(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】化合物、樹脂前駆体、硬化物、光学素子、光学系、カメラ用交換レンズ、光学装置、接合レンズ、及び接合レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/38 20060101AFI20221122BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20221122BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20221122BHJP
C08F 220/22 20060101ALI20221122BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20221122BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08F20/38
C08F220/18
C08F220/20
C08F220/22
C08F220/30
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2021529547
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026021
(87)【国際公開番号】W WO2021001866
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】染谷 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】四條 雅之
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534467(JP,A)
【文献】特開2012-219102(JP,A)
【文献】特開昭63-185969(JP,A)
【文献】特開平6-88064(JP,A)
【文献】特開2006-182688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00- 20/70
C08F 220/00-220/70
C08L 33/00- 33/26
G02B 1/00- 1/18
CAPlus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、Xは、炭素数2~6のアルキレン基、酸素原子及び/若しくは硫黄原子を含む炭素数4~6のアルキレン基、又は、少なくとも1つの水素がアクリロキシ基若しくはメタクリロキシ基に置換された炭素数3~6のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と、硬化性組成物と、を含む、樹脂前駆体。
【請求項3】
前記硬化性組成物は、光硬化性組成物である、請求項2に記載の樹脂前駆体。
【請求項4】
前記硬化性組成物として、下記式(2)で表される化合物、含フッ素アクリレート化合物、含フッ素メタクリレート化合物、フルオレン構造を有するアクリレート化合物、フルオレン構造を有するメタクリレート化合物、ジアクリレート化合物、及びジメタクリレート化合物からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項2又は3に記載の樹脂前駆体。
【化2】
(式中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、炭素数1~9のアルキレン基を表し、n
1及びn
2は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。)
【請求項5】
前記硬化性組成物として、1,6-ジアクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1,6-ジメタアクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の樹脂前駆体。
【請求項6】
前記式(1)で表される化合物の含有率が、10~90質量%である、請求項2~5のいずれか一項に記載の樹脂前駆体。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか一項に記載の樹脂前駆体を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
θ
g,F値が、0.5以上である、請求項7に記載の硬化物。
【請求項9】
d線に対する屈折率(n
d)が、1.50以上1.65以下である、請求項7又は8に記載の硬化物。
【請求項10】
アッベ数(ν
d)が、10以上40以下である、請求項7~9のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項11】
内部透過率が、波長400~450nmの範囲に亘って80%以上である、請求項7~10のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか一項に記載の硬化物を用いた光学素子。
【請求項13】
請求項12に記載の光学素子を含む光学系。
【請求項14】
請求項13に記載の光学系を含むカメラ用交換レンズ。
【請求項15】
請求項13に記載の光学系を含む光学装置。
【請求項16】
第1のレンズ要素と第2のレンズ要素とが、請求項7~11のいずれか一項に記載の硬化物を介して接合されてなる、接合レンズ。
【請求項17】
請求項16に記載の接合レンズを含む光学系。
【請求項18】
請求項17に記載の光学系を含むカメラ用交換レンズ。
【請求項19】
請求項17に記載の光学系を含む光学装置。
【請求項20】
第1のレンズ要素と第2のレンズ要素とを、請求項2~6のいずれか一項に記載の樹脂前駆体を介して接触させる接触工程と、
前記樹脂前駆体を硬化させることで前記第1のレンズ要素と前記第2のレンズ要素とを接合する接合工程と、
を有する接合レンズの製造方法。
【請求項21】
前記接合工程において、前記樹脂前駆体は光が照射されることにより硬化する、請求項20に記載の接合レンズの製造方法。
【請求項22】
前記光は、前記第1のレンズ要素を介して前記樹脂前駆体に照射される、請求項21に記載の接合レンズの製造方法。
【請求項23】
前記光は、前記第2のレンズ要素を介して前記樹脂前駆体に照射される、請求項21に記載の接合レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、樹脂前駆体、硬化物、光学素子、光学系、カメラ用交換レンズ、光学装置、接合レンズ、及び接合レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、負のパワーを備える物体側レンズと正のパワーを備える像側レンズとを、樹脂接着剤層で接着した接合レンズが開示されている。このような接合レンズに使用される樹脂接着剤層としては、色収差を良好に補正するため、θg,F値の大きい材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様は、下記式(1)で表される化合物である。
【0005】
【0006】
(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、Xは、炭素数2~6のアルキレン基、酸素原子及び/若しくは硫黄原子を含む炭素数4~6のアルキレン基、又は、少なくとも1つの水素がアクリロキシ基若しくはメタクリロキシ基に置換された炭素数3~6のアルキレン基を表す。)
【0007】
本発明の第二の態様は、上述した化合物と、硬化性組成物と、を含む樹脂前駆体である。
【0008】
本発明の第三の態様は、上述した樹脂前駆体を硬化させてなる硬化物である。
【0009】
本発明の第四の態様は、上述した硬化物を用いた光学素子である。
【0010】
本発明の第五の態様は、上述した光学素子を含む光学系である。
【0011】
本発明の第六の態様は、上述した光学系を含むカメラ用交換レンズである。
【0012】
本発明の第七の態様は、上述した光学系を含む光学装置である。
【0013】
本発明の第八の態様は、第1のレンズ要素と第2のレンズ要素とが、上述した硬化物を介して接合されてなる、接合レンズである。
【0014】
本発明の第九の態様は、第1のレンズ要素と第2のレンズ要素とを、上述した樹脂前駆体を介して接触させる接触工程と、上述した樹脂前駆体を硬化させることで第1のレンズ要素と第2のレンズ要素とを接合する接合工程と、を有する接合レンズの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の一例の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の別の例の正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る光学装置を多光子顕微鏡とした場合の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る接合レンズの一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、実施例の耐光性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、アクリレートとメタクリレートをあわせて「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。
【0017】
本実施形態に係る化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0018】
【0019】
(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、Xは、炭素数2~6のアルキレン基、酸素原子及び/若しくは硫黄原子を含む炭素数4~6のアルキレン基、又は、少なくとも1つの水素がアクリロキシ基若しくはメタクリロキシ基に置換された炭素数3~6のアルキレン基を表す。)
【0020】
式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)という場合がある。)は、ベンゾトリアゾール骨格を有する新規な化合物である。化合物(1)は、光学素子等の材料である樹脂前駆体の一成分として好適に用いることができる。そして、かかる化合物を使用することでθg,F値に優れた光学素子とすることができる。特に、凹レンズと凸レンズを組み合わせた複層型光学素子(接合レンズ)の材料として使用する場合でも、薄い形状でありながら優れた光学特性を発揮することが可能であり、優れた色収差補正効果を付与することができる。なお、θg,F値とは、C線(波長656.3nm)、F線(486.1nm)、g線(435.8nm)について、それぞれの屈折率をnC、nF、ngとしたとき、(ng-nF)/(nF-nC)で表される値である。
【0021】
<化合物(1)>
以下、化合物(1)の構造について説明する。
【0022】
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
【0023】
Xは、炭素数2~6のアルキレン基、酸素原子及び/若しくは硫黄原子を含む炭素数4~6のアルキレン基、又は、少なくとも1つの水素が(メタ)アクリロキシ基に置換された炭素数3~6のアルキレン基を表す。
【0024】
炭素数2~6のアルキレン基の具体例としては、例えば、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、2-メチルプロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基、n-ペンチレン基、1,3-ジメチルプロピレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、n-ヘキシレン基、3-メチルペンチレン基、2,3-ジメチルブチレン基、1,2,3-トリメチルプロピレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基等が挙げられる。これらの中でも、樹脂前駆体等に調製した際の安定性等の観点から、エチレン基、n-プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基が好ましい。
【0025】
この炭素数2~6のアルキレン基の炭素数の上限は、好ましくは5であり、より好ましくは4である。また、アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。
【0026】
酸素原子及び/若しくは硫黄原子を含む炭素数4~6のアルキレン基の具体例としては、例えば、3-オキサペンチレン基、3-チアペンチレン基、3,6-ジオキサヘプチレン基、3,6-ジチアヘプチレン基、3-オキサ-6-チアヘプチレン基等が挙げられる。これらの中でも、樹脂前駆体等に調製した際の安定性等の観点から、3-オキサペンチレン基、3,6-ジオキサヘプチレン基が好ましい。この炭素数4~6のアルキレン基の炭素数は、4であることが好ましい。
【0027】
また、少なくとも1つの水素が(メタ)アクリロキシ基に置換された炭素数3~6のアルキレン基の具体例としては、2-(メタ)アクリロキシプロピレン基、3-(メタ)アクリロキシブチレン基、3-(メタ)アクリロキシペンチレン基、4-(メタ)アクリロキシへキシレン基等が挙げられる。これらの中でも、樹脂前駆体等に調製した際の安定性等の観点から、2-(メタ)アクリロキシプロピレン基が好ましい。この炭素数3~6のアルキレン基の炭素数は、3であることが好ましい。
【0028】
<樹脂前駆体>
本実施形態によれば、化合物(1)と、硬化性組成物と、を含む、樹脂前駆体とすることができる。樹脂前駆体は、光学材料用の樹脂前駆体として好適に用いることができる。光学材料として用いる場合には、常温常圧下で、樹脂前駆体は液状として安定に存在することが望まれる。かかる観点から、本実施形態に係る樹脂前駆体は、常温常圧下で液状であることが好ましい。そして、後述する成分を化合物(1)と併用することで、不溶成分の析出を効果的に抑制でき、安定な液状組成物となるよう容易に調製できる。
【0029】
硬化性組成物は、光硬化型であってもよいし、熱硬化型であってもよいが、光硬化性組成物であることが好ましい。例えば、(メタ)アクリレート系化合物を多く含有する場合には、光硬化性組成物であることが好ましい。
【0030】
硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物、含フッ素(メタ)アクリレート化合物、フルオレン構造を有する(メタ)アクリレート化合物、及びジ(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。かかる成分を化合物(1)と併用することで、不溶成分の析出を効果的に抑制でき、安定な液状組成物となるよう容易に調製できる。その結果、その保存中に析出物が発生することを抑制でき、当該組成物を使用する前に析出物を除く作業が不要となる。また、均質な低屈折率高分散の硬化物とすることができる。
【0031】
【0032】
(式中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Y1及びY2は、それぞれ独立に、炭素数1~9のアルキレン基を表し、n1及びn2は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。)
【0033】
式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)という場合がある。)について、以下説明する。
【0034】
Y1及びY2は、それぞれ独立に、炭素数1~9のアルキレン基を表す。アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。樹脂前駆体等に調製した際の不溶成分の析出抑制や安定性等の観点から、炭素数の上限は5であることが好ましく、4であることがより好ましい。そして、炭素数の下限は、2であることが好ましい。
【0035】
Y1及びY2の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、n-ヘキシレン基、イソヘキシレン基、ネオヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等が挙げられる。これらの中でも、樹脂前駆体等に調製した際の不溶成分の析出抑制や安定性等の観点から、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基が好ましく、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、ネオペンチレン基がより好ましい。
【0036】
n1及びn2は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。樹脂前駆体等に調製した際の不溶成分の析出を抑制でき、入手が容易である観点から、n1及びn2は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0037】
含フッ素(メタ)アクリレート化合物としては、1官能、2官能、3官能以上の含フッ素(メタ)アクリレートが挙げられ、これらの中でも、入手が容易である観点から、2官能含フッ素(メタ)アクリレートが好ましい。2官能含フッ素(メタ)アクリレートとしては、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【0039】
(式中、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Y3は炭素数2~12のパーフルオロアルキレン基又は-(CF2-O-CF2)z-を表し、n3及びn4は、それぞれ独立に、1~12の整数を表し、zは1~4の整数を表す。)
【0040】
R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。これらの中でも水素原子であることが好ましい。
【0041】
Y3は、炭素数2~12のパーフルオロアルキレン基又は-(CF2-O-CF2)z-を表し、zは、1~4の整数を表す。パーフルオロアルキレン基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。パーフルオロアルキレン基としては、-(CF2)-、-(CF2CF2)-、-(CF2CF2CF2)-、-(CF2CF2CF2CF2)-であることが好ましい。
【0042】
n3及びn4は、それぞれ独立に、1~12の整数を表す。樹脂前駆体等に調製した際の不溶成分の析出を抑制でき、入手が容易である観点から、n3及びn4の上限は、6であることが好ましく、4であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0043】
zとしては、1~3の整数であることが好ましく、1又は2の整数であることがより好ましい。
【0044】
2官能含フッ素(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、1,4-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3-テトラフルオロブタン、1,6-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-3,3,4,4-テトラフルオロヘキサン、1,6-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1,8-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロオクタン、1,8-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロオクタン、1,9-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-テトラデカフルオロノナン、1,10-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロデカン、1,12-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11-イコサフルオロドデカン等が挙げられる。さらに、エチレンオキシド変性フッ素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性フッ素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等も、2官能含フッ素(メタ)アクリレートとして用いることができる。
【0045】
これらの中でも2官能含フッ素(メタ)アクリレート化合物としては、1,6-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサンであることが好ましく、下記式(3-1)で表される化合物(1,6-ジアクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン)がより好ましい。
【0046】
【0047】
樹脂前駆体における含フッ素(メタ)アクリレート化合物の含有量は、特に限定されないが、アッベ数等の光学特性や化合物(1)との相溶性等の観点から、含フッ素(メタ)アクリレート化合物の総量の上限は、50質量%であることが好ましく、45質量%であることがより好ましく、42質量%であることが更に好ましい。そして、その下限は、20質量%であることが好ましく、30質量%であることがより好ましく、35質量%であることが更に好ましい。
【0048】
フルオレン構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、フルオレン構造を有する1官能(メタ)アクリレート化合物、フルオレン構造を有する2官能(メタ)アクリレート化合物、フルオレン構造を有する3官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、これらの中でも、入手が容易である観点から、フルオレン構造を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。かかる具体例としては、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【0050】
(式中、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は水素原子がフッ素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基を表し、n5及びn6は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。)
【0051】
【0052】
(式中、R14は、水素原子又はメチル基を表し、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は水素原子がフッ素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基を表し、n7及びn8は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。)
【0053】
式(4)について説明する。
【0054】
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。これらの中でも水素原子であることが好ましい。
【0055】
R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。これらの中でも、入手が容易である観点から、水素原子であることが好ましい。
【0056】
R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は水素原子がフッ素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基を表す。
【0057】
炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状アルキル基のいずれであってもよい。入手が容易である観点から、直鎖状、分岐鎖状が好ましい。炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0058】
水素原子がフッ素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基は、フェニル基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子又は炭素数1~6のアルキル基によって置換されたものである。かかる炭素数1~6のアルキル基としては、入手が容易である観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0059】
n5及びn6は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。これらの中でも、硬度や透明度が高く、光学特性に優れる観点から、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、1が更に好ましい。
【0060】
式(5)について説明する。
【0061】
R14は、水素原子又はメチル基を表す。これらの中でも水素原子であることが好ましい。
【0062】
R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。これらの中でも、入手が容易である観点から、水素原子であることが好ましい。
【0063】
R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は水素原子がフッ素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基を表す。
【0064】
炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状アルキル基のいずれであってもよい。入手が容易である観点から、直鎖状、分岐鎖状が好ましい。炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0065】
水素原子がフッ素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基は、フェニル基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子又は炭素数1~6のアルキル基によって置換されたものである。かかる炭素数1~6のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基としては、入手が容易である観点から、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基が好ましい。
【0066】
n7及びn8は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。これらの中でも、硬度や透明度が高く、光学特性が優れるとの観点から、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、1が更に好ましい。
【0067】
フルオレン構造を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、下記式(4-1)で表される化合物、下記式(5-1)で表される化合物が好ましく、下記式(4-1)で表される化合物(9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン)がより好ましい。
【0068】
【0069】
【0070】
樹脂前駆体におけるフルオレン構造を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、特に限定されないが、白濁を抑制し、不溶成分の析出を抑制できる観点から、フルオレン構造を有する(メタ)アクリレート化合物の総量として、20~50質量%であることが好ましい。含有量の上限は、40質量%であることがより好ましく、35質量%であることが更に好ましい。含有量の下限は、25質量%であることがより好ましく、26質量%であることが更に好ましい。
【0071】
ジ(メタ)アクリレート化合物としては、上述した各成分以外のもので、(メタ)アクリレート構造を2つ有する化合物が挙げられる。ジ(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオール(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド・プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
ジ(メタ)アクリレート化合物の中でも、化合物(1)との相溶性等の観点から、脂肪族ジ(メタ)アクリレートが好ましい。その中でも、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオール(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(AHDN)がより好ましい。脂肪族ジ(メタ)アクリレートは、化学構造上、化合物(1)と高い相溶性を有するため、安定な液状を維持できる。その結果、化合物(1)を高濃度に含有する液状の樹脂前駆体とすることが可能となる。化合物(1)を高濃度に含有する樹脂前駆体は、光学材料として使用する際、光学特性上の効果をより一層高くすることができる。
【0073】
樹脂前駆体におけるジ(メタ)アクリレート化合物の含有量は、特に限定されないが、化合物(1)との相溶性等の観点から、ジ(メタ)アクリレート化合物の総量として10~80質量%であることが好ましい。含有量の上限は、60質量%であることがより好ましく、50質量%であることが更に好ましい。含有量の下限は、20質量%であることがより好ましく、35質量%であることが更に好ましい。
【0074】
本実施形態に係る硬化性組成物は、上述以外の成分も含有することができる。例えば、1官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを併用することで、樹脂の硬度、透明度、光学特性を調節することが可能である。これらの中でも、化合物(1)との相溶性を向上させる観点から、1官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0075】
1官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、エトキシジプロピレングリコールアクリレート、エトキシトリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、化合物(1)との相溶性等について構造上の観点から、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、エトキシトリプロピレングリコールアクリレートであることが好ましい。
【0076】
3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、化合物(1)との相溶性等について構造上の観点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0077】
4官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、化合物(1)との相溶性等について構造上の観点から、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0078】
本実施形態に係る樹脂前駆体が光硬化型である場合には、樹脂前駆体は、さらに光重合開始剤を含有してもよい。かかる光重合開始剤としては、光照射によって単量体成分の重合を開始することができるものであれば特に限定されず、樹脂の光硬化に使用される公知のものを使用することができる。光照射に用いられる光としては、使用する光重合開始剤に応じて適宜選択することができ、通常、可視光、紫外線、電子線等が用いられる。
【0079】
光重合開始剤の含有量については、使用成分の種類や照射する光の種類にもよるが、通常0.1~5質量%であることが好ましい。
【0080】
光重合開始剤としては、例えば、反応性の観点から、ホスフィン系やアセトフェノン系の光重合開始剤が好ましい。ホスフィン系光重合開始剤としては、ビス(2-4-6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が好ましい。アセトフェノン系光重合開始剤としては、反応性に加えて樹脂の黄変を抑制できる観点から、α位にヒドロキシル基を有するアルキルフェニルケトン類が好ましく、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等がより好ましい。
【0081】
本実施形態に係る樹脂前駆体は、さらに光安定剤を含有してもよい。かかる光安定剤としては、公知のものを使用することができる。その好適例としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ビペリジル)セバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート等のヒンダードアミン系材料等が挙げられる。
【0082】
本実施形態に係る樹脂前駆体は、さらに重合禁止剤を含有してもよい。かかる重合禁止剤としては、公知のものを使用することができる。その好適例としては、p-ベンゾキノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5-ジフェニルパラベンゾキノン等のヒドロキノン類、T-ブチルカテコール等の置換カテコール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、テトラメチルピペリジニル-N-オキシラジカル(TEMPO)等のN-オキシラジカル類、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、分子状酸素、硫黄等が挙げられる。これらの中でも、汎用性や重合抑制の観点から、ヒドロキノン類、フェノチアジン、N-オキシラジカル類がより好ましい。
【0083】
本実施形態に係る樹脂前駆体は、さらに紫外線吸収剤を含有してもよい。かかる紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができる。その好適例としては、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。紫外線吸収剤は、光安定剤と併用するとより一層優れた効果が期待できる。
【0084】
化合物(1)と併用する硬化性組成物について、これまで説明した各成分の好適な組み合わせとして、含フッ素(メタ)アクリレート化合物又はフルオレン構造を有する(メタ)アクリレート化合物と、ジ(メタ)アクリレート化合物とを含有することが好ましく、含フッ素(メタ)アクリレート化合物とジ(メタ)アクリレート化合物とを含有することがより好ましく、脂肪族含フッ素(メタ)アクリレート化合物と脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物とを含有することがより更に好ましい。
【0085】
硬化性組成物としての、上述した好適な組み合わせの具体的な成分の組み合わせは、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、1,6-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ビス(2-4-6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ビペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選ばれるいずれかを含むことが好ましい。
【0086】
これらの中でも、不溶成分の析出を効果的に抑制でき、安定な液状組成物となるよう容易に調製できる観点から、1,6-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。さらには、1,6-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選ばれる2種以上を含むことが更に好ましく、1,6-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを含むことがより更に好ましい。かかる成分を化合物(1)と併用することで、常温状態下において高い安定性を有する液状組成物となるよう一層容易に調製できる。
【0087】
上述した硬化性組成物の組み合わせに加えて、化合物(2)もさらに併用することが好ましい。これにより、達成可能な光学特性の領域が広がり、これを用いる製品設計の自由度を向上させることができる。
【0088】
樹脂前駆体における化合物(1)の含有量は、特に限定されないが、液状で高い安定性を維持するという観点から、10~90質量%であることが好ましい。また、上述の観点から、その含有量の上限は、50質量%であることがより好ましく、30質量%であることが更に好ましく、25質量%であることがより更に好ましい。また、含有量の下限は、15質量%であることがより好ましい。
【0089】
<硬化物>
本実施形態に係る樹脂前駆体を硬化させてなる硬化物とすることができる。硬化の手法については、含有する硬化性組成物の特性に応じて、光硬化としてもよいし、熱硬化としてもよい。硬化手法としては、例えば、紫外線硬化型の組成物を用い、紫外線を照射する手法を採用できる。
【0090】
硬化物の物性として、θg,F値は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることが更に好ましく、0.8以上であることが更に好ましい。アッベ数(νd)の下限は、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、17以上であることが更に好ましい。アッベ数(νd)の上限は、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、27以下であることが更に好ましい。そして、アッベ数(νd)の数値範囲としては、10以上40以下であることが好ましい。さらに、θg,F値とアッベ数(νd)は、上述した数値範囲をいずれも満たすことが好ましい。また、d線に対する屈折率(nd)は、1.50以上1.65以下とすることができる。
【0091】
ガラス材料や有機樹脂等からなる光学材料は、短波長側になるにつれてその屈折率が低下する傾向にある。屈折率の波長分散性を示す指標として、θg,F値やアッベ数(νd)が用いられる。これらは光学材料特有の値であるが、屈折光学系においては、分散特性の異なる光学材料を適宜組み合わせることで、色収差を低減することが試みられている。しかしながら、設計要求等の観点から、レンズの構成や枚数が制限される場合、色収差を十分に補正することが困難な場合がある。この点について、本実施形態に係る硬化物は、θg,F値が高く、特異な分散特性を有するものである。本実施形態に係る硬化物はかかる特性を有するため、優れた色収差補正機能を有し、かかる問題を解消することができる。
【0092】
さらに、硬化物の内部透過率は、波長400~450nmの範囲に亘って80%以上であることが好ましい。本実施形態によれば、光学材料として、高い内部透過率を有する硬化物とすることができる。
【0093】
<光学素子・光学系・カメラ用交換レンズ・光学装置等>
本実施形態に係る硬化物は、これを光学素子として用いることができる。かかる硬化物を含む光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタといったものも包含される。好適例としては、光学レンズとして使用することが挙げられる。さらに、本実施形態に係る光学素子は、これを含む光学系として用いることができる。
【0094】
本実施形態に係る光学系は、これを含むカメラ用交換レンズとして好適に用いることができる。このような光学素子、光学レンズ、カメラ用交換レンズの構成については、公知のものを採用できる。さらには、本実施形態に係る光学系は、これを含む光学装置として好適に用いることができる。かかる光学系を含む光学装置としては、特に限定されないが、例えば、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置や光学顕微鏡等が挙げられる。
【0095】
(撮像装置)
図1は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の一例の斜視図である。
【0096】
撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ(光学系)103は本実施形態に係る硬化物を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして、該レンズ鏡筒102のレンズ103を通した光がカメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサーチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサーチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサーチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
【0097】
図2は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の別の例の正面図であり、
図3は、当該撮像装置の背面図である。
【0098】
撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズ(光学系)WLは本実施形態に係る硬化物を備えたものである。撮像装置CAMは、不図示の電源ボタンを押すと、撮影レンズWLの不図示のシャッタが開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニターMに表示される。撮影者は、液晶モニターMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、不図示のメモリーに記録保存する。撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
【0099】
このようなデジタルカメラ等に用いられる光学系には、より高い解像度、軽量化、小型化が求められる。これらを実現するには光学系に高屈折率な光学ガラスを用いることが有効である。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、かかる光学機器の部材として好適である。なお、本実施形態において適用可能な光学機器としては、上述した撮像装置に限らず、例えば、プロジェクタ等も挙げられる。光学素子についても、レンズに限らず、例えば、プリズム等も挙げられる。
【0100】
(多光子顕微鏡)
図4は、本実施形態に係る光学装置を多光子顕微鏡とした場合の一例を示すブロック図である。
【0101】
多光子顕微鏡2は、光学素子として、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
【0102】
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
【0103】
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
【0104】
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
【0105】
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上述した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラー205の方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
【0106】
例えば、試料Sを蛍光観察する場合には、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
【0107】
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過したりする。
【0108】
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0109】
一方、ダイクロイックミラー205を透過した観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
【0110】
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0111】
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。
【0112】
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部213は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0113】
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
【0114】
<接合レンズ及びその製造方法>
ここまでは、本実施形態に係る化合物、樹脂前駆体及び硬化物等を、単層レンズに用いた場合を中心に説明してきたが、本実施形態に係る化合物、樹脂前駆体及び硬化物等は、複層のレンズからなる接合レンズの接合部材としても好適に用いることができる。
【0115】
図5は、本実施形態に係る接合レンズの一例を示す概略図である。
【0116】
接合レンズ3は、第1のレンズ要素301と第2のレンズ要素302とが、本実施形態に係る硬化物303を介して接合されてなるものである。なお、接合レンズを構成するレンズについては、接合レンズの要素であることを明確にする観点から、上述したように「レンズ要素」と称する場合がある。このように、本実施形態に係る硬化物303は、上述した接合部材として機能させることができる。
【0117】
2枚のレンズ要素を有する接合レンズに、本実施形態に係る化合物や樹脂前駆体や硬化物を用いる場合、まず、(1)第1のレンズ要素と第2のレンズ要素とを、本実施形態に係る樹脂前駆体を介して接触させる接触工程と、(2)樹脂前駆体を硬化させることで第1のレンズ要素と第2のレンズ要素とを接合する接合工程と、を行う製造方法が挙げられる。
【0118】
(1)接触工程では、本実施形態に係る樹脂前駆体は、未硬化の状態で第1のレンズ要素と第2のレンズ要素の間に介在している。例えば、樹脂前駆体が液状組成物である場合、第1のレンズ要素と第2のレンズ要素の接触面に樹脂前駆体を塗布し、両レンズ要素を重ね合わせる。
【0119】
(2)接合工程において樹脂前駆体を硬化させる手法については、光硬化、熱硬化のいずれであってもよいが、樹脂前駆体に光を照射することにより、これを硬化させることが好ましい。当該光は、第1のレンズ要素又は第2のレンズ要素を介して樹脂前駆体に照射されることが好ましい。本実施形態に係る化合物、樹脂前駆体及び硬化物は、経時変化による黄変を抑制でき、高い透明性を長期にわたり維持することができる。かかる観点からも好適な製造手法である。
【0120】
このようにして得られる接合レンズは、単層レンズにおいて述べたものと同様に、光学系に用いることができる。また、本実施形態に係る接合レンズは、単層レンズにおいて述べたものと同様に、カメラ用交換レンズや、光学系を含む光学装置として好適に用いることができる。なお、上述の態様では2つのレンズ要素を用いた接合レンズについて説明したが、これに限られず、3つ以上のレンズ要素を用いた接合レンズとしてもよい。また、3つ以上のレンズ要素を用いた接合レンズとする場合、各レンズ要素間の接合部材の全てを本実施形態に係る硬化物としてよいが、これに限られず、接合部材のうち少なくとも1つが本実施形態に係る硬化物であればよい。
【実施例】
【0121】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。まず化合物を合成し、それを含む樹脂前駆体及びその硬化物を作製し、それぞれについて物性評価を行った。
【0122】
I.化合物の作製及び物性評価
<実施例1(化合物(1A)の合成)>
【0123】
(中間体化合物(a)の合成)
300mL反応容器に2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル-2H-ベンゾトリアゾール10.00g(30.9mmol)、4-メトキシフェノール(MEHQ)200mg(1.61mmol)、テトラヒドロフラン(THF、脱水)100mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン6.12g(40.2mmol)を滴下した。室温で1時間攪拌した後、クロロメチルメチルエーテル4.98g(61.9mmol)をゆっくりと滴下した。そのまま2時間攪拌した後、薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応液をチェックすると2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル-2H-ベンゾトリアゾールはほぼ消失していた。そこで、反応液に酢酸エチル30mLを加えた。分液ロートに移して2N水酸化ナトリウム水溶液100mLで2回、飽和食塩水100mLで1回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0124】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒は、n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して得られた淡黄色液体にMEHQの1mg/mLクロロホルム溶液2mLを加え、40℃で3時間減圧乾燥することにより中間体化合物(a)を得た。収量は9.97g(27.1mmol)、収率は87.8%だった。
【0125】
【0126】
(中間体化合物(b)の合成)
300mL反応容器に中間体化合物(a)9.97g(27.1mmol)、MEHQ199mg(1.60mmol)、テトラヒドロフラン(脱水)30mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに2-メルカプトエタノール2.12g(27.1mmol)と1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン6.12g(40.2mmol)のテトラヒドロフラン5mL希釈液を加えた。そのまま2時間攪拌した後、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(a)は完全に消失しており、2-メルカプトエタノールの臭気も消失していた。トリエチルアミン(Et3N)6.86g(67.8mmol)を加えて0℃に冷却した。これに塩化メタクリロイル5.67g(54.3mmol)をゆっくりと滴下した。そのまま2時間攪拌した後、反応液に2N水酸化ナトリウム水溶液35mLを加えた。分液ロートで有機層と水層に分離した後、水層を酢酸エチル20mLで2回抽出した。有機層と抽出層をまとめて飽和食塩水50mLで2回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0127】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮することにより中間体化合物(b)を主成分とする淡黄色液体の粗成物を14.76g得た。
【0128】
【0129】
(化合物(1A)の合成)
200mL反応容器に中間体化合物(b)を主成分とする粗成物14.76g、テトラヒドロフラン(脱水)90mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに12N塩酸10mLをゆっくりと滴下した。そのまま終夜攪拌した後、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(b)は完全に消失していた。40℃で減圧濃縮した後、酢酸エチル100mLを加えた。分液ロートで有機層と水層に分離した後、有機層を飽和食塩水100mLで3回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0130】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒は、n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して得られた微黄色液体にMEHQの1mg/mLクロロホルム溶液2mLを加え、40℃で3時間減圧乾燥することにより化合物(1A)を得た。収量は8.72g(18.6mmol)、中間体化合物(a)から中間体化合物(b)を経て化合物(1A)に至る収率は68.4%だった。化合物(1A)はその後、暗所保管中に結晶化した。化合物(1A)の融点は61℃であった。
【0131】
【0132】
化合物(1A)の1H-NMR(ブルカー社製、「AVANCE III HD」)の測定結果を以下に示す。
【0133】
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6):δ1.09-1.11(3H,d),1.84(3H,s),2.61-2.78(5H,m),2.92-2.95(2H,t),4.14-4.17(2H,t),4.26-4.29(2H,t),5.65(1H,s),5.99(1H,s),7.11-7.12(1H,d),7.32-7.34(1H,dd),7.52-7.55(2H,m),7.77-7.78(1H,d),8.01-8.05(2H,m),10.48(1H,s)
m.p.=61℃
【0134】
<実施例2(化合物(1B)の合成)>
(中間体化合物(c)の合成)
実施例1で説明した中間体化合物(a)を用いて、中間体化合物(c)を合成した。300mL反応容器に中間体化合物(a)9.57g(26.0mmol)、MEHQ191mg(1.54mmol)、テトラヒドロフラン(脱水)30mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに3-メルカプトプロパノール2.40g(26.0mmol)と1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.198g(1.30mmol)のテトラヒドロフラン5mL希釈液を加えた。そのまま2時間攪拌したのち、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(a)は完全に消失しており3-メルカプトプロパノールの臭気も消失していた。トリエチルアミン(Et3N)6.59g(65.1mmol)を加えて0℃に冷却した。これに塩化メタクリロイル5.45g(52.1mmol)をゆっくりと滴下した。そのまま2時間攪拌したのち、反応液に2N水酸化ナトリウム水溶液35mLを加えた。分液ロートで有機層と水層に分離したのち、水層を酢酸エチル20mLで2回抽出した。有機層と抽出層をまとめて飽和食塩水50mLで2回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0135】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮することにより中間体化合物(c)を主成分とする淡黄色液体の粗成物を13.04g得た。
【0136】
【0137】
(化合物(1B)の合成)
200mL反応容器に中間体化合物(c)を主成分とする粗成物13.04g、テトラヒドロフラン(脱水)90mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに12N塩酸10mLをゆっくりと滴下した。そのまま終夜攪拌したのち、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(c)は完全に消失していた。分液ロートに移して飽和食塩水50mLで3回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0138】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒は、n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して得られた微黄色液体にMEHQの1mg/mLクロロホルム溶液2mLを加え、40℃で3時間減圧乾燥することにより、化合物(1B)を得た。収量は6.00g(12.4mmol)、中間体化合物(a)から中間体化合物(c)を経て化合物(1B)に至る収率は47.6%だった。
【0139】
【0140】
化合物(1B)の1H-NMRの測定結果を以下に示す。
【0141】
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6):δ1.10-1.11(3H,d),1.76-1.82(2H,q),1.85(3H,s),2.48-2.72(5H,m),2.93-2.95(2H,t),4.08-4.10(2H,t),4.27-4.29(2H,t),5.64(1H,s),6.00(1H,s),7.11-7.12(1H,d),7.32-7.34(1H,dd),7.53-7.55(2H,m),7.77-7.78(1H,d),8.02-8.04(2H,m),10.46(1H,s)
【0142】
<実施例3(化合物(1C)の合成)>
【0143】
(中間体化合物(d)の合成)
実施例1で説明した中間体化合物(a)を用いて、中間体化合物(d)を合成した。300mL反応容器に中間体化合物(a)9.70g(26.4mmol)、MEHQ194mg(1.56mmol)、テトラヒドロフラン(脱水)30mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに3-メルカプト-2-ブタノール2.80g(26.4mmol)と1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.201g(1.32mmol)のテトラヒドロフラン5mL希釈液を加えた。そのまま3日間攪拌したのち、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(a)は完全に消失しており、3-メルカプト-2-ブタノールの臭気も消失していた。トリエチルアミン(Et3N)6.68g(66.0mmol)を加えて0℃に冷却した。これに塩化メタクリロイル5.52g(52.8mmol)をゆっくりと滴下した。そのまま2時間攪拌したのち、反応液に2N水酸化ナトリウム水溶液35mLを加えた。分液ロートで有機層と水層に分離したのち、水層を酢酸エチル20mLで2回抽出した。有機層と抽出層をまとめて飽和食塩水50mLで2回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0144】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮することにより中間体化合物(d)を主成分とする淡黄色液体の粗成物を15.35g得た。
【0145】
【0146】
(化合物(1C)の合成)
200mL反応容器に中間体化合物(d)を主成分とする粗成物15.35g、テトラヒドロフラン(脱水)90mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに12N塩酸10mLをゆっくりと滴下した。そのまま終夜攪拌したのち、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(d)は完全に消失していた。分液ロートに移して飽和食塩水50mLで3回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0147】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒は、n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して得られた微黄色液体にMEHQの1mg/mLクロロホルム溶液2mLを加え、40℃で3時間減圧乾燥することにより、化合物(1C)を得た。収量は8.21g(16.5mmol)、中間体化合物(a)から中間体化合物(d)を経て化合物(1C)に至る収率は62.5%だった。
【0148】
【0149】
化合物(1C)の1H-NMRの測定結果を以下に示す。
【0150】
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6):δ1.08-1.19(9H,m),1.85(3H,s),2.58-2.68(2H,m),2.72-2.81(1H,m),2.86-2.95(3H,m),4.14-4.17(2H,t),4.26-4.30(2H,t),4.88-4.94(1H,m),5.64(1H,s),5.99(1H,s),7.11-7.12(1H,d),7.32-7.34(1H,dd),7.53-7.56(2H,m),7.77-7.78(1H,d),8.02-8.05(2H,m),10.47(1H,s)
【0151】
<実施例4(化合物(1D)の合成)>
【0152】
実施例1で説明した中間体化合物(a)を用いて、中間体化合物(e)を合成した。300mL反応容器に中間体化合物(a)9.67g(26.3mmol)、MEHQ193mg(1.55mmol)、テトラヒドロフラン(脱水)30mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これにα-チオグリセロール2.85g(26.3mmol)と1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.200g(1.32mmol)のテトラヒドロフラン5mL希釈液を加えた。そのまま2時間攪拌したのち、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(a)は完全に消失しており、α-チオグリセロールの臭気も消失していた。トリエチルアミン(Et3N)11.99g(118.4mmol)を加えて0℃に冷却した。これに塩化メタクリロイル11.01g(105.3mmol)をゆっくりと滴下した。そのまま2時間攪拌したのち、室温で終夜攪拌した。反応液に2N水酸化ナトリウム水溶液35mLを加えた。分液ロートで有機層と水層に分離したのち、水層を酢酸エチル20mLで2回抽出した。有機層と抽出層をまとめて飽和食塩水50mLで2回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0153】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮することにより中間体化合物(e)を主成分とする黄色液体の粗成物を20.95g得た。
【0154】
【0155】
(化合物(1D)の合成)
200mL反応容器に中間体化合物(e)を主成分とする粗成物20.95g、テトラヒドロフラン(脱水)90mLを量り入れ、攪拌して均一溶液とした。これに12N塩酸10mLをゆっくりと滴下した。そのまま終夜攪拌したのち、TLCで反応液をチェックすると中間体化合物(e)は完全に消失していた。分液ロートに移して飽和食塩水50mLで3回洗浄した。容器に移して無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0156】
固形物をろ過で取り除き、ろ液を40℃で減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒は、n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して得られた微黄色液体にMEHQの1mg/mLクロロホルム溶液2mLを加え、40℃で3時間減圧乾燥することにより、化合物(1D)を得た。収量は8.32g(14.7mmol)、中間体化合物(a)から中間体化合物(e)を経て化合物(1D)に至る収率は55.7%だった。
【0157】
【0158】
化合物(1D)の1H-NMRの測定結果を以下に示す。
【0159】
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6):δ1.09-1.11(3H,dd),1.84(6H,s),2.61-2.85(5H,m),2.93-2.95(2H,t),4.20-4.24(1H,dd),4.25-4.30(2H,q),4.35-4.39(1H,m),5.14-5.20(1H,m),5.66(1H,s),5.67(1H,s),5.98(1H,s),5.99(1H,s),7.11-7.12(1H,d),7.32-7.34(1H,dd),7.52-7.56(2H,m),7.77-7.78(1H,d),8.02-8.05(2H,m),10.46(1H,s)
【0160】
<化合物の物性評価>
【0161】
(測定及び評価)
化合物の屈折率は、多波長屈折率計(アントンパール・ジャパン社製)を用いて測定した。C線(波長656.3nm)、d線(587.6nm)、F線(486.1nm)、g線(435.8nm)について、それぞれの屈折率nC、nd、nF、ngを測定した。そして、θg,F値とνd値を以下の式から算出した。
θg,F=(ng-nF)/(nF-nC)
νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0162】
なお、得られた化合物のうち、結晶化した化合物(1A)は、加熱、融解して液状とした後、測定温度まで冷却し、過飽和の液体状態において屈折率を測定した。また、化合物(1B)、化合物(1C)、化合物(1D)は、液体の化合物として得られたため、そのまま液体の状態で室温にて屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
【0163】
【0164】
II.樹脂前駆体の作製及び物性評価
【0165】
(主剤3の作製)
まず、後述する主剤3(式(iii)で表される化合物)を、以下の方法に準拠して、作製した。
【0166】
まず、アルゴン気流下、300mLの反応容器に3-ホルミル-4-メトキシフェニルボロン酸10.00g(55.6mmol)、テトラヒドロフラン(THF、脱水)50mL、エタノール(脱水)50mLを量り入れ、0℃で攪拌した。これに水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)1.36g(36.0mmol)を少量ずつ加えた。0℃で2時間攪拌後、TLCで反応チェックを行い、原料の消失を確認した。これに市水50mLを加えて反応を停止させると、直ちに白色沈殿が生じた。
【0167】
次に、懸濁液を減圧ろ過し、有機溶媒を除去した。懸濁液が中性になるまで2mol/L濃度の塩酸を加えた後、沈殿をろ取した。ろ取物を、酢酸エチル50mLで洗浄し、40℃で減圧乾燥して、ろ取物として中間体化合物(iii-1)((3-ヒドロキシメチル)-4-メトキシ-フェニル)ボロン酸)を得た。収量は9.27g(50.9mmol)、収率は91.5%であった。
【0168】
【0169】
続いて、500mL反応容器に4,4’-ジクロロベンゾフェノン3.30g(12.5mmol)、中間体化合物(iii―1)5.00g(27.5mmol)、炭酸水素ナトリウム3.57g(42.5mmol)、1,4-ジオキサン150mL、蒸留水75mLをそれぞれ量り入れ、室温で攪拌しながらアルゴンバブリングした。30分間攪拌した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(Ph3)4)0.29g(0.25mmol)を反応系に添加した。そして、アルゴンバブリングをアルゴン気流下に切り替え、90℃で一晩攪拌した。その後、TLCで反応チェックを行い、原料の消失を確認し、加熱を停止した。反応溶液を室温まで放冷した後、飽和塩化アンモニウム水溶液25mL、市水150mLを添加し、30分間攪拌した。析出した沈殿をろ取し、水300mLで洗浄して、黄白色粉末を得た。
【0170】
得られた黄白色粉末を70℃で一晩減圧乾燥した。この粉末にテトラヒドロフラン:クロロホルム=1:9の混合液900mLを加え、60℃で加熱した。この溶液をシリカゲルカラム(展開溶媒は、テトラヒドロフラン:クロロホルム=1:9)で精製し、中間体化合物(iii-2)を得た。収量は4.86g(10.7mmol)、収率は85.6%であった。
【0171】
【0172】
そして、アルゴン気流下、200mL反応容器に中間体化合物(iii-2)2g(4.40mmol)、ジクロロメタン(脱水)80mLを量り入れ、0℃で冷却した。これに三臭化リン(PBr3)1.01g(3.74mmol)を5分かけて滴下し、室温へ昇温させた。3時間攪拌後、TLC及びHPLC分析で反応チェックを行い、原料の消失を確認し、攪拌を停止した。これに10℃以下の市水80mLを加え、引き続き30分間攪拌した。そして、析出した沈殿をろ取した後、ろ液を有機層と水層に分離した。水層をジクロロメタン50mLで2回洗うことで、水層に溶け込んだ有機成分を回収した。続いて、有機層と水層から回収した有機成分をまとめて、混合溶液とした。この混合溶液を吸引ろ過した。なお、吸引ろ過する際には、水が凍ってろ過が止まるため、漏斗の上から温めながら作業を行った。
【0173】
得られたろ液を減圧濃縮後、再度ろ取物を加え、これにテトラヒドロフラン50mLを加えることで懸濁させ、懸濁液を得た。得られた懸濁液に市水200mLを加え、析出した沈殿をろ取した。ろ液については、市水でろ液が中性になるまで洗浄後、さらにメタノール20mLで洗浄した。得られた白色粉末を、70℃で一晩減圧乾燥することにより中間体化合物(iii-3)を得た。収量は2.36g(4.07mmol)、収率は92.5%であった。
【0174】
【0175】
アルゴン気流下、100mL反応容器にテトラヒドロフラン(脱水)25mL、水素化ナトリウム(60%濃度)0.47g(11.7mmol)を量り取り、0℃で冷却した。これに2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール2.98g(28.6mmol)のテトラヒドロフラン5mL希釈液を15分間かけて滴下し、室温まで昇温させた。1時間攪拌後、中間体化合物(iii-3)1.6gを一度に添加し、60℃で16時間攪拌した。その後、TLC及びHPLC分析で反応チェックを行い、原料の消失を確認した。これに市水30mLを加えて反応を停止させた。続いて、反応溶液に酢酸エチル100mLを加えることで有機層と水層に分離させた。水層を酢酸エチル30mLで2回洗うことで、水層に溶け込んだ有機成分を回収した。そして、有機層と水層から回収した有機成分をまとめて混合溶液とした。得られた混合溶液を、水、飽和食塩水の順で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0176】
次に、乾燥させた混合溶液を減圧濃縮することで溶媒を留去し、薄黄色固体4.21gを得た。これをシリカゲルカラム(展開溶媒は、酢酸エチル:クロロホルム=1:4)で精製し、白色固体の中間体化合物(iii-4)を得た。得られた白色固体を70℃で1時間減圧乾燥した。収量は1.54g(2.46mmol)、収率は71.3%であった。
【0177】
【0178】
アルゴン気流下、30mL反応容器に中間体化合物(iii-4)1.50g(2.39mmol)、クロロホルム(脱水)12mL、トリエチルアミン(TEA)2.30g(22.7mmol)、p-メトキシフェノール6.0mg(48μmol)を量り取り、0℃で冷却した。これにメタクリロイルクロライド0.85g(8.13mmol)を5分間かけて滴下すると、溶液色は桃色に変化し、トリエチルアミンハイドロクロライドが析出した。続いて0℃から室温まで昇温させて1時間攪拌した後、TLC及びHPLC分析で反応チェックを行い、原料の消失を確認した。これに市水6mLを加えて反応を停止させた。続いて、反応溶液を有機層と水層に分離した。水層をクロロホルム30mLで2回洗うことで、水層に溶け込んだ有機成分を回収した。そして、有機層と水層から回収した有機成分をまとめて、混合溶液とした。この混合溶液を、水、飽和食塩水の順で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。
【0179】
次に、乾燥させた混合溶液にp-メトキシフェノール6.0mg(48μmol)とトルエン10mLを加えた。そして、混合溶液を減圧濃縮することでトリエチルアミンと溶媒を留去し、粗体2.80gを得た。得られた粗体をシリカゲルカラム(展開溶媒は、クロロホルム)で精製した。
【0180】
さらに、前工程で得られたシリカゲルカラムのフラクションにp-メトキシフェノール0.9mg(500ppm相当)のクロロホルム溶液を加え、30℃以下で減圧濃縮し、目的物である黄白色固体(主剤3(化合物(iii)))を得た。濃縮工程では、重合を防ぐため、長時間減圧下で保持しないようにした。収量は1.73g(2.27mmol)、収率は94.9%であった。融点は、100℃であった。
【0181】
【0182】
主剤3(化合物(iii))の1H-NMRの測定結果を以下に示す。
【0183】
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):δ0.95(12H,s),1.81and1.85(6H,s),3.31(4H,s),3.84(6H,s),3.94(4H,s),4.54(4H,s),5.59and5.97(4H,s),7.11-7.14(2H,d),7.69-7.86(12H,m)
m.p.=100℃
【0184】
<実施例5~8>
表2に示す割合で、化合物(1A)とその他の成分とを混合して、樹脂前駆体(1A-1)~(1A-4)を作製した。そして、得られた樹脂前駆体の常温常圧での状態を確認した。なお、表中の配合比率は、特に断りがない限り、質量%基準である。
【0185】
それぞれの樹脂前駆体において使用した成分を示す。
【0186】
・主剤1
9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(式(i))
【0187】
【0188】
・主剤2
1,6-ジアクリロイルオキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン(式(ii))
【0189】
【0190】
・主剤3
下記式(iii)で表される化合物(式(iii))
【0191】
【0192】
・相溶化剤:
メトキシトリプロピレングリコールアクリレート(式(iv))
【0193】
【0194】
・光重合開始剤1:
1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(式(v))
【0195】
【0196】
・光重合開始剤2:
ビス(2-4-6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(式(vi))
【0197】
【0198】
・ラジカル捕捉剤:
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ビペリジル)セバケート(式(vii))+メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(式(viii))
【0199】
【0200】
【0201】
・紫外線吸収剤:
2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(式(ix))
【0202】
【0203】
<樹脂前駆体の物性評価>
(屈折率測定用サンプルの作製)
それぞれの樹脂物前駆体は、それを硬化させることなく、液体の状態で物性を測定した。
【0204】
(測定及び評価)
化合物の物性測定と同様の手法にて、それぞれの樹脂前駆体について屈折率nC、nd、nF、ngを測定し、θg,F値とνd値を算出した。その結果を表2に示す。
【0205】
【0206】
III.硬化物の作製及び物性評価
【0207】
<実施例9~12>
樹脂前駆体(1A-1)~(1A-4)を合成石英(t=1mm)に挟み、385nm以下の波長カットフィルターを介して、高輝度水銀キセノンランプ(浜松ホトニクス社製、「LC8」)の光を照射することによって硬化させ、硬化物(1A-1)~(1A-4)を得た。各硬化物について、常温常圧での状態を確認した。
【0208】
<硬化物の物性評価>
(屈折率測定用サンプルの作製)
石英ガラス基板上に矩形形状の開口部を有するシリコンゴムシートを載置し、開口部を樹脂前駆体で満たした後、石英ガラス基板で蓋をした。次いで、石英ガラス基板を介して樹脂前駆体に紫外線を照射し、硬化させた。そして、硬化物を離型することで、形状15mm×15mm、厚さ0.5mmの屈折率測定用サンプルを得た。
【0209】
(測定及び評価)
化合物の物性測定と同様の手法にて、屈折率nC、nd、nF、ngをそれぞれ測定し、θg,F値とアッベ数(νd値)を算出した。その結果を表3に示す。
【0210】
【0211】
以上より、実施例の化合物及びそれを含有する樹脂前駆体から得られた硬化物は、θg,F値が高く、かつ、屈折率の分散特性(νd値)が低いことが確認された。
【0212】
<実施例13~16>
【0213】
さらに、表4に記載の硬化物について、硬化から27日経過後の内部透過率、及び内部透過率が80%となる波長を測定した。
【0214】
(透過率測定用サンプルの作製)
上述の屈折率測定用サンプルの作製方法と同様にし、各硬化物について厚さ0.5mmのサンプルと厚さ1.0mmのサンプルを透過率測定用サンプルとして作製した。そして、樹脂前駆体の硬化後27日間静置したものを測定に供した。
【0215】
(内部透過率の評価)
透過率は、サンプル厚み0.5mm、1.0mmのそれぞれについて測定し、下記式で補正した。測定にあたっては、分光光度計(島津製作所社製、「UV-4700」)を用いた。
内部透過率(%)=(A/B)[100/(a-b)]×100
A:1.0mm厚の透過率
B:0.5mm厚の透過率
a:1.0mm厚のサンプルの板厚の実測寸法
b:0.5mm厚のサンプルの板厚の実測寸法
※0.5mmの内部透過率換算データ
【0216】
(内部透過率が80%となる波長(λ80))
まず、12mm厚と2mm厚の平行研磨されたサンプルを用意し、厚み方向と平行に光が入射した際の波長200~700nmの範囲における内部透過率を測定し、厚さ10mmにおける内部透過率に換算した。そして、内部透過率が80%となる波長をλ80とした。
【0217】
実施例13~16の各波長における内部透過率(%)及び内部透過率が80%となる波長(λ80;単位nm)の結果を表4に示す。
【0218】
【0219】
<耐光性試験>
硬化安定後の硬化物(1A-1)及び耐光性試験後の硬化物(1A-1)をサンプルとした。具体的には、以下の要領にて行った。まず、サンプルを治具に張り付けて紫外線フェードメーター(「U48型」、スガ試験機社製)のチャンバー内に装填し、2本の紫外線カーボン(「UVL-C」、「UVL-S」)間のアーク放電で発生する紫外光を合計144時間(48時間×3)照射した。そして、試験前後の各サンプルの分光透過率の変化に基づいて、耐光性の程度を確認した。なお、試験は室温で行った。その結果を、
図6に示す。
【0220】
図6に示すように、本実施例は、耐光性にも優れていることが少なくとも確認された。
【符号の説明】
【0221】
1…撮像装置(レンズ交換式カメラ)、101…カメラボディ、102…レンズ鏡筒、103…レンズ、104…センサーチップ、105…ガラス基板、106…マルチチップモジュール、CAM…撮像装置(レンズ非交換式カメラ)、WL…撮影レンズ、M…液晶モニター、EF…補助光発光部、B1…レリーズボタン、B2…ファンクションボタン、2…多光子顕微鏡、201…パルスレーザ装置、202…パルス分割装置、203…ビーム調整部、204,205,212…ダイクロイックミラー、206…対物レンズ、207,211,213…蛍光検出部、208…集光レンズ、209…ピンホール、210…結像レンズ、S…試料、3…接合レンズ、301…第1のレンズ要素、302…第2のレンズ要素、303…硬化物