(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】生体情報解析装置、生体情報解析方法、および生体情報解析システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/00 ZDM
(21)【出願番号】P 2018188909
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 隆行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 里江子
(72)【発明者】
【氏名】松永 賢一
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-238908(JP,A)
【文献】特開2018-094172(JP,A)
【文献】特開2004-358235(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068037(WO,A1)
【文献】特開2015-085199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得部と、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、
前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部と
を備え
、
予め設定された基準に基づいて前記複数の生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定部をさらに備え、
前記データ解析部は、前記異常値判定部によって異常値を含むと判定された場合には、その異常値を除いて前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出し、
前記計測異常検出部は、前記代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、前記データ解析部によって実際に前記代表値の時系列データが出力された出力期間が短いことを前記異常として検出する
ことを特徴とする生体情報解析装置。
【請求項2】
センサによって計測された生体情報を
取得するセンサデータ取得部と、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、
前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部と
を備え、
前記データ解析部は、前記代表値として前記複数の生体情報の平均値を算出し、
前記複数の生体情報の平均値の時系列データに基づいて、前記複数の時間周期に含まれる任意の期間ごとの前記複数の生体情報を統計的に要約した要約値を算出する第1要約部をさらに備え、
前記計測異常検出部は、前記第1要約部において要約値を算出するにあたり、前記平均値が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する
ことを特徴とする生体情報解析装置。
【請求項3】
センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得部と、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、
前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部と
を備え
、
前記複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データに基づいて、質的変数である生体状態情報を算出し、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻での前記生体状態情報の値の発生割合に基づいて、前記生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する第2要約部をさらに備え、
前記計測異常検出部は、前記第2要約部において要約値を算出するにあたり、前記生体状態情報の値の発生割合が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する
ことを特徴とする生体情報解析装置。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか1項に記載の生体情報解析装置において、
予め設定された基準に基づいて前記複数の生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定部をさらに備え、
前記計測異常検出部は、前記複数の生体情報の時系列データに含まれる異常値の割合が所定の値を超えていることを前記異常として検出する
ことを特徴とする生体情報解析装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の生体情報解析装置において、
前記計測異常検出部は、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データの挙動が、予め定められた基準範囲に対して外れる、または収まることを前記異常として検出することを特徴とする生体情報解析装置。
【請求項6】
センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得ステップと、
予め設定された基準に基づいて前記生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定ステップと、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出
し、前記異常値判定ステップにおいて異常値を含むと判定された場合には、その異常値を除いて前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析ステップと、
前記データ解析ステップで算出された前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出
し、前記代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、前記データ解析ステップによって実際に前記代表値の時系列データが出力された出力期間が短いことを前記異常として検出する計測異常検出ステップと、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示ステップと
を備えることを特徴とする生体情報解析方法。
【請求項7】
センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得ステップと、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出
し、前記代表値として前記複数の生体情報の平均値を算出するデータ解析ステップと、
前記複数の生体情報の平均値の時系列データに基づいて、前記複数の時間周期に含まれる任意の期間ごとの前記複数の生体情報を統計的に要約した要約値を算出する第1要約ステップと、
前記データ解析ステップで算出された前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出し、
前記第1要約ステップにおいて要約値を算出するにあたり、前記平均値が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する計測異常検出ステップと、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示ステップと
を備えることを特徴とする生体情報解析方法。
【請求項8】
センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得ステップと、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析ステップと、
前記複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データに基づいて、質的変数である生体状態情報を算出し、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻での前記生体状態情報の値の発生割合に基づいて、前記生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する第2要約ステップと、
前記データ解析ステップで算出された前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出
し、前記第2要約ステップにおいて要約値を算出するにあたり、前記生体状態情報の値の発生割合が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する計測異常検出ステップと、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示ステップと
を備えることを特徴とする生体情報解析方法。
【請求項9】
ユーザに装着されたセンサにより計測された生体情報を外部へ出力するセンサ端末と、
前記センサ端末から出力された前記生体情報を受信し、外部へ出力する中継端末と、
前記センサ端末または前記中継端末から出力された、前記生体情報を受信し、表示装置に表示させる外部端末と、
を備え、
前記センサ端末、前記中継端末、および前記外部端末の少なくともいずれかは、
前記生体情報を取得するセンサデータ取得部と、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、
前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部と
を備え
、
予め設定された基準に基づいて前記複数の生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定部をさらに備え、
前記データ解析部は、前記異常値判定部によって異常値を含むと判定された場合には、その異常値を除いて前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出し、
前記計測異常検出部は、前記代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、前記データ解析部によって実際に前記代表値の時系列データが出力された出力期間が短いことを前記異常として検出する
ことを特徴とする生体情報解析システム。
【請求項10】
ユーザに装着されたセンサにより計測された生体情報を外部へ出力するセンサ端末と、
前記センサ端末から出力された前記生体情報を受信し、外部へ出力する中継端末と、
前記センサ端末または前記中継端末から出力された、前記生体情報を受信し、表示装置に表示させる外部端末と、
を備え、
前記センサ端末、前記中継端末、および前記外部端末の少なくともいずれかは、
前記生体情報を取得するセンサデータ取得部と、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、
前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部と
を備え
、
前記データ解析部は、前記代表値として前記複数の生体情報の平均値を算出し、
前記複数の生体情報の平均値の時系列データに基づいて、前記複数の時間周期に含まれる任意の期間ごとの前記複数の生体情報を統計的に要約した要約値を算出する第1要約部をさらに備え、
前記計測異常検出部は、前記第1要約部において要約値を算出するにあたり、前記平均値が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する
ことを特徴とする生体情報解析システム。
【請求項11】
ユーザに装着されたセンサにより計測された生体情報を外部へ出力するセンサ端末と、
前記センサ端末から出力された前記生体情報を受信し、外部へ出力する中継端末と、
前記センサ端末または前記中継端末から出力された、前記生体情報を受信し、表示装置に表示させる外部端末と、
を備え、
前記センサ端末、前記中継端末、および前記外部端末の少なくともいずれかは、
前記生体情報を取得するセンサデータ取得部と、
複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、
前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、
算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部と
を備え
、
前記複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データに基づいて、質的変数である生体状態情報を算出し、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻での前記生体状態情報の値の発生割合に基づいて、前記生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する第2要約部をさらに備え、
前記計測異常検出部は、前記第2要約部において要約値を算出するにあたり、前記生体状態情報の値の発生割合が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する
ことを特徴とする生体情報解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報解析装置、生体情報解析方法、および生体情報解析システムに関し、特にユーザに装着されたセンサによって計測される生体情報を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年スポーツや医療において、心拍数や加速度などの生体情報がウェアラブルデバイス等で計測され、活用されている。例えば、非特許文献1は、繊維状の伝導性素材によるウェアラブル生体電極インナーを着用したユーザの心拍数や心電波形を長時間にわたり安定的に計測する技術を開示している。また、非特許文献1は、ユーザに着用されたウェアラブルデバイスに内蔵された加速度センサの計測データに基づいて、ユーザの姿勢や歩容を推定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】河西、小笠原、中島、塚田、「着るだけで生体情報計測を可能とする機能素材“hitoe”の開発及び実用」電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン41号(2017年6月)(Vol.11 No.1)
【文献】杉原哲朗、“誤差とn数”、[online]、[2018年9月20日検索]、インターネット<http://heartland.geocities.jp/ecodata222/ed/edj1-7-1-5.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、継続して安定的にユーザの生体情報を計測することが可能である。しかし、ユーザにおける日常の活動は日々同じとは限らない。そのため、日によって変動があるような場合に、計測された生体情報に含まれる異常の発生を把握することが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、計測された生体情報に含まれる異常の発生を把握することができる生体情報解析装置、生体情報解析方法、および生体情報解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明に係る生体情報解析装置は、センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得部と、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部とを備え、予め設定された基準に基づいて前記複数の生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定部をさらに備え、前記データ解析部は、前記異常値判定部によって異常値を含むと判定された場合には、その異常値を除いて前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出し、前記計測異常検出部は、前記代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、前記データ解析部によって実際に前記代表値の時系列データが出力された出力期間が短いことを前記異常として検出することを特徴とする。
また、本発明に係る生体情報解析装置は、センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得部と、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部とを備え、前記データ解析部は、前記代表値として前記複数の生体情報の平均値を算出し、前記複数の生体情報の平均値の時系列データに基づいて、前記複数の時間周期に含まれる任意の期間ごとの前記複数の生体情報を統計的に要約した要約値を算出する第1要約部をさらに備え、前記計測異常検出部は、前記第1要約部において要約値を算出するにあたり、前記平均値が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出することを特徴とする。
また、本発明に係る生体情報解析装置は、センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得部と、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部とを備え、前記複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データに基づいて、質的変数である生体状態情報を算出し、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻での前記生体状態情報の値の発生割合に基づいて、前記生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する第2要約部をさらに備え、前記計測異常検出部は、前記第2要約部において要約値を算出するにあたり、前記生体状態情報の値の発生割合が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る生体情報解析装置において、予め設定された基準に基づいて前記複数の生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定部をさらに備え、前記計測異常検出部は、前記複数の生体情報の時系列データに含まれる異常値の割合が所定の値を超えていることを前記異常として検出してもよい。
【0011】
また、本発明に係る生体情報解析装置において、前記計測異常検出部は、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データの挙動が、予め定められた基準範囲に対して外れる、または収まることを前記異常として検出してもよい。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る生体情報解析方法は、センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得ステップと、予め設定された基準に基づいて前記生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定ステップと、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出し、前記異常値判定ステップにおいて異常値を含むと判定された場合には、その異常値を除いて前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析ステップと、前記データ解析ステップで算出された前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出し、前記代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、前記データ解析ステップによって実際に前記代表値の時系列データが出力された出力期間が短いことを前記異常として検出する計測異常検出ステップと、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示ステップとを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る生体情報解析方法は、センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得ステップと、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出し、前記代表値として前記複数の生体情報の平均値を算出するデータ解析ステップと、前記複数の生体情報の平均値の時系列データに基づいて、前記複数の時間周期に含まれる任意の期間ごとの前記複数の生体情報を統計的に要約した要約値を算出する第1要約ステップと、前記データ解析ステップで算出された前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出し、前記第1要約ステップにおいて要約値を算出するにあたり、前記平均値が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する計測異常検出ステップと、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示ステップとを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る生体情報解析方法は、センサによって計測された生体情報を取得するセンサデータ取得ステップと、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析ステップと、前記複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データに基づいて、質的変数である生体状態情報を算出し、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻での前記生体状態情報の値の発生割合に基づいて、前記生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する第2要約ステップと、前記データ解析ステップで算出された前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出し、前記第2要約ステップにおいて要約値を算出するにあたり、前記生体状態情報の値の発生割合が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出する計測異常検出ステップと、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示ステップとを備えることを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係る生体情報解析システムは、ユーザに装着されたセンサにより計測された生体情報を外部へ出力するセンサ端末と、前記センサ端末から出力された前記生体情報を受信し、外部へ出力する中継端末と、前記センサ端末または前記中継端末から出力された、前記生体情報を受信し、表示装置に表示させる外部端末と、を備え、前記センサ端末、前記中継端末、および前記外部端末の少なくともいずれかは、前記生体情報を取得するセンサデータ取得部と、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部とを備え、予め設定された基準に基づいて前記複数の生体情報が異常値を含むか否かを判定する異常値判定部をさらに備え、前記データ解析部は、前記異常値判定部によって異常値を含むと判定された場合には、その異常値を除いて前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出し、前記計測異常検出部は、前記代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、前記データ解析部によって実際に前記代表値の時系列データが出力された出力期間が短いことを前記異常として検出することを特徴とする。
また、本発明に係る生体情報解析システムは、ユーザに装着されたセンサにより計測された生体情報を外部へ出力するセンサ端末と、前記センサ端末から出力された前記生体情報を受信し、外部へ出力する中継端末と、前記センサ端末または前記中継端末から出力された、前記生体情報を受信し、表示装置に表示させる外部端末と、を備え、前記センサ端末、前記中継端末、および前記外部端末の少なくともいずれかは、前記生体情報を取得するセンサデータ取得部と、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部とを備え、前記データ解析部は、前記代表値として前記複数の生体情報の平均値を算出し、前記複数の生体情報の平均値の時系列データに基づいて、前記複数の時間周期に含まれる任意の期間ごとの前記複数の生体情報を統計的に要約した要約値を算出する第1要約部をさらに備え、前記計測異常検出部は、前記第1要約部において要約値を算出するにあたり、前記平均値が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出することを特徴とする。
また、本発明に係る生体情報解析システムは、ユーザに装着されたセンサにより計測された生体情報を外部へ出力するセンサ端末と、前記センサ端末から出力された前記生体情報を受信し、外部へ出力する中継端末と、前記センサ端末または前記中継端末から出力された、前記生体情報を受信し、表示装置に表示させる外部端末と、を備え、前記センサ端末、前記中継端末、および前記外部端末の少なくともいずれかは、前記生体情報を取得するセンサデータ取得部と、複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データを解析して、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出するデータ解析部と、前記データ解析部が算出した前記代表値の時系列データまたは前記代表値の時系列データの算出に用いられた前記複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された前記生体情報に含まれる異常を検出する計測異常検出部と、算出された前記複数の生体情報の代表値および検出された前記異常を示す情報を出力する提示部とを備え、前記複数の時間周期にわたる前記生体情報の時系列データに基づいて、質的変数である生体状態情報を算出し、前記複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻での前記生体状態情報の値の発生割合に基づいて、前記生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する第2要約部をさらに備え、前記計測異常検出部は、前記第2要約部において要約値を算出するにあたり、前記生体状態情報の値の発生割合が要約値の算出のために統計上不十分であることを前記異常として検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報から算出された、これら複数の生体情報の代表値に基づいて、複数の生体情報に含まれる異常を検出し、異常を示す情報を提示するので、計測された生体情報に含まれる異常の発生を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体情報解析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る生体情報解析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る生体情報解析方法を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係る生体情報解析システムの構成の概要を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態に係る生体情報解析システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態に係る生体情報解析システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態に係る生体情報解析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態に係る生体情報解析システムの動作を説明するシーケンス図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態に係る要約値の提示例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第3の実施の形態に係る生体情報解析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第3の実施の形態に係る生体情報解析システムの動作を説明するシーケンス図である。
【
図12】
図12は、第3の実施の形態に係る異常の検出を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第3の実施の形態に係る要約値の提示例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第4の実施の形態に係る異常の検出を説明するための図である。
【
図15】
図15は、第4の実施の形態に係る要約値の提示例を説明するための図である。
【
図16】
図16は、第5の実施の形態に係る異常の検出を説明するための図である。
【
図17】
図17は、第5の実施の形態に係る要約値の提示例を説明するための図である。
【
図18】
図18は、第6の実施の形態に係る異常値判定を説明するための図である。
【
図19】
図19は、第6の実施の形態に係る要約値の提示例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1から
図19を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係る生体情報解析装置1の構成の概要を説明する。
図1は、生体情報解析装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0017】
[生体情報解析装置の機能ブロック]
生体情報解析装置1は、センサデータ取得部10、データ解析部11、計測異常検出部12、時刻取得部13、記憶部14、提示部15、および送受信部16を備える。
【0018】
センサデータ取得部10は、ユーザに装着された後述のセンサ105によって計測されたユーザの生体情報を取得する。より具体的には、センサデータ取得部10は、例えば、センサ105として心拍計がユーザに装着されている場合には、心拍計で計測された心電位に基づく心電波形から心拍数を算出する。また、センサデータ取得部10は、センサ105として加速度センサがユーザに装着されている場合には、加速度センサで計測されたアナログ加速度信号を所定のサンプリングレートでデジタル信号に変換する。
【0019】
センサデータ取得部10は、心拍数やデジタルデータの加速度信号と計測時刻とが互いに関連付けられた時系列データを出力する。この例では、心拍数および加速度データが生体情報となる。センサデータ取得部10によって計測された生体情報の時系列データは後述する記憶部14に記憶される。
【0020】
データ解析部11は、センサデータ取得部10によって取得されたユーザの生体情報の時系列データを解析して、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の典型的な値を示す代表値を算出する。なお、時間周期としては、例えば、1分、1時間、1日、1カ月、または1年など任意の時間的長さを設定することができる。
【0021】
また、データ解析部11は、センサデータ取得部10によって取得された生体情報の時系列データに基づいて、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報の平均値を代表値として算出する。一例として、時間周期を1日とした場合には、データ解析部11は複数日にわたる生体情報の時系列データから確実における同時刻に計測された複数の生体情報の平均値を代表値として算出する。
【0022】
また、他の例として、時間周期を1時間とした場合には、データ解析部11は、複数時間にわたる生体情報の時系列データから各時間周期における分単位の同時刻に計測された複数の生体情報の平均値を算出すればよい。また、他の例として、時間周期を1分とした場合には、データ解析部11は、複数分にわたる生体情報の時系列データから各時間周期における秒単位の同一時刻に計測された複数の生体情報の平均値を算出すればよい。
【0023】
なお、データ解析部11が生体情報の代表値を算出する、互いに対応する計測時刻で取得された複数の生体情報とは、厳密な同時刻にサンプリングされた生体情報同士である必要はなく、直近とみなせる時間的範囲において計測された生体情報であればよい。
【0024】
計測異常検出部12は、データ解析部11が算出した代表値の時系列データ、または、代表値の時系列データの算出に用いられた複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された生体情報に含まれる異常を検出する。例えば、時間周期を1日とした場合において、計測異常検出部12は、複数日にわたる生体情報の時系列データから、データ解析部11が算出した各日における同時刻に計測された複数の生体情報の平均値の時系列データに含まれる異常値を検出する。
【0025】
計測異常検出部12が検出する異常とは、データ解析部11が複数の生体情報の代表値を算出するにあたり、有意義な代表値を得るために必要とされる条件を満たさない状況をいう。
【0026】
時刻取得部13は、生体情報解析装置1において用いられる基準時刻を取得する。時刻取得部13は、例えば、生体情報解析装置1に設けられた時計107から時刻情報を取得してもよいが、図示しないタイムサーバから取得してもよい。時刻取得部13によって取得された時刻情報は、センサデータ取得部10が生体情報のサンプリングを行う際や、データ解析部11が生体情報の代表値を算出する際などに用いられる。
【0027】
記憶部14は、センサデータ取得部10によって取得されたユーザの生体情報の時系列データを記憶する。また、記憶部14は、時間周期に関する設定情報やデータ解析部11による生体情報の代表値を記憶する。
【0028】
提示部15は、データ解析部11が算出した複数の生体情報の代表値および計測異常検出部12によって検出された異常を示す情報を出力する。より詳細には、提示部15は、後述の表示装置109に代表値や、検出された異常を示す情報を表示させる。提示部15は、異常を示す情報を画像、音声や触覚などユーザが認知可能な方法により提示すればよい。
【0029】
また、提示部15は、代表値や異常を示す情報に基づいてユーザを支援する情報を生成して提示してもよい。この場合、提示部15は、ユーザを支援する情報を、表示装置109や音声出力装置、光源、アクチュエータ、温熱機器などで実現される動作装置(図示しない)に出力してもよい。
【0030】
送受信部16は、後述するセンサ105によって計測された生体情報を示すセンサデータを受信する。また、送受信部16は、データ解析部11が算出した複数の生体情報の代表値や計測異常検出部12が検出した異常を示す情報を、通信ネットワークを介して外部に送出することができる。
【0031】
[生体情報解析装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する生体情報解析装置1のハードウェア構成の例について
図2のブロック図を用いて説明する。
【0032】
図2に示すように、生体情報解析装置1は、例えば、バス101を介して接続されるCPU102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置106、時計107、入出力装置108を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。生体情報解析装置1は、外部に設けられたセンサ105と、生体情報解析装置1内部に設けられた表示装置109とがそれぞれバス101を介して接続されている。
【0033】
主記憶装置103には、CPU102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。CPU102と主記憶装置103とによって、
図1に示したデータ解析部11や計測異常検出部12を含む生体情報解析装置1の各機能が実現される。
【0034】
通信インターフェース104は、通信ネットワークNWを介して各種外部電子機器との通信を行うためのインターフェース回路である。
【0035】
通信インターフェース104としては、例えば、LTE、3G、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの無線データ通信規格に対応した演算インターフェースおよびアンテナが用いられる。通信インターフェース104によって、
図1で説明した送受信部16が実現される。
【0036】
センサ105は、例えば、心拍計、心電計や加速度センサなどのセンサによって実現される。センサ105は、予め設定された計測期間にわたってユーザに装着され、ユーザの心拍数や加速度などの生体情報を計測する。
【0037】
補助記憶装置106は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置106には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0038】
補助記憶装置106は、センサ105により計測された生体情報の時系列データを記憶する記憶領域や、生体情報解析装置1が生体情報の解析処理を行うためのプログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置106によって、
図1で説明した記憶部14が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムやなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0039】
時計107は、コンピュータに内蔵されている内蔵時計などで構成され、時刻を計時する。時計107によって得られた時刻情報は、生体情報のサンプリングや代表値の算出処理に用いられる。なお、時計107によって得られた時刻情報は、
図1で説明した時刻取得部13によって取得される。
【0040】
入出力装置108は、センサ105や表示装置109など外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりするI/O端子により構成される。
【0041】
表示装置109は、生体情報解析装置1の提示部15として機能する。表示装置109は液晶ディスプレイなどによって実現される。また、表示装置109は、生体情報の代表値や異常を示す情報に基づいて生成されるユーザの支援情報を出力する動作装置を構成する。
【0042】
[生体情報解析方法]
次に、上述した構成を有する生体情報解析装置1の動作について
図3のフローチャートを用いて説明する。まず、センサ105がユーザに装着された状態で以下の処理が実行される。また、以下においては、生体情報としてユーザの心拍数が計測される場合を具体例に挙げて説明する。
【0043】
センサデータ取得部10は、ユーザに装着されたセンサ105で計測された生体情報を送受信部16を介して取得する(ステップS1)。より具体的には、時間周期として、例えば、「1日」が設定されている場合、センサデータ取得部10は、例えば2日間など複数の時間周期にわたって計測されたユーザの心電波形を取得する。取得された2日間にわたる心電波形は記憶部14に蓄積される。
【0044】
次に、センサデータ取得部10は、取得した生体情報のノイズの除去を行い、また、アナログ信号の生体情報をデジタル信号に変換する処理を行う(ステップS2)。具体的には、センサデータ取得部10は、心拍計で構成されるセンサ105で計測された心電位に対してフィルタリングによるノイズの除去を行い、また、心電位に基づく心電波形から心拍数を算出する。センサデータ取得部10によって処理された生体情報の時系列データは記憶部14に記憶される(ステップS3)。
【0045】
次に、データ解析部11は、複数の生体情報の代表値を算出する(ステップS4)。より具体的には、データ解析部11は、ユーザの2日間(2周期)にわたる心拍数の時系列データに対して、1日目と2日目における互いに対応する計測時刻に取得された心拍数同士の平均値を代表値として算出する。
【0046】
データ解析部11は、次の式(1)を用いて複数の生体情報、例えば、心拍数の時系列データの平均値A
tを求める。
【数1】
【0047】
上式(1)において、tは計測時刻であり、サンプリングレートに基づく計測頻度で計測が行われる。Nは、計測した日数すなわち時間周期の数を表す。このNは、複数の時間周期のそれぞれにおける互いに対応する計測時刻でのデータ数を示すことにもなる。例えば2日間にわたって生体情報が計測された場合には、N=2である。iは計測日(時間周期)であり、各計測日に対応する。例えば、1日目の心拍数が100bpm、2日目の心拍数が60bpmにそれぞれ推移したとすると、平均値Atは常に80bpm((100+60)/2=80)となる。したがって、2日間での互いに対応する計測時刻における心拍数の平均値は80bpmとなる。
【0048】
このように、複数日のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻で取得された複数の生体情報の平均値を算出することで、複数日(複数の時間周期)にわたって計測されたユーザの心拍数の日によるばらつきが緩和され、真にユーザの習慣や振る舞いに近い生体情報の計測値を得ることができる。
【0049】
図3のフローチャートに戻り、データ解析部11によって得られたユーザの生体情報の代表値は記憶部14に記憶される。次に、計測異常検出部12は、データ解析部11によって算出された複数の生体情報の代表値に基づいて、複数の生体情報に含まれる異常を検出する(ステップS5)。その後、提示部15は、ステップS4で算出された生体情報の代表値およびステップS5で検出された異常を示す情報を表示装置109に表示させる(ステップS6)。また、提示部15は、代表値や異常を示す情報に基づいて、ユーザに対する支援情報を生成し、表示装置109等に表示させてもよい。
【0050】
以上説明した生体情報解析装置1の各機能は、1つの計算機に設けられる場合だけでなく、通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続された複数の計算機に分散して構成されてもよい。
【0051】
[生体情報解析システム]
次に、本発明に係る生体情報解析装置1を具体的に構成した生体情報解析システムについて
図4および
図5を参照して説明する。
生体情報解析システムは、例えば、
図4に示すように、ユーザ500に装着されるセンサ端末200と、中継端末300と、外部端末400とを備える。センサ端末200、中継端末300、外部端末400のすべてもしくはいずれかは、
図1で説明したデータ解析部11や計測異常検出部12などの生体情報解析装置1の各機能を備える。なお、以下においては、中継端末300が
図1で説明したデータ解析部11および計測異常検出部12を備える、外部端末400が、
図1で説明した提示部15を備えるものとする。
【0052】
[センサ端末の機能ブロック]
センサ端末200は、センサ201、センサデータ取得部202、データ記憶部203、およびデータ送信部204を備える。センサ端末200は、例えば、ユーザ500の体の体幹に配置されて複数の時間周期にわたる生体情報を計測する。センサ端末200は、計測したユーザ500の生体情報を通信ネットワークNWを介して中継端末300に送信する。
【0053】
センサ201は、心拍計や加速度センサなどで実現される。センサ201が備える加速度センサの3軸は、例えば、
図4に示すように、X軸は体の左右方向、Y軸は体の前後方向、Z軸は体の上下方向に平行に設けられる。センサ201は、
図2で説明したセンサ105に対応する。
【0054】
センサデータ取得部202は、センサ201によって計測された生体情報を取得する。より詳細には、センサデータ取得部202は、取得した生体情報のノイズの除去やサンプリング処理を行い、デジタル信号の生体情報における時系列データを求める。センサデータ取得部202は、
図1で説明したセンサデータ取得部10に対応する。
【0055】
データ記憶部203は、センサ201によって計測された生体情報の時系列データや、センサデータ取得部202によって処理されて得られたデジタル信号による生体情報の時系列データを記憶する。データ記憶部203は、記憶部14(
図1)に対応する。
【0056】
データ送信部204は、データ記憶部203に記憶されている生体情報の時系列データを、通信ネットワークNWを介して中継端末300に送信する。データ送信部204は、例えば、LTE、3G、無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)等の無線データ通信規格に対応した無線通信を行うための通信回路を備える。データ送信部204は、送受信部16(
図1)に対応する。
【0057】
[中継端末の機能ブロック]
中継端末300は、データ受信部301、データ記憶部302、時刻取得部303、データ解析部304、計測異常検出部305、およびデータ送信部306を備える。中継端末300は、センサ端末200から受信した、複数の時間周期にわたって計測されたユーザ500の生体情報の時系列データを解析する。さらに、中継端末300は、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出する。また、中継端末300は、算出された生体情報の代表値に基づいて、計測された生体情報に含まれる異常を検出する。算出された代表値および異常は外部端末400に送信される。
【0058】
中継端末300は、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどによって実現される。
【0059】
データ受信部301は、通信ネットワークNWを介してセンサ端末200から生体情報の時系列データを受信する。データ受信部301は、送受信部16(
図1)に対応する。
【0060】
データ記憶部302は、データ受信部301が受信したユーザ500の生体情報や、データ解析部304によって算出された生体情報の代表値を記憶する。また、データ記憶部302は、計測異常検出部305が検出した異常に関する情報を記憶する。データ記憶部302は、記憶部14(
図1)に対応する。
【0061】
時刻取得部303は、データ解析部304による生体情報の解析処理において用いられる時刻情報を内蔵時計(時計107)から取得する。時刻取得部303は、
図1で説明した時刻取得部13に対応する。
【0062】
データ解析部304は、データ受信部301によって受信されたユーザ500の複数の時間周期にわたる生体情報の時系列データを解析し、複数の時間周期のそれぞれにおける互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報から、これら複数の生体情報の典型的な値を示す代表値を求める。例えば、複数日にわたって計測されたユーザ500の心拍数の同時間帯での平均値を、上述した式(1)を用いて算出する。算出された生体情報の平均値は、データ記憶部302に記憶される。データ解析部304は、
図1で説明したデータ解析部11に対応する。
【0063】
計測異常検出部305は、データ解析部304によって算出された代表値の時系列データ、または、代表値の算出に用いられた複数の生体情報の時系列データに基づいて、計測された生体情報に含まれる異常を検出する。計測異常検出部305は、
図1で説明した計測異常検出部12に対応する。
【0064】
データ送信部306は、データ解析部304によって算出された生体情報の代表値、および計測異常検出部305によって検出された異常を示す情報を通信ネットワークNWを介して外部端末400に送信する。データ送信部306は、送受信部16(
図1)に対応する。
【0065】
[外部端末の機能ブロック]
外部端末400は、データ受信部401、データ記憶部402、提示処理部403、および提示部404を備える。外部端末400は、中継端末300から通信ネットワークNWを介して受信したユーザ500の生体情報の代表値および異常を示す情報を提示する。また、外部端末400は、代表値や異常を示す情報に基づいたユーザ500に対する支援情報の提示を行う。
【0066】
外部端末400は、中継端末300と同様に、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどによって実現される。外部端末400は受信した代表値や異常を示す情報を表示する表示装置を備えている。
【0067】
また、外部端末400は、代表値や異常を示す情報に基づいて生成されるユーザ500を支援する情報を出力する動作装置(図示しない)を備えている。外部端末400が備える動作装置の例として、表示装置、音声出力装置、光源、アクチュエータ、温熱機器などが挙げられる。
【0068】
音声出力装置としては、例えば、スピーカや楽器を用いてもよい。光源としては、LEDや電球を用いてもよい。アクチュエータとしては、振動子やロボットアーム、電気治療器を用いてもよい。また、温熱機器としては、ヒータやペルチェ素子などを用いてもよい。
【0069】
データ受信部401は、通信ネットワークNWを介して中継端末300から生体情報の代表値や異常を示す情報を受信する。データ受信部401は、送受信部16(
図1)に対応する。
【0070】
データ記憶部402は、データ受信部401によって受信された生体情報の代表値や異常を示す情報を記憶する。データ記憶部402は、記憶部14(
図1)に対応する。
【0071】
提示処理部403は、スタイルシートなどにより、生体情報の代表値や異常を示す情報における表示形式を制御する。また、提示処理部403は、代表値や異常を示す情報に基づいて、ユーザ500に対する支援情報を生成する。提示処理部403は、
図1で説明した提示部15に対応する。
【0072】
提示部404は、提示処理部403による指示に基づいて、生体情報の代表値および異常を示す情報を出力する。また、提示部404は、生体情報の代表値および異常を示す情報に基づいて生成されたユーザ500に対する支援情報を提示する。より詳細には、外部端末400が備える表示装置に文字情報やグラフなどにより代表値や異常を示す情報を表示する。
【0073】
また、提示部404は、表示装置に支援情報を表示したり、外部端末400が備える図示しないスピーカから、アラート音などにより支援情報を出力してもよい。その他、提示部404は、振動や光などユーザ500が認知可能な方法により代表値や異常を示す情報、および支援情報を提示することができる。提示部404は、
図1で説明した提示部15に対応する。
【0074】
このように、本発明に係る生体情報解析システムは、生体情報解析装置1の各機能がセンサ端末200、中継端末300、および外部端末400に分散された構成を有し、ユーザ500の生体情報の取得から代表値の算出、異常の検出、および代表値や異常を示す情報の提示に関する処理を分散して行う。
【0075】
[生体情報解析システムの動作シーケンス]
次に、上述した構成を有する生体情報解析システムの動作について、
図6のシーケンス図を用いて説明する。
【0076】
図6に示すように、まず、センサ端末200は、ユーザ500に装着されて、複数の時間周期にわたる生体情報を計測する(ステップS100)。センサ端末200は、計測された生体情報のデジタル信号を求め、必要に応じてノイズの除去を行う。
【0077】
次に、センサ端末200は、通信ネットワークNWを介して中継端末300に生体情報を送信する(ステップS101)。中継端末300は、センサ端末200から生体情報の時系列データを受信すると、生体情報の時系列データの代表値として平均値を算出する(ステップS102)。より詳細には、中継端末300のデータ解析部304は、上述した式(1)を用いて複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の平均値を算出する。
【0078】
次に、計測異常検出部305は、ステップS102で算出された代表値に基づいて、計測された生体情報に含まれる異常を検出する(ステップS103)。その後、中継端末300は、通信ネットワークNWを介して、生体情報の代表値および検出した異常を示す情報を外部端末400に送信する(ステップS104)。外部端末400は、代表値および異常を示す情報を受信すると、提示処理を実行する(ステップS105)。すなわち、外部端末400は、代表値および異常を示す情報の視覚的表現を制御し、表示装置109に表示させる。また、外部端末400は、代表値や異常を示す情報に基づいてユーザ500に対する支援情報を生成し、表示装置109などに表示させる。
【0079】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る生体情報解析装置1は、複数の時間周期にわたって計測されたユーザ500の心拍数などの複数の生体情報に対する解析を行って、互いに対応する計測時刻で取得された複数の生体情報の代表値を算出する。また、生体情報解析装置1は、算出された複数の生体情報の代表値の時系列データに基づいて、生体情報に含まれる異常を検出する。そのため、「日」などの時間周期によって生体情報の値に変動がある場合でも、計測されたユーザの生体情報に含まれる異常を検出することができる。
【0080】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
第1の実施の形態では、計測異常検出部12が、データ解析部11によって算出された代表値の時系列データに基づいて、計測された生体情報に含まれる異常を検出する場合について説明した。これに対し、第2の実施の形態に係る生体情報解析装置1Aは、生体情報を統計的に要約する要約部17(第1要約部、第2要約部)をさらに備える。そして、計測異常検出部12は、要約部17が要約を求めるにあたり、生体情報の平均値などの代表値が要約値の算出のために統計上不十分であることを異常として検出する。以下、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明する。
【0082】
図7に示すように、生体情報解析装置1Aは、要約部17をさらに備える。
要約部17は、データ解析部11が算出した生体情報の平均値に基づく統計的な要約値を算出する。より詳細には、要約部17(第1要約部)は、データ解析部11によって算出された生体情報の平均値の時系列データに基づいて、任意の期間での生体情報を統計的に要約した要約値を算出する。要約部17が算出する要約値は、累積値、平均値、生体情報が計測される時間周期において任意の生体情報の値が占める割合を示す内訳、中央値、25%水準点、75%水準点、標準偏差、標準誤差の少なくとも1つを含む。
【0083】
また、要約部17(第2要約部)は、質的変数を示す生体情報(以下、「生体状態情報」ということがある。)の値の発生割合に基づいて、その生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する。より詳細には、要約部17は、センサデータ取得部10によって取得された生体情報の時系列データから、質的変数である生体状態情報を算出し、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻での生体状態情報の値の発生割合に基づいて、その生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する。
【0084】
ここで、生体状態情報は質的変数である。生体状態情報は、例えば、ユーザの姿勢や状態を示す情報であり、時系列データの平均値において中間的な値をとることができない変数である。一方、心拍数のような生体情報は、いわゆる量的変数であるため、時系列データにおいて中間的な値で表される平均値の算出が行える。例えば、ユーザの伏せている(横に寝ている)状態を「0」、立位のように起きている状態を「1」としたときに、生体状態情報は、この2値のどちらかに分類される性質を有する。しかし、本実施の形態で扱う生体状態情報は、中間的な値、例えば、上記ユーザの姿勢の例において「0.5」という値は意味をなさない。
【0085】
要約部17は、複数の時間周期(複数日)における互いに対応する計測時刻に取得された生体状態情報が同じ値であれば平均値は同じ値とする。一方、複数日の互いに対応する計測時刻における生体状態情報が異なる値をとる場合は、それぞれの値の割合に応じて計測期間を分割する。
【0086】
例えば、1日目(第1周期目)に計測された生体状態情報として、0時から12時までは起きている状態であれば、「1」とし、12時から24時までは伏せている状態を示す「0」とする。また、例えば、2日目(第2周期目)の生体状態情報として、0時から6時までおよび12時から18時までの時間帯では起きている状態であれば「1」となり、6時から12時および18時から24時までの時間帯で伏せている状態であれば「0」となる。
【0087】
また、要約部17は、2日分(2周期分)の生体状態情報の平均を示す状態を算出する。例えば、1日(1周期)のうち、0時から6時および18時から24時の生体状態情報が示す状態は、1日目および2日目の値が同じ値であるため、それぞれ1日目および2日目と同じ値が算出される。
【0088】
一方、上記の例において、6時から12時および12時から18時の時間帯では、1日目と2日目との値が互いに異なるため、6時から12時および12時から18時までの期間をそれぞれ2分割して6時から9時までの時間帯では状態として「1」、9時から12時までの時間帯では状態として「0」を割り当てる。
【0089】
同様に、12時から18時までの時間帯についても2分割して状態「1」と「0」とをそれぞれ組み合わせて割り当てる。
【0090】
要約部17は、上記のように時間の分割によって生体状態情報を示す値の平均を求める。また、要約部17は、時間の分割によって求めた生体状態情報の平均を示す値の発生割合に基づいて、生体状態情報を統計的に要約した要約値を算出する。
【0091】
より具体的には、要約部17は、「1と0の状態をとったのは1日(1周期)においてそれぞれ50%」という要約を算出する。なお、状態を示す値は2値の場合に限らず、3値以上でも同様の計算が可能である。例えば、もしも状態が「0,1,2」の3値をとり、「0,0,1」という組み合わせが30分間存在したとしたら、「0」と「1」の発生割合は、「2:1」であるので、「0をとった時間が20分、1をとった時間が10分」というような要約を算出すればよい。すわなちj、kを整数、Nを実数として、k個の状態をP1,P2,...Pkとし、こうした組み合わせがNの時間だけ発生したとすると、ひとつの状態あたり発生割合はN/kとなる。ただし、k個の状態のうち、同一とみなせる状態がj個ある場合、それらは和をとれるので、発生割合はjN/kとなる。
【0092】
計測異常検出部12は、要約部17において要約値を算出するにあたり、データ解析部11によって算出された代表値が要約値の算出のために統計上不十分であることを異常として検出する。例えば、データ解析部11によって算出された心拍数などの生体情報の平均値の時系列データにおける統計的なサンプルの大きさが、統計的に十分な精度を確保し得るサンプルの大きさに満たない場合に、計測異常検出部12は異常として検出する。
【0093】
また、計測異常検出部12は、要約部17が算出した要約値が、ユーザの状態のような質的変数に係る生体状態情報の要約値である場合にも、同様に、生体状態情報の値の発生割合が、要約値の算出のために統計上不十分であることを異常として検出する。
【0094】
提示部15は、要約部17によって算出された要約値とともに計測異常検出部12によって検出された異常を示す情報を出力する。
【0095】
図9は、提示部15が表示装置109に表示させる生体情報の要約値の一例を示している。
図9に示すように、提示部15は、計測期間1週から7週までの心拍数の箱ひげ図として心拍数の要約値を表示装置109に表示させてもよい。
図9の横軸は時間(週)を示し、縦軸は心拍数(bpm)を示している。同図では、心拍数の75%水準点、平均値、25%水準定を箱で示し、正負の標準偏差の2倍(±2SD)の範囲をひげで示している。
【0096】
図9に示すような標準偏差に代表される統計的な要約値を算出するためには一定数のサンプルの大きさが必要となる。例えば、非特許文献2には、標準偏差を求める際のサンプルの大きさ(n数)に関し、「nが10以上は必要」、「nが30でも不安」、「nは100くらいは欲しい」などの主張がされている。
【0097】
こうしたサンプルの大きさに対する信頼性を確保するため、算出された平均値やデータ点数として一定数、例えば閾値を10と設定し、10点に満たない場合は、
図9に示すように、対応する要約値とともに、異常を示す情報として、例えば、ラベル「D」を提示してもよい。なお、一定数のデータ点数として10点というのは、例示であり、統計的に十分な精度を確保し得る任意のサンプルの大きさを採用すればよい。
【0098】
このように、統計的にサンプルの大きさが十分に確保されていないことを異常として検出して提示することで、ユーザなどに対してサンプルの大きさが十分でないことの認知を促すことができる。また、生体情報の計測におけるセンサ105の取り扱いの不備などの可能性を示すことにもなる。そのような場合には、センサ105の取り扱い不備の改善を促すことができる。
【0099】
[生体情報解析システムの動作シーケンス]
次に、本実施の形態に係る生体情報解析装置1Aの各機能が、
図5で説明したセンサ端末200、中継端末300、および外部端末400を備える生体情報解析システムによって実現される場合の動作について、
図8に示すシーケンス図を参照して説明する。なお、センサ端末200、中継端末300、および外部端末400の各機能ブロックは、
図5で説明した構成と同様である。また、中継端末300がデータ解析部11、計測異常検出部12、および要約部17を備え、外部端末400が提示部15を備えるものとする。
【0100】
まず、センサ端末200がユーザ500に装着されて、複数の時間周期にわたってユーザ500の生体情報を計測する(ステップS200)。より具体的には、センサ端末200は、例えば、心拍計(センサ201)でユーザ500の心電位を計測する。センサデータ取得部202は、センサ201から心電位を取得し、その心電位に基づく心電波形から心拍数を算出する。取得された心電位や心拍数はデータ記憶部203に記憶される。
【0101】
次に、センサ端末200は、計測した生体情報を通信ネットワークNWを介して中継端末300に送信する(ステップS201)。より具体的には、データ送信部204が、データ記憶部203から心拍数の時系列データを読み出して、通信ネットワークNWを介して中継端末300に送信する。
【0102】
中継端末300は、センサ端末200からユーザ500の生体情報の時系列データを受信すると、データ解析部304は、生体情報の時系列データの代表値として平均値を算出する(ステップS202)。次に、中継端末300が備える要約部17は、ステップS202で算出された生体情報の時系列データの平均値に基づいて、任意の期間での生体情報を統計的に要約した要約値を算出する(ステップS203)。
【0103】
次に、計測異常検出部305は、要約部17がステップS203で要約値を算出する際に用いた生体情報の平均値が、要約値の算出のために統計上不十分であることを異常として検出する(ステップS204)。より具体的には、計測異常検出部305は、生体情報の時系列データの統計的なサンプルの大きさが、統計的に十分な精度を確保し得るサンプルの大きさに満たないことを異常として検出する。
【0104】
その後、中継端末300は、生体情報の時系列データの平均値、要約値、および異常を示す情報を通信ネットワークNWを介して外部端末400に送信する(ステップS205)。その後、外部端末400は、生体情報の時系列データの平均値、要約値、および異常を示す情報を受信する。外部端末400は、受信した平均値、要約値、および異常を示す情報に基づいて、提示処理を行い(ステップS205)、要約値および異常を示す情報を表示装置109に表示させる。また、外部端末400は、受信した平均値、要約値、および異常を示す情報に基づいて、ユーザ500に対する支援情報を生成して出力してもよい。
【0105】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る生体情報解析装置1Aによれば、計測異常検出部12が、要約部17において要約値を算出するにあたり、生体情報の平均値や生体状態情報の値の発生割合が要約値の算出のために統計上不十分であることを異常として検出する。そのため、ユーザなどに対して、算出された生体情報の代表値について、サンプルの大きさが統計的に十分に確保されていないことを提示して認知を促すことができる。また、検出された異常がセンサ105の取り扱い不備に起因する場合には、異常を示す情報を提示することで、センサ105の取り扱いの不備の改善を促すことができる。
【0106】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1および第2の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0107】
第1の実施の形態では、計測異常検出部12がデータ解析部11によって算出された生体情報の代表値の時系列データに基づいて、計測された生体情報に含まれる異常を検出する場合について説明した。これに対し、第3の実施の形態では、計測異常検出部12は、データ解析部11が算出した代表値の時系列データの期間の長さに基づいて異常を検出する。また、第3の実施の形態に係る生体情報解析装置1Bは、センサデータ取得部10によって取得された生体情報における異常値の有無を判定する異常値判定部18をさらに備える。
【0108】
図10に示すように、異常値判定部18は、予め設定された基準に基づいて、生体情報の時系列データが異常値を含むか否かを判定する。異常値判定部18による判定結果は、データ解析部11に入力される。より詳細には、異常値判定部18は、生体情報の値に対して予め設定された上限閾値および下限閾値に基づいて、上限閾値を超える生体情報の値および下限閾値を下回る生体情報の値については、その計測値を無効とする。異常値判定部18によって異常値が除かれた生体情報の値はデータ解析部11に入力される。
【0109】
データ解析部11は、異常値判定部18によって異常値を含むと判定された場合には、その異常値を除いた複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報の平均値を代表値として算出する。
【0110】
計測異常検出部12は、代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、データ解析部11によって実際に出力された代表値の時系列データの出力期間が短いことを異常として検出する。
【0111】
[生体情報解析システムの動作シーケンス]
次に、本実施の形態に係る生体情報解析装置1Bの各機能が、
図5で説明したセンサ端末200、中継端末300、および外部端末400を備える生体情報解析システムによって実現される場合の動作について、
図11に示すシーケンス図を参照して説明する。なお、センサ端末200、中継端末300、および外部端末400の各機能ブロックは、
図5で説明した構成と同様である。また、中継端末300がデータ解析部11、計測異常検出部12、要約部17、および異常値判定部18を備え、外部端末400が提示部15を備えるものとする。
【0112】
まず、センサ端末200がユーザ500に装着されて、複数の時間周期にわたってユーザ500の生体情報を計測する(ステップS300)。より具体的には、センサ端末200は、例えば、心拍計(センサ201)でユーザ500の心電位を計測する。センサデータ取得部202は、センサ201から心電位を取得し、その心電位に基づく心電波形から心拍数を算出する。取得された心電位や心拍数はデータ記憶部203に記憶される。
【0113】
次に、センサ端末200は、計測した生体情報を通信ネットワークNWを介して中継端末300に送信する(ステップS301)。より具体的には、データ送信部204が、データ記憶部203から心拍数の時系列データを読み出して、通信ネットワークNWを介して中継端末300に送信する。
【0114】
中継端末300は、センサ端末200からユーザ500の生体情報の時系列データを受信すると、異常値判定部18において、受信した生体情報の時系列データに異常値が含まれているか否かを判定する(ステップS302)。
【0115】
より具体的には、異常値判定部18は、データ記憶部302に記憶されている心拍数の上限閾値(例えば、190bpm)および下限閾値(例えば、40bpm)を読み出す。異常値判定部18は、受信されたユーザ500の生体情報において上限閾値を超える値、および下限閾値を下回る値を無効とする。
【0116】
例えば、
図12の(a)に示すように、第1周期目のユーザ500の心拍数h1は、12時から24時の時間帯で下限閾値40bpmを下回っている。また、第2周期目のユーザの心拍数h2は、6時から12時および18時から24時までの時間帯で同様に下限閾値40bpmを下回っている。したがって、異常値判定部18は、下限閾値を下回った心拍数の値を無効とした心拍数の値をデータ解析部11に入力する。
【0117】
次に、データ解析部11は、異常値判定部18による判定結果に基づいて、ユーザ500の生体情報について複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報の平均値を算出する(ステップS303)。より詳細には、データ解析部11は上述した式(1)を用いて、
図12の(b)に示すように、異常値と判定された値を除いた第1周期および第2周期の同時間帯での心拍数の平均値h3を算出する。
【0118】
図12の(b)に示すように、各周期の0時から6時までの心拍数の平均値は80bpm、6時から12時までの心拍数の平均値は、異常値を無効としたため100bpm、同様に、12時から18時の心拍数の平均値は60bpmが算出され、18時から24時は第1周期および第2周期の心拍数は両方とも下限閾値を下回ったため平均値は算出されない。すなわち、6時から12時および12時から18時の時間帯では、上述した式(1)において、心拍数の平均値Atに含まれるデータ数はN=1となり、例えば、A
t=(60)/1=60bpmのように計算される。18時から24時までの時間帯においては、心拍数のデータは無い(空)として、平均の計算結果を返さなくてもよい。
【0119】
このように、生体情報に含まれる異常値を特定し、異常値を平均化処理の算出から除くことで、生体情報の解析結果に対する異常値の影響を抑制することができる。そのため、センサ201の計測条件によらず被験者であるユーザ500の生体の振る舞いに沿った生体情報の計測値を得ることができる。
【0120】
図11に戻り、計測異常検出部305は、平均値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、異常値が除かれた生体情報に基づいて算出された平均値の時系列データの実際の出力期間が短いことを異常として検出する(ステップS304)。例えば、
図12の(b)に示すように、データ解析部304によって算出された複数の心拍数の平均値において、18時から24時の出力期間における、心拍数の平均値の出力値が空となっている。このような場合、平均化された心拍数の時系列データの実際の出力期間は18時間である。心拍数の平均値を算出する期間として予め定められた出力期間は24時間であるところ、実際の心拍数の平均値の時系列データの出力期間は24時間より6時間程度少ない。
【0121】
このように空が比較的多い生体情報の平均の時系列データが出力される場合、計測異常検出部305は、平均の値として十分な信頼度が得られていないことを異常として検出する。計測異常検出部305は、例えば、代表値を算出する期間として予め定められている時系列データの出力期間である24時間から実際の出力期間の差をとり、その差が2時間を超えた場合に異常として検出してもよい。
図12の(c)に示すように、0時から18時までの時間帯では異常は検出されず、18時から24時の時間帯においては異常を示す値「1」となっている。
【0122】
図11に戻り、中継端末300が備える要約部17は、ステップS303で算出された生体情報の平均値に基づいて統計的な要約値を算出する(ステップS304)。次に、中継端末300は、算出された複数の生体情報の平均値、異常を示す情報、および要約値を通信ネットワークNWを介して外部端末400に送信する(ステップS305)。
【0123】
その後、外部端末400は、複数の生体情報の平均値、異常を示す情報、および要約値を受信する。外部端末400は、受信した情報に基づいて提示処理を行い(ステップS306)、生体情報の平均値、異常を示す情報、および要約値を表示装置に表示する。さらに、外部端末400は、生体情報の平均値、異常を示す情報、および要約値に基づいてユーザ500に対する別の支援情報を生成して出力してもよい。
【0124】
例えば、提示部404は、
図12の(c)に示すようなグラフを生成し、異常を示す情報として表示装置109に表示させてもよい。また、提示部404は、
図13に示すような生体情報の要約値として、例えば、計測期間1週から7週までの心拍数の箱ひげ図として表示装置109に表示させてもよい。
図13では、心拍数の75%水準点、平均値、25%水準定を箱で示し、正負の標準偏差の2倍(±2SD)の範囲をひげで示している。例えば、
図13に示すように、平均化された心拍数の時系列データにおいて予め定められた出力期間と、実際の平均値の時系列データの出力期間との差が2時間を超えた場合に、異常を示す情報として、対応する要約値と共にラベル「T」と表示してもよい。
【0125】
なお、上述の説明では、生体情報として心拍数などの量的変数を用いているが、量的変数ではなくユーザの姿勢などを示す質的変数であっても同様に異常を検出することができる。例えば、ある連続した24時間において、センサ105から得られた生体状態情報が、寝ている状態(40%)、起きている状態(60%)、および歩いている状態(0%)である場合を仮定する。このような場合、24時間にわたって一度も歩行が認められていないというのは、センサ105の故障や、ユーザが車イスの利用者であるなどの事情が存在すると考えられる。
【0126】
例えば、計測異常検出部305は、特定の状態の割合(上記の例であれば、歩いている状態)が5%を下回る場合に異常として検出すればよい。また、提示部404において、異常が検出された要約値とともに、異常を示す情報として、例えば、ラベル「W」を提示すればよい。こうした特別の事情に留意可能とすれば、生体情報解析装置1Bの利便性が向上する。
【0127】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、計測異常検出部12が、代表値の時系列データが出力される出力期間について、予め定められた出力期間に対して、データ解析部11によって実際に出力された代表値の時系列データの出力期間が短いことを異常として検出する。また、提示部15が、検出された異常を示す情報を提示する。そのため、ユーザなどに対して異常の発生の認知を促すことができ、その後の生体情報の計測に備えてセンサ105の取り扱いの不備の改善など、異常の原因となった不備の改善を促すことができる。
【0128】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第3の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0129】
第4の実施の形態では、計測異常検出部12が、データ解析部11が算出した代表値の時系列データの挙動が、予め定められた基準範囲に収まることを異常として検出する。第4の実施の形態に係る生体情報解析装置1Aの構成は、第2の実施の形態と同様である(
図7)。
【0130】
生体情報の一例である心拍数は、1日の生活において相応に変動するのが自然であるが、変動が著しくとぼしいユーザも存在する。例えば、ユーザが血圧を下げるための降圧剤を服用している場合には、副作用として活動時の心拍数の上昇が抑制される。このようなケースでは、ユーザが薬を服薬しているので正常な心拍変動が得られない。そのため、計測された心拍数の要約値の算出において特別な注意を払うことが望ましい。
【0131】
図14の(a)は、約48時間の心拍数データを示し、
図14の(b)は、対応する時間におけるユーザの状態を示したものである。ユーザの状態として、上段から順に、歩いている状態、起きている状態、および横になっている状態を示している。なお、
図14の(b)は、要約部17がユーザの心拍数の時系列データ(
図14の(a))に基づいて算出したユーザの状態である。
【0132】
図14の(a)からわかるように、48時間にわたってユーザの心拍数はほとんど平坦である。また、
図14の(b)からわかるように、ユーザが横になっている状態と起きている状態とにおいて、心拍数の値に顕著な差が生じていない。
【0133】
図15は、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻でのユーザの状態を示す値の発生割合に基づいて、要約部17がユーザの状態を統計的に要約した要約値を示している。
図15の(a)は、ユーザが横になっている状態(臥位時)での心拍数の平均値の箱ひげ図を、算出された要約値として示している。
図15の(b)は、ユーザが起きている状態(立位、座位時)での心拍数の平均値の箱ひげ図を、算出された要約値として示している。
【0134】
計測異常検出部12は、例えば、
図15に示す要約値において、立位および座位時の心拍数の平均値が、臥位時心拍数の平均値の±5を超えない基準範囲内の挙動である場合には、異常として検出する。なお、計測異常検出部12は、データ解析部11によって算出された心拍数など生体情報の平均値の時系列データの変化量に対して基準範囲を設定し、平均値の時系列データの挙動が設定された基準範囲内に収まる場合に異常として検出してもよい。
【0135】
提示部15は、計測異常検出部12によって検出された異常を示す情報として、対応する要約値と共に、例えば、ラベル「B」を表示装置109に表示させる。
【0136】
以上説明したように、第4の実施の形態によれば、計測異常検出部12が、データ解析部11によって算出された生体情報の時系列データの挙動が、予め定められた基準範囲内にあることを異常として検出する。また、提示部15は、検出された異常を示す情報を出力する。そのため、ユーザの循環器の状態や投薬の状態が特別な状況におかれていることの認知を促すことができる。
【0137】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第4の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0138】
第4の実施の形態では、計測異常検出部12が、データ解析部11が算出した代表値の時系列データの挙動が、予め定められた基準範囲に収まることを異常として検出する場合について説明した。これに対し、第5の実施の形態では、計測異常検出部12が、データ解析部11によって算出された代表値の時系列データの挙動が、予め定められた基準範囲に対して外れることを異常として検出する。第5の実施の形態に係る生体情報解析装置1Aの構成についても、第2の実施の形態と同様である(
図7)。
【0139】
生体情報の一例である心拍数は、1日の生活において相応に変動するのが自然であるが、変動が著しく大きいユーザも存在する。例えば、ユーザにおいて心房細動性頻脈が生じている場合には、横になっている状態と起きている状態との心拍数の差が極端に大きくなることが知られている。このようなケースにおいては、ユーザの疾病のために正常な心拍変動が得られないため、計測された心拍数の要約値の算出において、特別な注意を払うことが望ましい。
【0140】
図16の(a)は、約48時間の心拍数データを示し、
図16の(b)は、対応する時間におけるユーザの状態を示したものである。ユーザの状態として、上段から順に歩いている状態、起きている状態、および横になっている状態を示している。なお、
図16の(b)は、要約部17がユーザの心拍数の時系列データ(
図16の(a))に基づいて算出したユーザの状態である。
【0141】
図16の(a)からわかるように、48時間にわたってユーザの心拍数の変化が極端に大きい。また、
図16の(b)からわかるように、ユーザが横になっている状態と起きている状態とにおいて、心拍数の値において極端に大きい差が生じている。
【0142】
図17は、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻でのユーザの状態を示す値の発生割合に基づいて、要約部17がユーザの状態を統計的に要約した要約値を示している。
図17の(a)は、ユーザが横になっている状態(臥位時)での心拍数の平均値の箱ひげ図を、算出された要約値として示している。
図17の(b)は、ユーザが起きている状態(立位、座位時)での心拍数の平均値の箱ひげ図を、算出された要約値として示している。
【0143】
計測異常検出部12は、例えば、
図17に示す要約値において、立位および座位時の心拍数の平均値が、臥位時心拍数の平均値より40以上大きい場合に、予め定められた基準範囲に対して外れている異常として検出する。なお、計測異常検出部12は、データ解析部11によって算出された心拍数などの平均値の時系列データの変化量に対して基準範囲を設定し、平均値の時系列データの挙動が設定された基準範囲から外れていることを異常として検出してもよい。
【0144】
提示部15は、計測異常検出部12によって検出された異常を示す情報として、対応する要約値とともに、例えば、ラベル「F」を表示装置109に表示させる。
【0145】
以上説明したように、第5の実施の形態によれば、計測異常検出部12が、データ解析部11によって算出された生体情報の時系列データの挙動が、予め定められた基準範囲に対して外れていることを異常として検出する。また、提示部15は、検出された異常を示す情報を出力する。そのため、ユーザの循環器の状態や投薬の状態が特別な状況におかれていることの認知を促すことができる。
【0146】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第5の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0147】
第3の実施の形態では、異常値判定部18が予め設定された基準に基づいて、センサデータ取得部10によって取得された複数の生体情報が異常値を含むか否かを判定する場合について説明した。これに対して、第6の実施の形態では、異常値判定部18により異常値を含むと判定された場合に、計測異常検出部12は、複数の生体情報の時系列データに含まれる異常値の割合が所定の値を超えていることを異常として検出する。
【0148】
第6の実施の形態に係る生体情報解析装置1Bは、第3の実施の形態で説明した生体情報解析装置1Bの構成と同様である。生体情報解析装置1Bは、
図10で示したように、センサデータ取得部10、データ解析部11、時刻取得部13、記憶部14、提示部15、送受信部16、要約部17、および異常値判定部18を備える。
【0149】
異常値判定部18は、センサデータ取得部10によって取得された生体情報の値に対して予め設定された上限閾値および下限閾値に基づいて、上限閾値を超える生体情報の値および下限閾値を下回る生体情報の値については、その計測値を無効とする。
【0150】
計測異常検出部12は、複数の生体情報の時系列データに含まれる異常値の割合が所定の値を超えていることを異常として検出する。より詳細には、異常値判定部18によって上限閾値を超える値や、下限閾値を下回る生体情報の値があると判定された場合には、計測異常検出部12は、上限閾値を超える値や下限閾値を下回る値の数が、センサデータ取得部10によって取得された複数の生体情報の時系列データにおいて一定数より多いことを異常として検出する。
【0151】
提示部15は、計測異常検出部12によって検出された異常を示す情報を表示装置109に表示させる。また、提示部15は、データ解析部11によって算出された代表値や、要約部17によって算出された要約値とともに、異常を示す情報を表示装置109に表示させてもよい。
【0152】
図18の(a)に示すように、センサデータ取得部10によって取得された第1周期目のユーザの心拍数h1は、12時から24時の時間帯で下限閾値40bpmを下回っている。また、第2周期目のユーザの心拍数h2は、6時から12時および18時から24時までの時間帯で同様に下限閾値40bpmを下回っている。異常値判定部18は、下限閾値を下回った心拍数の値を無効とした心拍数の値をデータ解析部11に入力する。
【0153】
ここで、データ解析部11は、例えば、
図18の(b)に示すように、生体情報の時系列データにおいて6時間の出力期間ごとに、生体情報の代表値を算出する場合について説明する。
【0154】
計測異常検出部12は、
図18の(a)に示すように、センサデータ取得部10によって取得された生体情報の値が下限閾値を下回った期間が、例えば2時間など、時系列データに含まれる異常値の割合が所定の値を超えている場合に、異常として検出する。提示部15は、異常を示す情報として、生体情報の値が下限閾値を下回った期間が2時間以上である期間(18時から24時)を示す情報を表示装置109に表示させてもよい。
【0155】
データ解析部11は、異常値判定部18による判定結果に基づいて、ユーザの生体情報について複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報の平均値を算出する。より詳細には、データ解析部11は、
図18の(b)に示すように、異常値と判定された値を除いた第1周期および第2周期の同時間帯での心拍数の平均値h3を基準期間ごとに算出する。
【0156】
図18の(b)に示すように、各周期(1日目および2日目)の0時から6時までの心拍数の平均値は80bpm、6時から12時までの心拍数の平均値は、異常値を無効としたため100bpm、同様に、12時から18時の心拍数の平均値は60bpmが算出され、18時から24時は第1周期および第2周期の心拍数は両方とも下限閾値を下回ったため平均値は算出されない。
【0157】
要約部17は、データ解析部11によって算出された複数の生体情報の代表値の時系列データに基づいて、複数の時間周期(例えば、1日目および2日目)に含まれる任意の期間ごとの複数の生体情報を統計的に要約した要約値を算出する。例えば、要約部17は、1時間、1日、1週間ごと、1カ月、1年などの任意の期間ごとの生体情報の標準偏差などの要約値を算出する。算出された生体情報の要約値は、提示部15によって表示装置109などに表示される。
【0158】
提示部15は、
図19に示すように、例えば、計測期間1週から7週までの心拍数の箱ひげ図を生体情報の要約値として表示装置109に表示させてもよい。
図19では、心拍数の75%水準点、平均値、25%水準定を箱で示し、正負の標準偏差の2倍(±2SD)の範囲をひげで示している。
【0159】
図19に示すように、提示部15は、計測異常検出部12によって検出された異常を示す情報として、対応する要約値とともに、例えば、ラベル「H」を表示装置109に表示させてもよい。
【0160】
このように、第6の実施の形態に係る生体情報解析装置1Bによれば、異常値判定部18がセンサデータ取得部10によって取得された生体情報の値に異常値が含まれると判定した場合に、データ解析部11は、その異常値を排除して生体情報の代表値を算出する。これにより、算出される代表値に対する異常値の影響を抑えることができる。さらに、計測異常検出部12は、異常値判定部18によって判定された生体情報の時系列データに含まれる異常値の割合が所定の値を超えていることを異常として検出する。
【0161】
計測された生体情報に異常値が含まれている場合には、センサ105の取り付け状態など、生体情報の測定状況に何らかの不具合があった可能性がある。したがって、異常値判定部18によって代表値を算出する際の異常値を排除するだけでなく、生体情報の測定情報の不具合を合わせてユーザに通知することができる。そのため、ユーザに対して生体情報の計測状況に不具合がある可能性の認知を促すことができる。
【0162】
以上、本発明の生体情報解析装置、生体情報解析方法、および生体情報解析システムにおける実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【0163】
なお、説明した実施の形態では、センサ105、201が計測、算出する生体情報として、心電位や加速度の場合について説明したが、生体情報はこれらに限らず、例えば、筋電位、心拍、脈拍、血圧、呼吸、姿勢、歩行、移動速度、位置、動作、運動強度、体動、活動量などであってもよい。
【0164】
また、説明した実施の形態では、具体例において、中継端末300がデータ解析部11を備える場合について説明した。しかし、データ解析部11が有する各機能をセンサ端末200、中継端末300、および外部端末400にそれぞれ分散して実現してもよい。
【0165】
例えば、第1データ解析部を有するセンサ端末200、第2データ解析部を有する中継端末300、および第3データ解析部を有する外部端末400が協働して複数の時間周期にわたる生体情報の時系列データを解析して、複数の時間周期のそれぞれにおいて互いに対応する計測時刻に取得された複数の生体情報からこれら複数の生体情報の代表値を算出してもよい。
【0166】
また、説明した実施の形態はそれぞれ組み合わせ可能であり、生体情報解析装置1、1A、1Bは、それぞれ心拍数などの量的変数に分類される生体情報およびユーザの状態などの質的変数に分類される生体情報(生体状態情報)についても解析可能である。
【符号の説明】
【0167】
1…生体情報解析装置、10、202…センサデータ取得部、11、304…データ解析部、12、305…計測異常検出部、13、303…時刻取得部、14…記憶部、15、404…提示部、16…送受信部、101…バス、102…CPU、103…主記憶装置、104…通信インターフェース、105、201…センサ、106…補助記憶装置、107…時計、108…入出力装置、109…表示装置、200…センサ端末、300…中継端末、400…外部端末、203、302、402…データ記憶部、204、306…データ送信部、301、401…データ受信部、403…提示処理部。