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特許7179147金属レジスト除去用洗浄液、及び該洗浄液を用いた洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】金属レジスト除去用洗浄液、及び該洗浄液を用いた洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/32 20060101AFI20221118BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20221118BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G03F7/32 501
G03F7/42
H01L21/304 647
C11D7/34
C11D7/36
C11D7/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021202511
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2022-01-20
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 まい
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 智弥
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0077734(KR,A)
【文献】特開2008-107494(JP,A)
【文献】特開2001-188359(JP,A)
【文献】特開2020-173359(JP,A)
【文献】特開平10-282682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
H01L 21/304
C11D 7/34
C11D 7/36
C11D 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属レジスト除去用洗浄液であって、
水と有機溶剤と酢酸と20℃で液体の強酸とを含有する洗浄液であって、
前記強酸のpKaが2以下であり、
前記強酸の含有量が、洗浄液の全質量に対し、0.05~3質量%であり、
前記水の含有量は、前記洗浄液の全質量に対し、20質量%以下であり、
前記洗浄液を純水で10倍に希釈した液の、pHメーターで測定したpH値が2.5以下である洗浄液。
【請求項2】
前記酢酸の含有量が、洗浄液の全質量に対し、30~45質量%である、請求項に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記強酸が、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、リン酸及びホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記強酸が、リン酸を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の洗浄液を用いて、金属レジストが付着した対象物を洗浄する工程を有する、洗浄方法。
【請求項6】
前記対象物が、金属レジストを備えた支持体である、請求項に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記支持体の周縁部に沿って請求項1~のいずれか一項に記載の洗浄液を塗布し、前記支持体上のエッジビードを除去することを含む、請求項に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属レジスト除去用洗浄液、及び該洗浄液を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路およびデバイスの加工は、各世代にわたって限界寸法の継続的な縮小を伴ってきた。これらの寸法が縮小するにつれて、ますます微細な構造を処理しパターニングするという要求を満たすために新しい材料および方法が求められている。
パターン形成は、一般に、その後の層または機能性材料に転写されるパターンを形成するための放射線感受性材料(レジスト)の薄層の選択的露光を含む。同時に非常に高いエッチングコントラストを提供しながら、EUV(極端紫外線)や、EB(電子線)に対する良好な吸収を提供するのに適した金属レジストが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる金属レジストを用いたパターニングでは、露光により金属レジスト中の金属過酸化物に配位している配位子が分解し、加水分解及び縮合が進行し、金属酸化物が形成され、レジストが現像液に不溶化する。次いで、レジストを現像することにより、エッチング耐性の高いパターンが形成される。
しかしながら、金属レジストを用いたパターニングでは、金属レジストを基板上に塗布した際に、金属過酸化物のクラスターがシリコンウェハ等の基板表面に結合し、残渣が生じる場合がある。
このような残渣を除去するために、有機溶剤及びカルボン酸を含有する洗浄液を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9176377号明細書
【文献】国際公開第2018/031896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが検討した結果、有機溶剤及びシュウ酸、ベンゼンスルホン酸等の固体酸を含有する洗浄液を用いて金属レジストを備えた支持体を洗浄した場合、高い金属除去性能が発揮できるが、乾燥すると固体酸が析出して処理表面に有機物が残存してしまうため、プロセス装置を汚染する可能性があることを見出した。
一方、本発明者らが検討した結果、乾燥時の析出を抑制するためにシュウ酸等の固体酸に替えて酢酸等の液体酸を用いた場合、シュウ酸等の固体酸を用いた場合に比べて金属除去性能が不十分であることを見出した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属除去性が向上し、有機物残留量が低減された、金属レジストを洗浄するために用いられる洗浄液、及び該洗浄用いた洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0007】
本発明の第1の態様は、金属レジスト除去用洗浄液であって、溶剤と20℃で液体の強酸とを含有する洗浄液であって、前記強酸のpKaが2以下であり、前記強酸の含有量が、洗浄液の全質量に対し、0.05~3質量%であり、前記洗浄液を純水で10倍に希釈した液の、pHメーターで測定したpH値が2.5以下である洗浄液である。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る洗浄液を用いて、金属レジストが付着した対象物を洗浄する工程を有する、洗浄方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属除去性が向上し、有機物残留量が低減された、金属レジストを洗浄するために用いられる洗浄液、及び該洗浄用いた洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(洗浄液)
本発明の第1の態様にかかる洗浄液は、溶剤と、20℃で液体の強酸とを含有する。本態様にかかる洗浄液は、金属レジストを洗浄するために用いられる。
【0011】
本実施形態の洗浄液は、洗浄液を純水で10倍に希釈した液の、pHメーターで測定したpH値が2.5以下であり、好ましくは2.4以下であり、より好ましくは2.3以下である。
洗浄液を純水で10倍に希釈した液の、pHメーターで測定したpH値が2.5以下であると、洗浄液の金属除去性が向上しやすい。下限値は特に限定されず、負の値をとってもよいが、本実施形態の洗浄液を使用する系内のプロセス環境に応じて適宜調整することが好ましく、例えば0.1以上であり、1.0以上が好ましく、1.4以上がより好ましい。なお、本実施形態において、上記pH値は、常温で測定した値である。
【0012】
<溶剤>
溶剤としては特に限定されないが、水、有機溶剤等が挙げられる。
有機溶剤としては、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールブチルエーテル(PGBE)、エチレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテルおよびそのエステル;エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール;γ-ブチロラクトンなどの環状エステル;酢酸n-ブチル、酢酸エチルなどのエステル;2-ヘプタノンなどのケトン;プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの液体環状カーボネート;スルホラン等の環状スルホン等が挙げられる。
なかでも、溶剤としては、水酸基を有さない有機溶剤が好ましく、グリコールエーテルおよびそのエステル又はケトンがより好ましく、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)又は2-ヘプタノンが更に好ましく、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)が特に好ましい。
溶剤としては、水酸基を有さない有機溶剤を用いることにより、洗浄液中の酸(強酸)のエステル化反応を抑制しやすく、洗浄液の経時安定性を向上しやすい。
【0013】
本実施形態において、溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
本実施形態に係る洗浄液において、溶剤の含有量は、洗浄液の全質量(100質量%)に対し、45~80質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~70質量%が更に好ましく、58~65質量%が特に好ましい。
溶剤の含有量が上記の好ましい範囲内であると、洗浄液の金属除去性を向上しやすい。
【0014】
<20℃で液体の強酸>
本実施形態において、強酸は、20℃で液体であれば特に限定されない。
強酸としては、pKaが2以下である酸が好ましい。
本実施形態において、強酸のpKa値は、SPARC pKa calculation法による計算値である。
【0015】
強酸としては、硫酸(pKa:0.81)、リン酸(pKa:1.75)、メタンスルホン酸(pKa:0.42)、ホスホン酸(pka:1.76)、トリフルオロ酢酸(pka:1.14)、トリフルオロメタンスルホン酸(pka:0.98)からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸が好ましく、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、リン酸及びホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
なかでも、リン酸は、半導体グレードの材料が豊富であり、他の酸に比べて臭気や腐食性が弱いことから、強酸として特に好ましい。
【0016】
本実施形態に係る洗浄液において、強酸の含有量は、洗浄液の全質量(100質量%)に対し、0.05~3質量%が好ましく、0.07~2.75質量%がより好ましく、0.08~2.5質量%が更に好ましく、0.09~2.1質量%が特に好ましい。
強酸の含有量が上記の好ましい範囲内であると、洗浄液の金属除去性を向上しやすい。
【0017】
<その他の成分>
本態様にかかる洗浄液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて他の成分(以下、「添加剤」ともいう)を含んでいてもよい。
添加剤としては、上記強酸以外の有機酸、無機フッ酸、テトラアルキルアンモニウム化合物、界面活性剤等が挙げられる。
有機酸としては、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、2-ニトロフェニル酢酸、2-エチルヘキサン酸、ドデカン酸などのカルボン酸;アスコルビン酸、酒石酸、グルクロン酸等の糖酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;ビス(2-エチルヘキシル)リン酸のようなリン酸エステル等が挙げられ、酢酸、ギ酸、2-エチルヘキサン酸、グルクロン酸、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸等の、常温で液体である有機酸が好ましい。
無機フッ酸としては、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロホウ酸等が挙げられる。
テトラアルキルアンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオロシリケート等が挙げられる。
界面活性剤としては、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
なかでも、添加剤としては、酢酸が好ましい。
各添加剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る洗浄液が添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、洗浄液の全質量(100質量%)に対し、1~60質量%が好ましく、1~50質量%がより好ましく、1~45質量%が更に好ましい。
【0018】
本実施形態の洗浄液が添加剤として酢酸を含む場合、酢酸の含有量は、洗浄液の全質量に対し、30~45質量%であることが好ましく、35~44質量%であることがより好ましく、37~43質量%であることが更に好ましい。
酢酸の含有量が上記の好ましい範囲内であると、洗浄液の金属除去性を向上しやすい。
【0019】
本実施形態の洗浄液は、溶剤と、強酸と、酢酸と、不可避不純物のみからなる洗浄液(以下、「洗浄液A」ともいう)であってもよい。
洗浄液Aにおいて、溶剤の含有量は、洗浄液Aの全質量(100質量%)に対し、45~80質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~70質量%が更に好ましく、58~65質量%が特に好ましい。
また、洗浄液Aにおいて、強酸の含有量は、洗浄液Aの全質量(100質量%)に対し、0.05~3質量%が好ましく、0.07~2.75質量%がより好ましく、0.08~2.5質量%が更に好ましく、0.09~2.1質量%が特に好ましい。
また、洗浄液Aにおいて、酢酸の含有量は、洗浄液Aの全質量(100質量%)に対し、30~45質量%であることが好ましく、35~44質量%であることがより好ましく、37~43質量%であることが更に好ましい。
洗浄液Aにおいて、溶剤、強酸及び酢酸の含有量が上記の好ましい範囲内であると、洗浄液の金属除去性を向上しやすい。
【0020】
洗浄液Aが溶剤として水を含む場合、水の含有量は、洗浄液Aの全質量(100質量%)に対し、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。水の含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、洗浄液Aの全質量(100質量%)に対し、0.01質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。
洗浄液Aにおいて、水の含有量が上記の好ましい範囲内であると、洗浄液の金属除去性を向上しやすい。
【0021】
本実施形態の洗浄液は、溶剤と、リン酸と、酢酸と、不可避不純物のみからなる洗浄液(以下、「洗浄液B」ともいう)であってもよい。
洗浄液Bにおいて、溶剤の含有量は、洗浄液Bの全質量(100質量%)に対し、45~80質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~70質量%が更に好ましく、58~65質量%が特に好ましい。
また、洗浄液Bにおいて、リン酸の含有量は、洗浄液Bの全質量(100質量%)に対し、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2.75質量%がより好ましく、0.5~2.5質量%が更に好ましく、0.8~2.1質量%が特に好ましい。
また、洗浄液Bにおいて、酢酸の含有量は、洗浄液Bの全質量(100質量%)に対し、30~45質量%であることが好ましく、35~44質量%であることがより好ましく、37~43質量%であることが更に好ましく、37.5~40質量%が特に好ましい。
洗浄液Bにおいて、溶剤、リン酸及び酢酸の含有量が上記の好ましい範囲内であると、洗浄液の金属除去性を向上しやすい。
【0022】
本実施形態の洗浄液は、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、2-ニトロフェニル酢酸、2-エチルヘキサン酸、ドデカン酸などのカルボン酸;アスコルビン酸、酒石酸、グルクロン酸等の糖酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;ビス(2-エチルヘキシル)リン酸のようなリン酸エステル;ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロホウ酸等の有機酸;テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオロシリケート等が挙テトラアルキルアンモニウム化合物;ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等の界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含まなくてもよい。
【0023】
<金属レジスト>
本実施形態にかかる洗浄液は、金属レジストを洗浄するために用いられる。
金属レジストとしては特に限定されず、Sn、Bi、Hf、Zr、In、Te、Sb、Ni、Co、Ti、W、Ta及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むものが挙げられる。
【0024】
以上説明した本実施形態の洗浄液によれば、酸成分として20℃で液体の強酸を含むため、金属除去性が向上すると共に、乾燥時の析出が抑制され、有機物残留量が低減される。
本実施形態において強酸は常温で液体であるため、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸等の固体酸のように乾燥時に析出することはない。また、本実施形態において強酸は酢酸に比べてpKaが低いため、十分な金属除去性が得られる。また、本実施形態の洗浄液を純水で10倍に希釈した液の、pHメーターで測定したpH値が2.5以下となるように強酸を含むことで、十分な金属除去性が得られる。
そのため、本実施形態の洗浄液を用いることにより、プロセス装置の汚染を防止しつつ、良好な金属除去性を発揮することができる。
【0025】
(洗浄方法)
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る洗浄液を用いて、金属レジストが付着した対象物を洗浄する工程(以下、単に「洗浄工程」という場合がある。)を有する、洗浄方法である。
【0026】
金属レジストが付着した対象物は特に限定されないが、金属レジストを備えた支持体、金属レジストが付着したプロセス装置等が挙げられる。なかでも、金属レジストが付着した対象物としては、金属レジストを備えた支持体が好ましい。
【0027】
支持体としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。
【0028】
金属レジストについては、前記第1の態様にかかる洗浄液において説明した金属レジストと同様である。
【0029】
金属レジストの形成方法は特に限定されないが、例えば、米国特許第9,176,377B2号明細書、米国特許出願公開第2013/0224652号明細書、米国特許第9,310,684号明細書、米国特許出願公開第2016/0116839号明細書、Jiang, Jing; Chakrabarty, Souvik; Yu, Mufei; et al., “Metal Oxide Nanoparticle Photoresists for EUV Patterning”, Journal Of Photopolymer Science And Technology 27(5), 663-6662014、A Platinum- Fullerene Complex for Patterning Metal Containing Nanostructures, D.X. Yang, A. Frommhold, D.S. He, Z.Y.Li, R.E. Palmer, M.A. Lebedeva, T.W. Chamberlain, A.N. Khlobystov, A.P.G. Robinson, Proc SPIEAdvanced Lithography, 2014、米国特許出願公開第2009/0155546号明細書、米国特許出願公開第6,566,276号明細書等に記載された金属レジスト及びパターニング方法を用いることができる。
【0030】
また、金属レジストの形成方法として、特開2015-201622、特開2020-84330等に記載された、気相成長等により支持体上に金属酸化物含有膜を堆積して成膜する方法を用いてもよい。
【0031】
本実施形態において、洗浄工程は特に限定されず、エッジビード除去、バックリンス等、半導体製造プロセスにおける公知の洗浄方法が挙げられる。
本実施形態においては、洗浄工程は、支持体の周縁部に沿って前記第1の態様にかかる洗浄液を塗布し、金属レジストを備えた支持体上のエッジビードを除去すること(以下、「エッジリンス」という場合がある。)を含むことが好ましい。
エッジリンスの方法は従来公知のプロセスであれば特に限定されず、例えば国際公開第2018/031896号に記載された方法等が挙げられる。
【0032】
エッジリンスの回数は特に限定されず、1~20回実施することができる。さらに、エッジリンス中に2種以上の洗浄液を適用することができる。
エッジリンスにおいて、洗浄液を好ましくは0.05~50mL、より好ましくは0.075~40mL、更に好ましくは0.1~25mLの量で滴下することができる。
他の実施形態としては、エッジリンスにおいて、洗浄液を好ましくは5mL/分~50mL/分の流速で、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~2分噴霧してもよい。
【0033】
エッジリンスによる金属除去性を評価するために、支持体上の残留金属について検査することができる。微量金属の評価のために市販されている適切なアプローチは一般に誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を含む。支持体表面の評価のために、気相分解-誘導結合プラズマ質量分析法(VPD-ICP-MS)を使用することができる。この技術を用いて、残留金属は、縁部に沿ったウェハ表面の単位面積当たりに決定することができる。
本実施形態においては、金属レジストがSnベースレジストの場合、残留Snの量は、75×1010原子/cm以下が好ましく、70×1010原子/cm以下がより好ましく、65×1010原子/cm以下が更に好ましく、60×1010原子/cm以下が特に好ましい。
【0034】
以上説明した本実施形態にかかる洗浄方法によれば、溶剤及び20℃で液体の強酸を含有する洗浄液を用いて、金属レジストが付着した対象物の洗浄を行う。当該洗浄液は、金属除去性が向上すると共に、乾燥時の析出が抑制され、有機物残留量が低減されるので、プロセス装置の汚染を防止しつつ、良好な金属除去性を発揮することができる。
【実施例
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0036】
<洗浄液の調製>
(実施例1~8、比較例1~4)
表1に示す各成分を混合し、各例の洗浄液を調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。また、数値は配合量(質量%)である。
各例の洗浄液のpHは、各洗浄液を純水で10倍に希釈した液の、pHメーターで測定したpH値である。
PGMEA:プロピレングリコールメチルエチルアセテート。
【0039】
<Sn除去性の評価>
Siウェハ上に、有機金属スズオキシヒドロキシドレジスト(インプリア製)1.5mLを塗布し、2000rpm、60秒の塗布条件でスピンコーティングによりSnレジスト膜を形成した。
次いで、各例の洗浄液25mLをSnレジスト膜が形成されたSiウェハ上に塗布し、乾燥するまでウェハを500rpmで25秒間回転させた。この後、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)とプロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)との質量比7/3の混合溶液5mLを塗布し、乾燥するまでウェハを500rpmで60秒間回転させてポストリンスを行った。
次いで、気相分解-誘導結合プラズマ-質量分析(VPD-ICP-MS)を用いて、ChemTrace(登録商標)により残存Sn量(×1010原子/cm)を測定した。比較例2の洗浄液の残存Sn量を基準値100とし、相対値を残存Sn量の評価とした。結果を表2に示す。
【0040】
<有機物残量の評価>
目視による洗浄後の基板表面の確認、および分光エリプソメトリーを用いた洗浄後の基板上の金属レジスト層の膜厚測定を行い、基板上の有機物の残留の有無を評価した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示す結果から、実施例1~8の洗浄液は、比較例2の洗浄液よりも残存Sn量が少なく、金属除去性が良好であることが確認された。また、実施例1~8の洗浄液は、残存有機物量が低減されていることが確認された。
【要約】
【課題】金属除去性が向上し、有機物残留量が低減された、金属レジストを洗浄するために用いられる洗浄液、及び該洗浄用いた洗浄方法の提供。
【解決手段】金属レジストを洗浄するために用いられる洗浄液であって、溶剤と20℃で液体の強酸とを含有し、前記洗浄液を純水で10倍に希釈した液の、pHメーターで測定したpH値が2.5以下である洗浄液。
【選択図】なし