(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物及び接着剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20221122BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20221122BHJP
C08G 18/58 20060101ALI20221122BHJP
C08G 59/46 20060101ALI20221122BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221122BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221122BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20221122BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08G18/80
C08G18/10
C08G18/58
C08G18/80 067
C08G59/46
C09J11/06
C09J163/00
C09J175/04
C09J175/08
(21)【出願番号】P 2022549674
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021037984
(87)【国際公開番号】W WO2022102332
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020188546
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小澤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 肇
(72)【発明者】
【氏名】山崎 剛
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-302280(JP,A)
【文献】特開平09-053043(JP,A)
【文献】特開平08-041163(JP,A)
【文献】特開平07-207229(JP,A)
【文献】特開2004-225095(JP,A)
【文献】特開平07-070501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/10
C08G 18/58
C08G 59/46
C08G 18/80
C09J 11/06
C09J 163/00
C09J 175/04
C09J 175/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)、ブロック化剤(a3)を必須原料とするブロックイソシアネートプレポリマー(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
硬化剤(C)とを含有する硬化性組成物であって、
前記ブロック化剤(a3)が、
カルダノールであることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物(a1)が、ポリエーテルポリオールである請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリオール化合物(a1)が、ポリオキシエチレンユニットと、ポリオキシプロピレンユニットとを含むものである請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物(a1)が、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体である請求項1~3の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)が、ジイソシアネートである請求項1~4の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記硬化剤(C)がジシアンジアミドを含むものである請求項1~
5の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量が150~250g/eqの範囲である請求項1~
6の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記ブロックイソシアネートプレポリマー(A)と前記エポキシ樹脂(B)との質量割合[(A)/(B)]が、10/90~30/70の範囲である請求項1~
7の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~
8の何れか1項記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項1~
8の何れか1項記載の硬化性組成物からなる接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化物及び接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から構造体材料としてアルミニウムや、マグネシウム、プラスチック等の軽量材料の採用が進んでおり、また、組み立てにおいても溶接による接合に替えて接着剤の利用が増えてきている。自動車等の構造体用接着剤には異素材間の接着性が良好であることや、使用環境の温度・湿度の変化に耐えられることなどが要求されている。これらの要求を満たすために、例えば、基材への追従性を向上させることで接着性を維持できるとの観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂とウレタン変性エポキシ樹脂やゴム変性エポキシ樹脂とを併用してなる接着剤が提供されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、エポキシ樹脂を変性することで柔軟性骨格を導入する場合には、その導入量に上限があり、高度化する要求を十分に満たせない場合がある。更に、耐湿熱性の観点からは、硬化物(接着層)の疎水性に起因して、基材と硬化物との界面に水分が入り込むことで、界面剥離を起こしやすいという問題があった。
【0003】
そこで、優れた接着性及び耐湿熱性を有する材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物、前記硬化性組成物の硬化物、及び接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及び特定のブロック化剤を必須原料とするブロックイソシアネートプレポリマーと、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリオール化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)、ブロック化剤(a3)を必須原料とするブロックイソシアネートプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)とを含有する硬化性組成物であって、前記ブロック化剤(a3)が、炭素原子数12個以上の炭化水素基を有するフェノール化合物を含むものであることを特徴とする硬化性組成物、硬化物及び接着剤に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性組成物は、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成できることから、コーティング剤や接着剤として用いることができ、特に接着剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、ブロックイソシアネートプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)とを含有するものであることを特徴とする。
【0010】
前記ブロックイソシアネートプレポリマー(A)としては、ポリオール化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)、及びブロック化剤(a3)を必須原料とするものである。
【0011】
前記ポリオール化合物(a1)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。これらの中でも、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとを含むポリオールがより好ましい。ポリオキシエチレンユニットが含まれることによって、接着剤として用いた際に、接着層(硬化物)中に水分をある程度取り込むことが可能となり、その結果として、仮にはがれを起こしたとしても界面剥離を抑制し、凝集破壊性が高いことに起因し、接着剤としての機能を十分に奏することが可能となるためである。また、耐湿熱性には優れるものの、柔軟性が不足しがちで界面剥離をおこしやすいポリオキシテトラメチレンユニットのみを原料とした場合と比較し、前記ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとを含有させることによって、接着剤としての性能バランスが優れたものとなるためである。また、ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットは、同一分子内に存在する必要はなく、例えば、ポリオキシエチレンユニットのみを含むポリオールとポリオキシプロピレンユニットのみを含むポリオールとを併用して後述するポリイソシアネート化合物(a2)と反応させてもよい。
【0012】
前記ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとを含むポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体としては、より接着性に優れる観点からは、3官能以上の共重合体であることが好ましい。また、ポリオキシエチレン中のオキシエチレンユニットの繰り返し単位は2~10の範囲であることが接着剤として用いた際の基材への密着性と、機械的強度と耐湿熱性のバランスに優れる観点から好ましい。
【0013】
前記ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとを含むポリオール中のポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとの質量比[(ポリオキシエチレンユニット)/(ポリオキシプロピレンユニット)]は、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、40/60~1/99の範囲であることが好ましい。
【0014】
また、前記ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとを含むポリオールとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン以外のユニット(以下、「その他のユニット」と称することがる。)を含んでいてもよく、前記その他のユニットとしては、例えば、ネオペンタングリコール等の脂肪族二価アルコール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールプロパン等の三価アルコール;エリトリット、ペンタエリトリット、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,3,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール等の四価アルコール;アドニット、アラビット、キシリット等の五価アルコール;ソルビット、マンニット、イジット等の六価アルコール等を単独で、或いは複数を繰返し単位として有するユニットなどが挙げられる。
【0015】
更に、前記ポリオール化合物(a1)としては、2~4官能成分を含むことが好ましく、特に3官能成分を含むことが、基材との密着性により優れる観点から好ましい。また、ポリオール(a1)の数平均分子量としては、1,000~5,000の範囲であることが好ましく、特に2,000~4,000の範囲であることがより好ましい。
【0016】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)としては、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物であることが好ましく、イソシアネートプレポリマー(A)の分子量調整が容易である観点から、イソシアネート基を2~4つ有する化合物であることがより好ましく、ジイソシアネートであることが特に好ましい。
【0017】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、プロパン-1,2-ジイソシアネート、2,3-ジメチルブタン-2,3-ジイソシアネート、2-メチルペンタン-2,4-ジイソシアネート、オクタン-3,6-ジイソシアネート、3,3-ジニトロペンタン-1,5-ジイソシアネート、オクタン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート)、1,3-又は1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、水添トリレンジイソシアネート等、及びこれらの混合物などが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0018】
これらの中でも、前記ポリオール化合物(a1)との反応制御がしやすく、原料入手容易性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0019】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)の使用量としては、得られるプレポリマーの分子量を調整しやすいことや、未反応ポリイソシアネート低減の観点から前記ポリオール化合物(a1)が有する水酸基1モルに対して、イソシアネート基が1.80~3.50モルの範囲が好ましい。
【0020】
前記ブロック化剤(a3)としては、炭素原子数12個以上の炭化水素基を有するフェノール化合物を含むものを用いる。優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、炭素原子数が、12個以上20個以下が好ましく、12個以上18個以下がより好ましい。また、前記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0021】
前記炭素原子数12個以上の炭化水素基を有するフェノール化合物としては、例えば、ドデシルフェノール、カルダノール、カルドール等が挙げられる。これらの中でも、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、カルダノールが好ましい。
【0022】
前記ブロック化剤(a3)としては、前記炭素原子数12個以上の炭化水素基を有するフェノール化合物以外のブロック化剤(以下、「その他のブロック化剤」と称することがある。)を用いることもできる。
【0023】
前記その他のブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジエステル(マロン酸ジエチル等)、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル(アセト酢酸エチル等)等の活性メチレン化合物;アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)等のオキシム化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘプチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ステアリルアルコール等の一価アルコール又はこれらの異性体;メチルグリコール、エチルグリコール、エチルジグリコール、エチルトリグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール等のグリコール誘導体;ジシクロヘキシルアミン等のアミン化合物;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール等の1価のフェノール化合物、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ナフトール等の2価のフェノール化合物;ε-カプロラクトン、ε-カプロラクタム等が挙げられる。これらのその他のブロック化剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0024】
前記ブロックイソシアネートプレポリマー(A)の製造方法としては、特に制限されないが、前記ポリオール化合物(a1)が有する水酸基に対して、ポリイソシアネート化合物(a2)が有するイソシアネート基が過剰となるように反応させ、次いで、過剰のイソシアネート基をブロック化剤(a3)を用いてブロックする方法等が挙げられる。
【0025】
前記ポリオール化合物(a1)と前記ポリイソシアネート化合物(a2)との反応は特に限定されるものではなく、通常のウレタン化反応で行うことができる。前記反応における反応温度は、40~140℃の範囲が好ましく、60~130℃の範囲がより好ましい。また、反応を促進するためにウレタン重合用触媒を用いることもできる。
【0026】
前記ウレタン重合用触媒としては、例えば、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、第一スズオクトエート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の第三級アミン系化合物などが挙げられる。これらのウレタン重合用触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0027】
前記ブロック化剤(a3)を用いてブロックする方法としては、公知のブロック化反応方法により行なうことができ、前記ブロック化剤(a3)の使用量は、過剰のイソシアネート基、即ち、遊離のイソシアネート基に対して、1~2当量の範囲が好ましく、1.05~1.5当量の範囲がより好ましい。
【0028】
前記ブロック化剤(a3)によるブロック化反応は、通常ウレタン重合の最終の反応でブロック化剤(a3)を添加する方法をとるが、ウレタン重合の任意の段階でブロック化剤(a3)を添加し反応させて、ブロックイソシアネートプレポリマーを得ることもできる。
【0029】
前記ブロック化剤(a3)の添加方法としては、所定の重合終了時に添加するか、重合初期に添加するか、又は重合初期に一部添加し重合終了時に残部を添加する等の方法が可能であるが、好ましくは重合終了時に添加する。この場合、所定の重合終了時の目安としては、イソシアネート%を基準とすればよい。ブロック化剤を添加する際の反応温度は、通常50~150℃であり、好ましくは60~120℃である。反応時間は通常1~7時間程度とする。反応に際し、前記ウレタン重合用触媒を添加して反応を促進することも可能である。また、反応に際し、可塑剤を任意の量加えてもよい。
【0030】
前記ブロックイソシアネートプレポリマー(A)の重量平均分子量としては、硬化性組成物を接着剤として用いる際の取り扱いが良好である観点から4,000~15,000の範囲が好ましく、5,000~10,000の範囲がより好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0031】
前記エポキシ樹脂(B)としては、特に限定されるものではなく、種々のものを使用することができる。接着剤として用いる場合は、常温下で液状のエポキシ樹脂であることが好ましく、例えば、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂;ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の脂肪族ポリオールポリグリシジルエーテル;ジグリシジルアニリン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の環構造含有ポリグリシジル化合物;アルキルフェノールモノグリシジルエーテル等の環構造含有単官能グリシジル化合物;ネオデカン酸グリシジルエステル等のポリグリシジルエステル化合物等が挙げられる。これらの中でも、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、工業的入手容易性の観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。特に、エポキシ樹脂(B)の総質量に対するビスフェノール型エポキシ樹脂の割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、これらのエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0032】
前記ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、各種のビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と、エピハロヒドリンとを樹脂原料として得られるものが挙げられ、具体的には、下記構造式(1)で表されるものが挙げられる。これらのビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂はそれぞれ単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0033】
【化1】
[式中Xはそれぞれ独立して下記構造式(2-1)~(2-8)の何れかで表される構造部位であり、nは繰り返し数を表す。]
【0034】
【化2】
(式中、R
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかであり、R
3はそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかである。)
【0035】
前記構造式(1)中のXは、前記構造式(2-1)~(2-8)の何れかで表される構造部位であり、分子中に複数存在するXは同一の構造部位であっても良いし、それぞれ異なる構造部位であっても良い。これらの中でも、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、一般式(2-1)又は(2-2)で表される構造部位であることが好ましい。
【0036】
前記ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂は、前述の通り、各種のビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と、エピハロヒドリンとを樹脂原料とする方法等により製造することができる。具体的には、ビスフェノール化合物又はビフェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られるジグリシジルエーテル化合物を、更にビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と反応させる方法(方法1)や、ビスフェノール化合物又はビフェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させて直接エポキシ樹脂を得る方法(方法2)等が挙げられる。これらの中でも、反応が制御し易く、得られるエポキシ樹脂(B)のエポキシ当量を前記好ましい値に制御することが容易であることから、前記方法1が好ましい。
【0037】
前記方法1又は2で用いるビスフェノール化合物又はビフェノール化合物は、例えば、下記構造式(3-1)~(3-8)の何れかで表される化合物などが挙げられる。
【0038】
【化3】
(式中、R
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかであり、R
3はそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかである。)
【0039】
これらのビスフェノール化合物又はビフェノール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、一般式(3-1)又は(3-2)で表される化合物が好ましい。
【0040】
前記方法1について、ビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と、これらのジグリシジルエーテル化合物との反応割合は、両者の質量比が50/50~5/95の範囲であることが好ましい。反応温度は120~160℃程度であることが好ましく、テトラメチルアンモニウムクロライド等の反応触媒を用いても良い。
【0041】
前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、150~250g/eqの範囲が好ましく、160~200g/eqの範囲が好ましい。
【0042】
また、前記エポキシ樹脂(B)としては、必要に応じて、ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂と、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等の柔軟性エポキシ樹脂を併用することもできる。
【0043】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂としては、分子中にウレタン結合と2個以上のエポキシ基とを有する樹脂であれば、その構造として特に限定されるものではない。ウレタン結合とエポキシ基とを効率的に1分子中に導入することができる点から、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタン結合含有化合物と、ヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
【0044】
前記ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシカルボン酸とアルキレンオキシドの付加物、ポリブタジエンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0045】
前記ポリヒドロキシ化合物の重量平均分子量は、300~5,000の範囲が好ましく、500~2,000の範囲がより好ましい。
【0046】
前記ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香族炭化水素基を有するポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ポリイソシアネートが好ましい。前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
上記の反応により、末端に遊離のイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーを得る。これに1分子中に少なくとも1個の水酸基を有するエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのジグリシジルエーテルおよびグリシドールなど)を反応せしめることでウレタン変性エポキシ樹脂が得られる。
【0048】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200~250g/eqの範囲が好ましい。
【0049】
前記ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個以上有し、骨格がゴムであるエポキシ樹脂であれば特に制限されない。骨格を形成するゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル基末端NBR(CTBN)等が挙げられる。前記ゴム変性エポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0050】
前記ゴム変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200~350g/eqの範囲が好ましい。また、前記ゴム変性エポキシ樹脂の製造方法は、特に制限されず、例えば、多量のエポキシ中でゴムとエポキシとを反応させて製造する方法等が挙げられる。ゴム変性エポキシ樹脂を製造する際に使用されるエポキシ(例えば、エポキシ樹脂)は特に制限されない。
【0051】
前記硬化剤(C)としては、例えば、ポリアミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノ-ル性水酸基含有樹脂、リン化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、尿素系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0052】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール等の脂肪族アミン化合物;
【0053】
ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N-アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)等の脂環式及び複素環式アミン化合物;
【0054】
o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m-キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン、α-メチルベンジルメチルアミン等の芳香族アミン化合物;
【0055】
エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素-ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体等の変性アミン化合物などが挙げられる。
【0056】
前記アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン等が挙げられる。前記ポリアミドアミンとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と脂肪族ポリアミンやポリオキシアルキレン鎖を有するポリアミン等を反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0057】
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0058】
前記フェノ-ル性水酸基含有樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物などが挙げられる。
【0059】
前記リン化合物としては、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン等のジアルキルホスフィン;ジフェニルホスフィン、メチルエチルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンなどが挙げられる。
【0060】
前記イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、3-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、3-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる。
【0061】
前記イミダゾリン化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0062】
前記尿素化合物としては、例えば、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N-ジメチル尿素、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0063】
これらの硬化剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、ジシアンジアミドが好ましい。
【0064】
本発明において、前記ブロックイソシアネートプレポリマー(A)とエポキシ樹脂(B)との使用割合としては、優れた接着性及び耐湿熱性を有する硬化物を形成可能な硬化性組成物が得られることから、(A)/(B)で表される質量比として、5/95~40/60の範囲が好ましく、10/90~30/70の範囲がより好ましい。また、エポキシ樹脂(B)と前記硬化剤(C)との配合割合は、エポキシ基と反応し得る官能基を有する硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基1モルに対して、前記硬化剤中の官能基が0.5~1.1モルの範囲となる割合で配合することが好ましい。また、硬化促進剤を用いてもよく、前記硬化促進剤を用いる場合には、前記エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、0.5~10質量部の割合で配合することが好ましい。
【0065】
本発明の硬化性組成物としては、必要に応じて、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、有機ビーズ、無機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等を含有していても良い。これら各種成分は所望の性能に応じて任意の量を添加することができる。
【0066】
本発明の硬化性組成物の調製方法としては、前記ブロックイソシアネートプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)と、必要に応じて含有することができる前記各種任意成分を、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて均一に混合する方法により調製することができる。
【0067】
本発明の硬化性組成物の用途は特に限定されず、塗料、コーティング剤、成形材料、絶縁材料、封止剤、シール剤、繊維の結束剤など様々な用途に用いることができる。これらの中でも、硬化物における柔軟性と靭性に優れる特徴を生かし、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。
【0068】
本発明の接着剤は、例えば、金属-非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。また、本発明の接着剤は、構造部材用途の他、一般事務用、医療用、炭素繊維、電子材料用などの接着剤としても使用でき、電子材料用の接着剤としては、例えば、ビルドアップ基板などの多層基板の層間接着剤、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィルなどの半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペーストなどの実装用接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
【0070】
なお、本実施例において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミッションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0071】
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC-8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムHXL-H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC-8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0072】
(合成例1:ブロックイソシアネートプレポリマー(1)合成)
窒素雰囲気下でポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーであるポリエーテルポリオール(三井ケミカル&SKCポリウレタン社製「アクトコールEP-530」、Mn:3000、官能基数:3)638質量部、イソホロンジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製「デスモジュールI」)142質量部を混合し、触媒としてジオクチルスズジアセテート(日東化成株式会社製「ネオスタン U-820」)0.1質量部を投入し、80℃で5時間反応させ、次いで、ブロック化剤としてカルダノール(Cardolite社製「NX2021」)220質量部を投入し90℃で5時間反応させて、ブロックイソシアネートプレポリマー(1)を得た。
【0073】
(合成例2~13:ブロックイソシアネートプレポリマー(2)~(13)の合成)
下記表1に示す割合で各成分を配合し、合成例1と同様の方法にて、ブロックイソシアネートプレポリマー(2)~(13)を得た。
【0074】
合成例1~13で調整したブロックイソシアネートプレポリマーの組成を表1及び2に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
表1及び2中の略語は、以下のものを示す。
EP-530:ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(三井ケミカル&SKCポリウレタン社製「EP-530」、Mw:3000、官能基数:3)
ED-37A:ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(三井ケミカル&SKCポリウレタン社製「ED-37A」、Mw:3000、官能基数:2)
T-3000:ポリプロピレングリコール(三井ケミカル&SKCポリウレタン社製「T-3000」、Mw:3000、官能基数:3)
EP-3033:ポリプロピレングリコール(三井ケミカル&SKCポリウレタン社製「EP-3033」、Mw:6600、官能基数:4)
PTMG-3000:ポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製「PTMG-3000」、Mw:3000、官能基数:2)
T5652:ポリカーボネートポリオール(旭化成株式会社製「DURANOL T5652」、Mw:2000、官能基数:2)
D-3000:ポリプロピレングリコール(三井ケミカル&SKCポリウレタン社製「D-3000」、Mw:3000、官能基数:2)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製「デスモジュールI」)
TDI:トリレンジイソシアネート(三井ケミカル&SKCポリウレタン社製「T-80」)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製「デスモジュールH」)
H12MDI:ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製「デスモジュールW」)
PDDP:パラドデシルフェノール(SI Group社製「Para-Dodecylphenol」、炭素原子数12個の炭化水素基を有するフェノール化合物)
NX-2021:カルダノール(Cardolite社製「NX-2021」、炭素原子数15個の炭化水素基を有するフェノール化合物)
NX-2026:カルダノール(Cardolite社製「NX-2026」、炭素原子数15個の炭化水素基を有するフェノール化合物)
PTBP:パラターシャリーブチルフェノール(DIC株式会社製「DIC-PTBP」)
PNP:パラノニルフェノール(SI Group社製「Tech.grade」)
【0078】
(実施例1:硬化性組成物(1)の調製)
合成例1で得たブロックイソシアネートプレポリマー(1)20質量部、ゴム変性エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON TSR-601」)5質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」)75質量部、硬化剤としてジシアンジアミド5質量部、硬化促進剤として3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素1質量部、フィラーとして炭酸カルシウム20質量部を混合し、硬化性組成物(1)を得た。
【0079】
(実施例2~8:硬化性組成物(2)~(8)の調製)
実施例1で用いたブロックイソシアネートプレポリマー(1)の代わりに、合成例2~8で得たブロックイソシアネートプレポリマー(2)~(8)を表3に示した配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物(2)~(8)を得た。
【0080】
(比較例2:硬化性組成物(R1)の調製)
実施例1で用いたブロックイソシアネートプレポリマー(1)の代わりに、合成例9~13で得たブロックイソシアネートプレポリマー(9)~(13)を表4に示した配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物(R1)~(R8)を得た。
【0081】
上記の実施例及び比較例で得られた硬化性組成物(1)~(8)及び(R1)~(R8)を用いて、下記の評価を行った。
【0082】
[接着性の評価方法]
接着性の評価は、引張剪断試験及びT字剥離試験に基づいて行った。
【0083】
<試験片の作製>
JIS K6859(1994)(接着剤のクリープ破壊試験)及びJIS K6854-3(1999)(接着剤の剥離接着強さ試験)に従い、実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を170℃で30分かけて硬化させ引張剪断試験及びT字剥離試験用の試験片を得た。
【0084】
<引張剪断試験>
JIS K6859(1994)(接着剤のクリープ破壊試験)方法で25℃の条件で島津製作所株式会社製「AUTOGRAPH AG-XPlus 100kN」を用いて、前記試験片の引張剪断強度を測定した。
【0085】
<T字剥離試験>
JIS K6854-3(1999)(接着剤の剥離接着強さ試験)方法で25℃の条件で島津製作所株式会社製「AUTOGRAPH AG-IS 1kN」を用いて前記試験片の剥離強度を測定した。
【0086】
[耐湿熱性の評価方法]
上記<引張剪断試験><T字剥離試験>で用いた試験片を50℃、90%の条件で2週間耐湿熱試験を行った後、同様の試験機で引張剪断強度を上記<引張剪断試験>に記載の方法にて測定した。
【0087】
[凝集破壊面積比率(CF面積比率)の確認方法]
上記<引張剪断試験>に用いた試験片、及び耐湿熱試験後<引張剪断試験>の試験片について、目視にて凝集破壊面積比率(CF面積比率)を確認し、試験片の破壊状態を確認した。前記凝集破壊面積比率が高いほど、破壊状態が良い。また、耐湿熱試験後であっても凝集破壊面積比率が高い物は耐湿熱性に優れる。
【0088】
実施例1~8で作製した硬化性組成物(1)~(8)及び比較例1~5で作製した硬化性組成物(R1)~(R5)の組成及び評価結果を表3及び4に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
表3及び4中の略語は、以下のものを示す。
TSR-601:ゴム変性エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON TSR-601」)
850-S:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」)
830-S:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 830-S」、エポキシ等量:170g/eq)
DICY:ジシアンジアミド
DCMU:3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素
【0092】
表3に示した実施例1~8は、ブロック化剤として、炭素原子数12個以上の炭化水素基を有するフェノール化合物を用いたブロックイソシアネートプレポリマーを含有する硬化性組成物の例である。これらの硬化性組成物は、優れた接着性及び耐湿熱性を有することが確認できた。
【0093】
一方、表4に示した比較例1~5は、ブロック化剤として、炭素原子数12個以上の炭化水素基を有するフェノール化合物を用いないブロックイソシアネートプレポリマーを含有する硬化性組成物の例である。これらの硬化性組成物は、接着性が不十分であり、耐湿熱性においても不十分であることが確認できた。