するシステムである。図示はしないが、例えば、基板処理システムは、上記基板加熱装置を含む基板処理ユニットと、処理前の基板を収容した搬入用カセットが供給されると共に空の搬入用カセットが回収されるユニットである基板搬入ユニットと、処理後の基板を収容した搬出用カセットが回収されると共に空の搬出用カセットが供給されるユニットである基板搬出ユニットと、基板処理ユニットと基板搬入ユニットとの間で搬入用カセットを搬送すると共に、基板処理ユニットと基板搬出ユニットの間で搬出用カセットを搬送する搬送ユニットと、各ユニットを統括制御する制御ユニットと、を備えている。
この構成によれば、上記基板加熱装置を含むことで、基板処理システムにおいて、基板の加熱温度が制限されにくくするとともに、チャンバ内部への昇華物の付着を抑制することができる。
【0201】
なお、上記において実施形態又はその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。
【符号の説明】
【0202】
1,201…基板加熱装置 2…チャンバ 2S…収容空間 5,205…ホットプレート(基板加熱部) 6…赤外線ヒータ(基板加熱部) 10…基板 10a…第一面(塗布面) 21…天板 22…底板 23…周壁 21a…対向面 90…ガラス構造体(ガラス) 91…ガラス天板(ガラス) 92…ガラス底板(ガラス) 93…ガラス周壁(ガラス) 95…取付部 t1…ガラス構造体の厚さ(ガラスの厚さ)