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特許7180684紫外線硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】紫外線硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20221122BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20221122BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221122BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221122BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20221122BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20221122BHJP
   C08G 77/50 20060101ALI20221122BHJP
   C08F 283/12 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/314
B33Y70/00
B41M5/00
C08G77/20
C08G77/38
C08G77/50
C08F283/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020548457
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036044
(87)【国際公開番号】W WO2020059650
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2018176159
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 展明
(72)【発明者】
【氏名】大竹 滉平
(72)【発明者】
【氏名】北川 太一
(72)【発明者】
【氏名】松田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-287971(JP,A)
【文献】特開昭57-209914(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003381(WO,A1)
【文献】特開2006-002087(JP,A)
【文献】特開2015-189977(JP,A)
【文献】特開2017-171734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
C08G 77/00-77/62
B29C 64/00-64/40
B33Y 70/00
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
[式(1)中、nは1≦n≦1,000を満たす数であり、mは1≦m≦1,000を満たす数であり、nおよびmが付されたシロキサン単位の配列順は任意である。Arは芳香族基であり、R1は互いに独立に炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、Aは下記式(2)で示される基である。
【化2】
[式(2)中、pは0≦p≦10を満たす数であり、aは1≦a≦3を満たす数であり、R1は互いに独立に炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R2は酸素原子又はアルキレン基であり、R3はアクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基である。]]
及び
(B)光重合開始剤:0.1~10質量部、並びに
(C)シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物及び(D)シロキサン構造を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物の何れか一方又は両方:1~400質量部
を含有することを特徴とする3Dプリンタインク用紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
一般式(1)におけるR1が炭素原子数1~10のアルキル基である請求項1に記載の3Dプリンタインク用紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
25℃での粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の3Dプリンタインク用紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の3Dプリンタインク用紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年3Dプリンタで用いられる造形材料の開発が盛んになってきており、造形材料の種類は金属から樹脂まで様々なものが存在している。樹脂分野での主流はアクリレート系光硬化性樹脂組成物やウレタンアクリレート系光硬化性樹脂組成物であるが、これらの組成物の硬化物は非常に硬く曲げることは出来ない(特許文献1)。
用途に応じて柔らかい材料が必要になることも多くなってきており、造形方式に合せた材料が既に開発されている。例えば、光造形方式(SLA)向けの材料として、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、メルカプト基含有オルガノポリシロキサン及びMQレジンを含有した組成物が既に開示されている(特許文献2)。また、ディスペンス技術向けに紫外線によって活性化される白金触媒を含有したシリコーン混合物も開示されている(特許文献3)。さらに、インクジェット方式を用いる3Dプリンタ向けに光硬化性の低粘度シリコーン材料が開示されている(特許文献4)が、この組成物の硬化物は、通常のシリコーン材料と比較すると耐熱性に乏しいという課題がある。近年急激に増加している面露光方式や吊上げ方式と呼ばれる造形方式にも対応可能でありながら更に耐熱性にも優れた材料の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-111226号公報
【文献】特許第4788863号公報
【文献】特許第5384656号公報
【文献】国際公開第2018/003381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、面露光方式や吊し上げ方式等の造形方式でも使用可能な低粘度な紫外線硬化性シリコーン組成物及び耐熱性に優れた硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の紫外線硬化性オルガノポリシロキサン成分とシロキサン構造を含まない単官能エチレン基含有化合物及び/又はシロキサン構造を含まない多官能エチレン基含有化合物とを用いることで、低粘度な紫外線硬化性シリコーン組成物ならびに耐熱性に優れた該組成物の硬化物を提供出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、下記の紫外線硬化性シリコーン組成物及びその硬化物を提供する。
[1]
(A)下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
[式(1)中、nは1≦n≦1,000を満たす数であり、mは1≦m≦1,000を満たす数であり、nおよびmが付されたシロキサン単位の配列順は任意である。Arは芳香族基であり、R1は互いに独立に炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、Aは下記式(2)で示される基である。
【化2】
[式(2)中、pは0≦p≦10を満たす数であり、aは1≦a≦3を満たす数であり、R1は互いに独立に炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R2は酸素原子又はアルキレン基であり、R3はアクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基である。]]
及び
(B)光重合開始剤:0.1~10質量部、並びに
(C)シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物及び(D)シロキサン構造を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物の何れか一方又は両方:1~400質量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化性シリコーン組成物。
【0007】
[2]
一般式(1)におけるR1が炭素原子数1~10のアルキル基である[1]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【0008】
[3]
25℃での粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【0009】
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物。
【0010】
[5]
3Dプリンタインク用である[1]~[3]のいずれかに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物は、面露光方式や吊し上げ方式等の造形方式でも使用可能なほど低粘度であるため、3Dプリンタで使用される新たな造形材料として期待される。また、本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物は、耐熱性に優れた硬化物となるため、優れた機械的強度を示すインクジェット方式の3Dプリンタ向け造形材料としても期待される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
(A)オルガノポリシロキサン
(A)成分は、下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンである。
【化3】
【0013】
式(1)中、Arで表される芳香族基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基及びフラニル基等のヘテロ原子(O,S,N)を含む芳香族基が挙げられ、更に該芳香族基はハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)等の置換基を有してもよい。Arは好ましくは非置換の芳香族炭化水素基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0014】
式(1)中のnは1≦n≦1,000であり、好ましくは1≦n≦500、より好ましくは1≦n≦400である。nが1より小さいと揮発し易く、nが1,000より大きいと組成物の粘度が高くなり、取り扱い性に劣る。
【0015】
式(1)中のmは1≦m≦1,000であり、好ましくは1≦m≦500、より好ましくは1≦m≦400である。mが1より小さいと揮発し易く、mが1,000より大きいと組成物の粘度が高くなり、吊り上げ方式による造形が困難になる。
式(1)中のn+mは2≦n+m≦2,000であり、好ましくは2≦n+m≦1,000、より好ましくは2≦n+m≦800である。n+mが2より小さいと揮発し易く、n+mが2,000より大きいと組成物の粘度が高くなり、吊り上げ方式による造形が困難になる。
【0016】
式(1)中のAは下記式(2)で示される基である。
【化4】
【0017】
式(1)及び式(2)において、R1は、互いに独立して炭素原子数1~20の一価炭化水素基、好ましくは、脂肪族不飽和基を除く、炭素原子数1~10、より好ましくは1~8の一価炭化水素基を表す。
【0018】
式(1)及び式(2)において、R1の炭素原子数1~20の一価炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-デシル基等のアルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
また、これら一価炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、その他の置換基で置換されていてもよく、その具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル、シアノエチル基等のハロゲン置換炭化水素基や、シアノ置換炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、R1としては、炭素原子数1~5のアルキル基及びフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基及びフェニル基がより好ましい。
【0019】
また、式(2)において、R2は、酸素原子または炭素原子数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5のアルキレン基を表す。
【0020】
式(2)において、R2の炭素原子数1~20のアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、R2としては、酸素原子、メチレン、エチレン及びトリメチレン基が好ましく、酸素原子またはエチレン基がより好ましい。
【0021】
さらに、式(3)において、R3は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を表す。
【0022】
式(3)において、R3のアクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基におけるアルキル(アルキレン)基の炭素数としては、特に限定されるものではないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。これらアルキル基の具体例としては、上記R1で例示した基のうち、炭素原子数1~10のものが挙げられる。
【0023】
3の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化5】
(式中、bは、1≦b≦4を満たす数を表し、R4は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表す。)
【0024】
上記pは、0≦p≦10を満たす数を表すが、0または1が好ましく、aは、1≦a≦3を満たす数を表すが、1または2が好ましい。
【0025】
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンの例としては、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【化6】
(式中、R1、R2、R4、Ar、n、mおよびbは、上記と同じ意味を表し、nおよびmが付されたシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0026】
このようなオルガノポリシロキサンは公知の方法で製造することができる。上記式(3)で表されるオルガノポリシロキサンは、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体と3-(1,1,3,3-テトラメチルジシロキサニル)プロピルメタクリラート(CAS No.96474-12-3)とのヒドロシリル化反応物として得られる。
上記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンは、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体とジクロロメチルシランとのヒドロシリル化反応物に2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得ることができる。
【0027】
(B)光重合開始剤
光重合開始剤(B)としては、公知のものを用いることができ、これには例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF製Irgacure 651)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF製Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチループロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 127)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(BASF製Irgacure MBF)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF製Irgacure 907)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(BASF製Irgacure 369)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure TPO)及びこれら化合物の混合物等が挙げられる。
【0028】
上記(B)成分のうち、(A)成分との相溶性の観点から、好ましいものは、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製Irgacure 1173)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF製Irgacure TPO)である。
【0029】
光重合開始剤の添加量は(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である。光重合開始剤の添加量が、0.1質量部未満であると硬化物の硬化性が不足し、10質量部を超える量では硬化物の深部硬化性が悪化する。
【0030】
(C)シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物
シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物(C)としては、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート、2-エチルヘキシル-ジグルコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びこれらの混合物等が挙げられ、特にイソボルニルアクリレートが好ましい。
【0031】
(D)シロキサン構造を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物
シロキサン構造を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物(D)としては、トリエチレングルコールジアクリレート、ポリテトラメチレングルコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びこれらの混合物等が挙げられ、特にジメチロール-トリシクロデカンジアクリレートが好ましい。
【0032】
(C)成分及び(D)成分の(メタ)アクリレート化合物は、(A)成分100質量部に対して、合計で1~400質量部の範囲で含むことが好ましく、1~200質量部で含むことが更に好ましい。(C)成分及び(D)成分の合計添加量が(A)成分100質量部に対して400質量部を超えると、硬化物の硬度が必要以上に高くなり、所望のゴム物性が得られなくなる場合がある。
【0033】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、シランカップリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、耐光性安定剤である紫外線吸収剤、光安定化剤等の添加剤を配合することができる。また、本発明の組成物は他の樹脂組成物と適宜混合して使用することもできる。
【0034】
シリコーン組成物の製造方法
本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び/又は(D)成分、その他の成分を攪拌及び混合等することにより得られる。攪拌等の操作に用いる装置は特に限定されないが、プラネタリーミキサーやセパラブルフラスコ等を用いることができる。
【0035】
本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物において、吊り上げ方式による造形が可能な目安としては、組成物の粘度は10mPa・s以上10,000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上8,000mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度は、回転粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0036】
本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線を照射することにより速やかに硬化する。本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物に照射する紫外線の光源としては、例えば、UVLEDランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアークランプ、及びキセノンランプ等が挙げられる。紫外線の照射量(積算光量)は、例えば、本発明の組成物を2.0mm程度の厚みに成形したシートに対して、好ましくは1~10,000mJ/cm2であり、より好ましくは10~5,000mJ/cm2である。つまり、照度100mW/cm2の紫外線(365nm)を用いた場合、0.01~100秒程度紫外線を照射すればよい。
【0037】
また、本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物からなる硬化物が優れたゴム物性を示す為には、硬化後の硬度は5~80(TypeA)の範囲であり、好ましくは10~70(TypeA)の範囲である。硬化後の引張強さは0.6MPa以上であることが好ましく、0.8MPa以上であることがより好ましい。硬化後の切断時伸びは40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。なお、これらの値は、JIS-K6249に準じて測定したときの値である。硬化物のゴム物性は、(C)成分及び(D)成分の添加量を増減することによって調整できる。
【実施例
【0038】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1~4、比較例1]
下記の各成分を表1に示す組成比(数値は質量部を表す)で混合して紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
なお、各例で得られた組成物の粘度は、回転粘度計を用いて25℃で測定した値である。
また、各組成物を各枠に流し、アイグラフィックス株式会社製のランプH(M)06-L-61を用いて、窒素雰囲気下、2,000mJ/cm2の紫外線照射条件で硬化させ、厚さ2.0mmの各硬化シートを得た。得られた各硬化シートについて、耐熱試験(200℃で20時間放置)前後の硬度、引張強さ及び切断時伸びをJIS-K6249に準じて測定した結果を表1に示す。
【0040】
・(A)成分
(A-1):上述した方法により製造した下記式(5)で表されるオルガノポリシロキサン
【化7】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0041】
(A-2):上述した方法により製造した下記式(6)で表されるオルガノポリシロキサン
【化8】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0042】
・(比較成分)
(A-3):下記式(7)で表されるオルガノポリシロキサン
【化9】
(A-4):下記式(8)で表されるオルガノポリシロキサン
【化10】
【0043】
・(B)成分
(B-1):2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン (BASF社製Irgacure 1173)
(B-2):2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド (BASF社製Irgacure TPO)
【0044】
・(C)成分
イソボルニルアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートIB-XA)
【0045】
・(D)成分
ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP-A)
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、本発明の紫外線硬化性シリコーン組成物は充分に低粘度であり、硬化後は優れたゴム物性及び耐熱性を示し、特に面露光方式や吊し上げ方式等の造形方式を用いる3Dプリンタ向けのシリコーン材料として有用である。一方、(A)成分を用いない比較例1では硬化シートは耐熱試験後のゴム物性に劣るものであった。