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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】光クロスコネクト装置
(51)【国際特許分類】
   H04J 14/02 20060101AFI20221122BHJP
   H04Q 3/52 20060101ALI20221122BHJP
   H04B 10/27 20130101ALI20221122BHJP
   G02F 1/31 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H04J14/02 101
H04Q3/52 C
H04B10/27
G02F1/31
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018102078
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019208118
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 光貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 克寛
(72)【発明者】
【氏名】植松 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】岡 利幸
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0286605(US,A1)
【文献】特開2016-225850(JP,A)
【文献】特開2017-157982(JP,A)
【文献】SUZUKI K. et al.,Application of Waveguide/Free-Space Optics Hybrid to ROADM Device,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,米国,IEEE,2017年02月,VOL. 35, NO. 4,pages 596-606
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
H04Q 3/52
H04Q 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路からの入力を受け付ける1つの入力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部への出力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部は、前記波長クロスコネクト部の方向から光信号を受信する1つの入力ポートと、前記各トランスポンダに向かう方向へ光信号を送信する複数の出力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路から光信号が伝搬され、カスケード接続の同一段数に位置する複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他方路を使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする
光クロスコネクト装置。
【請求項2】
複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路からの入力を受け付ける1つの入力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部への出力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部は、前記波長クロスコネクト部の方向から光信号を受信する1つの入力ポートと、前記各トランスポンダに向かう方向へ光信号を送信する複数の出力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路かつ同一の出力ポートから光信号が伝搬される複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他の出力ポートを使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする
光クロスコネクト装置。
【請求項3】
複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路に出力する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部からの入力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部は、前記波長クロスコネクト部の方向へ光信号を送信する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダの方向から光信号を受信する複数の入力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路に光信号を伝搬し、カスケード接続の同一段数に位置する複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他方路を使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする
光クロスコネクト装置。
【請求項4】
複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路に出力する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部からの入力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部は、前記波長クロスコネクト部の方向へ光信号を送信する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダの方向から光信号を受信する複数の入力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路かつ同一の入力ポートに光信号を伝搬する複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他の入力ポートを使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする
光クロスコネクト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光クロスコネクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークを大容量化するために、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)通信が用いられている。WDMに対応した光信号の分岐/挿入を行う多重化装置として、ROADM(Reconfigurable optical add/drop multiplexing)が用いられている。このROADM内には、光信号を電気信号に変換せずに扱うWSS(Wavelength Selective Switch)が多数収容されている。
【0003】
ROADMは、光通信ネットワークの各回線(方路と呼ぶ)を接続して他のROADMと通信するための波長クロスコネクト部と、自身のROADMが収容する送信器や受信器などのトランスポンダを収容するトランスポンダ収容機能部とが装置内で接続されて構成される。トランスポンダ収容機能部は、波長クロスコネクト部に入出力される多方路からのWDM信号に対して所望の波長を所望のトランスポンダに接続する機能である。
【0004】
ここで、トランスポンダ収容機能部を高機能化するCDC(Colorless,Directionless and Contentionless)機能が着目されている(非特許文献1)。
Colorless機能により、ポートに入出力する波長が固定波長ではなくなり、物理的な接続変更をせずに、トランスポンダの波長を変えることができる。
Directionless機能により、ポートの入出力方路を、固定方向から自由に設定できるように拡張できる。
Contentionless機能により、別方路に割り当てられる同一波長の光信号を、装置内で衝突せずに通信することができる。
このようにポートの設定を柔軟に変更できるCDC機能は、ポートの遠隔設定が可能なため運用性を向上できる点、および、経済的に信頼性を確保可能な点で優位な機能である(非特許文献2)。
【0005】
一方、ROADMの性能指標として、光通信ネットワークへAdd(信号入力)するトランスポンダ数や、光通信ネットワークからDrop(信号出力)するトランスポンダ数が多いROADMほど、収容力が高く優れた中継装置とされる。つまり、今後もトラフィックが堅調に増加すると、ROADMでAdd/Dropされる光パスが増加するため、Add/Drop率の向上が必要である。
つまり、Add/Drop率を向上するには、トランスポンダ収容機能部の接続ポート数を増加させる必要がある。例えば、Add/Drop率100%の場合、波長数×方路数分のポートが必要である。
【0006】
信号の伝送損失の観点からカプラは不適であるため、トランスポンダ収容機能部の接続ポート数を増やすために、多くのWSSが必要となる。1台のROADM内に多くのWSSを収容することで、装置規模が大きくなってしまい、サイズ、電力、コストが増大してしまう。
なお、非特許文献3には、複数のWSSを1モジュールに集積した多連WSSが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】S. Gringeri et al., “Flexible architectures for optical transport nodes and networks”, IEEE Comm., Mag., vol. 48, issue. 7, 2010.
【文献】Q. Zhang, et al., “Shared Mesh Restoration for OTN/WDM Networks Using CDC-ROADMs”, ECOC2012, Tu4.D.4
【文献】K. Suzuki, et al., “Application of waveguide/free-space optics hybrid to ROADM device”, JLT, vol35, issue 4, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のROADMのトランスポンダ接続ポートを増やすために、多くのWSSモジュールを用いて装置内の方路を分岐する構成では、装置規模が大きくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、ROADMの装置規模を抑えつつ、Add/Drop率を向上させることを、主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の光クロスコネクト装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路からの入力を受け付ける1つの入力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部への出力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部が、前記波長クロスコネクト部の方向から光信号を受信する1つの入力ポートと、前記各トランスポンダに向かう方向へ光信号を送信する複数の出力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路から光信号が伝搬され、カスケード接続の同一段数に位置する複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他方路を使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする。
【0011】
これにより、Drop側の複数のWSSモジュールをカスケードの段数に応じて1つのモジュールに集約できる。よって、ROADMの装置規模を抑えつつ、Drop率を向上させることができる。
【0012】
本発明は、複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路からの入力を受け付ける1つの入力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部への出力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部が、前記波長クロスコネクト部の方向から光信号を受信する1つの入力ポートと、前記各トランスポンダに向かう方向へ光信号を送信する複数の出力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路かつ同一の出力ポートから光信号が伝搬される複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他の出力ポートを使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする。
【0013】
これにより、Drop側の複数のWSSモジュールをカスケードの段数に関係なく1つのモジュールに集約できる。よって、ROADMの装置規模を抑えつつ、Drop率を向上させることができる。
【0014】
本発明は、複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路に出力する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部からの入力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部が、前記波長クロスコネクト部の方向へ光信号を送信する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダの方向から光信号を受信する複数の入力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路に光信号を伝搬し、カスケード接続の同一段数に位置する複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他方路を使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする。
【0015】
これにより、Add側の複数のWSSモジュールをカスケードの段数に応じて1つのモジュールに集約できる。よって、ROADMの装置規模を抑えつつ、Add率を向上させることができる。
【0016】
本発明は、複数の方路に接続される光クロスコネクト装置であって、
接続する方路ごとに個別の波長クロスコネクト部と、前記波長クロスコネクト部の光信号を各トランスポンダに中継するためのトランスポンダ収容機能部とを備え、
前記各波長クロスコネクト部は、自方路に出力する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダ収容機能部からの入力ポートとを有しており、
前記トランスポンダ収容機能部が、前記波長クロスコネクト部の方向へ光信号を送信する1つの出力ポートと、前記各トランスポンダの方向から光信号を受信する複数の入力ポートとを備える波長選択スイッチが、複数段数カスケード接続されて構成されており、
同一の前記波長クロスコネクト部を介して同一方路かつ同一の入力ポートに光信号を伝搬する複数の前記波長選択スイッチが、1つのモジュールとして多連化されており、所定のモジュールで故障が起きた場合に、他の入力ポートを使用する迂回経路に光信号が通過するように設定することを特徴とする。
【0017】
これにより、Add側の複数のWSSモジュールをカスケードの段数に関係なく1つのモジュールに集約できる。よって、ROADMの装置規模を抑えつつ、Add率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ROADMの装置規模を抑えつつ、Add/Drop率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】比較例のROADMの構成図である。
図2図1のROADMをXY平面から見たときの平面図である。
図3図1のROADMをYZ平面から見たときの平面図である。
図4】本実施形態に係わる多連WSSの原理を示す説明図である。
図5】本実施形態に係わる図2のROADMに、図4の多連WSSの原理を適用した第1例である。
図6】本実施形態に係わる図2のROADMに、図4の多連WSSの原理を適用した第2例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、比較例のROADM(光クロスコネクト装置)の構成図である。図1では、ROADMのDrop側について図示するが、Add側も信号の向きが逆になるだけで構成は同じである。
ROADMは、以下の3種類のモジュールが上から順に配置されている。ここで、図1の横破線は、横破線から上側を波長クロスコネクト部とし、横破線から下側をトランスポンダ収容機能部とすることを示す境界線である。
(1)図1の上部側のW[1]~W[D]で示される波長選択スイッチ「1xM WSS」の波長クロスコネクト部のグループ。なお、「1xM WSS」とは、1入力M出力のWSSモジュールという意味である。DはROADMが収容する方路の数である。
(2)図1の中央側のE[1,1,1]~E[1,n,x5]の波長選択スイッチ「1xA WSS」のトランスポンダ収容機能部のグループ。
(3)図1の下部側のC[1]~C[X]の波長選択スイッチ「DxB CPL」のトランスポンダ収容機能部のグループ。
【0022】
ROADMのグループ(1)について、説明する。波長クロスコネクト部のDrop側には、以下の3種類のポートを有する「1xM WSS」が方路数DのモジュールW[1]~W[D]として備えられている。
(1a)自方路からの入力を受け付ける1つの入力ポート(Add側では逆に1つの出力ポート)。
(1b)他方路2~DそれぞれのDrop側の「1xM WSS」に内部接続するためのD-1個の出力ポート(図1のROADMをXY平面から見たときの図2を参照)。
(1c)トランスポンダ収容機能部それぞれの「1xA WSS」へ内部接続するためのM-D+1個の出力ポート。
【0023】
ROADMのグループ(2)について、説明する。トランスポンダ収容機能部には、「1xA WSS」を1つの要素(E:Element)とすると、それらの要素間がn段カスケード接続されている。グループ(2)の要素Eは、波長クロスコネクト部の方向から光信号を受信する1つの入力ポートと、各トランスポンダに向かう方向へ光信号を送信する複数の出力ポートとを備える。(Add側では、逆に要素Eは、複数の入力ポートと1つの出力ポートとを備える。)
1段目~n段目のカスケード接続された要素の集合は、方路1~Dごとに別々に(図示では点線の四角形)グループ化されている。
個々の要素Eの位置関係をわかりやすくするため、要素Eに3つの添え字E[i,j,k]でIDを付加する。例えば、E[D,1,2]は、E=Elementとして、D=D番目の方路の、1=1段目カスケードの、2=2つめの収容数を示す。
【0024】
カスケード1段目は、波長クロスコネクト部との境界に位置する。波長クロスコネクト部「1xM WSS」からのM-D+1個の出力ポート(1c)が、それぞれ要素E[1,1,1],E[1,1,2],…E[1,1,M-D+1]の入力ポートに接続される。
カスケード2段目は、カスケード1段目要素の出力ポートを受け、カスケード3段目要素の入力ポートに転送する要素のグループである。例えば、E[1,2,1]は、E[1,1,1]の第1出力ポートからの入力を受け、E[1,3,1]~E[1,3,A]それぞれに出力する。
カスケードn段目(最終段)は、さらに下側に位置するC[1]~C[X]の「DxB CPL」のグループ(3)との境界に位置する。
【0025】
ROADMのグループ(3)について、説明する。トランスポンダ収容機能部には、トランスポンダに接続する出力ポートを有する「DxB CPL」がモジュールC[1]~C[X]として備えられている。ここでは、「DxB CPL」、つまり、D入力B出力のCPL(Coupler)を用いたが、D入力B出力のWSS(Wavelength Selective Switch)を用いてもよいし、ROADMがCDC機能を有する場合には、D入力B出力のMCS(Multicast switch)を用いてもよい。
C[1]は、要素E[1,n,1]~要素E[D,n,1]の合計D個からの入力を受け(図1のROADMをYZ平面から見たときの図3を参照)、B個の出力ポートでトランスポンダに信号を出力する(図2を参照)。
C[2]も、要素E[1,n,2]~要素E[D,n,2]の合計D個からの入力を受け、B個の出力ポートでトランスポンダに信号を出力する。
C[X]も、要素E[1,n,X]~要素E[D,n,X]の合計D個からの入力を受け、B個の出力ポートでトランスポンダに信号を出力する。
C[1]~C[X]それぞれに接続されるトランスポンダ(図示省略)は、Drop先の受信器またはAdd元の送信器として構成される。
【0026】
なお、1台のROADM全体におけるトランスポンダの収容数は、以下のように計算される。
トランスポンダの収容数=(C[n]の個数=X)×(1つのC[n]あたりの出力ポート数B)
(C[n]の個数X)=(カスケードn段目の要素Eの総数)×(1つの要素Eあたりの出力ポート数A)
(カスケードn段目の要素Eの総数)=Aの(n-1)乗×(M-D+1)
よって、トランスポンダの収容数=Aのn乗×(M-D+1)×Bである。
【0027】
以上、図1図3を参照して、比較例のROADMの構成について説明した。比較例のROADMでは、とくに、グループ(2)の「1xA WSS」の要素Eがn段カスケード接続されているため、カスケードの段数が増えると、要素Eごとのモジュールの個数も急激に増加してしまう。
そこで、図4図6で説明する本実施形態では、複数の要素Eに対して多連WSS化を適用することにより、1つのモジュールへと集約する方式を説明する。つまり、比較例も本実施形態も要素Eの個数や「1xA WSS」という各要素Eの入出力ポート数は共通するが、1つのモジュールが1つの要素Eを収容するか(比較例)、複数の要素Eを多連化して収容するか(本実施形態)という点が相違する。換言すると、本実施形態は、各方路のトランスポンダ収容機能部ごとに多連WSSを適用し、WSSモジュール数を削減することを特徴とする。
【0028】
図4は、多連WSSの原理を示す説明図である。図4では、「1x3 WSS」の4連構成を例示する。
WSSは、各入力ポートPi[1,1]~Pi[1,4]と、各出力ポートPo[1,1]~Pi[3,4]と、PLC(Planar Lightwave Circuit)10と、空間光学系20とを有する。入力ポートPi[i,j]とは、i番目の入力ポートのj連多連化したものを示す。出力ポートPo[i,j]とは、i番目の出力ポートのj連多連化したものを示す。空間光学系20は、レンズ21と、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)素子22とで構成される。
【0029】
PLC10は、入出力光導波路11、スラブ導波路12およびアレイ導波路13から構成されるSBT(Spatial beam transformer)を4つ備える。SBTは、1つの入力ポート用と、3つの出力ポート用とで合計4つ分用意される。なお、SBTの各構成要素(入出力光導波路11、スラブ導波路12およびアレイ導波路13)は、特開2017-219695号公報の光信号処理装置や、特開2016-212128号公報の光信号処理装置に記載されている公知のものである。
【0030】
各入力ポートPi[1,1]~Pi[1,4]からPLC10内のSBT[1]へ入力された光信号は、アレイ導波路13からj連ごとに異なる角度で出射する。出射された光信号は、レンズ21を介して空間光変調手段であるLCOS素子22の異なる位置(WSS[1]~WSS[4])に集光して反射し、SBT[2]~SBT[4]を介して、各出力ポートPo[1,1]~Pi[3,4]に出力される。つまり、各光信号が独立の光学系を入出力するとみなせる。
これにより、WSSの入出力ポート分(入力1つ+出力3つ=合計4つ)SBTを用意し、それらのSBTを含むPLC10、空間光学系20を複数のj連で共用可能となる。つまり、j個のモジュールを個別に用意する比較例に対して、初期導入費用を抑制し、消費電力を低減し、制御システムの負荷を低減することなどが期待できる。
【0031】
図5は、図2のROADMに、図4の多連WSSの原理を適用した第1例である。図5では、n段カスケード接続された要素Eのグループに対して、波長クロスコネクト部の同一方路から光信号が伝搬され、カスケード接続の同一段数に位置する複数のWSSに多連WSSを適用して、1つのモジュールで実装する。なお、図5では、多連WSSを適用して1モジュール化した要素Eの集合を、四角形101,111~113で囲っている。
・カスケード1段目では、合計M-D+1個の要素E[1,1,1],E[1,1,2],…E[1,1,M-D+1]が、1つの多連WSS101へと集約される。
・カスケードn段目(最終段)は、w[1]の第1出力ポートから分岐した要素E[1,n,1]~要素E[1,n,x1]、1つの多連WSS111へと集約される。
同様に、w[1]の第2出力ポートから分岐した要素E[1,n,x2]~要素E[1,n,x3]も、別の1つの多連WSS112へと集約される。
同様に、w[1]の第M-D+1出力ポートから分岐した要素E[1,n,x4]~要素E[1,n,x5]も、別の1つの多連WSS113へと集約される。
【0032】
つまり、カスケード1段目では多連WSSの個数は1つであり、カスケード2~n段目ではそれぞれ1段あたり多連WSSの個数はM-D+1つである。なお、要素Eの多連WSS化は、あくまで1つの方路内で閉じた集約であり、複数の方路にまたがった要素Eの多連WSS化は行わない。
この図5の構成により、トランスポンダ収容機能部の「1xA WSS」である要素Eの個数が多くても、それらの複数の要素Eを1つのモジュールに多連化することで、WSSモジュール数を削減できる。
【0033】
図6は、図2のROADMに、図4の多連WSSの原理を適用した第2例である。図6では、n段カスケード接続された要素Eのグループに対して、波長クロスコネクト部の同一方路かつ同一の出力ポート(dropポート)から光信号が伝搬される複数のWSSに多連WSSを適用して、1つのモジュールで実装する。図6でも、多連WSSを適用して1モジュール化した要素Eの集合を、四角形201~203で囲っている。
・カスケードの段数にかかわらず、w[1]の第1出力ポートから分岐した要素E[1,1,1]~要素E[1,n,1]~要素E[1,n,x1]が、第1の多連WSS201へと集約される。
・w[1]の第2出力ポートから分岐した要素E[1,1,2]~要素E[1,n,x2]~要素E[1,n,x3]も、第2の多連WSS202へと集約される。
・w[1]の第M-D+1出力ポートから分岐した要素E[1,1,M-D+1]~要素E[1,n,x4]~要素E[1,n,x5]も、第M-D+1の多連WSS203へと集約される。
なお、要素Eの多連WSS化は、あくまで1つの方路内で閉じた集約であり、複数の方路にまたがった要素Eの多連WSS化は行わない。
この図6の構成により、図5の構成よりもさらにWSSモジュール数を削減できる。
【0034】
以下、多連WSSを適用しない比較例の構成(図1)と、多連WSSを適用した本実施形態の第1例(図5)と、多連WSSを適用した本実施形態の第2例(図6)と、効果の観点で詳細に比較する。
【0035】
以下、ROADMに備えられるモジュールの信頼性、つまり、どれだけモジュールの故障に耐性があるかについて説明する。比較例の構成(図1)では、方路ごと、かつ、波長クロスコネクト部「1xM WSS」のM-D+1個の出力ポート(Dropポート)ごとに独立したモジュールが実装されている。
まず、特定方路に接続するモジュールで故障が起きた場合に(例えば、要素E[1,2,3]の故障)、他方路を使用する迂回経路(例えば、要素E[2,2,3]を代用)に光信号が通過するように設定することにより、モジュール故障の影響を回避できる。
また、特定Dropポートに接続するモジュールで故障が起きた場合に(例えば、要素E[1,1,1]の故障)、他Dropポートを使用する迂回経路(例えば、要素E[1,1,2]を代用)に光信号が通過するように設定することにより、モジュール故障の影響を回避できる。
以上が比較例の構成(図1)におけるモジュールの信頼性における効果である。
【0036】
一方、本実施形態の第1例(図5)と、第2例(図6)とでは、前記した比較例でのモジュールの信頼性を損なうことなく(維持しつつ)、WSSモジュール数を削減できる。
まず、特定方路に接続するモジュールで故障が起きた場合に、本実施形態の第1例,第2例ともに、他方路を使用する迂回経路を比較例と同様に設定できる。
また、特定Dropポートに接続するモジュールで故障が起きた場合に、本実施形態の第2例では、他方路を使用する迂回経路を比較例と同様に設定できる。
【0037】
次に、ROADM内に流れる光信号の信号劣化について説明する。一般的に、多連WSSの集積度を上げると、モジュール数は削減される。しかし、その副作用として、共用部品であるSBT、および、LCOS素子22を通過する複数の同一波長の光信号どうしでWSS間クロストークが発生し、そのクロストークが信号特性を劣化させる主要因となる。
しかし、本実施形態の第1例,第2例ともに、各方路の波長クロスコネクト部「1xM WSS」からトランスポンダ収容機能部へ接続するM-D+1個の出力ポートにおいて、複数の出力ポートに対して同時に同一波長の光信号が入力されるケースは存在しない。そのため、多連WSS適用時の課題であるWSS間クロストークによる信号劣化の影響を回避できる。
なお、本実施形態においては、本発明に係るROADM(光クロスコネクト装置)の構成として、図1に示すように、方路をD個とし、要素Eをn段カスケード接続し、要素Eの出力ポートをA個としたが、これらの個数や構成に限定されない。
【符号の説明】
【0038】
10 PLC
11 入出力光導波路
12 スラブ導波路
13 アレイ導波路
20 空間光学系
21 レンズ
22 LCOS素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6