(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】シンチレータ、シンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
G21K 4/00 20060101AFI20221121BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20221121BHJP
C04B 35/547 20060101ALI20221121BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20221121BHJP
C09K 11/84 20060101ALI20221121BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20221121BHJP
G01T 1/202 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
G21K4/00 A
C04B35/50
C04B35/547
C09K11/00 E
C09K11/84
G01T1/20 B
G01T1/20 D
G01T1/202
(21)【出願番号】P 2017548796
(86)(22)【出願日】2016-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2016082542
(87)【国際公開番号】W WO2017078051
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2015215683
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 一光
(72)【発明者】
【氏名】足達 祥卓
(72)【発明者】
【氏名】福田 幸洋
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】松川 直樹
【審判官】加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-188655(JP,A)
【文献】特開2004-204053(JP,A)
【文献】特開平9-202880(JP,A)
【文献】特開2012-72331(JP,A)
【文献】特開平6-206769(JP,A)
【文献】特開2014-101367(JP,A)
【文献】特開平7-252476(JP,A)
【文献】特開平7-41760(JP,A)
【文献】国際公開第2005/028591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00-11/89
G21K1/00-7/00
G21K4/00
G01T1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積1mm
3以下の焼結体を具備し、
前記焼結体は、希土類酸硫化物の結晶領域を有する結晶粒子と、前記希土類酸硫化物と組成が異なる多結晶体を含む多結晶領域を有する粒界と、を備え、
前記希土類酸硫化物の組成は、
一般式:(Gd
1-a-bPr
aM
b)
2O
2S
(式中、MはCe、Yb、Eu、およびTbからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素であり、aは、0.0001≦a≦0.01を満たす数であり、bは、0である)
により表され、
前記結晶粒子の平均結晶粒径は、5μm以上30μm以下であり、
前記多結晶体は、鉄、リン、ナトリウム、リチウム、およびカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有し、
前記多結晶体の個数は、前記焼結体の断面の100μm×100μmの単位面積あたり98個以上152個以下である、シンチレータ。
【請求項2】
走査型電子顕微鏡による前記断面の観察像において、前記多結晶領域のコントラストは前記結晶領域と異なり、前記多結晶領域の色は前記結晶領域よりも濃く且つ暗く、
前記多結晶領域の面積は、前記断面の500μm×500μmの単位面積あたり10000μm
2以下である、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項3】
前記Gdの一部は、Y、La、およびLuからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素で置換されている、請求項1または請求項2に記載のシンチレータ。
【請求項4】
前記結晶粒子の最大径が50μm以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシンチレータ。
【請求項5】
第1のシンチレータと、
第2のシンチレータと、
前記第1のシンチレータと第2のシンチレータとの間に設けられた反射層と、を具備し、
前記第1および第2のシンチレータのそれぞれは、請求項1ないし請求項
4のいずれか一項に記載のシンチレータからなる、シンチレータアレイ。
【請求項6】
前記反射層は、酸化チタンまたは酸化アルミニウムを含む、請求項
5に記載のシンチレータアレイ。
【請求項7】
前記反射層における前記第1のシンチレータと前記第2のシンチレータとの間の幅は100μm以下である、請求項
5または請求項
6に記載のシンチレータアレイ。
【請求項8】
請求項
5ないし請求項
7のいずれか一項に記載のシンチレータアレイを具備する、放射線検出器。
【請求項9】
請求項
8に記載の放射線検出器を具備する、放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シンチレータ、シンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography:CT)装置などの放射線検査装置は、医療用または工業用など様々な分野に用いられている。例えば、縦横に2次元的に並べられた検出素子(フォトダイオードなど)を有するシンチレータアレイを具備するマルチスライスX線CT装置が開示されている。マルチスライス型とすることにより、輪切り画像を重ねることができ、CT画像を立体的に示すことができる。放射線検査装置に搭載される放射線検出器は、縦横に並べられた複数の検出素子を備える。複数の検出素子のそれぞれはシンチレータを備える。換言すると、一つの検出素子に対して一つのシンチレータが設けられている。
【0003】
シンチレータに入射したX線は可視光に変換され、その可視光は検出素子で電気信号に変換されて画像として出力される。近年、高解像度を得るために検出素子は小型化され、隣り合う検出素子間のピッチは狭められている。これに伴いシンチレータのサイズも体積1mm3以下まで小さくなっている。
【0004】
シンチレータ材料としては、例えば、ガドリニウム酸硫化物焼結体からなるセラミックスシンチレータが挙げられる。上記セラミックスシンチレータの体色は、一定の色度座標(x、y)を示す。上記色度座標は色度計を用いて測定される。一般的な色度計の最小測定範囲は直径2~8mm程度である。例えば、直径2~8mmの測定範囲の測定面積は3.14~50.24mm2である。この範囲に面積が約1mm2未満の微小な変色領域が存在していたとしても、色度は適正であると認定されてしまう。上記変色領域とは、1つのセラミックスシンチレータ内に存在する変色領域のことを指す。
【0005】
セラミックスシンチレータのサイズが小さくなると、微小な変色領域が存在する場合、相対的に微小な変色領域による発光特性への影響が大きくなってしまう。すなわち、微小な変色領域が生じるとX線を可視光に変換する際の光出力が低下する。特に、縦横に2次元的に並べられた複数のセラミックスシンチレータを有するシンチレータアレイでは、部分的にセラミックスシンチレータの光出力が低下すると、シンチレータアレイの感度バラツキが大きくなる。セラミックスシンチレータは、大きな焼結体であるインゴットから切り出されることにより製造される。インゴット内に微小な変色領域が存在していると個々のセラミックスシンチレータの光出力低下になり、その結果、シンチレータアレイの感度バラツキにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-187137号公報
【文献】特許第4959877号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様が解決しようとする課題の一つは、セラミックスシンチレータの光出力の低下を抑制することである。
【0008】
本発明の実施形態に係るシンチレータは、希土類酸硫化物の結晶領域を有する体積1mm3以下の焼結体を具備する。焼結体は、希土類酸硫化物の結晶領域を有する結晶粒子と、前記希土類酸硫化物と組成が異なる多結晶体を含む多結晶領域を有する粒界と、を備える。希土類酸硫化物の組成は、一般式:(Gd1-a-bPraMb)2O2S(式中、MはCe、Yb、Eu、およびTbからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素であり、aは、0.0001≦a≦0.01を満たす数であり、bは、0である)により表される。結晶粒子の平均結晶粒径は、5μm以上30μm以下である。多結晶体は、鉄、リン、ナトリウム、リチウム、およびカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する。多結晶体の個数は、焼結体の断面の100μm×100μmの単位面積あたり98個以上152個以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)による多結晶体の観察像を示す図である。
【
図2】焼結体の断面のSTEMによる観察像の例を示す図である。
【
図3】
図2に示す断面のエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray spectroscopy:EDX)による酸素(O)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図4】
図2に示す観察像のEDXによる硫黄(S)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図5】
図2に示す観察像のEDXによるナトリウム(Na)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図6】
図2に示す観察像のEDXによる鉄(Fe)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図7】
図2に示す観察像のEDXによるリン(P)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図8】
図2に示す観察像のEDXによるガドリニウム(Gd)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図9】焼結体の断面の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)による観察像の例を示す図である。
【
図10】
図9に示す観察像の電子線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)による鉄(Fe)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図11】
図9に示す観察像のEPMAによるナトリウム(Na)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図12】
図9に示す観察像のEPMAによるガドリニウム(Gd)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図13】
図9に示す観察像のEPMAによる酸素(O)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図14】
図9に示す観察像のEPMAによる硫黄(S)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図15】
図9に示す観察像のEPMAによるリン(P)のマッピング結果の例を示す図である。
【
図17】シンチレータアレイの例を示す模式図である。
【
図18】シンチレータアレイの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態のシンチレータは、希土類酸硫化物の結晶領域を有する体積1mm3以下の焼結体を具備する。焼結体の内部に微小な変色領域が存在する場合、相対的に微小な変色領域による発光特性への影響が大きくなる。
【0011】
変色領域の原因の調査分析の結果、上記変色領域は、ガドリニウムなどの希土類酸硫化物焼結体の内部に、希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体の集合した領域(希土類酸化物の結晶領域の組成と異なる組成で表される多結晶体を含む領域)を有する。また、上記多結晶体の集合した領域は不純物が存在している不純物含有領域である。すなわち、微小な変色領域は、希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体の集合した領域であり、さらに不純物含有領域でもある。
【0012】
図1は、希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体のSTEMによる断面観察像を示す。
図1に示す断面は、希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体1を有する。
【0013】
図2は、STEMによる多結晶体の断面観察像であり、
図3~8は
図2に示す観察像のEDXによる多結晶体の各元素のマッピング結果の例を示す。
図3~8から、多結晶体が本来の含有元素であるGd、O、S以外のFeやPという不純物を高濃度で含有していることがわかる。
図9は、SEMによる多結晶体が集合した領域の断面観察像であり、
図10~15は、
図9に示す観察像のEPMAによる多結晶体が集合した領域の各元素のマッピング結果の例を示す図である。
図10~15から多結晶体が集合した領域は、本来の含有元素であるGd、O、S以外のFeやPという不純物を高濃度で含有することがわかる。
【0014】
希土類酸硫化物の例としては、ガドリニウム酸硫化物(Gd2O2S)、イットリウム酸硫化物(Y2O2S)、ルテニウム酸硫化物(Lu2O2S)などが挙げられる。また、希土類酸硫化物は、付活剤としてPr、Ce、Yb、Eu、およびTbからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含有する。
【0015】
希土類酸硫化物は、ガドリニウム酸硫化物からなることがより好ましい。ガドリニウム酸硫化物は、大きいX線吸収係数を示し、高い光出力を得ることができる。ガドリニウム酸硫化物は以下の一般式(1)を満たす組成で表されることが好ましい。
一般式:(Gd1-a-bPraMb)2O2S…(1)
【0016】
Mは、Ce、Yb、Eu、およびTbからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素であり、aは0.0001≦a≦0.01を満たす数であり、bは0≦b≦0.005を満たす数である。M元素は、共付活剤であり、残光特性などを制御する効果を有する。Ceは短残光を実現するために有効な元素である。ガドリニウム酸硫化物がM元素を含有する場合、bは0.00001≦b≦0.005を満たす数であることが好ましい。Gdの一部は、Y、La、およびLuからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素で置換されてもよい。
【0017】
図16は、実施形態に係るセラミックスシンチレータを例示する模式図である。
図16に示すセラミックスシンチレータ2は、立方体形状または直方体形状の焼結体2aを具備する。焼結体2aのサイズは体積が1mm
3以下であれば特に限定されないが、縦、横、厚さがそれぞれ1mm以下であることが好ましい。微小な変色領域を低減することにより、縦0.8mm以下、横0.9mm以下、厚さ1.0mm以下の小型のセラミックスシンチレータ(体積0.72mm
3以下のセラミックスシンチレータ)を実現することも可能である。セラミックスシンチレータを小型化することにより、シンチレータを搭載したX線検出器で検出される画像を高精細化することができる。
【0018】
上記多結晶体が集合した領域は、炭酸塩、鉄、アルミニウム、リン、アルカリ金属元素、およびアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、不純物含有領域である。
【0019】
実施形態に係る上記セラミックスシンチレータのSEMの組成像では、上記多結晶体が集合した領域は希土類酸硫化物の結晶領域と比べてコントラストが異なって色が濃く暗く変色している。
【0020】
上記多結晶体の少なくとも一部は希土類酸硫化物結晶粒子同士の粒界に存在する。また、上記多結晶体の少なくとも一部は上記の希土類酸硫化物結晶粒子同士の粒界三重点に存在しやすい。
【0021】
上記多結晶体が集合した領域は、不純物含有領域であり、この領域における不純物の例としては、希土類酸硫化物蛍光体粉末に含まれる不純物、製造工程中に混入する不純物が挙げられる。主な不純物としては、炭酸塩、鉄、アルミニウム、リン、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素または物質が挙げられる。特に、アルカリ金属元素の例としては、Na(ナトリウム)、Li(リチウム)が挙げられる。また、アルカリ土類金属元素の例としてはCa(カルシウム)が挙げられる。また、不純物金属としては、Cr(クロム)などの元素も挙げられる。
【0022】
従来の製造方法の例として、希土類酸硫化物焼結体に対し、酸素と硫黄を含む不活性ガス雰囲気中、1200~1600℃で熱処理を行い、焼結体表面の白色化防止および内部着色を完全に除去する方法が知られている。上記製造方法であれば、色度計で目的とする色度座標(x、y)を有する焼結体を製造することができる。このような方法で酸素欠損や硫黄欠損を無くすことができる。
【0023】
しかしながら、上記製造方法では、希土類酸硫化物焼結体の金属酸化物や金属硫化物の生成を、酸素ガスおよび硫黄ガスによって制御していることから、希土類酸硫化物焼結体が大きい場合、焼結体内部まで金属酸化物や金属硫化物を低減することは困難であった。そのため、大きな焼結体(インゴット)から、体積1mm3以下の小さなセラミックスシンチレータを切り出した場合、切り出し後に初めて金属酸化物や金属硫化物が残留していることが分かるといった問題があった。このため、上記製造方法の量産性は悪い。
【0024】
予め体積1mm3以下に小さく切り出した試料を酸素と硫黄を含む不活性ガス雰囲気中で熱処理する場合、個々の試料が小さすぎて多くの試料を焼成容器に入れると下側と上側、外側と内側で熱の伝わり方が異なる。熱処理時間を熱の伝わり方が低い方に合わせると、熱の伝わり方が高い方では焼結体中に粗大粒ができ易い。また、熱の伝わり方が高い方に合わせると、熱の伝わり方が低い方では酸素欠損や硫黄欠損の低減効果が不十分となる。また、粗大粒ができてしまうと小さな体積のセラミックスシンチレータでの光出力のばらつきが生じてしまう。
【0025】
酸素と硫黄を含む不活性ガス雰囲気中での熱処理は、酸素欠損、硫黄欠損の低減には有効である。しかしながら、上記不純物による悪影響の低減に対する効果が小さい。また、不純物が希土類酸硫化物蛍光体中に酸化物または硫化物として存在している場合、これらを完全に酸硫化物にするには長時間の熱処理が必要であり、長時間の熱処理を施すと結晶粒が粗大粒となってしまう問題があった。上記製造方法例では、色度座標(x、y)が所定の範囲に入っていれば良品と判定され、必ずしも上記多結晶体が集合した領域の低減と一致しない部分があった。
【0026】
色度計を使った色度確認では上記多結晶体の集合した領域である微小な変色領域の検出が困難である。一般的な色度計は最小測定範囲が直径2~8mm程度である。直径2~8mmは測定面積3.14~50.24mm2となる。この範囲に上記多結晶体の集合した領域である微小な変色領域が存在していたとしても、色度としては適正な範囲と認定されてしまっていた。
【0027】
実施形態に係るシンチレータにおける焼結体は、体積1mm3以下と小さなサイズであっても、上記多結晶体の集合した領域である微小な変色領域に存在する上記多結晶体の個数が、単位面積100μm×100μmあたり200個以下(0含む)であり、上記多結晶体が集合した領域の存在する面積が単位面積500μm×500μmあたり10000μm2以下(0含む)である。
【0028】
上記多結晶体の集合した領域である微小な変色領域に存在する上記多結晶体が単位面積100μm×100μmあたり200個を超えて大きいと光出力が低下する。体積1mm3以下と小さな希土類酸硫化物焼結体では、希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体の集合した領域である微小な変色領域に存在する上記多結晶体が、単位面積100μm×100μmあたり200個以下であることが好ましい。最も好ましいのは存在しない(0個)状態である。
【0029】
上記多結晶体が集合した領域の存在する面積が単位面積500μm×500μmあたり10000μm2(0.01mm2)を越えて大きいと光出力が低下する。そのため、上記多結晶体が集合した領域の存在する面積は単位面積500μm×500μmあたり10000μm2(0.01mm2)以下(0含む)である。
【0030】
断面組織は、SEM写真を用いて観察される。SEM写真は、倍率100倍以上の組成像とする。組成像であれば、上記多結晶体が集合した領域の面は希土類酸硫化物領域と比べてコントラストが異なり色が濃く暗く写る。SEMの組成像では、原子番号が大きいほど明るくなるため、不純物であるFe(原子番号26)、Na(原子番号11)、Li(原子番号3)、Ca(原子番号20)は、主成分であるGd(原子番号64)より原子番号が小さいので濃く暗く見える。そのため、希土類酸硫化物領域と、不純物含有領域を判別し易い。また、必要に応じ、EPMAと併用してもよい。
【0031】
希土類酸硫化物結晶粒子の平均結晶粒径は5~30μmであることが好ましい。平均結晶粒径が5μm未満であると希土類酸硫化物粒子同士の粒界の数が増える。粒界の数が増えることにより、粒界に存在する上記多結晶体が集合した領域の数が増える。一方、希土類酸硫化物結晶粒子の平均結晶粒径が30μmを超えると、希土類酸硫化物粒子同士の粒界が長くなる。粒界が長くなると、そこに存在する上記多結晶体が集合した領域も大きくなりやすい。このため、希土類酸硫化物結晶粒子の平均結晶粒径は5~30μmが好ましく、さらには7~20μmがより好ましい。また、希土類酸硫化物粒子同士の粒界が長くならないようにするためには希土類酸硫化物結晶粒子の最大径が50μm以下であることが好ましい。平均結晶粒径が5~30μmであったとしても、最大径が50μmを超える結晶粒子が存在すると希土類酸硫化物粒子同士の粒界が長くなり易い。そのため、希土類酸硫化物粒子の最大径は50μm以下であることが好ましく、さらには35μm以下であることがより好ましい。
【0032】
希土類酸硫化物粒子の平均結晶粒径の測定は、線密度法で行う。具体的には、希土類酸硫化物焼結体の任意の断面において単位面積500μm×500μmの拡大写真(SEM写真)を撮影する。その拡大写真を使用して、500μmの直線を引く。その直線上に存在する希土類酸硫化物粒子の個数を数える。(500μm/希土類酸硫化物粒子の個数)により、平均値を求める。この作業を任意の直線5本で行う。その5本の平均値を平均結晶粒径とする。
【0033】
以上のような希土類酸硫化物焼結体からなるシンチレータは体積1mm3以下と小型にしたとしても、優れた発光特性を示す。また、実施形態に係るセラミックスシンチレータは、複数個並べてセラミックスシンチレータアレイを構成することに好適である。セラミックスシンチレータアレイは、反射層を介して一体化された複数個のセラミックスシンチレータを有することが好ましい。
【0034】
図17および
図18はシンチレータアレイを例示する模式図である。
図17はセラミックスシンチレータアレイの側面模式図、
図18はセラミックスシンチレータアレイの上面模式図である。
図17および
図18に示すシンチレータアレイ3は、セラミックスシンチレータ2と、反射層4とを有する。
【0035】
反射層4は、TiO2、Al2O3などの反射粒子と透明樹脂とすることにより形成される。反射層4は、セラミックスシンチレータ2の側面にスパッタリングなどにより設けられた反射膜を有する構造であってもよい。また、反射層4は金属箔の両面に透明樹脂を設けた構造であってもよい。反射層4は、セラミックスシンチレータ2に入射したX線を変換することにより生成される可視光を反射する。
【0036】
実施形態に係るシンチレータアレイは、セラミックスシンチレータが体積1mm3以下と小型化されているため反射層の厚み(反射層におけるセラミックスシンチレータ間の幅)を100μm以下、さらには50μm以下と薄型化することも可能である。
【0037】
次に放射線検出器について説明する。
図19は放射線検出器を例示する図である。
図19に示すX線検出器6は、シンチレータアレイ3と、光電変換素子5とを具備する。
【0038】
シンチレータアレイ3はX線入射面を有し、X線照射面とは反対側の面には光電変換素子5が一体的に設置されている。光電変換素子5としては、例えばフォトダイオードが使用される。光電変換素子5は、シンチレータアレイ3を構成するセラミックスシンチレータ2に対応する位置に配置されている。
【0039】
シンチレータアレイ3のX線入射面に表面反射層を設けてもよい。これらによって、X線検出器6が構成されている。また、表面反射層は、シンチレータアレイ3のX線入射面に限らず、光電変換素子5の設置面に設けてもよい。さらに、表面反射層はシンチレータアレイ3のX線入射面および素子設置面の両方に設けてもよい。シンチレータアレイ3に表面反射層を設けることによって、セラミックスシンチレータ2から放射される可視光の反射効率がさらに向上し、ひいてはシンチレータアレイ3の光出力を高めることができる。
【0040】
表面反射層は、反射粒子と透明樹脂との混合物やラッカー系塗料等を含む。反射粒子と透明樹脂との混合物は、反射層4と同様な反射粒子の分散状態を有していることが好ましい。表面反射層の厚さは50~250μmの範囲が好ましい。表面反射層の厚さが50μm未満であると、反射効率の向上効果を十分に得ることができない。表面反射層の厚さが250μmを超えると、透過するX線量が低下して検出感度が低下する。
【0041】
次に放射線検査装置について説明する。
図20は実施形態のX線検査装置の一例であるX線CT装置10を示している。X線CT装置10は、実施形態のX線検出器6を備えている。X線検出器6は被検体11の撮像部位を安置する円筒の内壁面に貼り付けられている。X線検出器6が貼り付けられた円筒の円弧の略中心には、X線を出射するX線管12が設置されている。X線検出器6とX線管12との間には被検体11が配置される。X線検出器6のX線入射面側には、図示しないコリメータが設けられている。
【0042】
X線検出器6およびX線管12は、被検体11を中心にしてX線による撮影を行いながら回転するように構成されている。被検体11の画像情報が異なる角度から立体的に集められる。X線撮影により得られた信号(光電変換素子により変換された電気信号)はコンピュータ13で処理され、ディスプレイ14上に被検体画像15として表示される。被検体画像15は、例えば被検体11の断層像である。
図18に示すように、セラミックスシンチレータ2を2次元的に配置したシンチレータアレイ3を用いることによって、マルチ断層像タイプのX線CT装置10を構成することも可能である。この場合、被検体11の断層像が複数同時に撮影され、例えば撮影結果を立体的に描写することもできる。
【0043】
図20に示すX線CT装置10は、実施形態のシンチレータアレイ3を有するX線検出器6を具備している。前述したように、実施形態のシンチレータアレイ3は反射層4の構成等に基づいて、セラミックスシンチレータ2から放射される可視光の反射効率が高いため、優れた光出力を有している。このようなセラミックスシンチレータ2を有するX線検出器6を使用することによって、X線CT装置10による撮影時間を短くすることができる。その結果、被検体11の被ばく時間を短くすることができ、低被ばく化を実現することが可能になる。実施形態のX線検査装置(X線CT装置10)は、人体の医療診断用のX線検査に限らず、動物のX線検査や工業用途のX線検査等に対しても適用可能である。
【0044】
本発明の実施形態に係るX線検査装置は、体積1mm3以下のシンチレータを使用しているため高精細な画像を得ることができる。また、シンチレータが体積1mm3以下と小型化されている上で、上記多結晶体が集合した領域を極小化しているため、個々のシンチレータの発光特性が優れている。そのため、実施形態に係るシンチレータを複数個用いたシンチレータアレイの特性も優れたものとなる。
【0045】
次に、実施形態に係るシンチレータの製造方法について説明する。実施形態のシンチレータは、上記多結晶体が集合した領域が極小化されていればその製造方法は特に限定されないが効率的に得るための方法として次のものが挙げられる。まず、希土類酸硫化物粉末を用意する。希土類酸硫化物粉末は蛍光体粉末である。また、希土類酸硫化物粉末の平均粒径は10μm以下、さらには5μm以下であることが好ましい。希土類酸硫化物粉末の平均粒径が10μmを超えて大きいと、希土類酸硫化物焼結体になったときに希土類酸硫化物結晶が大きくなりすぎてしまうおそれがある。希土類酸硫化物結晶が大きくなりすぎると、その粒界が長くなってしまう。粒界が長くなると、そこに存在する上記多結晶体が集合した領域が大きくなってしまう。
【0046】
次に、希土類酸硫化物粉末に対し水洗工程を行う。希土類酸硫化物粉末の製造には、希土類酸化物粉末と硫化剤の反応促進のためにフラックスを使用する。フラックスは、一般式:A3PO4または一般式:A2CO3等で表される。A元素は、Li、Na、K、Rb、およびCsからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。フラックスを使用する場合、A元素が希土類酸硫化物粉末中に残存しやすい。A元素は水中でイオンとして溶け出しやすい成分である。このため、水洗工程を行うことが有効である。また、水洗工程は、製造工程中に不可避的に混入してしまう不純物の除去にも有効である。さらに、水洗工程において、上記希土類酸硫化物粉末の不純物を分離させたり、水洗工程自体をクリーンルーム内にして実施することも不純物の除去に有効である。水洗工程後、水洗した上記希土類酸硫化物粉末をメッシュを通して固形物の除去をすることも不純物の除去に有効である(選別工程)。
【0047】
次に、希土類酸硫化物粉末を、酸素および硫黄を含む不活性ガス雰囲気中で熱処理する工程(第1の熱処理)を行うことが好ましい。酸素および硫黄を含む不活性ガス雰囲気中で熱処理することにより、希土類酸硫化物粉末における上記多結晶体が集合した領域を低減することができる。
【0048】
酸素および硫黄を含む不活性ガス雰囲気における酸素は、酸素ガスに限らず、大気なども挙げられる。また、硫黄は、SOxガスなどが挙げられる。SOxガスであれば構成成分として硫黄と酸素を含んでいるので、上記多結晶体が集合した領域を低減することができる。また、SOxガスとしては、SO2ガス、SO3ガスが挙げられる。
【0049】
酸素および硫黄を含む不活性ガス雰囲気での熱処理温度は700~1350℃であることが好ましい。希土類酸硫化物粉末に対する熱処理であるため従来の製造方法よりも低い温度で熱処理できる。熱処理時間は30分~30時間の範囲が好ましい。酸素および硫黄を含む不活性ガス雰囲気を攪拌しながら熱処理を行うことが好ましい。粉末に対する熱処理工程であるため、雰囲気ガスを攪拌しながら行うことにより、希土類酸硫化物粉末それぞれに雰囲気ガスが接触しやすくなる。これにより、上記多結晶体が集合した領域の低減につながる。また、雰囲気ガスの攪拌方法としては、熱処理容器内の雰囲気ガスを攪拌する方法、雰囲気ガスを流しながら行う方法、希土類酸硫化物粉末を攪拌しながら行う方法などが挙げられる。
【0050】
酸素および硫黄を含む不活性ガス雰囲気での熱処理温度までの昇温速度は100℃/min以下であることが好ましい。昇温速度を100℃/min以下とゆっくり昇温することにより、上記多結晶体が集合した領域を希土類酸硫化物に反応させやすくする。100℃/minを超えた場合は、上記多結晶体が集合した領域が希土類酸硫化物に反応しにくくなる。
【0051】
なお、水洗工程、熱処理工程の順で説明したが、熱処理工程後に水洗工程を行う方法、交互に繰り返し行う方法であってもよい。上記のような工程管理を行うことによって微小な変色領域自体が半減するなど、著しく低減することが可能となる。
【0052】
次に、希土類酸硫化物粉末を成形する。成形工程は、金型プレスやラバープレスなどが挙げられる。また、成形体をTaカプセルで封入することも有効である。成形工程における不純物の除去のために、成形工程をクリーンルーム内で実施することや、成形工程で使用する金型プレス、ラバープレス、Taカプセルなどの使用材料に付着している不純物を上記使用材料を使用する前に除去することも有効である。
【0053】
次に、成形体を焼結する。焼結工程は、ホットプレスや熱間等方圧加圧(Hot Isostatic Pressing:HIP)が好ましい。また、焼結工程は、熱処理温度1300~1600℃、圧力98MPa以上、1~12時間が好ましい。このような条件とすることにより、相対密度99.5%以上の希土類酸硫化物焼結体が得られる。
【0054】
熱処理温度が1300℃未満と低いと焼結体が緻密化しない。また、1600℃を超えて高いと上記多結晶体が集合した領域が形成され易い。また、圧力が98MPa未満と低いと焼結体が緻密化しない。また、上記多結晶体が集合した領域を低減するために、焼結助剤は使わないことが好ましい。このため、圧力は120MPa以上であることがより好ましい。
【0055】
また、焼結時間が1時間未満であると焼結体が緻密化しない。また、12時間を超えると上記多結晶体が集合した領域が形成され易い。このため、焼結時間は1~12時間が好ましい。より好ましい焼結時間は2~7時間である。
【0056】
焼結工程後に得られた焼結体に、酸素および硫黄を含む不活性ガス雰囲気での第2の熱処理を行うことが好ましい。この工程により、焼結工程で形成された上記多結晶体が集合した領域を低減することができる。熱処理温度は、700~1350℃で行うことが好ましい。また、第2の熱処理工程の昇温速度を50℃/min以下にすることが好ましい。ゆっくり昇温することで上記多結晶体が集合した領域を希土類酸硫化物に均質に生じさせることができる。50℃/minを超えた場合は、均質に生じさせられない。また、熱処理時間は1~40時間の範囲が好ましく、さらには2~20時間の範囲がより好ましい。
【0057】
以上のように、希土類酸硫化物粉末に対して第1の熱処理および第2の熱処理を行うことにより、上記多結晶体が集合した領域を低減できる。また、縦1mm以上、横1mm以上、長さ(厚さ)20mm以上の希土類酸硫化物焼結体インゴットであっても、上記多結晶体の集合した領域である微小な変色領域に存在する上記多結晶体を単位面積100μm×100μmあたり200個以下(0含む)にすることができ、上記多結晶体が集合した領域の存在する面積を10000μm2以下(0含む)とすることができる。そのため、希土類酸硫化物焼結体インゴットから、切り出して体積1mm3以下のセラミックスシンチレータを得ることも可能である。
【実施例】
【0058】
(実施例1~8、比較例1、2)
表1に示したガドリニウム酸硫化物粉末を用意した。なお、ガドリニウム酸硫化物粉末は、(Gd0.999、Pr0.001)2O2±0.01S1±0.01を使用した。次に、上記粉末について、表1に示す条件で水洗工程、水洗時に一定時間浸漬、水洗工程のクリーンルーム化、水洗後の選別(固形物の除去)を施した。続いて、表1に示す条件で、第1の熱処理工程(SO2ガスと大気との混合雰囲気)を行い、これら粉末を仮成形した後にTaカプセルに封入してHIP工程を行い、さらに第2の熱処理工程(SO2ガスと大気との混合雰囲気)を施し、焼結体を作製した。なお、水洗工程では純水で洗浄した。
【0059】
【0060】
各セラミックスシンチレータに対し、ガドリニウム酸硫化物の焼結体の平均結晶粒径、多結晶体の集合した領域である微小な変色領域に存在する上記多結晶体の単位面積100μm×100μmあたりの個数、および上記多結晶体が集合した領域の存在する面積を調べた。
【0061】
測定に関しては、セラミックスシンチレータの任意の断面をSEM観察した。SEM写真(3000倍)を用い、そこに写るガドリニウム酸硫化物結晶粒子を線密度法で求めた。SEM写真に直線500μmを引き、(500μm/希土類酸硫化物粒子の個数)により、平均値を求める。この作業を任意の直線5本で行う。その5本の平均値を平均結晶粒径とする。また、SEM写真(3000倍)に写るガドリニウム酸硫化物結晶粒子の最も長い対角線を調査し、最も長い対角線を最大径とする。
【0062】
次に、セラミックスシンチレータの任意の断面をEPMAにより分析した。EMPAの測定スポットを100μmにし、合計が単位面積100μm×100μmになるように測定した。合わせてSEMの組成像を観察した。
【0063】
実施例および比較例にかかるセラミックスシンチレータにおいて上記多結晶体が集合した領域からはFe、P、Na、Li、およびCaから選ばれる少なくとも1以上の元素が微量検出された。さらに、SEMの組成像を撮影したところ、希土類酸硫化物と比べて上記多結晶体が集合した領域はコントラストが違って色が濃く暗く見える。SEMの組成像では、原子番号が大きいほど明るくなるため、不純物であるFe(原子番号26)、Na(原子番号11)、Li(原子番号3)、Ca(原子番号20)は、主成分であるGd(原子番号64)より原子番号が小さいので濃く暗く見える。そのため、上記多結晶体が集合した領域の存在する面積は、上記SEM組成像でコントラストが違って色が濃く暗く見える領域の面積を測定した。
【0064】
上記作業により、希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体の集合した領域である微小な変色領域に存在する上記多結晶体の単位面積100μm×100μmあたりの個数、および上記希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体が集合した領域の存在する面積を求めた。その結果を表2に示す。
【0065】
【0066】
表2から分かる通り、実施例にかかるセラミックスシンチレータは、希土類酸硫化物からずれた組成で表される多結晶体が集合した領域の存在する面積が10000μm2(0.01mm2)以下(0含む)であり、単位面積100μm×100μmあたり200個以下(0含む)であった。
【0067】
次に、各焼結体インゴットから、縦0.7mm×横0.7mm×長さ(厚さ)0.8mmの試料を切り出して実施例および比較例にかかるセラミックスシンチレータを作製した。実施例または比較例にかかるセラミックスシンチレータを用いてセラミックスシンチレータアレイを作製した。反射層としてTiO2を含有するエポキシ樹脂を用意した。反射層の厚みを100μmまたは50μmとし、セラミックスシンチレータを縦横に二次元的に並べてセラミックスシンチレータアレイとした。
【0068】
セラミックスシンチレータアレイの光出力を測定した。光出力の測定は、タングステン酸カドミウム(CdWO4)により同サイズのシンチレータアレイを作製した。シンチレータアレイを放射線検出器にセットし、120kV、200mAのX線を照射した際にシリコンフォトダイオードに流れる電流値を光出力として求めた。このとき、タングステン酸カドミウムを使ったシンチレータアレイの光出力を100としたときの相対値として光出力を求めた。その結果を表3に示す。
【0069】
【0070】
実施例に係るシンチレータアレイは、それぞれ光出力が向上した。上記多結晶体が集合した領域を低減しているため反射層の幅を100μm以下、さらには50μm以下と狭くしたとしても優れた特性を示した。このため、実施例にかかるシンチレータアレイは反射層を狭くすることも可能である。これに対し、比較例は上記多結晶体が集合した領域の面積が10000μm2を超えて大きいことや単位面積当たりの個数が多いため光出力の向上がみられなかった。このため、比較例に係るセラミックスシンチレータアレイは反射層の厚みを狭くするものには必ずしも適さないことが判明した。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。