(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G06F 11/34 20060101AFI20221122BHJP
G06F 11/07 20060101ALI20221122BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20221122BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G06F11/34 176
G06F11/07 140P
G06F11/07 178
B41J29/38 801
H04N1/00 002B
(21)【出願番号】P 2019045257
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田尾 悟
(72)【発明者】
【氏名】小松原 悟
(72)【発明者】
【氏名】大野 覚
(72)【発明者】
【氏名】永田 拡章
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-4095(JP,A)
【文献】特開2017-204083(JP,A)
【文献】特開2016-45702(JP,A)
【文献】特開2009-251747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/34
G06F 11/07
B41J 29/38
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
当該画像形成装置の動作制御を行うエンジン制御部と、
前記エンジン制御部のログを一時保存する常時ログ記憶部を有する画像処理制御部と、
前記エンジン制御部からの指令に応じて、前記常時ログ記憶部に保存された前記ログをネットワーク経由で他機器に、または、当該画像形成装置の記憶部に保存するネットワーク制御部と、
前記エンジン制御部と前記画像処理制御部との間、及び、前記画像処理制御部と前記ネットワーク制御部との間を通信可能に接続する通信線と、
前記エンジン制御部と前記ネットワーク制御部とを通信可能に接続し、前記指令を前記エンジン制御部から前記ネットワーク制御部に通知するための専用通信線と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記画像処理制御部は、前記常時ログ記憶部に保存されている前記ログが所定サイズに到達するとき、前記通信線を介して前記ログを前記ネットワーク制御部に送信し、
前記ネットワーク制御部は、前記画像処理制御部から受信した前記ログを一時メモリに保存し、前記通信線または前記専用通信線を介して前記指令を前記エンジン制御部から受信するのに応じて、前記一時メモリに保存された前記ログを前記他機器または前記記憶部に保存する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記エンジン制御部のCPUがリセットした場合、前記画像処理制御部は、前記常時ログ記憶部に保存されている前記ログを、前記通信線を介して前記ネットワーク制御部に送信し、
前記エンジン制御部は、前記専用通信線を介して前記指令を前記ネットワーク制御部に送信し、
前記ネットワーク制御部は、前記画像処理制御部から受信した前記ログを一時メモリに保存し、前記指令の受信に応じて、前記一時メモリに保存された前記ログを前記他機器または前記記憶部に保存する、
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
当該画像形成装置の電源オン時または省エネモードからの復帰時には、
前記エンジン制御部で行う初期化シーケンス処理によって、前記エンジン制御部が前記常時ログ記憶部にアクセス可能になったタイミングから、前記画像処理制御部への前記ログの保存が開始され、
前記エンジン制御部が前記ネットワーク制御部と制御コマンドの通信が可能となり、かつ、前記ネットワーク制御部による前記ログの保存ができる状態になってから、前記画像処理制御部は、前記常時ログ記憶部の前記ログを前記ネットワーク制御部に送信する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
当該画像形成装置の電源オフ時または省エネモードへの移行時には、
前記常時ログ記憶部に保存された前記ログを、前記ネットワーク制御部が前記他機器または前記記憶部に保存した後に、前記エンジン制御部が電源オフとなる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記エンジン制御部のログが複数種類あり、前記常時ログ記憶部に区分けされて保持されており、
前記ネットワーク制御部が、前記複数種類のログのうち一つのログを前記他機器または前記記憶部に保存した後に、前記画像処理制御部は他のログを前記ネットワーク制御部に送信する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像処理制御部は、前記常時ログ記憶部に保持されたログデータを、前記ネットワーク制御部内のメモリに、指定したサイズだけDMA転送する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記通信線は、PCIe規格の通信線である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置等の電子装置において、エンジン制御部のログ情報を取得して不揮発性メモリ等に保存することで、エラーや不具合が発生した前後の状況を解析することが既に知られている。
【0003】
特許文献1には、エンジン制御部がCPUリセットした場合でもエンジン制御部のログを残す目的でログ保存基板を有する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のログ保存技術では、例えばエンジン制御部に高価かつ大容量の不揮発メモリを搭載したり、ログ保存の専用基板を搭載したりするなど、メモリやASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)等の追加によるコストアップという問題があった。
【0005】
本発明は、コストアップを最小限に留め、エンジン制御部のログの常時保存を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る画像形成装置は、当該画像形成装置の動作制御を行うエンジン制御部と、前記エンジン制御部のログを一時保存する常時ログ記憶部を有する画像処理制御部と、前記エンジン制御部からの指令に応じて、前記常時ログ記憶部に保存された前記ログをネットワーク経由で他機器に、または、当該画像形成装置の記憶部に保存するネットワーク制御部と、前記エンジン制御部と前記画像処理制御部との間、及び、前記画像処理制御部と前記ネットワーク制御部との間を通信可能に接続する通信線と、前記エンジン制御部と前記ネットワーク制御部とを通信可能に接続し、前記指令を前記エンジン制御部から前記ネットワーク制御部に通知するための専用通信線と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
コストアップを最小限に留め、エンジン制御部のログの常時保存を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の機能ブロック図
【
図2】実施形態の画像形成装置が実行するログ保存処理のシーケンス図
【
図3】エンジン制御部のCPUのリセット発生時のログ保存処理のシーケンス図
【
図4】画像形成装置の電源ON時または省エネモードからの復帰時のログ保存処理のシーケンス図
【
図5】画像形成装置の電源OFF時または省エネモードへの移行時のログ保存処理のシーケンス図
【
図6】第1変形例の常時ログ記憶部の構成を示す模式図
【
図7】第1変形例におけるログ保存処理のシーケンス図
【
図8】第2変形例におけるログの転送手法を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[実施形態]
図1~
図5を参照して実施形態を説明する。まず
図1を参照して実施形態に係る画像形成装置1の構成を説明する。
図1は、実施形態に係る画像形成装置1の機能ブロック図である。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置1は、エンジン制御部2と、画像処理制御部3と、ネットワーク制御部4と、通信線5と、専用通信線6とを備える。
【0012】
エンジン制御部2は、紙搬送、作像、印字、定着等の制御を行い、画像処理制御部3から転送された画像データを用紙に印刷する。本実施形態では、エンジン制御部2は、上記の各種動作のログを作成して通信線5を介して画像処理制御部3に出力する。ここで、エンジン制御部2のログとは、例えば、印刷回数等の記録情報などの情報を含み、故障予測や不具合解析に使用するログである。また、エンジン制御部2は、専用通信線6を介してログ情報の出力をネットワーク制御部4に通知する。
【0013】
画像処理制御部3は、ネットワーク制御部4から送られてきた画像データ(パーソナルコンピュータ(PC)等からのプリントデータ、スキャナ読取画像データ等)を印刷できる画像フォーマットへ変換するなどの各種画像処理を行う。画像処理制御部3は、処理後の画像データをエンジン制御部2へ転送する。本実施形態では、画像処理制御部3は、エンジン制御部2のログ情報を一時保存する常時ログ記憶部7を有し、画像処理制御部3から受信したログ情報を常時ログ記憶部7に保存する。
【0014】
ネットワーク制御部4は、PCなどの他機器からネットワークNを介してプリントデータを受信し、画像処理制御部3へ転送する。本実施形態では、ネットワーク制御部4は、エンジン制御部2からの指令に応じて、画像処理制御部3の常時ログ記憶部7に保存されているエンジン制御部2のログ情報をネットワークN上のサーバなどの他機器10へ転送して、これによりエンジン制御部2のログ情報を保存する。
【0015】
通信線5は、エンジン制御部2と画像処理制御部3との間を通信可能に接続し、また、画像処理制御部3とネットワーク制御部4との間を通信可能に接続する。通信線5は、画像データやプリントデータの転送用の通信線であり、転送データのデータサイズが大きいため、例えばPCIe(PCI Express)規格の通信線など、通信速度が速く、信頼性が高い通信線が使用される。
【0016】
専用通信線6は、エンジン制御部2とネットワーク制御部4との間を通信可能に接続する。専用通信線は、画像処理制御部3の常時ログ記憶部7に保存されているエンジン制御部2のログ情報をネットワークN上のサーバなどの外部機器に転送して保存させる旨の通知を、エンジン制御部2がネットワーク制御部4に送信するための専用回線である。
【0017】
専用通信線6は、例えば、エンジン制御部2が異常状態となり、CPUがリセットする直前に、常時ログ記憶部7に溜められているログをネットワーク制御部4に引き取ってもらうための指示を、エンジン制御部2がネットワーク制御部4に対して行うために用いられる。専用通信線6は、既存の通信線(例えばIOポート)を兼用しても良いし、新規追加の専用線でも良い。また
図1の例では、専用通信線6がエンジン制御部2とネットワーク制御部4を直接つなぐ構成としているが、基板の構成上などの理由によっては、画像処理制御部3を経由してエンジン制御部2とネットワーク制御部4とを繋ぐ構成としても良い。
【0018】
常時ログ記憶部7は、エンジン制御部2からのログを保存する記憶装置である。常時ログ記憶部7に溜められるログは、エンジン制御部2からの指示により、ネットワーク制御部4へ転送される。
【0019】
なお、画像形成装置1がMFP(Multifunction Peripheral:多機能周辺装置)であり、スキャナ機能を備える場合には、装置内のスキャナ制御部から読取画像データを受信し、画像処理制御部3へ転送しても良い。
【0020】
また、エンジン制御部2のログ情報の保存先は、ネットワークN上のサーバなどの他機器10の他に、画像形成装置1に内蔵の不揮発性メモリ(HDD、SSD等)や外部記憶装置などの記憶部11でも良い。
【0021】
エンジン制御部2、画像処理制御部3、ネットワーク制御部4は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、データ送受信デバイスである通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータ装置や回路基板として構成することができる。上記のエンジン制御部2、画像処理制御部3、ネットワーク制御部4の各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信モジュール等を動作させるとともに、RAMや補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。また、本実施形態に係る画像処理制御部3の常時ログ記憶部7は、例えば画像処理制御部3の既存の画像処理用メモリの一部を利用して実現できるし、または、画像処理制御部3の基板に常時ログ用の不揮発性メモリを追加してもよい。また、常時ログ記憶部7は、画像処理制御部3に外部記憶装置を接続して実現してもよい。
【0022】
図2を参照して、実施形態の画像形成装置1によるログ保存処理について説明する。
図2は、実施形態の画像形成装置1が実行するログ保存処理のシーケンス図である。
【0023】
ステップS1では、エンジン制御部2がログを画像処理制御部3へ転送する。ログは発生毎に転送しても良いし、エンジン制御部2内にキャッシュして固定サイズ(例えば128Byte)毎に転送しても良い。ただし後者の場合は、ログの取りこぼし防止の観点から、当該サイズは小さくすることが望ましい。
【0024】
ステップS2では、画像処理制御部3は、エンジン制御部2から転送されてきたログを常時ログ記憶部7に保存する。
【0025】
上記のステップS1、S2は、常時ログ記憶部7へ保存されるログの容量が、システムとして規定したサイズ(例えば1MB)に達するまで繰り返される。
【0026】
ステップS3では、常時ログ記憶部7へ保存されるログの容量が規定サイズに到達したときに、画像処理制御部3は当該ログをネットワーク制御部4に転送する。
【0027】
ステップS4では、ネットワーク制御部4は、画像処理制御部3から転送されてきたログを一時メモリ9(
図8参照)に保存する。
【0028】
上記のステップS1、S2は、エンジン制御部2がログ保存指示をネットワーク制御部4に通知するまで繰り返される。
【0029】
ステップS5では、エンジン制御部2は、ログ保存指示をネットワーク制御部4へ通知する。本通知は、通信線5を介して既存のコマンド通信を使用しても良いし、専用通信線6を使用しても良い。
【0030】
ステップS6では、ネットワーク制御部4は、当該ログをネットワークN上のサーバ等の他機器10への転送、または、ネットワーク制御部4内の不揮発メモリ(HDD、SSD等)等の記憶部11へ保存する。
【0031】
エンジン制御部2の起動時は、上記のステップS1~S6が繰り返される。なお、例えば画像形成装置1が省エネモードを実施中など、エンジン制御部2がダウンしているときには上記ステップは実行されない。
【0032】
ここで、従来の画像形成装置の問題点を説明する。今までの画像形成装置は、エンジン制御基板において、エンジン制御用のCPUやRAM等のメモリが搭載されているものの、コスト低減のために、エンジンを動作させるための最小限のメモリサイズのものしか搭載されていない。
【0033】
さらに、エンジン制御部からネットワーク制御部にログを送るための制御コマンド(ログ送信用コマンド)はあったが、低速の通信線であるため、印刷中、ウォームアップ、省エネ移行等のシーケンス動作をエンジン制御部とネットワーク制御部を連携させて動かせるには、ログ送信用コマンド以外の制御コマンドを優先して送受信させる必要があった。
【0034】
そのため、ジャム後、エラー後にエンジンが一定期間停止する期間に限定して、障害発生までの直近の部分的なログを、ネットワーク制御部にログ送信用コマンドを送信することで、ログを取得していた。
【0035】
しかし、ジャム、エラー等のエンジン制御内の現象をログから捉えることができても、採取できるログ量が抑制されていることで、本質的な原因として判断できるまでのログがなく、解析が難しいという問題があった。
【0036】
また、ログを印刷中採取できないことで、意図しない生産性低下、異常画像など、エンジンを異常停止しない場合の障害は、ログ取得できず、解析が長期化するという問題があった。
【0037】
次に、エンジンソフトが暴走し、エンジン制御部のCPUがリセットした場合は、CPUリセットになる原因を、ログを遡りながら解析する必要がある。
【0038】
しかし、エンジン制御部がリセットした場合、エンジン制御部のRAMに保持されたログでは、CPUリセット直前の処理状況しかわからず、CPUリセットの原因を突き止める手がかりとなるログが採取できていないことが多く、解析が長期化するという問題があった。
【0039】
さらに、エンジン制御部がCPUリセットした後は、エンジン制御部とネットワーク制御部との制御コマンド通信の同期を失うことで、CPUリセットに関わるログをエンジン制御部からネットワーク制御部に送信することができないという問題があった。
【0040】
特許文献1などの先行技術では、上記の問題を解決するために、エンジン制御部に高価かつ大容量の不揮発メモリを搭載したり、ログ保存の専用基板を搭載したりする技術が知られているが、これらの技術ではメモリ、ASIC等の追加によるコストアップという問題があった。
【0041】
また、特許文献1などの先行技術を適用した場合でも、エンジン制御部の当該ログは、エンジン制御部とネットワーク制御部間において制御コマンドの送受信を行う低速の通信線を用いていたため、転送できるログ量に制限があった。またエンジン制御部は低スペックなCPUでありメモリサイズも小さいことから、大量のログを一次保存することができず、特にエンジン制御部のCPUリセット時は解析に必要な十分なログを転送することができなかった。
【0042】
このようなログ量制限の問題を解決するためには、例えば、エンジン制御部に直接ネットワークへアクセスするコネクタ(LAN、Wifi等)を追加するなどの手法をとれば、当該ログの常時保存は可能であるが、この手法でも大幅なコストアップになる。
【0043】
これに対して本実施形態の画像形成装置1は、当該画像形成装置1の動作制御を行うエンジン制御部2と、エンジン制御部2のログを一時保存する常時ログ記憶部7を有する画像処理制御部3と、エンジン制御部2からの指令に応じて、常時ログ記憶部7に保存されたログをネットワークN経由で他機器10に、または、当該画像形成装置1の記憶部11に保存するネットワーク制御部4と、エンジン制御部2と画像処理制御部3との間、及び、画像処理制御部3とネットワーク制御部4との間を通信可能に接続する通信線5と、エンジン制御部2とネットワーク制御部4とを通信可能に接続し、指令をエンジン制御部2からネットワーク制御部4に通知するための専用通信線6と、を備える。
【0044】
画像処理制御部3は、従来の画像処理機能を行うために、既存の構成でも充分な容量のメモリを有しているので、常時ログ記憶部7として利用できるメモリ領域を確保しやすい。したがって、本実施形態の画像形成装置1は、エンジン制御部2のログを一時記憶するための常時ログ記憶部7を画像処理制御部3に設けることによって、最小限のハードウェア構成のみの追加を行い、ソフトウェア制御を変更することで、ハードウェアのコストアップを最小限に留めることができる。また、常時ログ記憶部7によって、エンジン制御部2のログの常時保存を実現することができ、不具合が発生したときの状況の解析に有用なログ情報を取得することができる。
【0045】
また、本実施形態の画像形成装置1では、画像処理制御部3は、常時ログ記憶部7に保存されているログが所定サイズに到達するとき、通信線5を介してログをネットワーク制御部4に送信する。ネットワーク制御部4は、画像処理制御部3から受信したログを一時メモリ9に保存し、通信線5または専用通信線6を介して指令をエンジン制御部2から受信するのに応じて、一時メモリ9に保存されたログを他機器10または記憶部11に保存する。
【0046】
この構成により、画像処理制御部3からネットワーク制御部4へのログ転送の頻度を抑制でき、効率良くログを転送できる。また、ネットワーク制御部4は画像処理制御部3から受信したログをすぐに出力せず、エンジン制御部2からの指令を待つので、適切なタイミングでログ情報を保存することができる。
【0047】
また、本実施形態では、通信線5として、PCIe規格の通信線を用いるのが好ましい。これにより、エンジン制御部2のログを画像処理制御部3に送信するのに充分な通信速度を確保できるので、このような高速な通信線5にてログを画像処理制御部3へ転送し、画像処理制御部3内の常時ログ記憶部7(大容量メモリ)に一時保存するため、ログの全てを取りこぼすこと無く常時保存することができる。なお、本実施形態の通信線5に対して低速の通信線を用いた従来技術では、エンジン制御部から送信するログ量を抑制したり、ログ転送タイミングを制御(例えば通信量が多くなる印刷中はログ転送せずに、ドア開時などの印刷停止中にログ転送する)したりしていたが、本実施形態ではこのような対策は不要となる。
【0048】
図3は、エンジン制御部2のCPUのリセット発生時のログ保存処理のシーケンス図である。ステップS1~S4までの各処理は、
図2の処理と同様なので説明を省略する。
【0049】
ステップS1~S4の実施後、ステップS11では、エンジン制御部2がログを画像処理制御部3へ転送し、ステップS12では、画像処理制御部3は、エンジン制御部2から転送されてきたログを常時ログ記憶部7に保存する。この段階では、常時ログ記憶部7へ保存されるログの容量が規定サイズに到達していない状態である。
【0050】
ステップS13では、エンジン制御部2のCPUリセットが発生する。このとき、画像処理制御部3内の常時ログ記憶部7には、ネットワーク制御部4へ転送していない当該ログが残っている。
【0051】
ステップS14では、エンジン制御部2は、画像処理制御部3にログ強制転送を指示する。
【0052】
ステップS15では、画像処理制御部3は、残存する当該ログをネットワーク制御部4へ転送する。
【0053】
ステップS16では、ネットワーク制御部4は、画像処理制御部3から転送されてきたログを一時メモリに保存する。
【0054】
ステップS17では、エンジン制御部2は、ネットワーク制御部4に専用通信線6を用いてログ保存指示を行う。これはエンジン制御部2のCPUリセットによって、エンジン制御部2とネットワーク制御部4との間の既存のコマンド通信が使用不可になっているためである。
【0055】
ステップS18では、ネットワーク制御部4は、当該ログをネットワーク上のサーバへの転送、または、ネットワーク制御部4内の不揮発メモリ(HDD、SSD等)へ保存する。
【0056】
なお、
図3に示す処理は、エンジン制御部2のCPUリセット発生時、画像処理制御部3内の常時ログ記憶部7にネットワーク制御部4へ転送していない当該ログが残っている場合であるが、当該ログが残っていない場合は、上記のステップS15,S16、S18は実施しない。
【0057】
このように本実施形態では、エンジン制御部2のCPUがリセットした場合、画像処理制御部3は、常時ログ記憶部7に保存されているログを、通信線5を介してネットワーク制御部4に送信し、エンジン制御部2は、専用通信線6を介して指令をネットワーク制御部4に送信する。ネットワーク制御部4は、画像処理制御部3から受信したログを一時メモリ9に保存し、指令の受信に応じて、一時メモリ9に保存されたログを、ネットワークN経由で他機器10に、または、当該画像形成装置1の記憶部11に保存する。
【0058】
このように、エンジン制御部2とネットワーク制御部4との間に常時ログ保存指示の専用通信線6を有するため、エンジン制御部2のCPUがリセットし、エンジン制御部2とネットワーク制御部4間の既存の通信が成立しなくなった状態(通信不可状態)においても、画像処理制御部3内の常時ログ記憶部7に保存した当該ログを確実に保存することができる。
【0059】
図4は、画像形成装置1の電源ON時または省エネモードからの復帰時のログ保存処理のシーケンス図である。
【0060】
ステップS21では、電源ON時、または省エネ状態からの復帰時に、エンジン制御部2、画像処理制御部3、ネットワーク制御部4の起動処理が行われる。
【0061】
画像処理制御部3は、ステップS22にて常時ログ記憶部7が利用可能となるのに応じて、ステップS23にて、その旨を「常時ログ記憶部利用可能通知」によりエンジン制御部2へ通知する。なお、常時ログ記憶部7が利用可能になる状態が、例えば既存の画像処理制御部3自体の利用可能状態に包含されるのであれば、ステップS23のように特別に「常時ログ記憶部利用可能通知」として分ける必要は無く、既存の状態通知で良い。
【0062】
ステップS23以降では、エンジン制御部2は画像処理制御部3にログ転送可能となり、
図2で説明したステップS1、S2の処理が実行されるが、ネットワーク制御部4へのログ保存指示は実施できない。
【0063】
その後、ステップS24にて、エンジン制御部2とネットワーク制御部4との間のコマンド通信が可能となり、かつ、ステップS25にて、ネットワーク制御部4がログをネットワークへ転送可能(もしくは不揮発メモリ利用可能)となると、ステップS26では、ネットワーク制御部4がログ保存可能通知をエンジン制御部2へ送信する。
【0064】
エンジン制御部2がログ保存可能通知をコマンド通信にて受信した以降には、
図2で説明したステップS5、S6の処理が実行可能となり、ネットワーク制御部4がログをネットワークへ転送する。
【0065】
このように本実施形態では、画像形成装置1の電源オン時または省エネモードからの復帰時には、エンジン制御部2で行う初期化シーケンス処理によって、エンジン制御部2が常時ログ記憶部7にアクセス可能になったタイミングから、画像処理制御部3へのログの保存が開始される。また、エンジン制御部2がネットワーク制御部4と制御コマンドの通信が可能となり、かつ、ネットワーク制御部4によるログの保存ができる状態になってから、画像処理制御部3は、常時ログ記憶部7のログをネットワーク制御部4に送信する。
【0066】
この構成により、画像形成装置1の電源オン時または省エネモードからの復帰時に、エンジン制御部2のログの常時保存を適切なタイミングで再開できる。
【0067】
図5は、画像形成装置1の電源OFF時または省エネモードへの移行時のログ保存処理のシーケンス図である。
【0068】
図2で説明したステップS1、S2の処理が実行されているとき、例えば画像形成装置1の操作パネルのボタン押下などにより、ステップS31では、エンジン制御部2、画像処理制御部3、ネットワーク制御部4が、電源OFFまたは省エネ移行処理を開始する。このとき、画像処理制御部3内の常時ログ記憶部7には、ネットワーク制御部4へ転送していない当該ログが残っている。
【0069】
このため、残存ログを保存するため、
図3のステップS14~S18の処理を実行して、残存ログをネットワークが転送される。
【0070】
ステップS32では、残存ログが無くなり次第、エンジン制御部2は電源OFFまたは省エネモードへの移行が可能と判断し、ステップS33では、エンジン制御部2、画像処理制御部3、ネットワーク制御部4の電源OFFまたは省エネ移行処理が完了する。
【0071】
このように本実施形態では、画像形成装置1の電源オフ時または省エネモードへの移行時には、常時ログ記憶部7に保存されたログを、ネットワーク制御部4が他機器10または記憶部11に保存した後に、エンジン制御部2が電源オフとなる。この構成により、画像形成装置1の電源オフ時または省エネモードへの移行時にも、エンジン制御部2のログの取りこぼしを防止できる。
【0072】
[第1変形例]
図6、
図7を参照して第1変形例を説明する。
図6は、第1変形例の常時ログ記憶部17の構成を示す模式図である。
図6に示すように、第1変形例の常時ログ記憶部17は、複数の用途別に領域が区分されている。ここでは、「A.実行回数ログ領域」、「B.故障予測用ログ領域」、「C.不具合解析用ログ領域」の3つの領域に分けた場合を説明する。
【0073】
図7は、第1変形例におけるログ保存処理のシーケンス図である。
【0074】
上記実施形態(主に
図2)との相違は、ログ転送、ログ保存指示の際に、A~Cのどの領域に対して行うかを通知することである。例えば、ステップS41のログ転送処理では、エンジン制御部2は、ログの転送先として常時ログ記憶部17の領域Aを指定しており、ステップS42では画像処理制御部3は、受信したログを領域Aに保存している。同様に、ステップS43のログ転送処理では、エンジン制御部2は、ログの転送先として常時ログ記憶部17の領域Cを指定しており、ステップS44では画像処理制御部3は、受信したログを領域Cに保存している。
【0075】
また、ステップS47のログ保存指示では、エンジン制御部2は、保存すべきログとして領域Aのログを指定しており、ステップS48では、ネットワーク制御部4は、常時ログ記憶部17の領域Aのログをネットワークへ転送している。
【0076】
これにより、ログの優先度順に制御を行うことが可能となる。例えば、ネットワークN上のサーバやネットワーク制御部4内の不揮発メモリ(HDD、SSD等)がフル状態となり追加保存が不可能になる場合や、ネットワーク遮断の場合などに、より優先度の高いログを残すことができる。
【0077】
[第2変形例]
図8を参照して第2変形例を説明する。
図8は、第2変形例におけるログの転送手法を示す模式図である。
図8に示す第2変形例のように、画像処理制御部3とネットワーク制御部4との間のログ転送をDMA(Direct Memory Access)で行ってもよい。この場合、常時ログ記憶部7に保持されたログデータを、ネットワーク制御部4内のメモリ9に、指定したサイズだけDMA転送する。
【0078】
DMA転送する場合、画像処理制御部3は、DMAC(Direct Memory Access Controller)8を有する。画像処理制御部3からネットワーク制御部4へログ転送するとき、DMAC8は、転送先である「ネットワーク制御部4内の一時メモリ9のアドレス」と、「転送するログサイズ」を設定して、DMA転送を実行する。
【0079】
一般的なDMACと同等に、転送先である「ネットワーク制御部4内の一時メモリ9のアドレス」、転送元の「常時ログ記憶部7の当該アドレス」、「転送するログサイズ」を指定できても良い。
【0080】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
2 エンジン制御部
3 画像処理制御部
4 ネットワーク制御部
5 通信線
6 専用通信線
7、17 常時ログ記憶部
8 DMAC
9 一時メモリ
10 他機器
11 記憶部
N ネットワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】