(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】散乱計測オーバーレイターゲット及び方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20221121BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
G03F9/00 H
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2019543203
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 US2017066853
(87)【国際公開番号】W WO2018147938
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダム イドゥ
(72)【発明者】
【氏名】レビンスキ ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】マナッセン アムノン
(72)【発明者】
【氏名】ルバシェブスカイ ユバル
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-532862(JP,A)
【文献】特表2015-528922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233705(US,A1)
【文献】特開2007-266601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0246482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
9/00
H01L 21/64
21/66
23/54
G01N 21/47
21/84
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCOL(散乱計測オーバーレイ)ターゲットであって、少なくとも1つの測定方向に沿って、
少なくとも2つのウェハ層に特定の粗ピッチを有する周期構造を有する2つのセルであり、前記のそれぞれの層にある上側の周期構造と下側の周期構造の間のオフセットが反対向きである、2つのセルと、
第1のセル及び第2のセルからなる追加の2つのセルであり、前記第1のセルは前記2つのウェハ層のうちの上側に散乱計測ツールの分解能未満のサブ分解能ピッチを有する周期構造を、下側に粗ピッチを有する周期構造をそれぞれ有し、前記第2のセルは前記2つのウェハ層のうちの上側に粗ピッチを有する周期構造を、下側に前記散乱計測ツールの分解能未満のサブ分解能ピッチを有する周期構造をそれぞれ有する、追加の2つのセルと、
を含
み、前記特定の粗ピッチが、少なくとも500nmであり、前記サブ分解能周期構造が、300nmより小さいサブ分解能ピッチを有することを特徴とする、SCOLターゲット。
【請求項2】
請求項1に記載のSCOLターゲットであって、前記4つのセルを、XおよびYの2つの測定方向のそれぞれに沿って配置することで合計8個のセルを有することを特徴とする、SCOLターゲット。
【請求項3】
請求項2に記載のSCOLターゲットであって、前記8個のセルが、2つのX方向セルおよび2つのY方向セルからなる4つのセルを1つのグループとして、合計2つのグループで配置されることを特徴とする、SCOLターゲット。
【請求項4】
請求項1に記載のSCOLターゲットであって、前記サブ分解能ピッチが、100nmより小さいことを特徴とする、SCOLターゲット。
【請求項5】
少なくとも2つのウェハ層に特定の粗ピッチを有する周期構造を有する2つのセルであり、前記のそれぞれの層にある上側の周期構造と下側の周期構造の間のオフセットが反対向きである、2つのセルと、第1のセル及び第2のセルからなる追加の2つのセルであり、前記第1のセルは前記2つのウェハ層のうちの上側に散乱計測ツールの分解能未満のサブ分解能ピッチを有する周期構造を、下側に粗ピッチを有する周期構造をそれぞれ有し、前記第2のセルは前記2つのウェハ層のうちの上側に粗ピッチを有する周期構造を、下側に前記散乱計測ツールの分解能未満のサブ分解能ピッチを有する周期構造をそれぞれ有する、追加の2つのセルとを、少なくとも1つの測定方向に沿ってSCOLターゲットに追加するステップを含
み、前記特定の粗ピッチが、少なくとも500nmであり、前記サブ分解能周期構造が、300nmより小さいサブ分解能ピッチを有することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記SCOLターゲットが、前記4つのセルをXおよびYの2つの測定方向のそれぞれに沿って配置することで合計8個のセルを有し、前記追加するステップが、それに応じて実行されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記8個のセルを、2つのX方向セルおよび2つのY方向セルからなる4つのセルを1つのグループとして合計2つのグループで配置するステップをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法であって、前記セルを、直交偏光照明放射によって前記2つの測定方向に沿って測定するステップをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記測定するステップが、複数対の直交偏光照明スポットによって複数対のセルについて同時に実行されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法であって、前記サブ分解能ピッチが、100nmより小さいことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測学の分野に関し、さらに詳細には、散乱計測のオーバーレイターゲット、およびそのための測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、参照によりその全体を本明細書に組み込む、2017年2月10日出願の米国仮特許出願第62/457787号の利益を主張するものである。
【0003】
現在の回折に基づくオーバーレイ(DBO)マークまたはターゲットは、各層に1つずつ、2つの位置合わせされる回折格子を有するセルで構成される。これらのセルからの回折信号を使用して、2つの層の間の変位(オーバーレイ)を計算する。上記のセルの測定した非対称性を使用して、一方の格子の他方の格子に対する変位を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2007/0229829号
【文献】米国特許出願公開第2013/0342831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、DBO(回折に基づくオーバーレイ)測定における格子の非対称性の影響を軽減する効率的で経済的な方法および機構を提供し、それによりオーバーレイ散乱計測の技術分野の改善をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下は、本発明の最初の理解を提供する簡単な概要である。この概要は、必ずしも重要な要素を特定したり、本発明の範囲を限定したりするものではなく、単にその後の説明のための導入として用いられるものである。
【0007】
本発明の1つの態様は、SCOL(散乱計測オーバーレイ)ターゲットであって、少なくとも1つの測定方向に沿って、少なくとも2つのウェハ層に特定の粗ピッチを有する周期構造を有する2つのセルであり、それぞれの層にある上側の周期構造と下側の周期構造の間のオフセットが反対向きである、2つのセルと、2つの層のうちの異なる一方に特定の粗ピッチを有する周期構造をそれぞれ有し、2つの層のうちの他方にサブ分解能周期構造をそれぞれ有する、2つのセルと、を含む、SCOLターゲットを提供する。
【0008】
これらの、本発明の上記の、追加の、および/またはその他の態様および/または利点について、以下の詳細な説明に記載するが、場合によっては、以下の詳細な説明から推測することができ、かつ/または本発明の実施によって学習することもできる。
【0009】
本発明の実施形態がより深く理解されるように、また本発明の実施形態をどのように実施することができるかを示すために、次に、単に例示のみを目的として、添付の図面について述べる。これら全ての図面において、同じ番号は、対応する要素を指している。
【0010】
添付の図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、格子の非対称性を有する散乱計測ターゲットを示すハイレベル概略図であり、ターゲットの2つのセルの部分を示す図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、計測ターゲットと、それらの従来技術のターゲットからの導出と、測定構成とを示すハイレベル概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による、計測ターゲット内の追加のセル対を示すハイレベル概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による計測ターゲットを示すハイレベル概略図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による計測測定設定を示すハイレベル概略図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による方法を示すハイレベル流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、本発明の様々な態様について説明する。説明のために、具体的な構成および詳細を記載して、本発明が完全に理解されるようにする。ただし、本発明は、本明細書に与える具体的な詳細がなくても実施することができることも、当業者には明らかであろう。さらに、本発明が不明瞭にならないようにするために、周知の特徴は省略または簡略化されている場合もある。特に図面に関しては、図示の詳細は例示であり、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の原理および概念の特徴の最も有用で容易に理解できると考えられる説明を提供するために与えたものである。これに関連して、本発明の基本的な理解のために必要となる以上の本発明の構造的詳細を示そうとするものではなく、この説明を図面とともに考慮すれば、本発明のいくつかの形態を実際にどのようにすれば実施することができるかは、当業者には明らかである。
【0013】
本発明の少なくとも1つの実施形態について詳細に説明する前に、本発明の適用が、以下の説明に記載する、または図面に図示する構造および構成要素の配置の詳細に限定されることはないことを理解されたい。本発明は、様々な方法で実施または実行される可能性がある他の実施形態、および開示する実施形態の様々な組合せにも適用可能である。また、本明細書で利用する言い回しおよび用語は、説明のためのものであり、限定的なものとして解釈すべきではないことも理解されたい。
【0014】
特に指定がない限り、以下の説明から明らかであるように、本明細書全体で、「処理する」、「計算する」、「算出する」、「決定する」、「強化する」、または「導出する」などの用語を利用した記述は、コンピューティングシステムのレジスタおよび/またはメモリ内の電子量などの物理量として表現されるデータを操作および/または変換して、コンピューティングシステムのメモリ、レジスタ、またはその他のそのような情報記憶、伝送もしくは表示デバイスなどにおける内の物理量として同様に表現される他のデータにするコンピュータまたはコンピューティングシステム、あるいはそれらに類する電子コンピューティングデバイスのアクションおよび/またはプロセスを指していることが分かる。
【0015】
本発明の実施形態は、DBO(回折に基づくオーバーレイ)測定における格子の非対称性の影響を軽減する効率的で経済的な方法および機構を提供し、それによりオーバーレイ散乱計測の技術分野の改善をもたらす。ターゲットの格子の非対称性の影響を軽減する、改良したオーバーレイターゲットの設計および測定技術を提供する。格子の非対称性は、製造プロセスの性質によって生じるものであり、非対称性が厳密に層間の変位(オーバーレイ+所期のオフセット)によって生じると仮定している現在の方法では考慮されていない。その結果として、従来技術では、格子にさらに非対称性が生じると、さらに変位が生じたものとして誤って解釈されてしまい、オーバーレイの不正確な測定につながってしまう。発明者等は、格子の非対称性によるオーバーレイ推定の不正確性を特徴付け、それを防止する方法を発見した。
【0016】
回折に基づくオーバーレイ測定における格子の非対称性の影響を軽減する、散乱計測のオーバーレイターゲット、ならびにターゲットの設計および測定方法を提供する。ターゲットは、分解可能な粗ピッチの格子に取って代わるサブ分解能構造を有する追加のセルを含み、かつ/または粗ピッチの周期性を有する交互に現れるサブ分解能構造を含み、格子の非対称性によって生じる不正確性を分離して除去する。測定方法は、直交偏光照明を利用して、設計したターゲット構造に関する様々な測定方向の格子の非対称性の影響を分離する。
【0017】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、格子の非対称性を有する散乱計測ターゲット80を示すハイレベル概略図であり、ターゲット80の2つのセル80Aおよび80Bの部分を示している。
【0018】
図示の重ね格子システム80は、周期構造86A、87A、86B、87Bを、対応するターゲットセル80A、80Bの少なくとも2つの層81、82に含む。各セルの周期構造は、Δ=オフセット+オーバーレイだけ互いに変位しており、この変位は、セル80Aと80Bの間で反対向きとなる所期のオフセット(
図1には±f
0として示す)と、この計測測定によって測定するオーバーレイ(
図1には明示的には図示せず)とを含む。層81の格子86Aおよび86B、ならびに層82の格子87Aおよび87Bは、hで示される高さだけ離れている。上側の格子および/または下側の格子に格子の非対称性がある状態では、測定される計測信号の+1次および-1次の回折係数が等しくならない。上側の格子の+1次および-1次の回折係数をそれぞれr
+およびr
-と表し、下側の格子の+1次および-1次の回折係数をそれぞれr’
+およびr’
-と表す。格子の非対称性により、回折係数は、振幅および位相が両方とも異なる可能性があり、したがって、上側の格子についてはr
±1=(ρ±δρ)e
i(ψ±δψ)の形で表現され、下側の格子についてはr’
±1=(ρ’±δρ’)e
i(ψ’±δψ’)の形で表現される。数式1は、多重散乱の影響を無視した、格子の非対称性の存在下での+1次および-1次の回折次数の信号の強度を表している。記号φ
m(x、y)は、2つの格子の間の光路差によりm次によって生じる位相の最低次を提供する。
【数1】
【0019】
数式2は、位相がΦ(x、y)=ψ-ψ’-φ
0(x、y)―φ
+1(x、y)で定義されるものとして、差分信号D(x、y)=I
+1(x、y)-I
-1(-x、-y)を表している。
【数2】
【0020】
数式3は、以下の仮定の下での数式2の差分信号の近似を与える数式である。(i)位相摂動δψ-δψ’のオーバーレイ精度バジェットへの寄与は、δρおよびδρ’で表される振幅摂動の寄与よりはるかに小さいので、また位相摂動はわずかに非対称なターゲットの場合の対称中心の定義の不確実性に対応する幾何学的不明瞭性の範囲内であるので、無視できる。(ii)測定条件(例えば波長、偏光など)は、n位相Φ(x、y)をπ/2±πn(nは整数)に近づけて、sinΦ(x、y)を1として近似した、cosΦ(x、y)によって決まる項
【数3】
を最小にして、無視できる大きさにするように選択することができる。(iii)差分信号を最低次に近似する(Θ(δρδρ’)の桁の項は無視する)。
【数4】
【0021】
数式3は、差分信号が、従来技術のオーバーレイ測定アルゴリズムで仮定される理想信号から得られるものであり、追加の不正確性をオーバーレイ推定に導入することを示している。発明者等は、数式3において、項ρδρ+ρ’δρ’は、例えば格子の非対称性などによるオーバーレイ測定の不正確性の推定を提供し、項
【数5】
は、Δの推定によるオーバーレイ測定の基礎を提供するということを指摘する。以下で、発明者等は、従来技術では依然として考慮されないままとなっている格子の非対称性を考慮する方法を提示する。
【0022】
図2Aは、本発明のいくつかの実施形態による、計測ターゲット100と、それらの従来技術のターゲット90からの導出と、測定構成とを示す、ハイレベル概略図である。以下の解決策では、上記で導出し、数式3に示した、例えば格子の非対称性によって導入される不正確性を扱う。従来技術のターゲット90は、各測定方向に2つのセル、すなわち測定方向Xのセル91、および測定方向Yのセル92を有するものとして概略的に示してあり、各セル対は、各セルの層間で設計オフセットが反対になっている周期構造を有するセル80A、80Bについての
図1に示す原理に従って設計されている。
【0023】
特定の実施形態では、開示するターゲット100は、従来技術のターゲット90と同様に設計された測定方向Xのセル対101、および測定方向Yのセル対102と、測定方向Xのセル111A、111B、および測定方向Yのセル112A、112Bをそれぞれ有する追加の2つの対111および112とを含む(この追加は矢印210で示す。後述の
図5参照)。
【0024】
図2Bは、本発明のいくつかの実施形態による、計測ターゲット100のセルの追加対111を示すハイレベル概略図である。各セル対111において、一方のセル(例えばX方向の111A)では、上側の格子が、適当に設計されたサブ分解能格子116Aで置換されており、他方のセル(例えばX方向の111B)では、下側の構造が、それとは異なる適当に設計されたサブ分解能構造117Bで置換されている。これら2つのセルを測定することにより、以下のように格子の非対称性による不正確性を補正することが可能になる。最低次まで、重ね格子から戻ってくる信号は、単一散乱モデルで与えられる、すなわち、上側の格子から回折された光と下側の格子から回折された光の干渉によって与えられる。下側の格子117Aしか備えていないセル111Aの差分信号は、D(x、y)=4|E
0|
2ρ’δρ’であり、上側の格子116Bしか備えていないセル111Bの差分信号は、D(x、y)=4|E
0|
2ρδρであることが分かる。したがって、追加のセルは、ターゲット100のセル101の測定とは無関係に格子の非対称によって生じる不正確性の推定を提供する。したがって、セル101から得られる非理想的な差分信号から、セル111から得られる不正確性の推定を引くことによって、非対称性が存在しない場合の信号から逸脱する数式3の第1および第2の項ρδρ+ρ’δρ’を除去する。次いで、共振から遠い波長を選択して、このアルゴリズムで仮定される理想的な信号に近い信号を残すことによって、第3の項
【数6】
を、最小にすることができる。同様のセル112(111A、111Bに対応するY方向の112A、112B)および測定を、セル102の測定に関して、Y方向にも適用することができる。
【0025】
図2Bに示すように、セル11Aのサブ分解能格子116A、およびセル111Bのサブ分解能格子117Bは、300nm未満、200nm未満、または100nm未満など(代表的なデバイスのピッチの非限定的な例)のサブ分解能ピッチを有する周期構造(1つまたは複数)を含む。サブ分解能格子116A、117Bは、両層81、82の粗い分解能ピッチ(例えば500nm超)を有する周期構造を有するセル101、102と同一、または同様の、あるいはそれらとの間に制御された相違を有するセル111および112のスタックの光学的性質を維持するように構成することができる。サブ分解能構造116A、117Bは、このスタックの光学的性質に関して、格子86A、87B(
図1参照)に取って代わるように構成することができる。例えば、ターゲット線(周期構造117A、116Bの要素)と平行に偏光された照明放射を使用して、サブ分解能周期構造116A、117Bが、元のターゲット周期要素86A、87Bと同じ充填率を有するように構成する、つまりセル111、112についてセル101、102と同じ有効誘電率、すなわちε
eff=ε
1*η+ε
2*(1-η)を提供するように構成することもできる。ここで、ε
1は、格子の材料の誘電率、ε
2は、周囲の材料の誘電率、ηは、充填率を示している。格子線に対して直交する向きの電界がある場合には、有効媒質近似は、
【数7】
となり、元のターゲット格子86A、87Bにそれぞれ取って代わる格子116A、117Bの対応する充填率(η
1)が、条件
【数8】
を満たすようになっている。ただし、この条件は、いかなる波長についても満たされない。
【0026】
したがって、それぞれX方向およびY方向に周期構造を有するターゲット111および112は、
図2Aに概略的に示すように、照明放射120の直交偏光121、122でそれぞれ測定することができる。測定は、直交変更に対応する2つの独立したチャネルを使用して実行することができる(対応する照明スポットを、円121、122で概略的に示してある)。
【0027】
特定の実施形態では、ターゲット100は、例えばセル101、102、111、112の空間的配置に関して、従来技術のターゲット90におけるセル91、92の空間的配置に対応する、例えば90A、110A、110Bで表されるセルのグループを有するように構成されることがある。このような構成では、グループ(ターゲットの一部)90Aの空間的編成が、従来技術のターゲット90に対応することもある。これは、グループ(ターゲットの一部)110A、110Bについても同様である。さらに、特定の実施形態では、このようなターゲットの構成は、対応する偏光を有する2つの照明スポット120を使用した2つのセルの同時測定が可能になり、それを利用して測定できるように、例えば追加の1つの格子XをY偏光で(例えばセル111Aを照明スポット122で)測定し、重ね格子のYセルをX偏光で(例えばセル102を照明スポット121で)測定するように構成されることもある。特定の実施形態では、ターゲット100は、セル111および102、ならびに101および112の同様の空間的配置をそれぞれ有する反復グループ(ターゲットの一部)110Aおよび110Bを有するように構成され、照明場を一方から他方にシフトさせることによって類似するターゲットの一部110A、110Bを連続的に測定することができるようにして(矢印で示される照明シフト123として概略的に示してある)、その結果として得られる8セルターゲット(追加のセル111、112を含む)を、従来技術のターゲット90を1つの測定スポットを使用して測定するのと同じ時間内に(2つの照明スポット121、122を使用して)測定することができるようにして、測定手続きを簡略化し、従来技術のターゲット90の測定からの操作の変更を最小限に抑えるようにすることもできる。
【0028】
要約すると、特定の実施形態では、SCOLターゲット100は、少なくとも1つの測定方向に沿って、少なくとも2つのウェハ層81、82に、特定の粗ピッチを有する周期構造86A、86B、および87A、87Bを有する2つのセル101(および/または102)をそれぞれ含むことがある。セル101(および/または102)は、それぞれの層(例えば
図1に概略的に示す)にある上側の周期構造86A、86Bと下側の周期構造87A、87Bの間のオフセットが反対向き(±f
0)であることがあり、2つのセル111(および/または112)はそれぞれ、2つの層81、82のうちの異なる一方に、特定の粗ピッチを有する周期構造116B、117Aを有し、かつ2つの層82、81のうちの他方に、サブ分解能周期構造116A、117Bを有することがある(例えば
図2Bに概略的に示す)。4つのセル101、111(および/または102、112)は、例えば
図2Aに概略的に示すように、XおよびYの2つの測定方向に沿って、上述の方式を両方向X(4つのセル101、111を有する)およびY(4つのセル102、112を有する)に繰り返して、設計することができる。特定の実施形態では、8個のセル(セル101、102、111、112のそれぞれに2つずつ)を、測定方向に関して同じ空間的配置を有する4つのセルをそれぞれ含む、すなわち2つのX方向セルおよび2つのY方向セルをそれぞれ含む、2つのグループ110A、110Bに配置することもできる(例えば、1つのグループにはセル111、102、別のグループにはセル101、112など。
図2A参照)。開示するターゲット100のうちの任意のターゲットのターゲット設計ファイル99も、やはり本開示の一部である。
【0029】
サブ分解能周期構造を有するセル111、112を追加することにより、格子の非対称性による不正確さを補償することが可能になり、標準的なDBO技術より精度が向上するので、有利である。2つの追加のセルにおいて格子86A、87Bの代わりにサブ分解能構造116A、117Bを使用することにより、膜スタックの性質が改変されないことが保証され、それにより理想信号から逸脱する項がより良好に打ち消されることになり、したがってオーバーレイ精度が向上する。
【0030】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による計測ターゲット100を示すハイレベル概略図である。ターゲット100は、交互に入れ替わる測定方向X、Yに沿って周期構造をそれぞれ有する、すなわち層81では測定方向Xに沿って周期構造131Aを有し、測定方向Yに沿って周期構造132Aを有し、層82では測定方向Xに沿って周期構造131Bを有し、測定方向Yに沿って周期構造132Bを有する、少なくとも2つの層81、82を含み、各周期構造が、分解能未満のピッチ(例えば代表的なデバイスのピッチの非限定的な例としては、300nm未満、200nm未満、または100nm未満など)でセグメント化され、これらの周期構造が、粗ピッチ(例えば600nmから1000nmの間)で交互に生じている。粗ピッチは、計測ツールによって十分に分解されるように設定され、サブ分解能のセグメント化ピッチは、ターゲット100全体で(X方向およびY方向の両方に)一様であり、計測ツールの分解能しきい値未満である。
【0031】
ターゲット100は、2つの直交偏光方向121、122の照明放射の間でπの半ピッチシフト124がある(ピッチ/2のシフト124は、πの位相シフトと等価である)1次の回折次数の位相を提供しながら、1次の回折次数で同じ振幅を提供するように設計されることがある。したがって、偏光の変化により、差分信号D(x、y)についての数式3(便宜のため以下に再掲する)の
【数9】
の符号は(数式3の第1および第2の項ρδρ+ρ’δρ’に関して)変化するが、ターゲットの非対称性による散乱は、偏光の変化にわずかしか依存しない(これは、サブ分解能のセグメント化を最小の設計規則ピッチで設計することができ、非対称な妨害が大きな粗ピッチを特徴とする散漫なオブジェクトであるために、非対称性の大部分は、ターゲット100のセグメント化部分内には形成されないからである)。
【数10】
【0032】
その結果として、
図3に示す原理に従って(両層81、82に)オーバーレイ値が2つの直交偏光について計算したオーバーレイ値の和の半分を生じるように設計され、それに応じて測定されるターゲット100には、ターゲットの非対称性の影響がない。
【0033】
要約すると、特定の実施形態では、SCOLターゲット100は、少なくとも2つのウェハ層81、82に、サブ分解能ピッチを有する周期構造131A、131B、132A、132Bを含むことがあり、これらの周期構造が、
図3に概略的に示すように、対応する測定方向に交互に現れて、粗ピッチを生じる。開示するターゲット100のうちの任意のターゲットのターゲット設計ファイル99も、やはり本開示の一部である。
【0034】
ターゲット100は、ターゲットの非対称性の影響を解消するように構成して測定することができるので有利であり、
図3に示す原理に従って設計されるターゲット100の実施形態では、
図2Aに示す原理に従って設計されるターゲット100より、必要とされるターゲット領域が小さい。
【0035】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による計測測定設定を示すハイレベル概略図である。計測ツール70は、通常は、照明放射120を計測ターゲット100(ターゲット設計ファイル99を用いて作製される)上に送達する照明アーム120Aと、その結果得られる信号、SCOLターゲット100の場合には、ターゲット100で散乱される放射の回折次数(通常は瞳面における0次、-1次、および+1次)を測定する測定アーム125とを有する。計測モジュール140は、測定信号を受信し、本明細書に開示するように、それらを処理して、ターゲットの層81と82の間のオーバーレイなどの計測メトリクス(1つまたは複数)を導出する。
【0036】
図5は、本発明のいくつかの実施形態による方法200を示すハイレベル流れ図である。この方法の段階は、任意選択で方法200の実施を可能にするように構成することができる上述のターゲット100に関して実行することができる。方法200は、その設計面および/または測定面において、少なくとも部分的には、少なくとも1つのコンピュータ・プロセッサによって、例えば計測モジュール140で、実施することができる。特定の実施形態は、方法200の関連する段階を実行するように構成されたコンピュータ可読プログラムが実装されているコンピュータ可読ストレージ媒体を含むコンピュータプログラム製品を含む。特定の実施形態は、方法200の実施形態によって設計されるそれぞれのターゲットのターゲット設計ファイル、および/または方法200の測定結果を含む。方法200は、順不同で、以下の段階を含む可能性がある。
【0037】
方法200は、本明細書に開示するように、ターゲットの設計および測定設定によって格子の非対称性の影響を打ち消す段階(段階205)を含むことがある。
【0038】
特定の実施形態では、方法200は、
図2Aに示すように、1つの層に周期構造を有し、他の層(1つまたは複数)にサブ分解能のフィーチャを有するセルを、SCOLターゲットに追加する段階(段階210)を含むことがある。特定の実施形態では、方法200は、SCOLターゲットに、少なくとも1つの測定方向に沿って、少なくとも2つのウェハ層に特定の粗ピッチを有する周期構造を有する2つのセルを追加する段階を含むことがある。この2つのセルでは、それぞれの層にある上側の周期構造と下柄の周期構造の間のオフセットが反対向きであり、2つのセルはそれぞれ、2つの層のうちの異なる一方に、特定の粗ピッチを有する周期構造を有し、かつ2つの層のうちの他方に、サブ分解能周期構造を有する。SCOLターゲットは、XおよびYの2つの測定方向のそれぞれに沿って2つのセルを有することがあり、追加する段階210は、それに応じてそれらの測定方法のそれぞれのセルについて実行することができる。
【0039】
特定の実施形態では、方法200は、
図2Aに概略的に示すように、ターゲットのセルを同様の空間的関係を有するようにグループ化し、照明スポットをシフトさせることによってそれらのグループを測定する段階(段階220)を含むことがある。特定の実施形態では、方法200は、特定の実施形態では、8個のセルを、4つのセル、すなわち2つのX方向セルおよび2つのY方向セルをそれぞれ含む、2つのグループに配置する段階を含むこともある。これらのグループは、測定方向に関して、同じ空間的配置を有する。
【0040】
方法200は、拡張したSCOLターゲット(例えば上記に開示した追加のセルを有するSCOLターゲット)および/またはそれらのセルを、直交照明偏光を用いて様々な方向に測定する段階(段階250)をさらに含むこともある。例えば直交偏光照明放射120を用いてXおよびYの2つの測定方向に沿ってこれらのセルを測定する。この測定は、直交偏光照明スポットの複数の対によって、周期構造の複数の対について同時に実行することもできる。
【0041】
粗ピッチは、少なくとも500nmまたは600nmである可能性があり、サブ分解能周期構造は、300nm未満、200nm未満、または100nm未満のサブ分解能ピッチを有する可能性がある。
【0042】
特定の実施形態では、方法200は、粗ピッチの半分のピッチで交互に現れる測定方向の周期構造を有するようにターゲットを構成する段階(段階240)と、これらの拡張したターゲットを、直交照明偏光を用いて様々な方向に測定する段階(段階250)とを含むことがある。例えば、方法200は、2つの測定方向に沿った直交偏光照明放射によって、対応する測定方向に交互に現れて粗ピッチを生じる、サブ分解能ピッチを有する周期構造を少なくとも2つのウェハ層に含むターゲットを測定する段階を含むことがある。この測定は、直交偏光照明スポットの複数の対によって、周期構造の複数の対について同時に実行することもできる。
【0043】
以上、本発明の態様について、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品を示す流れ図および/または部分図を参照して説明した。流れ図および/または部分図の各部分、ならびに流れ図および/または部分図の複数の部分の組合せは、コンピュータプログラム命令によって実施することができることは、理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令を、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、またはその他のプログラマブルデータ処理デバイスのプロセッサに提供してマシンを作製して、これらの命令が、コンピュータまたはその他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行されることによって、流れ図および/または部分図、あるいはそれらの一部分に指定する機能/アクションを実施する手段を生じるようにすることができる。
【0044】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、その他のプログラマブルデータ処理装置、またはその他のデバイスに特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ可読媒体に記憶して、コンピュータ可読媒体に記憶されたそれらの命令が、流れ図および/または部分図、あるいはそれらの一部分に指定される機能/アクションを実施する命令を含む製品を生じるようにすることもできる。
【0045】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、その他のプログラマブルデータ処理装置、またはその他のデバイスにロードして、そのコンピュータ、他のプログラマブル装置、またはデバイス上で一連の動作ステップが実行されてコンピュータ実施プロセスを生じ、そのコンピュータ、またはその他のプログラマブル装置上で実行されたそれらの命令が、流れ図および/または部分図、あるいはそれらの一部分に指定される機能/アクションを実施するプロセスを提供するようにすることもできる。
【0046】
上記の流れ図および図面は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能、および動作を例示するものである。これに関連して、流れ図または部分図の各部分は、指定された論理機能(1つまたは複数)を実施するための1つまたは複数の実行可能命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの一部分を表している可能性がある。また、いくつかの代替の実施態様では、各部分に記載される機能が、図面に記載されている以外の順序で起こる可能性もあることにも留意されたい。例えば、連続して示してある2つの部分が、実際には実質的に同時に実行されることもあり、あるいは関連する機能によっては、逆の順序で実行されることもある。また、部分図および/または流れ図の各部分、ならびに部分図および/または流れ図の各部分の複数の部分の組合せは、指定された機能またはアクション、あるいは特殊目的ハードウェアおよびコンピュータ命令の組合せを実行する特殊目的のハードウェア型システムによって実施することもできることに留意されたい。
【0047】
上記の説明では、実施形態は、本発明の例または実施態様である。「1実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、または「いくつかの実施形態」という表現が様々な箇所に見られるが、必ずしもそれら全てが同じ実施形態を指しているわけではない。本発明の様々な特徴を1つの実施形態の文脈で説明している場合もあるが、それらの特徴は、別個に提供されることもあるし、あるいは任意の適当な組合せで提供されることもある。逆に、本明細書では、分かりやすくするために別個の実施形態の文脈で本発明について説明している場合もあるが、本発明は、1つの実施形態で実施されることもある。本発明の特定の実施形態は、上記に開示した異なる実施形態の特徴を含むこともあり、特定の実施形態は、上述の他の実施形態の要素を組み込むこともある。特定の実施形態の文脈で本発明の要素を開示していても、それらの使用がその特定の実施形態のみに限定されるものと解釈すべきではない。さらに、本発明は、様々な方法で実行または実施することができること、および本発明は、上記の説明で概説した実施形態以外の特定の実施形態で実施することもできることを理解されたい。
【0048】
本発明は、これらの図面、または対応する説明に限定されない。例えば、流れは、図示するブロックまたは状態のそれぞれを経由する必要はなく、図示および説明と全く同じ順序で進行する必要もない。本明細書で使用する技術用語および科学用語の意味は、特に定義されていない限り、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解する通りであるものとする。限られた数の実施形態に関連して本発明について説明したが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではなく、好ましい実施形態のうちの一部の例示として解釈すべきものである。その他の可能な変形形態、修正形態、および応用形態も、本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、上記の説明によって限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲、およびそれらの法律的均等物によって限定されるものとする。