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特許7179082スズ十二量体、及び強いEUV吸収を有する放射線パターニング可能なコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】スズ十二量体、及び強いEUV吸収を有する放射線パターニング可能なコーティング
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20221118BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20221118BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221118BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221118BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G03F7/004
G03F7/004 501
C09D7/20
C09D201/00
C09D7/63
C07F7/22 G
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020554277
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019025739
(87)【国際公開番号】W WO2019195522
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】62/653,043
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511130955
【氏名又は名称】インプリア・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Inpria Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ジェイ・カーディノー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・アーリー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ティ・マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】カイ・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ティ・アンダーソン
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】Photolithographic properties of tin-oxo clusters using extreme ultraviolet light(13.5nm),Microelectronic Engineering,2014年,127,44-50
【文献】Organotin assemblies containing Sn-O bonds,Coordination Chemistry Reviews,2002年,235,1-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
C09D 7/20
C09D 201/00
C09D 7/63
C07F 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(QSn)1214(OH)(RCO(式中、Rは、H、又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、Qは、構造-(CHSn(R)を有し、n=1~4であり、4~15個の全炭素原子を有するアルキルスズ基であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)で表されるスズ十二量体を含む組成物。
【請求項2】
、R、及びRがそれぞれメチル基-CHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Qが-CHSn(CHである、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
放射線パターニング可能なコーティングを形成するための溶液であって、有機溶媒と、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物とを含む,溶液。
【請求項5】
スズ原子の濃度が1mM~1Mである、請求項に記載の溶液。
【請求項6】
前記有機溶媒がクロロホルムを含む、請求項に記載の溶液。
【請求項7】
Qが-CHSn(CHであり、スズの濃度が10mM~200mMである、請求項4~6のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項8】
1~30体積%のギ酸をさらに含み、前記有機溶媒が、ケトン又は4~10個のC原子を有するアルコキシアルコールを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項9】
前記有機溶媒がプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項10】
式(RCC)SnQ(式中、Rは、1~15個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Qは、構造-(CHSn(R)を有し、4~15個の全炭素原子を有するアルキルスズ基であり、n=1~4であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)で表されるスズ化合物を含む組成物。
【請求項11】
Qが(CHSn(CHで表され、n=1~4である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
QがCHSn(CHで表される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
有機スズ化合物の形成方法であって:
有機溶媒、アルキルアセチレン、ハロゲン化アルキルマグネシウムを含む溶液に二ハロゲン化スズを徐々に加えてスズ中間体溶液を形成するステップと;
XCHSn(R)(式中、Xはハロゲン化物であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)を前記スズ中間体溶液と混合して固体化合物の(RCC)SnCHSn(R)を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記二ハロゲン化スズがSnClであり、前記ハロゲン化アルキルマグネシウムが塩化アルキルマグネシウムであり、前記アルキル基が1~4個の炭素原子を有する、クラム13の方法。
【請求項15】
前記溶媒がテトラヒドロフランである、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルキルアセチレンがフェニルアセチレンである、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(QSn)3n/2-1/2x-1/2y(OH)、1≦n≦12、(0<x+y≦8)(式中、Qは、構造-CHSn(R)を有し4~15個の全炭素原子を有するアルキルスズ基であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)を含む組成物。
【請求項18】
、R、及びRがそれぞれメチル基-CHである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
Qが-CHSn(CHである、請求項17又は請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
放射線パターニング可能なコーティングを形成するための溶液であって、有機溶媒と、請求項17に記載の組成物とを含む、溶液。
【請求項21】
スズ原子の濃度が1mM~1Mである、請求項20に記載の溶液。
【請求項22】
前記有機溶媒がクロロホルムを含む、請求項20又は請求項21に記載の溶液。
【請求項23】
Qが-CHSn(CHであり、スズの濃度が10mM~200mMである、請求項20~22のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項24】
1~30体積%のギ酸をさらに含み、前記溶媒が、ケトン又は4~10個のC原子を有するアルコキシアルコールを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項25】
前記有機溶媒がプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項26】
式(QSn)1214(OH)(HCO(式中、Qは、構造-(CHSn(R)を有し、n=1~4であり、4~15個の全炭素原子を有するアルキルスズ基であり、R、R、及びRは独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)で表される十二量体スズ組成物をフッ素化させる方法であって:
水酸化アルキルスズをトリアルキルアミン三フッ化水素酸塩と反応させるステップを含む、方法。
【請求項27】
前記トリアルキルアミン三フッ化水素酸塩がトリエチルアミン三フッ化水素酸塩である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、Cardineauらの“Photoresists With High EUV Absorption”と題される2018年4月5日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/653,043号明細書(参照により本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、放射線パターニング可能なコーティングの形成に適切なアルキルスズクラスターに関する。本発明は、さらに、配位子中に組み込まれたスズ原子を有するアルキル配位子に関する。
【背景技術】
【0003】
極紫外(EUV)リソグラフィは、ナノスケール上にパターン化された高密度構造を含む高性能集積回路の製造方法の1つである。これらの回路を製造するため、基板上にフォトレジストを堆積して、EUV光のパターンに露光させる。露光した領域は放射線分解が起こり、溶解性が変化し、それによって溶剤現像及びさらなる処理の後にレジストに正確にEUV光パターンを移すことが可能となる。現像されたフォトレジストパターンは、次にエッチングプロセスによって、下にある基板に移される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体回路及びデバイスの加工は、各世代にわたって限界寸法が縮小され続けることを伴ってきた。これらの寸法の縮小のため、ますます小さくなる特徴の処理及びパターニングの要求に適合するための新規な材料及び方法が要求されうる。パターニングは、一般に、放射線感受性材料(レジスト)の薄層の選択的露光によってパターンを形成し、次にそれを引き続く層又は機能性材料に移すことを伴う。極紫外(EUV)光及び電子ビーム放射線の良好な吸収が得られ、同時に非常に高いエッチングコントラストを得るのに特に適切な新しい種類の有望な金属ベースの放射線レジストが発見されている。より小さなパターン化された特徴を得るために、EUVは、半導体の加工における重要なツールとなることが突き止められており、EUVの利点を利用可能なレジスト組成物が、この取り組みに対する貴重な構成要素となりうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、式(QSn)1214(OH)(RCO(式中、Rは、H、又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、Qは、3~31個の全炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、又はQは、構造-(CHSn(R)を有し、n=1~4であり、4~15個の全炭素原子を有するアルキルスズ基であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)で表されるスズ十二量体を含む組成物に関する。幾つかの実施形態では、放射線パターニング可能なコーティングを形成するための溶媒は、有機溶媒を含むことができ、この組成物はスズ十二量体を含む。
【0006】
さらなる一態様では、本発明は、式(RCC)SnQ(式中、Rは、1~15個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Qは、構造-(CHSn(R)を有し、4~15個の全炭素原子を有するアルキルスズ基であり、n=1~4であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)で表されるスズ化合物を含む組成物に関する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、有機スズ化合物の形成方法であって:
有機溶媒、アルキルアセチレン、ハロゲン化アルキルマグネシウムを含む溶液に二ハロゲン化スズを徐々に加えてスズ中間体溶液を形成するステップと;
XCHSn(R)(式中、Xはハロゲン化物であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)を上記スズ中間体溶液と混合して固体化合物の(RCC)SnCHSn(R)を形成するステップと、
を含む方法に関する。
【0008】
別の態様では、本発明は、(QSn)3n/2-1/2x-1/2y(OH)、1≦n≦12、(0<x+y≦8)であり、(Qは、1~16個の炭素原子を有するアルキル基、又は4~15個の全炭素原子を有する構造-CHSn(R)を有するアルキルスズ基であり、及びR、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)を含む組成物に関する。幾つかの実施形態では、放射線パターニング可能なコーティングを形成するための溶液は、有機溶媒と、フッ素化スズ十二量体を含むこの組成物とを含むことができる。
【0009】
別の一態様では、本発明は、式(QSn)1214(OH)(HCO(式中、Qは、5~16個の全炭素原子を有するアルキル基であり、又はQは、構造-(CHSn(R)を有し、n=1~4であり、4~15個の全炭素原子を有するアルキルスズ基であり、R、R、及びRは独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)で表される十二量体スズ組成物をフッ素化させる方法であって、水酸化アルキルスズをトリアルキルアミン三フッ化水素酸塩と反応させるステップを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(CCC)SnCHSn(CHの化学式の線画描写である。
図2】EUV放射線に露光した((CHSnCHSn)1214(OH)(HCOのコントラスト曲線のプロットである。
図3】(t-BuSn)1214(OH)(HCOO)・4n-COHの結晶構造の図である。
図4】CHOH-d4中の(t-BuSn)1214(OH)(HCOH(上図)及び119Sn(下図)NMRスペクトルである。
図5】(t-BuSn)1214(OH)(HCOのESI質量スペクトルである。
図6図5を拡大したものである。
図7】(t-BuSn)1214(OH)8-xの質量スペクトルである。
図8】CDCl中のH、19F、119Sn NMR(400MHz)を含む(t-BuSn)1214十二量体のNMRスペクトルである。
図9】(t-BuSn)1214のEUV露光のコントラスト曲線のプロットである。
図10】(t-BuSn)1214(OH)(HCOをベースとするレジストの32nmピッチ上に印刷した16nmのレジスト線の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図11】記載の露光後ベーク温度で処理した(t-BuSn)1214(OH)(HCOをベースとするレジストの特性コントラスト曲線のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アルキルスズクラスターは、放射線ベースのパターニングに関して有望な特性が得られ、本明細書に記載のスズの十二量体は、スズのEUVパターニングの場合に適切に加工することができる。アルキルスズトリアセチリドモノマーから十二量体を合成するための合成方法の1つが本明細書に記載される。また、トリアセチリドモノマーを、さらなるスズ原子も配位子中に有する十二量体の実施形態に効果的に変換するために使用できる、スズ配位子を有するアルキル基が本明細書に記載される。スズ十二量体は、オキソ配位子、ヒドロキソ配位子、及びホルメート配位子を有し、その幾つかの配位子は架橋してクラスターを安定化させる。ホルメート配位子及び/又は水酸化物配位子をフッ化物イオンで置換する方法が開示される。スズ十二量体クラスターは、適切な有機液体に対して可溶性である固体化合物である。安定化させたスズ十二量体をベースとするパターニング配合物が記載される。より多いスズ含有量のこれらのスズクラスターに基づくと、スズ組成物から形成されるコーティングは高いEUV吸収性を示す。
【0012】
EUV源では、一般に、リソグラフィに使用される他のDUV及びUVレーザーシステム及びランプよりも低い光度を生み出す。このより低い照度では、EUVショットノイズ及びフォトレジスト中の化学反応の不規則な性質のために、レジストパターン中に望ましくない欠陥が形成されうる。これらの確率事象は、EUV放射線を強く吸収し、露光領域と非露光領域との間でより高い溶解性コントラストが効率的にもたらされる化学変化が起こるフォトレジストではあまり生じない。
【0013】
薄いフォトレジストによって、下にある基板に移すための最も忠実度が高いパターンが得られる。したがって、有効なEUVフォトレジストは、欠陥性及び書き込み速度の両方を改善できるように非常に大きいEUV吸収断面積を有するべきである。Meyersらは、“Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions”と題される米国特許第9,310,684号明細書(参照により本明細書に援用される)において、EUVリソグラフィ用の高い吸収係数を有する新規な有機スズフォトレジスト組成物を記載している。溶液コーティング及び膜組成物は、アルキル基によって結合し、オキソ(O)基及び/又はヒドロキソ(-OH)基によってさらに架橋したスズを含む。ここで、本発明者らは、C、O、及び-OH基をより強いEUV吸収種で置換することによって例示される新規組成物を記載する。アルキル鎖中の炭素原子CはSnで置換することができ、O及び-OHはFで置換することができる。表1中の断面積の比較は、報告される原子吸収データ(http://henke.lbl.gov/optical_constants/pert_form.html)に基づくと、これらの置換によってより大きいEUV吸収を得ることができることを示している。表1中、吸収は、13.5nmのEUV光におけるcm/原子の単位で報告される。
【0014】
【表1】
【0015】
OH基のFによる置換は、ヒドロキソスズ種が結合してHOが脱離する場合に生じうる縮合も制限する。このように縮合が抑制されることで、フォトレジスト溶液安定性及びパターニング性能の再現性が向上しうる。
【0016】
高いEUV吸収を得ることと、同時に良好なコーティング特性及び溶液処理を維持することとを保証するスズクラスターが合成されている。スズ三量体及びその他のクラスターは、“Organnotin Clusters,Solutions of Organotin Clusters,and Application to High Resolution Patterning”と題されるCardineauらの同時係属中の米国特許出願第16/194,491号明細書(以降’491号出願)(参照により本明細書に援用される)に以前に記載されている。’491号出願には、クラスターを形成するためのアルキルスズトリアルキルアセチリドモノマー、特にアルキルスズトリフェニルアセチリドモノマーの使用が教示されている。幾つかの実施形態では、これらのモノマーは、本明細書に記載の十二量体の形成に使用される。2つの例示されるスズ十二量体などのレジスト処理に有用な構造を有するスズ十二量体は、高いEUV吸収が得られると記載される。
【0017】
十二量体(QSn)1214(OH)(RCO(Q=アルキル又はアルキルスズ配位子及び、R=アルキル基又はH)は、金属酸化物EUVフォトレジストとして配合される代表的な有機スズクラスターである。また、カルボキシレート、例えば、ホルメート、及び場合により一部又はすべての水酸化物配位子は、後述するように、フッ化物イオンによって置換することができる。Q配位子は一般に第4級炭素原子又はスズ原子を有することができる。第4級炭素原子を有するアルキル基の場合、これらのアルキル基は一般に所望のパターン化コーティングが形成されることが分かっており、これらの配位子は一般に5~17個の炭素原子を有することができる。アルキルスズ配位子は、類似のアルキル基の第4級炭素の代わりにスズ原子を有し、4~16個の炭素原子を含むことができる。第4級炭素がSnで置換された配位子は、依然として上記式中の十二量体のC-Sn結合が得られて、Sn-(CH-Sn部分が形成され、式中のnは1~4である。第4級炭素の置換はEUVリソグラフィに有利となることができ、その理由はSnはCよりも広いEUV吸収断面積を有するからである(表1参照)。
【0018】
スズクラスターの(BuSn)1214(OH) +2及び(i-PrSn)1214(OH) +2の合成は、それぞれ、Eychenne-Baron et al.(以降Eychenne-Baron),“New synthesis of the nanobuilding block {(BuSn)1214(OH)2+ and exchange properties of {(BuSn)1214(OH)}(OSCCH,”J.Organometallic Chemistry 1998,567,137-142、及びPuff et al.(以降Puff),“Zur hydrolyse von monoorganylzinn-trihalogeniden(III.Isolierung und Roentgenstrukturanalyse von Verbindungen mit dem nueartigen Kaefig-ion[(i-PrSn)1214(OH) +2],”J.Organometallic Chemistry 1989,373,173-184に記載されており、これら両方が参照により本明細書に援用される。クラスターを適切に安定化させることがわかっている、立体的に嵩高いネオペンチルをベースとするアルキル配位子を有する(場合により第4級スズ原子で置換される)前述の組成物の形成、及びホルメートアニオンの導入のための非常に特異な合成方法が本明細書に記載される。
【0019】
Puffは、塩化物アニオンを有し、溶媒分子(水、又はDMF(ジメチルホルムアミド)若しくはDMPU(N,N’-ジメチルプロピレン尿素を有する水)と会合するそれらの化合物の単離を記載している。Eychenne-Baronは、p-トルエンスルホニルアニオンを有する合成されたままの化合物の置換を研究しており、その基のアセテート基による部分置換に成功している。本発明の合成方法によって、別のアルキル置換基を有するホルメート塩としての十二量体を調製することができる。
【0020】
中程度のサイズの分岐アルキル配位子によって良好なパターニング性能が得られることが分かった。第4級C原子を有する最も単純なアルキル基はネオペンチル(CHCH-構造を有し、これはt-アミル基と呼ぶことができる。このネオペンチル部分は(R)C(CH-と一般化することができ、式中のnは1~4の整数(すなわち、1、2、3又は4)であるが、一般にCは単にCと書かれ、「」は単に第4級炭素の概念を導入するために使用される。一般化された基は、場合により延長されたアルキル構造を有する同じ配位子結合を維持している。一般に、R、R、R部分は独立して、メチル(CH-)、エチル(CHCH-)などの1~5個の炭素原子を有する基であってよい。第4級CをSnで置換して、対応するアルキルスズ配位子(CHSnCH-又は一般に(R)Sn(CH-を形成することができ、式中のnは1~4の整数であり、R、R、Rは前述の通りである。tert-ブチル((CHC-)基、sec-ブチル(CHCHCHCH)、イソブチル(CHCHCH-、イソプロピル((CHCH-)などの別の分岐アルキル基が望ましい場合があり、幾つかの実施形態では、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びより大きな基などの非分岐アルキル基が望ましい場合がある。
【0021】
本明細書において、第4級炭素又はスズ中心を有する配位子は、最終的に十二量体を合成するためのモノマーを形成するためのSn原子への結合に有用であることが分かっている。これらのモノマーは、一般に構造QSn(CCC)を有し、ここで、フェニルアセチリド中のQは、クラスターのアルキル又はアルキルスズ配位子になる。モノマーの(CHSnCHSn(CCC)は以下に例示されるが、これはアルキル基中のCがSnで置換されたモノアルキルオキソ-ヒドロキソスズ種の最初の例になると考えられる。このモノマーは、別のアルキル配位子置換基を使用して、-(CHC(R)配位子中に5~16個の全炭素原子を有する(CCC)Sn(CHC(R)として、又は-(CHSn(R)配位子中に4~15個の全炭素原子を有する(CCC)Sn(CHSn(R)として一般化することができ、ここでn=1、2、3、又は4であり、R、R、及びRは独立して、1~5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基である。また、トリアルキルアセチリドモノマーは、別の置換基を用いて(R’CC)SnQとして一般化することができ、ここでR’は、1~15個の炭素原子を有する有機基、例えばアルキル基、アルケニル基、芳香族基、対応するハロゲン化された種類のもの、又はそれらの誘導体である。
【0022】
前述のトリアルキルアセチリドモノマーは、適切な条件下での加水分解及び縮合によって、十二量体(QSn)1214(OH)(HCOを形成し、ここでQはスズ原子を含むことができる。この十二量体の有機溶媒中の溶液は、容易にスピンコーティング又はその他の適切な処理を行うことで、薄膜を堆積することができる。報告される原子EUV吸収断面積、25nmの膜厚、及びネオペンチルスズ十二量体膜と同等の充填密度に基づくと、アルキスズ(alkytin)配位子を有する膜は、対応するネオペンチル系と比較して約1.5倍の数のEUVフォトンを吸収すると予想される。対応するEUV露光配列の分析によると、以下の実施例に記載されるように、望ましい性能となることが分かる。十二量体化合物は固体であり、一般に結晶性である。((CHCSn)1214(OH)(HCOの結晶構造が以下の実施例に示される。
【0023】
それぞれのR(アルキル)基は、個別にスズ原子に結合し、一般に1~31個の炭素原子を有し、1つの基の3~31個の炭素原子は第2級結合した炭素原子を有し、1つの基の4~31個の炭素原子は第3級結合した炭素原子を有するが、幾つかの実施形態では、それぞれのR基は20個以下の炭素原子を有することができ、さらなる実施形態では15個以下の炭素原子を有することができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の炭素数のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。特に、クラスターのR-Sn部分をRCSnで表すことができ、R及びRが独立して1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが水素又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である幾つかのパターニング組成物の場合、分岐アルキル配位子が望ましくなりうる。幾つかの実施形態では、R及びRが環状アルキル部分を形成することができ、Rも環状部分の別の基と結合することができる。適切な分岐アルキル配位子は、例えば、イソプロピル(R及びRがメチルであり、Rが水素である)、tert-ブチル(R、R、及びRがメチルである)、tert-アミル(R及びRがメチルであり、Rが-CHCHである)、sec-ブチル(Rがメチルであり、Rが-CHCHであり、Rが水素である)、ネオペンチル(R及びRが水素であり、Rが-C(CHである)、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、及びシクロプロピルであってよい。適切な環状基の例としては、例えば、1-アダマンチル(第3級炭素において金属に結合する-C(CH(CH)(CH又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)及び2-アダマンチル(第2級炭素において金属に結合する-CH(CH)(CH(CH)(CH)又はトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン)が挙げられる。別の実施形態では、ヒドロカルビル基としては、アリール基又はアルケニル基、例えば、ベンジル基若しくはアリル基、又はアルキニル基を挙げることができる。別の実施形態では、ヒドロカルビル配位子Rとしては、C及びHのみからなり1~31個の炭素原子を含むあらゆる基を挙げることができる。例えば、直鎖若しくは分岐のアルキル(i-Pr((CHCH-)、t-Bu((CHC-)、Me(CH-)、n-Bu(CHCHCHCH-))、シクロアルキル(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル)、オレフィン(アルケニル、アリール、アリル)、又はアルキニル基、又はそれらの組み合わせである。さらなる実施形態では、適切なR基としては、シアノ、チオ、シリル、エーテル、ケト、エステル、若しくはハロゲン化基、又はそれらの組み合わせなどのヘテロ原子官能基で置換されたヒドロカルビル基を挙げることができる。
【0024】
トリアセチリドスズモノマーの合成は、前述の’491号出願及び以下の実施例で議論されている。前述のように、モノマーはアルキル又はアルキルスズスズトリアルキルアセチリドである。特に、’491号出願には、フェニルアセチレンとt-ブチルスズトリス(ジメチルアミド)との反応に基づくt-ブチルスズトリフェニルアセチリドの合成が記載されている。一般に、アルキルスズアセチリドは、アルキルアセチリドアニオン(R’C≡C)のRSnClへの付加、アルキルアニオンのSn(C≡CR”)への付加、又はHC≡CR”とRSn(NR’’’との反応によって合成することができる。アセチリドアニオンは、超強塩基を用いて形成して、適切なカチオンを有する化合物RC≡CMを形成することができ、式中のMは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ハロゲン化マグネシウム[MgX]、ハロゲン化亜鉛[ZnX](X=ハロゲン化物)、又は電気陽性金属を有する別のイオンであってよい。
【0025】
本明細書の例におけるアルキルスズスズトリアルキルアセチリドの合成に関して、反応はフェニルアセチレンなどのアルキルアセチレンを用いて行うことができ、これを有機溶媒中で、塩化イソプロピルマグネシウムなどの超強塩基と反応させることで、有機金属アルキルアセチリドが形成される。適切な有機溶媒としては、テトラヒドロフラン及びその他の極性非反応性溶媒が挙げられ、これらは一般に非プロトン性である。アルキルアセチレンと超強塩基との反応後、有機溶媒中に溶解させた二ハロゲン化スズを加え、その溶液を室温で少なくとも1時間反応させる。次に反応混合物に(ハロアルキル)トリアルキルスタンナンを加え、さらに反応を少なくとも5分間行い、これは室温で行うことができる。前述の表記を用いると、このハロアルキル基は、モノマーの-(CH部分になり、スタンナンのトリアルキル基は、モノマーのR、R、R部分になる。生成物のアルキルスズスズトリアルキルアセチリドは固体沈殿物を形成し、これを収集して洗浄することができる。生成物は、ペンタン又はヘキサンなどの炭化水素溶媒からの再結晶によって、さらに結晶化させることができる。
【0026】
十二量体の合成は、最初にモノマーの有機溶液に少量の水を加えることによって開始される。適切な有機溶媒としては、限定するものではないが、アルコール又はテトラヒドロフランが挙げられるが、一般に多くの有機溶媒が適切となるであろう。水は、それぞれのアルキルアセチリド配位子に体して1つの水分子が得られるようにほぼ化学量論量で加えられる。この初期反応は、少なくとも1時間行われ、室温で数日間行うことができ、実施例では3日間の反応が行われる。この初期反応は、水酸化物の形態の十二量体の形成を伴うと考えられる。この初期反応の終了後、初期反応の生成物にカルボン酸が加えられ、カルボン酸を加える前に、溶液は、沸騰するまで加熱する場合も、加熱しない場合もある。以下の実施例はギ酸を用いて行われる。カルボン酸は、一般に徐々に、ほぼ化学量論量で加えることができる。ギ酸を加えた後、溶液は、さらなる時間、一般に少なくとも1分以上撹拌される。この結果得られる固体生成物を収集して洗浄することができる。生成物を再結晶させることが望ましい場合がある。
【0027】
トリアルキルアミン三フッ化水素酸塩、例えばトリエチルアミン[(CHCHN・3HF]と反応させることによって、十二量体(t-BuSn)1214(OH)(HCO、又はより一般的には十二量体(QSn)1214(OH)(HCOの中のホルメートイオン及び/又は水酸化物イオン又はその一部をフッ化物イオンで置換することができ、ここでQは、前述のようにアルキル配位子又はスズアルキル配位子である。重フッ化アンモニウム(NHHF)又はその他のHF源をトリアルキルアミン三フッ化水素酸塩の代わりに使用することができる。以下の一例では、十二量体(t-BuSn)1214を形成するための、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩との反応による、6つの水酸化物及び2つのホルメートの8つのフッ化物による置換が記載されている。モノアルキルオキソ-ヒドロキソスズ十二量体の化学的性質において、この置換は今まで知られていなかったと考えられる。化学分析及びNMR分析によって、水酸化物及びホルメートのフッ化物による完全な置換が裏付けられる。質量スペクトル分析では、部分的な置換も起こりうることが示されている。フッ化物十二量体の適切な有機溶媒中の溶液は、EUV露光に適切な薄膜としてスピンコーティングすることができる。露光配列の分析により、以下の実施例に記載されるような優れた性能が明らかとなる。
【0028】
高性能の放射線ベースのパターニング組成物におけるアルキル置換金属配位化合物の使用は、例えば、“Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions”と題されるMeyersらに付与された米国特許第9,310,684号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されている。パターニングのためのこれらの有機金属組成物の改良が、“Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions and Corresponding Methods”と題されるMeyersらの米国特許出願公開第2016/0116839 A1号明細書、及び“Organotin Oxide Hydroxide Patterning Compositions,Precursors,and Patterning”と題されるMeyerらの米国特許出願公開第2017/0102612 A1号明細書に記載されており、これら両方が参照により本明細書に援用される。これらの参考文献における有機金属組成物は、1つの金属部分に基づく構造を有する。本明細書に記載の金属クラスターは2個又は3個の金属原子の間に架橋基を含む。金属クラスターをベースとする組成物は、パターニングに効果的に使用することができ、恐らくは処理上の利点を有することができる。
【0029】
レジスト前駆体溶液を形成するために、クラスター組成物を適切な有機溶媒中に溶解させることができる。クロロホルム、ケトン、アルコール、及び一連の極性有機溶媒に対して溶解性であることが分かっている。アルコールは、1-メトキシ-2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、シクロペンタノール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、又はイソプロパノール、それらの混合物などの1つ以上であってよい。適切なアルコールとしては、例えば、4~10個の炭素原子を有するアルコキシアルコールが挙げられる。適切な溶媒としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなども挙げられる。アルキルスズ十二量体組成物は、極性エーテル、例えばtert-ブチルメチルエーテル及びアニソール、乳酸エチル、環状エーテル、例えばテトラヒドロフランなどの1つ以上を有する溶液中にも溶解する。上記の特定の溶媒に基づく別の有機溶媒も適切となりうる。スズの濃度は、スズの量を基準として、約1mM~約1M、さらなる実施形態では約2mM~約750mM、別の実施形態では約5mM~約500mMの範囲内であってよい。ほとんどの溶媒の場合、カルボン酸を溶液に加えて、クラスター組成物をそのカルボキシレートアニオンで安定化させることが望ましいことがある。ギ酸又はその他のカルボン酸を安定剤として約1%~30%v/v、さらなる実施形態では約5%~20%v/vの濃度で加えることができ、これは混合物の総体積当たりに加えられる体積である。一般に、有機溶媒の選択は、溶解度パラメータ、揮発性、引火性、毒性、粘度、及び他の加工材料との潜在的化学的相互作用による影響を受けることがある。当業者であれば、上記の明示される範囲内のさらなる濃度範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。一般に、前駆体溶液は、その体積の材料の形成に適した適切な混合装置を用いて十分に混合することができる。あらゆる汚染物質又は適切に溶解しないその他の成分を除去するために適切な濾過を使用することができる。
【0030】
選択された基板上への前駆体溶液の堆積、及び引き続く処理によって、コーティング材料を形成することができる。本明細書に記載の前駆体溶液を用いると、コーティング中にある程度の加水分解及び縮合が起こることがあり、空気中での加熱などの引き続く処理ステップによってポストコーティングの完了又は促進を行うことができる。基板は一般に、コーティング材料を上に堆積することができる表面を提供し、基板は複数の層を含むことができ、その中で表面は最上層に関連している。幾つかの実施形態では、基板表面を処理することで、コーティング材料の接着のための表面を準備することができる。また、必要に応じて表面を清浄にしたり、及び/又は平滑化したりすることができる。適切な基板表面は、あらゆる妥当な材料を含むことができる。特に対象となる幾つかの基板としては、例えば、シリコンウエハ、シリカ基板、セラミック材料などの他の無機材料、有機ポリマーなどのポリマー基板、それらの複合材料、及び基板の表面にわたって及び/又は複数の層の中でのそれらの組み合わせが挙げられる。比較的薄い円筒形構造などのウエハが好都合となりうるが、あらゆる妥当な形状の構造を使用することができる。ポリマー基板、又は非ポリマー構造上にポリマー層を有する基板は、リソグラフィ性能、又は基板のコスト及び可撓性に基づくと、ある用途に望ましい場合があり、適切なポリマーは、本明細書に記載のパターニング可能な材料の処理に使用できる比較的低い処理温度に基づいて選択することができる。適切なポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステル、ポリアルケン、それらのコポリマー、及びそれらの混合物を挙げることができる。一般に、特に高解像度用途の場合、基板は平坦な表面を有することが望ましい。しかし、特定の実施形態では、基板は、レジストコーティングによる特定のパターニング用途の特徴の充填又は平坦化が意図される実質的なトポグラフィを有することができる。
【0031】
一般に、前駆体溶液を基板まで送り出すために、あらゆる適切な溶液コーティングプロセスを使用することができる。適切なコーティング方法としては、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ナイフエッジコーティング、化学蒸着(CVD)又は原子層堆積(ALD)方法などの蒸着、インクジェット印刷及びスクリーン印刷などの印刷方法などが挙げられる。これらのコーティング方法の一部では、コーティングプロセス中にコーティング材料のパターンが形成されるが、印刷などで現在利用可能な解像度は、本明細書に記載されるような放射線ベースのパターニングで利用可能な解像度よりもはるかに低いレベルの解像度を有する。
【0032】
パターニングが放射線を用いて行われる場合、スピンコーティングは、基板を比較的均一に覆うための望ましい方法となりうるが、エッジ効果が生じる場合がある。幾つかの実施形態では、ウエハは、約500rpm~約10,000rpm、さらなる実施形態では約1000rpm~約7500rpm、さらなる実施形態では約2000rpm~約6000rpmの速度で回転させることができる。回転速度は、所望のコーティング厚さが得られるように調節することができる。スピンコーティングは約5秒間~約5分間、さらなる実施形態約15秒間~約2分間の時間で行うことができる。基板全体に最初に組成物の大部分が広がるように、例えば50rpm~250rpmにおける初期の低速回転を使用することができる。水又は他の適切な溶媒を用いて、エッジビードを除去するために、バックサイドリンス、エッジビード除去ステップなどを行うことができる。当技術分野における人物又は通常の技能であれば、上記の明示される範囲内のスピンコーティングパラメータのさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。
【0033】
コーティングの厚さは、一般に前駆体溶液濃度、粘度、及びスピンコーティングの回転速度の関数となりうる。他のコーティングプロセスの場合、厚さは、一般に又、コーティングパラメータを選択することによって調節することができる。幾つかの実施形態では、後のパターニングプロセスにおいて小さく高解像度の特徴の形成を促進するために、薄いコーティングの使用が望ましい場合がある。例えば、乾燥後のコーティング材料は、約10ミクロン以下、別の実施形態では約1ミクロン以下、さらなる実施形態では約250ナノメートル(nm)以下、さらなる実施形態では約1ナノメートル(nm)~約50nm、別の実施形態では約2nm~約40nm、幾つかの実施形態では約3nm~約35nmの平均厚さを有することができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の厚さのさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。厚さは、膜の光学的性質に基づくX線反射率及び/又は楕円偏光法の非接触方法を用いて評価することができる。一般に、コーティングは、処理を容易にするために比較的均一である。幾つかの実施形態では、コーティングの厚さのばらつきは、平均コーティング厚さから±50%以下、さらなる実施形態では平均コーティング厚さを基準として±40%以下、さらなる実施形態では約±25%以下で変動する。より大きな基板上の非常に均一なコーティングなどの幾つかの実施形態では、コーティング均一性の評価は、1センチメートルのエッジを除外して評価することができ、すなわち、コーティング均一性は、1センチメートルのエッジの範囲内のコーティング部分に関しては評価されない。当業者であれば、上記の明示される範囲内のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。
【0034】
多くのコーティングプロセスでは、コーティング材料の液滴又はその他の形態が形成され、溶液のより大きな表面積及び/又は移動によって蒸発が刺激されるので、コーティングプロセス自体によって、溶媒の一部の蒸発が起こりうる。溶媒が減少すると、材料中の化学種の濃度が増加するので、コーティング材料の粘度が増加する傾向にある。コーティングプロセス中の目的の1つは、さらなる処理のためにコーティング材料を安定化させるのに十分な溶媒を除去することであってよい。コーティング種は、コーティング又は後の加熱の間に、空気との反応、加水分解、又は縮合によって化学変性されたコーティング材料を形成することができる。
【0035】
一般に、放射線に露光する前に、コーティング材料は、大気水分の存在下に曝露し、場合により加熱して、前駆体組成物中の金属に対する加水分解性結合を加水分解することができ、及び/又はさらに溶媒を除去してコーティング材料の緻密化を促進することができる。その場の加水分解の後のコーティング材料は、一般に、オキソ-ヒドロキソ及び/又はカルボキシラト配位子の金属(これらの金属も幾つかのアルキル配位子を有する)への結合に基づくポリマーの金属オキソ-ヒドロキソ及び/又はカルボキシラトネットワークを形成することができ、又はアルキル配位子を有する多核金属オキソ/ヒドロキソ及び/又はカルボキシラト種から構成される分子固体を形成することができる。
【0036】
加水分解/溶媒除去プロセスでは、加熱されたコーティング材料の厳密な化学量論に関して、及び/又はコーティング材料中に残存する溶媒の特定の量に関して、定量的に制御される場合も,されない場合もある。さらに、本明細書に示される式及び組成は、Snに直接結合するもの、又はネットワークの水素結合した成分としてのいずれかで、ある程度の追加の水を含むことができる。一般に、パターニングプロセスに有効な処理条件を選択するために、結果として得られるコーティング材料の性質の実験的評価を行うことができる。プロセスを首尾よく行うために加熱が必要でない場合もあるが、処理を早くするため、及び/又はプロセスの再現性を高めるため、及び/又は加水分解副生成物の蒸発を促進するために、コーティングされた基板を加熱することが望ましい場合がある。露光前ベーク中に溶媒を除去するために熱が加えられる実施形態では、コーティング材料を約45℃~約250℃、さらなる実施形態では約55℃~約225℃の温度に加熱することができる。溶媒除去のための加熱は、一般に少なくとも約0.1分間、さらなる実施形態では約0.5分~約30分間、さらなる実施形態では約0.75分~約10分間行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の加熱温度及び時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。コーティング材料の熱処理、加水分解、及び緻密化の結果として、コーティング材料は、コントラストをあまり損なうことなく屈折率及び放射線吸収の増加を示すことができる。
【0037】
縮合、乾燥、及び場合による加水分解の後、放射線を用いてコーティング材料に微細なパターンを形成することができる。前述のように、前駆体溶液の組成、及びそれによる対応するコーティング材料の組成は、所望の形態の放射線を十分に吸収するよう設計することができ、EUV放射線に関する関心が特に高い。放射線を吸収することによって、金属とアルキル配位子との間の結合を破壊できるエネルギーが得られ、それによって少なくとも一部のアルキル配位子はもはや材料の安定化のためには利用できない。アルキルスズ配位子を有する場合、放射線によって生じる変性があまり明確ではない場合があるが、組成物によって良好なパターニング特性が得られることが確認される。同様に、放射線の吸収によって、金属とカルボキシレート配位子との間の結合の破壊、及び/又はカルボキシレート配位子の分解も生じうる。アルキル配位子又はその他の断片を含む放射線分解生成物は、プロセスの変量及びそのような生成物の種類によって、膜から拡散する場合も、しない場合もある。十分な量の放射線を吸収すると、露光されたコーティング材料は縮合し、すなわち強化された金属オキソ-ヒドロキソネットワークを形成し、これは周囲雰囲気から吸収されたさらなる水を含む場合がある。放射線は、一般に、選択されたパターンに従って送り出すことができる。放射線パターンは、照射領域と非照射領域とを有するコーティング材料中の対応するパターン又は潜像に写される。照射領域は化学的に変質したコーティング材料を含み、非照射領域は一般に、形成されたままのコーティング材料を含む。後述するように、コーティング材料を現像して、非照射コーティング材料を除去して、或いは照射コーティング材料を選択的に除去して、非常に平滑なエッジを形成することができる。
【0038】
放射線は、一般にマスクを介してコーティングされた基板に向けることができ、又は放射線ビームを基板全体にわたって制御可能に走査させることもできる。一般に、放射線は、電磁放射線、電子ビーム(ベータ線)、又は他の適切な放射線を含むことができる。一般に、電磁放射線は、可視光、紫外線、又はX線などの所望の波長又は波長範囲を有することができる。放射線パターンで実現可能な解像度は、一般に放射線の波長によって決定され、より高い解像度のパターンは、一般に、より短い波長の放射線で実現することができる。したがって、特に高解像度のパターンを実現するためには、紫外光、X線、又は電子ビームの使用が望ましいことがある。
【0039】
国際規格のISO 21348(2007)(参照により本明細書に援用される)に従うと、紫外光は、100nm以上で400nm未満の波長の間に延在する。248nmの紫外光の光源としてフッ化クリプトンレーザーを使用することができる。紫外範囲は、承認される規格のもとで幾つかの方法でさらに分割することができ、例えば10nm以上から121nm未満までの極紫外(EUV)、及び122nm以上から200nm未満までの遠紫外(FUV)に分割することができる。フッ化アルゴンレーザーからの193nm線をFUVにおける放射線源として使用することができる。13.5nmにおけるEUV光がリソグラフィに使用されており、この光は、高エネルギーレーザー又は放電パルスを用いて励起させたXe又はSnのプラズマ源から発生する。軟X線は、0.1nm以上から10nm未満までと定義することができる。
【0040】
電磁放射線の量は、露光時間にわたって放射束を積分することによって定義されるフルエンス又は線量によって特徴付けることができる。適切な放射線フルエンスは、約1mJ/cm~約175mJ/cm、さらなる実施形態では約2mJ/cm~約150mJ/cm、さらなる実施形態では約3mJ/cm~約125mJ/cmであってよい。当業者であれば、上記の明示される範囲内の放射線フルエンスのさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。
【0041】
コーティング材料の設計に基づくと、縮合したコーティング材料を有する照射領域と、実質的に無傷の有機又はカルボキシレート配位子を有する非照射のコーティング材料との間に、材料特性の大きなコントラストが存在できる。照射後熱処理が使用される実施形態の場合、照射後熱処理は、約45℃~約250℃、さらなる実施形態では約50℃~約190℃、さらなる実施形態では約60℃~約175℃の温度で行うことができる。露光後の加熱は、一般に少なくとも約0.1分間、さらなる実施形態では約0.5分間~約30分間、さらなる実施形態では約0.75分間~約10分間行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の照射後の加熱温度及び時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。この材料特性の高いコントラストによって、以下の項に記載されるように現像後のパターン中に平滑なエッジを有する高解像度の線の形成がさらに容易になる。
【0042】
ネガ型イメージングの場合、現像剤は、前駆体溶液の形成に使用される溶媒などの有機溶媒であってよい。一般に、現像剤の選択は、照射及び非照射の両方のコーティング材料に対する溶解度パラメータ、並びに現像剤の揮発性、引火性、毒性、粘度、及び他の加工材料との潜在的化学的相互作用の影響を受けることがある。特に、適切な現像剤としては、例えば、アルコール(例えば、4-メチル-2-ペンタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、メタノール)、乳酸エチル、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール)、ケトン(ペンタノン、ヘキサノン、2-ヘプタノン、オクタノン).などが挙げられる。現像は、約5秒間~約30分間、さらなる実施形態では約8秒間~約15分間、さらなる実施形態では約10秒間~約10分間行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。
【0043】
主要現像剤組成物に加えて、現像剤は、現像プロセスを促進するためのさらなる組成物を含むことができる。適切な添加剤としては、例えば、粘度調整剤、可溶化助剤、又はその他の加工助剤を挙げることができる。任意選択の添加剤が存在する場合、現像剤は、約10重量パーセント以下の添加剤、さらなる実施形態では約5重量パーセント以下の添加剤を含むことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の添加剤濃度のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。
【0044】
コーティングがより遅い現像速度を有する、より弱い現像剤、例えば、希釈された有機現像剤又は組成物を使用する場合は、プロセスの速度を増加させるために、より高温の現像プロセスを使用することができる。より強い現像剤を使用する場合は、現像速度の低下、及び/又は反応速度の制御のために現像プロセスの温度を低下させることができる。一般に、現像の温度は、溶媒の揮発性に適合する適切な値の間で調節することができる。さらに、現像剤-コーティングの界面付近の溶解したコーティング材料を有する現像剤は、現像中に超音波処理を用いて分散させることができる。
【0045】
あらゆる妥当な方法を用いて、パターン化されたコーティング材料に現像剤を塗布することができる。例えば、現像剤は、パターン化されたコーティング材料の上に噴霧することができる。また、スピンコーティングを使用することができる。自動化された処理の場合、静止方式で、コーティング材料の上に現像剤を注ぐことを伴うパドル法を使用することができる。希望するなら、スピンリンシング及び/又は乾燥を使用して現像プロセスを完了させることができる。適切なリンス溶液としては、例えば、超純水、水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。画像の現像後、あるパターンとしてコーティング材料が基板上に配置される。
【0046】
現像ステップの完了後、コーティング材料を熱処理することで、材料のさらなる凝縮、及びさらなる脱水、緻密化、又は材料からの残留現像剤の除去を行うことができる。この熱処理は、酸化物コーティング材料が最終的なデバイス中に組み込まれる実施形態の場合に特に望ましいことがあるが、コーティング材料がレジストとして使用され、さらなるパターニングを促進するためにコーティング材料の安定化が望ましい場合に最終的に除去される幾つかの実施形態の場合に、熱処理を行うことが望ましいことがある。特に、パターン化されたコーティング材料のベークは、パターン化されたコーティング材料が所望のレベルのエッチング選択性を示す条件下で行うことができる。幾つかの実施形態では、パターン化されたコーティング材料は、約100℃~約600℃、さらなる実施形態では約175℃~約500℃、さらなる実施形態では約200℃~約400℃の温度に加熱することができる。この加熱は、少なくとも約1分間、別の実施形態では約2分間~約1時間、さらなる実施形態では約2.5分間~約25分間行うことができる。加熱は、空気中、真空中、又はAr若しくはNなどの不活性ガス環境中で行うことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の熱処理の温度及び時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。同様に、ブランケットUV曝露、又はOなどの酸化性プラズマへの曝露などの非熱的処理も同様の目的で使用することができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、隣接構造の隣接する直線部分は、約60nm(30nmハーフピッチ)以下、幾つかの実施形態では約50nm(25nmハーフピッチ)以下、さらなる実施形態では約34nm(17nmハーフピッチ)以下の平均ピッチ(ハーフピッチ)を有することができる。ピッチは、設計によって評価することができ、走査型電子顕微鏡法(SEM)、たとえばトップダウン画像で確認することができる。本明細書において使用される場合、ピッチは、繰り返す構造要素の空間的周期、又は中心間距離を意味し、当技術分野において一般に使用されるように、ハーフピッチはピッチの半分である。パターンの特徴寸法は、一般にコーナーなどから離れて評価される特徴の平均幅に関して記載することもできる。また、特徴は、材料要素間の間隙及び/又は材料要素を意味する場合がある。幾つかの実施形態では、平均幅は、約25nm以下、さらなる実施形態では約20nm以下、さらなる実施形態では約15nm以下であってよい。当業者であれば、上記の明示される範囲内のピッチ及び平均幅のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを理解されよう。これらのプロセスに基づくと、一般に、トランジスタ又はその他の部品などの適切な層状構造を形成するためにパターニングプロセスを繰り返すことによる、電子集積回路などの種々のデバイスの形成に、パターニングを適応させることができる。
【0048】
ウエハのスループットは、大量の半導体製造におけるEUVリソグラフィの実施の実質的な制約因子であり、特定の特徴のパターン化に必要な線量に直接関係している。しかし、画像形成線量を低減させる化学的戦略が存在するが、<50nmの特徴サイズ及びピッチにおけるEUVフォトレジストの場合に、目標の特徴を印刷するために必要な画像形成線量と、特徴サイズ均一性(LWRなど)との間に負の相関が一般に観察され、それによって最終的なデバイスの操作性及びウエハ歩留まりが制限される。パターニング能力は、線量対ゲル値で表すことができる。画像形成線量の要求値は、露光線量を変化させるために露光時間をパッド間で段階的に変化させる、多数の露光されたパッドを形成することによって評価することができる。次に膜を現像させることができ、例えば分光楕円偏光法を用いてすべてのパッドで残存レジストの厚さを評価することができる。測定した厚さは、最大測定レジスト厚さに対して正規化することができ、露光線量の対数に対してプロットして、特性曲線を形成することができる。正規化した厚さ対log線量曲線の最大の傾きが、フォトレジストコントラスト(γ)として定義され、この点を通って引かれた接線が1になる線量値がフォトレジスト線量対ゲル(D)として定義される。このようにして、フォトレジストの特性決定に使用される共通のパラメータは、Mack,C.Fundamental Principles of Optical Lithography,John Wiley & Sons,Chichester,U.K;pp 271-272,2007に従って概算することができる。
【実施例
【0049】
【表2】
【0050】
実施例1.((CH SnCH Sn) 12 14 (OH) (HCO 十二量体の調製、分析、及びEUV露光
モノマー(C CC) SnCH Sn(CH の合成。磁気撹拌子を取り付けた100mLの丸底フラスコに、1.6gのフェニルアセチレン及び15mLのテトラヒドロフランを投入した。その溶液を0℃に冷却し、次にエーテル中の塩化イソプロピルマグネシウムの2M溶液7.7mLを滴下した。塩化イソプロピルマグネシウム溶液を加えた後、得られた溶液を50℃に10分間加熱し、続いて減圧下でエーテルを除去した。エーテル除去後の溶液を冷却し、テトラヒドロフラン(15mL)中のSnCl(1.0g)の溶液に-40℃において滴下した。その混合物を25℃まで温め、14時間撹拌し、次に(クロロメチル)トリメチルスタンナン(2g)を加えた。その溶液を次に25℃で1時間撹拌し、続いて減圧下で4mLまで濃縮した。濃縮した溶液にエーテル(20mL)を加えて沈殿物を形成させ、それを濾過により回収した。沈殿物をエーテルで洗浄して、2.5gの(CCC)SnCHSn(CH図1)を白色粉末として得た。この生成物は、ペンタン又はヘキサンなどの炭化水素溶媒からの再結晶によってさらに精製することができる。このモノマー構造中の-CHSn(CH基は、一般的な十二量体構造のR基になる。この生成物のNMRによる特性決定を行った:119Sn NMR(500MHz、CDCl)δ 24.42、-220.74。
【0051】
十二量体((CH SnCH Sn) 12 14 (OH) (HCO の調製。磁気撹拌子を取り付けた10mLの丸底フラスコに、上記合成の1gの(トリメチルスタンナニル)-トリス(フェニルエチニル)スタンナン、8mLのテトラヒドロフラン、及び0.1mLの水を投入した。その溶液を室温で3日間撹拌した。3日後、0.04mLのギ酸を加え、得られた溶液を10分間撹拌した。次にその溶液を減圧下で濃縮し、続いてエーテル(5mL)を加えて、スラリーを形成した。その沈殿物を濾過によって回収し、減圧下で乾燥させて、0.3gの((CHSnCHSn)1214(OH)(HCOを白色粉末として得た。生成物のNMRによる特性決定を行った:119Sn NMR(500MHz、CDCl3)δ19.7、-255.4、-457.16。粉末からX線回折ピークが得られ、その粉末が結晶性であることが示された。
【0052】
膜の堆積及びEUVコントラスト。上記合成で得た0.1142gの十二量体固体を12mLのクロロホルム(HPLC>99.8%)中に撹拌することで溶解させて、0.06Mの全Sn濃度のフォトレジストコーティング溶液を形成した。
【0053】
ネイティブ酸化物の表面を有するシリコンウエハ(直径100mm)上に薄膜を堆積した。ピペットによって0.06Mの前駆体溶液を基板上に供給し、2000rpmでスピンコーティングを行い、次にホットプレート上100℃で2分間ベークした。楕円偏光法によって膜厚を測定すると29nmであった。
【0054】
Lawrence Berkeley National LaboratoryにおけるDose Calibration Tool(DCT)上でEUV光を用いて、直線状に配列した直径約500μmの50個の円形のパッドをウエハ上に投影した。次第に増加するEUV線量(8%の指数関数的刻み幅)を各パッドに供給するために、パッドの露光時間を調節した。次にレジスト及び基板に対して、140~200℃の範囲内の選択された温度においてホットプレート上で2分間の露光後ベーク(PEB)を行った。露光しベークした膜を次に2-ヘプタノン中に15秒間浸漬し、同じ現像剤を用いてさらに15秒間洗浄して、ネガ型画像を形成し、すなわち、コーティングの非露光及び低線量の部分を除去した。最終の150℃で2分間のホットプレートのベークを行ってプロセスを完了した。J.A.Woollam M-2000 Spectroscopic Ellipsometerを用いて、露光したパッドの残留レジスト厚さを測定した。図2は、140~200℃の温度範囲でPEBを行った4つのウエハの各パッドの測定厚さ対線量を示している。最大測定レジスト厚さに対して厚さを正規化し、正規化した値対露光線量の対数をプロットすることによって、各プロセス条件の特性曲線を作成することができる。正規化厚さ対log線量の曲線の最大の傾きがフォトレジストコントラスト(γ)と定義され、最大レジスト厚さと、最大の傾きの点に対する接線との交点によって、線量対ゲル(Dg)と定義される。このようにして、フォトレジスト性能を評価するための共通のパラメータを求めることができ、Mack,C.(2007)Introduction to Semiconductor Lithography,in Fundamental Principles of Optical Lithography:The Science of Microfabrication,John Wiley & Sons,Ltd,Chichester,UKが参照される。表2は、((CHSnCHSn)1214(OH)(HCOに関する4つのPEB温度におけるフォトレジストのコントラスト値及びDg値をまとめている。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例2.(t-BuSn) 12 14 (OH) (HCO の調製及び特性決定
モノマーのフェニルアセチリドのt-BuSn(CCPh)から十二量体の(t-BuSn)1214(OH)(HCOO)を以下のように調製した。2Lの丸底フラスコ(RBF)に窒素をパージし、500mLのペンタン中に溶解させた308gのt-BuSn(NMeを投入した。酢酸水溶液を含むトラップに通過するようにRBFにバブラーを取り付けた。わずかに過剰のフェニルアセチレン(337g、3.3当量)を滴下しながら、氷浴を用いて温度を40℃未満に維持した。溶液を終夜反応させると、その後、結晶性沈殿物が形成された。そのt-BuSn(CCPh)結晶を収集しペンタン中で再結晶させた(収率92%)。
【0057】
100mLの丸底フラスコに、6gのt-BuSn(CCPh)、60mLのテトラヒドロフラン、及び0.6mLの水を投入した。均質化させた後、溶液を3日間養生すると、その時間の後、結晶が形成された。溶液を加熱して沸騰させ、次にギ酸(118mg)を滴下すると、沈殿が形成された。そのスラリーを熱時濾過し、-20℃において25mLのメタノール中で再結晶させた(収率80%)。
【0058】
n-プロパノール中での上記クラスターの再結晶によって単結晶を成長させた。図3は、単結晶X線回折法によって求めた(t-BuSn)1214(OH)(HCOクラスターの分子構造を示している。図4は、MeOH-d4中のクラスターのH(上図)及び119Sn(下図)NMRスペクトルを示している。119Snスペクトルの-337.03ppm及び-523.57ppmにおけるシグナルは、それぞれ分子構造中の五配位及び六配位のSn原子に対応している。
【0059】
少量の(t-BuSn)1214(OH)(HCO(約1質量%)をメタノール中0.5%の酢酸の移動相中に溶解させ、次にAgilent 6510 QTOF質量分析計中に注入した。図5及び6は(t-BuSn)1214(OH)(OCH)のフラグメントに一致するピークを示している:(t-BuSn)1214(OH) 2+[1217u]、(t-BuSn)1215(OH) 1+[2434u]、及び(t-BuSn)1214(OH)・2[HO][HOCH][HCOOH][2548u]。
【0060】
実施例3.(t-BuSn) 12 14 及び(t-BuSn) 12 14 (OH) 8-x (0<x<8)の調製、分析、及びEUV露光。
合成。20mLの丸底フラスコに、実施例2の合成で得られ10mLのメタノール中に溶解させた0.5gの十二量体(t-BuSn)1214(OH)(HCOを投入した。十二量体当たり約7.3部のトリエチルアミン三フッ化水素酸塩(0.25g)を加え、その溶液を静置した。1週間後、10%の収率で結晶を回収した。(t-BuSn)1214(Sn124810814)に関する分析的計算:C、23.2;H、4.4;F、6.1。結果:C、23.3;H、4.4;F、6.0。十二量体当たり2.67部未満のトリエチルアミンtrihdydrofluorideを加えると、より小さなF:Sn比の生成物が生成される。
【0061】
質量スペクトル分析。合成生成物をメタノール中に溶解させ(約1質量%)、Agilent 6510 QTOF質量分析計中に注入した。図7は、十二量体中のフッ素及び酸素のある分布を含む化学種に一致するピークを示している。最高強度のシグナルは、単独でイオン化した脱プロトンクラスター[(t-BuSn)1215(OH)Fと一致する。NMRスペクトルを図8中に示している:NMRスペクトル。CDCl中のH、19F、119SnNMR(400MHz)は、(t-BuSn)1214十二量体と一致するシグナルを示している。
【0062】
コーティング溶液、膜堆積、及びEUV露光のコントラスト。フッ素化十二量体合成生成物をクロロホルム中に溶解させ(0.035MのSn)、1500rpmにおいてスピンコーティングによってSiO/Siウエハ上にコーティングし、100℃でベークし、実施例1に記載の手順に従ってLawrence Berkeley National LaboratoriesにおけるEUV Dose Contrast Tool上で露光させた。露光後、膜を140~200℃の間の選択された温度でベークし(図中に指定される各試料が特定の温度を有する)次に2-ヘプタノン中で現像した。各露光パッドの厚さを光学的に評価し、次に露光線量に対してプロットして、コントラスト値を求めた(図9)。表3は、(t-BuSn)1214に関して図9から得た導出パラメータD、D、及びコントラストをまとめている。Dは、ネガ型レジストの膜厚の初期増加の開始線量に対応する。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例4.(t-BuSn) 12 14 (OH) (HCOO) をベースとするレジストの調製及び膜堆積
メチルイソアミルケトン中の10%v/vギ酸100mL中に1.4735gのSn十二量体を溶解させることによって、実施例2により調製した(t-BuSn)1216(OH)(HCOの0.070MのSn溶液を調製した。ギ酸によって、溶液の安定性が得られ、溶解性及びコーティング品質が改善される。
【0065】
ネイティブ酸化物の表面を有する直径10.2cmの円形のシリコンウエハを膜堆積の基板として使用した。1500RPMにおいて45秒間、十二量体の膜をSiウエハ上にスピンコーティングした。次に選択されたウエハを100℃で120秒間ベークした。コーティング及びベークの後の膜厚を楕円偏光法によって測定すると約20nmであった。すべての膜は、原子間力顕微鏡法によって測定すると、二乗平均平方根表面粗さ<0.5nmを示した。
【0066】
実施例5.(t-BuSn) 12 16 (OH) (HCO 十二量体のEUV露光コントラスト及び線-空間の画像形成
ネイティブ酸化物の表面を有する300mmのSiウエハに、実施例4により調製したレジストをコーティングした。1500RPMで膜をスピンコーティングし、100℃で20秒間ベークした。次にASML NXE:3300Bスキャナ上で、膜を極紫外放射線に露光した。次にくるパッドのEUVフォトン線量が増加する11×11の配列のパッドを投影することによって、膜中にコントラストの配列を形成した。dipole 90x照明及び0.33の開口数を用いて32nmピッチ上の16nmの線の繰り返しパターンも投影した。露光したレジスト膜及び基板に対して、次に、空気中ホットプレート上120℃~180℃の間の選択された温度で2分間の露光後ベーク(PEB)を行った。PEB後、2-ヘプタノン中で15秒間現像し、同じ現像剤を用いてさらに15秒間洗浄して、ネガ型画像を形成し、すなわち、現像中にコーティングの非露光部分を除去した。現像後、空気中150℃において最終の5分間のホットプレートのベークを行った。
【0067】
Hitachi CG5000 CD-SEMを用いて線-空間パターンの画像形成を行った。図10は、PEB温度と関連させた、(t-BuSn)1214(OH)(HCOを用いて形成したレジスト線の画像を示している。表4は、パターンのサイズ及びLWRに対して抽出した線量をまとめている。それぞれの露光し現像したパッドの残留厚さを楕円偏光法により測定することによって、コントラスト配列の分析を行った。図11は、初期レジスト膜厚さに対して正規化した各パッドの厚さ対露光線量の対数を示しており、120℃~180℃の間のPEB温度における特性曲線が示されている。結果として得られる曲線は、露光によって形成されたネガ型コントラストを明確に示しており、各レジスト膜の残留パッド厚さは低線量でほぼ0nmであり、次に非線形的に増加し、線量対ゲル(D)において最大に到達する。現像速度の変化を開始させるのに必要な線量は、PEBの関数として減少することが明確に示されている。表4は、各PEB温度におけるD及び導出コントラスト値をまとめている。
【0068】
【表5】
【0069】
以上の実施形態は、説明的であることを意図しており、限定を意図するものではない。さらなる実施形態は請求項の範囲内である。さらに、特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の意図及び範囲から逸脱しない形態及び詳細で修正可能であることを理解されよう。上記文献の参照によるあらゆる援用は、本明細書における明確な開示に反する主題は援用されないように限定される。特定の構造、組成、及び/又はプロセスが、構成要素、要素、成分、又はその他の区画を有すると本明細書に記載される範囲において、本明細書の開示は、それらの特定の実施形態、特定の構成要素、要素、成分、その他の区画、又はそれらの組み合わせを含む実施形態、並びに特に他に示されない限り議論において示唆されるような主題の基本的性質を変化させないさらなる特徴を含むことができる、このような特定の構成要素、成分、若しくはその他の区画、又はそれらの組み合わせから本質的になる実施形態を含むことを理解されたい。
図1
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