(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用多孔質層
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20221118BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20221118BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20221118BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20221118BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20221118BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20221118BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20221118BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20221118BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20221118BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20221118BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20221118BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/42
H01M10/0566
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/423
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/457
(21)【出願番号】P 2019078115
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 志津香
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540344(JP,A)
【文献】特開平05-290823(JP,A)
【文献】特開2000-260414(JP,A)
【文献】特開2017-103040(JP,A)
【文献】特開2017-103043(JP,A)
【文献】特開2008-270178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0045814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40 -50/497
H01M 10/0566
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破裂強度が、3.0kPa以上、22.0kPa以下である、非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項2】
ポリオレフィン、(メタ)アクリレート樹脂、含フッ素樹脂、含窒素芳香族樹脂、ポリエステル樹脂および水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の樹脂を含む、請求項1に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項3】
含窒素芳香族樹脂を含む、請求項1に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項4】
含窒素芳香族樹脂は、ポリアミド樹脂を含む、請求項2又は3に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂は、アラミド樹脂である、請求項4に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項6】
前記アラミド樹脂は、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)およびパラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体からなる群から選択される1以上のアラミド樹脂である、請求項5に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項7】
耐熱性フィラーを含む、請求項1~6の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項8】
前記耐熱性フィラーが、無機フィラーである、請求項7に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項9】
前記無機フィラーが、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよびシリカからなる群から選択される1以上の無機物を含む、請求項8に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
【請求項10】
ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、請求項1~9の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用多孔質層が積層している、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項11】
請求項1~9の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用多孔質層または請求項10に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用多孔質層に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められてきている。
【0003】
その非水電解液二次電池の部材として、耐熱性に優れたセパレータの開発が進められている。また、前記耐熱性に優れたセパレータとして、耐熱性成分を含む多孔質層を備えたセパレータが知られている。
【0004】
特許文献1には、アルカリ電池セパレータ不織布の破裂強度が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載の多孔質層を備えたセパレータのような、従来の耐熱性成分を含む多孔質層を備えたセパレータは、長期電池特性がまだ不充分であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[11]に示す発明を含む。
[1]破裂強度が、3.0kPa以上、22.0kPa以下である、非水電解液二次電池用多孔質層。
[2]ポリオレフィン、(メタ)アクリレート樹脂、含フッ素樹脂、含窒素芳香族樹脂、ポリエステル樹脂および水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の樹脂を含む、[1]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[3]含窒素芳香族樹脂を含む、[1]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[4]含窒素芳香族樹脂は、ポリアミド樹脂を含む、[2]又は[3]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[5]前記ポリアミド樹脂は、アラミド樹脂である、[4]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[6]前記アラミド樹脂は、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)およびパラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体からなる群から選択される1以上のアラミド樹脂である、[5]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[7]耐熱性フィラーを含む、[1]~[6]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[8]前記耐熱性フィラーが、無機フィラーである、[7]に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[9]前記無機フィラーが、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよびシリカからなる群から選択される1以上の無機物を含む、請求項8に記載の非水電解液二次電池用多孔質層。
[10]ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、[1]~[9]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用多孔質層が積層している、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
[11][1]~[9]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用多孔質層または[10]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層は、100サイクル前後の1kHz交流抵抗増加率等の長期電池特性に優れる非水電解液二次電池を提供することができるとの効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0010】
[実施形態1:非水電解液二次電池用多孔質層]
(1.非水電解液二次電池用多孔質層)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層(以下、単に「多孔質層」とも称する)は、破裂強度が、3.0kPa以上、22.0kPa以下である。
【0011】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層は、単独で非水電解液二次電池用セパレータを構成してもよく、あるいは、ポリオレフィン多孔質フィルム(以下、単に「多孔質フィルム」とも称する)の少なくとも一方の面に積層されて、後述する非水電解液二次電池用積層セパレータ(以下、単に「積層セパレータ」とも称する)を構成し得る。
【0012】
本発明の一実施形態における「破裂強度」は、「ミューレン法」と呼称される方法にて測定される。前記「破裂強度」は、薄膜をゴム風船の表面、すなわち膨張ゴム面(ゴム隔膜)に固定し、当該ゴム風船を膨張させ、当該薄膜が破裂する際の当該薄膜にかかる応力の大きさである。その場合、測定対象である前記薄膜の下側において前記ゴム風船が膨張することによって、当該薄膜に全方位から応力がかかる。
【0013】
よって、前記「破裂強度」は、薄膜の強度を測定する際に一般に使用される「引張強度」が、一方向から加えられる応力に対する強度および伸縮性を評価するパラメータであるのに対して、全方位から加えられる応力に対する強度および伸縮性を評価するパラメータである。また、本発明の一実施形態に係る多孔質層を構成する成分である樹脂およびフィラー自体の伸縮性、並びに、前記多孔質層の単位面積当たりの重量を制御することによって、前記「破裂強度」が調整され得る。
【0014】
ここで、非水電解液二次電池は、充放電サイクルを繰り返すことによって、非水電解液二次電池用セパレータまたは非水電解液二次電池用積層セパレータを構成する多孔質層の下側にて、電極(通常は負極)が膨張する。よって、前述の「破裂強度」の測定における前記薄膜と同様、前記電極の膨張によって、前記多孔質層に対して、全方位から応力がかかる。
【0015】
従って、前記「破裂強度」は、前記「引張強度」等と異なり、充放電サイクルを繰り返した際に、非水電解液二次電池を構成する多孔質層に加えられる応力に対する当該多孔質層の強度および伸縮性を、当該多孔質層に全方向から応力が加えられる実際の非水電解液二次電池に近い態様にて評価することができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、「破裂強度」が3.0kPa以上であることによって、前記電極の膨張に起因して前記多孔質層に加えられる応力、すなわち前記電極の膨張による前記多孔質層に対する圧迫によって、前記多孔質層および前記多孔質層を含む非水電解液二次電池用積層セパレータが劣化および変形することを抑制することができる。その結果、充放電サイクルを繰り返した際における、非水電解液二次電池の長期電池特性等の電池性能を向上させることができる。
【0017】
前述の観点から、本発明の一実施形態に係る多孔質層の「破裂強度」は、5.0kPa以上であることが好ましく、10.0kPa以上であることがより好ましい。
【0018】
一方、非水電解液二次電池において、電極は、充放電サイクルに伴って膨張と収縮とを繰り返す。前記電極の膨張によって、前記多孔質層が伸びすぎる場合には、当該電極が収縮した際に、前記多孔質層が当該電極の収縮に追随しきれず、前記多孔質層および前記多孔質層を含む非水電解液二次電池用積層セパレータが弛緩した状態が発生する場合がある。その結果、前記多孔質層および前記非水電解液二次電池用積層セパレータのイオン透過の均一性が悪化し、非水電解液二次電池の電池性能が低下する場合がある。
【0019】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、「破裂強度」が22.0kPa以下であることによって、前述の弛緩した状態の発生を抑制し、前記多孔質層および前記非水電解液二次電池用積層セパレータのイオン透過の均一性を向上させることができる。その結果、非水電解液二次電池の長期電池特性等の電池性能を向上させることができる。前述の観点から、本発明の一実施形態に係る多孔質層の「破裂強度」は、20.0kPa以下であることが好ましく、18.0kPa以下であることがより好ましい。
【0020】
「破裂強度」は、5.0kPa以上20.0kPa以下であってもよく、10.0kPa以上18.0kPa以下であってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、多孔質層の「破裂強度」は、例えば、(i)ポリオレフィン多孔質フィルムの片面上に多孔質層が積層されている非水電解液二次電池用積層セパレータの破裂強度を測定し、(ii)当該非水電解液二次電池用積層セパレータから多孔質層を除去して得られるポリオレフィン多孔質フィルムのみの破裂強度を測定した後、(iii)当該非水電解液二次電池用積層セパレータの破裂強度から当該ポリオレフィン多孔質フィルムのみの破裂強度を差し引くことによって算出することができる。
【0022】
また、多孔質層の「破裂強度」は、例えば、(a)ポリオレフィン多孔質フィルムのみの破裂強度を測定し、(b)当該ポリオレフィン多孔質フィルムの片面上に多孔質層が積層された非水電解液二次電池用積層セパレータの破裂強度を測定し、(c)当該非水電解液二次電池用積層セパレータの破裂強度から当該ポリオレフィン多孔質フィルムのみの破裂強度を差し引くことによっても算出することができる。
【0023】
前述の「破裂強度」の測定は、例えば、インテック株式会社製、IT-MBDA等の自動ミューレン破裂強度試験機を用いて測定される。また、非水電解液二次電池用積層セパレータの破裂強度の測定においては、前記非水電解液二次電池用積層セパレータにおける多孔質層の表面が、前記ゴム隔膜側となるように、前記非水電解液二次電池用積層セパレータを自動ミューレン破裂強度試験機にセットすることが好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、非水電解液二次電池を構成する部材として、ポリオレフィン多孔質フィルムと、正極及び負極の少なくともいずれか一方との間に配置され得る。前記多孔質層は、ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも一方の面に形成され得る。或いは、前記多孔質層は、正極及び負極の少なくともいずれか一方の活物質層上に形成され得る。或いは、前記多孔質層は、ポリオレフィン多孔質フィルムと、正極及び負極の少なくともいずれか一方との間に、これらと接するように配置されてもよい。ポリオレフィン多孔質フィルムと正極及び負極の少なくともいずれか一方との間に配置される多孔質層は1層でもよく2層以上であってもよい。
【0025】
前記多孔質層は、好ましくは、多孔質フィルムの面のうち、正極と対向する面に積層される。より好ましくは、当該多孔質層は、正極と接するように積層される。多孔質層は、絶縁性の多孔質層であることが好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、内部に多数の細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体或いは液体が通過可能となった層である。また、本発明の一実施形態に係る積層セパレータにおいて、前記多孔質層は、当該積層セパレータの最外層として、電極と接する層となり得る。
【0027】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、通常、樹脂を含んでなる樹脂層である。前記樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。
【0028】
本発明の一実施形態に係る多孔質層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート樹脂;含フッ素樹脂;含窒素芳香族樹脂;ポリエステル樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0029】
前述の樹脂のうち、ポリオレフィン、(メタ)アクリレート樹脂、含フッ素樹脂、含窒素芳香族樹脂、ポリエステル樹脂および水溶性ポリマーが好ましい。
【0030】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、及びエチレン/プロピレン共重合体等が好ましい。
【0031】
含フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、及びエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体等、並びに、前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴムを挙げることができる。
【0032】
含窒素芳香族樹脂としては、電池内部短絡時の安全性の観点から、アラミド樹脂、芳香族ポリアミドイミド、および芳香族ポリイミドからなる群から1種以上選択される樹脂が好ましい。
【0033】
アラミド樹脂には、芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリアミドなどが含まれる。芳香族ポリアミドとしては、パラ(p)-芳香族ポリアミドおよびメタ(m)-芳香族ポリアミドからなる群から1種以上選択される樹脂が好ましい。
【0034】
アラミド樹脂としては、具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)及びパラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体が好ましい。
【0035】
ポリエステル樹脂としては、ポリアリレートなどの芳香族ポリエステルおよび液晶ポリエステルが好ましい。
【0036】
ゴム類としては、スチレン/ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0037】
融点又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド等を挙げることができる。
【0038】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等を挙げることができる。
【0039】
なお、多孔質層に用いられる樹脂としては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、粒子を含み得る。本発明の一実施形態に係る多孔質層が粒子を含む場合には、前記樹脂は、バインダー樹脂の機能を有することとなる。前記粒子は、一般にフィラーと称される有機粒子または無機粒子のことである。また、前記粒子は、耐熱性フィラーであることが好ましい。前記耐熱性フィラーは、無機フィラーまたは耐熱性有機フィラーであり得、無機フィラーを含むことが好ましい。前記耐熱性フィラーは、融点が150℃以上であるフィラーを意味する。
【0041】
本発明の一実施形態に係る多孔質層に含まれる有機粒子を構成する有機物としては、具体的には、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単量体の単独重合体或いは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン/6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン/エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸;レゾルシノール樹脂等が挙げられる。前記有機粒子は、1種の有機物を含むものでもよいし、2種以上の有機物を含むものでもよい。
【0042】
前記レゾルシノール樹脂としては、具体的には、レゾルシン(レゾルシノール)、および、レゾルシンとアルデヒド単量体とを重合してなる重合体を挙げることができる。前記アルデヒド単量体としては、アルデヒドであれば特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール、チオフェンカルボキシアルデヒド等を挙げることができる。前記アルデヒド単量体は、ホルムアルデヒドであることがより好ましい。ホルムアルデヒドの単量体は、レゾルシンとの重合反応時に、ホルムアルデヒドの三量体であるトリオキサン、または、ホルムアルデヒドの多量体であるパラホルムアルデヒドから調製することもできる。なお前記アルデヒド単量体は、1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。
【0043】
本発明の一実施形態に係る多孔質層に含まれる無機粒子としては、具体的には、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライト、ガラス等の無機物からなる無機フィラーが挙げられる。当該無機フィラーは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
また、前記無機フィラーは、電池特性の観点から、金属酸化物からなる無機フィラーまたは金属水酸化物からなる無機フィラーであることが好ましい。前記金属酸化物からなる無機フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウムおよび/または酸化マグネシウムからなる無機フィラーを挙げることができる。前記金属水酸化物からなる無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムからなる無機フィラーを挙げることができる。
【0045】
前記フィラーの平均粒子径(D50)は、0.001μm以上、10μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、8μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、5μm以下であることが更に好ましい。前記フィラーの平均粒子径は、日揮装株式会社製のMICROTRAC(MODEL:MT-3300EXII)を用いて測定した値である。
【0046】
前記フィラーの形状は、原料である有機物または無機物の製造方法、多孔質層を形成するための塗工液を作製する際のフィラーの分散条件等によって変化するため、球形、長円形、短形、瓢箪形等の形状、或いは特定の形状を有さない不定形等、何れの形状であってもよい。
【0047】
多孔質層がフィラーを含んでいる場合において、フィラーの含有量は、当該フィラーを含む多孔質層を100体積%としたとき、40~99体積%であることが好ましく、45~95体積%であることがより好ましい。フィラーの含有量を前記範囲とすることにより、フィラー同士の接触によって形成される空隙が、樹脂等によって閉塞されることが少なくなり、充分なイオン透過性を得ることができると共に、単位面積当たりの重量を適切な値にすることができる。
【0048】
粒子は、粒子径や比表面積が互いに異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、耐熱性フィラーを含むことが好ましい。ここで、”耐熱性”とは、融点が150℃以上であることを意味する。前記耐熱性フィラーは、1種類の耐熱性フィラーでもよく、2種類以上の耐熱性フィラーが混合されていてもよい。前記耐熱性フィラーは、前記無機フィラー、耐熱性有機フィラーまたはこれらの混合物であることが好ましい。前記耐熱性フィラーは、前記無機フィラーを含むことが好ましい。
【0050】
耐熱性有機フィラーとしては、熱硬化性樹脂フィラー、耐熱性熱可塑性樹脂フィラーまたはこれらの混合物が好ましい。
【0051】
耐熱性有機フィラーを構成する樹脂としては、前記アラミド樹脂または前記レゾルシノール樹脂であることが好ましい。アラミド樹脂としては、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)及びパラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体が好ましい。
【0052】
また、本発明の一実施形態に係る多孔質層は、前記樹脂および前記粒子以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤およびワックスなどを挙げることができる。また、前記その他の成分の含有量は、多孔質層の全重量に対して、0重量%~10重量%であることが好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態に係る多孔質層の膜厚は、電池特性の低下を防ぐとの観点から、一層当たり、5μm以下であることが好ましく、一層当たり、4μm以下であることがより好ましい。また、前記多孔質層の膜厚は、電池の破損等による内部短絡を十分に防止することができ、かつ、電解液の保持量の低下を防ぐとの観点から、一層当たり、0.5μm以上であることが好ましく、一層当たり、1μm以上であることがより好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、イオン透過性の観点から、十分に多孔化された構造であることが好ましい。具体的には、空孔率が30%~60%の範囲であることが好ましい。
【0055】
前記空孔率の測定法としては、例えば、一定の体積(8cm×8cm×膜厚dcm)の多孔質層の重量W(g)、当該多孔質層の膜厚d(μm)および多孔質層の真比重ρ(g/cm3)から、以下の式(1)に基づき算出する方法を挙げることができる。
空孔率(%)=(1-{(W/ρ)/(8×8×d)})×100 (1)
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、イオン透過性の観点および正極および負極への粒子の入り込みを防止する観点から、平均孔径が20nm~100nmの範囲であることが好ましい。
【0056】
前記平均孔径の測定法は、例えば、本発明の一実施形態に係る多孔質層を上面から走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、無作為に選択した複数の空孔における孔径を測定し、その平均値を取ることによって算出することができる。
【0057】
本発明の一実施形態に係る多孔質層の単位面積当たりの重量は、多孔質層の強度、膜厚、重量およびハンドリング性の面から、多孔質層一層当たり、0.5~10g/m2であることが好ましく、0.5~5g/m2であることがより好ましい。本発明の一実施形態に係る多孔質層の破裂強度は、その材質および成分組成が同一である場合、前記多孔質層の単位面積当たりの重量とは相関している部分がある。前記多孔質層の破裂強度を好適に制御するとの観点からは、本発明の一実施形態に係る多孔質層の単位面積当たりの重量は、0.5~4.6g/m2であることが好ましく、1.0~3.0g/m2であることがより好ましい。
【0058】
(2.多孔質層の製造方法)
本発明の一実施形態に係る多孔質層の製造方法としては、例えば、以下に示す工程(1)~(3)の何れか1つの工程を含む、多孔質層を基材上に形成する方法を挙げることができる。以下に示す工程(1)~(3)における塗工液は、本発明の一実施形態に係る多孔質層を構成する成分として、通常、前記樹脂を含み、必要に応じて、前記粒子を含み得る。以下に示す工程(2)および工程(3)の場合においては、前記樹脂を析出させた後にさらに乾燥させ、溶媒を除去することによって、製造され得る。工程(1)~(3)における塗工液は、前記粒子が分散しており、かつ、前記樹脂が溶解している状態であってもよい。前記基材は、特に限定されないが、例えば、正極、負極、および、本発明の一実施形態における積層セパレータの基材である多孔質フィルムなどを挙げることができる。なお、前記溶媒は、前記樹脂を溶解させる溶媒であるとともに、前記樹脂または前記粒子を分散させる分散媒であるとも言える。
【0059】
(1)前記塗工液を、基材上に塗工し、前記塗工液中の溶媒を乾燥除去することによって多孔質層を形成させる工程。
【0060】
(2)前記樹脂を含む前記塗工液を、前記基材の表面に塗工した後、その基材を前記樹脂に対して貧溶媒である、析出溶媒に浸漬することによって、前記樹脂を析出させ、多孔質層を形成する工程。
【0061】
(3)前記樹脂を含む前記塗工液を、前記基材の表面に塗工した後、低沸点有機酸を用いて、前記塗工液の液性を酸性にすることによって、前記樹脂を析出させ、多孔質層を形成する工程。
【0062】
前記塗工液における溶媒は、前記基材に悪影響を及ぼさず、前記樹脂を均一かつ安定に溶解または分散し、前記粒子を均一かつ安定に分散させることができる溶媒であることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、アルコール類、水およびこれらのうちの2以上の混合溶媒が挙げられる。
【0063】
前記析出溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコールまたはt-ブチルアルコールを用いることが好ましい。
【0064】
前記工程(3)において、低沸点有機酸としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、酢酸等を使用することができる。
【0065】
本発明の一実施形態に係る多孔質層の製造方法において、好ましい製造方法を採用することによって、前記多孔質層の全方向に加えられる応力に対する強度および伸縮性を制御し、その結果、本発明の一実施形態に係る多孔質層の破裂強度を好適な範囲に調節することができる。
【0066】
前述の好ましい製造方法としては、塗工前の塗工液を静置し、前記塗工液の分散状態を適度に不均一にする方法が挙げられる。塗工前に塗工液を静置する時間は、10分~2時間が好ましく、45分~1時間15分であることがより好ましい。塗工液の分散状態を適度に不均一にすることにより、樹脂と粒子の均一性が適度に乱れた多孔質層を形成することができ、多孔質層における樹脂と粒子との間の接触面積を調整することができる。その結果、適度な伸縮性を有し、破裂強度が好ましい範囲内に調整された多孔質層を得ることができる。
【0067】
[実施形態2:非水電解液二次電池用積層セパレータ]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムの少なくとも一方の面に、前記多孔質層が積層した構成を備える。
【0068】
ポリオレフィン多孔質フィルムの両面に多孔質層が積層された積層セパレータの場合には、当該多孔質層の少なくとも一方の多孔質層が、本発明の一実施形態に係る多孔質層であればよく、ポリオレフィン多孔質フィルムの一方の面に、本発明の一実施形態に係る多孔質層が積層され、他方の面には別の多孔質層が積層されていることが好ましい。
【0069】
(1.ポリオレフィン多孔質フィルム)
本発明の一実施形態におけるポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリオレフィンを主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることが可能となっている。前記多孔質フィルムは、前記多孔質層が積層された、本発明の一実施形態に係る積層セパレータの基材となる。
【0070】
本発明の一実施形態に係る積層セパレータは、前記多孔質フィルムおよび前記多孔質層の他に、接着層、耐熱層、保護層等のその他の層をさらに備えていてもよい。
【0071】
多孔質フィルムに占めるポリオレフィンの割合は、多孔質フィルム全体の50体積%以上であり、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。また、前記ポリオレフィンには、重量平均分子量が5×105~15×106の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィンに重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、非水電解液二次電池用セパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0072】
熱可塑性樹脂である前記ポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体が挙げられる。前記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、前記共重合体としては、例えばエチレン/プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0073】
このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止することができるため、ポリエチレンがより好ましい。なお、この過大電流が流れることを阻止することをシャットダウンともいう。前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン/α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0074】
多孔質フィルムの膜厚は、4~40μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、6~15μmであることがさらに好ましい。
【0075】
多孔質フィルムの単位面積当たりの重量は、強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。ただし、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができるように、前記単位面積当たりの重量は、4~15g/m2であることが好ましく、4~12g/m2であることがより好ましく、5~10g/m2であることがさらに好ましい。
【0076】
多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で30~500sec/100mLであることが好ましく、50~300sec/100mLであることがより好ましい。多孔質フィルムが前記透気度を有することにより、充分なイオン透過性を得ることができる。多孔質フィルムに前述の多孔質層を積層させた積層セパレータの透気度は、ガーレ値で30~1000sec/100mLであることが好ましく、50~800sec/100mLであることがより好ましい。積層セパレータは、前記透気度を有することにより、非水電解液二次電池において、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0077】
多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止する機能を得ることができるように、20~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極および負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.30μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましく、0.10μm以下であることがさらに好ましい。
【0078】
(2.ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法)
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、以下に示すような工程を含む方法を挙げることができる。
【0079】
(A)超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリエチレンと、炭酸カルシウムまたは可塑剤等の孔形成剤と、酸化防止剤とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(B)得られたポリオレフィン樹脂組成物を一対の圧延ローラで圧延し、速度比を変えた巻き取りローラで引っ張りながら段階的に冷却し、シートを成形する工程、
(C)得られたシートの中から適当な溶媒にて孔形成剤を除去する工程、
(D)孔形成剤が除去されたシートを適当な延伸倍率にて延伸する工程。
【0080】
(3.非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法としては、例えば、前述の「多孔質層の製造方法」において、前記塗工液を塗布する基材として、前述のポリオレフィン多孔質フィルムを使用する方法を挙げることができる。
【0081】
[実施形態3:非水電解液二次電池]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層、または、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを含む。
【0082】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、本発明の一実施形態に係る多孔質層と、ポリオレフィン多孔質フィルムと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材、すなわち、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備えるリチウムイオン二次電池であり得る。なお、多孔質層以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0083】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層または本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを介して対向した構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0084】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、前記破裂強度が3.0kPa以上、22.0kPa以下である、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層を備えているため、長期電池特性に優れるという効果を奏する。
【0085】
(1.正極)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池における正極としては、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0086】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、例えば、V、Mn、Fe、Co、Ni等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0087】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。前記導電剤は、1種類のみを用いてもよく、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いる等、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、およびポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、並びに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。尚、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0089】
正極合剤を得る方法としては、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧して正極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にして正極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0090】
前記正極集電体としては、例えば、Al、Ni、ステンレス等の導電体が挙げられ、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0091】
シート状の正極の製造方法、即ち、正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、例えば、正極合剤となる正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法等が挙げられる。
【0092】
(2.負極)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池における負極としては、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0093】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、例えば、(1)天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料;(2)正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープ・脱ドープを行う酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物;(3)アルカリ金属と合金化するアルミニウム(Al)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、シリコン(Si)などの金属;(4)アルカリ金属を格子間に挿入可能な立方晶系の金属間化合物(AlSb、Mg2Si、NiSi2);(5)リチウム窒素化合物(Li3-xMxN(M:遷移金属))等が挙げられる。
【0094】
負極合剤を得る方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧して負極合剤を得る方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得る方法;等が挙げられる。
【0095】
前記負極集電体としては、例えば、Cu、Ni、ステンレス等の導電体が挙げられる。
【0096】
シート状の負極の製造方法、即ち、負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、例えば、負極合剤となる負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法等が挙げられる。前記ペーストには、好ましくは前記導電剤、および、前記結着剤が含まれる。
【0097】
(3.非水電解液)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であり、特に限定されないが、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、Li2B10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
本発明の一実施形態における非水電解液を構成する有機溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,2-ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート類;1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;3-メチル-2-オキサゾリドン等のカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3-プロパンサルトン等の含硫黄化合物;並びに、前記有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒;等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
(4.非水電解液二次電池の製造方法)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池の製造方法としては、例えば、前記正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とをこの順で配置して非水電解液二次電池用部材を形成した後、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れ、次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉する方法を挙げることができる。
【0100】
非水電解液二次電池の形状は、特に限定されるものではなく、薄板(ペーパー)型、円盤型、円筒型、直方体等の角柱型等のどのような形状であってもよい。尚、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を採用することができる。
【0101】
本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0103】
実施例および比較例における非水電解液二次電池用積層セパレータ、A層(ポリオレフィン多孔質フィルム)、B層(多孔質層)および非水電解液二次電池の物性等を、以下の方法で測定した。
【0104】
(1)膜厚(単位:μm):
非水電解液二次電池用積層セパレータの膜厚(即ち、全体の膜厚)、A層の膜厚、およびB層の膜厚は、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機を用いて測定した。
【0105】
(2)単位面積当たりの重量(単位:g/m2):
非水電解液二次電池用積層セパレータから、一辺の長さ6.4cm×4cmの長方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W(g)を測定した。そして、次式
単位面積当たりの重量(g/m2)=W/(0.064×0.04)
に従い、非水電解液二次電池用積層セパレータフィルムの単位面積当たりの重量を算出した。同様にして、A層の単位面積当たりの重量を算出した。B層の単位面積当たりの重量は、前記非水電解液二次電池用積層セパレータの単位面積当たりの重量からA層の単位面積当たりの重量を差し引いて算出した。
【0106】
(3)平均粒子径(D50)、粒度分布(単位:μm):
フィラーの平均粒子径および粒度分布を、日揮装株式会社製のMICROTRAC(MODEL:MT-3300EXII)を用いて測定した。
【0107】
(4)ミューレン破裂強度の測定
市販の自動ミューレン破裂強度試験機(インテック株式会社製、IT-MBDA)を用い、以下に示す条件にて、実施例1~4、および比較例1~2にて製造した非水電解液二次電池用積層セパレータおよび当該非水電解液二次電池用積層セパレータを構成する多孔質フィルム(A層)のみの破裂強度の測定を行った。非水電解液二次電池用積層セパレータについては、多孔質層(B層)の表面がゴム隔膜側になるように前記自動ミューレン破裂強度試験機にセットし、非水電解液二次電池用積層セパレータおよびA層の破裂強度の測定を実施した。
・試験方法: JIS L 1096 8.1 A法 準拠
・試験環境:室温20±2℃、室内湿度60±5%RH
・測定数 :n=5
非水電解液二次電池用積層セパレータおよびA層の破裂強度の測定値を用いて、以下の式(2)にて、B層の破裂強度を算出した。
【0108】
B層の破裂強度(kPa)=非水電解液二次電池用積層セパレータの破裂強度(kPa)-A層のみの破裂強度(kPa) (2)
前記破裂強度の算出は、具体的には、以下に示す方法にて行った。
【0109】
非水電解液二次電池用積層セパレータから、15.0cm×15.0cmの大きさの測定用サンプルを切り取った。前述の方法にて、非水電解液二次電池用積層セパレータの破裂強度を測定した。同様に、多孔質フィルム(A層)のみの破裂強度を測定した。その後、前記式(2)に基づき、多孔質層(B層)の破裂強度として、前記測定用サンプルにおける多孔質層の破裂強度を算出した。
【0110】
(5)交流抵抗値の測定
作製した非水電解液二次電池に対し、室温25℃において、日置電機製LCRメーター(商品名:ケミカルインピーダンスメーター:形式3532-80)によって、電圧を振幅10mVとなるように印加し、当該非水電解液二次電池のナイキストプロットを作成した。前記ナイキストプロットにおけるX切片の大きさを、測定周波数1kHzの実数部の抵抗値R1kHzとして読みとった。ここで、R1kHzは電極抵抗の半分を表す。測定したR1kHzの値を、1kHz交流抵抗値とした。
【0111】
[実施例1]
下記A層、およびB層を用いて、非水電解液二次電池用積層セパレータ1を形成した。
【0112】
<A層>
ポリオレフィンであるポリエチレンを用いて、基材である多孔質フィルムを作製した。
【0113】
即ち、超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学株式会社製)70重量部と、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP-0115、日本精鑞株式会社製)30重量部とを混合して混合ポリエチレンを得た。得られた混合ポリエチレン100重量部に対して、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.4重量部、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.1重量部、およびステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加え、さらに、全体積に占める割合が38体積%となるように、平均粒子径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)を加えた。この組成物を粉末のまま、ヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練することにより、ポリエチレン樹脂組成物を得た。
【0114】
次いで、このポリエチレン樹脂組成物を、表面温度が150℃に設定された一対のロールにて圧延することにより、シートを作製した。このシートを塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%を配合)に浸漬させることで炭酸カルシウムを溶解して除去した。続いて、当該シートを、延伸温度:105℃、延伸倍率:6倍の条件下にて延伸することにより、ポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0115】
<B層>
(塗工液1(RF樹脂の分散液)の調製)
室温下、窒素置換をした2Lのセパラブルフラスコに、レゾルシンとホルムアルデヒドとのモル比が1:3になるように、レゾルシン154.15g、37%ホルムアルデヒド水溶液340.89gを加え、更に水1541.5g、および炭酸ナトリウム0.0786gを加えた。撹拌により分散状態を均一にした後、80℃に昇温し、80℃にて24時間保温することによって重合反応を行い、レゾルシン-ホルマリン樹脂(RF樹脂)の粒子を含む懸濁液を得た。
【0116】
放冷後、得られた懸濁液を遠心することによってRF樹脂の粒子を沈降させ、その後、沈降したRF樹脂の粒子を残しながら上澄みの分散媒を除去した。さらに、洗浄液である水を加え、撹拌し、遠心し、洗浄液を除去するという洗浄操作を2回繰り返すことによってRF樹脂を洗浄した。即ち、洗浄操作は合計2回行った。洗浄されたRF樹脂の粒子を乾燥し、有機フィラー(1)(D50:1.0μm)を定量的に合成した。バインダー樹脂として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)(株式会社ダイセル製;CMC1110)を用いた。
【0117】
溶媒として、水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒(水:イソプロピルアルコール=95重量%:5重量%)を用いた。
【0118】
固形分濃度、すなわち有機フィラー(1)およびCMCの濃度の合計が20.0重量%であり、かつ、有機フィラー(1):CMCの重量比が100:3となるように、有機フィラー(1)、CMC、および前記溶媒を混合し、塗工液1を調製した。
【0119】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ>
塗工前に、塗工液1を室温にて1時間静置し、塗工液1中の成分の分散状態を、適度に不均一にした。上記A層の片面に、グラビアコーターを用いて、1時間静置後の塗工液1を塗工し、乾燥させて、塗工液1に含まれるバインダー樹脂、すなわちCMCを析出させた。これにより、A層表面にB層が積層された積層多孔質フィルム1を得た。この積層多孔質フィルム1を非水電解液二次電池用積層セパレータ1とした。
【0120】
[実施例2]
下記A層、およびB層を用いて、非水電解液二次電池用積層セパレータ2を形成した。
【0121】
<A層>
実施例1と同様の操作を行って、ポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0122】
<B層>
(塗工液2(アラミド塗工液)の調製)
攪拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する、3リットルのセパラブルフラスコを使用して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の製造を行った。
【0123】
前記フラスコを十分乾燥し、N-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」と表記する)2200gを仕込み、200℃で2時間真空乾燥した塩化カルシウム粉末151.07gを添加し、100℃に昇温して、前記塩化カルシウム粉末を完全に溶解させた。
【0124】
得られた溶液の温度を室温に戻した後、パラフェニレンジアミン(以下、「PPD」と表記する)68.23gを添加し、前記PPDを完全に溶解させた。得られた溶液の温度を20℃±2℃に保ち、かつ、重合時の溶存酸素濃度を0.5%に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド(以下、「TPC」と表記する)124.97gを10分割して約5分おきに、前記溶液に添加した。その後、前記溶液の温度を20℃±2℃に保ったまま、前記溶液を攪拌しながら1時間熟成した。続いて、熟成された前記溶液を1500メッシュのステンレス金網でろ過した。得られた溶液は、パラアラミドの濃度が6%のパラアラミド溶液であった。
【0125】
得られたパラアラミド溶液100gをフラスコに秤取し、300gのNMPを添加して、パラアラミド濃度が1.5重量%のパラアラミド溶液を調製し、当該溶液を60分間攪拌した。続いて、当該溶液に、微粒アルミナ粉末(アエロジル社製アルミナC(ALC)、D50:0.013μm)を3g混合した後、240分間攪拌した。得られた溶液を1000メッシュの金網でろ過し、その後、炭酸カルシウム0.73gを添加して240分間攪拌することによって中和を行い、減圧下で脱泡してスラリー状の塗工液を調製した。調製した塗工液を塗工液2とする。
【0126】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ>
塗工液2を室温にて1時間静置し、塗工液2中の成分の分散状態を適度に不均一にした。1時間静置後、塗工液2を膜厚10umのA層上に塗工し、塗布膜を形成した。続いて、前記塗布膜を、50℃、相対湿度70%の雰囲気下にて乾燥させ、塗工液2に含まれる芳香族重合体、すなわち前記パラアラミドをA層上に析出させた。次に、前記芳香族重合体が析出した塗布膜を水洗、乾燥させることによって、A層上に多孔質層が積層された積層多孔質フィルム2を得た。積層多孔質フィルム2を非水電解液二次電池用積層セパレータ2とする。
【0127】
[実施例3]
下記A層、およびB層を用いて、非水電解液二次電池用積層セパレータ3を形成した。
【0128】
<A層>
実施例1と同様の操作を行って、ポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0129】
<B層>
(塗工液3(アラミド塗工液)の調製)
前記「パラアラミド濃度が1.5重量%のパラアラミド溶液」に混合する微粒アルミナ粉末の重量を6gに変更したこと以外は、実施例2の操作と同様の操作を行って、スラリー状の塗工液を調製した。調製した塗工液を塗工液3とする。
【0130】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ>
塗工液2の代わりに、塗工液3を使用したこと以外は、実施例2と同様の操作を行って、A層上に多孔質層が積層された積層多孔質フィルム3を得た。積層多孔質フィルム3を非水電解液二次電池用積層セパレータ3とする。
[実施例4]
下記A層、およびB層を用いて、非水電解液二次電池用積層セパレータ4を形成した。
【0131】
<A層>
実施例1と同様の操作を行って、ポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0132】
<B層>
(塗工液4(アラミド塗工液)の調製)
前記「パラアラミド濃度が1.5重量%のパラアラミド溶液」に混合する微粒アルミナ粉末の重量を2gに変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行って、スラリー状の塗工液を調製した。調製した塗工液を塗工液4とする。
【0133】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ>
塗工液2の代わりに、塗工液4を使用したこと以外は、実施例2と同様の操作を行って、A層上に多孔質層が積層された積層多孔質フィルム4を得た。積層多孔質フィルム4を非水電解液二次電池用積層セパレータ4とする。
【0134】
[比較例1]
下記A層、およびB層を用いて、非水電解液二次電池用積層セパレータ5を形成した。
【0135】
<A層>
実施例1と同様の操作を行って、ポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0136】
<B層>
(塗工液5(αアルミナ分散液)の調製)
前記有機フィラー(1)の代わりに、αアルミナ粉末(住友化学工業株式会社製、商品名;スミコランダムAA05、D50:0.5μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って塗工液を調製した。調製した塗工液を塗工液5とする。
【0137】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ>
上記A層の片面に、20W/(m2/分)でコロナ処理を施した。次いで、コロナ処理を施したA層の面に、グラビアコーターを用いて、上記塗工液5を塗工した。A層に塗工液5を均一に塗工後、塗膜を乾燥することで、塗工液5に含まれるCMCを析出させ、A層上に多孔質層(B層)を形成した。これにより、A層の片面にB層が積層された積層多孔質フィルム5を得た。積層多孔質フィルム5を非水電解液二次電池用積層セパレータ5とする。
【0138】
[比較例2]
下記A層、およびB層を調製し、非水電解液二次電池用積層セパレータ6を形成した。
【0139】
<A層>
実施例1と同様の操作を行って、ポリエチレン製の多孔質フィルム(A層)を作製した。
【0140】
<B層>
(塗工液6(アラミド塗工液)の調製)
NMP/塩化カルシウム溶液(塩化カルシウム濃度=7.1重量%)5000gに、PPD150.00gを添加し、窒素雰囲気下で攪拌し、前記PPDを溶解させた。次いで、15℃でTPC273.94gを添加し、攪拌し、1時間反応させ、ポリパラフェニレンテレフタルアミドの重合液を得た。
【0141】
前記重合液を1000g採取し、NMPを3000g、炭酸カルシウム(宇部マテリアル社製)23.4g、粒子(a)として、微粒アルミナ粉末(アエロジル社製アルミナC(ALC)、平均粒径:0.013μm)を60g、および粒子(b)として、アルミナ粉末(住友化学株式会社製スミコランダムAA03、平均粒径:0.3μm)を60g添加した。攪拌混合後、ゴーリンホモジナイザー(APV社製)を用い、50MPaの圧力で1回分散処理し、固形分濃度4.35%(アラミド:粒子(a):粒子(b)=1:1:1)の塗工液(アラミド塗工液)を調製した。調製した塗工液を塗工液6とする。
【0142】
塗工液2の代わりに塗工液6を使用したこと以外は、実施例2と同様の操作を行って、A層上に多孔質層が積層された積層多孔質フィルム6を得た。積層多孔質フィルム6を非水電解液二次電池用積層セパレータ6とする。
【0143】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ、A層およびB層の物性評価>
実施例1~4、並びに、比較例1および2にて得られた非水電解液二次電池用積層セパレータ1~6、並びに、非水電解液二次電池用積層セパレータ1~6のそれぞれを構成するA層およびB層の物性等を、上述した方法で測定した。結果を表1および表2に示す。
【0144】
<非水電解液二次電池の作製>
(正極の作製)
正極活物質であるLiNi1/3Mn1/3Co1/3O290重量部に、アセチレンブラック6重量部、およびポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製)4重量部を加えて混合して得た混合物を、NMP中に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体であるアルミニウム箔の一部に均一に塗布して乾燥させた後、プレス機により厚さ80μmに圧延した。
【0145】
次いで、正極活物質層が形成された部分の大きさが40mm×35mmであり、かつその外周に幅13mmで正極活物質層が形成されていない部分が残るように、圧延したアルミニウム箔を切り取って正極とした。正極活物質層の密度は2.50g/cm3であった。
【0146】
(負極の作製)
負極活物質である黒鉛粉末98重量部に、増粘剤および結着剤であるカルボキシメチルセルロースの水溶液100重量部(カルボキシメチルセルロースの濃度;1重量%)、およびスチレン・ブタジエンゴムの水性エマルジョン1重量部を加えて混合して、スラリーを作製した。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ20μmの圧延銅箔の一部に塗布して乾燥させた後、プレス機により厚さ80μmに圧延した。
【0147】
次いで、負極活物質層が形成された部分の大きさが50mm×40mmであり、かつその外周に幅13mmで負極活物質層が形成されていない部分が残るように、圧延した圧延銅箔を切り取って負極とした。負極活物質層の密度は1.40g/cm3であった。
【0148】
<非水電解液二次電池の作製>
ラミネートパウチ内で、非水電解液二次電池用積層セパレータ1~6のB層と正極の正極活物質層とが接するようにして、かつ、非水電解液二次電池用積層セパレータ1~6のA層と負極の負極活物質層とが接するようにして、上記正極、非水電解液二次電池用積層セパレータ1~6、および負極をこの順で積層(配置)することにより、非水電解液二次電池用部材を得た。このとき、正極の正極活物質層における主面の全部が、負極の負極活物質層における主面の範囲に含まれる(主面に重なる)ように、正極および負極を配置した。
【0149】
続いて、上記非水電解液二次電池用部材を、アルミニウム層とヒートシール層とが積層されてなる袋に入れ、さらにこの袋に非水電解液を0.23mL入れた。上記非水電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなるように溶解して調製した。そして、袋内を減圧しつつ、当該袋をヒートシールすることにより、非水電解液二次電池を作製した。非水電解液二次電池用積層セパレータ1~6のそれぞれを用いて作製した非水電解液二次電池を、それぞれ、非水電解液二次電池1~6とする。
【0150】
<100サイクル(55℃)前後の1kHz抵抗増加率(%)>
充放電サイクルを経ていない非水電解液二次電池1~6のそれぞれに対して、25℃にて、電圧範囲;2.7~4.1V、充電電流値0.2CのCC-CV充電(終止電流条件0.02C)、放電電流値0.2CのCC放電(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下も同様)を1サイクルとして、4サイクルの初期充放電を行った。ここでCC-CV充電とは、設定した一定の電流で充電し、所定の電圧に到達後、電流を絞りながら、その電圧を維持する充電方法である。また、CC放電とは、設定した一定の電流で所定の電圧まで放電する方法であり、以下も同様である。初期充放電を行った後の非水電解液二次電池1~6のそれぞれについて、上述の方法にて、初期充放電後の1kHz交流抵抗値を測定した。
【0151】
続いて、1kHzの交流抵抗値を測定した後の非水電解液二次電池1~6のそれぞれについて、55℃にて、充電:1C、放電10Cの条件下で100サイクルの充放電を行った。その後、100サイクルの充放電を行った後の非水電解液二次電池1~6のそれぞれについて、上述の方法にて、100サイクル後の1kHz交流抵抗値を測定した。得られた1kHzの交流抵抗値を用いて、以下の式(3)にて、100サイクル(55℃)前後の1kHz交流抵抗増加率を算出した。算出した値を表2に示す。
【0152】
100サイクル(55℃)前後の1kHz交流抵抗増加率(%)=
100サイクル後の1kHz交流抵抗値×100/初期充放電後の1kHz交流抵抗値 (3)
【0153】
【0154】
【0155】
表2に記載の通り、実施例1~4にて製造された非水電解液二次電池1~4は、100サイクル(55℃)前後の1kHz交流抵抗増加率(%)が、比較例1、2にて製造された非水電解液二次電池5および6よりも低い。よって、非水電解液二次電池二次電池1~4は、長期電池特性が改善されていることが確認された。
【0156】
非水電解液二次電池1~4は、破裂強度が3.0kPa以上、22.0kPa以下の範囲内である多孔質層を備える。破裂強度が前記範囲内にあることは、当該多孔質層が、全方位的な引張に強く、かつ伸びすぎないこと、すなわち適度に全方位的な伸縮性を有することを示している。
【0157】
従って、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層および非水電解液二次電池用積層セパレータは、適度に全方位的な伸縮性を持つことにより、非水電解液二次電池の充放電を繰り返した場合でも、電極(例えば、負極)の伸縮に追随することが可能である。その結果、充放電サイクル後の抵抗増加率等の長期電池特性を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用多孔質層は、長期電池特性に優れる非水電解液二次電池の製造に利用することができる。