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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコール系繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/50 20060101AFI20221121BHJP
   D01F 6/14 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
D01F6/50 Z
D01F6/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020553844
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041887
(87)【国際公開番号】W WO2020090649
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2018206843
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 寿
(72)【発明者】
【氏名】和志武 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】関谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 了慶
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-042059(JP,B1)
【文献】特開平01-298274(JP,A)
【文献】特開平09-157944(JP,A)
【文献】特開昭63-050517(JP,A)
【文献】特開昭47-016724(JP,A)
【文献】特開平09-320564(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049757(WO,A1)
【文献】特開2005-194666(JP,A)
【文献】特開2005-009029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0299121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00-9/04
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系ポリマーと吸着剤とを含むポリビニルアルコール系繊維であって、
前記ポリビニルアルコール系ポリマー100質量部に対して、前記吸着剤の割合が30~500質量部であり、
前記ポリビニルアルコール系繊維中のポリビニルアルコールの結晶化度が30~60%であり、
繊維径が5~1000μmであるとともに、比表面積が10~2000m/gであり、
繊維膨潤度が150~600%である
ことを特徴とするポリビニルアルコール系繊維。
【請求項2】
前記吸着剤の有効活用率が50~100%であることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコール系繊維。
【請求項3】
前記吸着剤が層状ケイ酸塩、多孔質炭素材料、及びアルミノケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリビニルアルコール系繊維。
【請求項4】
前記吸着剤の平均粒子径が0.1~100μmであることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール系繊維。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール系繊維を少なくとも一部に含む繊維構造体。
【請求項6】
被処理体中に含まれる被吸着物が吸着する吸着体であることを特徴とする請求項に記載の繊維構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤を含有するポリビニルアルコール系繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理液中に含まれる被吸着物を吸着させて除去するための吸着剤が使用されている。
【0003】
例えば、河川水、下水処理水、工場排水中に含まれる、リン、ホウ素、ヒ素等を選択的に吸着させて除去するための吸着剤として、硫酸アルミニウム添着活性アルミナ等の無機イオン吸着体を使用した水の浄化方法が提案されている。この無機イオン吸着体はエチレンビニルアルコール共重合体等の有機高分子樹脂に担持されており、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含む多孔性の成形体を使用することにより、被吸着物の処理速度が向上すると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-297382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の成形体においては、吸着剤が疎水性ポリマーにより覆われている部分があるため、十分な吸着性を発揮できないという問題があった。また、吸着能力が十分に発揮されないと、必要な吸着能力を発揮させるために、吸着剤を過剰に用いる必要があるため、多大な処理コストが必要となる場合や、設備が大型化するという問題があった。また、上記特許文献1に記載の成形体は実質的に球状であるため、用途や使用方法に応じた形態への加工が困難であり、貯留槽やカラム等の専用設備を用いた処理方法に使用が限定され、設備導入にかかる費用面やスペース面での負担があった。更に、成形体が球状であるため、処理後の吸着剤の回収が煩雑であり、多大な手間を要することから取扱性に問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、吸着性及び取扱性に優れたポリビニルアルコール系繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のポリビニルアルコール系繊維は、ポリビニルアルコール系ポリマーと吸着剤とを含むポリビニルアルコール系繊維であって、ポリビニルアルコール系ポリマー100質量部に対して、吸着剤の割合が30~500質量部であり、前記ポリビニルアルコール系繊維中のポリビニルアルコールの結晶化度が30~60%であり、繊維径が5~1000μmであるとともに、比表面積が10~2000m/gであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸着性及び取扱性に優れるポリビニルアルコール系繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1において作製したポリビニルアルコール系繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】実施例5において作製したポリビニルアルコール系繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリビニルアルコール系繊維(以下、「PVA系繊維」と記載する。)は、ポリビニルアルコール系ポリマー(以下、「PVA系ポリマー」と記載する。)と吸着剤とを含む。
【0011】
<PVA系ポリマー>
本発明のPVA系繊維を構成するPVA系ポリマーは、ビニルアルコールユニットを主成分とするものであれば特に限定されず、他の構成単位を有していてもかまわない。このような構造単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類、アクリル酸及びその塩とアクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類、ポリアルキレンオキシドを側鎖に有するアリルエーテル類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル、マレイン酸およびその塩またはその無水物やそのエステル等の不飽和ジカルボン酸等がある。このような変性ユニットの導入法は共重合による方法でも、後反応による方法でもよい。
【0012】
また、本発明のPVA系ポリマーのけん化度は、特に限定されるものではないが、得られる繊維の結晶性及び配向性の観点から、98モル%以上が好ましく、99モル%以上であると更に好ましい。また、けん化度が99.7モル%以上であると、耐熱水性に優れるので特に好ましい。
【0013】
また、本発明のPVA系ポリマーの重合度も、特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的特性や寸法安定性等を考慮し、30℃の水溶液の粘度から求めた平均重合度が1200~20000のものが好ましい。高重合度のものを用いると、強度、耐湿熱性等の点で優れるため好ましいが、ポリマーを製造する際のコストや繊維化を行う際のコスト等の観点から、平均重合度が1500~5000のものが特に好ましい。
【0014】
なお、ここで言う「平均重合度」は、JIS K 6726:1994の規定に準拠して、30℃の水溶液の粘度から求めることができる。
【0015】
また、PVA系繊維全体に対するPVA系ポリマーの含有量は、20~77質量%の範囲が好ましい。これは、PVA系ポリマーの含有量が上記範囲未満の場合は、PVA系繊維の形成が困難になる場合があり、PVA系ポリマーの含有量が上記範囲よりも大きい場合は、吸着剤として使用する場合に、吸着性能を十分に発揮できない場合があるためである。
【0016】
なお、PVA系繊維全体に対するPVA系ポリマーの含有量の下限値は、25質量%以上であることがより好ましい。また、PVA系繊維全体に対するPVA系ポリマーの含有量の上限値は、50質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
<吸着剤>
本発明の吸着剤としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されるものではないが、土壌や河川および工場排水、土木用水等の被処理体に含まれる有害な汚染物質(重金属類)や、臭気物質(例えば、研究施設や工場および処理施設から排出される悪臭成分、体液から発生する悪臭成分、薬剤から発生する悪臭成分等)、有機ハロゲン化合物、その他の不要な有機物質等(例えば、食品・飲料中の雑味成分や濁り成分、着色物や、食品加工・繊維加工工程等から排出される難分解性有機物等)を吸着するものが使用される。
【0018】
例えば、炭素系、ゼオライト系、ケイ酸塩系、金属化合物系のものが例示される。炭素系としては、臭気物質、有機ハロゲン化合物、残留塩素、その他の有毒物および有害物等を除去する活性炭等の多孔質炭素材料が挙げられる。ゼオライト系としては、アンモニア、有機アミンやセシウム、ホウ素、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属イオンを除去する人工ゼオライトおよび天然ゼオライトが挙げられる。ケイ酸塩系としては、ベントナイト等の層状ケイ酸塩や、アルミノケイ酸塩が挙げられる。金属化合物系としては、鉛、リン、ヒ素、カドミウム等の重金属類を除去する鉄系、マグネシウム系、カルシウム系、アルミニウム系等の金属酸化物および金属水酸化物等が挙げられる。
【0019】
また、本発明においては、これらの吸着剤を単独、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、本発明のPVA系繊維においては、吸着剤の含有量が、PVA系ポリマー100質量部に対して30~500質量部である。これは、吸着剤の含有量が上記範囲未満の場合は、PVA系ポリマーによる吸着剤の被覆率が高くなるため、処理液の浸透率が低下し、結果として、処理液中に含まれる被吸着物に対する吸着性を十分に発揮できない場合があるためである。また、吸着剤の含有量が上記範囲を超える場合は、PVA系繊維において繊維形状の形成(即ち、繊維化)が困難になるとともに、多くの吸着剤がPVA系繊維から脱落してしまい、処理液へ混入して取扱性が低下する場合があるためである。
【0021】
即ち、吸着剤の含有量を、PVA系ポリマー100質量部に対して30~500質量部に設定することにより、吸着剤が繊維から脱落して処理液に混入するという不都合を生じることなく、被吸着物を吸着するための微細な孔が形成され、吸着性に優れたPVA系繊維を得ることが可能になる(後述の実施例における図1図2を参照)。
【0022】
なお、吸着剤の含有量の下限値は、PVA系ポリマー100質量部に対して100質量部以上であることが好ましい。また、吸着剤の含有量の上限値は、PVA系ポリマー100質量部に対して300質量部以下であることが好ましい。
【0023】
また、吸着剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1~100μmであることが好ましい。これは、上記範囲未満の場合は、繊維に微細な孔が形成されにくくなるため、繊維への処理液の浸透性が低下し、吸着剤の吸着性が低下する場合があるためである。また、上記範囲を超える場合は、PVA系繊維において繊維形状の形成が困難になるとともに、多くの吸着剤がPVA系繊維から脱落してしまい、処理液へ混入して取扱性が低下する場合があるためである。
【0024】
なお、吸着剤の平均粒子径の下限値は、0.5μm以上であることがより好ましい。また、吸着剤の平均粒子径の上限値は、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0025】
ここで言う「平均粒子径」とは、50%粒径(D50)を指し、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置(日機装(株)製、ナノトラック(登録商標)粒度分布測定装置UPA-EX150)等により測定できる。
【0026】
<PVA系繊維>
本発明のPVA系繊維は繊維内部に細孔を有しているため、吸着対象物が繊維内部にまで急速に浸透し、対象物との接触面積が大きいことから高い吸着効果が発揮される。また、本発明のPVA系繊維の繊維中のPVAの結晶化度は30~60%である。この範囲の結晶化度を有するPVA系繊維は、適度な親水性を有しているため、PVA部分における処理液の拡散抵抗が小さくPVAに被覆された状態でも吸着剤の性能が損なわれることがない。また、適度な強度を有するとともに、用途に応じて綿状、不織布、織布、紙等、様々な形態への加工が可能になる。一方、PVA系繊維の繊維中のPVAの結晶化度が上記範囲未満であると、処理の際にPVAの溶出や吸着剤の脱落が起こり、処理液の濁度が著しく増加するため取扱性に乏しくなる。また、PVA系繊維の繊維中のPVAの結晶化度が上記範囲を超えると、適度な親水性が損なわれ、処理液の浸透性が悪く吸着性能が損なわれる。
【0027】
即ち、PVA系繊維の繊維中のPVAの結晶化度を30~60%に設定することにより、吸着性能を損なうことなく、形態加工性、取扱性を向上させることができる。
【0028】
なお、PVA系繊維の結晶化度の下限値は、40%以上であることが好ましい。また、PVA系繊維の結晶化度の上限値は、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。この結晶化度は後述の方法で求めることができる。
【0029】
また、本発明のPVA系繊維の繊維径は、5~1000μmである。これは、PVA系繊維の繊維径が上記範囲未満では加工および取り扱いの際の十分な強度が得られない場合があり、また、上記範囲を超えると柔軟性が乏しく加工が困難となる場合があるためである。
【0030】
なお、PVA系繊維の繊維径の下限値は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、PVA系繊維の繊維径の上限値は、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明のPVA系繊維の比表面積は10~2000m/gである。これは、上記範囲未満の場合は、繊維内細孔が少なすぎるため、処理液の浸透性が低く吸着速度が著しく低下する場合があり、また、上記範囲を超える場合は、繊維内細孔が多すぎるため繊維の加工性が低下したり吸着剤の脱落が起こる場合があるためである。
【0032】
なお、PVA系繊維の比表面積の下限値は、20m/g以上であることが好ましく、40m/g以上であることがより好ましい。また、PVA系繊維の比表面積の上限値は、1000m/g以下であることが好ましく、500m/g以下であることがより好ましい。この比表面積は後述の方法で求めることができる。
【0033】
即ち、PVA系繊維の繊維径を5~1000μmに設定するとともに、比表面積を10~2000m/gに設定することにより、取扱性及び吸着性に優れたPVA系繊維を得ることが可能になる。
【0034】
本発明のPVA系繊維の繊維膨潤度は、150~600%であることが好ましい。これは、繊維膨潤度が上記範囲未満の場合は、処理液の浸透性が低下するため、吸着性が低下する場合があるためである。また、繊維膨潤度が上記範囲を超える場合は、繊維自体が多量の処理液を吸液してしまうため、繊維の膨潤に伴う寸法変化により、吸着処理後の回収や交換が困難になるとともに、PVA系樹脂の溶出や吸着剤がPVA系繊維から脱落しやすくなるため、取扱性が低下する。更には、処理液が通過する隙間が小さくなり、通液性が低下する。
【0035】
即ち、PVA系繊維の繊維膨潤度を150~600%に設定することにより、取扱性及び通液性の低下を生じることなく、吸着性に優れたPVA系繊維を確実に得ることが可能になる。
【0036】
なお、PVA系繊維の繊維膨潤度の下限値は、200%以上であることがより好ましい。また、PVA系繊維の繊維膨潤度の上限値は、500%以下であることがより好ましく、400%以下であることが更に好ましい。
【0037】
ここで言う「繊維膨潤度」とは、後述の式(1)を用いて算出される繊維の膨潤度のことを言う。
【0038】
本発明のPVA系繊維における吸着剤の有効活用率は、50~100%であることが好ましい。これは、有効活用率が上記範囲未満の場合は、吸着性が低下するため、多量の繊維を用いて処理しなければならない場合があるためである。
【0039】
即ち、PVA系繊維の有効活用率を50~100%に設定することにより、取扱性の低下を生じることなく、吸着性に優れたPVA系繊維を確実に得ることが可能になる。
【0040】
なお、PVA系繊維の有効活用率の下限値は、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0041】
ここで言う「有効活用率」とは、後述の式(3)を用いて算出される吸着剤が活用される割合のことを言う。
【0042】
このように、本発明のPVA系繊維は、吸着剤との親和性に優れ、かつ親水性の高いPVA系ポリマーを樹脂成分とし、微粒子状の吸着剤が均一かつ高い含有率で含有されているため、取扱性及び吸着性に優れたPVA系繊維を得ることが可能になる。
【0043】
本発明のPVA系繊維は、PVA系ポリマー及び吸着剤を含む紡糸原液を溶液紡糸、具体的には、湿式紡糸、乾湿式紡糸、乾式紡糸のいずれかの紡糸方法にて製造される。紡糸原液に用いる溶媒としては、PVA系繊維の製造に際して、従来、用いられている溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、水、またはグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類、ジエチレントリアミン、ロダン塩などの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
この中でも、供給性、環境負荷への影響の観点から、DMSO又は水が特に好ましい。紡糸原液中のポリマー濃度は、PVA系ポリマーの組成や重合度、溶媒によって異なるが、6~60質量%の範囲が一般的である。
【0045】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはPVA系ポリマー及び吸着剤以外にも、目的に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤などの添加剤などが含まれていてもよい。
【0046】
また、本発明のPVA系繊維は、ステープルファイバー、ショートカットファイバー、フィラメントヤーン、紡績糸などのあらゆる繊維形態で用いることができる。また、繊維の断面形状に関しても特に制限はなく、円形、中空、あるいは星型等の異型断面であってもかまわない。
【0047】
また、本発明の繊維を他の繊維と混合・併用してもよい。この際、混合・併用できる繊維としては特に限定はなく、例えば、吸着剤を含有しないPVA系繊維や、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、セルロース系繊維等を挙げることができる。また、捲縮綿、織物、不織布、編物、及び紙等の繊維構造体として使用してもよい。
【0048】
本発明の繊維構造体は、食品・飲料用、衣料用、医療用、農業用、水処理用等あらゆる用途に好適に使用でき、液中または蒸気を含む気体中等にて用いることができる。より好ましくは水溶液中において使用され、例えば、処理液中に含まれる被吸着物が吸着する吸着体(例えば、土壌や河川水中に含まれるカドミウム、鉛、ヒ素、フッ素等の重金属類を除去するための吸着用フィルター、食品・飲料中の雑味成分や濁り成分を吸着する吸着用フィルター、着色物を吸着する吸着フィルター、臭い成分を吸着する吸着フィルター)、フィラメント、ショートカット、捲縮綿、織物、編物、紙等の繊維構造体からなる各種吸着用フィルター等に使用することができる。
【0049】
また、本発明のPVA系繊維は、ショートカットした短繊維を処理液タンク中に投入して処理する場合や、捲縮綿をファイバーロッド状に成形し、それに処理液を通液させて処理する場合、フィラメント状に成形して糸巻カートリッジとし、それに処理液を通液させて処理する場合、及び、例えば、筒状やシート状の織物や不織布としたものに処理液を通液させて処理する場合等に使用することができる。
【実施例
【0050】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0051】
(実施例1)
<PVA系繊維の作製>
平均重合度2400、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124)100質量部と、ベントナイト(クニミネ工業(株)製、商品名:クニピアF、平均粒子径:1μm)150質量部とを、580質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0052】
次に、得られた紡糸原液を、孔径0.15mm、ホール数40のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて3倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が5倍となるように乾熱延伸を行い、繊維径が30μmの繊維を得た。
【0053】
得られた繊維を捲縮・カットし、カーディングを行ってシート状物(ウェブ)を形成した後、ニードルパンチ処理を行った。加工性は良好であり、柔軟な不織布が得られた。
【0054】
また、作製した繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。作製した繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。図1に示すように、作製した繊維の表面には、多数の微細孔が形成されていることが分かる。
【0055】
<紡糸性評価>
紡糸性を、以下の評価基準に従って評価した。以上の結果を表1に示す。
乾湿式紡糸の際に、連続した繊維が採取できた:○
乾湿式紡糸の際に、連続した繊維が採取できなかった:×
【0056】
<結晶化度の測定>
[結晶化度(Xc)%]
繊維中のPVAの結晶化度の測定は、Perkin Elmer社製Pyris-1型示差走査型熱量計を用いて、繊維の融解エンタルピーを測定した。測定条件は、昇温速度80℃/分で行い、以下の式より重量結晶化度を算出した。なお、標準物質として、インジウムおよび鉛を用いて、融点、融解熱の補正を行った。以上の結果を表1に示す。
Xc(%)=ΔHp/ΔHcal×100
ΔHp:繊維中のPVAの融解熱(J/g)
ΔHobs:繊維の実測融解熱(J/g)
ΔHp=ΔHobs/(PVAの質量/PVA系繊維の質量)
ΔHcal:完全結晶の融解熱(174.5J/g)
【0057】
<繊維の比表面積評価(BET法)>
流動法BET1点法比表面積測定装置(Quantachrome製Monosorb)を用いて繊維の比表面積を評価した。装置付属の前処理はNガス雰囲気下で、室温で30分の脱気を行なった。測定は、サンプルの入ったU字型セルに混合ガス(N30%、He70%)を流し、サンプル室を液体窒素温度(77K)に冷却しサンプルの表面にNガスのみ吸着させた。以上の結果を表1に示す。
【0058】
<膨潤度の測定>
作製した繊維(約1g)を80℃の真空乾燥機にて24時間乾燥し、絶乾繊維重量を測定した。次に、この繊維を20℃のイオン交換水中に60分間、浸漬させた。次に、この繊維をろ過して取り出し、表面に付着した水滴を、ろ紙を用いて軽く除去した後、浸漬後の繊維重量を測定した。そして、以下の式(1)を用いて、作製した繊維の膨潤度を算出した。以上の結果を表1に示す。
【0059】
[数1]
繊維の膨潤度(%)=(浸漬後の繊維重量÷絶乾繊維重量)×100 (1)
【0060】
<吸着性評価>
吸着性の指標として、水溶性化合物であるメチレンブルーの除去性能(吸着率)を評価した。より具体的には、100ppmのメチレンブルーを含む水溶液500mLに対して1質量%となるように繊維を添加し、30℃にて60分間攪拌した。そして、処理後の液を採取し、分光光度計(HITACHI製、商品名:U-2001 Spectrophotometer)を用いて664nmにおける極大吸収波長を測定し、処理後のメチレンブルーの濃度を算出した。そして、以下の式(2)を用いて、作製した繊維の吸着率を算出した。以上の結果を表1に示す。
【0061】
[数2]
メチレンブルーの吸着率(%)=(未処理液のメチレンブルー濃度-処理後のメチレンブルー濃度)÷(未処理液のメチレンブルー濃度)×100 (2)
【0062】
<濁度の測定>
上述の吸着性評価直後の処理液の上澄みを採取し、濁度計(HACH製 2100Pポータブル濁度計)を用いて濁度(mg/L)を測定した。以上の結果を表1に示す。なお、濁度の値が高いほど、処理液の回収が困難であるため、取扱性に劣ると言える。
【0063】
<有効活用率の測定>
上述の方法にて繊維の吸着率を測定した後、繊維中に含有される吸着剤の量と同量の吸着剤を用い、同様の方法にて吸着剤のみでの吸着率を測定した。そして、以下の式(3)を用いて、繊維中の吸着剤における有効活用率を算出した。
【0064】
[数3]
有効活用率(%)=(繊維の吸着率)÷(吸着剤の吸着率)×100 (3)
【0065】
(実施例2)
<PVA系繊維の作製>
平均重合度2400、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124)100質量部と、ベントナイト(クニミネ工業(株)製、商品名:クニピアF、平均粒子径:1μm)300質量部とを、930質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0066】
次に、得られた紡糸原液を、孔径0.15mm、ホール数40のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて2.5倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が4倍となるように乾熱延伸を行い、繊維径が50μmの繊維を得た。
【0067】
得られた繊維を捲縮・カットし、カーディングを行ってシート状物(ウェブ)を形成した後、ニードルパンチ処理を行った。加工性は良好であり、柔軟な不織布が得られた。
【0068】
そして、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0069】
(実施例3)
<PVA系繊維の作製>
平均重合度2400、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124)100質量部と、ベントナイト(クニミネ工業(株)製、商品名:クニピアF、平均粒子径:1μm)150質量部とを、580質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0070】
次に、得られた紡糸原液を、孔径2.0mm、ホール数1のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて3倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が5倍となるように乾熱延伸を行い、繊維径が400μmの繊維を得た。
【0071】
得られた繊維を捲縮・カットし、カーディングを行ってシート状物(ウェブ)を形成した後、ニードルパンチ処理を行った。加工性は良好であり、柔軟な不織布が得られた。
【0072】
そして、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
<PVA系繊維の作製>
平均重合度2400、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124)100質量部と、ゼオライト(日東粉化工業社製、商品名:SP#600、平均粒子径:2μm)150質量部とを、580質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0074】
次に、得られた紡糸原液を、孔径0.15mm、ホール数40のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。
【0075】
次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて3倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が5倍となるように乾熱延伸を行い、繊維径が80μmの繊維を得た。
【0076】
得られた繊維を捲縮・カットし、カーディングを行ってシート状物(ウェブ)を形成した後、ニードルパンチ処理を行った。加工性は良好であり、柔軟な不織布が得られた。
【0077】
<吸着性評価>
吸着性の指標として、陽イオンであるカルシウムイオンの除去性能(吸着率)を評価した。より具体的には、1ppmのカルシウムイオン標準液500mLに対して2質量%となるように繊維を添加し、30℃にて60分間攪拌した。そして、処理後の液を採取し、ICP発光分光分析装置(PerkinElmer製、OPTIMA4300DV)を用いて処理後のカルシウムイオン濃度を測定した。そして、以下の式(4)を用いて、作製した繊維の吸着率を算出した。以上の結果を表1に示す。
【0078】
[数4]
カルシウムイオンの吸着率(%)=(未処理液のカルシウムイオン濃度-処理後のカルシウムイオン濃度)÷(未処理液のカルシウムイオン濃度)×100 (4)
【0079】
また、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0080】
(実施例5)
<PVA系繊維の作製>
平均重合度2400、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124)100質量部と、活性炭((株)クラレ製、商品名:クラレコールYP-50F、平均粒子径:6μm)150質量部とを、580質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0081】
次に、得られた紡糸原液を、孔径0.15mm、ホール数40のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。
【0082】
次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて3倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が5倍となるように乾熱延伸を行い、繊維径が80μmの繊維を得た。
【0083】
得られた繊維を捲縮・カットし、カーディングを行ってシート状物(ウェブ)を形成した後、ニードルパンチ処理を行った。加工性は良好であり、柔軟な不織布が得られた。
【0084】
また、作製した繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。作製した繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。図2に示すように、作製した繊維の表面には、多数の微細孔が形成されていることが分かる。
【0085】
<吸着性評価>
吸着性の指標として、水溶性化合物であるメチレンブルーの除去性能(吸着率)を評価した。より具体的には、600ppmのメチレンブルーを含む水溶液500mLに対して0.25質量%となるように繊維を添加し、30℃にて60分間攪拌した。そして、処理後の液を採取し、分光光度計(HITACHI製、商品名:U-2001 Spectrophotometer)を用いて664nmにおける極大吸収波長を測定し、処理後のメチレンブルーの濃度を算出した。そして、上述の式(2)を用いて、作製した繊維の吸着率を算出した。以上の結果を表1に示す。
【0086】
また、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0087】
(実施例6)
<PVA系繊維の作製>
平均重合度2400、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124)100質量部と、ベントナイト(クニミネ工業(株)製、商品名:クニピアF、平均粒子径:1μm)50質量部とを、350質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0088】
次に、得られた紡糸原液を、孔径0.15mm、ホール数40のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて3倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が7倍となるように乾熱延伸を行い、繊維径が30μmの繊維を得た。
【0089】
得られた繊維を捲縮・カットし、カーディングを行ってシート状物(ウェブ)を形成した後、ニードルパンチ処理を行った。加工性は良好であり、柔軟な不織布が得られた。
【0090】
そして、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0091】
(比較例1)
PVA系繊維の作製において、ベントナイトの添加量を20質量部にし、全延伸倍率を10倍にしたこと以外は、上述の実施例1と同様にして、PVA系繊維を作製した。
【0092】
そして、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
PVA系繊維の作製において、ベントナイトの添加量を550質量部にしたこと以外は、上述の実施例1と同様にして、乾湿式紡糸を行った。
【0094】
なお、本比較例においては、ベントナイトの含有量が500質量部よりも大きいため、紡糸工程中で糸切れが頻発し、繊維形状の形成(即ち、繊維化)が困難であった。従って、表1に示すように、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行うことができなかった。
【0095】
(比較例3)
平均重合度1700、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-117)100質量部と、ベントナイト(クニミネ工業(株)製、商品名:クニピアF、平均粒子径:1μm)300質量部とを、930質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0096】
次に、得られた紡糸原液を、孔径0.15mm、ホール数40のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて2.5倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、繊維径が65μmの繊維を得た。
【0097】
そして、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0098】
(比較例4)
上述の実施例1と同様にして、ベントナイト100質量部(粉体)の比表面積評価、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0099】
(比較例5)
<PVA系繊維の作製>
平均重合度2400、けん化度98.0モル%のPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124)100質量部と、ベントナイト(クニミネ工業(株)製、商品名:クニピアF、平均粒子径:1μm)150質量部とを、930質量部のDMSO中に分散させ、105℃の窒素雰囲気下にて、PVAを加熱溶解し、紡糸原液を作製した。
【0100】
次に、得られた紡糸原液を、孔径5.0mm、ホール数1のノズルを通して5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。次に、得られた固化糸を20℃のメタノール浴中にて1.1倍の湿延伸を行い、120℃の熱風で乾燥し、230℃の熱風炉にて全延伸倍率が1.2倍となるように乾熱延伸を行い、繊維径が1100μmの繊維を得た。
【0101】
なお、得られた繊維の捲縮処理を行ったが、処理中に繊維の切断が頻繁に発生して加工性に劣り、不織布が得られなかった。
【0102】
そして、上述の実施例1と同様にして、紡糸性評価、結晶化度の測定、繊維の比表面積評価、膨潤度の測定、吸着性評価、濁度の測定、及び有効活用率の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0103】
(比較例6)
上述の比較例5と同様にして紡糸原液を作製した。繊維径3μmの繊維を作製するため、得られた原液を孔径0.06mm、ホール数40のノズルを通して、5℃のメタノール/DMSO(質量比:メタノール/DMSO=70/30)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。しかし、繊維径が5μmよりも小さいため、固化糸の強度は非常に弱く、工程性も悪いため、巻き取りも不可であった。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示すように、実施例1~6におけるPVA系繊維においては、PVA100質量部に対して、吸着剤の割合が30~500質量部であり、ポリビニルアルコールの結晶化度が30~60%であり、更に繊維径が5~1000μmであるとともに、比表面積が10~2000m/gであるため、吸着性及び取扱性に優れていることが分かる。
【0106】
一方、比較例1におけるPVA系繊維においては、ベントナイトの割合が30質量部未満であるため、PVAによるベントナイトの被覆率が高く、処理液の浸透率が低下するため、処理液中に含まれるメチレンブルーに対する吸着性が低下していることが分かる。
【0107】
また、比較例3においては、ポリビニルアルコールの結晶化度が30%未満であるため、繊維中のベントナイトが脱落することにより濁度が高くなり、取扱性に劣っていることが分かる。
【0108】
また、比較例4においては、ベントナイトのみを使用しており、PVAを使用していないため、処理液中にベントナイトが混入して濁度が高くなり、取扱性に劣ることが分かる。
【0109】
また、比較例5においては、繊維径が太く、得られた繊維への捲縮加工が困難であり、不織布化することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上に説明したように、本発明は、吸着剤を含有するポリビニルアルコール系繊維に適している。更に、本発明のポリビニルアルコール系繊維を少なくとも一部に含む繊維構造体は、食品・飲料用、衣料用、医療用、農業用、水処理用等あらゆる用途に好適に使用できる。
図1
図2