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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221122BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 F
B24B27/06 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018140247
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020017658
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
(72)【発明者】
【氏名】趙 金艶
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-077869(JP,A)
【文献】特開2010-184319(JP,A)
【文献】特開2007-165636(JP,A)
【文献】特開2008-078430(JP,A)
【文献】特開2005-191297(JP,A)
【文献】特開2002-203821(JP,A)
【文献】特開2003-037155(JP,A)
【文献】特開平09-266183(JP,A)
【文献】特開昭58-153352(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003312(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/002035(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/036512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを支持するサブストレートの上面にポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートのいずれかのシートを敷設し、該シートの上面にウエーハの裏面を位置付けて配設するウエーハ配設工程と、
該ウエーハ配設工程により該シートを介して該サブストレートに配設されたウエーハを密閉環境内で減圧して該シートを加熱すると共にウエーハを押圧して該シートを介してウエーハを該サブストレートに熱圧着するシート熱圧着工程と、
該シート熱圧着工程が実施されたウエーハの表面に切削ブレードを位置付けて分割予定ラインを切削してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
該分割工程が実施されたウエーハの裏面から該シートと該サブストレートを剥離する剥離工程と、
から少なくとも構成されるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該ポリオレフィン系のシートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかで構成される請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該シートとしてポリオレフィン系のシートが選択された場合の該シート熱圧着工程における該シートの加熱温度は、該シートがポリエチレンシートで構成される場合は120~140℃であり、該シートがポリプロピレンシートで構成される場合は160~180℃であり、該シートがポリスチレンシートで構成される場合は220~240℃である請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該ポリエステル系のシートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、のいずれかで構成される請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該シートとしてポリエステル系のシートが選択された場合の該シート熱圧着工程における該シートの加熱温度は、該シートがポリエチレンテレフタレートシートで構成される場合は250~270℃であり、該シートがポリエチレンナフタレートシートで構成される場合は160~180℃である請求項4に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所定の厚みに加工された後、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハを個々のデバイスチップに分割する際に、ウエーハの裏面にダイシングテープを貼着すると共にウエーハを収容する開口を有するフレームによって支持することで、ウエーハを個々のデバイスチップに分割してもウエーハの形態を維持した状態で次工程に搬送することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-050214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する際にダイシングテープを介してフレームによって支持することで、分割後のウエーハを、ウエーハの形態を維持したまま次工程に搬送することが可能になるものの、ウエーハの分割予定ラインを切削ブレードで切削するダイシングを実施すると、ダイシングテープに貼着された裏面側に欠けが生じてデバイスチップの品質を低下させるという問題がある。
【0006】
上記問題は、ダイシングテープの表面に構成される粘着層が比較的柔らかいことから、分割される際にデバイスチップが動くことで切削ブレードとの異常接触が生じたり、ウエーハを吸引保持するチャックテーブルの保持部が通気性を有するポーラスセラミックで形成されていることから、ダイシングテープが保持部によって吸引されることで、分割されたデバイスチップの外周部の保持力が低下して切削ブレードとの異常接触が生じたりすることが原因と考えられる。
【0007】
上記問題は、ウエーハの裏面を、剛性のあるサブストレート(支持板)に支持させてダイシングを行えば解決されると考えられる。しかし、サブストレートは、それ自体では粘着性を有しないため、液状樹脂、ワックス、糊剤等が塗布されたテープ等を介してウエーハと一体化する必要がある。その場合、ダイシングが終了してウエーハの裏面からサブストレートを剥離する際に、個々のデバイスチップに液状樹脂、ワックス、テープに形成された糊剤等が残留し、デバイスチップの品質を低下させるという問題が新たに生じる。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する際に、デバイスチップの品質を低下させることのないウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハを支持するサブストレートの上面にポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートのいずれかのシートを敷設し、該シートの上面にウエーハの裏面を位置付けて配設するウエーハ配設工程と、該ウエーハ配設工程により該シートを介して該サブストレートに配設されたウエーハを密閉環境内で減圧して該シートを加熱すると共にウエーハを押圧して該シートを介してウエーハを該サブストレートに熱圧着するシート熱圧着工程と、該シート熱圧着工程が実施されたウエーハの表面に切削ブレードを位置付けて分割予定ラインを切削してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、該分割工程が実施されたウエーハの裏面から該シートと該サブストレートを剥離する剥離工程と、から少なくとも構成されるウエーハの加工方法が提供される。
【0010】
該ポリオレフィン系のシートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかで構成されてもよい。該シートとしてポリオレフィン系のシートが選択された場合の該シート熱圧着工程における該シートの加熱温度は、該シートがポリエチレンシートで構成される場合は120~140℃であり、該シートがポリプロピレンシートで構成される場合は160~180℃であり、該シートがポリスチレンシートで構成される場合は220~240℃であることが好ましい。
【0011】
該ポリエステル系のシートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかで構成されてもよい。該シートとしてポリエステル系のシートが選択された場合の該シート熱圧着工程における該シートの加熱温度は、該シートがポリエチレンテレフタレートシートで構成される場合は250~270℃であり、該シートがポリエチレンナフタレートシートで構成される場合は160~180℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハを支持するサブストレートの上面にポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートのいずれかのシートを敷設し、該シートの上面にウエーハの裏面を位置付けて配設するウエーハ配設工程と、該ウエーハ配設工程により該シートを介して該サブストレートに配設されたウエーハを密閉環境内で減圧して該シートを加熱すると共にウエーハを押圧して該シートを介してウエーハを該サブストレートに熱圧着するシート熱圧着工程と、該シート熱圧着工程が実施されたウエーハの表面に切削ブレードを位置付けて分割予定ラインを切削してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、該分割工程が実施されたウエーハの裏面から該シートと該サブストレートを剥離する剥離工程と、から少なくとも構成されることから、ウエーハはサブストレートに対して十分な保持力で保持され、ウエーハの表面に形成された分割予定ラインを切削ブレードで切削してもデバイスチップの裏面に欠けが生じることを抑制する。また、シートを介してウエーハをサブストレートに熱圧着するため、切削ブレードによる分割工程が終了してウエーハの裏面からサブストレートを剥離しても、液状樹脂、糊剤、ワックス等が付着し得ず、デバイスの品質を低下させるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ウエーハ配設工程の実施態様を示す斜視図である。
図2】シート熱圧着工程の実施態様を順に(a)~(c)で示す側面図である。
図3図2に示すシート熱圧着工程により得られた一体化ユニットの側面図である。
図4図3のシート熱圧着工程により得られた一体化ユニットを切削装置の保持手段に保持する態様を示す斜視図である。
図5】分割工程の実施態様を示す斜視図である。
図6図5に示す分割工程が実施された一体化ユニットWを剥離用保持手段に載置する態様を示す斜視図である。
図7図6に示す一体化ユニットWからサブストレートを剥離する態様を示す斜視図である。
図8】ダイシングテープ配設工程を順に(a)、(b)で示す斜視図である。
図9】シート熱圧着工程の別の実施形態を示す斜視図(a)、及び一部拡大断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づき構成されたウエーハの加工方法の一実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、まず、図1(a)に示すように、被加工物としてのウエーハ10、シート20、及びサブストレート30を用意する。ウエーハ10には、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されている。シート20は、ウエーハ10と同等の形状に設定されており、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートによって構成される。本実施形態では、シート20としてポリオレフィン系のポリエチレン(PE)シートを選択している。また、サブストレート30は、ウエーハ10、及びシート20と同形状で、ウエーハ10、シート20に比して剛性のある支持板であり、後述するシート熱圧着工程時の設定温度に影響を受けないガラスで形成されている。
【0016】
(ウエーハ配設工程)
ウエーハ10、シート20、及びサブストレート30を用意したならば、図1(a)に示すように、ウエーハ10の表面10aを上方に、すなわち、裏面10bを下方に向け、支持テーブル40の上面40aに敷設されるサブストレート30に、シート20を介して配設する(図1(b)を参照。)。支持テーブル40は、基台50上に配設されており、支持テーブル40の上面は平坦に形成されている。
【0017】
(シート熱圧着工程)
上記したウエーハ配設工程が実施されたならば、図2に示すシート熱圧着工程を実施する。シート熱圧着工程は、シート20を介してサブストレート30に配設されたウエーハ10を密閉環境内で減圧してシート20を加熱すると共にウエーハ10を押圧して、ウエーハ10とシート20とを熱圧着する工程である。なお、支持テーブル40の内部には、加熱手段として、電気ヒータ42、及び図示しない温度センサーが内蔵される。電気ヒータ42及び該温度センサーは、図示しない制御装置、及び電源に接続され、支持テーブル40を所望の温度に調整することが可能になっている。以下に具体的に説明する。
【0018】
シート熱圧着工程を実施するためには、図2(a)に示す熱圧着装置60を利用する。熱圧着装置60は、支持テーブル40を含む密閉環境を形成するための密閉カバー部材62を備える。なお、図2は、熱圧着装置60の側面図であるが、内部の構成を説明する都合上、密閉カバー部材62のみ断面を示している。密閉カバー部材62は、基台50の上面全体を覆う箱型部材であり、上壁62a、及び上壁62aの外周端部から垂下される側壁62bから構成され、下方側は開放されている。上壁62aの中央には、押圧部材64の支持軸64aが貫通し、上下方向に進退させるための開口62cが形成されている。また、支持軸64aを上下に進退させつつ、密閉カバー部材62の内部空間Sを外部と遮断して密閉環境とすべく、支持軸64aの外周を支持する開口部62cにシール構造62dが形成される。支持軸64aの下端には、押圧プレート64bが配設されている。押圧プレート64bは、少なくともウエーハ10よりも大径であり、好ましくは支持テーブル40よりもやや大きい寸法に設定された円盤形状である。密閉カバー部材62の側壁62bの下端面には、全周にわたって弾性シール部材62eが配設されている。また、図示は省略するが、押圧部材64の上方には、押圧部材64を上下方向に進退させるための駆動手段が配設される。
【0019】
支持テーブル40上に、シート20、及びサブストレート30と共にウエーハ10を載置したならば、図2(a)に示すように基台50上に位置付けられた密閉カバー部材62を下降させて、基台50上に載置する。このとき、押圧プレート64bは、図2(b)に示すように、ウエーハ10の上面に接触しない上方位置に引き上げられている。密閉カバー部材62が基台50上に載置されると、側壁62bの下端面に配設された弾性シール部材62eが基台50の上面に密着する。基台50における支持テーブル40の近傍位置には、吸引孔52が配設されており、吸引孔52を介して、密閉カバー部材62によって形成される内部空間Sに図示しない吸引手段が接続される。
【0020】
図2(b)に示すように、密閉カバー部材62を基台50上に載置し、密閉カバー部材62の内部空間Sが密閉環境とされたならば、該吸引手段を作動して、吸引孔52を介して内部空間Sの空気を吸引し、ウエーハ10を含む領域を真空に近い状態まで減圧する。これと同時に、支持テーブル40に内蔵された電気ヒータ42を作動し、図示しない温度センサーによって支持テーブル40の温度を制御することにより、シート20を構成するポリエチレンシートを融点近傍の温度(120~140℃)になるように加熱する。さらに、シート20を加熱すると同時に、図2(c)に示すように、押圧プレート64bを下降させてウエーハ10の上面全体を均等な力で押圧する。ウエーハ10を収容している内部空間Sは真空に近い状態まで減圧されて、ウエーハ10、シート20、及びサブストレート30との間に残存する空気が吸引されて除去される。そして、シート20は、上記した温度に加熱されることにより軟化して粘着性を発揮し、ウエーハ10、シート20、及びサブストレート30と、が熱圧着されて、図3に示すように、一体化ユニットWを形成する。以上により、シート熱圧着工程が完了する。このようにしてシート熱圧着工程が完了したならば、図示しない吸引手段、及び電気ヒータ42を停止し、押圧プレート64bを上昇させると共に、密閉カバー部材62を上方に引き上げる。シート20の温度が常温近傍まで低下したならば、支持テーブル40から一体化ユニットWを搬出することができる。
【0021】
上記したシート熱圧着工程によれば、密閉環境内で減圧した状態で、シート20を加熱し、シート20が軟化した状態でウエーハ10を上方から押圧して密着させるため、ウエーハ10は、液状樹脂、糊剤、ワックス等を介することなくシート20を介してサブストレート30に十分な支持力で支持される。
【0022】
(分割工程)
上記したシート熱圧着工程を実施したならば、一体化ユニットWとされたウエーハ10を分割予定ライン14に沿って切削加工を施す分割工程を実施する。以下に、分割工程について具体的に説明する。
【0023】
シート熱圧着工程により得られた一体化ユニットWを、図4に示すように、切削加工を実施する切削装置70(一部のみを示している。)に搬送し、切削装置70に配設された保持手段80の吸着チャック80a上に、サブストレート30側を下にして載置する。吸着チャック80aは、通気性を有するポーラスセラミックスからなり、保持手段80に接続された図示しない吸引手段を作動させることにより、一体化ユニットWが保持手段80に吸引保持される。
【0024】
図5に示すように、切削装置70は、スピンドルユニット71を備えている。スピンドルユニット71は、回転スピンドル72の先端部に固定された切削ブレード73を保持するブレードカバー74を備えている。ブレードカバー74には、切削ブレード73を挟んで隣接する位置に切削水供給手段35が配設されており、切削ブレード73によるウエーハ10の切削箇所に向けて切削水を供給する。
【0025】
切削ブレード73によって切削を実施する前に、図示しないアライメント手段を用いて、切削ブレード73と、ウエーハ10の表面10a側に形成された分割予定ライン14との位置合わせ(アライメント)を行う。
【0026】
該アライメント手段によるアライメントを実施したならば、図5に示すように、高速回転させられる切削ブレード73を、保持手段80に保持したウエーハ10の表面10a側から分割予定ライン14の加工開始位置に位置付けて下降させて切り込ませ、ウエーハ10を切削ブレード73に対して矢印Xで示すX方向(加工送り方向)に移動させる。切削ブレード73の先端位置は、ウエーハ10を表面10aからシート20に至る深さに設定されており、切削ブレード73により、分割予定ライン14に沿って完全にウエーハ10を分割する分割溝100を形成する。ウエーハ10を含む一体化ユニットWを保持する保持手段80を、X方向に移動させるのに加え、矢印Yで示すY方向、及び回転方向にも適宜移動させながら、上記した切削加工により、ウエーハ10の全ての分割予定ライン14に沿って、切削溝100を形成し(図6の上段を参照)、個々のデバイスチップ12’に分割する。以上により分割工程が完了する。
【0027】
(剥離工程)
上記した分割工程が完了したならば、ウエーハ10から、シート20及びサブストレート30を剥離する剥離工程を実施する。以下に、剥離工程の実施手順について説明する。
【0028】
上記した分割工程によって個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10を含む一体化ユニットWは、切削装置70の保持手段80から搬出され、図6に示す剥離用保持手段90に搬送される。剥離用保持手段90に搬送された一体化ユニットWは、上下を反転させられて、サブストレート30を上方に、すなわち、ウエーハ10を下方に向けて、剥離用保持手段90の吸着チャック90a上に載置される。なお、剥離用保持手段90は、上記した切削装置70の保持手段80と同様の構成を備えており、剥離用保持手段90を別途用意せず、切削装置70の保持手段80を使用してもよい。
【0029】
図示しない吸引手段を作動させることにより、一体化ユニットWを剥離用保持手段90に吸引保持したならば、シート20を加熱する等して、図7に示すようにウエーハ10から、シート20及びサブストレート30を剥離する。なお、剥離工程を実施する際に、シート20を加熱すれば、シート20が軟化するため、容易に剥離させることが可能になるが、ウエーハ10からシート20が剥離する前に、サブストレート30がシート20から剥離することもあり得る。その場合は、サブストレート30と、シート20を順に剥離すればよい。
【0030】
上記した説明では、シート20及びサブストレート30をウエーハ10から剥離する際に、シート20を加熱するようにしたが、冷却することによってシート20の粘着力が低下する場合もあり、シート20を冷却してから上記剥離工程を実施してもよい。剥離工程を実施する際に、シート20を加熱するか、冷却するかについては、シート20を構成する素材の特性に応じて選択すればよい。以上により剥離工程が完了し、剥離用保持手段90に吸引保持されたまま、ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割された状態となる。
【0031】
(ダイシングテープ配設工程)
本実施形態では、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10を所定のカセットケースに収容したり、個々に分割したデバイスチップ12’をピックアップして次工程に搬送したりすることを考慮して、上記した剥離工程を実施した後、ダイシングテープ配設工程を実施する。上記した剥離工程を経て、剥離用保持手段90に吸引保持されたウエーハ10は、図7から理解されるように、ウエーハ10の裏面10bが上方に露出している。本実施形態では、図8(a)に示すように、ウエーハ10よりも大きな寸法に設定された開口部を有する環状のフレームFを用意し、該開口部よりも大きい円形のダイシングテープTの外周をフレームFに貼着し、さらに、開口部の中央に剥離用保持手段90に保持されたウエーハ10を位置付け、ダイシングテープTにウエーハ10の裏面10bを貼着する。そして、剥離用保持手段90に接続された図示しない吸引手段を停止して、剥離用保持手段90からウエーハ10を離脱させる。そして、図8(b)に示すように、ダイシングテープTを介してフレームFに保持されたウエーハ10を反転させ、ダイシングテープ配設工程が完了する。このようにすることで、個々のデバイスチップ12’に分割した後も、ウエーハ10の形態を維持したまま、図示しないカセットケースに収容したり、図示しないピックアップ工程等を実施するピックアップ装置等に搬送したりすることができる。
【0032】
本実施形態によれば、ウエーハ10は、シート熱圧着工程が実施されることによって、シート20を介してサブストレート30に十分な支持力で支持され、ウエーハ10に対して切削加工を施す際にウエーハ10が安定的に支持され、ウエーハ10の表面10aに形成された分割予定ライン14を切削ブレード73により切削加工をしても、デバイスチップ12’に欠け等が生じることが防止される。また、ウエーハ配設工程において、液状樹脂、糊剤、及びワックス等を介さずにシート20によってウエーハ10をサブストレート30に保持させているため、分割工程が終了してウエーハの裏面10bからシート20、及びサブストレート30を剥離しても、液状樹脂、糊剤、ワックス等がデバイスチップ12’の裏面に付着して残留することがなく、デバイスの品質を低下させることがない。
【0033】
なお、上記した実施形態では、ポリエチレンシートによりシート20を構成したが、本発明はこれに限定されない。液状樹脂、糊剤、ワックス等を必要とすることなくウエーハ10を支持可能なシート20としては、ポリオレフィン系シート、ポリエステル系シートの中から適宜選択することができる。ポリオレフィン系シートとしては、上記したポリエチレンシートの他、例えば、ポリプロピレン(PP)シート、ポリスチレン(PS)シートを選択することができる。また、ポリエステル系シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレート(PEN)シートを選択することができる。
【0034】
上記した実施形態では、シート熱圧着工程においてシート20を加熱する際の温度を、ポリエチレンシートの融点近傍の温度(120~140℃)に設定したが、上記したように、シート20として他のシートを選択して構成する場合は、選択したシートの素材の融点近傍の温度になるように加熱することが好ましい。例えば、シート20がポリプロピレンシートで構成される場合は、加熱する際の温度設定を160~180℃とし、シート20がポリスチレンシートで構成される場合は、加熱する際の温度を220~240℃とすることが好ましい。また、シート20がポリエチレンテレフタレートシートで構成される場合は、加熱する際の温度を250~270℃とし、シート20がポリエチレンナフタレートシートで構成される場合は、加熱する際の温度を160~180℃に設定することが好ましい。
【0035】
また、上記した実施形態では、密閉カバー部材62により内部空間Sを形成して密閉環境としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図9(a)に示すように、ウエーハ10を、シート20、サブストレート30と共にサブストレート30よりも大きい吸着チャック96を有する保持手段94に保持させ、吸着チャック96の上面全体をフィルム状部材200で覆い、吸着チャック96から負圧Vmを作用させることで、ウエーハ10を含むフィルム状部材200の内側を密閉環境とし、該密閉環境内の空間を減圧することができる。そして、図9(b)に一部拡大断面図として示すように、加熱手段(図示は省略する。)を備えたローラ210により、シート20を所望の温度に加熱しながら、フィルム状部材200の上からウエーハ10の裏面10b全体を押圧することで、本発明のシート熱圧着工程を実施することも可能である。
【0036】
上記した実施形態では、サブストレート30をガラスにより構成したが、本発明はこれに限定されず、シート熱圧着工程時にシート20を加熱しても軟化せず、且つ分割工程を実施する際にウエーハ10を破損させずに支持し得る剛性が確保されるのであれば、他の素材、例えば、アルミ、セラミックス等からなるサブストレート30を採用することができる。さらに、シート20を加熱する際の温度の影響を受けにくい融点が高い素材であれば、樹脂から選択されてもよい。例えば、シート20としてポリエチレンシートが選択された場合のシート熱圧着工程時の加熱温度は120~140℃であることから、サブストレート30として、融点が250~270℃であるポリエチレンテレフタレート(PET)を採用することもできる。すなわち、サブストレート30は、シート20よりも融点温度が高い素材から選択されることが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
10:ウエーハ
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:シート
22:盛り上がり部
30:サブストレート
40:支持テーブル
42:電気ヒータ
50:基台
52:吸引孔
60:熱圧着装置
62:密閉カバー部材
64:押圧部材
64b:押圧プレート
70:切削装置
72:回転スピンドル
74:ブレードカバー
80:保持手段
90:剥離用保持手段
200:フィルム状部材
210:ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9