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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】生物組織画像処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2251 20180101AFI20221122BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20221122BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221122BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
G01N23/2251
G01N33/48 P
G06T7/00 350B
G06T7/00 630
C12M1/34 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018099386
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019204312
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 功記
(72)【発明者】
【氏名】三村 正文
(72)【発明者】
【氏名】須賀 三雄
(72)【発明者】
【氏名】西岡 秀夫
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027138(JP,A)
【文献】特開2012-037861(JP,A)
【文献】特開2018-011870(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190129(WO,A1)
【文献】特開2013-152426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0183217(US,A1)
【文献】内橋堅志 他,敵対的生成モデルを用いた電子顕微鏡画像からの神経細胞膜セグメンテーション,第31回人工知能学会全国大会論文集,2017年,4K1-4in2,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01N 33/48-33/98
G06T 7/00-7/90
C12M 1/34
G06N 20/00-20/20
G06N 3/02-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物組織の観察により得られた空間軸上又は時間軸上で連なる複数の元画像に基づいて複数の注目要素尤度マップを生成することにより前記複数の元画像に対して前記生物組織に含まれる注目要素を推定する処理を適用する機械学習型の推定器を含み、前記複数の注目要素尤度マップに基づいて前記複数の元画像から複数の注目要素画像を生成する画像生成部と、
前記複数の注目要素画像の中からユーザー選択された空間軸上又は時間軸上の位置に対応する特定の注目要素画像を取り出してそれを作業対象画像として表示し、当該作業対象画像に対するユーザーの修正を前記特定の注目要素画像へ反映させる作業支援部と、
を含み、
前記画像生成部は、前記推定器として、異なるタイプの機械学習型の複数の推定器を含み、
前記複数の推定器にそれぞれ前記複数の元画像が入力され、
前記作業支援部は、前記複数の推定器がそれぞれ生成した複数の注目要素尤度マップの差分に基づいて前記作業対象画像に含まれる修正候補を識別表示する、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の生物組織画像処理装置において、
前記注目要素は特定の膜であり、
前記複数の推定器には、第1膜推定器と前記第1膜推定器とは異なるタイプの機械学習型の第2膜推定器とが含まれ、
前記第1膜推定器は、前記複数の元画像に対して前記膜を推定する処理を適用し、これにより複数の第1膜尤度マップを生成し、
前記第2膜推定器は、前記複数の元画像に対して前記膜を推定する処理を適用し、これにより複数の第2膜尤度マップを生成し、
前記作業支援部は、前記複数の第1膜尤度マップと前記複数の第2膜尤度マップの差分に基づいて前記作業対象画像に含まれる修正候補を識別表示する、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項3】
生物組織の観察により得られた空間軸上又は時間軸上で連なる複数の元画像に基づいて複数の注目要素尤度マップを生成することにより前記複数の元画像に対して前記生物組織に含まれる注目要素を推定する処理を適用する機械学習型の推定器を含み、前記複数の注目要素尤度マップに基づいて前記複数の元画像から複数の注目要素画像を生成する画像生成部と、
前記複数の注目要素画像の中からユーザー選択された空間軸上又は時間軸上の位置に対応する特定の注目要素画像を取り出してそれを作業対象画像として表示し、当該作業対象画像に対するユーザーの修正を前記特定の注目要素画像へ反映させる作業支援部と、
を含み、
前記画像生成部は、前記推定器として、第1推定器と第2推定器とを含み、
前記第1推定器は、前記複数の元画像に対して前記生物組織に含まれる細胞膜を推定する処理を適用し、これにより複数の膜尤度マップを生成し、
前記第2推定器は、前記第1推定器と一体化又は別体化された推定器であって、前記複数の元画像に対して前記生物組織に含まれるオルガネラを推定する処理を適用し、これにより複数のオルガネラ尤度マップを生成し、
前記複数のオルガネラ尤度マップに基づいて、前記複数の膜尤度マップを補正する補正部が設けられ、
前記画像生成部は、前記補正部による補正後の複数の膜尤度マップに基づいて、前記複数の注目要素画像として複数の膜画像を生成する、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業支援部は、前記作業対象画像を含む作業ウインドウを表示し、
前記作業ウインドウには、前記位置を選択する際に操作される位置選択用表示要素が含まれる、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項5】
請求項記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業ウインドウには、更に、前記作業対象画像の内容を追加する際に操作される追加用表示要素と、前記作業対象画像の内容を削除する際に操作される削除用表示要素と、が含まれる、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項6】
請求項記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業ウインドウには、更に、前記作業対象画像に対して所定単位でラベリングを行う際に操作されるラベリング用表示要素が含まれる、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業支援部は、前記作業対象画像の表示に際し、その背景画像として、前記選択された位置に対応する特定の元画像を同時に表示する機能を有する、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項8】
請求項乃至のいずれかに記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業支援部は、前記作業対象画像を表示する機能に加えて、前記選択された位置に対応する特定の元画像を表示する機能、及び、前記選択された位置に対応する特定の注目要素尤度マップを表示する機能を有する、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項9】
請求項乃至のいずれかに記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業支援部は、前記選択された位置に対応する、特定の元画像、特定の注目要素尤度マップ、及び、前記特定の注目要素画像の内のいずれかの画像の表示に際し、当該画像に対して、当該画像と同じ種類の画像であって前記選択された位置とは異なる位置に対応する他の画像を重ねて表示する機能を有する、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれかに記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業支援部は、前記複数の注目要素画像に対するラベル付け結果に基づいて、そのラベル付け結果を表す三次元像を作成しその三次元像を表示する三次元像処理部を有し、
前記三次元像を観察しながら前記作業対象画像の修正及びそれに対するラベル付けを行える、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の生物組織画像処理装置において、
前記作業支援部は、前記複数の注目要素画像の中における第1の注目要素画像に対するラベル付け結果に基づいて、前記複数の注目要素画像の中における第2の注目要素画像の中から1又は複数のラベル付け候補を選定する候補選定部を有する、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項12】
請求項11記載の生物組織画像処理装置において、
前記候補選定部は、前記第1の注目要素画像においてラベル付けされた部分と、前記第2の注目要素画像に含まれる各ラベル付け候補と、の間における類似度に基づいて、前記各ラベル付け候補の表示態様を変化させる、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の生物組織画像処理装置において、
前記推定器の学習過程には一次学習過程及び二次学習過程が含まれ、
前記二次学習過程では前記作業支援部による修正を経た複数の注目要素画像が前記推定器に与えられる、
ことを特徴とする生物組織画像処理装置。
【請求項14】
異なるタイプの機械学習型の複数の膜推定器に対して、生物組織の顕微鏡観察により得られた複数の深さに対応する複数の元画像を入力し、これにより前記複数の深さに対応する複数の膜尤度マップを得る工程と、
前記複数の膜尤度マップに基づいて、前記複数の深さに対応する複数の膜画像を得る工程と、
前記複数の膜画像の中からユーザーにより選択された深さに対応する特定の膜画像を取り出してそれを作業対象画像として表示し、当該作業対象画像に対するユーザーの修正を前記特定の膜画像へ反映させる工程と、
前記複数の膜推定器がそれぞれ生成した複数の膜尤度マップの差分に基づいて前記作業対象画像に含まれる修正候補を識別表示する工程と、
を含む、ことを特徴とする生物組織画像処理方法。
【請求項15】
請求項1記載の生物組織画像処理方法において、
前記ユーザーの修正を経た複数の膜画像を利用して前記膜推定器に学習を行わせる工程を含む、
ことを特徴とする生物組織画像処理方法。
【請求項16】
情報処理装置において生物組織画像を処理するためのプログラムであって、
異なるタイプの機械学習型の複数の膜推定器に対して、生物組織の顕微鏡観察により得られた複数の深さに対応する複数の元画像を入力し、これにより前記複数の深さに対応する複数の膜尤度マップを生成する機能と、
前記複数の膜尤度マップに基づいて、前記複数の深さに対応する複数の膜画像を生成する機能と、
前記複数の膜画像の中からユーザーにより選択された深さに対応する特定の膜画像を取り出してそれを作業対象画像として表示し、当該作業対象画像に対するユーザーの修正を前記特定の膜画像へ反映させる機能と、
前記複数の膜推定器がそれぞれ生成した複数の膜尤度マップの差分に基づいて前記作業対象画像に含まれる修正候補を識別表示する機能と、
を含む、ことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
請求項16記載のプログラムにおいて、
前記ユーザーの修正を経た複数の膜画像を利用して前記膜推定器に学習を行わせる機能を含む、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物組織画像処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物組織の三次元構造を解析し又はそれをイメージングするための手法として、三次元顕微鏡法が知られている。三次元顕微鏡法においては、一般に、電子顕微鏡又は光学顕微鏡が用いられる。例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)を用いた三次元顕微鏡法として、Focused Ion Beam SEM(FIB-SEM)法、Serial Block-Face SEM(SBF-SEM)法、及び、連続切片SEM(Serial Section SEM)法(非特許文献1を参照)が提案されている。連続切片SEM法は、アレイトモグラフィ(Array-tomography)法とも呼ばれている。
【0003】
連続切片SEM法では、生物組織の試料から、深さ方向に連なる複数の試料切片(極薄片)が切り出され、それらが基板上に配列される。基板上の各試料切片が走査型電子顕微鏡により順次観察され、これにより複数の画像が取得される。取得された複数の画像に基づいて、生物組織に含まれる特定の器官(細胞、ミトコンドリア、核等)の三次元構造が解析され、あるいは、それがイメージングされる。連続切片SEM法によれば、既に観察した試料切片を再び観察することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】甲賀ほか「連続切片SEM法とゴルジ装置の3D構造解析への応用」顕微鏡,49巻3号,2014.
【発明の概要】
【0005】
上記のように、生物組織について、その三次元構造を解析又はイメージングする場合、生物組織における複数の深さに位置する面又は層が観察され、これにより複数の深さに対応する複数の画像が取得される。その上で、各画像に対して、注目要素(Target Component)を検出又は識別する処理が適用される。ここで、注目要素は、画像処理に際して、検出対象又は識別対象となる特定の組織構成要素(又は細胞構成要素)である。最終的な解析対象又は画像化対象が注目要素とされてもよいし、最終的な解析対象又は画像化対象とは別の組織構成要素が注目要素とされてもよい。後者の例を挙げると、細胞膜に囲まれた細胞内腔(細胞質)の画像化に際しては、最初に、細胞膜が注目要素として検出又は識別される。
【0006】
多数の画像において注目要素を検出又は識別する処理の全部を手作業で行うのは非常に大変である。その処理を機械学習型の推定器に行わせることが考えられる。しかし、生物組織は非常に複雑な三次元構造を有しており、また、それには個体差もある。推定結果としての複数の注目要素画像を、目視観察しながら、必要に応じて、マニュアル修正することが必要となる。その作業を支援する手段又はツールの実現が望まれている。なお、時間軸上において並ぶ複数の注目要素画像についても、それらのマニュアル修正を支援する手段又はツールの実現が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、生物組織画像処理において、空間軸上又は時間軸上で連なる複数の注目要素画像に対するマニュアル修正を支援することにある。あるいは、本発明の目的は、生物組織画像処理において、複数の注目要素画像に対するマニュアル修正を効率的に又は正確に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生物組織画像処理装置は、生物組織の観察により得られた空間軸上又は時間軸上で連なる複数の元画像に対して前記生物組織に含まれる注目要素を推定する処理を適用する機械学習型の推定器を含み、前記複数の元画像から複数の注目要素画像を生成する画像生成部と、前記複数の注目要素画像の中からユーザー選択された空間軸上又は時間軸上の位置に対応する特定の注目要素画像を取り出してそれを作業対象画像として表示し、当該作業対象画像に対するユーザーの修正を前記特定の注目要素画像へ反映させる作業支援部と、を含むものである。
【0009】
本発明に係る生物組織画像処理方法は、機械学習型の膜推定器に対して、生物組織の顕微鏡観察により得られた複数の深さに対応する複数の元画像を入力し、これにより前記複数の深さに対応する複数の膜尤度マップを得る工程と、前記複数の膜尤度マップに基づいて、前記複数の深さに対応する複数の膜画像を得る工程と、前記複数の膜画像の中からユーザーにより選択された深さに対応する特定の膜画像を取り出してそれを作業対象画像として表示し、当該作業対象画像に対するユーザーの修正を前記特定の膜画像へ反映させる工程と、を含むものである。
【0010】
上記方法は、ハードウエアの機能又はソフトウエアの機能として実現され、後者の場合、その機能を実行するプログラムが、ネットワーク又は可搬型記憶媒体を介して、情報処理装置へインストールされる。情報処理装置の概念には、パーソナルコンピュータ、電子顕微鏡システム、光学顕微鏡システム等が含まれる。
【0011】
本発明によれば、生物組織画像処理において、複数の注目要素画像に対するマニュアル修正を支援できる。あるいは、本発明によれば、生物組織画像処理において、複数の注目要素画像に対するマニュアル修正を効率的に又は正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る生物組織画像処理システムを示す概念図である。
図2】生物組織画像処理装置の本体の第1構成例を示すブロック図である。
図3】機械学習型膜推定器の構成例を示すブロック図である。
図4】膜尤度マップに基づく仮膜画像の生成を示す図である。
図5】加工ツールユニットが有する複数の機能を示す図である。
図6】作業ウインドウの第1例を示す図である。
図7】表示処理を説明するための図である。
図8】他の表示処理を説明するための図である。
図9】補間処理の第1例を説明するための図である。
図10】補間処理の第2例を説明するための図である。
図11】修正前の膜画像と修正後の膜画像とを示す図である。
図12】ラベリング処理の一例を示す図である。
図13】複数のラベル付け候補の提示を示す図である。
図14】管理テーブルの一例を示す図である。
図15】作業ウインドウの第2例を示す図である。
図16】三次元像を示す図である。
図17】生物組織画像処理装置の本体の第2構成例を示すブロック図である。
図18】生物組織画像処理装置の本体の第3構成例を示すブロック図である。
図19】第3構成例における処理内容を示すフローチャートである。
図20】第3構成例における処理結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)実施形態の概要
実施形態に係る生物組織画像処理装置には、機械学習型の推定器を含む画像生成部、及び、作業支援部が含まれる。機械学習型の推定器は、生物組織の観察により得られた空間軸上又は時間軸上で連なる複数の元画像に対して、生物組織に含まれる注目要素(より正確には注目要素の像)を推定する処理を適用するものである。この処理により、複数の元画像から複数の注目要素画像が生成される。作業支援部は、複数の注目要素画像の中からユーザー選択された位置に対応する特定の注目要素画像を取り出して、それを作業対象画像として表示し、作業対象画像に対するユーザーの修正を特定の注目要素画像へ反映させるものである。
【0014】
上記構成によれば、空間軸上又は時間軸上の位置を選択すると、選択された位置に対応する特定の注目要素画像が作業対象画像として表示される。表示された作業対象画像を修正すれば、その修正が作業対象画像つまり特定の注目要素画像に反映される。修正作業過程において、例えば、空間軸上又は時間軸上で隣接する2つの注目要素画像を対比したい場合、空間軸上又は時間軸上で隣接する2つの位置を交互に選択すればよい。具体的には、例えば、空間軸上のある深さから浅い側又は深い側へ、深さを順次選択しながら、表示された個々の作業対象画像に対して必要な修正を施すようにしてもよい。このように、上記構成によれば、複数の位置に対応する複数の注目要素画像を修正する場合に、作業効率を高められ、あるいは、作業の正確性を高められる。実施形態においては、空間軸としての深さ軸上において並ぶ複数の元画像が推定器に入力されるが、時間軸上において並ぶ複数の画像が推定器に入力されてもよい。
【0015】
注目要素は、特定の組織構成要素又は特定の細胞構成要素であり、実施形態において、注目要素は細胞膜である。細胞膜によって囲まれた細胞内腔(細胞質)、細胞内の小器官(オルガネラ)等が注目要素とされてもよい。機械学習型の推定器は、例えばCNNで構成されるが、他のタイプの機械学習型の推定器が利用されてもよい。実施形態において、作業支援部は、推定器の学習過程で推定器に与えられる正解画像を生成する場合においても利用され得る。実施形態においては、連続切片SEM法(アレイトモグラフィ法)により複数の元画像が取得されているが、FIB-SEM法、SBF-SEM法、その他の手法により複数の元画像が取得されてもよい。各注目要素画像を修正するユーザーは、通常、生物組織について一定の知識を有する専門家である。他の者において各注目要素画像が修正されてもよい。
【0016】
実施形態において、推定器は、複数の元画像に基づいて複数の注目要素尤度マップを生成し、画像生成部は、複数の注目要素尤度マップに基づいて複数の注目要素画像を生成する画像生成器を含む。すなわち、実施形態において、画像生成部は、推定器と、画像生成器と、により構成される。それら全体が機械学習型推定部により構成されてもよい。画像生成器は例えば二値化器により構成される。
【0017】
実施形態において、作業支援部は、作業対象画像を含む作業ウインドウを表示し、作業ウインドウには、位置を選択する際に操作される位置選択用表示要素が含まれる。この構成によれば、位置選択用表示要素を操作することにより、位置を簡便に選択できる。位置選択用表示要素として、所定の軸上をスライド運動する表示要素としてのスライダを有するものを採用するのが望ましい。そのような構成によれば、選択する位置を直感的に認識し易くなり、操作性を向上できる。実施形態において、位置選択用表示要素は深さ選択用表示要素である。
【0018】
実施形態において、作業ウインドウには、更に、作業対象画像の内容を追加する際に操作される追加用表示要素と、作業対象画像の内容を削除する際に操作される削除用表示要素と、が含まれる。例えば、作業対象画像として細胞膜を示す膜画像が表示されている状態において、追加用表示要素の操作によって膜画像中における膜途切れ部分に複数の膜画素が補間され、一方、削除用表示要素の操作によって膜画像中における誤推定部分(例えばミトコンドリアの膜に相当する複数の膜画素)が削除される。
【0019】
実施形態において、作業ウインドウには、更に、作業対象画像に対して所定単位でラベリングを行う際に操作されるラベリング用表示要素が含まれる。ラベリングは、三次元の繋がり関係を管理するための属性付け、つまりラベル付けである。例えば、ある深さにおける細胞内領域と他の深さにおける細胞内領域が同じ細胞に属すると判断された場合、それらの領域に対して同じラベルが与えられる。その作業はアノテーションに相当するものである。実施形態においては、作業対象画像の修正を行いつつ、ラベリングを行えるので、作業効率を高められる。ラベリングが自動的に行われてもよい。あるいは、ラベリングに際して1又は複数の候補が自動的に選定及び提示されてもよい。
【0020】
実施形態において、作業支援部は、作業対象画像の表示に際し、その背景画像として、選択された位置に対応する特定の元画像を同時に表示する機能を有する。この構成によれば、元画像を参照しながら、作業対象画像を修正し又はラベル付けすることが可能となるので、その作業性又はその正確性を高められる。合成表示される元画像及び作業支援画像を相互に識別できるように、望ましくは、それらの内で一方の画像が白黒で表示され、それらの内で他方がカラーで表示される。
【0021】
実施形態において、作業支援部は、作業対象画像を表示する機能に加えて、選択された位置に対応する特定の元画像を表示する機能、及び、選択された位置に対応する特定の注目要素尤度マップを表示する機能を有する。元画像が表示されれば、その元画像を参考にしながら、作業対象画像を修正することが可能となる。また、注目要素尤度マップが表示されれば、推定器の推定結果の妥当性や二値化処理の結果等の妥当性を評価することが可能となる。実施形態においては、作業支援部により、複数の元画像からなる第1の画像スタック、複数の注目要素尤度マップからなる第2の画像スタック、及び、複数の注目要素画像からなる第3の画像スタック、の3つのスタックが相互に対応付けられながら管理される。
【0022】
実施形態において、作業支援部は、選択された位置に対応する、特定の元画像、特定の注目要素尤度マップ、及び、特定の注目要素画像の内のいずれかの画像の表示に際し、当該画像に対して、当該画像と同じ種類の画像であって、選択された位置とは異なる位置に対応する他の画像を重ねて表示する機能を有する。空間軸上又は時間軸上の組織の連続性から、当該軸上において並ぶ複数の画像を同時に重ねて表示すれば、相互の対比から、修正の要否を的確に判断することが可能となる。また、そのような重合表示によれば、ラベル付けを正確に行うことが可能となる。重合表示に際しては、少なくとも上側の画像の透過度を可変できるように構成するのが望ましい。空間軸上又は時間軸上において連なる3枚以上の画像が重ね合わされてもよい。
【0023】
実施形態において、作業支援部は、複数の注目要素画像に対するラベル付け結果に基づいて、そのラベル付け結果を表す三次元像を作成しその三次元像を表示する三次元像処理部を有する。この構成によれば、三次元像を観察しながら、作業対象画像の修正やラベル付け結果の修正を行える。三次元像によれば、各深さで行われた修正やラベル付けの結果の適否を容易に判断することが可能となる。例えば、ラベル付けが誤っている場合、三次元像が不自然に歪んだり、三次元像において不自然な欠損部又は突起部が生じたりする。そのような情報に基づいてラベル付け結果等が修正される。
【0024】
実施形態において、作業支援部は、複数の注目要素画像の中における第1の注目要素画像に対するラベル付け結果に基づいて、複数の注目要素画像の中における第2の注目要素画像の中から1又は複数のラベル付け候補を選定する候補選定部を有する。この構成は、空間軸又は時間軸上の組織の連続性を前提として、ある位置でのラベル付け結果を、他の位置でのラベル付けに役立てるものである。この構成によれば、ラベル付けに際してのユーザーの負担が軽減される。
【0025】
実施形態において、候補選定部は、第1の注目要素画像においてラベル付けされた部分と、第2の注目要素画像に含まれる各ラベル付け候補と、の間における類似度に基づいて、各ラベル付け候補の表示態様を変化させる。この構成によれば、各ラベル付け候補の表示態様から、繋がり可能性の大小を直感的に認識できるので、ユーザーによるラベル付けを支援することが可能となる。
【0026】
実施形態に係る生物組織画像処理装置は、生物組織の観察により得られた空間軸上又は時間軸上で連なる複数の元画像に対して生物組織に含まれる特定の膜を推定する処理を適用し、これにより複数の位置に対応する複数の第1膜尤度マップを生成する機械学習型の第1膜推定器と、第1膜推定器とは異なるタイプの機械学習型の膜推定器であって、複数の元画像に対して特定の膜を推定する処理を適用し、これにより複数の第2膜尤度マップを生成する機械学習型の第2膜推定器と、複数の第1膜尤度マップに基づいて複数の位置に対応する複数の膜画像を生成する画像生成器と、複数の注目要素画像の中からユーザーにより選択された位置に対応する特定の注目要素画像を取り出してそれを作業対象画像として表示する作業支援部であって、複数の第1膜尤度マップと複数の第2膜尤度マップの差分に基づいて作業対象画像に含まれる修正候補を識別表示する作業支援部と、を含むものである。この構成は、2種類の機械学習型の膜推定器を併用するものである。2つの膜推定器の推定結果が解離している部分について、ユーザーに対して修正を促せる。なお、膜以外の注目要素が推定対象とされてもよい。3種類以上の膜推定器が利用されてもよい。
【0027】
上記の推定器を含むN(但しNは3以上の整数)個の注目要素推定器を設け、N個の注目要素推定器から出力されたN個の注目要素尤度マップに基づいて作業対象画像に含まれる修正候補を特定しそれを識別表示してもよい。その場合、N個の注目要素尤度マップに基づいて、画素ごとに注目要素尤度のばらつき情報を演算し、そのばらつき情報に基づいて修正候補となる画素を特定するようにしてもよい。ばらつき情報は例えば標準偏差である。
【0028】
実施形態に係る生物組織画像処理装置は、生物組織の観察により得られた空間軸上又は時間軸上で連なる複数の元画像に対して生物組織に含まれる細胞膜を推定する処理を適用し、これにより複数の位置に対応する複数の膜尤度マップを生成する機械学習型の第1推定器と、第1推定器と一体化又は別体化された推定器であって、複数の元画像に対して生物組織に含まれるオルガネラを推定する処理を適用し、これにより複数のオルガネラ尤度マップを生成する機械学習型の第2推定器と、複数のオルガネラ尤度マップに基づいて、複数の膜尤度マップを補正する補正部と、補正後の複数の膜尤度マップに基づいて複数の位置に対応する複数の膜画像を生成する画像生成器と、複数の膜画像の中からユーザーにより選択された位置に対応する特定の膜画像を取り出してそれを作業対象画像として表示する作業支援部と、を含むものである。この構成は、細胞膜以外の注目要素としてのオルガネラ(細胞内小器官)を別途推定し、その推定結果を膜尤度マップの補正で利用するものである。細胞膜の推定に際しては、オルガネラ又はその膜が誤認対象となりやすい。上記構成は、オルガネラ又はその膜を別途推定し、その推定結果に基づいて、膜尤度マップを優良化するものである。単一の推定器が第1推定器及び第2推定器として機能してもよい。第1推定器と第2推定器がそれぞれ別々の推定器により構成されてもよい。なお、細胞膜とオルガネラとの組み合わせ以外の組み合わせに対して、上記同様の構成を適用することも考えられる。3つ以上の推定対象が並列的に推定されてもよい。
【0029】
実施形態においては、推定器の学習過程には、一次学習過程及び二次学習過程が含まれ、二次学習過程では作業支援部による修正を経た複数の注目要素画像が推定器に与えられる。すなわち、推定器の学習過程及びその後の画像処理過程の両方において作業支援部が機能する。
【0030】
(B)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る生物組織画像処理システムが示されている。図示された生物組織画像処理システム10は、生物組織について、三次元構造の解析やイメージングを行うためのシステムである。この生物組織画像処理システムを利用して、例えば、人体又は動物の脳内の神経細胞を三次元的に表現した画像が生成される。生物中の任意の組織、器官、その他が解析対象又はイメージング対象になり得る。
【0031】
図1に示す構成例において、生物組織画像処理システム10は、試料前処理装置12、連続切片作成装置14、走査型電子顕微鏡(SEM)16、及び、生物組織画像処理装置18によって構成されている。
【0032】
試料前処理装置12は、生体から取り出された組織20に対して前処理を行う装置であり、又は、その前処理のための各種の器具に相当する。前処理として、固定処理、染色処理、導電処理、樹脂包埋処理、整形処理等が挙げられる。それらの全部又は一部が、必要に応じて、実施される。染色処理においては四酸化オスミウム、酢酸ウラン、クエン酸鉛等が用いられてもよい。染色処理が以下に説明する各試料切片に対して行われてもよい。前処理に含まれる一部又は全部の工程が手作業によって行われてもよい。
【0033】
連続切片作成装置14は、SEM16の外部に設けられ、あるいは、SEM16の内部に設けられる。連続切片作成装置14により、前処理後のキュービック状の試料から、深さ方向(Z方向)に並ぶ複数の試料切片24が切り出される。その際には、ウルトラミクロトーム等の装置が利用されてもよい。その作業が手作業で行われてもよい。複数の試料切片24により、試料切片群22が構成される。実際には、切り出された複数の試料切片は、基板28上に所定の配列で配置される。基板28は、例えば、ガラス基板、シリコーン基板である。図1においては、基板28上に、2つの試料切片列からなる試料切片アレイ22Aが構成されているが、それは例示に過ぎない。基板28及び試料切片アレイ22Aにより、試料ユニット26が構成される。
【0034】
ちなみに、個々の試料切片24における縦及び横のサイズは、例えば、nmオーダー又はμmオーダーである。それ以上のサイズ(例えばmmオーダーのサイズ)を有する試料切片24が作製されてもよい。個々の試料切片24の厚み(Z方向のサイズ)は、例えば、数nm~数百nmであり、実施形態においては、その厚みは例えば30~70nmの範囲内である。本願明細書において挙げる数値はいずれも例示である。
【0035】
SEM16は、電子銃、偏向器(走査器)、対物レンズ、試料室、検出器34等を有している。試料室内には、試料ユニット26を保持するステージ、及び、そのステージを移動させる移動機構、が設けられている。SEM16内の制御部により、移動機構の動作つまりステージの移動が制御される。具体的には、試料切片アレイ22Aの中から選択された特定の試料切片24に対して電子ビーム30が照射される。照射位置を走査(例えばラスタースキャン)させながら、各照射位置から放出される反射電子32が検出器34で検出される。これによりSEM画像が形成される。これが試料切片24ごとに実行される。その結果として、複数の試料切片24の観察結果である複数のSEM画像38が得られる。複数のSEM画像38はSEM画像スタック36を構成する。
【0036】
なお、Z方向に直交する方向をX方向と定義し、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向と定義した場合、望ましくは、X方向観察範囲及びY方向観察範囲が互いに一致するように、各試料切片24における観察範囲(電子ビーム二次元走査範囲)が定められる。反射電子32ではなく、二次電子等が検出されてもよい。SEM16内の制御部は、電子ビーム30を形成するための加速電圧を可変する機能も備えている。生物組織、生物組織中の観察対象、観察目的等に応じて、電子ビーム形成時の加速電圧が切り替えられてもよい。一般に、後述する膜推定器の学習過程及びその後の生物組織の解析過程では同じ加速電圧が設定される。
【0037】
上記のSEM画像スタック36は、Z方向における複数の深さ(深さ軸上の複数の深さ)に対応する(換言すればデータ記憶空間内でZ方向に並ぶ)複数のSEM画像38により構成される。各SEM画像38は、生物組織画像処理装置18側から見て、元画像又は入力画像である。各SEM画像38は電子データであり、各SEM画像がSEM16から生物組織画像処理装置18へ、ネットワーク又は可搬型記憶媒体を介して、伝送される。
【0038】
生物組織画像処理装置18は、図示の構成例において、パーソナルコンピュータによって構成されている。生物組織画像処理装置18がSEM16内に組み込まれてもよく、生物組織画像処理装置18がSEM16等を制御するシステムコンピュータ内に組み込まれてもよい。生物組織画像処理装置18によりSEM16が制御されてもよい。
【0039】
生物組織画像処理装置18は、本体40、表示器46及び入力器48を有している。本体40が有する複数の機能については、後に、図2以降の各図に基づいて詳しく説明する。図1においては、本体40が発揮する代表的な2つの機能(膜推定機能及び加工機能)がそれぞれブロックとして表現されている。具体的には、本体40は、機械学習型の膜推定器42及び加工ツールユニット(作業支援部)44を有している。表示器46は、LCD、有機EL表示デバイス等によって構成される。入力器48は、ユーザーによって操作されるキーボード、ポインティングデバイス等によって構成される。
【0040】
図2には、本体40についての第1構成例が示されている。本体40は、機械学習型の膜推定器42、二値化器(画像生成器)50、加工ツールユニット(作業支援部)44、ボリュームデータ処理部56、等を有する。加工ツールユニット44は、修正部52及びラベリング処理部54を有している。ボリュームデータ処理部56は、解析部56A及びレンダリング部56Bを有している。
【0041】
図2に示される各構成の実体は、ユーザーの作業又は行為に相当する部分を除いて、基本的に、CPU、GPU等の汎用プロセッサによって実行されるソフトウエアつまりプログラムである。もっとも、それらの構成の一部又は全部が専用プロセッサ又は他のハードウエアによって構成されてもよい。生物組織画像処理装置が有する機能の全部又は一部がネットワーク上に存在する1又は複数の情報処理デバイスにより実行されてもよい。以下、本体40内の各構成について詳述する。
【0042】
膜推定器42は、膜推定手段として機能する。膜推定器42は、入力された元画像(SEM画像)58に対して膜推定処理を適用し、これによって膜尤度マップ60を出力するものである。図示の構成例において、膜推定器42は、CNN(Convolutional Neural Network)により構成されている。その具体的な構成例については後に図3を用いて説明する。CNNによって膜が正しく推定されるように、CNNの実際の稼働に先立って、CNN学習過程が事前に実行される。その学習過程には、一次学習過程(初期学習過程)と、二次学習過程と、が含まれる。
【0043】
一次学習過程では、教師データを構成する複数の画像ペアが膜推定器42に与えられ、これにより膜推定器42内のCNNパラメータ群が優良化(最適化)される。すなわち、膜推定器42内に機械学習結果が蓄積される。ここで、個々の画像ペアは、元画像(SEM画像)58とそれに対応する正解画像68とにより構成される。正解画像68は、例えば、元画像58に対する手作業により作成される。教師なし機械学習器、簡易な識別器(例えばSVM(Support Vector Machine))等によって、元画像58から正解画像68が作成されてもよい。この場合、かかる識別器に対して元画像58を入力し、その出力に基づいてユーザーにおいて識別器がある程度働いていると判断できた場合に、その出力を正解画像68として利用してもよい。一定の一次学習過程を経た膜推定器42の出力に基づいて正解画像68が作成されてもよい。
【0044】
続く二次学習過程では、一次学習過程を経て膜推定器42がある程度働くことを前提として、膜推定器42に対して、一次学習過程と同様に、教師データとして複数の画像ペアが与えられる。実施形態においては、その教師データは、一次学習過程で利用された複数の画像ペアと二次学習過程で追加された複数の画像ペアとにより構成される。追加される各画像ペアは、元画像58とそれに対応する正解画像64Aとからなる。正解画像64Aは、膜推定器42から加工ツールユニット44までの構成により、生物画像処理装置自身によって作成される。具体的には、元画像58を膜推定器42に入力すると、膜推定器42から推定結果画像として膜尤度マップ60が出力される。膜尤度マップ60に基づく仮膜画像の生成、及び、加工ツールユニット44を利用した仮膜画像62に対するユーザー(専門家)修正を経て、正解画像64Aが作成される。個々の処理については後に詳述する。仮膜画像62を正解画像62Aとして利用することも考えられる。二次学習過程により、膜推定器42内のCNNパラメータ群が更に優良化される。つまり、膜推定器42内に機械学習結果が更に蓄積される。二次学習過程は、例えば、元画像58に対する推定処理の結果が、元画像58に対応する正解画像68,64Aに十分に類似したと判断された場合に終了する。その後、必要に応じて、上記同様の手法により、膜推定器42の再学習が実行される。
【0045】
二次学習過程では、膜推定結果を基礎として正解画像を作成できるので、元画像から正解画像の全部を手作業で作成する場合に比べ、ユーザーの負担が大幅に軽減される。二次学習過程後における必要な学習過程においても同様である。なお、一次学習過程及び二次学習過程において、膜推定器42に対し、複数の画像ペアが一括して与えられて、それがバッチ処理されてもよい。
【0046】
データベース57には、複数の元画像58、複数の正解画像68,68A等が格納される。膜推定器42とデータベース57とが一体化されてもよい。機械学習型の膜推定器として、U-netが利用されてもよく、また、SVM、ランダムフォレスト等が利用されてもよい。
【0047】
二値化器50は、画像生成器として機能するものである。具体的には、二値化器50は、後に図4を用いて例示するように、膜尤度マップ60に対する二値化処理により、仮膜画像62を生成するモジュールである。膜尤度マップ60は、二次元配列された複数の膜尤度からなる。個々の膜尤度は、膜である確からしさ(確率)を示す数値である。膜尤度は例えば0から1の間をとる。膜尤度マップ60を膜尤度画像として捉えることもできる。実施形態において、二値化器50には閾値が設定されており、閾値以上の膜尤度を1に変換し、閾値未満の膜尤度を0に変換する。その結果として生成される画像が仮膜画像62である。実施形態においては、便宜上、修正前の膜画像を修正後の膜画像から区別するために、修正前の膜画像を仮膜画像62と呼んでいる。
【0048】
なお、膜推定器42及び二値化器50の両者により画像生成部61が構成される。画像生成部61の全体がCNN等により構成されてもよい。その場合でも、膜尤度マップ及び仮膜画像の段階的な生成を観念できる。仮膜画像62を正解画像62Aとして用いることも可能である。二値化処理前に、膜尤度マップ60に対して、ノイズ除去、エッジ強調等の処理が適用されてもよい。
【0049】
加工ツールユニット44は、作業支援部又は作業支援手段として機能するものである。加工ツールユニット44は、情報処理の観点から見て、表示処理機能及び画像処理機能を有している。作業の観点から見て、修正機能及びラベリング機能を有しており、図2においては、それらの機能が修正部52及びラベリング処理部54として表現されている。加工ツールユニット44が発揮する具体的な複数の機能については後に図5を用いて整理する。ここでは、その概要又はその主要な機能について説明する。
【0050】
修正部52は、後に図6において例示する作業ウインドウを介して、ユーザーに対して作業対象となった仮膜画像を作業対象画像として表示し、また、作業対象画像上におけるユーザーの修正指示を受け付けるものである。修正内容は作業対象画像となった仮膜画像に反映される。作業対象画像内に例えば膜の途切れ部分が含まれる場合、その途切れ部分に対して膜画素群が追加される。作業対象画像内に例えば膜以外の部分が含まれ、その部分が膜として誤認されている場合、その部分を構成する膜画素群が削除される。そのような追加及び削除に際し、ユーザーの作業又は操作を支援し各仮膜画像を管理するモジュールが修正部52である。
【0051】
図示の構成例においては、修正部52(又は加工ツールユニット44)に対して、生成された仮膜画像62の他に、入力された元画像58、及び、生成された膜尤度マップ60も順次入力されている。これにより、作業対象画像としての仮膜画像と共に、又はそれに代えて、作業対象画像に対応する元画像58又は膜尤度マップ60を表示することが可能である。これに関しては、後に図7、8を用いて説明する。修正部52において実行される補間処理については、後に図9、10等を用いて説明する。
【0052】
ラベリング処理部54は、修正後の膜画像(又は修正未了の膜画像)に含まれる個々の領域(細胞内腔)に対して、ラベリング(ペイント及びラベル付け)を行うためのモジュールである。ラベリングには、ユーザーによるマニュアルでのラベリング、及び、自動的なラベリングがある。ラベリングについては、後に図12、13を用いて説明する。ラベリング結果を管理するための管理テーブルについては、後に図14に例示する。修正作業及びラベリング作業が完了した段階で、細胞内腔とそれ以外とが区別された三次元ラベリングデータ66が構成される。それがボリュームデータ処理部56へ送られる。
【0053】
ボリュームデータ処理部56には、図示の構成例において、複数の元画像からなる元画像スタック(SEM画像スタック)36が入力されている。元画像スタック36はボリュームデータを構成するものである。また、ボリュームデータ処理部56には、上記のように、三次元ラベリングデータ66も入力されている。それもボリュームデータの一種である。
【0054】
解析部56Aは、例えば、三次元ラベリングデータ66に基づいて、対象器官(例えば神経細胞)を解析する。例えば、形態、体積、長さ等が解析されてもよい。その際、三次元ラベリングデータを参照しながら元画像スタック36が解析される。レンダリング部56Bは、三次元ラベリングデータ66に基づいて、三次元画像(立体的表現画像)を形成するものである。例えば、三次元ラベリングデータ66に基づいて、元画像スタック36の中から画像化部分が抽出され、それに対してレンダリング処理が適用されてもよい。
【0055】
既に説明した二次学習過程においては、修正後の各膜画像64がそれぞれ正解画像64Aとして膜推定器42に入力される。各正解画像64Aの作製に際して、膜推定器42による推定結果を利用することができるので、且つ、加工ツールユニット44を利用することができるので、それらを利用しない場合に比べて、各正解画像64Aの作製負担が大幅に削減される。すなわち、上記構成によれば、膜推定器42の学習過程で要する労力及び時間を削減することが可能である。二次学習過程後の解析過程においては、膜推定器42及び加工ツールユニット44の併用により、解析対象又はレンダリング対象となる画像群の品質を高められ、また、その画像群を簡便かつ迅速に生成することが可能である。後に説明するように、加工ツールユニット44は、三次元像処理部(三次元像生成手段)及び候補選定部(候補選定手段)としても機能する。
【0056】
図3には、膜推定器42の構成例が模式的に示されている。膜推定器42は、多数の層を有しており、それには、入力層80、畳み込み層82、プーリング層84、出力層86等が含まれる。それらはCNNパラメータ群88に従って作用する。CNNパラメータ群88には、多数の重み係数、多数のバイアス値、その他が含まれる。CNNパラメータ群88は最初に初期値群94によって構成される。例えば、乱数等を利用して初期値群94が生成される。
【0057】
学習過程では、評価部90及び更新部92が機能する。例えば、評価部90は、教師データを構成する複数の画像ペア(元画像58とそれに対応する正解画像68,64A)に基づいて評価値を計算するものである。具体的には、元画像58に対する推定処理の結果60Aと元画像58に対応する正解画像68,64Aとを誤差関数に順次与えることにより評価値が演算される。更新部92は、その評価値が良い方向に変化するように、CNNパラメータ群88を更新する。それを繰り返すことによって、CNNパラメータ群88が全体的に最適化される。実際には、評価値が一定値に到達した時点で、学習過程の終了が判断される。図3に示した構成は単なる例示に過ぎず、膜推定器42として、多様な構造を有する推定器を利用することが可能である。
【0058】
図4には、二値化器の作用が示されている。膜推定器から膜尤度マップ60が出力される。膜尤度マップ60は、複数の画素に相当する複数の膜尤度60aからなるものであり、個々の膜尤度60aは膜であることの確からしさを示す数値である。符号50Aで示すように、二値化器は膜尤度マップ60を二値化し、これにより二値化画像としての仮膜画像62を生成する。二値化に際しては、個々の膜尤度60aが閾値と比較される。例えば、閾値以上の膜尤度60aが値1を有する画素62aに変換され、閾値未満の膜尤度60aが値0を有する画素62bに変換される。画素62aが膜を構成する画素(膜画素)として取り扱われる。閾値はユーザーにより可変設定し得る。その設定が自動化されてもよい。例えば、仮膜画像62を観察しながら閾値が可変されてもよい。
【0059】
図5には、加工ツールユニットが有する複数の機能が整理されている。上段(A)には修正部が有する複数の機能が示されており、下段(B)にはラベリング処理部が有する複数の機能が示されている。それらの機能の詳細又は具体例については、図6以降の各図を参照しながら説明する。ここでは、それらの機能について概説する。
【0060】
まず、修正部の機能について説明する。仮膜画像に対する修正には、大別して、マニュアル修正(A1)と自動修正(A2)とがある。マニュアル修正(A1)では、修正ツールとしての仮想的なペン及び仮想的な消しゴムが利用される。ペンは膜を描く(非膜画素を膜画素に転換する)ための修正ツールであり、消しゴムは膜を消去する(膜画素を非膜画像に転換する)ための修正ツールである。他の修正ツールが設けられてもよい。
【0061】
マニュアル修正(A1)に際しては、(A11)で示されるように、ユーザーによって選択された深さに対応する仮膜画像が作業対象画像としてカラーで表示される。その際、背景画像として、選択された深さに対応する元画像が白黒画像として表示される。(A12)で示されるように、選択された深さを基準として、深さ方向に並んだ同種の複数の画像(元画像、膜尤度マップ又は仮膜画像)を重ねて表示することも可能である。更に、(A13)で示されるように、マニュアル修正作業を支援するために、修正候補が表示されてもよい。
【0062】
自動修正(A2)では、仮膜画像に含まれる膜途切れ部分が自動的に補間される。具体的には、ユーザー指定された2点の間が自動的に連結される。そのために幾つかの機能が用意されており、必要に応じて、それらの中からいずれかの機能が選択される。例えば、(A21)で示されるように、作業対象画像(仮膜画像)に基づいて、作業対象画像上の2点間が補間されてもよい。(A22)で示されるように、作業対象画像に対応する元画像に基づいて、作業対象画像上の2点間が補間されてもよい。(A23)で示されるように、作業対象画像に対応する尤度マップに基づいて、作業対象画像上の2点間が補間されてもよい。(A24)で示されるように、深さ方向に連なる複数の画像(元画像、膜尤度マップ又は仮膜画像)に基づいて、三次元補間が実行されてもよい。
【0063】
次に、ラベリング処理部の機能について説明する。ラベリング方法として、マニュアルラベリング(B1)と、自動ラベリング(B2)とがある。
【0064】
マニュアルラベリング(B1)では、ラベリングツールが利用され、ユーザーによって特定の領域(閉領域)がラベリング対象として指定される。すると、その領域がペイント処理され、また、その領域に対して固有のラベルが付与される。ラベルは、繋がり関係を管理するための識別子又は属性値である。その際、必要に応じて、(B11)で示されるように、作業対象画像上に、他の深さに対応する画像(例えば、ラベリング済みの隣接する仮膜画像)がオーバーレイ表示されてもよい。あるいは、(B12)で示されるように、深さ方向における領域間の繋がり関係が自動的に判定され、作業対象画像上に1又は複数のラベリング候補が表示されてもよい。その際に繋がり可能性の大小が自動的に判定され、その判定結果に基づいて各ラベリング候補の表示態様が制御されてもよい。
【0065】
自動ラベリング(B2)においては、レイヤ間での領域の繋がり関係が自動的に判定され、これによってペイント及びラベル付けが自動的に遂行される。その場合、例えば、(B21)で示すように、ラベル付けされた特定の領域について、その代表座標を通過する垂線(Z方向に平行な仮想線)を定義し、その垂線が通過する1又は複数の領域に対して、特定の領域に付されたラベルと同じラベルを付すようにしてもよい(串刺し方式)。その場合、特定の領域が存在する深さを基準深さとして、深さ方向の両側に一定の範囲を設定し、その範囲内において自動的なラベリングが実行されてもよい。また、(B22)で示されるように、深さ方向における領域間の類似度等を基準として、レイヤ間において繋がり関係を自動的に判定し、その判定結果に基づいて自動的にラベリングを行うようにしてもよい。自動的なラベリングが実行された場合、通常、そのラベリング結果がユーザーにおいて目視確認される。
【0066】
以上挙げた機能は例示であり、ユーザーによる修正作業及びラベリング作業が効率的となり、あるいは、その負担が軽減されるように、更には、三次元ラベリングデータの品質が高まるように、加工ツールユニットを構成するのが望ましい。
【0067】
図6には、加工ツールユニットにより表示される作業ウインドウが例示されている。図示の例において、作業ウインドウ100は、表示画像102を含んでいる。表示画像102は、ユーザーによって選択された深さに対応する仮膜画像(作業対象画像)及び元画像からなる複合画像である。グレイスケース画像としての元画像が背景画像を構成しており、それに対して、カラー画像(例えば青色画像)としての仮膜画像(作業対象画像)が重畳表示されている。なお、図示された表示画像102は脳組織を示しており、そこには、複数の細胞の断面が現れている。同時に、細胞内の小器官(ミトコンドリア等)の断面も現れている。
【0068】
タブ104が選択された場合、上記で説明した表示画像102が表示される。タブ105が選択された場合、グレイスケール画像としての元画像だけが表示される。タブ106が選択された場合、グレイスケール画像としての膜尤度マップ(膜尤度画像)だけが表示される。尤度マップの観察により、閾値が適切に設定されていること等を確認できる。また、元画像の単独表示によれば、膜の細部を詳細観察することが容易となる。作業対象画像としての仮膜画像だけを表示するタブを追加してもよい。膜尤度マップを背景画像とし、それに対して仮膜画像が重畳表示されてもよい。
【0069】
深さ選択ツール108は、Z方向(つまり空間軸としての深さ軸上)において、特定の深さ(表示位置としての表示深さ)を選択するための表示要素(操作要素)である。それは、Z軸を表すZ軸シンボル108bと、Z軸シンボル108bに沿ってスライド運動するスライダとしてのマーカー108aと、からなる。マーカー108aを移動させて、所望の深さを選択することが可能である。このような深さ選択ツール108によれば、選択する深さや深さ変化量を直感的に認識し易いという利点を得られる。なお、Z軸シンボル108bの左端点が深さゼロに相当し、Z軸シンボル108bの右端点が最大深さに相当している。他の形態を有する深さ選択ツールを採用してもよい。深さ入力欄114は、深さを数値として直接的に指定するための欄である。深さ入力欄114に、マーカー108aの位置によって現在選択されている深さが数値として表示されてもよい。
【0070】
透過度調整ツール110は、表示画像102が表示されている状態において、合成表示されているカラーの仮膜画像(作業対象画像)の透過度(表示重み)を調整するためのツールである。例えば、マーカー110aを左側へ移動させると、カラーの仮膜画像の表示重みが小さくなり、その透明度が上がって、元画像が支配的に表示されるようになる。逆に、マーカー110aを右側へ移動させると、カラーの仮膜画像の表示重みが大きくなり、その透明度が下がって、カラーの仮膜画像がよりはっきりと表現されるようになる。
【0071】
重合表示ツール112は、現在表示されている画像(表示画像、元画像又は膜尤度マップ)に対して、深さ方向に浅い側に隣接する画像(表示画像、元画像又は膜尤度マップ)又は深さ方向に深い側に隣接する画像(表示画像、元画像又は膜尤度マップ)を重ねて表示する場合において操作されるものである。マーカー112aを左側へ移動させると、浅い側に隣接する画像に対する表示重みが大きくなり、逆に、マーカー112aを右側へ移動させると、深い側に隣接する画像に対する表示重みが大きくなる。3つ以上の画像を重ね合わせて表示してもよい。もっとも、あまり多くの画像を重ね合わせると、画像内容が複雑になり過ぎてしまうので、少数の画像を重ね合わせるのが望ましい。このような重合表示によれば、奥行き情報を得られ易くなる。
【0072】
ボタン列115は、仮想的な複数のボタン116,118,120,121,122,126によって構成される。ボタン116は、画像ズーム(拡大又は縮小)を行う場合に操作される表示要素である。ボタン118は、ペンツールを利用する場合に操作される表示要素である。ボタン118をオンにすると、カーソルの形態がペン形に代わり、それを用いて膜画素の追加を行える。ペンのサイズを変更することも可能である。ボタン120は、消しゴムを利用する場合に操作される表示要素である。ボタン120をオンにすると、カーソルの形態が消しゴム形に代わり、それを用いて膜画素の削除を行える。消しゴムのサイズを変更することも可能である。
【0073】
ボタン121は、ペイントを行う場合に操作される表示要素である。ボタン121をオンした上で、いずれかの領域を指定すれば、その領域が塗り潰される。また、ボタン121の操作によって、ペイント(又はラベリング)のために用意されている複数の機能の中から任意の機能を選択することも可能である。オブジェクト番号(ラベル)付けボタン122の操作により、カラーパレット124が表示される。例えば、ペイント処理済み領域に対して、カラーパレットの中から選択されたカラーが与えられる。これにより、その領域が、選択されたカラーによって着色される。個々の色がそれぞれオブジェクト番号に対応付けられている。レイヤ間にわたって複数の領域に対して同じカラーつまり同じオブジェクト番号を付与すれば、それらの領域によって特定細胞内の三次元内腔領域が画定される。
【0074】
ボタン126は、白黒反転用のボタンである。それを操作すると、表示された画像において、黒く表示されていた部分が白く表示され、逆に白く表示されていた部分が黒く表示される。
【0075】
上記の他、三次元像を表示させるためのボタンを設けるのが望ましい。三次元像の表示に関しては後に図15及び図16を用いて説明する。図6に示した作業ウインドウ100の内容は例示に過ぎず、ユーザー作業においてその作業性が良好になるように、その内容が適宜定められるのが望ましい。
【0076】
図7及び図8に基づいて、加工ツールユニットにおける表示処理について説明する。図7に示す処理は図5において(A11)で示した表示処理に相当するものである。図8に示す処理は図5において(A12)及び(B11)で示した表示処理に相当するものである。
【0077】
図7において、元画像スタック130は、Z方向(深さ方向)に並ぶ複数の元画像により構成される。膜尤度マップスタック132は、Z方向に並ぶ複数の膜尤度マップにより構成される。仮膜画像スタック134は、Z方向に並ぶ複数の仮膜画像スタックにより構成される。個々の仮膜画像は、その修正後において膜画像となるが、それは便宜上の区別であり、ここでは、修正前及び修正後を区別することなく、仮膜画像と称することにする。それらのスタック130,132,134は、加工ツールユニットによって管理され、あるいは、生物組織処理装置が有する制御部によって管理される。
【0078】
元画像の表示が指定されている場合、元画像スタック130から、ユーザーによって選択された深さZiに対応する元画像130iが取り出され、それが表示器46に表示される。膜尤度マップの表示が指定されている場合、膜尤度マップスタック132から、ユーザーによって選択された深さZiに対応する膜尤度マップ132iが取り出され、それが表示器46に表示される。仮膜画像の表示が指定されている場合、仮膜画像スタック134から、ユーザーによって選択された深さZiに対応する仮膜画像134iが取り出され、それが表示器46に表示される。実際には、深さZiに対応する元画像130i上に、深さZiに対応する仮膜画像134iが合成され、その合成画像が表示器46に表示される。合成に先立って、仮膜画像134iが例えば青色のカラー画像に変換される。また合成時においては、元画像130iに対して表示重みw0が乗算され、仮膜画像134iに対して表示重みw1が乗算される。各表示重みw0、w1をユーザーにより変更し得る。
【0079】
仮膜画像134iは作業対象画像であり、それに対してユーザーが修正を行うと、符号135で示されるように、その修正内容が直ちに仮膜画像134iに反映される。深さZiを変更しながら、表示された各作業対象画像に対して、修正処理及びラベリング処理が施される。その過程において、必要に応じて、元画像130i又は膜尤度マップ132iを単独で表示することも可能である。実施形態においては、リングバッファ内に過去m回分の修正内容が修正履歴として管理されており、必要に応じて、Undo操作を行える。
【0080】
図8には、重合表示が選択された場合の表示処理が示されている。図7に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。図示した表示処理では、3種類の表示画像に対して重合表示処理を選択的に適用することが可能である。一部の画像だけに対して重合表示処理が適用されてもよい。
【0081】
元画像の表示が指定されている場合であって、Z方向に浅い側の隣接画像の重合表示が指示された場合、元画像スタック130から、深さZiに対応する元画像130i及び深さZi-1に対応する元画像130i-1が取り出される。それらが重合されて表示される。元画像130iに対して、深さZi+1に対応する元画像130i+1を重合する場合にも、上記同様の処理が実行される。なお、追加的に表示される元画像130i-1,130i+1の透過度は、表示重みw3を可変することによって調整される。
【0082】
膜尤度マップの表示が指定されている場合であって、Z方向に浅い側(又は深い側)の隣接画像の重合表示が指示された場合、膜尤度マップスタック132から、深さZiに対応する膜尤度マップ132i、及び、深さZi-1(又は深さZi+1)に対応する膜尤度マップ132i-1(又は膜尤度マップ132i+1)が取り出される。それらが重合されて、表示される。
【0083】
これと同様に、仮膜画像の表示が指定されている場合であって、Z方向に浅い側(又は深い側)の隣接画像の重合表示が指示された場合、仮膜画像スタック134から、深さZiに対応する仮膜画像134i、及び、深さZi-1(又は深さZi+1)に対応する仮膜画像134i-1(又は仮膜画像134i+1)が取り出される。それらが重合されて、表示される。その場合、実際には、隣接する2つの合成画像が重合表示されることになる。合成処理後に重合処理されてもよい。
【0084】
図9には、補間処理の第1例が示されている。これは図5において(A21)で示した補間処理に相当するものである。図9において、仮膜画像スタック134から深さZiに対応する仮膜画像が取り出され、それが作業対象画像140として表示される。作業対象画像140の修正過程において、ユーザーにより、膜途切れ部分146の両端が2つの点142,144により指定される。2つの点142,144の間が作業対象画像140の内容に基づいて自動的に補間される。符号148は、自動的に追加された補間線(連結線)を示している。その場合、スプライン補間その他の技術を利用し得る。なお、作業対象画像140中において、細胞膜以外の細胞構成要素が膜として検出されている場合、符号150で示されるように、それが消しゴムによって消去される。
【0085】
図10には、補間処理の第2例が示されている。これは図5において(A22)で示した補間処理に相当するものである。図10において、仮膜画像スタック134から、深さZiに対応する仮膜画像が取り出され、それが作業対象画像140として表示される。作業対象画像140上において、ユーザーにより、膜途切れ部分の両端が2つの点142,144により指定される。一方、元画像スタック130から、深さZiに対応する元画像152も取り出される。その元画像152に対して必要に応じてエッジ強調処理が適用される。その上で、元画像152上において、2つの点142,144に対応する2つの点が特定され(符号154を参照)、それらの点の間が補間される(符号156を参照)。例えば、2つの点の間を結ぶ経路が探索される。その場合には公知の各種技術を利用可能である。図10において、作業対象画像140上には、探索された経路と同じ形態を有する補間線158が追加されている。経路の探索に際しては、例えば、最短経路問題を解く各種の方法を利用し得る。例えば、Dijkstra法が利用されてもよい。上記同様の手法によって三次元の経路が探索されてもよい。
【0086】
図11には、修正前の仮膜画像180と修正後の仮膜画像182とが示されている。修正前の仮膜画像180には、膜途切れ部分184,188が含まれる。修正後の仮膜画像182においては、符号186及び符号190で示されているように、膜途切れ部分が補修されている。また、修正前の仮膜画像180には、非膜部分192,196が含まれている。修正後の仮膜画像182においては、符号194及び符号198で示されているように、それらの非膜部分が消失している。修正後の仮膜画像182によれば、ラベリングを的確に行うことが可能となり、ひいては、三次元ラベリングデータの品質を高めることが可能となる。
【0087】
図12には、ラベリング処理に含まれる三次元繋ぎ処理が例示されている。その内容は図5において(B21)で示した処理又は(B22)で示した処理に相当するものである。図12においては、Z方向に並ぶ複数の仮膜画像D1~D4が示されている。深さZiに対応する仮膜画像D1が作業対象画像である。それが以下に説明する処理での基準画像とされる。
【0088】
上記の(B21)で示した処理においては、基準画像である仮膜画像D1に含まれる領域R1について代表点が特定される。例えば、代表点として中心点、重心点等が特定される。次いで、その代表点を通過する垂線Cが定義される。基準画像から、例えば、深い側にN枚の仮膜画像が参照され、それらの画像において垂線Cが通過している各領域が特定される。そして、垂線Cが通過している領域R1,R2,R3,R4,・・・に対して、同じラベルが付与される。また、以上の処理が基準画像から浅い側のN枚の仮膜画像に対して適用されてもよい。自動的なラベリングの結果は、通常、ユーザーによって目視確認される。
【0089】
上記の(B22)で示した処理においては、仮膜画像D1に含まれる領域R1(の外縁)が仮膜画像D2上に投影され、投影領域R1aが定義される。仮膜画像D2上において、投影領域R1aに対して最も重なり合う領域R2が特定される。続いて、領域R2が仮膜画像D3上に投影され、投影領域R2aが定義される。仮膜画像D3上において、投影領域R2aに対して最も重なり合う領域R3が特定される。同様に、仮膜画像D4上において、投影領域R3aが定義され、それに基づいて領域R4が特定される。領域R1、及び、それを出発点として特定された領域R2,R3,R4の全部に対して、同じラベルが付与される。
【0090】
上記の処理では、投影元の領域がレイヤ変更時に逐次更新されていたが、それを固定するようにしてもよい。例えば、領域R1を仮膜画像D2,D3,D4に投影するようにしてもよい。また、上記の処理では、基準画像からZ方向の一方側に繋がり先が探索されていたが、基準画像からZ方向の両側に繋がり先が探索されてもよい。その探索範囲がユーザー選択されてもよい。いずれにしても、自動的なラベリングの結果が、通常、ユーザーによって目視確認される。その場合には、図6に示した作業ウインドウが利用される。
【0091】
以上説明した三次元繋ぎ処理は例示であり、上記以外の三次元繋ぎ処理が採用されてもよい。領域間における繋がり関係の特定に際しては、領域ごとの1又は複数の特徴量が利用され得る。領域の特徴量として、面積、形態、周囲長、重心点、輝度ヒストグラム、テクスチャ、等が利用されてもよい。あるいは、領域間の特徴量として、重合面積、代表点間距離、等が利用されてもよい。
【0092】
図13には、候補表示の一例が示されている。その処理は、図5において(A13)で示した処理に相当するものである。深さZiに対応する仮膜画像(作業対象画像)200上に、投影領域202が定義されている。投影領域202は、例えば、深さZi-1に対応する仮膜画像上でラベル付けされた元領域の投影により定義される領域である。仮膜画像200において、投影領域202と重なり合う複数の領域204a,204b,204cが特定される。また、投影領域202(又は元領域)と、各領域204a,204b,204cとの間で、それぞれ類似度(例えば重合面積)が演算される。各領域204a,204b,204cについて演算された各類似度に基づいて、各領域204a,204b,204cがそれぞれ異なるカラーで識別表現される。すなわち、類似度の違いが色相の違いとして識別表現される。これにより、ユーザーは、個々の領域204a,204b,204cの類似度を参考にしながら、ラベリングを行うことが可能となる。例えば、図示の例では、最も類似度の大きい領域204aに対して、元領域に付与したラベルと同じラベルが付与される。
【0093】
図14には、管理テーブルが例示されている。図示された管理テーブル206は、ラベリング処理の結果を管理するためのテーブルである。管理テーブル206は、例えば、上記ラベリング処理部の中に構築される。管理テーブル206は、複数のレコード206aからなり、個々のレコード206aは1つの画素に対応している。レコード206aにおいては、画素座標、クラス、及び、ラベルが管理されている。クラスは、画素の属性として、膜、膜内部、及び、その他を識別するデータである。ラベルは、三次元データ空間内において繋がり関係を特定する数値データである。繋がり関係のある(ある細胞膜の内部の)画素群には同じラベルが付与される。
【0094】
次に、図15及び図16を用いて、作業ウインドウの他の例について説明する。図15において、図6に示した構成と同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
図15において、作業ウインドウ100A内のボタン列115には、三次元像表示のためのボタン210が含まれる。ボタン210を操作すると、表示画像102上に又はそれとは別の場所に、サブ表示画像212が表示される。図示の例では、サブ表示画像212は、三次元空間を表すワイヤーフレーム(座標系を示す図形)213、及び、その内部に表現された三次元像215を含む。三次元像215は、図示の例では、3つの部分214a,214b,214cの集合体である。各部分214a,214b,214cはそれぞれ細胞内腔の三次元形態を示している。
【0096】
具体的には、ラベリング処理によって生成された三次元ラベリングデータに基づいてレンダリング処理を実行することにより、立体感を有する三次元像215が生成されている。視点、光源等のパラメータはユーザーにより変更され得る。サブ表示画像212が別ウインドウの形式でポップアップ表示されてもよい。三次元像215の参照により、修正結果の妥当性やラベリング処理結果の妥当性を容易に判断することが可能となる。
【0097】
サブ表示画像212には、現在選択されている深さを示す枠図形216が含まれる。作業ウインドウ100A内に含まれる深さ選択ツール108において、マーカー108aをスライド移動させると、表示されている作業対象画像の内容が変化し、同時に、枠図形216が深さ方向に運動する。枠図形216の位置を参照することによって、三次元データ空間内における作業対象レイヤを直感的に認識することが可能となる。
【0098】
図16に示される三次元像226,227が表示されてもよい。三次元像226,227は、ある細胞内腔を複数のディスク228の積層体として表現したものである。このような三次元像226,227によれば、各試料切片の厚さを三次元像に反映させることが可能となる。複数のディスクに代えて複数の平板状円板を表示するようにしてもよい。
【0099】
図17には、生物組織画像処理装置の本体の第2構成例が示されている。図2に示した構成と同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0100】
本体40Aにおいて、膜推定器250は、細胞膜と他の膜(図示の構成例ではミトコンドリア膜)とを同時に推定する機能を有している。膜推定器250に対して元画像(SEM画像)58を入力すると、細胞膜の推定結果として膜尤度マップA254が出力され、同時に、ミトコンドリア膜の推定結果として膜尤度マップB258が出力される。
【0101】
膜尤度マップ補正部262は、膜尤度マップBに基づいて、膜尤度マップAを補正するモジュールである。具体的には、膜尤度マップB258を構成する座標(x,y)の膜尤度bが判定閾値α以上であれば、膜尤度マップA254における座標(x,y)の膜尤度aの値が0に置換される。一方、膜尤度マップB258における座標(x,y)の膜尤度bが判定閾値αよりも小さければ、膜尤度マップA254における座標(x,y)の膜尤度aの値が維持される。膜尤度マップ補正部262から、補正後の膜尤度マップ264が出力される。二値化器50は膜尤度マップ264を二値化処理し、仮膜画像62を生成する。
【0102】
二値化器50及び修正部52に対して並列に設けられた二値化器268及び修正部270は、膜尤度マップB258に基づいて正解画像272を作成するためのものである。二値化器268は、二値化器50と同様の機能を有し、膜尤度マップBから仮膜画像を生成する。修正部270は、修正部52と同様の機能を有する。修正部52により、仮膜画像がマニュアルで修正され、あるいは、自動的に修正され、これにより正解画像272が生成される。加工ツールユニット266は、修正部52、ラベリング処理部54、及び、修正部270によって構成されている。
【0103】
膜推定器250における細胞膜の学習のために、元画像58とそれに対応する正解画像64A,68とが教師データとして利用される。正解画像64Aは修正部52による修正が行われた後の膜画像64であり、正解画像68は元画像から別途作成された画像である。膜推定器250におけるミトコンドリア膜についての学習のために、元画像58とそれに対応する正解画像272,274とが教師データとして利用される。正解画像272は修正部270による修正が行われた後の膜画像であり、正解画像274は元画像から別途作成された画像である。なお、教師データとして、正解画像64Aに代えて、仮膜画像62を用いることもできる。
【0104】
第2構成例によれば、細胞膜の推定結果が他の推定結果により補正されるので、細胞膜の推定精度を高めることが可能となる。また、ミトコンドリア膜を示す膜画像の修正に際して、図6に示した作業ウインドウを利用することができるから、その修正作業において作業効率を高められる。
【0105】
上記第2構成例では、膜尤度マップB258における膜尤度が閾値α以上である場合に補正が実行されていたが、膜尤度マップB258における膜尤度の大小に応じて補正度合いが可変されるようにしてもよい。単一の膜推定器250に代えて、細胞膜を推定する膜推定器とミトコンドリア膜を推定する膜推定器とを併設するようにしてもよい。その場合、望ましくは、2つの膜推定器がそれぞれ機械学習型の推定器で構成される。細胞膜、ミトコンドリア、及び、背景を個別的に且つ同時に推定する多クラス推定型の推定器を設けてもよい。
【0106】
図18には、生物組織画像処理装置の本体の第3構成例が示されている。本体40Bは、元画像58を入力して膜推定を行う2つの機械学習型膜推定器280,282を有する。2つの機械学習型膜推定器280,282は互いに異なる構成を有し、すなわち、それらのタイプ又は方式は互いに相違する。例えば、膜推定器280は、図2に示した膜推定器42に相当し、それは例えばCNNにより構成される。膜推定器282は例えばランダムフォレストにより構成される。膜推定器280,282はいずれも細胞膜の推定を行うためのものであるが、それらの性質又は特性に相違があることから、2つの膜推定器280,282の推定結果は必ずしも同一にならない。例えば、元画像中のある部分について、膜推定器280,282の内の一方が膜と判断し、それらの内の他方も膜と判断することもあれば、膜推定器280,282の内の一方が膜と判断し、それらの内の他方が非膜と判断することもある。
【0107】
処理部296は、膜推定器280から出力された膜尤度マップA284と膜推定器282から出力された膜尤度マップB286とを比較し、両者の差が大きい画素(又は画素群)を修正候補として判定するものである。図示の構成例では、処理部296から修正部306へ修正候補を特定する情報302が送られている。修正部306内に処理部296が設けられもよい。
【0108】
二値化器292は、図2に示した二値化器50に相当し、それは膜尤度マップA284から仮膜画像298を生成するものである。二値化器294は、二値化器292と同様の作用を発揮するものであり、それは膜尤度マップB286から仮膜画像300を生成するものである。
【0109】
加工ツールユニット304は、図2に示した加工ツールユニット44と同様の機能を有し、それは、修正部306及びラベリング処理部310を有する。修正部306は、二値化器292から出力された仮膜画像298及び二値化器294から出力された仮膜画像300に対して修正を施すためのものである。修正後の膜画像308がラベリング処理部310に送られている。その膜画像308は、正解画像312として膜推定器280へ送られている。修正後の膜画像309は、正解画像316として膜推定器282へ送られている。加工ツールユニット304は、選択された深さに対応する仮膜画像の表示に際して、あるいは、入力された仮膜画像298の表示に際して、修正候補を識別表示する機能を有する。修正候補の特定及びその識別表示については、後に図19及び図20を用いて説明する。なお、修正後の膜画像309がラベリング処理部310へ送られてもよい。
【0110】
膜推定器280の学習過程では、膜推定器280に対して、元画像58とそれに対応する正解画像312,314とが教師データとして入力される。正解画像312は、修正後の膜画像308である。正解画像314は、元画像から別途作成されたものである。膜推定器282の学習過程では、膜推定器282に対して、元画像58とそれに対応する正解画像316,318とが教師データとして入力される。正解画像316は、修正後の膜画像309である。正解画像318は、元画像から別途作成されたものである。
【0111】
図19及び図20に基づいて、上記第3構成例の動作(特に処理部及び修正部の動作)を説明する。
【0112】
図19において、S30では、画素単位で、膜尤度マップAと膜尤度マップBとが比較される。比較単位を他の単位としてもよい。2つの膜尤度マップA,Bの比較により差分マップが生成される。S32では、差分マップを構成する複数の差分値がソートされる。すなわち、それらについて順位付けがなされる。S34では、ソート後の差分値列において、上位M個の差分値が特定される。すなわち、最大の差分値を含むM個の差分値が特定される。それらに対応する複数の画素がそれぞれ修正候補となる。S36では、作業対象画像上において、複数の修正候補が識別表示される。例えば、高輝度表示され、あるいは、特定の色相で表示される。
【0113】
その表示例が図20に模式的に示されている。作業対象画像320上において、局所部分322,324は、複数の修正候補画像が密集している部分である。通常、このように複数の修正候補画素が局所的に密集する。場合によっては、エッジに沿って、複数の修正候補画素が並ぶ。いずれにしても、このような候補表示によれば、ユーザーにおいて、修正を行った方がよい部分、あるいは、2つの膜推定結果に解離が生じた部分を特定し、その部分に対して、必要な補正を施すことが可能となる。これにより修正作業の正確性を高められる。
【0114】
更に第4構成例として、並列的に演算されたN個の膜尤度マップに基づいて画素単位でばらつき情報を演算し、そのばらつき情報から修正候補を特定して、それを識別表示する態様が考えられる(但しNは3以上の整数である)。具体的には、タイプの異なるN個の膜推定器と、それらから出力されるN個の膜尤度マップに基づいて画素単位で膜尤度の標準偏差を演算する演算器と、画素単位での膜尤度の標準偏差に基づいて画素単位で修正候補か否かを判定する判定器と、修正候補となる画素を識別表示する表示処理器と、を設けるものである。ばらつき情報として標準偏差以外の情報(例えば分散又はそれに相当する情報)を演算するようにしてもよい。この構成は、N個の推定結果が揃わない場合には膜でない可能性が高いのでそれを修正候補として表示するものである。
【0115】
上記実施形態によれば、作業ウインドウに含まれる深さ選択ツールの操作によって、所望の深さに対応する仮膜画像を作業ウインドウ内に表示し、それに対して必要な修正やラベル付けを行うことが可能である。深さを段階的に変更しながら仮膜画像の修正を繰り返すことが容易であり、組織の連続性を考慮しながら、効率的に修正作業を進めることが可能である。また、仮膜画像の表示に際しては、それに対応する(同じ深さの)元画像が背景画像として表示されるので、元画像と仮膜画像とを対比しながら、つまり推定結果の妥当性を確認しながら、修正作業を行える。
【0116】
修正作業に際して、ラベリングされた部分の三次元像を観察できるようにすれば、各深さの仮膜画像の修正やラベル付けの適否を判断することも可能である。また、深さの異なる複数の画像の重合表示によれば、例えば2つの領域の不自然な重なり(修正エラー又はラベリングエラー)等を容易に特定することが可能となる。
【0117】
複数の元画像が透過型電子顕微鏡や光学顕微鏡によって取得されてもよい。細胞膜ではなく、細胞内腔、細胞内小器官(オルガネラ)、その他が推定器における推定対象とされてもよい。上記実施形態では、連続切片SEM法が採用されていたが、FIB-SEM法、SBF-SEM法、その他の手法が採用されてもよい。空間軸上で連なる画像列ではなく、時間軸上で連なる画像列が処理対象とされてもよい。
【0118】
上記の実施形態において、二次学習過程を経た膜推定器を有する生物組織画像処理装置(又はそれに相当するソフトウエア)がユーザーに対して提供又は納入されてもよい。二次学習過程を経たパラメータセットがインターネット上のクラウド(サーバー)からユーザー側の情報処理装置へ提供されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10 生物組織画像処理システム、16 走査型電子顕微鏡(SEM)、18 生物組織画像処理装置、42 膜推定器、44 加工ツールユニット(作業支援部)、50 二値化器、52 修正部、54 ラベリング部、56 ボリュームデータ処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20