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特許7178847計量カップ及びその計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】計量カップ及びその計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20221118BHJP
   G01F 19/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B65D25/20 V
G01F19/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018180071
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050372
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-285168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0216278(US,A1)
【文献】実公平02-021984(JP,Y2)
【文献】特開2014-012541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
G01F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュ式コックに着脱可能に取り付けることができ、前記コックの注出口から注出する液体を計量する計量カップであって、
前記液体を収容する液体収容部と、前記コックに取り付け可能な着脱構造部と、前記コックに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く段差部とを有する一体成形体で少なくとも構成され、前記液体収容部が、把持容易な大きさの円筒形、略円筒形、多角筒形又は略多角筒形であり、前記着脱構造部、前記段差部及び該段差部の下面が、前記コックの押しボタンの直下方向に対向配置されており、前記段差部の下面が、1又は2本の指が掛かる広さの曲面凹部である、ことを特徴とする計量カップ。
【請求項2】
前記液体収容部が、手のひらで掴みやすい半径15~40mmの円筒形若しくは略円筒形、又は、半径15~40mmの円に内接する多角筒形若しくは略多角筒形である、請求項1に記載の計量カップ。
【請求項3】
前記段差部の下面の前記曲面凹部は、指の曲線と同じ程度の半径10~20mmである、請求項1又は2に記載の計量カップ。
【請求項4】
前記段差部は、前記液体収容部に連続する絞られた小容量部分であり、前記プッシュ式コックの胴体部を覆う略筒状で形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の計量カップ。
【請求項5】
前記プッシュ式コックの押しボタンの頂部から前記段差部の下面までの距離が、20mm以上100mm以下の範囲内となっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の計量カップ。
【請求項6】
前記着脱構造部は、前記コックが有するつばを上下から挟んでスライドするスリット部であり、前記段差部は、前記スリット部をスライドさせて前記つばに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く部分である、請求項1~5のいずれか1項に記載の計量カップ。
【請求項7】
前記コックに係止する係止構造を一体で有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の計量カップ。
【請求項8】
プッシュ式コックに計量カップを着脱容易に取り付けることができる組み合わせであって、
前記コックは、袋体に取り付けるための取付部と、前記袋体に収容された液体を注出する注出口と、前記注出口を開閉する押しボタンと、それらが連結された胴体部とで少なくとも構成され、
前記計量カップは、前記コックの注出口から注出する液体を収容する液体収容部と、前記コックに取り付け可能な着脱構造部と、前記コックに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く段差部とを有する一体成形体で少なくとも構成され、前記液体収容部が、把持容易な大きさの円筒形、略円筒形、多角筒形又は略多角筒形であり、前記着脱構造部、前記段差部及び該段差部の下面が、前記コックの押しボタンの直下方向に対向配置されており、前記段差部の下面が、1又は2本の指が掛かる広さの曲面凹部である、ことを特徴とする計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせ。
【請求項9】
(1)前記液体収容部が、手のひらで掴みやすい半径15~40mmの円筒形若しくは略円筒形、又は、半径15~40mmの円に内接する多角筒形若しくは略多角筒形である、(2)前記段差部の下面の前記曲面凹部は、指の曲線と同じ程度の半径10~20mmである、(3)前記段差部は、前記液体収容部に連続する絞られた小容量部分であり、前記プッシュ式コックの胴体部を覆う略筒状で形成されている、(4)前記プッシュ式コックの押しボタンの頂部から前記段差部の下面までの距離が、20mm以上100mm以下の範囲内となっている、でそれぞれ特定した(1)~(4)の事項のうちの1又は2以上が選ばれる、請求項8に記載の計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせ。
【請求項10】
前記コックは、前記着脱構造部がスリット部である場合に該スリット部を着脱可能に取り付けるつばを有し、前記つばは、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し前後方向に延びる平板である、請求項8又は9に記載の計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量カップ及びその計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせに関する。さらに詳しくは、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体を収容した袋体を外装箱に収納したバッグインボックスのプッシュ式コックに着脱容易に取り付ける計量キャップ、及びその計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体は、ボトル容器やバッグインボックス容器に収容され、所定量を計量カップで計量して使用されている例が多い。そのため、所定量を計量カップで容易に計量することができることが望ましく、使い勝っての良い計量手段が検討されている。しかし、ボトル容器に比べて比較的容量の大きいバッグインボックス容器では、液体を注出するためのコックとして、ハンドルを回転させて開閉する等、一方の手で計量カップを持ち、もう一方の手でコックを操作するものが多い。一方で、両手を使わないでも容易に計量できる計量手段が要請されている。
【0003】
上記要請に対し、例えば特許文献1では、バルブの開閉で収容液の注出操作を行えるバッグインボックスを、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体を収容する容器とし、計量カップにて収容液を計量して適量の注出が簡単に行えるようにし、その計量カップの取り扱いを簡便にする技術が提案されている。この技術は、上面が開放のカップ本体と、計量カップ本体の上面に重ね合わせ可能な蓋体とからなり、蓋体は、下向き注出管に取り付け可能な取付部を備え、蓋体のカップ本体への重ね合わせと取付部の下向き注出管への取り付けとにより、計量カップ本体、下向き注出管に対してこの下向き注出管から注出される液体を下受けする箇所に位置するようにしたものである。この技術では、計量カップが備えるU字構造の取付部をコックの円筒部には取り付けているので、計量カップを取り付けた後にコックを操作することができ、両手を使わないでも計量できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-285168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術に記載のコックはスクリュー式コックである。スクリュー式コックは、計量カップをコックに取り付けた手とは別の手でつまみを回転操作するか、同じ手であっても一端カップから手を離してつまみを回転操作する。一方、プッシュ式コックは、ボタンを上から押している間に液体が注出する方式であり、片手で計量カップを持ち、別の手でボタンを押して液体を注出する。
【0006】
しかしながら、プッシュ式コックではボタンを上から押す動作が必要であるため、上方位置にバックインボックスが設置され、コックの位置が人の肘位置よりも上にある場合、ボタンを下に押し込む指に力が入りにくいという難点があった。また、バックインボックスと計量カップとの間に指が入る隙間がない場合、ボタンの押し方が限られたものになり、押しにくいという難点があった。また、両手を使用せずに片手だけで計量カップを保持又は固定するとともにボタンを押すことができれば便利である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、プッシュ式コックの位置が人の肘位置よりも上にある場合でもボタンを下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタンを押すことができ、さらに両手を使用せずに片手だけで計量カップを保持又は固定することもでき、安価で大量生産可能な計量カップ及びその計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明に係る計量カップは、プッシュ式コックに着脱可能に取り付けることができ、前記コックの注出口から注出する液体を計量する計量カップであって、
前記液体を収容する液体収容部と、前記コックに取り付け可能な着脱構造部と、前記コックに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く段差部とを有する一体成形体で少なくとも構成され、前記液体収容部が、把持容易な大きさの円筒形、略円筒形、多角筒形又は略多角筒形であり、前記段差部の下面が、1又は2本の指が掛かる広さであって前記コックの押しボタンの直下方向に対向配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、段差部の下面が1又は2本の指が掛かる広さであってコックの押しボタンの直下方向に対向配置されているので、バックインボックスと計量カップとの間に指を入れることができ、計量カップを握りこむようにして親指でボタンを押すことができる。また、プッシュ式コックの位置が人の肘位置よりも上にある場合でもボタンを下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタンを押すことができる。さらに、液体収容部が把持容易な大きさの円筒形等であるので、液体収容部を片手で把持しつつ押しボタンを押すことができる。また、着脱構造部により、コックに着脱可能に取り付けることができる。また、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップとすることができる。
【0010】
本発明に係る計量カップにおいて、前記液体収容部が、手のひらで掴みやすい半径15~40mmの円筒形若しくは略円筒形、又は、半径15~40mmの円に内接する多角筒形若しくは略多角筒形である。この発明によれば、計量カップを片手で容易に把持しやすい。
【0011】
本発明に係る計量カップにおいて、前記段差部の下面は、指の曲線と同じ程度の半径10~20mmの曲面凹部である。この発明によれば、親指で押しボタンを押す際に、薬指や小指等で下面側を押さえることになるので、下面側で押さえる指にフィットしやすい。
【0012】
本発明に係る計量カップにおいて、前記段差部は、前記液体収容部に連続する絞られた小容量部分であり、前記プッシュ式コックの胴体部を覆う略筒状で形成されている。この発明によれば、片手だけで計量カップを保持又は固定しながら、押しボタンが押しやすくなっている。
【0013】
本発明に係る計量カップにおいて、前記プッシュ式コックの押しボタンの頂部から前記段差部の下面までの距離が、20mm以上100mm以下の範囲内となっている。この発明によれば、ボタンを下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタンを押すことができる。
【0014】
本発明に係る計量カップにおいて、前記着脱構造部は、前記コックが有するつばを上下から挟んでスライドするスリット部であり、前記段差部は、前記スリット部をスライドさせて前記つばに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く部分である。この発明によれば、着脱構造部であるスリット部がコックのつばを上下から挟んでスライドするので、コックに着脱可能に取り付けることができる。また、段差部を有するので、スリット部をスライドさせてつばに取り付ける際に、注出口が液体収容部に当たることなく容易に液体収容部内に導くことができる。
【0015】
本発明に係る計量カップにおいて、前記コックに係止する係止構造を一体又は別体で有する。この発明によれば、コックに係止する係止構造を一体又は別体で有するので、計量カップがコックから外れて滑り落ちることがない。
【0016】
[2]本発明に係る計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせは、プッシュ式コックに計量カップを着脱容易に取り付けることができる組み合わせであって、
前記コックは、袋体に取り付けるための取付部と、前記袋体に収容された液体を注出する注出口と、前記注出口を開閉する押しボタンと、それらが連結された胴体部とで少なくとも構成され、
前記計量カップは、前記コックの注出口から注出する液体を収容する液体収容部と、前記コックに取り付け可能な着脱構造部と、前記コックに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く段差部とを有する一体成形体で少なくとも構成され、前記液体収容部が、把持容易な大きさの円筒形、略円筒形、多角筒形又は略多角筒形であり、前記段差部の下面が、1又は2本の指が掛かる広さであって前記コックの押しボタンの直下方向に対向配置されている、ことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせにおいて、(1)前記液体収容部が、手のひらで掴みやすい半径15~40mmの円筒形若しくは略円筒形、又は、半径15~40mmの円に内接する多角筒形若しくは略多角筒形である、(2)前記段差部の下面は、指の曲線と同じ程度の半径10~20mmの曲面凹部である、(3)前記段差部は、前記液体収容部に連続する絞られた小容量部分であり、前記プッシュ式コックの胴体部を覆う略筒状で形成されている、(4)前記プッシュ式コックの押しボタンの頂部から前記段差部の下面までの距離が、20mm以上100mm以下の範囲内となっている、から選ばれる1又は2以上である。
【0018】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記コックは、前記着脱構造部がスリット部である場合に該スリット部を着脱可能に取り付けるつばを有し、前記つばは、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し前後方向に延びる平板である。この発明によれば、左右位置に形成されたつばに、計量カップのスリット部をスライドさせて取り付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、段差部の下面が1又は2本の指が掛かる広さであってコックの押しボタンの直下方向に対向配置されているので、バックインボックスと計量カップとの間に指を入れることができ、計量カップを握りこむようにして親指でボタンを押すことができる。さらに、プッシュ式コックの位置が人の肘位置よりも上にある場合でもボタンを下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタンを押すことができ、さらに両手を使用せずに片手だけで計量カップを保持又は固定することもできる。さらに、安価で大量生産可能な計量カップ及びその計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る計量カップの一例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせの一例を示す斜視図である。
図3】プッシュ式コックの一例を示す斜視図である。
図4】計量カップの側面図(A)と平面図(B)と正面図(C)の例である。
図5】プッシュ式コックのつば及びその周辺形状の説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。
図6】段差部とコックの注出口との関係を示す説明図である。
図7】計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせの使用形態の一例を示す説明図である。
図8】計量カップを取付部位に取り付ける場合の形態を示す例であり、(A)は取付部位を傾斜させた形態であり、(B)はスリットを傾斜させた形態である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る計量カップ及び計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせについて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記実施の形態に記載の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や使用例も含む。また、本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更や上記実施の形態の組み合わせを施してもよい。
【0022】
[基本構成]
本発明に係る計量カップ10は、図2に示すように、プッシュ式コック20(以下単に「コック20」ともいう。)に着脱可能に取り付けることができ、そのコック20の注出口23から注出する液体を計量する計量カップである。この計量カップ10は、図1及び図2に示すように、液体を収容する液体収容部1と、コック20に取り付け可能な着脱構造部2と、コック20に取り付ける際に注出口23を液体収容部内に導く段差部3とを有する一体成形体で少なくとも構成されている。そして、液体収容部1が、把持容易な大きさの円筒形、略円筒形、多角筒形又は略多角筒形であり、段差部3の下面3bが、1又は2本の指が掛かる広さであって、コック20の押しボタン22(以下単に「ボタン22」ともいう。)の直下方向Zに対向配置されている。
【0023】
本発明に係る計量カップ10とプッシュ式コック20との組み合わせ30は、図2に示すように、プッシュ式コック20に計量カップ10を着脱容易に取り付けることができる組み合わせである。コック20は、袋体に取り付けるための取付部27と、袋体に収容された液体を注出する注出口23と、注出口23を開閉する押しボタン22と、それらが連結された胴体部21とで少なくとも構成されている。計量カップ10は、図1及び図2に示すように、コック20の注出口23から注出する液体を収容する液体収容部1と、コック20に取り付け可能な着脱構造部2と、コック20に取り付ける際に注出口23を液体収容部1に導入する段差部3とを有する一体成形体で少なくとも構成されている。そして、液体収容部1が、把持容易な大きさの円筒形、略円筒形、多角筒形又は略多角筒形であり、段差部3の下面3bが、1又は2本の指が掛かる広さであって、コック20の押しボタン22の直下方向Zに対向配置されている。
【0024】
こうした計量カップ10及び計量カップ10とプッシュ式コック20との組み合わせでは、段差部3の下面が、1又は2本の指が掛かる広さであってコック20の押しボタン22の直下方向Zに対向配置されているので、バックインボックスと計量カップ10との間に指を入れることができ、計量カップ10を握りこむようにして親指でボタン22を押すことができる。また、コック20の位置が人の肘位置よりも上にある場合でもボタン22を下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタン22を押すことができる。さらに、液体収容部1が把持容易な大きさの円筒形又は略円筒形であるので、液体収容部1を片手で把持しつつ押しボタン22を押すことができる。また、着脱構造部2により、コック20に着脱可能に取り付けることができる。また、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップとすることができる。
【0025】
以下、各構成要素について詳しく説明する。なお、「前後方向Y」とは、バックインボックス等の液体容器にコック20が取り付けられ、そのコック20に計量カップ10が取り付けられている場合の、液体容器側から計量カップ10の方向であり、「手前」というときは、計量カップ10側であり、「奥」又は「奥側」というときは、コック側である。「左右方向X」とは、手前から見た場合の左右方向のことである。「上下方向Z」とは、注出口23から液体が落ちる方向である。「直下方向」とは、押しボタン22と段差部3の下面3bとの関係であり、上下方向Zのうち、真下にある位置関係を示すものである。
【0026】
[計量カップ]
計量カップ10は、プッシュ式コック20に着脱可能に取り付けることができ、コック20の注出口23から注出する液体を計量する。計量カップ10は、液体収容部1と段差部3とを有した一体成形体で少なくとも構成されている。この計量カップ10は、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップ10とすることができる。
【0027】
「有する」としたのは、これら以外の構造要素をさらに含んでいてもよいことを意味している。「一体成形体で少なくとも構成されている」としたのは、一体成形体だけで構成されていてもよいし、一体成形体にさらに別部材が追加されていてもよいことを意味している。「一体成形体」は、射出成形機で成形された一体物の意味である。こうした計量カップ10の形態は、下記の各構成要素を有し、その作用効果を同じくするものであれば、図1及び図4に示す形態に限定されず、各種の構造形態であってもよい。
【0028】
(液体収容部)
液体収容部1は、液体を収容する部分である。液体は、液体容器(例えばバッグインボックス等)に取り付けられたコック20の注出口23から注出されるものであり、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等のように、所定量を計量して用いる液体であることが好ましい。液体収容部1には、そうした液体の所定量を計量するため、図1に示すように、見えやすい位置に目盛りが付されていることが好ましい。なお、計量カップ10全体の色や透明度も特に限定されないが、容器側面に設けた目盛りで、収容された液体を透けてみる必要があるので、透明、半透明、又は透けて見える白色系の色合いであることが好ましい。
【0029】
液体収容部1の形状は特に限定されないが、図1に示すように、円形又は略円形や多角形又は略多角形のカップ状容器であればよい。特に、手のひらで掴みやすい半径15~40mm程度の円筒形、略円筒形、多角筒形又は略多角筒形もカップ状容器が好ましい。こうすることにより、計量カップ10を片手で容易に把持しやすい。底1bは通常は平らであり、底1bの周縁1cは滑らかな曲面になっていることが好ましい。側面1dには、滑り止めの凹凸が縦方向、横方向及び斜め方向から選ばれるいずれか1又は2以上の方向に配列されていてもよい。上方は開口しており、上縁部1aで開口部が形成されている。開口部からは、収容された液体の注出量を目視により容易に確認することができる。手前側は、コック20が取り付けられる側の反対側であるが、図1の例では、着脱構造部2よりも低い位置に段差になってえぐれた形態になっている。こうすることにより、収容された液体の量を容易に確認することができる。なお、これに限定されず、段差がなく、着脱構造部2と同じ高さの上縁部1aで開口部を構成するものであってもよい。「略円筒形」とは、液体収容部1を平面視した形状が円形に近い形状であることを意味し、「略多角筒形」とは、液体収容部1を平面視した形状が多角形に近い形状であることを意味する。
【0030】
(着脱構造部)
着脱構造部2は、コック20に取り付け可能な部分である。着脱構造部2の形態は特に限定されず、下記のスリット部以外の各種の着脱構造を備えることができる。一例として、図1等に示すスリット部2(以下、符号2を付す。)を挙げることができる。以下、着脱構造部の例として、スリット部2について説明する。
【0031】
このスリット部2は、コック20のつば24を上下から挟んで、計量カップ10をスライドさせ、コック20に着脱可能に取り付けるように機能する。このスリット部2は、段差部3の上方に位置して、液体収容部1の上縁部1aを切り欠いた切り欠き部2aに水平又は略水平に設けられている。こうすることにより、スリット部2が段差部3の上方の液体収容部上縁部1aに左右一対で形成される。形成された一対のスリット部2,2は、コック20のつば24を上下から挟んで、計量カップ10を前後方法Yにスライドさせるように機能する。なお、切り欠き部2aは、平面視で円形又は略円形の液体収容部1の奥側に、滑らかな曲線部を経て連続した略平行に延びた部分(段差部3も含まれる)に設けられる。図4に示すように、切り欠くことで段差部3を形成できるとともに、側面も平行又は略平行であるので、切り欠いてできた対向する平行な対向側面に、スリット2hをそれぞれ形成することができる。
【0032】
スリット部2において、「水平」とは、計量カップ10が目盛り付きの液体容器であることから、スリット2hが収容された液体面と水平になっているという意味であり、「略水平」とは、スリット2hが厳密に水平でなくてもよいという意味であり、例えば、スリット2hを奥から手前に少し下げて形成した場合や、少し上げて形成した場合を含んでいる。例えば、バックインボックスにコック20が取り付けられ、そのコック20に計量カップ10が取り付けられる場合、計量カップ10に液体が注出されると液体収容部1が重くなってコック20が多少下向きになる可能性がある。そうした場合に、例えば図8(B)に示すように、スリット2hをやや下向きに形成することにより、スリット部2をつば24にはめ込んだ際に、計量カップ10の手前がθ2の角度でやや上向きになり、その後液体が入って重くなって計量カップ10の手前が下がり気味になっても、液体面は水平になり、ほぼ正確に計量できることになる。また、例えば図8(A)に示すように、つば24を手前が少し上がるようにθ1だけ傾斜させている場合は、スリット2hは水平のままでもよく、液体が入って重くなって計量カップ10の手前が下がり気味になっても、液体面は水平になり、ほぼ正確に計量できることになる。
【0033】
スリット部2は、コック20のつば24に取り付けられる。取り付け相手のつば24は、図3に示すように、コック20の胴体部21の少なくとも左右位置に突出し、前後方向Yに延びる平板形状として設けられている。左右位置に形成されたつば24に対し、左右一対のスリット部2をはめ込んで取り付ける。スリット部2の隙間幅は、つば24の厚さよりもわずかに大きいことが好ましい。このわずかな大きさが、クリアランスとなって計量カップ10のスライド動作を滑らかに行わせることになる。クリアランスの程度は任意に調整される。前後方向Yに延びるスリット2hの長さは特に限定されないが、がたつきなく安定にはめ込まれた状態が維持できる長さであることが望ましい。
【0034】
スリット部2は、細長い隙間で形成されたスリット2hと、スリット2hの下に位置する側面部分2bと、上に位置する帯状部分2cとで構成されている。側面部分2bの端部2gと、帯状部分2cの端部2fとは、側面部分端部2gが手前になっており、帯状部分端部2fは奥に向かって長くなっている。側面部分端部2gのスリット2h側のコーナーと、帯状部分端部2fのスリット2h側のコーナーは、コック20のつば24をはめ込み易くするために面取りした面取り部2d,2eとなっていることが好ましい。
【0035】
一対のスリット部2,2の各帯状部分2cは、図5に示すつば24の胴体部側に形成された系止部25の湾曲凹形状と同じ形状であり、中央が凹んだ湾曲凹形状の弾性構造になっていることが好ましい。こうすることにより、中央が凹んだ湾曲凹形状の帯状部分2cが、つば24の胴体部側の系止部25が有する湾曲凹形状と同じであるので、その湾曲凹形状の帯状部分2cと、湾曲凹形状の系止部25とが係止構造11となる。この係止構造11では、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力F(図4(B)参照)により、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐことができる。
【0036】
スリット部2の形状は、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐ係止構造11を実現するものであれば、図示の例に限定されず、種々の構造形態であってもよい。この計量カップ10は、射出成形等で一体成形されるので、スリット部2や段差部3は液体収容部1とともに一体成形される。したがって、スリット部2を構成するスリット2hや帯状部分2c等も容易に成形することができる。係止構造11は、液体収容部1の側面形状と平面視で同じになるように射出成形金型を設計するのが便利であり、図4の例でも、スリット2hを形成する箇所の側面の平面視形状は中央が凹んだ湾曲凹形状であり、係止構造11も同じ形状になっていることが好ましい。なお、射出成形金型を変更すれば、係止構造11を任意に変更することができる。
【0037】
こうしたスリット部2は、計量カップ10の一体物又は別体物としてコック20に係止する係止構造11として機能するとともに、着脱構造部2として機能する。スリット部2がコック20に係止する係止構造11は、上記したように、一体成形体である計量カップ10に設けられた着脱構造部2が兼ね備えるものであってもよいし、その一体成形体とは別の別体として計量カップ10に付加されたものであってもよい。その際には、係止構造11が煩雑で面倒にならない構造であることが好ましい。なお、図7の例は、スリット部2が係止構造11及び着脱構造部2として機能する他の例であるが、それらに限定されない。
【0038】
図7(A)の例は、つば24の胴体部側に形成された系止部25には、その中央が外側に凸の湾曲凸形状部28(湾曲形状)を有している。また、スリット部2の帯状部分2cには、中央が外側に凸の湾曲凸形状部14を有している。こうした帯状部分2cと系止部25とで、係止構造11と、着脱構造部2とを実現している。この例も上記同様、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐいでいるとともに、着脱可能としている。
【0039】
図7(B)の例は、つば24の胴体部側に形成された系止部25には、その取付部27側に凹部29を有している。また、スリット部2の帯状部分2cには、その先端に先端突起部15を有している。こうした帯状部分2cと系止部25とで、係止構造11と、着脱構造部2とを実現している。この例も上記同様、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐいでいるとともに、着脱可能としている。
【0040】
(段差部)
段差部3は、計量カップ10をコック20に取り付ける際に、注出口23が液体収容部1に当たることなく容易に液体収容部1内に導く部位である。段差部3の構造は、着脱構造部2(スリット部2)から下方に延びる凹みである。その凹み程度は、凹み上縁3aから着脱構造部2までの長さL1が、コック20の取付部位24(スリット部2に対応する「つば24」のことである。以下同じ、)から注出口先端23aまでの長さL2よりも長い必要がある。こうすることにより、計量カップ10をコック20に取り付ける際に、注出口先端23aが計量カップ10に当たることを防ぐことができる。こうした段差部3は、着脱構造部2(スリット部2)のところでも説明したように、着脱構造部2の下方に位置して、液体収容部1の上縁部1aを切り欠く形状とすることで形成される。下方側の切り欠き長さは、上記したように着脱構造部2からL1の長さ切り欠くことになる。
【0041】
段差部3の下面3bは、指の曲線と同じ程度の半径10~20mmの曲面凹部である。こうすることにより、段差部3の下面3bがコック20の押しボタン22の直下方向に対向配置され、しかも1又は2本の指が掛かる広さになっているので、バックインボックスと計量カップ10との間に指を入れることができ、計量カップ10を握りこむようにして親指でボタン22を押すことができる。また、プッシュ式コック20の位置が人の肘位置よりも上にある場合でも、ボタン22を下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタン22を押すことができる。
【0042】
段差部3は、液体収容部1に連続する絞られた小容量部分であり、コック20の胴体部21を覆う略筒状で形成されている。こうすることにより、片手だけで計量カップを保持又は固定しながら、押しボタンが押しやすくなっている。
【0043】
段差部3は、液体収容部1の一部を構成する、又は、液体収容部1への連通口を有する。段差部3は、注出口先端23aが液体収容部1に当たることなく容易に液体収容部内に導くので、その段差部3が液体収容部1の一部を構成するか、液体収容部1への連通口(図示しない)を有するように構成されていることにより、注出口23から注出される液体を段差部3受けた後に液体収容部1に収容することができる。「一部を構成する」とは、図4に示すように、段差部でも液体を収容して、計量カップ10全体の収容量の一部として含まれることを意味する。「液体収容部1への連通口を有する」とは、上記のように容器の一部を構成するか否かにかかわらず、段差部3と液体収容部1とが中間壁で区分けされており、その中間壁の下部に液体収容部1に液体を通過させる連通口を有する形態を包含する意味である。こうした理由は、段差部3が着脱構造部2の下方に設けられるものであり、その着脱構造部2がコック胴体部21周りの取付部位24にはめ込まれるので、着脱構造部2の下方にはコック20の注出口23が位置することになっているからである。
【0044】
(コック)
コック20は、図3及び図5に示すように、プッシュ式のコックであり、上記した計量カップ10を着脱容易に取り付ける対象であり、計量カップ10と組み合わせて用いられる。コック20は、袋体の口部に取り付けるための取付部27と、袋体に収容された液体を注出する注出口23と、注出口23を開閉する押しボタン22と、計量カップ10が備える着脱構造部2を着脱可能に取り付ける取付部位24と、それらが連結された胴体部21とで少なくとも構成されている。なお、例えば、バックインボックス等の袋体の口部(図示しない)は、外装箱に固定されており、コック20の取付部27は、そうした口部に取り付けられる。
【0045】
注出口23は、袋体に収容された液体を注出する部分であり、注出口23から注出される液体は、取り付けられた計量カップ10に液体を供給する。注出口先端23aは、計量カップ10の着脱時に、段差部3の存在によって計量カップ10に当たることがない。
【0046】
押しボタン22は、注出口23を開閉する部分であり、プッシュ式での開閉機能を操作する部分である。押しボタン22の頂部から段差部3の下面3bまでの距離は、20mm以上100mm以下の範囲内となっている。こうすることにより、ボタン22を下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタン22を押すことができる。
【0047】
取付部位24は、計量カップ10が備える着脱構造部2を着脱可能に取り付ける部分である。取付部位24がつば24の場合は、胴体部21の少なくとも左右位置に突出し前後方向Yに延びる平板である。こうすることにより、左右位置に形成されたつば24に、計量カップ10のスリット部2をスライドさせて取り付けることができる。つば24の大きさは特に限定されないが、計量カップ10の一体成形体の寸法に応じてスリット2hの長さや左右の間隔が決まってくるので、それに対応させた寸法であることが好ましい。
【0048】
つば24の胴体部側には、中央が凹んだ湾曲凹形状26の系止部25が設けられている。こうすることにより、つば24の胴体部側の湾曲凹形状26の系止部25と、計量カップ10のスリット部2の中央が凹んだ湾曲凹形状の係止構造11とが同じであるので、スリット部2の係止構造11の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐことができる。
【0049】
なお、計量カップ10のところでも説明したように、バックインボックスにコック20が取り付けられ、そのコック20に計量カップ10が取り付けられる場合、計量カップ10に液体が注出されると液体収容部1が重くなってコック20が多少下向きになる可能性がある。そうした場合に、図8(B)に示すように、つば24を水平にしてスリット2hをθ2の角度だけやや下向きに形成して組み合わせてもよいし、図8(A)に示すように、つば24を手前がθ1の角度だけ少し上がるように傾斜させてスリット2hを水平のままとしてもよい。なお、ここでの「水平」とは、胴体部21の軸線に対して直交する方向のことである。
【0050】
以上説明したように、本発明は、段差部3の下面が、1又は2本の指が掛かる広さであってコック20の押しボタン22の直下方向Zに対向配置されているので、バックインボックスと計量カップ10との間に指を入れることができ、計量カップ10を握りこむようにして親指でボタン22を押すことができる。また、コック20の位置が人の肘位置よりも上にある場合でもボタン22を下に押し込む指に力が入り易く、容易にボタン22を押すことができる。さらに、液体収容部1が把持容易な大きさの円筒形又は略円筒形であるので、液体収容部1を片手で把持しつつ押しボタン22を押すことができる。また、着脱構造部2により、コック20に着脱可能に取り付けることができる。また、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップとすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 液体収容部
1a 液体収容部上縁部
1b 底
1c 底の周縁
1d 側面
2 着脱構造部(スリット部)
2a 切り欠き部
2b 側面部分
2c 帯状部分
2d 面取り部
2e 面取り部
2f 帯状部分端部
2g 側面部分端部
2h スリット
3 段差部
3a 凹み上縁
3b 下面
4 目盛り
10 計量カップ
11 係止構造
13 凹部
14 湾曲凸形状部
15 先端突起部
20 プッシュ式コック
21 胴体部
22 押しボタン
23 注出口
23a 注出口先端
24 取付部位(つば)
25 系止部
26 湾曲凹形状
27 取付部
28 湾曲凸形状部
29 凹部
30 組み合わせ
S スライド方向
L1 凹み上縁からスリット部までの長さ
L2 コックのつばから注出口先端までの長さ
X 左右方向
Y 前後方向
Z 直下方向(上下方向)
F 付勢力
θ1 つばの傾斜角度
θ2 スリットの傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8