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特許7178853計量カップ及びその計量カップとコックとの組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】計量カップ及びその計量カップとコックとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20221118BHJP
   G01F 19/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B65D25/20 E
G01F19/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018183974
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020050426
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-285168(JP,A)
【文献】実開昭63-135865(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
G01F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コックが有するつばに着脱可能に取り付けることができ、前記コックの注出口から注出する液体を計量する計量カップであって、
前記液体を収容する液体収容部と、前記つばを上下から挟んでスライドするスリット部と、前記スリット部をスライドさせて前記つばに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く段差部と、を有する一体成形体で少なくとも構成されている、ことを特徴とする計量カップ。
【請求項2】
前記段差部は、前記液体収容部の上縁部を切り欠いて形成され前記スリット部から下方に延びる凹みであり、前記スリット部は、前記段差部上方に位置して前記凹み上縁に水平又は略水平に左右一対に設けられている、請求項1に記載の計量カップ。
【請求項3】
前記スリット部は、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し前後方向に延びる平板形状の前記つばに取り付けられる、請求項1又は2に記載の計量カップ。
【請求項4】
前記スリット部は、前記コックに係止する係止構造を一体で有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の計量カップ。
【請求項5】
前記一対のスリット部は、前記つばの胴体部側の湾曲形状と同じ、中央が凹んだ湾曲形状の弾性構造になっている、請求項2に記載の計量カップ。
【請求項6】
前記段差部は、前記スリット部から下方に延びる凹みであり、該凹み上縁から前記スリット部までの長さが前記コックのつばから注出口先端までの長さよりも長い、請求項1~5のいずれか1項に記載の計量カップ。
【請求項7】
前記段差部は、前記液体収容部の一部を構成する、又は、前記液体収容部への連通口を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の計量カップ。
【請求項8】
コックに計量カップを着脱容易に取り付けることができる組み合わせであって、
前記コックは、袋体に取り付けるための取付部と、前記袋体に収容された液体を注出する注出口と、前記注出口を開閉する操作部と、前記計量カップが備えるスリット部を着脱可能に取り付けるつばと、それらが連結された胴体部とで少なくとも構成され、
前記計量カップは、前記コックの注出口から注出する液体を収容する液体収容部と、前記つばを上下から挟んでスライドするスリット部と、前記スリット部をスライドさせて前記つばに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部に導入する段差部とを有する一体成形体で少なくとも構成されている、ことを特徴とする計量カップとコックとの組み合わせ。
【請求項9】
前記つばは、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し前後方向に延びる平板である、請求項8に記載の計量カップとコックとの組み合わせ。
【請求項10】
前記段差部は、前記液体収容部の上縁部を切り欠いて形成され前記スリット部から下方に延びる凹みであり、前記スリット部は、前記段差部上方に位置して前記凹み上縁に水平又は略水平に左右一対に設けられており、
前記一対のスリット部は、中央が凹又は凸の湾曲形状の弾性構造であり、前記つばの胴体部側には、中央が凹又は凸の湾曲形状の湾曲形状構造が設けられている、請求項8又は9に記載の計量カップとコックとの組み合わせ。
【請求項11】
前記段差部は、前記スリット部から下方に延びる凹みであり、該凹み上縁から前記スリット部までの長さが前記コックのつばから注出口先端までの長さよりも長い、請求項8~10のいずれか1項に記載の計量カップとコックとの組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量カップ及びその計量カップとコックとの組み合わせに関する。さらに詳しくは、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体を収容した袋体を外装箱に収納したバッグインボックスのコックに着脱容易で、目視による注出量の確認も容易な計量キャップ、及びその計量カップとコックとの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体は、ボトル容器やバッグインボックス容器に収容され、所定量を計量カップで計量して使用されている例が多い。そのため、所定量を計量カップで容易に計量することができることが望ましく、使い勝っての良い計量手段が検討されている。しかし、ボトル容器に比べて比較的容量の大きいバッグインボックス容器では、液体を注出するためのコックとして、ハンドルを回転させて開閉する等、一方の手で計量カップを持ち、もう一方の手でコックを操作するものが多い。一方で、両手を使わないでも容易に計量できる計量手段が要請されている。
【0003】
上記要請に対し、例えば特許文献1では、バルブの開閉で収容液の注出操作を行えるバッグインボックスを、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体を収容する容器とし、計量カップにて収容液を計量して適量の注出が簡単に行えるようにし、その計量カップの取り扱いを簡便にする技術が提案されている。この技術は、上面が開放のカップ本体と、カップ本体の上面に重ね合わせ可能な蓋体とからなり、蓋体は、下向き注出管に取り付け可能な取付部を備え、蓋体のカップ本体への重ね合わせと取付部の下向き注出管への取り付けとにより、カップ本体、下向き注出管に対してこの下向き注出管から注出される液体を下受けする箇所に位置するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-285168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術では、計量カップが備えるU字構造の取付部をコックの円筒部に取り付けているので、計量カップを取り付けた後にコックを操作することができ、両手を使わないでも計量できる。しかしながら、蓋体がカップの上面の大半を覆ってしまうため、カップ上面からの目視による注出量の確認がしづらく、十分に使い勝っての良いものとは言い難い。さらに、上記先行技術では、計量カップが、2ピースの成形品又はヒンジ部を介して接続された1ピースの成形品であり、安価に大量生産するには不向きである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、目視による注出量の確認が容易で、両手を使わないでも容易に計量できる、安価で大量生産可能な計量カップ及びその計量カップとコックとの組み合わせを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る計量カップは、コックが有するつばに着脱可能に取り付けることができ、前記コックの注出口から注出する液体を計量する計量カップであって、
前記液体を収容する液体収容部と、前記つばを上下から挟んでスライドするスリット部と、前記スリット部をスライドさせて前記つばに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部内に導く段差部と、を有する一体成形体で少なくとも構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップとすることができる。また、スリット部が、コックのつばを上下から挟んでスライドするので、コックに着脱可能に取り付けることができる。また、段差部を有するので、スリット部をスライドさせてつばに取り付ける際に、注出口が液体収容部に当たることなく容易に液体収容部内に導くことができる。また、従来のような蓋体がないので、カップ上面からの目視による注出量の確認が容易である。
【0009】
本発明に係る計量カップにおいて、前記スリット部は、前記段差部上方に位置して、前記液体収容部の上縁部を切り欠いた切り欠き部に水平又は略水平に左右一対に設けられている。この発明によれば、スリット部が段差部上方の液体収容部上縁部に左右一対で形成されているので、一対のスリット部がコックのつばを上下から挟んでスライドする。
【0010】
本発明に係る計量カップにおいて、前記スリット部は、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し前後方向に延びる平板形状の前記つばに取り付けられる。この発明によれば、左右位置に形成されたつばに、計量カップのスリット部をスライドさせて取り付けることができる。
【0011】
本発明に係る計量カップにおいて、前記スリット部は、前記コックに係止する係止構造を一体又は別体で有する。この発明によれば、計量カップがコックから外れて滑り落ちることがない。
【0012】
本発明に係る計量カップにおいて、前記一対のスリット部は、前記つばの胴体部側の湾曲形状と同じ、中央が凹んだ湾曲形状の弾性構造になっている。この発明によれば、中央が凹んだ湾曲形状の弾性構造が、つばの胴体部側の湾曲形状と同じであるので、その湾曲形状の弾性構造の付勢力により、スリット部がコックから外れるのを防ぐことができる。
【0013】
本発明に係る計量カップにおいて、前記段差部は、前記スリット部から下方に延びる凹みであり、該凹み上縁から前記スリット部までの長さが前記コックのつばから注出口先端までの長さよりも長い。この発明によれば、凹み上縁からスリット部までの長さが、コックのつばから注出口先端までの長さよりも長いので、計量カップをスライドさせて取り付ける際に、注出口先端が計量カップに当たることを防ぐことができる。
【0014】
本発明に係る計量カップにおいて、前記段差部は、前記液体収容部の一部を構成する、又は、前記液体収容部への連通口を有する。この発明によれば、段差部は、注出口先端が液体収容部に当たることなく容易に液体収容部内に導くので、その段差部が液体収容部の一部を構成するか、液体収容部への連通口を有するように構成されていることにより、注出口からの液体を液体収容部に収容することができる。
【0015】
(2)本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせは、コックに計量カップを着脱容易に取り付けることができる組み合わせであって、
前記コックは、袋体に取り付けるための取付部と、前記袋体に収容された液体を注出する注出口と、前記注出口を開閉する操作部と、前記計量カップが備えるスリット部を着脱可能に取り付けるつばと、それらが連結された胴体部とで少なくとも構成され、
前記計量カップは、前記コックの注出口から注出する液体を収容する液体収容部と、前記つばを上下から挟んでスライドするとともに前記つばに係止する係止構造を有するスリット部と、前記スリット部をスライドさせて前記つばに取り付ける際に前記注出口を前記液体収容部に導入する段差部とを有する一体成形体で少なくとも構成されている、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記つばは、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し前後方向に延びる平板である。この発明によれば、左右位置に形成されたつばに、計量カップのスリット部をスライドさせて取り付けることができる。
【0017】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記一対のスリット部は、中央が凹又は凸の湾曲形状の弾性構造であり、前記つばの胴体部側には、中央が凹又は凸の湾曲形状構造が設けられている。この発明によれば、中央が凹又は凸の湾曲形状の弾性構造が、つばの胴体部側の湾曲形状構造と同じであるので、その弾性構造の付勢力により、スリット部がコックから外れるのを防ぐことができる。
【0018】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記段差部は、前記スリット部から下方に延びる凹みであり、該凹み上縁から前記スリット部までの長さが前記コックのつばから注出口先端までの長さよりも長い。この発明によれば、凹み上縁からスリット部までの長さが、コックのつばから注出口先端までの長さよりも長いので、計量カップをスライドさせて取り付ける際に、注出口先端が計量カップに当たることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、目視による注出量の確認が容易で、両手を使わないでも容易に計量できる、安価で大量生産可能な計量カップ及びその計量カップとコックとの組み合わせを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る計量カップの一例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせの一例を示す斜視図である。
図3】コックの一例を示す斜視図である。
図4】計量カップの側面図(A)と平面図(B)と正面図(C)の例である。
図5】プッシュ式コックのつば及びその周辺形状の説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。
図6】段差部とコックの注出口との関係を示す説明図である。
図7】計量カップとプッシュ式コックとの組み合わせの使用形態の一例を示す説明図である。
図8】係止構造の他の形態例である。
図9】計量カップを取付部位に取り付ける場合の形態を示す例であり、(A)は取付部位を傾斜させた形態であり、(B)はスリットを傾斜させた形態である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る計量カップ及び計量カップとコックとの組み合わせについて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記実施の形態に記載の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や使用例も含む。また、本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更や上記実施の形態の組み合わせを施してもよい。
【0022】
[基本構成]
本発明に係る計量カップ10は、図1及び図2に示すように、コック20が有するつば24に着脱可能に取り付けることができ、コック20の注出口23から注出する液体を計量する計量カップである。この計量カップ10は、液体を収容する液体収容部1と、つば24を上下から挟んでスライドするスリット部2と、スリット部2をスライドさせてつば24に取り付ける際に、注出口23を液体収容部1内に導く段差部3と、を有する一体成形体で少なくとも構成されている。
【0023】
本発明に係る計量カップ10とコック20との組み合わせ30は、図2に示すように、コック20に計量カップ10を着脱容易に取り付けることができる組み合わせである。コック20は、袋体に取り付けるための取付部27と、袋体に収容された液体を注出する注出口23と、注出口23を開閉する操作部22と、計量カップ10が備えるスリット部2を着脱可能に取り付けるつば24と、それらが連結された胴体部21とで少なくとも構成されている。計量カップ10は、コック20の注出口23から注出する液体を収容する液体収容部1と、つば24を上下から挟んでスライドするとともにつば24に係止する係止構造11を有するスリット部2と、スリット部2をスライドさせてつば24に取り付ける際に注出口23を液体収容部1に導入する段差部3とを有する一体成形体で少なくとも構成されている。
【0024】
計量カップ10は、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップとすることができる。また、スリット部2が、コック20のつば24を上下から挟んでスライドするので、コック20に着脱可能に取り付けることができる。また、段差部3を有するので、スリット部2をスライドさせてつば24に取り付ける際に、注出口23が液体収容部1に当たることなく容易に液体収容部1内に導くことができる。また、従来のような蓋体がないので、カップ上面からの目視による注出量の確認が容易である。
【0025】
以下、各構成要素について詳しく説明する。なお、「前後方向Y」とは、バックインボックス等の液体容器にコック20が取り付けられ、そのコック20に計量カップ10が取り付けられている場合の、液体容器側から計量カップ10の方向であり、「手前」というときは、計量カップ10側であり、「奥」又は「奥側」というときは、コック側である。「左右方向X」とは、手前から見た場合の左右方向のことである。「上下方向Z」とは、注出口23から液体が落ちる方向である。
【0026】
[計量カップ]
計量カップ10は、コック20が有するつば24に着脱可能に取り付けることができ、コック20の注出口23から注出する液体を計量する。計量カップ10は、液体収容部1とスリット部2と段差部3とを有した一体成形体で少なくとも構成されている。この計量カップ10は、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップ10とすることができる。
【0027】
「有する」としたのは、これら以外の構造要素をさらに含んでいてもよいことを意味している。「一体成形体で少なくとも構成されている」としたのは、一体成形体だけで構成されていてもよいし、一体成形体にさらに別部材が追加されていてもよいことを意味している。「一体成形体」は、射出成形機で成形された一体物の意味である。こうした計量カップ10の形態は、下記の各構成要素を有し、その作用効果を同じくするものであれば、図1及び図4に示す形態に限定されず、各種の構造形態であってもよい。
【0028】
(液体収容部)
液体収容部1は、液体を収容する部分である。液体は、液体容器(例えばバックインボックス等)に取り付けられたコック20の注出口23から注出されるものであり、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等のように、所定量を計量して用いる液体であることが好ましい。液体収容部1には、そうした液体の所定量を計量するため、図1に示すように、見えやすい位置に目盛りが付されていることが好ましい。なお、計量カップ10全体の色や透明度も特に限定されないが、容器側面に設けた目盛りで、収容された液体を透けてみる必要があるので、透明、半透明、又は透けて見える白色系の色合いであることが好ましい。
【0029】
液体収容部1の形状は特に限定されないが、図1に示すように、円形又は略円形や多角形又は略多角形のカップ状容器であればよく、円形又は略円形のカッブ状容器が好ましい。底1bは通常は平らであり、底1bの周縁1cは滑らかな曲面になっていることが好ましい。側面1dには滑り止めの凹凸が縦方向、横方向及び斜め方向から選ばれるいずれか1又は横2以上の方向に配列されていてもよい。上方は開口しており、上縁部1aで開口部が形成されている。開口部からは、収容された液体の注出量を目視により容易に確認することができる。手前側は、コック20が取り付けられる側の反対側であるが、図1の例では、スリット部2よりも低い位置に段差になってえぐれた形態になっている。こうすることにより、収容された液体の量を容易に確認することができる。なお、これに限定されず、段差がなく、スリット部2と同じ高さの上縁部1aで開口部を構成するものであってもよい。。「略円筒形」とは、液体収容部1を平面視した形状が円形に近い形状であることを意味し、「略多角筒形」とは、液体収容部1を平面視した形状が多角形に近い形状であることを意味する。
【0030】
(スリット部)
スリット部2は、コック20のつば24を上下から挟んで、計量カップ10をスライドさせ、コック20に着脱可能に取り付けるように機能する。このスリット部2は、段差部3の上方に位置して、液体収容部1の上縁部1aを切り欠いた切り欠き部2aに水平又は略水平に設けられている。こうすることにより、スリット部2が段差部3の上方の液体収容部上縁部1aに左右一対で形成される。形成された一対のスリット部2,2は、コック20のつば24を上下から挟んで、計量カップ10を前後方法Yにスライドさせるように機能する。なお、切り欠き部2aは、平面視で円形又は略円形の液体収容部1の奥側に、滑らかな曲線部を経て連続した略平行に延びた部分(段差部3も含まれる)に設けられる。図4に示すように、切り欠くことで段差部3を形成できるとともに、側面も平行又は略平行であるので、切り欠いてできた対向する平行な対向側面に、スリット2hをそれぞれ形成することができる。
【0031】
スリット部2において、「水平」とは、計量カップ10が目盛り付きの液体容器であることから、スリット2hが収容された液体面と水平になっているという意味であり、「略水平」とは、スリット2hが厳密に水平でなくてもよいという意味であり、例えば、スリット2hを奥から手前に少し下げて形成した場合や、少し上げて形成した場合を含んでいる。例えば、バックインボックスにコック20が取り付けられ、そのコック20に計量カップ10が取り付けられる場合、計量カップ10に液体が注出されると液体収容部1が重くなってコック20が多少下向きになる可能性がある。そうした場合に、例えば図9(B)に示すように、スリット2hをやや下向きに形成することにより、スリット部2をつば24にはめ込んだ際に、計量カップ10の手前がθ2の角度でやや上向きになり、その後液体が入って重くなって計量カップ10の手前が下がり気味になっても、液体面は水平になり、ほぼ正確に計量できることになる。また、例えば図9(A)に示すように、つば24を手前が少し上がるようにθ1の角度だけ傾斜させている場合は、スリット2hは水平のままでもよく、液体が入って重くなって計量カップ10の手前が下がり気味になっても、液体面は水平になり、ほぼ正確に計量できることになる。
【0032】
スリット部2は、コック20のつば24に取り付けられる。取り付け相手のつば24は、図3に示すように、コック20の胴体部21の少なくとも左右位置に突出し、前後方向Yに延びる平板形状として設けられている。左右位置に形成されたつば24に対し、左右一対のスリット部2をはめ込んで取り付ける。スリット部2の隙間幅は、つば24の厚さよりもわずかに大きいことが好ましい。このわずかな大きさが、クリアランスとなって計量カップ10のスライド動作を滑らかに行わせることになる。クリアランスの程度は任意に調整される。前後方向Yに延びるスリット2hの長さは特に限定されないが、がたつきなく安定にはめ込まれた状態が維持できる長さであることが望ましい。
【0033】
スリット部2は、細長い隙間で形成されたスリット2hと、スリット2hの下に位置する側面部分2bと、上に位置する帯状部分2cとで構成されている。側面部分2bの端部2gと、帯状部分2cの端部2fとは、側面部分端部2gが手前になっており、帯状部分端部2fは奥に向かって長くなっている。側面部分端部2gのスリット2h側のコーナーと、帯状部分端部2fのスリット2h側のコーナーは、コック20のつば24をはめ込み易くするために面取りした面取り部2d,2eとなっていることが好ましい。
【0034】
一対のスリット部2,2の各帯状部分2cは、図5に示すつば24の胴体部側に形成された系止部25の湾曲凹形状と同じ形状であり、中央が凹んだ湾曲凹形状の弾性構造になっていることが好ましい。こうすることにより、中央が凹んだ湾曲凹形状の帯状部分2cが、つば24の胴体部側の系止部25が有する湾曲凹形状と同じであるので、その湾曲凹形状の帯状部分2cと、湾曲凹形状の系止部25とが係止構造11となる。この係止構造11では、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力F(図4(B)参照)により、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐことができる。
【0035】
スリット部2の形状は、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐ係止構造11を実現するものであれば、図示の例に限定されず、種々の構造形態であってもよい。この計量カップ10は、射出成形等で一体成形されるので、スリット部2や段差部3は液体収容部1とともに一体成形される。したがって、スリット部2を構成するスリット2hや帯状部分2c等も容易に成形することができる。係止構造11は、液体収容部1の側面形状と平面視で同じになるように射出成形金型を設計するのが便利であり、図4の例でも、スリット2hを形成する箇所の側面の平面視形状は中央が凹んだ湾曲凹形状であり、係止構造11も同じ形状になっていることが好ましい。なお、射出成形金型を変更すれば、係止構造11を任意に変更することができる。
【0036】
こうしたスリット部2は、計量カップ10の一体物又は別体物としてコック20に係止する係止構造11として機能するとともに、着脱可能に機能する。スリット部2がコック20に係止する係止構造11は、上記したように、一体成形体である計量カップ10に設けられたスリット部2が兼ね備えるものであってもよいし、その一体成形体とは別の別体として計量カップ10に付加されたものであってもよい。その際には、係止構造11が煩雑で面倒にならない構造であることが好ましい。なお、図7の例は、スリット部2が係止構造11として機能するとともに着脱可能に機能する他の例であるが、それらに限定されない。
【0037】
図7(A)の例は、つば24の胴体部側に形成された系止部25には、その中央が外側に凸の湾曲凸形状部28(湾曲形状)を有している。また、スリット部2の帯状部分2cには、中央が外側に凸の湾曲凸形状部14を有している。こうした帯状部分2cと系止部25とで、係止機能と、着脱機能とを実現している。この例も上記同様、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐいでいるとともに、着脱可能としている。
【0038】
図7(B)の例は、つば24の胴体部側に形成された系止部25には、その取付部27側に凹部29を有している。また、スリット部2の帯状部分2cには、その先端に先端突起部15を有している。こうした帯状部分2cと系止部25とで、係止機能と着脱機能とを実現している。この例も上記同様、帯状部分2cが有する弾性作用の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐいでいるとともに、着脱可能としている。
【0039】
図8は、係止構造11の他の例を備えた計量カップ10である。この計量カップ10は、スリット部2を覆うカバー42が付加されている以外は、図1等に示す計量カップ10と同じである。したがって、それ以外のスリット部2の構造形態は、上記したものと同様であるのでここではその説明を省略する。カバー42は、帯状部分2cを補強するよう作用し、帯状部分2cを折れ難くすることができる。カバー42は、液体収容部1から段差部3に繋がる凹形状の湾曲部に設けられ、図8に示すように、スリット2h全てを覆うように設けられていてもよし、スリット2hの一部を覆うように設けられていてもよく、特に限定されない。
【0040】
(段差部)
段差部3は、スリット部2をスライドさせてつば24に取り付ける際に、注出口23が液体収容部1に当たることなく容易に液体収容部1内に導く部位である。段差部3の構造は、スリット部2から下方に延びる凹みである。その凹み程度は、凹み上縁3aからスリット部2までの長さL1が、コック20のつば24から注出口先端23aまでの長さL2よりも長い必要がある。こうすることにより、計量カップ10をスライドさせて取り付ける際に、注出口先端23aが計量カップ10に当たることを防ぐことができる。こうした段差部3は、スリット部2のところでも説明したように、スリット部2の下方に位置して、液体収容部1の上縁部1aを切り欠く形状とすることで形成される。下方側の切り欠き長さは、上記したようにスリット部2からL1の長さ切り欠くことになる。
【0041】
段差部3は、液体収容部1の一部を構成する、又は、液体収容部1への連通口を有する。段差部3は、注出口先端23aが液体収容部1に当たることなく容易に液体収容部内に導くので、その段差部3が液体収容部1の一部を構成するか、液体収容部1への連通口(図示しない)を有するように構成されていることにより、注出口23から注出される液体を段差部3受けた後に液体収容部1に収容することができる。「一部を構成する」とは、図4に示すように、段差部でも液体を収容して、計量カップ10全体の収容量の一部として含まれることを意味する。「液体収容部1への連通口を有する」とは、上記のように容器の一部を構成するか否かにかかわらず、段差部3と液体収容部1とが中間壁で区分けされており、その中間壁の下部に液体収容部1に液体を通過させる連通口を有する形態を包含する意味である。こうした理由は、段差部3がスリット部2の下方に設けられるものであり、そのスリット部2がコック胴体部21周りのつば24にはめ込まれるので、スリット部2の下方にはコック20の注出口23が位置することになっているからである。
【0042】
(コック)
コック20は、図3及び図5に示すように、上記した計量カップ10を着脱容易に取り付ける対象であり、計量カップ10と組み合わせて用いられる。コック20は、袋体の口部に取り付けるための取付部27と、袋体に収容された液体を注出する注出口23と、注出口23を開閉する操作部22と、計量カップ10が備えるスリット部2を着脱可能に取り付けるつば24と、それらが連結された胴体部21とで少なくとも構成されている。なお、例えば、バックインボックス等の袋体の口部(図示しない)は、外装箱に固定されており、コック20の取付部27は、そうした口部に取り付けられる。
【0043】
注出口23は、袋体に収容された液体を注出する部分であり、注出口23から注出される液体は、取り付けられた計量カップ10に液体を供給する。注出口先端23aは、計量カップ10の着脱時に、段差部3の存在によって計量カップ10に当たることがない。
【0044】
操作部22は、注出口23を開閉する部分であり、コックの形態に応じてプッシュ式、スクリュー式、レバー式等での開閉機能を操作する部分である。本発明では、これらいずれの形式のコックにも適用できる。
【0045】
つば24は、計量カップ10が備えるスリット部2を着脱可能に取り付ける部分である。つば24は、胴体部21の少なくとも左右位置に突出し前後方向Yに延びる平板である。こうすることにより、左右位置に形成されたつば24に、計量カップ10のスリット部2をスライドさせて取り付けることができる。つば24の大きさは特に限定されないが、計量カップ10の一体成形体の寸法に応じてスリット2hの長さや左右の間隔が決まってくるので、それに対応させた寸法であることが好ましい。
【0046】
つば24の胴体部側には、中央が凹んだ湾曲凹形状26の系止部25が設けられている。こうすることにより、つば24の胴体部側の湾曲凹形状26の系止部25と、計量カップ10のスリット部2の中央が凹んだ湾曲凹形状の係止構造11とが同じであるので、スリット部2の係止構造11の付勢力Fにより、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐことができる。
【0047】
なお、計量カップ10のところでも説明したように、バックインボックスにコック20が取り付けられ、そのコック20に計量カップ10が取り付けられる場合、(1)計量カップ10に液体が注出されると液体収容部1が重くなってコック20が多少下向きになる可能性がある。そうした場合に、図8(B)に示すように、つば24を水平にしてスリット2hをθ2の角度だけやや下向きに形成して組み合わせてもよいし、図8(A)に示すように、つば24を手前がθ1の角度だけ少し上がるように傾斜させてスリット2hを水平のままとしてもよい。なお、ここでの「水平」とは、胴体部21の軸線に対して直交する方向のことである。
【0048】
以上説明したように、本発明は、一体成形体で少なくとも構成されているので、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能な計量カップとすることができる。また、スリット部2が、コック20のつば24を上下から挟んでスライドするので、コック20に着脱可能に取り付けることができる。また、段差部3を有するので、スリット部2をスライドさせてつば24に取り付ける際に、注出口23が液体収容部1に当たることなく容易に液体収容部1内に導くことができる。また、コック20に係止する係止構造11を一体又は別体で有するように構成した場合は、計量カップ10がコック20から外れて滑り落ちることがない。
【符号の説明】
【0049】
1 液体収容部
1a 液体収容部上縁部
1b 底
1c 底の周縁
1d 側面
2 スリット部
2a 切り欠き部
2b 側面部分
2c 帯状部分
2d 面取り部
2e 面取り部
2f 帯状部分端部
2g 側面部分端部
2h スリット
3 段差部
3a 凹み上縁
3b 下面
4 目盛り
10 計量カップ
11 係止構造
13 凹部
14 湾曲凸形状部
15 先端突起部
20 コック
21 胴体部
22 操作部
23 注出口
23a 注出口先端
24 つば
25 系止部
26 湾曲凹形状
27 取付部
28 湾曲凸形状部
29 凹部
30 組み合わせ
42 カバー
S スライド方向
L1 凹み上縁からスリット部までの長さ
L2 コックのつばから注出口先端までの長さ
X 左右方向
Y 前後方向
Z 上下方向
F 付勢力
θ1 つばの傾斜角度
θ2 スリットの傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9