(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】眼情報推定装置、眼情報推定方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/11 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
A61B3/11
(21)【出願番号】P 2018161041
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】米家 惇
【審査官】佐藤 秀樹
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/12
3/13-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の眼球を撮影した画像から、当該画像に含まれる所定の行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)と、瞳孔または虹彩の形状を楕円であると仮定した場合の点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ
1, θ
2とを取得する
とともに当該画像に含まれる瞳孔または虹彩の外縁に対して楕円フィッティングを行うことにより前記楕円の長軸の長さRを取得するプロファイル決定情報取得部と
、
前記点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)と、前記点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ
1, θ
2と、前記楕円の長軸の長さRとを用いて、瞳孔または虹彩の位置を表す前記楕円の中心座標(x
c, y
c)と偏角ψ、及び/または、瞳孔または虹彩の大きさを表す前記楕円の短軸の長さR
bを算出する眼情報算出部と
を含む眼情報推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼情報推定装置であって、
前記眼情報算出部は、
前記点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)と、前記点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ
1, θ
2とを用いて、これらの接線の交点Cの座標(x
s, y
s)を計算する交点座標計算部と、
前記点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)と、前記交点Cの座標(x
s, y
s)とを用いて、ハイパーパラメータα(ただし、|α|≦1)を求めることにより、前記楕円の中心座標(x
c, y
c)と偏角ψ、及び/または、前記楕円の短軸の長さR
bを算出するプロファイル算出部とを含む
ことを特徴とする眼情報推定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の眼情報推定装置であって、
前記プロファイル決定情報取得部は、
前記所定の行に隣接する行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する点の座標と、前記点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)とを用いて、前記点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ
1, θ
2を取得する
ことを特徴とする眼情報推定装置。
【請求項4】
眼情報推定装置が、対象者の眼球を撮影した画像から、当該画像に含まれる所定の行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)と、瞳孔または虹彩の形状を楕円であると仮定した場合の点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ
1, θ
2とを取得する
とともに当該画像に含まれる瞳孔または虹彩の外縁に対して楕円フィッティングを行うことにより前記楕円の長軸の長さRを取得するプロファイル決定情報取得ステップ
と、
前記眼情報推定装置が、前記点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)と、前記点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ
1, θ
2と、前記楕円の長軸の長さRとを用いて、瞳孔または虹彩の位置を表す前記楕円の中心座標(x
c, y
c)と偏角ψ、及び/または、瞳孔または虹彩の大きさを表す前記楕円の短軸の長さR
bを算出する眼情報算出ステップと
を含む眼情報推定方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の眼情報推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞳孔や虹彩に関する位置/大きさの情報を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
瞳孔は、人が見ている領域の輝度や心理状態に応じて大きさが変化することが知られている。この瞳孔の大きさや位置の変化を用いることにより、例えば、音の顕著度合いを推定することができる(参考特許文献1)。
(参考特許文献1:特開2015-132783号公報)
参考特許文献1で用いた瞳孔の大きさや位置の変化の推定には、例えば、眼球運動計測器と呼ばれる専用の装置(非特許文献1)や非特許文献2に記載の方法を用いることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】tobii pro, [online], [平成30年6月6日検索], インターネット<URL:https://www.tobiipro.com/ja/?gclid=EAIaIQobChMI9dzRgfq92wIVlYePCh2l1ge6EAAYASAAEgLqy_D_BwE>
【文献】Nystrom, M., Hooge, I., Holmqvist, K. ,”Post-saccadic oscillations in eye movement data recorded with pupil-based eye trackers reflect motion of the pupil inside the iris”, Vision Research, Vol.92, pp.59-66, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1にあるような一般的な眼球運動計測器では、カメラで撮影した画像を用いて瞳孔の大きさを計測する。具体的には、撮影した画像から瞳孔のエッジ(外縁)を検出し、検出したエッジの点の集合に対して円フィッティングをかけることにより、瞳孔径及び瞳孔の中心位置を求める。そのため、撮影した画像中に瞳孔全体が含まれている必要があり、半瞬目のような状態では、瞳孔径が過小評価される上に、瞳孔の中心位置もずれるという問題がある。また、虹彩は通常上下が眼瞼に遮蔽されているため、市販の眼球運動計測器では検出することができない。
【0005】
非特許文献2では、瞳孔の中心位置を基準として水平方向に走査することにより虹彩のエッジを検出した上で中心位置を求めているため、瞳孔中心と虹彩中心は垂直方向について常に同じ位置を出力する。そのため、非特許文献2の方法では垂直方向の位置情報については信頼することができない。また、そもそも水平方向の位置情報についても、虹彩の中心位置と瞳孔の中心位置が上下でずれている場合には、非特許文献2の方法では正確な情報が得られないという問題がある。
【0006】
そこで本発明では、対象者の眼球を撮影した画像において瞳孔または虹彩の一部が隠れていたとしても、当該画像を用いて瞳孔や虹彩に関する位置/大きさの情報を推定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、対象者の眼球を撮影した画像から、当該画像に含まれる所定の行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と、瞳孔または虹彩の形状を楕円であると仮定した場合の点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ1, θ2とを取得するプロファイル決定情報取得部と、Rを前記楕円の長軸の長さとし、前記点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と、前記点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ1, θ2と、前記楕円の長軸の長さRとを用いて、瞳孔または虹彩の位置を表す前記楕円の中心座標(xc, yc)と偏角ψ、及び/または、瞳孔または虹彩の大きさを表す前記楕円の短軸の長さRbを算出する眼情報算出部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対象者の眼球を撮影した画像において瞳孔または虹彩の一部が隠れていたとしても、当該画像を用いて瞳孔や虹彩に関する位置/大きさの情報を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】眼情報推定装置100の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】眼情報推定装置100の動作の一例を示すフローチャート。
【
図3】隣接する2行の上にある瞳孔(虹彩)の外縁に対応する4つの点の一例を示す図。
【
図4】眼情報算出部130の構成の一例を示すブロック図。
【
図5】眼情報算出部130の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0011】
<技術的背景>
位置/大きさの情報を推定する対象は、瞳孔または虹彩とする。また、瞳孔や虹彩の位置/大きさの推定には、対象者の眼球を撮影した画像を用いる。推定に際して、撮影した画像中の瞳孔や虹彩の形状は楕円であると仮定する。したがって、瞳孔や虹彩の位置/大きさは、楕円の中心座標、偏角/長軸の長さ、短軸の長さとして推定されることになる。具体的には、対象者の眼球を撮影した画像に含まれる所定の行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点P1、点P2の座標とこれらの点における楕円(つまり、推定対象である瞳孔または虹彩を表す楕円)の接線の傾きから、楕円のプロファイルである中心座標、偏角、長軸の長さ、短軸の長さを推定する。その際、所定のサンプリング周波数で画像を撮影している間、長軸の長さは変化しないものと仮定する。つまり、当該画像から長軸の長さを取得できるものとする。以下、その長さをRとする。
【0012】
以上より、瞳孔や虹彩の位置/大きさを推定する問題は、楕円上の点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と当該2点における楕円の接線の傾きθ1, θ2と楕円の長軸の長さRから楕円の中心座標(xc, yc)、偏角ψ、長軸の長さRa、短軸の長さRbを求める問題に帰着する(ただし、Ra=Rである)。
【0013】
なお、対象者の眼球を撮影した画像から、点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)、当該2点における楕円の接線の傾きθ1, θ2、楕円の長軸の長さRを求める方法については、後述する。
【0014】
以下、上記問題を解く手順について説明する。一般に、2次元平面上の任意の位置にある楕円は、以下の方程式により表される。
【0015】
【0016】
ここでは、上記問題を解くために、任意の位置にある楕円がx軸上の点(1, 0)、y軸上の点(0, 1)を通り、点(1, 0)においてx軸、点(0, 1)においてy軸に接する楕円に対応するように座標変換し、当該変換後の楕円が以下の式で表されることを用いて計算を行う。
【0017】
【0018】
ここで、αのことをハイパーパラメータという。
【0019】
以下、詳しく説明する。点P1における楕円の接線と点P2における楕円の接線の交点Cの座標(xs, ys)は、点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)、当該2点における楕円の接線の傾きθ1, θ2を用いて次式により表せる。
【0020】
【0021】
ここで、交点Cが点(0, 0)、点P1が点(1, 0)、点P2が点(0, 1)にそれぞれ対応するように座標系を変換して得られる楕円の方程式は、
【0022】
【0023】
として、次式により表現できる。
【0024】
【0025】
すると、楕円のプロファイル、つまり、中心座標(xc, yc)、偏角ψ、長軸の長さRa、短軸の長さRbは、ハイパーパラメータαを用いて、以下のように表現できる。
【0026】
【0027】
ただし、
【0028】
【0029】
である。ここで、式(4)中のRa,b
2は、Ra
2またはRb
2の意味であり、式(4)の右辺の値(つまり、±を用いて表される2つの値)のうち小さい方がRb
2、大きい方がRa
2であることを意味する。また、式(4)の右辺の平方根がRa, Rbとなる。
【0030】
なお、長軸の長さに対する短軸の長さの比r(=Rb/Ra)も、ハイパーパラメータαを用いて以下のように表現することができる。
【0031】
【0032】
以下、式(2a)と式(2b)をハイパーパラメータαを用いた中心座標(xc, yc)の表現という。同様に、式(3)をハイパーパラメータαを用いた偏角ψの表現、式(4)をハイパーパラメータαを用いた長軸の長さRaの表現、ハイパーパラメータαを用いた短軸の長さRbの表現、式(8)をハイパーパラメータαを用いた長軸の長さに対する短軸の長さの比rの表現という。また、ハイパーパラメータαのことを楕円プロファイルの表現に用いるハイパーパラメータともいう。
【0033】
したがって、上記表現を用いれば、式(4)を用いてRa=Rとなるハイパーパラメータα(ただし、|α|≦1)を求めることにより、中心座標(xc, yc)、偏角ψ、短軸の長さRbを求めることができる。
【0034】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図2を参照して、眼情報推定装置100を説明する。
図1は、眼情報推定装置100の構成を示すブロック図である。
図2は、眼情報推定装置100の動作を示すフローチャートである。
図1に示すように眼情報推定装置100は、画像取得部110と、プロファイル決定情報取得部120と、眼情報算出部130と、記録部190を含む。記録部190は、眼情報推定装置100の処理に必要な情報を適宜記録する構成部である。
【0035】
図2に従い眼情報推定装置100の動作について説明する。
【0036】
[画像取得部110]
S110において、画像取得部110は、対象者の眼球を撮影した画像を取得し、出力する。ここで、画像撮影に用いるカメラは、スマートフォンのカメラのようなサンプリング周波数が比較的低いカメラを想定しているが、サンプリング周波数が高いカメラを用いてもよい。なお、カメラは、左右両方の眼球を撮影するように設定してもよいし、いずれか一方の眼球のみを撮影するように設定してもよい。以下では、一方の眼球のみを撮影するように設定しているものとする。
【0037】
[プロファイル決定情報取得部120]
S120において、プロファイル決定情報取得部120は、S110で取得した画像を入力とし、当該画像に含まれる所定の行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と、瞳孔または虹彩の形状を楕円であると仮定した場合の点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ1, θ2と、当該楕円の長軸の長さRとをプロファイル決定情報として取得し、出力する。以下、点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)、点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ1, θ2、楕円の長軸の長さRを取得する方法について説明する。
【0038】
点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)は、例えば、参考非特許文献1に記載された方法を用いて瞳孔または虹彩の領域/境界を検出することにより、取得することができる。
(参考非特許文献1:Daugman, J, “Probing the uniqueness and randomness of IrisCodes: Results from 200 billion iris pair comparisons”, Proceedings of the IEEE, Vol.94, No.11, pp.1927-1935, 2006.)
【0039】
点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ
1, θ
2は、所定の行に隣接する行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する点の座標と、点P1、点P2の座標(x
1, y
0), (x
2, y
0)とを用いて取得することができる。具体的には、以下のようにして求める。まず、所定の行に隣接する行のうち、画像中、上側に位置する行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点P1’、点P2’の座標を(x
1’, y
0’), (x
2’, y
0’)とし、傾きθ
1’, θ
2’を次式により求める(
図3参照)。
【0040】
【0041】
同様に、所定の行に隣接する行のうち、画像中、下側に位置する行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点P1”、点P2”の座標を(x1”, y0”), (x2”, y0”)とし、傾きθ1”, θ2” を次式により求める。
【0042】
【0043】
そして、傾きθ1, θ2を、傾きθ1’, θ2’, θ1”, θ2”を用いて次式により求める。
【0044】
【0045】
つまり、傾きθ1, θ2は、所定の行に隣接する行のうち、画像中、上側に位置する行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点の座標と点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)とを用いて計算した傾きと、所定の行に隣接する行のうち、画像中、下側に位置する行の上にある瞳孔または虹彩の外縁に対応する2つの点の座標と点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)とを用いて計算した傾きの平均値として求められる。
【0046】
楕円の長軸の長さRは、画像に含まれる瞳孔または虹彩の外縁に対して楕円フィッティングを行った結果として得られる長軸の長さとして取得する。
【0047】
[眼情報算出部130]
S130において、眼情報算出部130は、S120で取得した点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)、点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ1, θ2、楕円の長軸の長さRを入力とし、点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と、点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ1, θ2と、楕円の長軸の長さRとを用いて、瞳孔または虹彩の位置を表す楕円の中心座標(xc, yc)と偏角ψ、及び/または、瞳孔または虹彩の大きさを表す楕円の短軸の長さRbを算出し、楕円の中心座標(xc, yc)と偏角ψ、及び/または、楕円の長軸の長さRaと短軸の長さRbを出力する。なお、長軸の長さRaについては、入力された値Rを出力すればよい。
【0048】
以下、
図4~
図5を参照して眼情報算出部130について説明する。
図4は、眼情報算出部130の構成を示すブロック図である。
図5は、眼情報算出部130の動作を示すフローチャートである。
図4に示すように眼情報算出部130は、交点座標計算部131と、プロファイル算出部132を含む。
【0049】
図5に従い眼情報算出部130の動作について説明する。
【0050】
[交点座標計算部131]
S131において、交点座標計算部131は、点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と点P1、点P2における楕円の接線の傾きθ1, θ2とを用いて、これらの接線の交点Cの座標(xs, ys)を計算する。具体的には、式(1)により交点Cの座標(xs, ys)を計算する。
【0051】
[プロファイル算出部132]
S132において、プロファイル算出部132は、点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と、S131で計算した交点Cの座標(xs, ys)とを用いて、ハイパーパラメータα(ただし、|α|≦1)を求めることにより、楕円の中心座標(xc, yc)と偏角ψ、及び/または、楕円の短軸の長さRbを算出する。以下、具体的に説明する。
【0052】
まず、プロファイル算出部132は、点P1、点P2の座標(x1, y0), (x2, y0)と、交点Cの座標(xs, ys)とを用いて、ハイパーパラメータαを用いた長軸の長さRaの表現(つまり、式(4))を求める。
【0053】
次に、プロファイル算出部132は、式(4)の長軸の長さRaの表現と長軸の長さRを用いて、ハイパーパラメータαを決定する。具体的には、式(4)の値がRとなるα(|α|≦1)を求めることになる。なお、式(4)の値がRとなるαが|α|≦1を満たさない場合には、当該画像から瞳孔または虹彩の位置/大きさを推定することができない(推定不能)と判断し、以下説明するプロファイルの算出を行わないものとする。
【0054】
そして、プロファイル算出部132は、上記決定したαを用いて、式(2a)、式(2b)、式(3)より、楕円の中心座標(xc, yc)と偏角ψを算出する。また、プロファイル算出部132は、上記決定したαを用いて、式(4)より、楕円の短軸の長さRbを算出する。なお、眼情報算出部130が、眼情報として瞳孔または虹彩の位置を表すプロファイルを出力する場合は、楕円の中心座標(xc, yc)と偏角ψのみを算出すればよいし、眼情報として瞳孔または虹彩の大きさを表すプロファイルを出力する場合は、楕円の短軸の長さRbのみを算出すればよい。
【0055】
なお、左右両方の眼球を撮影した画像を用いる場合は、S120~S130までの処理を各眼球に対して実行するようにすればよい。
【0056】
本実施形態の発明によれば、対象者の眼球を撮影した画像において瞳孔または虹彩の一部が隠れていたとしても、当該画像を用いて瞳孔や虹彩に関する位置/大きさの情報を推定することが可能となる。
【0057】
<変形例1>
上述の説明では、長軸の長さRは画像から取得するものとして説明した。しかし、この方法に限らず、別の方法で長軸の長さRを求め、それを利用するようにしてもよい。例えば、成人の虹彩の大きさは時間的に大きく変化しないので、過去に既に虹彩の大きさを求めていてデータとして保有しているのであれば、カメラと眼球の距離に基づいて長軸の長さRの推定値を計算し、利用するようにしてもよい。この場合、例えば、長軸の長さRは記録部190に事前に記録しておくようにすればよい。
【0058】
<変形例2>
上述の説明では、画像中の所定の一行に関するプロファイル決定情報からプロファイル(瞳孔または虹彩の位置/大きさを表すプロファイル)を算出するものとして説明したが、プロファイル算出方法はこの方法に限るものではない。例えば、同一画像中の(楕円(の一部)が含まれる)複数の行に対して、S120~S130までの処理を繰り返し実行することにより、複数のプロファイルを取得し、当該取得した複数のプロファイルから求めた代表値(例えば、平均値等)をプロファイルとして出力するようにしてもよい。
【0059】
<補記>
本発明の装置は、例えば単一のハードウェアエンティティとして、キーボードなどが接続可能な入力部、液晶ディスプレイなどが接続可能な出力部、ハードウェアエンティティの外部に通信可能な通信装置(例えば通信ケーブル)が接続可能な通信部、CPU(Central Processing Unit、キャッシュメモリやレジスタなどを備えていてもよい)、メモリであるRAMやROM、ハードディスクである外部記憶装置並びにこれらの入力部、出力部、通信部、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置の間のデータのやり取りが可能なように接続するバスを有している。また必要に応じて、ハードウェアエンティティに、CD-ROMなどの記録媒体を読み書きできる装置(ドライブ)などを設けることとしてもよい。このようなハードウェア資源を備えた物理的実体としては、汎用コンピュータなどがある。
【0060】
ハードウェアエンティティの外部記憶装置には、上述の機能を実現するために必要となるプログラムおよびこのプログラムの処理において必要となるデータなどが記憶されている(外部記憶装置に限らず、例えばプログラムを読み出し専用記憶装置であるROMに記憶させておくこととしてもよい)。また、これらのプログラムの処理によって得られるデータなどは、RAMや外部記憶装置などに適宜に記憶される。
【0061】
ハードウェアエンティティでは、外部記憶装置(あるいはROMなど)に記憶された各プログラムとこの各プログラムの処理に必要なデータが必要に応じてメモリに読み込まれて、適宜にCPUで解釈実行・処理される。その結果、CPUが所定の機能(上記、…部、…手段などと表した各構成要件)を実現する。
【0062】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、上記実施形態において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
【0063】
既述のように、上記実施形態において説明したハードウェアエンティティ(本発明の装置)における処理機能をコンピュータによって実現する場合、ハードウェアエンティティが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記ハードウェアエンティティにおける処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0064】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD-RAM(Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP-ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0065】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0066】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0067】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、ハードウェアエンティティを構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。