(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20221121BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20221121BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20221121BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2021506817
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010951
(87)【国際公開番号】W WO2020188654
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々村 一樹
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072260(JP,A)
【文献】特開2014-208883(JP,A)
【文献】特開2010-084192(JP,A)
【文献】国際公開第2008/143024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/318
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して前記原料ガスとは分子構造が異なる反応ガスを供給する工程と、
を非同時に所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
前記反応ガスを供給する工程では
、前記処理室内の前記基板に対し
て前記反応ガス
を供給
するステップと、
前記処理室内の圧力が安定化せずに上昇している状態で前記処理室内の圧力が一定化する前に前記反応ガスの供給を停止するステップと、前記処理室内からの前記反応ガス
を排気
するステップと、を所定回数繰り返して行う半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記反応ガスの供給では、前記処理室内に前記反応ガスを0.01秒以上5秒以下の範囲内で供給する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記反応ガスの排気では、前記処理室内を0.05秒以上9秒以下の範囲内で排気する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記処理室内の圧力が一定化する前に前記反応ガスの供給を停止する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記反応ガスを供給する時間と前記処理室内を排気する時間との割合を、1:2~1:5の割合
とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記反応ガスを供給する工程では、前記反応ガスを供給するノズル内の圧力と前記処理室内との圧力差がある請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記原料ガスが金属含有ガスであり、前記反応ガスが酸素含有ガスである請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記原料ガスがアルミニウムを含む金属含有ガスである請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
処理室内の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して前記原料ガスとは分子構造が異なる反応ガスを供給する工程と、
を非同時に所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
前記反応ガスを供給する工程では
、前記処理室内の前記基板に対し
て前記反応ガス
を供給
するステップと、
前記処理室内の圧力が安定化せずに上昇している状態で前記処理室内の圧力が一定化する前に前記反応ガスの供給を停止するステップと、前記処理室内からの前記反応ガス
を排気
するステップと、を所定回数繰り返して行う基板処理方法。
【請求項10】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の前記基板に対して原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内の前記基板に対して前記原料ガスとは分子構造が異なる反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内の前記基板に対して前記原料ガスを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対して前記反応ガスを供給する処理と、を非同時に所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する処理を行わせ、前記反応ガスを供給する処理において
、前記処理室内の前記基板に対し
て前記反応ガス
を供給
するステップと、
前記処理室内の圧力が安定化せずに上昇している状態で前記処理室内の圧力が一定化する前に前記反応ガスの供給を停止するステップと、前記処理室内からの前記反応ガス
を排気
するステップと、を所定回数繰り返し行わせるように、前記原料ガス供給系、前記反応ガス供給系、および前記排気系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項11】
基板処理装置の処理室内の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して前記原料ガスとは分子構造が異なる反応ガスを供給する手順と、
を非同時に所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する手順と、
前記反応ガスを供給する手順において
、前記処理室内の基板に対し
て前記反応ガス
を供給
するステップと、
前記処理室内の圧力が安定化せずに上昇している状態で前記処理室内の圧力が一定化する前に前記反応ガスの供給を停止するステップと、前記処理室内からの前記反応ガス
を排気
するステップと、を所定回数繰り返して行う手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、処理室内に収容された基板上に膜を形成する成膜処理が行われることがある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、アルミニウム等の元素を含む原料ガスと、酸素等の元素を含む反応ガスとを処理室内に順番に供給して、処理室内に収容された基板上に膜を形成する際、基板上に形成される膜の面内膜厚均一性を高めることが求められている。
【0005】
本開示は、処理室内に収容された基板上に形成される膜の面内膜厚均一性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、処理室内の基板に対して原料ガスを供給する工程と、前記処理室内の前記基板に対して前記原料ガスとは分子構造が異なる反応ガスを供給する工程と、を非同時に所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、前記反応ガスを供給する工程では、前記処理室内の圧力が安定していない状態で、前記処理室内の前記基板に対しての前記反応ガスの供給と、前記処理室内からの前記反応ガスの排気と、を所定回数繰り返して行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、処理室内に収容された基板上に形成される膜の面内膜厚均一性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態における基板処理装置の動作を示すフロー図である。
【
図5】本開示の一実施形態におけるAlO膜形成工程の1サイクルを示す図である。
【
図6】処理室内圧力、ノズル内圧力および処理室内の反応ガスの流速と、処理室内に反応ガスを供給する時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の第1の実施形態について、
図1~
図6を参照しながら説明する。基板処理装置10は半導体装置の製造工程において使用される装置の一例として構成されている。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英、SiCなどの耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。処理室201内には、ノズル410(第1のノズル),420(第2のノズル)がマニホールド209の側壁およびインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。このように、基板処理装置10には2本のノズル410,420と、2本のガス供給管310,320とが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0014】
ガス供給管310,320には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320には、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、MFC512,522およびバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0015】
ガス供給管310,320の先端部にはノズル410,420がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁およびインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0016】
ノズル410,420は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420aが設けられている。これにより、ノズル410,420のガス供給孔(開口部)410a,420aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。
【0017】
ガス供給孔410aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ガス供給孔420aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔420aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0019】
ノズル410,420のガス供給孔410a,420aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200、すなわちボート217に収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0020】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、金属元素を含む原料ガス(金属含有ガス、原料ガス)が、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。原料としては、例えば金属元素であるアルミニウム(Al)を含む金属含有原料ガス(金属含有ガス)であるアルミニウム含有原料(Al含有原料ガス、Al含有ガス)としてのトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3、略称:TMA)が用いられる。TMAは有機系原料であり、アルミニウムにアルキル基が結合したアルキルアルミニウムである。
【0021】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、反応ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。反応ガス(原料ガスとは化学構造(分子構造)が異なる反応ガス)としては、酸素(O)を含み、Alと反応する反応ガス(リアクタント)としての酸素含有ガス(酸化ガス、酸化剤)を用いることができる。酸素含有ガスとしては、例えば、オゾン(O3)ガスを用いることができる。
【0022】
本実施形態において、金属含有ガスである原料ガスがノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、酸素含有ガスである反応ガスがノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給されることで、ウエハ200の表面に原料ガス(金属含有ガス)および反応ガス(酸素含有ガス)が供給され、ウエハ200の表面上に金属酸化膜が形成される。
【0023】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。なお、以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0024】
主に、ガス供給管310,320、MFC312,322、バルブ314,324、ノズル410,420により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系を、単に、ガス供給系と称することもできる。ガス供給管310から原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により原料ガス供給系が構成されるが、ノズル410を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。また、原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。原料ガスとして金属含有原料ガスを用いる場合、原料ガス供給系を金属含有原料ガス供給系と称することもできる。ガス供給管320から反応ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により反応ガス供給系が構成されるが、ノズル420を反応ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管320から反応ガスとして酸素含有ガスを供給する場合、反応ガス供給系を酸素含有ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522,バルブ514,524により不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いは、キャリアガス供給系と称することもできる。
【0025】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420aにより、ウエハ200の表面と平行方向、すなわち水平方向に向かって原料ガス等を噴出させている。
【0026】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置、すなわち予備室201aとは180度反対側の位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、残留するガス(残ガス)は、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間からなる排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0027】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置(好ましくはボート217の上部から下部と対向する位置)に設けられており、ガス供給孔410a、420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。すなわち、処理室201に残留するガスは、排気孔204aを介してウエハ200の主面に対して平行に排気される。なお、排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0028】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243および圧力センサ245により、排気系すなわち排気ラインが構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0029】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217およびボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0030】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料により構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0031】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410および420と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0032】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0033】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピおよび制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0034】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,512,522,バルブ314,324,514,524、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0035】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC312,322,512,522による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,514,524の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作およびAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0036】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0037】
(2)成膜処理
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ上200に膜を形成する工程の一例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0038】
本実施形態では、基板としての複数のウエハ200が積載された状態で収容された処理室201を所定温度で加熱しつつ、処理室201内のウエハ200に対してノズル410の開口する複数のガス供給孔410aから原料ガスとしてTMAガスを供給する工程と、処理室201内のウエハ200に対してノズル420の開口する複数のガス供給孔420aから反応ガスとしてO3ガスを供給する工程と、を非同時に所定回数行うことで、ウエハ200上に、AlおよびOを含む膜としてアルミニウム酸化膜(AlO膜)を形成する工程を有し、O3ガスを供給する工程では、処理室201内の圧力が安定していない状態で、処理室201内にO3ガスの供給(反応ガス供給サブ工程)と、処理室201内からのO3ガスの排気(反応ガス排気サブ工程)と、を所定回数繰り返して行う。
【0039】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」をいう言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0040】
(ウエハチャージ・ボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示すように、複数枚のウエハ200が収容されたボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0041】
(圧力・温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。続いて、回転機構267によりボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0042】
[AlO膜形成工程]
続いて、原料ガス供給ステップ(原料ガスを供給する工程)、残留ガス除去ステップ(残留ガスを除去する工程)、反応ガス供給ステップ(反応ガスを供給する工程)、残留ガス除去ステップ(残量ガスを除去する工程)をこの順で非同時に所定回数(n回)行うことで、AlO膜を形成するステップ(AlO膜を形成する工程)が行われる。反応ガス供給ステップでは、反応ガス供給サブステップ(反応ガス供給サブ工程)および残留ガス除去サブステップ(反応ガス排気サブ工程)をこの順で繰り返し所定回数(m回)行う。
AlO膜形成工程の1サイクルを
図5に示す。
【0043】
(TMAガス供給ステップ(ステップS10))
バルブ314を開き、ガス供給管310内に原料ガスであるTMAガスを流す。TMAガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTMAガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガス等の不活性ガスを流してもよい。ガス供給管510内を流れたN2ガスは、MFC512により流量調整され、TMAガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。なお、このとき、ノズル420内へのTMAガスの侵入を防止するために、バルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガスを流してもよい。N2ガスは、ガス供給管320、ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0044】
このとき、APCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~1000Pa、好ましくは1~100Pa、より好ましくは10~50Paの範囲内の圧力とする。処理室201内の圧力を1000Pa以下とすることで、後述する残留ガス除去を好適に行うことができると共に、ノズル410内でTMAガスが自己分解してノズル410の内壁に堆積してしまうことを抑制することができる。処理室201内の圧力を1Pa以上とすることで、ウエハ200表面でのTMAガスの反応速度を高めることができ、実用的な成膜速度を得ることが可能となる。なお、本明細書では、数値の範囲として、例えば1~1000Paと記載した場合は、1Pa以上1000Pa以下を意味する。すなわち、数値の範囲内には1Paおよび1000Paが含まれる。圧力のみならず、流量、時間、温度等、本明細書に記載される全ての数値について同様である。
【0045】
MFC312で制御するTMAガスの供給流量は、例えば、10~2000sccm、好ましくは50~1000sccm、より好ましくは100~500sccmの範囲内の流量とする。流量を2000sccm以下とすることで、後述する残留ガス除去を好適に行うことができると共に、ノズル410内でTMAガスが自己分解してノズル410の内壁に堆積してしまうことを抑制することができる。流量を10sccm以上とすることで、ウエハ200表面でのTMAガスの反応速度を高めることができる、実用的な成膜速度を得ることが可能となる。
【0046】
MFC512で制御するN2ガスの供給流量は、例えば、1~30slm、好ましくは1~20slm、より好ましくは1~10slmの範囲内の流量とする。
【0047】
TMAガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば、1~60秒、好ましく1~20秒、より好ましくは2~15秒の範囲内とする。
【0048】
ヒータ207は、ウエハ200の温度が、例えば、200~600℃、好ましくは400~550℃、より好ましくは450~550℃の範囲内となるように加熱する。温度を600℃以下とすることで、TMAガスの過剰な熱分解を抑制しつつ成膜速度を適切に得ることができ、不純物が膜内に取り込まれて抵抗率が高くなることが抑制される。なお、TMAガスの熱分解は、当該処理に近い条件下においては450℃程度で開始するため、550℃以下の温度に加熱された処理室201内において本開示を用いるとより有効である。一方、温度が400℃以上であることにより、反応性が高く、効率的な膜形成が可能である。
【0049】
上述の条件下で処理室201内のウエハ200に対してTMAガスを供給することにより、ウエハ200の最表面に、Al含有層が形成される。Al含有層は、Al層の他、CおよびHを含み得る。Al含有層は、ウエハ200の最表面に、TMAが物理吸着したり、TMAの一部が分解した物質が化学吸着したり、TMAが熱分解することでAlが堆積したりすること等により形成される。すなわち、Al含有層は、TMAやTMAの一部が分解した物質の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Alの堆積層(Al層)であってもよい。
【0050】
(残留ガス除去ステップ(ステップS11))
Al含有層が形成された後、バルブ314を閉じ、TMAガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応またはAl含有層形成に寄与した後のTMAガスを処理室201内から排除する。バルブ514,524は開いた状態でN2ガスの処理室201内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応またはAl含有層形成に寄与した後のTMAガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。なお、バルブ514,524からのN2ガスは残留ガス除去ステップの間、常に流し続けてもよいし、断続的(パルス的)に供給してもよい。
【0051】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップにおいて悪影響はほとんど生じない。処理室201内に供給する不活性ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、その後のステップにおいて悪影響がほとんど生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、不活性ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0052】
次に、反応ガスを供給する工程(反応ガス供給ステップ)にて、反応ガス供給サブステップ(ステップS12)および残留ガス除去サブステップ(ステップS13)を繰り返し行う。
【0053】
(反応ガス供給サブステップ(ステップS12))
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に反応ガスであるO3ガスを流す。O3ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内のウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。すなわちウエハ200はO3ガスに暴露される。このとき、バルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガスを流してもよい。N2ガスは、MFC522により流量調整され、O3ガスと共に処理室201内に供給されて、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内へのO3ガスの侵入を防止(逆流を防止)するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内へN2ガスを流してもよい。N2ガスは、ガス供給管510、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0054】
このとき、処理室201内の圧力が安定化していない状態で処理室201内のウエハ200に対してO3ガスを供給する。O3ガスをウエハ200に対して供給する時間(O3ガス供給時間)は、例えば、0.01~5秒が好ましく、0.01~3秒がより好ましい。O3ガス供給時間が0.01秒未満であると、O3ガスがウエハ200のエッジへ回り込んでしまい、ウエハ200中央までのO3ガスの供給量が不足してしまう。また、O3ガス供給時間が5秒を超えると、O3ガスの供給時間が長くなるとともに、処理室201内の圧力を所定の圧力まで下げるのに時間がかかりスループットが低下してしまう。O3ガスをウエハ200に対して供給する時間を0.01秒以上5秒以下とすることにより、O3ガスがウエハ200のエッジへの回り込みを抑制でき、かつ、処理室201内の圧力が安定化する前に次工程の残留ガス除去サブステップを行うことができるため、処理室201内の圧力を低くするまでの時間を短縮することができ、スループットの向上を図ることができる。MFC322で制御するO3ガスの供給流量は、例えば、5~40slm、好ましくは5~30slm、より好ましくは10~20slmの範囲内の流量とする。その他の処理条件は、上述の原料ガス供給ステップと同様の処理条件とする。
【0055】
O3ガスは、原料ガス供給ステップでウエハ200上に形成されたAl含有層の少なくとも一部と反応する。Al含有層は酸化され、金属酸化層としてAlとOとを含むアルミニウム酸化層(AlO層)が形成される。すなわちAl含有層はAlO層へと改質される。
【0056】
(残留ガス除去サブステップ(ステップS13))
反応ガス供給サブステップを所定回数(m回)行ったと判断される前は、次にバルブ324を閉じて、O3ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応またはAl含有層形成に寄与した後のO3ガスを処理室201内から排除し、処理室201内を減圧する。このとき、処理室201内に残留するガス等を完全に排除しなくてもよい点は、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様である。
【0057】
真空ポンプ246により処理室201内を真空排気する時間(真空排気時間)は、例えば、0.05~9秒が好ましく、0.5~5秒がより好ましい。真空排気時間が、0.05未満であると、処理室201内の圧力を所定の圧力まで十分に下げることができず、また、9秒を超えると、真空排気する時間が長くなりすぎてスループットが低下しまう。なお、真空排気時間を0.05~9秒、より好ましくは0.5~5秒とすることにより、短時間で処理室内201の圧力を十分に下げることが可能となり、真空排気する時間が長くなりすぎずスループットの低下を抑制することができる。
【0058】
前述のO3ガスをウエハ200に対して供給する時間(供給時間)と、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気する時間(排気時間)との割合(供給時間:排気時間)は、1:2~1:5の範囲内であることが好ましい。供給時間:排気時間が1:5以下であることにより、排気時間が長くなりすぎず、スループットの低下を抑制することができる。
【0059】
前述した反応ガス供給サブステップ(反応ガス供給工程)および残留ガス除去サブステップ(反応ガス排気工程)をこの順で繰り返し、反応ガス供給サブステップを所定回数(m回)行ったと判断された後は、次の残留ガス除去ステップ(ステップS14)が行われる。
【0060】
また、所定回数(m回、
図5中では6回)行われる反応ガス供給サブステップでは、
図5に示すように、処理室201内の圧力が安定化せずに上昇している状態で処理室201内にO
3ガスを供給し、処理室201内の圧力が一定化する前に処理室201内へのO
3ガスの供給を停止する。なお、
図5中の二点鎖線は、従来の半導体装置の製造方法のように、処理室201内の圧力が安定化した後にも処理室201内にO
3ガスを供給した場合の圧力を示す。
【0061】
次に、処理室201内にO
3ガスを供給した場合における、処理室201内の圧力(Fumace Pressure)、ノズル420内の圧力(Nozzle Inside Pressure)および処理室201内のO
3ガスの流速(Gas Velocity)と、処理室201内にO
3ガスを供給する時間との関係を
図6に示す。
図6に示すように、処理室201内にO
3ガスを供給し始めた直後では、ノズル420内の圧力と処理室201内の圧力差が大きく、処理室201内のO
3ガスの流速も大きくなる。O
3ガスを供給する時間の経過とともに、処理室201内のO
3ガスの流速も低下していき、処理室201内の圧力が一定となることにより、処理室201内のO
3ガスの流速が一定となる。
【0062】
本実施形態では、反応ガス供給サブステップにて、処理室201内の圧力が安定化していない状態でO
3ガスを供給し、処理室201内の圧力が一定化する前に処理室201内へのO
3ガスの供給を停止する。例えば、
図6に示すAの範囲にてO
3ガスの供給および停止を行う。そして、前述の反応ガス供給サブステップと、残留ガス除去サブステップとをそれぞれ繰り返し行っている。一方、従来の半導体装置の製造方法では、処理室201内の圧力が一定化した後も処理室201内へO
3ガスを供給し、所定の時間が経過した後に処理室201内へのO
3ガスの供給を停止する。例えば、
図6に示すBの範囲にてO
3ガスの供給および停止を行う。したがって、本実施形態では、従来の半導体装置の製造方法と比較して1サイクルあたりのO
3ガスの平均流速を高めることができるため、処理室201内に収容されたウエハ200表面の中央部により多くのO
3ガスが到達する。これにより、ウエハ200表面の端部と中央部との膜厚の差をより小さくできるため、ウエハ200上に形成されるAlO膜の面内膜厚均一性を高めることができる。
【0063】
(残留ガス除去ステップ(ステップS14))
AlO層が形成された後、バルブ324を閉じて、O3ガスの供給を停止する。そして、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはAlO層の形成に寄与した後のO3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、処理室201内に残留するガス等を完全に排除しなくてもよい点は、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様である。
【0064】
〔所定回数実施〕
上述の原料ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、反応ガス供給ステップおよび残留ガス供給ステップを順に行うサイクルを1回以上(所定回数:n回)行うことにより、ウエハ200上にAlO膜が形成される。このサイクルの回数は、最終的に形成するAlO膜において必要とされる膜厚に応じて適宜選択されるが、このサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。AlO膜の厚さ(膜厚)は、例えば、3~150nm、好ましくは40~100nm、より好ましくは60~80nmとする。150nm以下とすることで表面粗さを小さくすることができ、3nm以上とすることで下地膜との応力差に起因する膜剥がれの発生を抑制することができる。
【0065】
(アフターパージ・大気圧復帰)
成膜ステップが終了したら、バルブ514,524を開き、ガス供給管310,320のそれぞれからN2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気がN2ガスに置換され(N2ガス置換)、処理室201内の圧力は常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0066】
(ボートアンロード・ウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0067】
上述の実施形態では、反応ガスを供給するステップにて、処理室内の圧力が安定化していない状態で処理室内の基板に対して反応ガスを供給する反応ガス供給サブステップと、処理室内の反応ガスを排気する反応ガス排気サブステップと、を所定回数繰り返して行う。これにより、処理室内の圧力が安定した平衡状態でないため、流速が大きい反応ガスを処理室内の基板に供給できる。さらに、処理室内の圧力が安定化していない状態で、反応ガスの供給を分割し、かつ繰り返し行っている。その結果、従来の半導体装置の製造方法と比較して、1サイクルあたりの反応ガスの平均流速を大きくすることができるため、処理室内の基板表面の中央部により多くの反応ガスが到達する。これにより、基板表面の端部と中央部との膜厚の差をより小さくできるため、基板上に形成される膜の面内膜厚均一性を高めることができる。
【0068】
例えば、上述の実施形態では、Al含有ガスとしてTMAガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば、塩化アルミニウム(AlCl3)等を用いてもよい。O含有ガスとしては、O3ガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば、酸素(O2)、水(H2O)、過酸化水素(H2O2)、O2プラズマと水素(H2)プラズマの組合せ等も適用可能である。不活性ガスとしては、N2ガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、基板上にAlO膜を形成する例について説明した。しかし、本開示はこの態様に限定されない。例えば、処理温度でノズル内にて自己分解してノズル内壁に堆積物として付着し、かつ堆積物が成膜サイクル内で剥がれてしまうような密着性を有する膜種に対して、有効である。また、原料ガスを供給する際に、同時に不活性ガス等で希釈する原料ガスを用いて膜を形成する膜種に対しても用いられ、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、La(ランタン)、ストロンチウム(Sr)、シリコン(Si)を含む膜であって、これらの元素の少なくとも1つを含む窒化膜、炭窒化膜、酸化膜、酸炭化膜、酸窒化膜、酸炭窒化膜、硼窒化膜、硼炭窒化膜、金属元素単体膜等にも適用可能である。
【0070】
成膜処理に用いられるレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、処理内容(形成、或いは、除去する膜の種類、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになり、それぞれの場合に適正な処理を行うことができるようになる。また、オペレータの負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0071】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例等の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0073】
また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0074】
10:基板処理装置
121:コントローラ
200:ウエハ(基板)
201:処理室
410:ノズル(第1のノズル)
420:ノズル(第2のノズル)