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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20221118BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20221118BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A61F13/15 140
A61F13/511 200
A61F13/53 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020542348
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009506
(87)【国際公開番号】W WO2020179881
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019041008
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】山本 なるみ
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥平
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-233311(JP,A)
【文献】特表2003-504347(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体と、前記吸収体と前記厚さ方向に重なり、前記吸収体よりも肌側に位置し、液透過性を有するシート部材と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料を含む漢方薬材料層と、
前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、親油性溶媒を含む溶媒層と、
を備え、
前記漢方薬材料層の一部と前記溶媒層の一部とは前記厚さ方向に重なる、又は、前記漢方薬材料層の一部及び前記溶媒層の一部のうちの一方が他方に埋め込まれた状態で前記長手方向若しくは前記幅方向に重なる、
吸収性物品。
【請求項2】
前記溶媒層は、前記漢方薬材料層よりも肌側に位置する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記溶媒層は、更に、前記漢方薬材料層よりも非肌側にも位置する、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記溶媒層は、前記幅方向の中央部に配置されてない、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、温感機能を有する温感剤を更に備える、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
平面視で、前記吸収性物品における前記吸収体よりも前記長手方向の前側及び後側の少なくとも一方に位置し、温感機能を有する他の温感剤を含む温感部材を更に備え、
前記シート部材は、平面視で、前記吸収体よりも前記長手方向の前側及び後側の少なくとも一方に延出されて、前記温感部材と前記厚さ方向に重なり、前記温感部材よりも肌側に位置する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記温感部材及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、水溶性の成分及び親油性の成分を有する他の漢方薬材料を含む他の漢方薬材料層と、
前記温感部材及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、他の親油性溶媒を含む他の溶媒層と、
を更に備え、
前記他の漢方薬材料層の一部と前記他の溶媒層の一部とは前記厚さ方向に重なる、又は、前記長手方向若しくは前記幅方向に重なる、
請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記温感剤は、
装着者に温感を知覚させる温感成分と、
前記温感成分を溶解又は分散する溶媒成分と、
を含み、
前記溶媒成分は、前記親油性溶媒である、
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記漢方薬材料は、前記水溶性の成分を含む生薬又は前記生薬の抽出物と、前記親油性の成分を有する生薬又は前記生薬の抽出物と、を備える、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
漢方薬材料を備える吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、表面シートとベース吸収体との間に、漢方薬材料を含む中間吸収体が配置された吸収性物品が開示されている。この吸収性物品では、所望の粒度分布や平均粒形を有する粉末の漢方薬材料が中間吸収体に配置される。漢方薬材料としては、生薬である艾葉(ガイヨウ)、当帰(トウキ)及び香附子(コウブシ)が、例えば1:1:1の割合で混合されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4261593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吸収性物品のように、漢方薬材料を、表面シートよりも非肌側に配置すると、その漢方薬材料の成分を装着者の肌に到達させることは一見困難のように見える。ただし、その場合でも、その成分が水分に馴染み易い性質、すなわち水溶性を有する場合には、その漢方薬材料が液体の排泄物である体液(例示:経血)や汗などによる水分と接触することにより、その成分がその水分に溶解し得る。それゆえ、その水分が肌に到達することにより、その成分を装着者の肌に到達させることが可能である。
【0005】
しかし、漢方薬材料の成分が、水分に馴染み難い性質を有する、すなわち非水溶性である場合がある。例えば、その成分が、油分に馴染み易い性質、すなわち親油性を有する場合、その漢方薬材料が体液や汗などによる水分と接触したとしても、その成分がその水分に溶解することは困難である。そうなると、その水分が肌に到達したとしても、その成分を装着者の肌に到達させることは困難である。したがって、そのような漢方薬材料は、吸収性物品に配置されたとしても、漢方薬材料としての機能を十分に発揮することが困難になるおそれがある。
【0006】
そのことは、漢方薬材料として、水溶性の成分及び親油性の成分の両方を有するものにも当て嵌まる。そのような漢方薬材料として、例えば、水溶性の成分を有する一種類又は複数種類の生薬やその抽出物と、親油性の成分を有する一種類又は複数種類の生薬やその抽出物と、を含むものが挙げられる。更に、そのような漢方薬材料として、水溶性の成分及び親油性の成分の両方を有する一種類又は複数種類の生薬やその抽出物が挙げられる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、水溶性を有する成分だけでなく、親油性を有する成分を含む漢方薬材料を備えた吸収性物品であって、それらの漢方薬材料の成分を装着者の肌に容易に到達させることが可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸収性物品は、長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体と、前記吸収体と前記厚さ方向に重なり、前記吸収体よりも肌側に位置し、液透過性を有するシート部材と、を備える吸収性物品であって、前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料を含む漢方薬材料層と、前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、親油性溶媒を含む溶媒層と、を備え、前記漢方薬材料層の一部と前記溶媒層の一部とは前記厚さ方向に重なる、又は、前記長手方向若しくは前記幅方向に重なる、吸収性物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、水溶性を有する成分だけでなく、親油性を有する成分を含む漢方薬材料を備えた吸収性物品であって、それらの漢方薬材料の成分を装着者の肌に容易に到達させることが可能な吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る生理用ナプキンの構成例を示す平面図である。
図2図1における長手方向中心線に沿った断面図である。
図3】第1実施形態に係る生理用ナプキンの構成例を示す下面図である。
図4】第1実施形態に係る液透過性シートの溶媒層の配置を示す模式図である。
図5】第1実施形態に係る吸収体における溶媒層の配置を示す模式図である。
図6】第2実施形態に係る生理用ナプキンの構成例を示す平面図である。
図7図6における長手方向中心線に沿った断面図である。
図8】第2実施形態に係る液透過性シートの溶媒層の配置を示す模式図である。
図9】第2実施形態に係る吸収体の溶媒層の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
具体的には、本発明の開示は以下の態様に関する。
[態様1]
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体と、前記吸収体と前記厚さ方向に重なり、前記吸収体よりも肌側に位置し、液透過性を有するシート部材と、を備える吸収性物品であって、前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料を含む漢方薬材料層と、前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、親油性溶媒を含む溶媒層と、を備え、前記漢方薬材料層の一部と前記溶媒層の一部とは前記厚さ方向に重なる、又は、前記長手方向若しくは前記幅方向に重なる、吸収性物品。
【0012】
本吸収性物品では、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料と親油性溶媒とが厚さ方向に部分的に重なりつつ、又は、平面方向(長手方向若しくは幅方向)に重なりつつ、吸収体及びシート部材の少なくとも一方に位置する。
そのため、漢方薬材料が親油性溶媒と厚さ方向又は平面方向に重なる領域では、体液が吸収性物品に排泄され、シート部材及び吸収体の中を移行・拡散するとき、その体液の一部は、漢方薬材料及び親油性溶媒を経由する。その結果、その体液の流動(移行・拡散)に伴い、親油性溶媒も移行・拡散して、漢方薬材料の少なくとも一部に接触する。それにより、漢方薬材料の親油性の成分を、親油性溶媒に溶け込ませることができる。そして、その親油性の成分を含んだ親油性溶媒が拡散又は揮発することで、その親油性溶媒を装着者の肌に到達させることができる。あるいは、その親油性の成分を含んだ親油性溶媒が体液や汗などの水分に含まれた状態、例えば水分の略表面に油膜状に含まれた状態で、その水分が蒸気となり、又は、吸収性物品に加わる体圧により、肌側に戻るように拡散することで、水分と共にその親油性溶媒を装着者の肌に到達させることができる。すなわち、その漢方薬材料の親油性の成分を装着者の肌に到達させることができる。
一方、漢方薬材料が親油性溶媒と厚さ方向又は平面方向に重ならない領域(一部、重なる領域でも可)では、体液がシート部材及び吸収体の中を移行・拡散するとき、その体液の一部は、親油性溶媒を経由せずに、漢方薬材料に到達する。あるいは、肌から放出された汗などが、シート部材内を拡散して、漢方薬材料に到達する。すなわち、その体液や汗などの水分が、流動(移行・拡散)により、漢方薬材料に接触する。それらにより、漢方薬材料の水溶性の成分を、体液や汗などの水分に溶け込ませることができる。そのとき、親油性溶媒が近傍に存在しないので、親油性溶媒が漢方薬材料を覆ってしまい、水分が漢方薬材料に到達し難くなることを抑制できる。そして、その水溶性の成分を含むその水分が、蒸気となり、又は、吸収性物品に加わる体圧により、肌側に拡散することで、その水溶性の成分を含むその水分を装着者の肌に到達させることができる。すなわち、その漢方薬材料の水溶性の成分を装着者の肌に到達させることができる。
これらにより、漢方薬材料が水溶性を有する成分だけでなく、親油性を有する成分を含む吸収性物品において、漢方薬材料の両方の成分を装着者の肌に容易に到達させることが可能となる。それにより、本吸収性物品は、漢方薬材料の効果、例えば、血流や血行を良くして体を温める効果を発揮することができる。
【0013】
[態様2]
前記溶媒層は、前記漢方薬材料層よりも肌側に位置する、態様1に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、溶媒層が漢方薬材料層よりも肌側に位置している。そのため、体液が吸収性物品に排泄され、シート部材及び吸収体の中を移行・拡散するとき、体液及び親油性溶媒が漢方薬材料を確実に通過することができる。そのため、漢方薬材料の親油性の成分を親油性溶媒により溶け込ませることができ、それにより、その漢方薬材料の親油性の成分を装着者の肌により到達させることができる。
【0014】
[態様3]
前記溶媒層は、更に、前記漢方薬材料層よりも非肌側に位置する、態様2に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、溶媒層が、漢方薬材料層よりも肌側の位置だけでなく、更に、漢方薬材料層よりも非肌側の位置にも存在している。そのため、体液が吸収性物品に排泄され、シート部材及び吸収体の中を移行・拡散するとき、体液及び親油性溶媒が漢方薬材料をより確実に通過することができる。そのため、漢方薬材料の親油性の成分を親油性溶媒に更により溶け込ませることができ、それにより、その漢方薬材料の親油性の成分を装着者の肌に更により到達させることができる。
【0015】
[態様4]
前記溶媒層は、前記幅方向の中央部に配置されてない、態様1乃至3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
吸収性物品の幅方向の中央部は、着用者の排泄口及びその近傍の領域、すなわち敏感な肌の領域に当接する。そこで、本吸収性物品では、溶媒層は、吸収性物品における幅方向の中央部に配置されない。そのため、漢方薬材料の親油性の成分を、敏感な肌の領域が当接する領域へ移行させ難くすることができる。それにより、漢方薬材料の親油性の成分を、吸収性物品の幅方向の中央部以外の領域に到達させつつ、その成分が敏感な肌の領域に直接到達することを抑制できる。
【0016】
[態様5]
前記吸収体及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、温感機能を有する温感剤を更に備える、態様1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品で、温感機能を有する温感剤を更に備えている。そのため、温感の効果で体温が上昇した肌の付近に生じる汗などの湿気を含んだ空気により、漢方薬材料をふやかせて、その表面積を増加させて、漢方薬材料の成分を放出させ易くすることができる。更に、温感の効果で温められた空気により、親油性溶媒を温めることができるので、親油性溶媒に溶け込んだ漢方薬材料の成分を、水分及び/又は親油性溶媒と共に、あるいは単独で、揮発させ易くすることができる。これらにより漢方薬材料の成分を装着者の肌により到達させることができる。また、漢方薬材料の効果が血流や血行を良くして体を温める効果の場合には、本吸収性物品は、温感剤と漢方薬材料との相乗効果でより体を温めることができる。
【0017】
[態様6]
平面視で、前記吸収性物品における前記吸収体よりも前記長手方向の前側及び後側の少なくとも一方に位置し、温感機能を有する他の温感剤を含む温感部材を更に備え、前記シート部材は、平面視で、前記吸収体よりも前記長手方向の前側及び後側の少なくとも一方に延出されて、前記温感部材と前記厚さ方向に重なり、前記温感部材よりも肌側に位置する、態様1乃至5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体の長手方向の前側、すなわち装着者の腹側、及び、吸収体の長手方向の後側、すなわち装着者の背側の少なくとも一方に位置する、他の温感剤を含む温感部材を更に備えている。そのため、吸収性物品が装着者に装着されたとき、装着者の腹側及び背側の少なくとも一方の部分を温感剤で暖めることができる。それにより、漢方薬材料の成分を装着者の肌に到達させることができると共に、腹側及び背側の少なくとも一方に位置する他の温感剤により腹部及び背部の少なくとも一方を温めることができる。
【0018】
[態様7]
前記温感部材及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、水溶性の成分及び親油性の成分を有する他の漢方薬材料を含む他の漢方薬材料層と、前記温感部材及び前記シート部材の少なくとも一方に位置し、他の親油性溶媒を含む他の溶媒層と、を備え、前記他の漢方薬材料層の一部と前記他の溶媒層の一部とは前記厚さ方向に重なる、態様6に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体よりも長手方向の前側及び後側の少なくとも一方において、他の漢方薬材料と他の親油性溶媒とが厚さ方向、又は、平面方向(長手方向若しくは幅方向)に部分的に重なりつつ、温感部材及びシート部材の少なくとも一方に位置している。そのため、吸収性物品が装着者に装着されたとき、装着者の腹側又は背側の少なくとも一方の部分を温感剤で暖めつつ、温感の効果で体温が上昇した肌の付近に生じる汗などの湿気を含んだ空気により、他の漢方薬材料をふやかせて、表面積を増させて、他の漢方薬材料の成分を放出させ易くすることができる。更に、温感の効果で温められた空気により、他の親油性溶媒を温めることができるので、他の親油性溶媒に溶け込んだ他の漢方薬材料の成分を、水分及び/又は他の親油性溶媒と共に、あるいは単独で、揮発させ易くすることができる。これらにより長手方向の前側及び後側の少なくとも一方において他の漢方薬材料の成分を、装着者の長手方向の前側の肌により到達させることができる。
【0019】
[態様8]
前記温感剤は、装着者に温感を知覚させる温感成分と、前記温感成分を溶解又は分散する溶媒成分と、を含み、前記溶媒成分は、前記親油性溶媒である、態様5乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、温感剤に含まれる溶媒成分が、親油性溶媒であるので、温感剤(の溶媒成分)を溶媒層とすることができ、溶媒層を別に設ける必要が無いか、又は、溶媒層の領域又は厚さを縮小できる。それにより、漢方薬材料及び/又は温感剤と装着者の肌面との距離を短くすることができる。したがって、漢方薬材料層及び/又は温感剤を装着者の肌により到達させ易くすることができる。
【0020】
[態様9]
前記漢方薬材料は、前記水溶性の成分を含む生薬と、前記親油性の成分を有する生薬と、を備える、態様1乃至8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
漢方薬材料として、複数の種類の生薬又は前記生薬の抽出物を混合したものが存在している。そこで、本吸収性物品では、漢方薬材料として、水溶性の成分を含む生薬又は前記生薬の抽出物と、親油性の成分を有する生薬又は前記生薬の抽出物とが混合された漢方薬材料を用いることとしている。このような場合でも、本吸収性物品では、水溶性の成分を水分に溶け込ませ、親油性の成分を親油性溶媒に溶け込ませることで、それら漢方薬材料の成分を装着者の肌により到達させることができる。したがって、漢方薬材料が複数の生薬又はその生薬の抽出物が混合された漢方薬材料であっても、それら生薬又はその生薬の抽出物を分離せず、各生薬又はその各生薬の抽出物の成分を有効に用いることができる。
【0021】
以下、実施形態に係る吸収性物品について、漢方薬材料を備える生理用ナプキンを例に説明する。ただし、吸収性物品はその例に限定されるのではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、漢方薬材料を備える他の吸収性物品でもよい。そのような吸収性物品としては、例えば、漢方薬材料を備える一般的な生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、及び使い捨ておむつが挙げられる。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態に係る生理用ナプキン1の構成について説明する。図1図5は本実施形態に係る生理用ナプキン1の構成例を示す図である。図1は、生理用ナプキン1の個包装シート41を開封し、展開した状態を示す平面図である。図2は、図1に示す生理用ナプキン1における長手方向中心線CL(後述)に沿った断面図である(個包装シート41を除く)。図3は、生理用ナプキン1を示す下面図である(個包装シート41を除く)。図4は、生理用ナプキン1の液透過性シート7における溶媒層51a、51b(後述)等の配置を示す模式図である。図5は、生理用ナプキン1の溶媒層50a、52a(後述)等の配置を示す模式図である。生理用ナプキン1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有する。図1に描かれた生理用ナプキン1では、図の上側を長手方向Lの前側(前方)又は腹側とし、図の下側を長手方向Lの後側(後方)又は背側とする。長手方向L及び幅方向Wを含む平面上に置いた生理用ナプキン1を厚さ方向Tの上側から見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」という。長手方向L及び幅方向Wを含む平面内の任意の方向を「平面方向」という。装着者が生理用ナプキン1を装着したとき、厚さ方向Tにて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側となる側をそれぞれ「肌側」及び「非肌側」という。これら定義は、生理用ナプキン1の各資材にも共通に用いられる。
【0023】
個包装シート41は、長手方向Lの両端部が、生理用ナプキン1の長手方向Lの両端部よりも長手方向Lの外側に長く、幅方向Wの両端部が、生理用ナプキン1の幅方向Wの両端部よりも幅方向Wの外側に長い。したがって、生理用ナプキン1は、個包装シート41上に載置されたとき、平面視で、個包装シート41の外側にはみ出さないように載置される。それにより、生理用ナプキン1を個包装シート41と共に折り畳んだとき、個包装シート41の外側に生理用ナプキン1がはみ出さないように包装できる。
【0024】
生理用ナプキン1は、主に液体の排泄物である体液(例示:経血)を吸収する吸収本体3と、吸収本体3の長手方向Lの前側(腹側)に位置し、肌に温感を知覚させる温感本体5と、を備える。すなわち、生理用ナプキン1は、長手方向Lの後方の吸収本体3と、長手方向Lの前方の温感本体5と、に区画される。吸収本体3の形状は、概ね一般的な生理用ナプキンの形状であり、幅方向Wの両外側に延出する一対のウイング部17、17を備える。温感本体5の形状は特に限定されず、その例としては、三角形や矩形や多角形(角が丸い場合や辺が曲線の場合を含む)、円形や楕円形、生物の形状、又はそれらの組み合わせが挙げられる。なお、別の実施形態では、温感本体5は、吸収本体3の長手方向Lの前側(腹側)に替えて、又は前側(腹側)と共に、後側(背側)に位置する。更に別の実施形態では、一対のウイング部17、17は存在しない。更に別の実施形態では、温感本体5を備えていない。
【0025】
生理用ナプキン1は、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線CL(仮想線)と、一対のウイング部17、17の各々の長手方向Lの中心を幅方向Wに結んだ幅方向中心線CW(仮想線)と、を有する。ただし、ウイング部17が存在しない場合、幅方向中心線CWは、長手方向Lにおいて、吸収本体3における排泄口当接域21(後述)の中心を通り幅方向Wに延びる線とする。本実施形態では、両者は一致するものとする。あるいは、吸収体11がいわゆる砂時計型の場合、幅方向中心線CWは、長手方向Lにおいて、吸収体11の幅方向Wの寸法が最小となる位置(両端部を除く)を通り幅方向Wに延びる線とする。生理用ナプキン1において、長手方向中心線CLに向かう向き及び側をそれぞれ幅方向Wの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ幅方向Wの外向き及び外側とする。一方、幅方向中心線CWに向かう向き及び側をそれぞれ長手方向Lの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ長手方向Lの外向き及び外側とする。これらの定義は、生理用ナプキン1の各資材にも共通に用いられる。
【0026】
生理用ナプキン1は、吸収本体3において、装着時に装着者の肌に当接する液透過性シート7と、装着時に着衣(下着)に当接する液不透過性シート9と、液透過性シート7及び液不透過性シート9の間に配置された吸収体11と、を備える。また、生理用ナプキン1は、温感本体5において、装着時に装着者の肌に当接する液透過性シート7と、装着時に着衣に当接する液不透過性シート9と、液透過性シート7及び液不透過性シート9の間に配置された温感剤保持シート13と、を備える。温感剤保持シート13は、吸収体11よりも長手方向Lの前側に位置する。そして、吸収本体3における液透過性シート7と、温感本体5における液透過性シート7とは一体のシートである。吸収本体3における液不透過性シート9と、温感本体5における液不透過性シート9とは一体のシートである。ただし、一体のシートとは、資材が一枚のシートである場合だけでなく、複数のシートを結合して一体化させたシートも含む。吸収本体3における吸収体11と、温感本体5における温感剤保持シート13とは、別の部材である。吸収体11の長手方向Lの前側の端部が、温感剤保持シート13の長手方向Lの後側の端部と厚さ方向Tに重複することで、重複部15が形成される。すなわち、長手方向Lにおいて、吸収体11の前側の端縁11E1は、温感剤保持シート13の後側の端縁13E2よりも前側に位置する。この場合、重複部15では、吸収体11の端部が温感剤保持シート13の端部上に配置される。長手方向Lの前方での体液の漏れを抑制するためである。
【0027】
なお、別の実施形態では、温感の機能を重視する場合、重複部15では、温感剤保持シート13の端部が吸収体11の端部上に配置される。更に別の実施形態では、吸収体11の端部と、温感剤保持シート13の端部とは平面視で重複せず(重複部15は存在せず)、それら端縁同士が接するか、又は離間している。更に別の実施形態では、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁11E1の位置が、温感剤保持シート13の長手方向Lの前側の端縁13E1の位置と重なるか、又は、それよりも外側に存在する。言い換えると、温感剤保持シート13が長手方向Lの全域に亘って、吸収体11と重なる。更に別の実施形態として、温感本体5は同一形状の保温本体に代替され、温感剤保持シート13は温感剤を含まない同一形状の保温性シートに代替される。
【0028】
生理用ナプキン1は、吸収本体3及び温感本体5の少なくとも一方において、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料を含む漢方薬材料層と、親油性溶媒を含む溶媒層と、を備える。本実施形態では、生理用ナプキン1は、吸収本体3において、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料を含む漢方薬材料層45と、親油性溶媒を含む溶媒層51aと、を備える。漢方薬材料層45は、平面視で、略矩形形状を有し、厚さ方向Tにおいて、吸収体11の肌側の表面又は内部に位置する。漢方薬材料層45は、平面視で、長手方向中心線CLを跨いでその両側に、かつ、幅方向中心線CWを跨いでその両側に位置し、すなわち、吸収本体3における幅方向W及び長手方向Lの中央の領域に位置する。本実施形態では、漢方薬材料層45の全部又は一部は、平面視で排泄口当接域21(後述)を含む領域に位置する。なお、別の実施形態では、漢方薬材料層45は、厚さ方向Tにおいて、液透過性シート7の非肌側の表面に位置する。なお、漢方薬材料層45の平面形状は任意である。
【0029】
溶媒層51aは、平面視で、長手方向Lに延び、幅方向Wにおいて所定間隔で並んだ複数のストライプ形状を有し、厚さ方向Tにおいて、液透過性シート7の非肌側の表面に位置する。漢方薬材料層45の一部と溶媒層51aの一部とは厚さ方向Tに重なっており、漢方薬材料層45の一部は、溶媒層51aの一部の非肌側に位置する。漢方薬材料層45の一部と溶媒層51aの一部とは、親油性の成分が親油性溶媒へ溶出し易くなる観点から、厚さ方向Tに直接接する。溶媒層51aは、親油性の成分が親油性溶媒に接触し易くなる観点から、平面視で、漢方薬材料層45よりも長手方向Lの外側に、かつ、幅方向Wの外側に延出する。生理用ナプキン1には、漢方薬材料層45の一部と溶媒層51aの一部とが厚さ方向Tに重ならない領域VM1、すなわち漢方薬材料は存在するが親油性溶媒が存在しない領域が存在する。漢方薬材料の水溶性の成分を体液や汗などの水分へ溶出し易くさせるためである。なお、別の実施形態として、漢方薬材料層45が厚さ方向Tにおいて液透過性シート7の非肌側の表面に位置する場合、溶媒層51aは、厚さ方向Tにおいて、液透過性シート7における漢方薬材料層45の肌側に位置する。なお、溶媒層51aの平面形状は任意である。
【0030】
生理用ナプキン1は、吸収本体3において、親油性溶媒を含む溶媒層52aを更に備える。溶媒層52aは、平面視で、長手方向Lに延び、幅方向Wにおいて所定間隔で並んだ複数のストライプ形状を有し、厚さ方向Tにおいて、漢方薬材料層45の非肌側かつ吸収体11の肌側の表面又は内部に位置する。漢方薬材料層45の一部と溶媒層52aの一部とは厚さ方向Tに重なっており、漢方薬材料層45の一部は、溶媒層52aの一部の肌側に位置する。漢方薬材料層45の一部と溶媒層52aの一部とは、親油性の成分が親油性溶媒へ溶出し易くなる観点から、厚さ方向Tに直接接する。溶媒層52aは、親油性の成分が親油性溶媒に接触し易くなる観点から、平面視で、漢方薬材料層45よりも長手方向Lの外側かつ幅方向Wの外側に延出する。生理用ナプキン1には、漢方薬材料層45の一部と溶媒層52aの一部とが厚さ方向Tに重ならない領域VM2、よって漢方薬材料は存在するが親油性溶媒は存在しない領域が存在する。漢方薬材料の水溶性の成分を体液や汗などの水分へ溶出し易くさせるためである。なお溶媒層52aの平面形状は任意である。
【0031】
なお、別の実施形態では、溶媒層51a又は溶媒層52aのいずれか一方を有し、他方を有さない。更に別の実施形態では、漢方薬材料層45(の一部)と、溶媒層51a(の一部)及び溶媒層52a(の一部)の少なくとも一方とは、液透過性シート7の非肌側の表面及び/又は吸収体11の肌側の表面若しくは内部にて、厚さ方向Tに略同一の範囲に位置する。その場合、漢方薬材料層45の一部と、溶媒層51aの一部及び溶媒層52aの一部の少なくとも一方とは、平面方向(長手方向若しくは幅方向)に重なるということができる。そのような状態としては、例えば、漢方薬材料層45の一部、及び、溶媒層51a(、52a)の一部のうちの一方が他方に埋め込まれた状態が挙げられる。
【0032】
生理用ナプキン1は、温感本体5において、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料を含む他の漢方薬材料層47と、親油性溶媒を含む他の溶媒層51bと、を備える。漢方薬材料層47は、長手方向Lに延び、幅方向Wにおいて所定間隔で並んだ複数のストライプ形状を有し、厚さ方向Tにおいて、温感剤保持シート13の肌側の表面又は内部に位置する。漢方薬材料層47は、平面視で、温感剤保持シート13の幅方向Wの中央の領域に、長手方向Lの両端縁間に亘って形成されている。別の実施形態では、漢方薬材料層47は、厚さ方向Tにおいて、液透過性シート7の非肌側の表面に位置する。なお、漢方薬材料層47の平面形状は任意である。
【0033】
溶媒層51bは、長手方向Lに延び、幅方向Wにおいて所定間隔で並んだ複数のストライプ形状を有し、厚さ方向Tにおいて、液透過性シート7の非肌側の表面に位置する。幅方向Wにおいて、溶媒層51bの幅は漢方薬材料層47の幅よりも大きい。漢方薬材料層47の一部と溶媒層51bの一部とは厚さ方向Tに重なっており、漢方薬材料層47の一部は、溶媒層51bの一部の非肌側に位置する。漢方薬材料層47の一部と溶媒層51bの一部とは、親油性の成分が親油性溶媒へ溶出し易くなる観点から、厚さ方向Tに直接接する。なお、漢方薬材料層47の一部と溶媒層51bの一部とが厚さ方向Tに重ならない領域、すなわち漢方薬材料は存在するが親油性溶媒が存在しない領域が存在する。漢方薬材料の水溶性の成分を体液や汗などの水分へ溶出し易くさせるためである。なお、別の実施形態として、漢方薬材料層47が厚さ方向Tにおいて液透過性シート7の非肌側の表面に位置する場合、溶媒層51bは、厚さ方向Tにおいて、液透過性シート7における漢方薬材料層47の肌側に位置する。なお、溶媒層51bの平面形状は任意である。
【0034】
生理用ナプキン1は、温感本体5において、親油性溶媒を含む溶媒層50aを更に備える。溶媒層50aは、平面視で、温感剤保持シート13における幅方向Wの両端部を除く領域に、厚さ方向Tにおいて、漢方薬材料層47の非肌側かつ温感剤保持シート13の肌側の表面又は内部に位置する。漢方薬材料層47の一部と溶媒層50aの一部とは厚さ方向Tに重なっており、漢方薬材料層47の一部は、溶媒層50aの一部の肌側に位置する。漢方薬材料層47の一部と溶媒層50aの一部とは、親油性の成分が親油性溶媒へ溶出し易くなる観点から、厚さ方向Tに直接接する。溶媒層50aは、親油性の成分が親油性溶媒に接触し易くなる観点から、平面視で、漢方薬材料層47よりも幅方向Wの外側に延出する。なお、別の実施形態では、生理用ナプキン1は、漢方薬材料層47の一部と溶媒層50aの一部とが厚さ方向Tに重ならない領域、すなわち漢方薬材料は存在するが親油性溶媒は存在しない領域が存在する。漢方薬材料の水溶性の成分を体液や汗などの水分へ溶出し易くさせるためである。なお、溶媒層50aの平面形状は任意である。
【0035】
なお、別の実施形態では、溶媒層51b又は溶媒層50aのいずれか一方を有し、他方を有さない。更に別の実施形態では、漢方薬材料層47(の一部)と、溶媒層51b(の一部)及び溶媒層50a(の一部)の少なくとも一方とは、液透過性シート7の非肌側の表面及び/又は温感剤保持シート13の肌側の表面若しくは内部にて、厚さ方向Tに略同一の範囲に位置する。その場合、漢方薬材料層47の一部と、溶媒層51bの一部及び溶媒層50aの一部の少なくとも一方とは、平面方向(長手方向若しくは幅方向)に重なるということができる。そのような状態としては、例えば、漢方薬材料層47の一部、及び、溶媒層51b(、50a)の一部のうちの一方が他方に埋め込まれた状態が挙げられる。なお、生理用ナプキン1は、漢方薬材料層45及び漢方薬材料層47の少なくとも一方を有すればよい。
【0036】
本実施形態では、吸収本体3における長手方向Lの範囲は、生理用ナプキン1の後方の端縁から、吸収体11の前方の端縁11E1までの範囲とする。一方、温感本体5における長手方向Lの範囲は、吸収体11の前方の端縁11E1から、生理用ナプキン1の前方の端縁までの範囲とする。なお、吸収本体3及び温感本体5における幅方向Wの範囲は、いずれも全幅の範囲とする。この場合、重複部15は、吸収本体3に含まれ、温感本体5の温感剤保持シート13における長手方向Lの後側の端部は吸収本体3内へ延出している、といえる。また、吸収本体3は、長手方向Lにおいて、幅方向中心線CWから吸収体11の前方の端縁11E1までの前方領域3aと、幅方向中心線CWから生理用ナプキン1の後方の端縁までの後方領域3bと、に区画される。ただし、長手方向Lにおける、生理用ナプキン1の前方及び後方の端縁、吸収体11の前方及び後方の端縁11E1、11E2、温感剤保持シート13の前方及び後方の端縁13E1、13E2は、いずれも長手方向Lの最も外側の位置とする。本実施形態では端縁11E1、11E2、端縁13E1、13E2は、いずれも長手方向中心線CLとの交差点とする。
【0037】
本実施形態では、生理用ナプキン1では、吸収本体3において、平面視で、長手方向Lの中央やや前方寄りで幅方向Wの中央に排泄口当接域21が位置し、その周囲にそれ以外の領域として非排泄口当接域23が位置する。排泄口当接域21は、生理用ナプキン1の着用時に、装着者の排泄口に対向又は当接する領域である。排泄口当接域21は、吸収性物品の種類や用途に応じて決まる。排泄口当接域21は、例えば長手方向Lにて吸収体11の中央やや前方寄りに、吸収体11の長手方向Lの全長の約1/4~2/3の長さとされ、幅方向Wにて吸収体11の略中央に、吸収体11の幅方向Wの全長の約1/3~3/4の幅とされる。本実施形態のように一対のウイング部17、17が存在する場合、一対のウイング部17、17の各々における長手方向Lの中心を幅方向Wに結んだ線上に、排泄口当接域21の長手方向Lの中心が位置する。あるいは、吸収体11がいわゆる砂時計型の場合、吸収体の長手方向Lの両端部を除いて、吸収体の幅方向Wの寸法が最も小さくなる位置に、排泄口当接域21の長手方向Lの中心が位置する。ただし、所定の長さの範囲内の位置ずれを許容するものとする。その所定の長さは、吸収体11の長手方向Lの長さの5%の長さとする。
【0038】
液透過性シート(シート部材)7は、吸収体11と厚さ方向Tに重なり、表面シート7aと、表面シート7aの幅方向Wの両側に結合された一対のサイドシート7b、7bと、を備えている。表面シート7aの幅方向Wの寸法は、略吸収体11の幅方向Wの寸法程度の大きさである。各サイドシート7bは、幅方向Wの内側の端部に位置し、長手方向Lに沿って延びる防漏壁7Wを含んでいる。すなわち、液透過性シート7は、一対の防漏壁7W、7Wを含んでいる。各防漏壁7Wは、幅方向Wにおいて、外側の端縁を固定端とされていて、内側の端縁を自由端とされ、表面シート7aの厚さ方向Tの上方に延出されている。一対の防漏壁7W、7Wは、生理用ナプキン1が装着されたとき自由端が肌側へ起立可能に形成されている。一対の防漏壁7W、7Wは、吸収本体3及び温感本体5に形成されており、体液が主に幅方向Wの外側へ漏洩することを抑制すると共に、温感本体5の温感の効果により温まった空気が幅方向Wの外側へ逃げることを抑制し、保持する。
【0039】
なお、別の実施形態では、表面シート7aの幅方向Wの両端部の各々に、長手方向Lに沿って延びる防漏壁7Wを含む。更に別の実施形態では、液透過性シート7は一対のサイドシート7b、7bを有さない。更に別の実施形態では、液透過性シート7は一対の防漏壁7W、7Wを有さない。更に別の実施形態では、液透過性シート7は、表面シート7aの非肌側に当接され、したがって吸収体11と厚さ方向Tに重なり、体液を平面方向に拡散させる液拡散シート(シート部材)を備える。更に別の実施形態では、表面シート7aは、長手方向Lに沿って連続的又は間欠的に延びる複数の凸部と、互いに隣接した凸部間に位置し、長手方向Lに沿って連続的又は間欠的に延びる複数の凹部と、を有する。
【0040】
吸収体11は、吸収コア(図示せず)、及び、吸収コアを包み込むコアラップ(図示せず)を備える。吸収体11は、長手方向Lにおいて、略中央に位置する中央領域62と、中央領域62の前方に隣接する前方領域61と、中央領域62の後方に隣接する後方領域63と、に区画される。ここで、中央領域62は、排泄口当接域21に対応し、長手方向Lの更に前方寄りまでの範囲に位置する。上記の漢方薬材料層45は、中央領域62に位置する。そして、中央領域62の坪量は、前方領域61及び後方領域63の坪量よりも高い。よって、吸収体11では、幅方向中心線CWよりも長手方向Lの前側の領域の坪量が、幅方向中心線CWよりも長手方向Lの後側の領域の坪量よりも高い。すなわち、吸収体11では、幅方向中心線CWから長手方向Lの前方の端縁11E1までの領域の坪量は、幅方向中心線CWから長手方向Lの後方の端縁11E2までの領域の坪量よりも高い。それにより、長手方向Lの中央やや前方寄りの排泄口当接域21での吸収量を高くすると共に、装着者の排泄口が排泄口当接域21よりも長手方向Lの前方へややずれた状態で、生理用ナプキン1が装着された場合でも、吸収体11で確実に体液を吸収することが可能となる。別の実施形態では、吸収体11の坪量は、上記とは異なる特定の部分で高い、又は、全領域で概ね一定である。別の実施形態では、吸収体11はコアラップを用いない。
【0041】
温感剤保持シート13(機能層;温感部材)は、不織布のような一層又は複数層のシートから構成され、温感剤50(機能剤)を含む。温感剤保持シート13の形状は、温感剤50の漏れを抑制する、生理用ナプキン1の周縁部27の内側に配置できれば、特に限定はなく、例えば温感本体5の形状を相似的に縮小した形状が挙げられる。温感剤50は、生理用ナプキン1の装着者の身体又はその近傍を加熱等することなく、皮膚の温度受容器(温熱知覚受容器)を刺激して、装着者に温感を知覚させる温感成分を含み、温感成分を溶解又は分散する溶媒成分を更に含む。温感剤50は、気体や液体の形態で、温度、気圧、外力などの影響により、配置された場所から移動し得る流体成分又は揮発成分を含み、例えば温感成分及び溶媒成分の少なくとも一方が流体成分又は揮発成分を含む。そして、温感剤保持シート13が液透過性シート7よりも非肌側に配置されても、温感剤保持シート13の温感剤50が、生理用ナプキン1の着用時において例えば溶出又は揮発等により液透過性シート7を透過し、装着者の下腹部の肌に接触できる。それにより、温感剤50の温感成分が皮膚の温熱知覚受容器を刺激し、装着者の下腹部に温感を付与できる。本実施形態では、温感剤50の溶媒成分と、溶媒層50a(の溶媒成分)とは同一である。したがって、溶媒層50aが存在する位置に温感剤50が存在する。両方の溶媒成分を共用することで、漢方薬材料層47や温感剤50と装着者の肌面との距離を短くできる他、厚さを薄くでき装着感を向上できる。
【0042】
本実施形態では、温感剤50は、温感剤保持シート13において、平面視で、幅方向Wでは表面シート7a(又は吸収体11)の幅と同程度かやや大きい範囲で、長手方向Lでは両端縁間に亘る範囲で配置される。別の実施形態では、温感剤50は、平面視で温感剤保持シート13における周縁部を除いた中央部25全体に亘って配置される。それにより、温感剤50の効果が、より一層広い領域に及ぶ。更に別の実施形態では、温感剤50は、平面視で温感剤保持シート13における周縁部を含む全体に配置される。更に別の実施形態では、温感剤50は、長手方向Lに延び、幅方向Wにおいて所定間隔で並んだ複数のストライプ状に配置される。温感剤を塗布し易くできる。更に別の実施形態では、温感剤50は溶媒成分を含まない。更に別の実施形態では、温感本体5は、温感剤保持シート13の非肌側に温感剤保持シート13を支持する支持シートを有する。更に別の実施形態では、温感本体5は、温感剤保持シート13に温感剤50を含まず、したがって、温感剤保持シート13は保温性シートとして、下腹部を保温する。この場合、別途、溶媒層50aが形成される。なお、温感剤50の平面形状は任意である。
【0043】
本実施形態では、吸収体11は、温感剤52(機能剤)を含む。温感剤52は、吸収体11の肌側の表面において、長手方向Lに延び、幅方向Wに並んだ複数のストライプ状(連続的又は間欠的)の部分に配置される。この場合、温感剤52の配置される幅方向Wの範囲は、概ね表面シート7aの幅方向Wの範囲内である。温感剤52は、温感剤50とは配置される位置が相違するが、その性質は同一である。別の実施形態では、温感剤52は、吸収体11の更に別の箇所、例えば非肌側の表面又は内部に配置される。更に別の実施形態では、吸収体11は、温感剤52を含まない。本実施形態では、温感剤52の溶媒成分と、溶媒層52a(の溶媒成分)とは同一である。したがって溶媒層52aが存在する位置に温感剤52が存在する。両方の溶媒成分を共用することで、漢方薬材料層45や温感剤52と装着者の肌面との距離を短くできる他、厚さを薄くでき装着感を向上できる。
【0044】
本実施形態では、液透過性シート7(シート部材)は、温感剤51(機能剤)を含む。温感剤51は、液透過性シート7の非肌側の表面において、長手方向Lに延び、幅方向Wに並んだ複数のストライプ状(連続的又は間欠的)の部分に配置される。この場合、温感剤51の配置される幅方向Wの範囲は、概ね吸収体11の幅方向Wの範囲内である。温感剤51は、温感剤50とは配置される位置が相違するが、その性質は同一である。別の実施形態では、温感剤51は、液透過性シート7の更に別の箇所、例えば肌側の表面に配置される。更に別の実施形態では、液透過性シート7は、温感剤51を含まない。本実施形態では、温感剤51の溶媒成分と、溶媒層51a(の溶媒成分)及び溶媒層51b(の溶媒成分)とは同一である。したがって、溶媒層51a、51bが存在する位置に温感剤51が存在する。これらの溶媒成分を共用することで、漢方薬材料層45、47や温感剤51と装着者の肌面との距離を短くできる他、厚さを薄くでき装着感を向上できる。
【0045】
本実施形態では、温感剤50、温感剤51、及び温感剤52の温感成分は、互いに同一である。別の実施形態では、温感剤50、温感剤51、及び温感剤52の温感成分の少なくとも一つは、残りと互いに相違する。また、本実施形態では、温感剤50、温感剤51、及び温感剤52の溶媒成分は、互いに同一である。別の実施形態では、温感剤50、温感剤51、及び温感剤52の溶媒成分の少なくとも一つは、残りと互いに相違する。更に、別の実施形態では、温感剤50、温感剤51、及び温感剤52の温感成分のうちの少なくとも一つは、その成分自体が発熱して、生理用ナプキン1の装着者の身体又はその近傍を加熱する発熱成分を含む。なお、生理用ナプキン1は、温感剤を有する場合には、温感剤50、温感剤51、及び温感剤52の少なくとも一つを含めばよい。
【0046】
生理用ナプキン1において、液不透過性シート9(第2シート部材)は、吸収体11と厚さ方向Tに重なり、液不透過性を有するシートである。別の実施形態では、液不透過性シート9は、更に通気性を有さない(非通気性である)。したがって、生理用ナプキン1は、液不透過性シート9よりも肌側の領域に存在する空気を、液不透過性シート9の非肌側へ、すなわち生理用ナプキン1の外部へ逃がし難い構成になっている。言い換えると、生理用ナプキン1は、温感の効果で温められた空気をすなわち生理用ナプキン1の外部へ逃がし難い構成になっている。
【0047】
生理用ナプキン1は、吸収本体3及び温感本体5の両方において、生理用ナプキン1を装着者の着衣に固定するための粘着部を備えている。粘着部の一方の面は、液不透過性シート9に固定され、他方の面は、生理用ナプキン1の個包装シート41に仮固定されている。このうち、吸収本体3には、平面視で、吸収体11と重なる領域に配置され、例えば長手方向Lに沿って延び、幅方向Wに間欠的に並ぶ粘着部73と、ウイング部17の幅方向Wの略中央部に、長手方向Lに沿って延びる粘着部71と、が配置されている。一方、温感本体5には、幅方向Wの両端部の領域に粘着部72が配置されている。別の実施形態では、粘着部の他方の面は、個包装シート43に固定された剥離シートに仮固定される。
【0048】
個包装体(生理用ナプキン1+個包装シート41)は、図1に示すように、長手方向第1折線F1(例示:左方折線)及び長手方向第2折線F2(例示:右方折線)と、幅方向第1折線F3(例示:前方折線)及び幅方向第2折線F4(例示:後方折線)と、を有する。長手方向第1折線F1及び長手方向第2折線F2は、長手方向Lに沿って延び、幅方向Wの一方側から他方側へ所定間隔で互いに平行に並んでいる。幅方向第1折線F3及び幅方向第2折線F4は、幅方向Wに沿って延び、長手方向Lの一方側から他方側へ所定間隔で互いに平行に並んでいる。すなわち、長手方向折線は2本、幅方向折線は2本である。ただし、幅方向第1折線F3は、生理用ナプキン1の前方に配置され、幅方向第2折線F4は、生理用ナプキン1の後方に配置される。幅方向第1折線F3は、吸収本体3の前側の端部及び温感本体5の後側の端部に位置する。具体的には、幅方向第1折線F3は、吸収体11における長手方向Lの前側の端縁11E1より幅方向中心線CW側に位置する。幅方向第1折線F3及び幅方向第2折線F4は、排泄口当接域21を避けるように、排泄口当接域21よりも長手方向Lの前側及び後側に位置する。なお、別の実施形態では、長手方向折線は無い。更に別の実施形態では、幅方向折線は1本又は3本以上である。
【0049】
そして、生理用ナプキン1は、個包装されるとき、個包装シート41と共に、長手方向第1折線F1及び長手方向第2折線F2を基軸として、両折線よりも幅方向Wの外側の部分(一対の外側部分)がそれぞれ肌側の表面に向かって折畳まれる。次いで、個包装シート41と共に折り畳まれた生理用ナプキン1は、幅方向第1折線F3及び幅方向第2折線F4を基軸として、両折線よりも長手方向Lの外側の部分がそれぞれ肌側の表面に向かって折畳まれる。その後、個包装シート41の一端部が、それに対向する個包装シート41に固定用テープ43で固定される。それにより、生理用ナプキン1の個包装体が形成される。そして、生理用ナプキン1は、使用されるとき、すなわち個包装が開封されるとき、個包装されるときとは逆の手順で開封される。
【0050】
また、生理用ナプキン1は、複数の圧搾部31、33を有する。複数の圧搾部31は、主に吸収本体3において、排泄口当接域21を囲むように、曲線状で、連続的又は間欠的に配置される。複数の圧搾部33は、吸収本体3において、複数の圧搾部31に囲まれた領域に、ドット状に分散して配置される。圧搾部31、33は、液透過性シート7及び吸収体11(重複部15では更に温感剤保持シート13)を肌側から非肌側へ向かって圧搾することで形成される。なお、複数の圧搾部31、33の形状及び配置は任意である。別の実施形態では、更に、温感本体5において、液透過性シート7及び温感剤保持シート13(重複部15では更に吸収体11)を肌側から非肌側に圧搾することで形成される一つ又は複数の圧搾部を備える。その圧搾部の形状は任意である。
【0051】
また、生理用ナプキン1は、シール部29を有する。シール部29は、液透過性シート7と液不透過性シート9とをそれらの周縁部27で、熱シールなどの公知の方法で接合・封止する。生理用ナプキン1では、液透過性シート7の非肌側の面と吸収体11及び温感剤保持シート13の肌側の面とは接着剤(例示:ホットメルト接着剤)等で接合され、吸収体11及び温感剤保持シート13の非肌側の面と液不透過性シート9の肌側の面とは接着剤(同上)等で接合される。
【0052】
生理用ナプキン1では、漢方薬材料層45(、47)の水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料と溶媒層51a(、51b)の親油性溶媒とが厚さ方向T(別の実施形態では、平面方向も可。以下、「厚さ方向T等」ともいう。)に部分的に重なりつつ、吸収体11及び液透過性シート7の少なくとも一方に位置している。そのため、漢方薬材料が親油性溶媒と厚さ方向T等に重なる領域では、体液が生理用ナプキン1に排泄され、液透過性シート7及び吸収体11の中を移行・拡散するとき、その体液の一部は、漢方薬材料及び親油性溶媒を経由する。その結果、その体液が流動し、移行・拡散することに伴い、親油性溶媒も移行・拡散することで、漢方薬材料の少なくとも一部に接触することになる。それにより、漢方薬材料の親油性の成分を、親油性溶媒に溶け込ませることができる。そして、その親油性の成分を含んだ親油性溶媒が拡散又は揮発することで、その親油性溶媒を装着者の肌に到達させることができる。あるいは、その親油性の成分を含んだ親油性溶媒が体液や汗などの水分に含まれた状態、例えば水分の略表面に油膜状に含まれた状態で、その水分が蒸気となり、又は生理用ナプキン1に加わる体圧により、肌側に戻るように拡散することで、水分と共にその親油性溶媒を装着者の肌に到達させることができる。すなわち、その漢方薬材料の親油性の成分を装着者の肌に到達させることができる。
【0053】
一方、漢方薬材料層45(、47)の漢方薬材料が溶媒層51a(、51b)の親油性溶媒と厚さ方向T等に重ならない領域VM1など(一部、重なる領域でも可)では、体液が液透過性シート7及び吸収体11の中を移行・拡散するとき、その体液の一部は、親油性溶媒を経由せずに、漢方薬材料に到達する。あるいは、肌から放出された汗などが、液透過性シート7内を拡散して、漢方薬材料に到達する。すなわち、その体液や汗などの水分が、流動し、移行・拡散することにより、漢方薬材料に接触する。それらにより、漢方薬材料の水溶性の成分を、体液や汗などの水分に溶け込ませることができる。そのとき、親油性溶媒が近傍に存在しないので、親油性溶媒が漢方薬材料を覆ってしまい、水分が漢方薬材料に到達し難くなることを抑制できる。そして、その水溶性の成分を含むその水分が、蒸気となり、又は、生理用ナプキン1に加わる体圧により、肌側に拡散することで、その水溶性の成分を含むその水分を装着者の肌に到達させることができる。すなわち、その漢方薬材料の水溶性の成分を装着者の肌に到達させることができる。
【0054】
ここで、漢方薬材料に含まれる生薬又はその生薬の抽出物(以下、「生薬等」ともいう。)が一種類としても、その生薬等が水分に馴染み易い(水溶性の)成分だけでなく、油分に馴染み易い(親油性の)成分を含む場合がある。また、漢方薬材料に含まれる生薬等が複数種類であり、それら複数種類の生薬等が、水分に馴染み易い(水溶性の)成分を有する生薬等だけでなく、油分に馴染み易い(親油性の)成分を有する生薬等を含む場合がある。そのような漢方薬材料を含む生理用ナプキン1、すなわち漢方薬材料が水溶性及び親油性の両方の成分を含む生理用ナプキン1であっても、上述されたように、漢方薬材料の親油性及び水溶性の両方の成分を装着者の肌に容易に到達させることが可能となる。
【0055】
これらにより、生理用ナプキン1において、漢方薬材料の水溶性を有する成分だけでなく、親油性を有する成分を、装着者の肌に容易に到達させて、漢方薬材料の効果、例えば、血流や血行を良くして体を温める効果を発揮することができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る生理用ナプキン1の好ましい使用方法について説明する。
装着者が生理用ナプキン1を装着する場合、吸収本体3の吸収体11の排泄口当接域21が装着者の排泄口に対応するように、生理用ナプキン1を着衣(例示:ショーツ)に固定する。それにより、温感本体5の温感剤保持シート13が装着者の下腹部に、吸収本体3の漢方薬材料層45が排泄口に、それぞれ対応するように生理用ナプキン1が着衣に固定される。そして、温感本体5の肌側の面が装着者の下腹部の肌に接し、吸収本体3の肌側の面が装着者の排泄口近傍の肌に接した状態で、生理用ナプキン1が使用される。
【0057】
言い換えると、生理用ナプキン1は、吸収体11の排泄口当接域21が装着者の排泄口に当接するように吸収本体3が着衣に配置されたとき、温感剤保持シート13が装着者の下腹部に対応する位置に配置されるような形状を有している。したがって、吸収本体3の吸収体11の排泄口当接域21と、温感本体5の温感剤保持シート13との距離は、装着者の排泄口と、下腹部との距離(肌面上の距離)とに概ね等しい。
【0058】
本実施形態では、温感剤保持シート13の温感剤50(機能剤)は、TRPチャネルを活性化する温感成分と、溶媒成分とを含んでいる。そのため、生理用ナプキン1が着衣に固定され、使用されると、温感剤保持シート13に含まれる温感剤50が、液透過性シート7を透過して、装着者の肌に接触し、装着者の肌において、温感成分が接触している温感剤接触部分のTRPチャネルを効率よく活性化し、装着者の下腹部に温感を効率よく付与することができる。
【0059】
装着者の下腹部に温感を付与することにより、装着者の下腹部の肌における温感成分に接していた温感剤接触部分のTRPチャネルが活性化される結果、交感神経系を介して、温感剤接触部分から熱が生じ、装着者の肌における温感成分の接触部分の温度を上昇させることが期待できる。その結果、装着者の子宮に近い部位を温め、痛み物質プロスタグランジンを排出させ、装着者の生理痛を緩和することが期待される。装着者の子宮に近い部位を温めることにより、装着者の月経前症候群(Premenstrual Syndrome)、冷え性、更年期障害等を軽減することが期待される。血行促進(リンパの流れの促進)により老廃物排出と冷え改善、脂肪燃焼向上、免疫力向上などが期待される。また、漢方薬材料の効果が血流や血行を良くして体を温める効果の場合には、生理用ナプキン1は、温感剤と漢方薬材料との相乗効果でより体を温めることができる。
【0060】
本実施形態では好ましい態様として、溶媒層51aが漢方薬材料層45の肌側に位置する。そのため、体液が生理用ナプキン1に排泄され、液透過性シート7及び吸収体11の中を移行・拡散するとき、体液及び親油性溶媒が漢方薬材料を確実に通過することができる。そのため、漢方薬材料の親油性の成分を親油性溶媒により溶け込ませることができ、それにより、漢方薬材料の親油性の成分を装着者の肌により到達させることができる。
【0061】
本実施形態では好ましい態様として、漢方薬材料層45の肌側に溶媒層51aが位置することに加えて、更に漢方薬材料層45の非肌側に溶媒層52aが位置する。そのため、体液が生理用ナプキン1に排泄され、液透過性シート7及び吸収体11の中を移行・拡散するとき、体液及び親油性溶媒が漢方薬材料をより確実に通過することができる。そのため、漢方薬材料の親油性の成分を親油性溶媒に更により溶け込ませることができ、それにより、その漢方薬材料の親油性の成分を装着者の肌に更により到達させることができる。
【0062】
生理用ナプキン1の幅方向Wの中央部は、着用者の排泄口及びその近傍の領域、すなわち敏感な肌の領域に当接する。そこで、本実施形態では好ましい態様として、溶媒層51a(、52a)は、生理用ナプキン1における幅方向Wの中央部に配置されてない。すなわち、漢方薬材料層45の漢方薬材料(の親油性の成分)は存在するが、溶媒層51a(、52a)の親油性溶媒が存在しない領域VM1(、VM2)が存在する。そのため、漢方薬材料の親油性の成分を、敏感な肌の領域が当接する領域へ移行させ難くすることができる。それにより、漢方薬材料の親油性の成分を、生理用ナプキン1の幅方向Wの中央部以外の領域に到達させつつ、その成分が敏感な肌の領域に直接到達することを抑制できる。なお、生理用ナプキン1の幅方向Wの中央部には、漢方薬材料(の水溶性の成分)が存在し、その成分が、排泄口及びその近傍の領域へ移行し易いとも考え得る。しかし、その領域は、排泄口からの体液が直接排泄される領域なので、その成分が排泄口及びその近傍の領域へ移行する量はある程度低く抑えられる。
【0063】
本実施形態では好ましい態様として、吸収体11及び液透過性シート7の少なくとも一方に位置し、温感機能を有する温感剤51(又は温感剤52)を更に備える。そのため、温感剤51(又は温感剤52)の効果で体温が上昇した肌の付近に生じる汗などの湿気を含んだ空気により、漢方薬材料をふやかせて、その表面積を増加させて、漢方薬材料の成分を放出させ易くすることができる。更に、温感剤51(又は温感剤52)の効果で温められた空気により、親油性溶媒を温めることができるので、親油性溶媒に溶け込んだ漢方薬材料の成分を、水分及び/又は親油性溶媒と共に、あるいは単独で、揮発させ易くすることができる。これらにより漢方薬材料の成分を装着者の肌により到達させることができる。それにより、漢方薬材料の効果が血流や血行を良くして体を温める効果の場合には、生理用ナプキン1は、温感剤と漢方薬材料との相乗効果でより体を温めることができる。
【0064】
本実施形態では好ましい態様として、平面視で、生理用ナプキン1における吸収体11よりも長手方向Lの前側(腹側)(別の実施形態では、後側(背側)でも可。以下、「前側(腹側)等」ともいう。)に位置し、温感機能を有する他の温感剤50を含む温感剤保持シート13を更に備える。液透過性シート7は、平面視で、吸収体11よりも長手方向Lの前側(腹側)等に延出されて、温感剤保持シート13と厚さ方向Tに重なり、温感剤保持シート13よりも肌側に位置する。そのため、生理用ナプキン1が装着者に装着されたとき、装着者の腹側(別の実施形態では、背側でも可。以下、「腹側等」ともいう。)の部分を温感剤50で温めることができる。よって、漢方薬材料の成分を装着者の肌に到達させることができると共に、前側(腹側)等に位置する他の温感剤により腹側等を温めることができる。
【0065】
別の実施形態として、生理用ナプキン1は、温感剤保持シート13及び液透過性シート7の少なくとも一方に位置し、水溶性の成分及び親油性の成分を有する他の漢方薬材料を含む他の漢方薬材料層47と、温感剤保持シート13及び液透過性シート7の少なくとも一方に位置し、他の親油性溶媒を含む他の溶媒層51b(、50a)と、を備える。そして、他の漢方薬材料層47の一部と他の溶媒層51b(、50a)の一部とは厚さ方向T等に重なる。すなわち、生理用ナプキン1では、吸収体11よりも長手方向Lの前側(腹側)等において、他の漢方薬材料と他の親油性溶媒とが、厚さ方向T等に部分的に重なりつつ、温感剤保持シート13及び液透過性シート7の少なくとも一方に位置している。そのため、生理用ナプキン1が装着者に装着されたとき、装着者の前側(腹側)等の部分を温感剤50で暖めつつ、温感剤50の効果で体温が上昇した肌の付近に生じる汗などの湿気を含んだ空気により、他の漢方薬材料をふやかせて、表面積を増させて、他の漢方薬材料の成分を放出させ易くすることができる。更に、温感剤50の効果で温められた空気により、親油性溶媒を温めることができるので、親油性溶媒に溶け込んだ他の漢方薬材料の成分を、水分及び/又は溶媒と共に、あるいは単独で、揮発させ易くすることができる。これらにより長手方向Lの前側の他の漢方薬材料の成分を、装着者の長手方向の前側の肌により到達させることができる。
【0066】
また、本実施形態では好ましい態様として、温感剤50、51、52は、装着者に温感を知覚させる温感成分と、温感成分を溶解又は分散する溶媒成分と、を含み、溶媒成分は、親油性溶媒である。そのため、温感剤50、51、52(の溶媒成分)を溶媒層50a、51a、51b、52aとすることができ、溶媒層を別に設ける必要が無いか、又は、溶媒層の領域又は厚さを縮小できる。それにより、漢方薬材料層45、47及び/又は温感剤50、51、52と装着者の肌面との距離を短くできるので、それら漢方薬材料層45、47及び/又は温感剤50、51、52を装着者の肌により到達させ易くできる。
【0067】
漢方薬として、薬効を高めるために複数の種類の生薬又はそれら生薬の抽出物を混合したものが存在する。そこで、本実施形態では好ましい態様として、漢方薬材料は、水溶性の成分を含む生薬又はその生薬の抽出物と、親油性の成分を有する生薬又はその生薬の抽出物と、が混合された漢方薬を用いる。このような場合でも、本吸収性物品では、水溶性の成分を体液や汗などの水分に溶け込ませ、親油性の成分を親油性溶媒に溶け込ませることで、それら漢方薬材料の成分を装着者の肌により到達させることができる。したがって、漢方薬材料が複数の生薬又はその生薬の抽出物が混合された漢方薬であっても、それら生薬又はその生薬の抽出物を分離することなく、各生薬又はその各生薬の抽出物の成分を有効に用いることができる。
【0068】
本実施形態の生理用ナプキン1では好ましい態様として、長手方向Lにおいて、幅方向中心線CWと、吸収体11の前側の端縁11E1と、の距離は、吸収体11の前側の端縁11E1と、生理用ナプキン1の前側の端縁と、の距離よりも長く構成される。そのため、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、体液を吸収可能な吸収体11の領域を長手方向Lに十分に確保できる。それゆえ、長手方向Lにおいて、前側に温感本体5を有し、前側の部分が相対的に長い生理用ナプキン1を下着に装着するとき、前側の端部のはみ出しを気にして、装着者が生理用ナプキン1を後側に必要以上にずらして装着しても、生理用ナプキン1の前側の領域において、吸収体11の領域が十分に確保できるため、前側から体液が漏れることを抑制できる。
【0069】
(第2実施形態)
本実施形態に係る生理用ナプキン1aの構成について説明する。本実施形態に係る生理用ナプキン1aは、温感本体5を有さない点で、第1実施形態に係る生理用ナプキン1と相違する。簡単に言えば、生理用ナプキン1aは、生理用ナプキン1から温感本体5を除いた構成を有する。以下では、生理用ナプキン1aと生理用ナプキン1との相違点について主に説明する。
【0070】
図6図9は本実施形態に係る生理用ナプキン1aの構成例を示す図である。図6は、生理用ナプキン1aを展開した状態を示す平面図である。図7は、図6に示す生理用ナプキン1aにおける長手方向中心線CLに沿った断面図である。図8は、生理用ナプキン1aの液透過性シート7における溶媒層51a等の配置を示す模式図である。図9は、生理用ナプキン1aの溶媒層52a等の配置を示す模式図である。
【0071】
本実施形態に係る生理用ナプキン1aの漢方薬材料層45aは、長手方向Lにおいて、吸収体11の一端部から他端部までの範囲と厚さ方向Tに重なる範囲に配置される点で、第1実施形態に係る生理用ナプキン1の漢方薬材料層45と相違する。漢方薬材料層45aが長手方向Lのより長い範囲に配置されることで、漢方薬材料の機能をより高めることができる。別の実施形態では、漢方薬材料層45aは、第1実施形態の漢方薬材料層45と同様に配置される。なお、別の実施形態では、生理用ナプキン1aは、更に第1実施形態と同様の温感本体5を備える。
【0072】
(生理用ナプキン1における各資材等)
次に、各実施形態における生理用ナプキン1(生理用ナプキン1aを含む。以下同じ。)における各資材等について説明する。
【0073】
上記の各実施形態において、生理用ナプキン1に含まれる漢方薬材料層45(、漢方薬材料層45a)は、水溶性の成分及び親油性の成分を有する漢方薬材料を含み、溶媒層(、他の溶媒層)に、親油性溶媒を含んでいる。
【0074】
ここで、漢方薬材料は、漢方薬を含む材料であり、漢方薬は、漢方方剤(処方)及び生薬を含む剤である。生薬は、自然の素材(例示:植物、動物、鉱物)を特定の方法で加工・調整した、薬効成分を有する剤である。漢方方剤は、複数の生薬を組み合わせた剤である。そして、漢方薬材料は、医学的、薬学的、又は生理学的に許容される漢方薬又はその漢方薬から抽出された抽出物であればよく、漢方薬を構成する生薬や、その組合せや、その配合比率については特に制限されない。漢方薬材料としては、例えば、「新一般用漢方処方の手引き」(日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載された生薬又は漢方方剤、又はそれら生薬若しくは漢方方剤から抽出された抽出物が挙げられる。具体的には、漢方方剤としては、桂枝茯苓丸、加味逍遙散、当帰芍薬散、温経湯、きゅう帰膠艾湯、芍薬甘草湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、五積散などが例示される。生薬としては、アキョウ(阿膠)、ガイヨウ(艾葉)、カンキョウ(乾姜)、カンゾウ(甘草)、キキョウ(桔梗)、キジツ(枳実)、ケイヒ(桂皮)、コウボク(厚朴)、ゴシュユ(呉茱萸)、サイコ(柴胡)、サイシン(細辛)、サンシシ(山梔子)、ジオウ(地黄)、シャクヤク(芍薬)、ショウキョウ(生姜)、センキュウ、ソウジュツ(蒼朮)、ダイオウ(大黄)、タイソウ(大棗)、タクシャ(沢瀉)、チンピ(陳皮)、トウガシ(冬瓜子)、トウキ(当帰)、トウニン(桃仁)、ニンジン(人参)、バクモンドウ(麦門冬)、ハッカ(薄荷)、ハンゲ(半夏)、ビャクシ、ビャクジュツ(白朮)、ブクリョウ(茯苓)、ボウショウ(芒硝)、ボタンピ(牡丹皮)、マオウ(麻黄)、モクツウ(木通)などが例示される。
【0075】
これら漢方薬材料における親油性(油溶性、脂溶性)の成分は、親油性溶媒に可溶であれば特に制限はない。そのような親油性の成分としては、例えば、脂溶性ポリフェノール、並びに、ギンゲロール、ショウガオール、及びジンゲロンなどが挙げられる。脂溶性ポリフェノールは、例えば、当帰、川きゅう、及び芍薬から親油性溶媒により抽出し得る。ギンゲロール等(身体を温める成分)は、例えば、生姜から親油性溶媒により抽出し得る。
【0076】
一方、これら漢方薬材料における水溶性の成分としては、体液や汗などによる水分に可溶であれば特に制限はない。そのような水溶性の成分としては、例えば、水溶性ポリフェノールやペオニフロリンなどが挙げられる。水溶性ポリフェノールは、例えば、当帰、川きゅう、及び芍薬から水分により抽出し得る。ペオニフロリン(鎮痛成分)は、例えば、芍薬から水分により抽出し得る。
【0077】
親油性溶媒としては、漢方薬材料が有する親油性の成分を溶解し得るものであれば、特に限定されない。親油性溶媒としては、例えば、油脂があげられる。油脂としては、例えば、植物性油や動物性油のような天然油や、炭化水素等が挙げられる。天然油としては、例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、流動パラフィンのようなパラフィン等が挙げられる。なお、親油性溶媒は、必ずしも液体状である必要はなく、生理用ナプキン1のいずれかの資材に個体状で配置されたものや、温度によって揮発性を有するものでもよい。なお、親油性溶媒は、生理用ナプキン1の製造過程では液体状であるが、生理用ナプキン1の製品完成時やその後の保管時や販売時において固体状であってもよい。ただし、使用時に、体温などで雰囲気温度の上昇などにより液体状に戻るものとする。
【0078】
上記の各実施形態では、温感剤保持シート13や、液透過性シート7や、吸収体11は、TRPチャネルを活性化する温感成分と溶媒成分とを含む温感剤50や、温感剤51や、温感剤52を有している。
【0079】
温感剤50、51、52は、例えばTRPチャネル(温度受容器(温熱知覚受容器))を活性化する温感成分と溶媒成分とを含む。温感成分としては、TRPチャネルを活性化するものであれば、特に制限されず、例えば、TRPV1レセプターに対するアゴニスト、TRPV3レセプターに対するアゴニスト等が挙げられ、TRPV1に対するアゴニストが好ましい。TRPV1レセプターは、活性化温度閾値が43℃超と高く、装着者に高い温感を付与できるからである。
【0080】
温感成分は、装着者の安心感の観点から植物由来の化合物が好ましい。温感成分としては、例えば、カプシコシド、カプサイシン、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例示:バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。それらの中でも、温感成分は、装着者が痛さを感じにくい観点から、カプサイシンではないことが好ましく、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例示:バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、及びジンゲロン、並びにそれらの任意の組み合わせがより好ましい。
【0081】
溶媒成分として、温感成分を含むことができるものであれば、特に限定されず、例えば親油性溶媒及び親水性溶媒が挙げられる。このような溶媒成分は、温感成分を、溶解、分散等することができる。親油性溶媒としては、例えば油脂があげられる。油脂としては、例えば、天然油(例示:トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油等)、炭化水素(例示:パラフィン(例示:流動パラフィン))等が挙げられる。親水性溶媒としては、例えば、水及びアルコールが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の低級アルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。それらの中でも、溶媒成分としては、揮発性を制御しやすい、特に揮発性を下げやすい観点からは、油脂(親油性溶媒)又はアルコール(親水性溶媒)が好ましい。また、吸収性を阻害しにくい観点からは、上記溶媒成分は親油性溶媒であることが好ましい。温感剤の溶媒成分を親油性溶媒とすることで、漢方薬材料の親油性溶媒としても兼用することができ、それにより、生理用ナプキン1をより薄くより柔らかくでき、装着感を向上できる。
【0082】
なお、液透過性シート7の温感剤51や吸収体11の表面の温感剤52は、体液の種類や塗布される位置によっては下層(例示:吸収体11、吸収体11の下部)へ流出し難い特性を有する耐久親水油剤(耐久親水化剤)と共存させることが好ましい。すなわち、溶媒成分として、耐久親水油剤を含むことが好ましい。耐久親水油剤としては、特に制限されず、当技術分野で、繊維にコーティング又は練り込まれているものを採用することができる。耐久親水化剤としては、例えば、炭素数が10~30のアルキルホスフェートエステル塩と、炭素数が10~30のベタイン化合物、硫酸エステル塩又はスルホネート塩との混合物、アルキルホスフェートエステル塩とポリエーテル変性シリコーンとの混合物等が挙げられる。そのため、温感剤51、52が体液により下層へ移行することを抑制することができる。すなわち、比較的肌に近い部分に温感剤を維持することができる。それにより、温感の持続性をより向上することが可能となる。
【0083】
温感剤50~52の温感成分の濃度は、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、さらに好ましくは5~15質量%である。温感の効果の観点からである。生理用ナプキン1では、温感剤50~52における温感成分の坪量は、好ましくは0.001~30g/mであり、より好ましくは0.01~20g/mであり、さらに好ましくは0.1~10g/mである。装着者に温感を付与するためである。
【0084】
なお、温感剤50~52が温感成分として発熱成分を含む場合、その発熱成分としては、発熱成分自体が発熱するものならば、特に制限はない。発熱成分としては、例えば鉄粉のような金属粉(酸化熱を利用)、酸性物質及びアルカリ性物質(中和熱を利用)、無機塩(水和熱を利用)が挙げられる。発熱成分を用いる場合、生理用ナプキン1の着用時に、着用者の肌を現実に温めることができ、着用者が確実に温かさを感じることができる。
【0085】
温感剤50、温感剤51及び温感剤52は、生理用ナプキン1が使用されるまでに揮発したり、他の領域へ移動したりすることを防止するため、水崩壊性の保護材、例えば、マイクロカプセルに保護されていてもよい。マイクロカプセルは、機能剤を内包し、液体(例示:経血、尿、汗)に触れると崩壊し、機能剤を外部に放出させる。放出された機能剤は、着用者の体温等により気化したり、着用者の肌に接触したりすることで、着用者に対して所定の機能を発揮する。
【0086】
マイクロカプセルの素材としては、例えば、糖類、例えば、単糖類(例示:ブドウ糖)、二糖類(例示:ショ糖)及び多糖類(例示:デキストリン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、水溶性でんぷん)、ゼラチン、水溶性ポリマー(例示:ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル)等が挙げられる。
【0087】
マイクロカプセルは市販されており、例えば、Symrise社から市販される、INCAP(商標)等が挙げられる。また、マイクロカプセルは、例えば、水にマイクロカプセルの素材を溶解させて水溶液を形成し、当該水溶液に機能剤及び界面活性剤を混合し、その水溶液をスプレーしながら減圧乾燥することにより製造することができる。
【0088】
生理用ナプキン1では、温感剤50~52は、上述の温感成分及び溶媒成分以外に、装着者に温感を付与する効果を阻害しない範囲で、所望の作用を有する少なくとも一種の他の成分を含むことができる。そのような少なくとも一種の他の成分として、例えば抗菌剤や皮膚収斂剤や抗炎症剤のような薬剤、ビタミン、アミノ酸、ゼオライト、ヒアルロン酸、コラーゲン、ワセリン、トレハロース、pH調整剤、保湿剤、香料などが挙げられる。
【0089】
生理用ナプキン1の温感剤は、剤自体が発熱する発熱剤とは異なり、低温やけどを起こし難く、かつ、粘着部72等が軟化し難くので生理用ナプキン1を使用後に下着等から取り外す際に、粘着部72等が下着等に残り難く、好ましい。
【0090】
生理用ナプキン1において、液透過性シート7の素材としては、液透過性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、布帛(例示:不織布、織布、編物)、開孔フィルム等が挙げられる。布帛としては、生理用ナプキン1の製造し易さの観点から不織布が好ましい。不織布としては、例えば、エアレイドパルプ、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例示:SMS)が挙げられる。中でも、不織布としては、エアスルー不織布が好ましい。液透過性シート7は、好ましくは5~100g/m2、より好ましくは10~50g/m2の坪量を有する。
【0091】
布帛を構成する繊維としては、例えば、天然繊維、合成繊維、及び半合成繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、パルプ繊維及び再生セルロース繊維が挙げられる。再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン繊維が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート繊維のような半合成セルロース繊維が挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性繊維が挙げられる。熱可塑性繊維としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレートやポリペンチレンテレフタレートのようなポリエステル系ポリマー、ナイロン6やナイロン6,6のようなポリアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、又はそれらの変性物、あるいはそれらの組み合わせ等から形成された繊維が挙げられる。開孔フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのシートに、複数の開孔部を設けたものが挙げられる。
【0092】
なお、表面シート7aは、親水性繊維(例示:綿、レーヨン、毛、絹)で形成されていることが好ましい。それにより、汗を含む水分を構成繊維内に引き込み保持させ易くすることができる。それにより、構成繊維の表面に水分を残し難くさせることができ、水分と肌を接触し難くすることができ、皮膚に冷たさを感じ難くさせることができる。それにより、温感の持続性をより向上することが可能となる。
【0093】
生理用ナプキン1において、液不透過性シート9の素材として、液不透過性かつ非通気性を有するものであれば特に制限はない。温感剤50の温感の効果で温められた空気を液不透過性シート9と肌との間の領域から散逸し難くするためである。液不透過性シート9の素材として、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に合成樹脂フィルムを接合したもの、SMS等の複層不織布等が挙げられ、非通気性を有する合成樹脂フィルムが好ましい。液不透過性シート9は、好ましくは10~50g/m2、より好ましくは15~30g/m2の坪量を有する。
【0094】
生理用ナプキン1において、温感剤保持シート13の素材としては、例えば、液透過性シート7の素材として列挙されるものや、スポンジシートのような多孔質樹脂シートなど、温感剤50を含浸可能なものが挙げられる。具体的には、温感剤50の溶媒成分が親油性溶媒のときには、合成繊維の布帛、例えば、不織布、織布、編物等が挙げられ、好ましくは合成繊維の不織布が挙げられる。温感剤の溶媒成分が親水性溶媒のときには、例えば、セルロース系繊維から構成される布帛、例えば、不織布、織布、編物等が挙げられ、好ましくはパルプ繊維から構成されるティッシュ、エアレイドパルプが挙げられる。なお、別の実施形態として、温感本体5の代わりに、保温機能を有する保温本体とする場合、温感剤保持シート13に代替される保温性シートの素材は、例えば、温感剤保持シート13の素材として列挙されるものが挙げられ、この場合には温感剤50は含浸させない。
【0095】
生理用ナプキン1において、吸収体11(の吸収コア)の素材としては、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。吸収体11がコアラップを有する場合には、コアラップの素材としては、例えばティッシュが挙げられる。吸収体11の坪量は、例えば10~500g/mが挙げられ、好ましくは100~400g/mである。
【0096】
生理用ナプキン1において、粘着部71、72、73等の素材としては、ホットメルト接着剤、例えば、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。
【0097】
生理用ナプキン1において、個包装シート41の素材としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマーが挙げられる。個包装シート41は、気密性を高める観点から、気密層を含んでもよい。気密層の素材としては、例えば、エチレンビニルアルコールコポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、例えば、塩化ビニリデンメチルアクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール、ナイロン、例えば、ナイロン6、アルミ箔、基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート等)上にアルミナ、シリカ等が蒸着されたものが挙げられる。
【0098】
本発明の吸収性物品(例示:生理用ナプキン)は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、各実施形態同士を組合せることや公知技術を適用すること等が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 生理用ナプキン
7 液透過性シート(シート部材)
9 液不透過性シート
11 吸収体
51、52 温感剤
60 吸収体圧搾部(吸収体凹部)
67 シート圧搾部(シート部材凹部)
図1
図2
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図9