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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】可塑性油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20221121BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20221121BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20221121BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20221121BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20221121BHJP
【FI】
A23D9/00 502
A23D7/00 506
A21D13/00
A21D2/16
A21D13/80
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018116539
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019004875
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017124818
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】平岡 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】池之上 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】貞包 忠義
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136329(JP,A)
【文献】特開2014-036608(JP,A)
【文献】特開2013-223451(JP,A)
【文献】特開2012-175949(JP,A)
【文献】特開2007-174988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
C11B
C11C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の油脂A、油脂B及び油脂Cを含有する焼成品用生地への練り込み用である可塑性油脂組成物であって、前記可塑性油脂組成物の油脂中に前記油脂Cを62質量%以上85質量%以下含むことを特徴とする前記可塑性油脂組成物。
油脂A:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の総炭素数が38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量が30質量%以上60質量%以下であり、かつ構成脂肪酸中のパルミチン酸含有量が10質量%以上35質量%以下であるエステル交換油。
油脂B:P2O含有量が18質量%以上28質量%以下であり、かつP2LとPL2の合計含有量が3質量%以上18質量%以下であるエステル交換油(ただし、P2Oは1分子中にパルミチン酸が2個、オレイン酸が1個エステル結合しているトリアシルグリセロール、P2Lは1分子中にパルミチン酸が2個、リノール酸が1個エステル結合しているトリアシルグリセロール、PL2は1分子中にパルミチン酸が1個、リノール酸が2個エステル結合しているトリアシルグリセロールを意味する)。
油脂C:上昇融点が10℃以下の食用油脂。
【請求項2】
前記油脂Aを構成する脂肪酸中のステアリン酸含有量が25質量%以上50質量%以下である請求項1に記載の可塑性油脂組成物。
【請求項3】
前記油脂Aのヨウ素価が0以上2以下である請求項1または2に記載の可塑性油脂組成物。
【請求項4】
前記油脂BのPO2含有量が5質量%以上20質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物(ただし、PO2は1分子中にパルミチン酸が1個、オレイン酸が2個エステル結合しているトリアシルグリセロールを意味する)。
【請求項5】
前記油脂Bのヨウ素価が35以上60以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物。
【請求項6】
油脂中の前記油脂Aと前記油脂Bとの合計量が15質量%以上38質量%以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物。
【請求項7】
前記油脂Bに対する前記油脂Aの質量比率が0.1以上10以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物。
【請求項8】
油中水型である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物を含有する焼成品用生地。
【請求項10】
請求項に記載の生地を焼成して得られる焼成品。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物を0℃超10℃以下で用いることを特徴とする、焼成品用生地の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物を用いて焼成品用生地を作製することを特徴とする、焼成品の油染みを低減させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑性油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き菓子やパンなどの焼成品に用いられるマーガリンやショートニングなどの練り込み用の可塑性油脂組成物は、通常、0℃超10℃以下の冷蔵温度で流通もしくは保管される。練り込み用の可塑性油脂組成物は一般的に冷蔵温度では硬く、そのままでは焼成品用生地を製造する際に練り込みにくく使用しにくいため、適切な硬さに調整するために例えば20℃程度に調温して使用する。しかし、調温には時間がかかる上、調温設備がない場合には気温が高い夏場と気温が低い冬場とでは調温条件を変える必要があり、適度に調温することは難しい。そこで調温をおこなう必要がなく、冷蔵温度でも使用できる練り込み用の可塑性油脂組成物が求められている。
【0003】
従来の練り込み用の可塑性油脂組成物としては、例えばエステル交換油を含む油脂組成物が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、いずれの特許文献にも、冷蔵温度の可塑性油脂組成物を焼成品用生地へ練り込めることについては開示されていない。
【0004】
マーガリンやショートニングの代わりに液状油を焼成品用生地原料として用いることもあるが、パウンドケーキなどのように油脂を多く配合する焼成品では、油染みが発生しやすいため、包装材に油が付着し、外観を損なうことや持った時に油で手を汚してしまうことが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-278833号公報
【文献】特開2015-006132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、0℃超10℃以下の冷蔵温度の可塑性油脂組成物を調温することなく使用し、焼成品用生地を作製する際に練り込みやすく、また焼成品からの油染みを低減しうる可塑性油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2種類のエステル交換油を含有し、上昇融点が10℃以下の油脂を所定量含む可塑性油脂組成物を用いれば、0℃超10℃以下の冷蔵温度で調温することなく焼成品用生地を作製する際に練り込みやすく、また焼成品からの油染みを低減しうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の油脂A、油脂B及び油脂Cを含有する可塑性油脂組成物であって、前記可塑性油脂組成物の油脂中に前記油脂Cを62質量%以上85質量%以下含むことを特徴とする前記可塑性油脂組成物である。
油脂A:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の総炭素数が38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量が30質量%以上60質量%以下であり、かつ構成脂肪酸中のパルミチン酸含有量が10質量%以上35質量%以下であるエステル交換油。
油脂B:P2O含有量が18質量%以上28質量%以下であり、かつP2LとPL2の合計含有量が3質量%以上18質量%以下であるエステル交換油(ただし、P2Oは1分子中にパルミチン酸が2個、オレイン酸が1個エステル結合しているトリアシルグリセロール、P2Lは1分子中にパルミチン酸が2個、リノール酸が1個エステル結合しているトリアシルグリセロール、PL2は1分子中にパルミチン酸が1個、リノール酸が2個エステル結合しているトリアシルグリセロールを意味する)。
油脂C:上昇融点が10℃以下の食用油脂。
【0009】
前記油脂Aを構成する脂肪酸中のステアリン酸含有量が25質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0010】
前記油脂Aのヨウ素価が0以上2以下であることが好ましい。
【0011】
前記油脂BのPO2含有量が5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。(ただし、PO2は1分子中にパルミチン酸が1個、オレイン酸が2個エステル結合しているトリアシルグリセロールを意味する)
【0012】
前記油脂Bのヨウ素価が35以上60以下であることが好ましい。
【0013】
前記可塑性油脂組成物の油脂中の前記油脂Aと前記油脂Bとの合計量が15質量%以上38質量%以下であることが好ましい。
【0014】
前記油脂Bに対する前記油脂Aの質量比率が0.1以上10以下であることが好ましい。
【0015】
前記可塑性油脂組成物は油中水型であることが好ましい。
【0016】
前記可塑性油脂組成物は練り込み用であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記可塑性油脂組成物を含有する焼成品用生地である。
【0018】
また、本発明は、前記生地を焼成して得られる焼成品である。
【0019】
また、本発明は、前記可塑性油脂組成物を0℃超10℃以下で用いることを特徴とする、焼成品用生地の製造方法である。
【0020】
また、本発明は、前記可塑性油脂組成物を用いて焼成品用生地を作製することを特徴とする、焼成品の油染みを低減させる方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の可塑性油脂組成物を用いれば、0℃超10℃以下の冷蔵温度で調温することなく焼成品用生地を作製する際、練り込みやすく、また焼成品からの油染みが低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の可塑性油脂組成物は、以下の油脂A、油脂B及び油脂Cを含有し、前記可塑性油脂組成物の油脂中に前記油脂Cを62質量%以上85質量%以下含む。油脂Aは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の総炭素数(以後、CNとも記載)が38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量が30質量%以上60質量%以下であり、かつ構成脂肪酸中のパルミチン酸含有量が10質量%以上35質量%以下であるエステル交換油である。油脂Bは、P2O含有量が18質量%以上28質量%以下であり、かつP2LとPL2の合計含有量が3質量%以上18質量%以下であるエステル交換油である。油脂Cは、上昇融点が10℃以下の食用油脂である。ここで、P2Oは1分子中にパルミチン酸が2個、オレイン酸が1個エステル結合しているトリアシルグリセロール、P2Lは1分子中にパルミチン酸が2個、リノール酸が1個エステル結合しているトリアシルグリセロール、PL2は1分子中にパルミチン酸が1個、リノール酸が2個エステル結合しているトリアシルグリセロールをそれぞれ意味する。CNが38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量は基準油脂分析試験法の2.4.6.1-1996に従って測定することができる。オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸などの構成脂肪酸含有量は基準油脂分析試験法の2.4.2.3-2013に従って測定することができる。P2O、P2L、PL2、PO2などのトリグリアシルグリセロール含有量はJAOCS,Vol70,No.11,1111-1114(1993)に記載の方法に従って測定することができる。上昇融点は基準油脂分析試験法の2.2.4.2-1996に従って測定することができる。
【0023】
本発明におけるエステル交換油とは、従来公知の方法でエステル交換した油脂を指す。エステル交換に用いる触媒としてはナトリウムメトキシド等の化学触媒やリパーゼ等の酵素触媒等が挙げられる。エステル交換の方法は、ランダムエステル交換でも、グリセロールの1、3位に結合した脂肪酸に特異的なエステル交換でもよいが、ランダムエステル交換が好ましい。
【0024】
本発明の可塑性油脂組成物の油脂中の前記油脂Aと前記油脂Bとの合計量は、焼成品の油染みを低減させる観点から、15質量%以上が好ましく、19質量%以上がより好ましく、22質量%以上がさらに好ましい。また、前記油脂Aと前記油脂Bとの合計量は、焼成品用生地を作製する際に練り込みやすくさせる観点から、38質量%以下であることが好ましく、36質量%以下がより好ましく、33質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
前記油脂Bに対する前記油脂Aの質量比率は、焼成品の油染みを低減させる観点から、0.1以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。また、前記油脂Bに対する前記油脂Aの質量比率は、焼成品用生地を作製する際に練り込みやすくさせる観点から、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明で用いられる前記油脂A中のCNが38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量は、30質量%以上であり、32質量%以上であることが好ましく、34質量%以上であることがより好ましい。また、前記油脂A中のCNが38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量は、60質量%以下であり、58質量%以下が好ましく、56質量%以下がより好ましい。所定の範囲にあると、焼成品の油染みを低減させることができる。
【0027】
本発明で用いられる前記油脂Aの構成脂肪酸中のパルミチン酸含有量は10質量%以上であり、13質量%以上であることが好ましく、16質量%以上であることがより好ましい。また、前記油脂Aの構成脂肪酸中のパルミチン酸含有量は35質量%以下であり、33質量%以下であることが好ましく、31質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明で用いられる前記油脂Aの構成脂肪酸中のステアリン酸含有量は25質量%以上であることが好ましく、27質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記油脂Aの構成脂肪酸中のステアリン酸含有量は50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
前記油脂Aのヨウ素価が0以上2以下であることが好ましい。ヨウ素価は基準油脂分析試験法の2.3.4.1-1996に従って測定することができる。
【0030】
前記油脂Aとしては、例えばヤシ油、パーム核油およびこれらを分別、水素添加等の加工をしたラウリン系油脂と、パーム油およびこれを分別、水素添加等の加工をしたパーム系油脂とを含む配合油脂のエステル交換油が挙げられ、前記ラウリン系油脂と前記パーム系油脂とのエステル交換油が好ましく挙げられる。前記油脂Aに用いられるラウリン系油脂は、パーム核油およびパーム核油の水素添加油からなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、パーム核油の極度硬化油がより好ましい。前記油脂Aに用いられるパーム系油脂は、パームステアリン、パーム油の水素添加油およびパーム分別油の水素添加油からなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、パームステアリン、パーム油の極度硬化油およびパーム分別油の極度硬化油からなる群から選択される1種または2種以上がより好ましく、パーム油の極度硬化油およびパーム分別油の極度硬化油からなる群から選択される1種または2種以上がさらに好ましく、パーム油の極度硬化油がさらにより好ましい。前記油脂Aが水素添加油脂を含むエステル交換油である場合、水素添加工程、エステル交換油の原料油脂を配合する配合工程およびエステル交換工程の順序は問わない。配合工程、エステル交換工程、水素添加工程の順でもよいし、配合工程、水素添加工程、エステル交換工程の順でもよいし、水素添加工程、配合工程、エステル交換工程の順でもよい。
【0031】
本発明の可塑性油脂組成物の油脂中の前記油脂Aの含有量は、焼成品の油染みを低減させる観点から、9質量%以上が好ましく、11質量%以上がより好ましい。また、焼成品用生地に練り込みやすくさせる観点から、29質量%以下が好ましく、26質量%以下がより好ましい。
【0032】
本発明で用いられる前記油脂B中のP2O含有量は18質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましい。また、前記油脂B中のP2O含有量は28質量%以下であり、26質量%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明で用いられる前記油脂B中のP2LとPL2の合計含有量は3質量%以上であり、5質量%以上であることが好ましい。また、前記油脂B中のP2LとPL2の合計含有量は18質量%以下であり、16質量%以下であることが好ましい。
【0034】
本発明で用いられる前記油脂B中のPO2含有量は5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、9質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記油脂B中のPO2含有量は20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
前記油脂Bのヨウ素価が35以上60以下であることが好ましく、35以上55以下であることがより好ましく、37以上55以下であることがさらに好ましい。
【0036】
前記油脂Bとしては、前記パーム系油脂を含む配合油脂のエステル交換油を挙げられ、前記パーム系油脂と、構成脂肪酸中のオレイン酸とリノール酸の合計含有量が65質量%以上100質量%以下である前記パーム系油脂以外の油脂(以後、油脂Dとも記載)とを含む配合油脂のエステル交換油を好ましく挙げられ、前記パーム系油脂と前記油脂Dとのエステル交換油をより好ましく挙げられる。前記油脂Bに用いられるパーム系油脂は、パーム油およびパーム分別油からなる群から選択される1種または2種以上が好ましい。前記油脂Bに用いられる油脂Dとしては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油等を挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。前記油脂Bが、油脂Dを含む配合油脂のエステル交換油である場合、前記油脂Bに用いられるパーム系油脂に対する油脂Dとの配合比率は、質量比で0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。また、前記油脂Bに用いられるパーム系油脂に対する油脂Dの配合比率は、質量比で0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
【0037】
本発明の可塑性油脂組成物の油脂中の前記油脂Bの含有量は、焼成品の油染みを低減させる観点から、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、焼成品用生地を作製する際に練り込みやすくさせる観点から、28質量%以下が好ましく、22質量%以下がより好ましい。
【0038】
本発明で用いられる前記油脂Cは上昇融点が10℃以下の油脂であり、上昇融点が5℃以下の油脂が好ましく、上昇融点が0℃以下の油脂がより好ましい。前記油脂Cとしては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パームオレイン等を挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。大豆油、菜種油、コーン油、パームオレインからなる群から選択される1種または2種以上を好ましく挙げられ、大豆油、菜種油からなる群から選択される1種または2種をより好ましく挙げられる。
【0039】
本発明の可塑性油脂組成物の油脂中の油脂Cの含有量は、62質量%以上85質量%以下である。焼成品用生地を作製する際に練り込みやすくさせる観点から、本発明の可塑性油脂組成物の油脂中の油脂Cの含有量は、64質量%以上が好ましく、67質量%以上がより好ましい。また、焼成品の油染みを低減させる観点から、83質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0040】
本発明の可塑性油脂組成物には、効果を損なわない範囲において、前記油脂A、前記油脂Bおよび前記油脂C以外の油脂を含有してもよい。前記油脂A、前記油脂Bおよび前記油脂C以外の油脂としては、前記油脂A及び前記油脂B以外のエステル交換油やパーム油、パーム核油、ヤシ油、ラード、牛脂、乳脂等、およびこれらの分別油、水素添加油脂等の上昇融点が10℃超の食用油脂を挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の可塑性油脂組成物における油脂含有量は、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下である。
【0042】
本発明の可塑性油脂組成物は、油脂を含む油相と水を含む水相とを油中水型に乳化した油中水型可塑性油脂組成物であってもよいし、水分が0.5質量%以下であるショートニングであってもよいが、油中水型可塑性油脂組成物であることが好ましい。油中水型可塑性油脂組成物の場合、油相の含有量は、好ましくは50質量%以上99.4質量%以下、より好ましくは60質量%以上98質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以上85質量%以下である。水相の含有量は、好ましくは0.6質量%以上50質量%以下、より好ましくは2質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以上30質量%以下である。油中水型可塑性油脂組成物の例としては、ファットスプレッドやマーガリン等が挙げられる。
【0043】
本発明の可塑性油脂組成物には、油脂と水以外に、従来の公知の成分を含んでもよい。公知の成分としては、特に限定されないが、例えば乳、乳製品、蛋白質、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、香辛料、着色成分、香料、乳化剤等が挙げられる。乳としては、牛乳等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート、ホエイ蛋白アイソレート、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、小麦蛋白質等の植物蛋白質等が挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物、多糖類等が挙げられる。抗酸化剤としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等が挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等が挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチン等が挙げられる。香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0044】
本発明の可塑性油脂組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば油中水型に乳化した形態のものは、前記油相と前記水相とを、適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の密封式急冷捏和装置により急冷捏和し得ることができる。ショートニングは、前記油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の密封式急冷捏和装置により急冷捏和し得ることができる。急冷捏和後には、必要に応じて20℃程度の温度で数日保管する熟成工程を経てもよい。
【0045】
本発明の可塑性油脂組成物は、練り込み用としてパンや菓子等の焼成品用生地に用いることができる。焼成品用生地を作製する工程において、本発明の可塑性油脂組成物を0℃超10℃以下の冷蔵温度で用いることができるが、本発明の可塑性油組成物を添加する工程の順は問わない。本発明の可塑性油脂組成物を添加する工程の後に、本発明の可塑性油脂組成物以外の焼成品用生地原料を添加する工程があってもよいし、本発明の可塑性油脂組成物以外の焼成品用生地原料を添加する工程の後に、本発明の可塑性油脂組成物を添加する工程があってもよい。
【0046】
本発明の可塑性油脂組成物を含有する焼成品用生地を適宜成形して、焼成することによってパンや菓子等の焼成品が得られる。前記焼成品用生地の焼成は、例えば公知の条件及び方法に従っておこなうことができる。本発明の可塑性油脂組成物を用いて焼成品用生地を作製すると、焼成品の油染みを低減させることができる。
【0047】
本発明の焼成品用生地は、穀粉を主成分とし、穀粉としては、通常、焼成品用生地に配合されるものであれば、特に限定されないが、例えば小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉、澱粉等が挙げられる。
【0048】
本発明の焼成品用生地における本発明の可塑性油脂組成物の配合量は、焼成品の種類によっても異なり特に限定されないが、焼成品用生地に配合される穀粉100質量部に対する可塑性油脂組成物量として好ましくは2質量部以上150質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上120質量部以下である。
【0049】
本発明の焼成品用生地には、穀粉と本発明の可塑性油脂組成物以外にも、通常、焼成品用生地に配合されるものであれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、特に制限されない。具体的には、例えば、水や、前記可塑性油脂組成物が含む成分として挙げた乳、乳製品、蛋白質、糖質の他、卵、卵加工品、塩類、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、豆腐、豆乳、大豆蛋白質、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色料、香料等が挙げられる。
【0050】
焼成品としては、例えば食パン、ロールパン、菓子パン、調理パン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュなどのパン類;デニッシュ、クロワッサン、パイなどのペストリー;パウンドケーキ、スポンジケーキ、ホットケーキなどのケーキ類;ビスケット、クッキー、焼きドーナツ、ブッセ、ワッフルなどの焼き菓子等が挙げられる。
【実施例
【0051】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0052】
(原料)
配合油脂および焼成品用油脂組成物の調製に際し、以下のものを使用した。
(油脂)
菜種油(上昇融点0℃以下、構成脂肪酸中のオレイン酸とリノール酸の合計含有量81.1質量%、株式会社J-オイルミルズ社製)
大豆油(上昇融点0℃以下、構成脂肪酸中のオレイン酸とリノール酸の合計含有量77.5質量%、株式会社J-オイルミルズ社製)
パーム油(株式会社J-オイルミルズ社製)
パームステアリン(ヨウ素価32、株式会社J-オイルミルズ社製)
パーム核油(株式会社J-オイルミルズ社製)
(乳化剤)
レシチン(製品名:J レシチンFA、株式会社J-オイルミルズ社製)
モノグリセリン脂肪酸エステル(製品名:エキセルO-95R、花王株式会社製)
(その他)
脱脂粉乳(森永乳業株式会社製)
香料(市販のバターフレーバー)
【0053】
(測定方法)
原料油脂、エステル交換油および配合油脂の下記の項目について下記の方法で測定した。
【0054】
トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の総炭素数(以後、CNとも記載)が38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.6.1-1996 トリアシルグリセリン組成(ガスクロマトグラフ法)」により測定して、算出した。
【0055】
構成脂肪酸中のオレイン酸含有量、リノール酸含有量、パルミチン酸含有量およびステアリン酸含有量は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」により測定した。
【0056】
P2O含有量、P2L含有量、PO2含有量およびPL2含有量は、カラム長が60mのものを使用したこと以外は、JAOCS,Vol70,No.11,1111-1114(1993)に記載の方法にしたがって測定した。。
【0057】
ヨウ素価は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」により測定した。
【0058】
上昇融点は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」により測定した。
【0059】
(エステル交換油1の製造)
パーム油を30質量部及びパーム核油を70質量部混合した混合油に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、水素添加をおこなった。水素添加後、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭をおこなってエステル交換油1を得た。エステル交換油1中の、CNが38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量は53.2質量%、パルミチン酸含有量は19.9質量%、ステアリン酸含有量は32.2質量%、ヨウ素価は1であった。
【0060】
(エステル交換油2の製造)
パーム油を50質量部及びパーム核油を50質量部混合した混合油を用いたこと以外は、エステル交換油1と同じ方法で、エステル交換油2を製造した。エステル交換油2中の、CNが38以上44以下のトリアシルグリセロール含有量は36.6質量%、パルミチン酸含有量は27.2質量%、ステアリン酸含有量は38.1質量%、ヨウ素価は1であった。
【0061】
(エステル交換油3の製造)
パームステアリンを75質量部、パーム油を10質量部及び大豆油を15質量部混合した混合油に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、更に脱臭をおこなってエステル交換油3を得た。エステル交換油3中の、P2O含有量は22.1質量%、P2LとPL2との合計含有量は13.6質量%、PO2含有量は11.4質量%、ヨウ素価は50であった。
【0062】
(エステル交換油4の製造)
パームステアリンを75質量部、パーム油を10質量部及び菜種油を15質量部混合した混合油を用いたこと以外は、エステル交換油3と同じ方法で、エステル交換油4を製造した。エステル交換油4中の、P2O含有量は26.8質量%、P2LとPL2との合計含有量は7.2質量%、PO2含有量は16.3質量%、ヨウ素価は48であった。
【0063】
(配合油脂の調製)
表1および表2の配合にしたがって配合油脂を調製した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
(焼成品用油脂組成物の調製)
表3の配合にしたがって焼成品用油脂組成物を調製した。
【0067】
【表3】
【0068】
(マーガリンの調製)
表3のマーガリンの油相の配合にしたがい、調製例1-1~1-2、調製例1-4~1-5、調製例2-1~2-6の配合油脂をそれぞれ70℃に加温して配合油脂以外の油相成分を溶解し、油相を準備した。表3の水相の配合にしたがい、水道水に脱脂粉乳を溶解後、60℃30分の条件で加熱殺菌し、水相を準備した。次に、前記油相に前記水相を添加し、プロペラ撹拌機で撹拌して混合乳化した乳化液をパーフェクターによって急冷捏和し、可塑性油脂組成物のマーガリンを得た。得られたマーガリンは5℃の恒温槽に保管した。
【0069】
(ショートニングの調製)
表3のショートニングの配合にしたがい、調製例1-3の配合油脂を70℃に加温して配合油脂以外の油相成分を溶解し、油相を準備した。油相をパーフェクターによって急冷捏和し、可塑性油脂組成物のショートニングを得た。得られたショートニングの水分は0.1質量%であった。得られたショートニングは5℃の恒温槽に保管した。
【0070】
(液状油脂組成物の調製)
表3の液状油脂組成物の配合にしたがい、調製例1-6の配合油脂を70℃に加温して配合油脂以外の油相成分を溶解し、液状油脂組成物を得た。得られた液状油脂組成物の水分は0.1質量%であった。得られた液状油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0071】
(パウンドケーキの作製および評価)
焼成品用油脂組成物を用いて、表4の配合のパウンドケーキを下記の作業手順で作製し、下記評価基準で評価した。
【0072】
【表4】
【0073】
5℃の焼成品用油脂組成物を卓上ホバートミキサーのボウルに入れて、ビーターを使用して低速で30秒ミキシングした。上白糖を追加してさらに低速で30秒、中速で1分ミキシングした。全卵を100g加え、中速で30秒ミキシングする作業を3回おこなった。薄力粉とベーキングパウダーを加えて低速で30秒ミキシングし、パウンドケーキ生地を得た。パウンド型に300gずつパウンドケーキ生地を入れて、上段180℃、下段190℃に加熱したオーブンで40分焼成し、パウンドケーキを作製した。
【0074】
<練り込みやすさ>
マーガリン又はショートニングに上白糖を追加しミキシングした際にマーガリン又はショートニングの塊がなくなる状態から目視により練り込みやすさを評価した。
◎ とても練り込みやすい
○ 練り込みやすい
△ やや練り込みやすい
× 練り込みにくい
【0075】
<油染み>
焼成したパウンドケーキを20℃まで放冷後、紙の上に5分間乗せ、パウンドケーキを取り除いた時に、紙への油の付着度合いから油染みを評価した。
◎ 油染みがとても少ない
○ 油染みが少ない
△ 油染みがやや少ない
× 油染みが多い
【0076】
<外観>
焼成したパウンドケーキの表面に、白い斑点があるかを目視で評価した。
◎ 白い斑点が見られない
○ 白い斑点がほとんど見られない
△ 白い斑点があまり見られない
× 白い斑点が見られる
【0077】
<内部の気泡>
焼成したパウンドケーキを切った際、断面に大きな気泡があるかを目視で評価した。
◎ 大きな気泡が見られない
○ 大きな気泡がほとんど見られない
△ 大きな気泡があまり見られない
× 大きな気泡が見られる
【0078】
<口どけ>
焼成して冷めてからポリ袋に入れ、20℃で1日間おいたパウンドケーキを、専門パネラー6人で食して、合議の上、下記の評価基準により口どけを評価した。ここで口どけがよいとは、口内で長く残ることがなく、短時間でくずれ、飲み込みやすい状態を意味する。
◎ とても口どけがよい
○ 口どけがよい
△ やや口どけがよい
× 口どけが悪い
【0079】
<パサつき>
焼成して冷めてからポリ袋に入れ、20℃で1日間おいたパウンドケーキを、専門パネラー6人で食して、合議の上、下記の評価基準によりパサつきを評価した。ここでパサつくとは、しっとりしておらず、口内の水分を奪う感じを意味する。
◎ パサつかない
○ ほとんどパサつかない
△ あまりパサつかない
× パサつく
【0080】
パウンドケーキの評価結果を表5および表6に示す。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
実施例の焼成品用油脂組成物は練り込みやすく、油染みが低減されたパウンドケーキが焼成でき、パウンドケーキの外観が良好で、内部の気泡が均質で、食したときに口どけが良好で、パサつきが抑えられていた。特に菜種油もしくは大豆油を70質量%以上76質量%以下含む配合油脂を使用した焼成品用油脂組成物は特に練り込みやすく、パウンドケーキの油染みも抑制できた。液状油脂組成物を使用した比較例5-3は、上白糖を追加しても均一に混ぜられなかった。焼成品は油染みが多く、かつ表面に白い斑点が目立ち、食したときの口どけが悪く、パサついていた。
【0084】
(パンの作製および評価)
表1および表2に示す調製例2-3、調製例1-5及び調製例2-5の配合油脂により調製したマーガリンを用いて、表7の配合のパンを下記の作業手順で作製し、下記評価基準で評価した。
【0085】
【表7】
【0086】
パンの作製には、ホームベーカリー(型番:SD-BM102-H、株式会社パナソニック社製)を用いた。マーガリンとドライイースト以外の材料を羽根がセットされたパンケースに入れた。材料の入ったパンケースをホームベーカリー本体にセットし、イースト容器にドライイーストをセットした後、ホームベーカリーの蓋を閉め、コースをドライイースト、メニューを早焼きにそれぞれ設定して、スタートボタンを押した。ドライイーストが投下されてから1分後にホームベーカリーの蓋を開け、5℃のマーガリンをホームベーカリーに入れて、練り込みやすさの評価が完了後、ホームベーカリーの蓋を閉めた。焼成が完了したブザーが鳴ったら、ホームベーカリーの蓋を開けて、速やかにパンケースから焼成したパンを取り出した。
【0087】
<練り込みやすさ>
マーガリンを入れてから、マーガリンの塊がなくなる時間を目視により評価した。
◎ 1分以上1分30秒未満
○ 1分30秒以上2分未満
△ 2分以上2分30秒未満
× 2分30秒経っても塊がなくならない
【0088】
<油染み>
焼成したパンを20℃で20分放置した後、紙の上に5分間乗せ、パンを取り除いた時に、紙への油の付着度合いから油染みを評価した。
◎ 油染みがとても少ない
○ 油染みが少ない
△ 油染みがやや少ない
× 油染みが多い
【0089】
<ふくらみ>
焼成したパンがどの程度ふくらんだか、高さを測定し評価した。
◎ 18cm以上
○ 17.5cm以上18cm未満
△ 17cm以上17.5cm未満
× 17cm未満
【0090】
<口どけ>
油染み評価後のパンをポリ袋に入れて、20℃で1日間おいたパンを、専門パネラー6人で食して、合議の上、下記の評価基準により口どけを評価した。
◎ とても口どけがよい
○ 口どけがよい
△ やや口どけがよい
× 口どけが悪い
【0091】
<パサつき>
油染み評価後のパンをポリ袋に入れて、20℃で1日間おいたパンを、専門パネラー6人で食して、合議の上、下記の評価基準によりパサつきを評価した。
◎ パサつかない
○ ほとんどパサつかない
△ あまりパサつかない
× パサつく
【0092】
パンの評価結果を表8に示す。
【0093】
【表8】
【0094】
調製例2-3の配合油脂を含有するマーガリンを使用した実施例8-1は、生地作製時に練り込みやすく、油染みが低減されたパンを焼成できた。焼成したパンは充分ふくらんでおり、パンを食したときの口どけはとても良好で、パサつきはほとんど感じられなかった。