(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】表示装置、表示システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20221122BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20221122BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20221122BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G09G5/00 510G
G09G5/00 550C
G09G5/00 550B
G09G5/00 530H
G09G5/36 520D
G09G5/38 A
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2021014654
(22)【出願日】2021-02-01
(62)【分割の表示】P 2016222167の分割
【原出願日】2016-11-15
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼澤 和寛
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060445(JP,A)
【文献】特開2014-177243(JP,A)
【文献】特開2017-181666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0328055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを背景上に重ねて表示する表示部と、
前記オブジェクトの位置、及び前記オブジェクトの移動方向を取得し、
取得された前記オブジェクトの位置、及び前記オブジェクトの移動方向に基づいて、前記表示部により表示可能な領域の縁に前記オブジェクトが移動するまでの時間、または前記オブジェクトの表示位置と前記オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定し、
推定された、前記時間または前記距離に基づいて、前記オブジェクトの表示態様を決定する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記オブジェクトが前記表示可能な領域に入る場合、表示領域に入ったときから、一定速度で徐々に、ユーザに視認されにくい表示態様から、ユーザに視認され易い表示態様に変化させ
、第1の表示位置と比較して前記表示部が表示可能な領域の境界に近い第2の表示位置における前記オブジェクトの表示態様を、前記第1の表示位置における前記オブジェクトの表示態様をよりも視認されにくい表示態様に決定することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記視認されにくい表示態様は、透明度が高い表示態様である
請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記視認されにくい表示態様は、前記オブジェクトが回転されたことにより小さく表示される表示態様である
請求項
1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記オブジェクトの位置、移動装置の移動速度、及び移動装置の操舵角に基づいて、前記オブジェクトの移動方向を算出する
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記演算装置は、さらに、移動装置の加速度に基づいて、前記オブジェクトが前記縁に移動するまでの時間を推定する
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記演算装置は、移動装置の傾きにより前記オブジェクトが前記領域において移動する場合は、前記表示態様を変更しない
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記演算装置は、前記オブジェクトが前記領域から出た後、前記オブジェクトが前記領域に入った場合は、前記オブジェクトを前記表示部に表示させない
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記演算装置は、前記オブジェクトの種別に基づいて、前記オブジェクトが前記領域から出た後、前記オブジェクトが前記領域に入った場合に、前記オブジェクトを前記表示部に表示させるか否かを決定する
請求項
7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記演算装置は、移動装置の操舵により前記オブジェクトが前記領域から出た後、当該操舵を打ち消すような操舵により前記オブジェクトが前記領域に入った場合は、前記オブジェクトを前記表示部に表示させる
請求項
7または
8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示部は、投影光または発光素子により、前記オブジェクトを背景上に重ねて表示する
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の表示装置を備える移動体。
【請求項12】
オブジェクトを背景上に重ねて表示する表示部を有する表示装置、及び移動装置を制御する制御装置を備える表示システムであって、
前記制御装置は、
前記オブジェクトの位置、前記移動装置の移動速度、及び前記移動装置の操舵角のデータを前記表示装置に通知し、
前記表示装置は、
前記オブジェクトの位置、及び前記データに基づいて算出された前記オブジェクトの移動方向を取得し、
取得された前記オブジェクトの位置、及び前記オブジェクトの移動方向に基づいて、前記表示部により表示可能な領域の縁に前記オブジェクトが移動するまでの時間、または前記オブジェクトの表示位置と前記オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定し、
推定された、前記時間または前記距離に基づいて、前記オブジェクトの表示態様を決定する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記オブジェクトが前記表示可能な領域に入る場合、表示領域に入ったときから、一定速度で徐々に、ユーザに視認されにくい表示態様から、ユーザに視認され易い表示態様に変化させ
、第1の表示位置と比較して前記表示部が表示可能な領域の境界に近い第2の表示位置における前記オブジェクトの表示態様を、前記第1の表示位置における前記オブジェクトの表示態様をよりも視認されにくい表示態様に決定することを特徴とする表示システム。
【請求項13】
表示装置に、
オブジェクトの位置、及び前記オブジェクトの移動方向を取得するステップと、
前記取得された前記オブジェクトの位置、及び前記オブジェクトの移動方向に基づいて、前記オブジェクトを背景上に重ねて表示する表示部により表示可能な領域の縁に前記オブジェクトが到達するまでの時間、または前記オブジェクトの表示位置と前記オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定するステップと、
推定された、前記時間または前記距離に基づいて、前記オブジェクトの表示態様を決定するステップと、を実行させ、
前記オブジェクトが前記表示可能な領域に入る場合、表示領域に入ったときから、一定速度で徐々に、ユーザに視認されにくい表示態様から、ユーザに視認され易い表示態様に変化させ
、第1の表示位置と比較して前記表示部が表示可能な領域の境界に近い第2の表示位置における前記オブジェクトの表示態様を、前記第1の表示位置における前記オブジェクトの表示態様をよりも視認されにくい表示態様に決定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や航空機等の移動装置において、ユーザの視野に直接情報を映し出すヘッドアップディスプレイ(HUD、Head-Up Display)が知られている。
【0003】
HUDは、ユーザ(運転者)に視線をあまり動かすことなく情報を視認させることができるため、運転に伴う身体的な負荷の低減や、よそ見による事故の発生を防ぐ効果が期待され、近年普及し始めている。
【0004】
HUDでは、例えばレーザーやLCD(Liquid Crystal Display)の光源を用い、フロントガラス(ウインドシールド)やコンバイナに投影することにより、ユーザの視線の先に、宙に浮いたような虚像を表示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HUDを用いて、例えば対向車等の物体に関する情報や経路案内等のナビゲーションに関する情報を示すオブジェクトを、背景の実世界に重ねて表示する、拡張現実(AR、Augmented Reality)表示を行う場合を考える。
【0006】
この場合、従来技術では、当該物体の移動やHUDが搭載された自装置の移動に伴い、HUDで表示可能な領域外にオブジェクトが移動して行く。この場合、HUDで表示可能な領域の縁(境界)で、オブジェクトの表示が欠けるため、ユーザがHUDの表示領域の縁(境界)を認識してしまい、AR表示と背景の実世界との一体感が薄れ、AR表示のリアリティが薄れてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、背景にオブジェクトを重ねて表示する表示領域の境界を認識されにくくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
オブジェクトを背景上に重ねて表示する表示部と、前記オブジェクトの位置、及び前記
オブジェクトの移動方向を取得し、取得された前記オブジェクトの位置、及び前記オブジ
ェクトの移動方向に基づいて、前記オブジェクトが前記表示部により表示可能な領域の縁
に到達するまでの時間または距離を推定し、推定された、前記オブジェクトが前記領域の
縁に到達するまでの時間または距離に基づいて、前記オブジェクトの表示態様を決定する
演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記オブジェクトが前記表示可能な領域に入る場
合、表示領域に入ったときから、一定速度で徐々に、ユーザに視認されにくい表示態様か
ら、ユーザに視認され易い表示態様に変化させ、第1の表示位置と比較して前記表示部が表示可能な領域の境界に近い第2の表示位置における前記オブジェクトの表示態様を、前記第1の表示位置における前記オブジェクトの表示態様をよりも視認されにくい表示態様に決定する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、背景にオブジェクトを重ねて表示する表示領域の境界を認識されにくくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る表示システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る表示装置の設置例について説明する図である。
【
図3】実施形態に係る表示装置の表示領域について説明する図である。
【
図4】実施形態に係る表示装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る表示装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図6】表示部により表示されるAR表示ついて説明する図である。
【
図7】対象オブジェクトが表示領域の縁の位置に移動するまでの時間に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】対象オブジェクトが表示領域の縁の位置に移動するまでの時間に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する処理の一例を説明する図である。
【
図9】対象オブジェクトの表示態様の変化について説明する図である。
【
図10】対象オブジェクトの現在の表示位置と、対象オブジェクトの移動先の表示領域の縁との表示領域における距離に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】オブジェクトが表示領域に入る場合の処理について説明する図である。
【
図12】オブジェクトが表示領域から出た後、再度表示領域に入る場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】オブジェクトが表示領域から出た後、再度表示領域に入る場合のオブジェクトの表示態様の例について説明する図である。
【
図14】外乱によりオブジェクトが表示領域に入ったまたは表示領域から出た場合の表示態様の例について説明する図である。
【
図15】オブジェクトが回転されたことにより小さく表示される表示態様例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
<システム構成>
まず、本実施形態に係る表示システム1のシステム構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る表示システム1のシステム構成の一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る表示システム1は、車両、航空機、船舶等の移動装置に搭載され、表示装置10と、1以上のECU(Electric Control Unit)20-1、20-2、・・・とを備える。なお、以下では、表示システム1を車両に搭載した例について説明するが、表示システム1は、車両以外の移動装置においても適用可能である。
【0014】
表示装置10とECU20との間は、例えばCAN(Control Area Network)などのネットワークにより接続される。
【0015】
表示装置10は、例えばHUDであり、ECU20から取得した情報に基づき、例えば対向車等の物体に関する情報や、右折及び左折の指示や交差点名等の経路案内のためのナビゲーションに関する情報を示すオブジェクトを、背景の実世界上に重ねて表示する。なお、オブジェクトを、背景の実世界(背景上)に重ねて表示することは、AR表示とも称されている。
【0016】
図2は、実施形態に係る表示装置10の設置例について説明する図である。
図2に示すように、表示装置10は、例えばハンドル501に対面した際のドライバー502の正面(移動装置100の進行方向)のダッシュボード503内に設置される。表示装置10は、例えばダッシュボード503に開けられた開口部(投影口)から投影光504を照射し、フロントガラス505に反射させてドライバー502に虚像を見せることにより、表示領域506にオブジェクトを表示する。
【0017】
図3は、実施形態に係る表示装置10の表示領域について説明する図である。
図3に示すように、表示装置10の表示領域506において、表示装置10が表示するオブジェクト510は、フロントガラス505越しに見える現実世界に重なって表示される。表示装置10は、表示領域506において、オブジェクト510を、オブジェクト510が対応付けられた背景の物体等の位置と連動して移動させる。これにより、あたかもそこにオブジェクト510が実在するかのようにドライバーに認識される。
【0018】
ECU20は、自車両の速度(車速)、操舵角(ハンドルの切れ角)、ピッチやロール等の自車両の傾き、オブジェクトの実空間における位置及び大きさ、オブジェクトの種別等の情報を表示装置10に通知する。
【0019】
<ハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る表示装置10のハードウェア構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施形態に係る表示装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0020】
表示装置10は、通信I/F101、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104、造影装置105、及び外部I/F106、及びSSD(Solid State Drive)107等を有する。これらのハードウェアは、バスBで互いに接続されている。
【0021】
通信I/F101は、表示装置10をCAN等のネットワークに接続するインタフェースである。
【0022】
CPU102は、ROM103やSSD107等の記憶装置からプログラムやデータをRAM104上に読み出し、当該プログラムやデータに基づく処理を実行することで、表示装置10全体の制御やその他の機能を実現する演算装置である。
【0023】
ROM103は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリである。ROM103には、OS設定、ネットワーク設定等のプログラムやデータ、及び表示装置10の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)が格納されている。RAM104は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリである。
【0024】
造影装置105は、レーザーによる投影光を照射する投影装置や、発光素子により表示を行うLCD等のディスプレイであり、表示装置10による処理結果を表示する。
【0025】
SSD107は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置である。SSD107に格納されるプログラムやデータには、表示装置10全体を制御する基本ソフトウェアであるOS(Operating System)、OS上において各種機能を提供するアプリケーションソフトウェア等がある。また、SSD107は、格納しているプログラムやデータを所定のファイルシステムやDBにより管理している。
【0026】
外部I/F106は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、記録媒体106a等がある。表示装置10は、外部I/F106を介して記録媒体106aの読み取りや書き込みを行うことができる。記録媒体106aには、フレキシブルディスク、CD、DVD、SDメモリカード、USBメモリ等がある。
【0027】
<機能構成>
次に、
図5を参照し、実施形態に係る表示装置10の機能構成について説明する。
図5は、実施形態に係る表示装置10の機能ブロックの一例を示す図である。
【0028】
表示装置10は、取得部11、推定部12、決定部13、及び表示部14を有する。これら各部は、表示装置10にインストールされた1以上のプログラムが、表示装置10のCPU102に実行させる処理により実現される。
【0029】
取得部11は、自車両の速度(車速)、ハンドルの切れ角、ピッチやロール等の自車両の傾き、オブジェクトの実空間における位置及び大きさ、オブジェクトの種別等の情報をECU20から取得する。また、取得部11は、オブジェクトの実空間における位置、移動装置の移動速度、及び移動装置の操舵角に基づいて、オブジェクトの実空間における移動方向を算出して取得する。
【0030】
推定部12は、取得部11により取得されたオブジェクトの実空間における位置、及びオブジェクトの実空間における移動方向に基づいて、オブジェクトが表示部14により表示可能な領域(以下で「表示領域」と称する。)の縁に到達するまでの時間を推定する。または、推定部12は、取得部11により取得されたオブジェクトの位置、及びオブジェクトの移動方向に基づいて、オブジェクトの現在の表示位置と表示領域の縁との画素上の距離を推定する。
【0031】
決定部13は、推定部12により推定された時間または距離に基づいて、オブジェクトの表示態様を決定する。
【0032】
表示部14は、投影光または発光素子により、決定部13により決定された表示態様で、オブジェクトを、ユーザから見た表示領域の背景の実世界上に重ねて表示する。
【0033】
図6は、表示部14により表示されるAR表示ついて説明する図である。
図6(A)に示すように、オブジェクト(ARオブジェクト)510a、510bは、実世界と縮尺が一致されている仮想空間に配置される。そして、
図6(B)、
図6(C)に示すように、移動装置やオブジェクトが移動した場合においても、移動装置に乗っているドライバー502から見た時に、表示領域506において当該オブジェクトの虚像が実世界上で当該配置された位置に重ねられて表示される。実空間(実世界)における座標と、表示領域506における座標との変換には、3D画像処理などで一般的に用いられる射影変換等の公知の手法が用いられてもよい。
【0034】
図6(B)、
図6(C)では、自車両が直進し、交差点に差し掛かる場面において、次の交差点で曲る方向を案内する矢印のオブジェクトが、一定間隔で路面上に配置されているようにAR表示されている。これらの矢印のオブジェクトは、実空間上で静止しているように配置されているため、自車両の前進に伴う地面の動きと同期して、自車両に近づくように移動して表示される。この場合、これらの矢印のオブジェクトは、自車両の前進に伴い、表示装置10の表示領域の上部から下部に向かって移動され、最終的には表示領域外に出ていくように表示される。
【0035】
<処理>
≪オブジェクトが表示領域から出る場合の処理≫
次に、
図7を参照し、実施形態に係る表示装置10の処理について説明する。
図7は、対象オブジェクトが表示領域の縁の位置に移動するまでの時間に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する処理の一例を示すフローチャートである。以下の処理は、例えば、表示装置10が各表示フレームを表示する度に行われてもよい。また、以下の処理は、表示するオブジェクトが複数ある場合は、例えばステップS102以降の処理を、各オブジェクトに対して実行する。
【0036】
ステップS101において、表示装置10の取得部11は、ECU20から、ユーザの操作情報を取得する。ユーザの操作情報には、自車両の車速、及び操舵角の情報が含まれる。
【0037】
続いて、表示装置10の取得部11は、ECU20から、処理対象とするオブジェクト(以下で「対象オブジェクト」と称する。)の情報を取得する(ステップS102)。表示対象のオブジェクトの情報には、例えばオブジェクトの実空間における位置及び大きさ等が含まれる。
【0038】
続いて、表示装置10の取得部11は、対象オブジェクトの、実空間における自車両に対する相対的な移動方向を算出する(ステップS103)。
【0039】
続いて、表示装置10の取得部11は、表示装置10の表示領域における対象オブジェクトの表示位置を算出する(ステップS104)。
【0040】
続いて、表示装置10の推定部12は、表示装置10の表示領域における対象オブジェクトの移動方向を推定する(ステップS105)。例えば経路案内等のナビゲーションに関する情報を示すオブジェクトのように、実空間上で静止している対象オブジェクトであれば、自車両の速度(車速)、及び操舵角に基づいて、時間経過に伴う対象オブジェクトの表示位置の軌跡(移動方向)を推定できる。また、例えば対向車等の物体に関する情報を示すオブジェクトのように、実空間上で移動している対象オブジェクトであれば、例えばステレオカメラやレーダー等で測定した物体と自車両との相対的な速度及び移動方向、及び操舵角に基づいて、時間経過に伴う対象オブジェクトの表示位置の軌跡(移動方向)を推定できる。
【0041】
続いて、表示装置10の推定部12は、対象オブジェクトが、現在の表示位置から、表示装置10の表示領域の縁の位置に移動するまでの時間を推定する(ステップS106)。例えば、ステップS105で推定された、時間経過に伴う対象オブジェクトの表示位置の軌跡(移動方向)に基づいて、対象オブジェクトの表示位置が、表示領域の縁の位置に移動するまでに経過する時間を、表示領域の縁の位置に移動するまでの時間としてもよい。なお、表示装置10は、自車両の加速度の情報も加味して、対象オブジェクトが表示領域の縁の位置に移動するまでの時間を推定してもよい。
【0042】
続いて、表示装置10の決定部13は、当該時間に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する(ステップS107)。
【0043】
続いて、表示装置10の表示部14は、決定された表示態様にて、対象オブジェクトを表示する(ステップS108)。
【0044】
次に、
図8を参照し、ステップS107の対象オブジェクトの表示態様を決定する処理について説明する。
図8は、対象オブジェクトが表示領域の縁の位置に移動するまでの時間に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する処理の一例を説明する図である。
【0045】
対象オブジェクト510が、
図8に示すような複雑な形状である場合、例えば、対象オブジェクト510に外接する矩形等を対象オブジェクトの境界520としてもよい。そして、対象オブジェクト510の境界520が、表示領域506の縁に接するまでに経過すると推定された時間を、対象オブジェクト510が表示領域506の縁の位置521に移動するまでの時間として算出してもよい。
【0046】
次に、
図9を参照し、対象オブジェクトの表示態様の変化について説明する。
図9は、対象オブジェクトの表示態様の変化について説明する図である。
【0047】
図9(A)に示すように、表示装置10の決定部13は、対象オブジェクトの境界が、表示領域の縁に接するまでの所要時間の推定値が減少することに伴って、通常の表示態様550から、表示態様551乃至表示態様554のように、徐々にユーザに視認されにくい表示態様に変化させる。例えば、表示装置10は、表示領域の縁に接するまでの所要時間の推定値が所定値(例えば4秒)以下となった場合、表示態様551乃至表示態様554のように、当該推定値の減少に伴って対象オブジェクトの透明度を上げる。これにより、対象オブジェクトは表示領域の縁に近づくにつれて透明になっていくため、ユーザから表示領域の縁を意識されにくくすることができる。
【0048】
図9(B)は、
図9(A)と比較して、対象オブジェクトがゆっくりと表示領域の縁に近づく場合の例を示す図である。
図9(B)に示すように、対象オブジェクトが比較的ゆっくりと表示領域の縁に近づく場合、対象オブジェクトは、表示領域の縁に比較的近づいてから、徐々にユーザに視認されにくい表示態様に変化される。
【0049】
<変形例>
図8では、対象オブジェクトが表示領域の縁の位置に移動するまでの時間に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する例について説明した。以下では、対象オブジェクトの現在の表示位置と、対象オブジェクトの移動先の表示領域の縁との表示領域における距離に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する例について説明する。
【0050】
図10は、対象オブジェクトの現在の表示位置と、対象オブジェクトの移動先の表示領域の縁との表示領域における距離に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【0051】
ステップS201乃至ステップS205、ステップS208の処理は、
図7のステップS101乃至ステップS105、ステップS108の処理と同様である。
【0052】
ステップS206において、表示装置10の推定部12は、対象オブジェクトの現在の表示位置と、対象オブジェクトの移動先の表示領域の縁との表示領域における距離を推定する。例えば、ステップS205で推定された、時間経過に伴う対象オブジェクトの表示位置の軌跡(移動方向)に基づいて、対象オブジェクトの現在の表示位置と、対象オブジェクトの移動先の表示領域の縁との表示領域における距離(
図8に示す距離523)が算出できる。なお、表示領域における距離とは、表示領域が例えば液晶ディスプレイである場合の画素における距離に相当する。
【0053】
続いて、表示装置10の決定部13は、当該距離に応じて、対象オブジェクトの表示態様を決定する(ステップS207)。
【0054】
≪オブジェクトが表示領域に入る場合の処理≫
次に、
図11を参照し、オブジェクトが表示領域に入る場合の決定部13の処理について説明する。
図11は、オブジェクトが表示領域に入る場合の処理について説明する図である。
【0055】
表示装置10の決定部13は、オブジェクトが表示領域に入る場合、例えば、表示領域に入ったときから、表示態様554乃至表示態様550のように、一定速度で徐々に、ユーザに視認されにくい表示態様554から、ユーザに視認され易い通常の表示態様550に変化させる。この場合、オブジェクトの移動速度や移動方向とは関係なく、全てのオブジェクトについて、領域に入ったときから通常の表示態様550になるまでに掛かる時間は同じとなる。
【0056】
≪オブジェクトが表示領域から出た後、再度表示領域に入る場合の処理≫
次に、
図12、
図13を参照し、オブジェクトが表示領域から出た後、再度表示領域に入る場合の決定部13の処理について説明する。
図12は、オブジェクトが表示領域から出た後、再度表示領域に入る場合の処理の一例を示すフローチャートである。
図13は、オブジェクトが表示領域から出た後、再度表示領域に入る場合のオブジェクトの表示態様の例について説明する図である。
【0057】
ステップS301において、表示装置10の決定部13は、オブジェクトが表示領域から出た後、再度表示領域に入ったことを検知する。
【0058】
続いて、表示装置10の取得部11は、ECU20から、オブジェクトの種別を取得する(ステップS302)。なお、オブジェクトの種別には、例えば、車両、歩行者、経路案内等を示す情報が含まれる。
【0059】
続いて、表示装置10の決定部13は、取得部11により取得されたオブジェクトの種別に基づいて、当該オブジェクトを再度表示するか否かを判定する(ステップS303)。例えば、予め設定された、重要度が高い種別のオブジェクトの場合、再度表示すると判定される。
【0060】
再度表示すると判定されない場合(ステップS303でNO)、表示装置10の表示部14は、当該オブジェクトを表示しない(ステップS304)。
【0061】
図13(A)は、再度表示すると判定されない場合の表示例を示す図である。この場合、再度表示領域に入ったオブジェクトは表示されない。これにより、重要度がそれほど高くないオブジェクトは再表示されないため、ドライバーの認知負荷が高まってしまうことを防止できる。
【0062】
再度表示すると判定された場合(ステップS303でYES)、表示装置10の表示部14は、決定された表示態様にて、当該オブジェクトを表示する(ステップS305)。
【0063】
図13(B)は、再度表示すると判定された場合の表示例を示す図である。この場合、再度表示領域に入ったオブジェクトは、上述した「オブジェクトが表示領域に入る場合の処理」や「オブジェクトが表示領域から出る場合の処理」による表示態様と同様の表示態様で表示される。これにより、比較的重要度が高くないオブジェクトは、ドライバーの目に触れる時間を長くすることができる。
【0064】
なお、表示装置10の決定部13は、移動装置の操舵によりオブジェクトが表示領域から出た後、当該操舵を打ち消すような操舵により当該オブジェクトが表示領域に再度入った場合は、当該オブジェクトを表示部14に表示させてもよい。これにより、例えばドライバーが道路上の障害物を避けるためにハンドルを切った後、逆方向にハンドルを切って元の進行方向に復帰した場合は、オブジェクトを再表示することができる。
【0065】
≪外乱によりオブジェクトが表示領域に入ったまたは表示領域から出た場合の処理≫
次に、
図14を参照し、外乱によりオブジェクトが表示領域に入ったまたは表示領域から出た場合の処理の決定部13の処理について説明する。
図14は、外乱によりオブジェクトが表示領域に入ったまたは表示領域から出た場合の表示態様の例について説明する図である。
【0066】
上述した「オブジェクトが表示領域から出る場合の処理」では、ドライバーの車両操作である、アクセル操作と操舵(ハンドル操作)による、車速及び操舵角に基づいて、表示態様を決定する例について説明した。また、上述した「オブジェクトが表示領域に入る場合の処理」では、表示領域に入ったときからの経過時間に応じて表示態様を決定する例について説明した。
【0067】
以下では、ドライバーの車両操作以外の要因である自車両の傾き(外乱)により、オブジェクトが表示領域から出る、または表示領域に入る場合のオブジェクトの表示態様について説明する。
【0068】
外乱として、例えば、不連続な道路形状による自車両のバウンドなどがある。バウンドなどの突発的な要因に対して、オブジェクトの表示領域における表示位置を移動させない場合、オブジェクトの表示領域における表示位置が、背景の実世界上の物体の位置からずれるため、ARとしてのリアリティが低下する。
【0069】
これを防ぐため、表示装置10は、ECU20から取得した自車両のピッチ及びロールに基づき、オブジェクトを背景と同期して移動させる。なお、自車両のピッチ及びロールは、自車両に設置された傾きセンサ等により取得される。
【0070】
この場合、例えば自車両のバウンドが大きかった場合、オブジェクトが表示領域から出てしまうことも考えられる。このような場合は、
図14に示すように、外乱によっては表示態様を変化させずに、オブジェクトを移動させる。
図14(A)では、バウンドする前に、オブジェクトが通常の表示態様550で表示されている例が示されている。
図14(B)では、バウンド中に、オブジェクトが表示領域から出た例が示されている。
図14(C)では、バウンドした後に、オブジェクトが通常の表示態様550で表示されている例が示されている。
【0071】
<表示態様の変形例>
以上では、ユーザに視認されにくい表示態様として、透明度を高くする例について説明した。これに代えて、ユーザに視認されにくい表示態様として、オブジェクトが回転されたことにより小さく表示される表示態様としてもよい。
【0072】
図15は、オブジェクトが回転されたことにより小さく表示される表示態様例について説明する図である。
図15では、垂直方向を軸としてオブジェクトが回転された例を示している。この場合、決定部13は、上述した透明度を決定する処理と同様の処理により、オブジェクトの回転量を例えば表示態様551a乃至554aのように決定すればよい。なお、回転方向は任意でもよい。また、水平方向を軸としてオブジェクトを回転されてもよい。
【0073】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0074】
例えば、表示装置10及びクライアント装置30は一体の装置として構成してもよい。
【0075】
また、表示装置10の例えば、取得部11、推定部12、決定部13等の各機能部は、1以上のコンピュータにより構成されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 表示システム
10 表示装置
11 取得部
12 推定部
13 決定部
14 表示部
20 ECU(「制御装置」の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】