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特許7181102内燃機関始動用空気供給システム及びポンプ設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】内燃機関始動用空気供給システム及びポンプ設備
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
F04B49/06 331Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019008628
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020118066
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】吉本 将人
(72)【発明者】
【氏名】内田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘史
(72)【発明者】
【氏名】大竹 良治
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144658(JP,A)
【文献】特開昭63-295859(JP,A)
【文献】特開昭62-162771(JP,A)
【文献】特開昭61-212667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 9/04
F04B 49/00-51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に始動用空気を供給する空気槽と、
前記空気槽に前記始動用空気を充気する空気圧縮機と、
前記空気槽の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計と、
前記圧力計の計測結果に基づいて、前記空気圧縮機を駆動させる制御装置と、を備える、内燃機関始動用空気供給システムであって、
前記制御装置は、前記空気槽の圧力レベルが前記高位レベルから前記低位レベルまで低下する間に前記内燃機関が始動した始動回数を計測すると共に、当該始動回数に基づいて、システムの異常を検知する、ことを特徴とする内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記始動回数と、予め設定した基準始動回数とを比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項3】
前記内燃機関が複数台設置されており、
前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計を含む始動用空気供給系統を備え、
前記制御装置は、前記始動用空気供給系統ごとに前記始動回数を計測すると共に、当該始動回数同士を比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項4】
前記空気槽から前記内燃機関に向かって前記始動用空気を移送する空気配管と、
前記空気配管を開閉する開閉装置と、を備え、
前記制御装置は、さらに、前記空気槽の圧力レベルが前記高位レベルから前記低位レベルまで低下する間に前記開閉装置が前記空気配管を開いた累計時間を計測すると共に、当該累計時間に基づいて、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項5】
内燃機関に始動用空気を供給する空気槽と、
前記空気槽に前記始動用空気を充気する空気圧縮機と、
前記空気槽の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計と、
前記圧力計の計測結果に基づいて、前記空気圧縮機を駆動させる制御装置と、を備える、内燃機関始動用空気供給システムであって、
前記空気槽から前記内燃機関に向かって前記始動用空気を移送する空気配管と、
前記空気配管を開閉する開閉装置と、を備え、
前記制御装置は、前記空気槽の圧力レベルが前記高位レベルから前記低位レベルまで低下する間に前記開閉装置が前記空気配管を開いた累計時間を計測し、当該累計時間に基づいて、システムの異常を検知する、ことを特徴とする内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記累計時間と、予め設定した基準累計時間とを比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項4または5に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項7】
気温を計測する温度計を備え、
前記制御装置は、前記温度計の計測結果に基づいて、前記基準累計時間を補正する、ことを特徴とする請求項6に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項8】
前記内燃機関が複数台設置されており、
前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計、前記空気配管、前記開閉装置を含む始動用空気供給系統を備え、
前記制御装置は、前記始動用空気供給系統ごとに前記累計時間を計測すると共に、当該累計時間同士を比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項4~7のいずれか一項に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項9】
前記制御装置は、さらに、前記空気圧縮機を駆動させ、前記空気槽の圧力レベルが前記低位レベルから前記高位レベルになるまでの圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項10】
内燃機関に始動用空気を供給する空気槽と、
前記空気槽に前記始動用空気を充気する空気圧縮機と、
前記空気槽の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計と、
前記圧力計の計測結果に基づいて、前記空気圧縮機を駆動させる制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記空気圧縮機を駆動させ、前記空気槽の圧力レベルが前記低位レベルから前記高位レベルになるまでの圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知する、内燃機関始動用空気供給システムであって、
前記空気圧縮機を複数台備え、
前記制御装置は、前記空気圧縮機ごとに前記圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間同士を比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項11】
前記空気圧縮機を複数台備え、
前記制御装置は、前記空気圧縮機ごとに前記圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間同士を比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項9に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記圧力上昇時間と、予め設定した基準圧力上昇時間とを比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項13】
前記内燃機関が複数台設置されており、
前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計を含む始動用空気供給系統を備えると共に、前記空気圧縮機との接続を前記始動用空気供給系統のいずれか一つに切り替える切替装置と、を備え、
前記制御装置は、前記始動用空気供給系統ごとに前記圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間同士を比較して、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項14】
前記内燃機関が複数台設置されており、
前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計を含む始動用空気供給系統を備え、
前記始動用空気供給系統のそれぞれが、前記空気圧縮機と接続されており、
前記制御装置は、前記空気圧縮機を駆動させ、前記始動用空気供給系統の全てにおいて前記空気槽の圧力レベルが前記低位レベルから前記高位レベルになるまでの合計の圧力上昇時間を計測すると共に、当該合計の圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知する、ことを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載の内燃機関始動用空気供給システム。
【請求項15】
液体を揚水するポンプと、
前記ポンプを駆動させる内燃機関と、
前記内燃機関を始動させる始動用空気を供給する請求項1~14のいずれか一項に記載の内燃機関始動用空気供給システムと、を備える、ことを特徴とするポンプ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関始動用空気供給システム及びポンプ設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内燃機関により駆動するポンプを備え、大雨等に湛水防除の目的で稼働するポンプ設備が開示されている。このようなポンプ設備では、洪水時において確実な稼働が必要であり、設備全体の健全性を確認するために、主ポンプ及び補機の管理運転が必要不可欠である。特に、主ポンプを駆動させる内燃機関の始動不良は、信頼性の低下に繋がってしまうことから、早期に異常を検知し、整備や修繕などにより機能の回復を図る必要がある。したがって、内燃機関に始動用空気を供給する始動空気系統設備(内燃機関始動用空気供給システム)の正常な運転は、主ポンプを適切な時期に適切に運転させるための重要な要素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-246865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関始動用空気供給システムは、空気圧縮機、空気槽、制御装置、及び各種空気配管・弁類と多岐に亘っており、異常発生箇所を特定するためには、1つ1つの装置、機器、またこれら装置及び機器を含む系統を点検する必要があり、早期復旧が求められる排水機場では致命的な時間を要する場合があった。また、内燃機関始動用空気供給システムの異常発生の原因としては、空気圧縮機の故障や、系統内の各種弁類(逆止弁など)の固着、系統内からの空気漏れ、制御装置の故障などが挙げられるが、いずれも目視による判断が困難であった。このため、内燃機関の始動不良が発生したタイミングでシステムの異常が判明することが多く、内燃機関の始動不良を未然に防ぐことが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の始動不良を未然に防ぐことが可能な内燃機関始動用空気供給システム及びポンプ設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る内燃機関始動用空気供給システムは、内燃機関に始動用空気を供給する空気槽と、前記空気槽に前記始動用空気を充気する空気圧縮機と、前記空気槽の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計と、前記圧力計の計測結果に基づいて、前記空気圧縮機を駆動させる制御装置と、を備える、内燃機関始動用空気供給システムであって、前記制御装置は、前記空気槽の圧力レベルが前記高位レベルから前記低位レベルまで低下する間に前記内燃機関が始動した始動回数を計測すると共に、当該始動回数に基づいて、システムの異常を検知する。
【0007】
(2)上記(1)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記制御装置は、前記始動回数と、予め設定した基準始動回数とを比較して、システムの異常を検知してもよい。
【0008】
(3)上記(1)または(2)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記内燃機関が複数台設置されており、前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計を含む始動用空気供給系統を備え、前記制御装置は、前記始動用空気供給系統ごとに前記始動回数を計測すると共に、当該始動回数同士を比較して、システムの異常を検知してもよい。
【0009】
(4)上記(1)~(3)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記空気槽から前記内燃機関に向かって前記始動用空気を移送する空気配管と、前記空気配管を開閉する開閉装置と、を備え、前記制御装置は、さらに、前記空気槽の圧力レベルが前記高位レベルから前記低位レベルまで低下する間に前記開閉装置が前記空気配管を開いた累計時間を計測すると共に、当該累計時間に基づいて、システムの異常を検知してもよい。
【0010】
(5)本発明の一態様に係る内燃機関始動用空気供給システムは、内燃機関に始動用空気を供給する空気槽と、前記空気槽に前記始動用空気を充気する空気圧縮機と、前記空気槽の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計と、前記圧力計の計測結果に基づいて、前記空気圧縮機を駆動させる制御装置と、を備える、内燃機関始動用空気供給システムであって、前記空気槽から前記内燃機関に向かって前記始動用空気を移送する空気配管と、前記空気配管を開閉する開閉装置と、を備え、前記制御装置は、前記空気槽の圧力レベルが前記高位レベルから前記低位レベルまで低下する間に前記開閉装置が前記空気配管を開いた累計時間を計測し、当該累計時間に基づいて、システムの異常を検知する。
【0011】
(6)上記(4)または(5)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記制御装置は、前記累計時間と、予め設定した基準累計時間とを比較して、システムの異常を検知してもよい。
【0012】
(7)上記(6)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、気温を計測する温度計を備え、前記制御装置は、前記温度計の計測結果に基づいて、前記基準累計時間を補正してもよい。
【0013】
(8)上記(4)~(7)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、 前記内燃機関が複数台設置されており、前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計、前記空気配管、前記開閉装置を含む始動用空気供給系統を備え、前記制御装置は、前記始動用空気供給系統ごとに前記累計時間を計測すると共に、当該累計時間同士を比較して、システムの異常を検知してもよい。
【0014】
(9)上記(1)~(8)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、 前記制御装置は、さらに、前記空気圧縮機を駆動させ、前記空気槽の圧力レベルが前記低位レベルから前記高位レベルになるまでの圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知してもよい。
【0015】
(10)本発明の一態様に係る内燃機関始動用空気供給システムは、内燃機関に始動用空気を供給する空気槽と、前記空気槽に前記始動用空気を充気する空気圧縮機と、前記空気槽の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計と、前記圧力計の計測結果に基づいて、前記空気圧縮機を駆動させる制御装置と、を備える、内燃機関始動用空気供給システムであって、前記制御装置は、前記空気圧縮機を駆動させ、前記空気槽の圧力レベルが前記低位レベルから前記高位レベルになるまでの圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知する。
【0016】
(11)上記(9)または(10)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記制御装置は、前記圧力上昇時間と、予め設定した基準圧力上昇時間とを比較して、システムの異常を検知してもよい。
【0017】
(12)上記(9)~(11)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記空気圧縮機を複数台備え、前記制御装置は、前記空気圧縮機ごとに前記圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間同士を比較して、システムの異常を検知してもよい。
【0018】
(13)上記(9)~(12)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記内燃機関が複数台設置されており、前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計を含む始動用空気供給系統を備えると共に、前記空気圧縮機との接続を前記始動用空気供給系統のいずれか一つに切り替える切替装置と、を備え、前記制御装置は、前記始動用空気供給系統ごとに前記圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間同士を比較して、システムの異常を検知してもよい。
【0019】
(14)上記(9)~(12)に記載された内燃機関始動用空気供給システムであって、前記内燃機関が複数台設置されており、前記内燃機関ごとに、前記空気槽、前記圧力計を含む始動用空気供給系統を備え、前記始動用空気供給系統のそれぞれが、前記空気圧縮機と接続されており、前記制御装置は、前記空気圧縮機を駆動させ、前記始動用空気供給系統の全てにおいて前記空気槽の圧力レベルが前記低位レベルから前記高位レベルになるまでの合計の圧力上昇時間を計測すると共に、当該合計の圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知してもよい。
【0020】
(15)本発明の一態様に係るポンプ設備は、液体を揚水するポンプと、前記ポンプを駆動させる内燃機関と、前記内燃機関を始動させる始動用空気を供給する(1)~(14)に記載された内燃機関始動用空気供給システムと、を備える。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の態様によれば、内燃機関の始動不良を未然に防ぐことが可能な内燃機関始動用空気供給システム及びポンプ設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係るポンプ機場1の全体構成図である。
図2】第1実施形態に係る主ポンプ10の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係る内燃機関始動用空気供給システム50の概略構成図である。
図4】第1実施形態に係る内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知手法の一例を示す図である。
図5】第2実施形態に係る空気槽8の圧力と、始動弁50bを開いた時間との関係を示すグラフである。
図6】第2実施形態に係る内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知手法の一例を示す図である。
図7】第2実施形態の変形例に係る空気槽8の圧力と、始動弁50bを開いた時間との関係を示すグラフである。
図8】第3実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
図9】第3実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
図10】第3実施形態に係る基準圧力上昇時間の設定手法(内燃機関4(主ポンプ10)が1台の場合)の一例を示す図である。
図11】第3実施形態に係る基準圧力上昇時間の設定手法(内燃機関4(主ポンプ10)が複数台の場合)の一例を示す図である。
図12】第3実施形態に係る基準圧力上昇時間の設定手法(内燃機関4(主ポンプ10)が複数台の場合)の計算手法を説明するための説明図である。
図13】第3実施形態に係る基準圧力上昇時間の設定手法(内燃機関4(主ポンプ10)が複数台の場合)の計算手法を説明するための説明図である。
図14】第3実施形態の変形例に係る内燃機関始動用空気供給システム50の概略構成図である。
図15】第4実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
図16】第5実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
図17】第6実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の内燃機関始動用空気供給システム及びポンプ設備について図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の適用例として、大雨等に湛水防除の目的で稼働するポンプ機場を例示する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るポンプ機場1の全体構成図である。
図1に示すポンプ機場1(ポンプ設備)は、複数台の主ポンプ10(ポンプ)と、主ポンプ10を稼働させる複数台の補機20と、を備える。ポンプ機場1は、主ポンプ10として、4台の横軸ポンプを備える。なお、主ポンプ10は、縦軸ポンプであってもよい。
【0025】
ポンプ機場1は、補機20として、真空ポンプ21、ギヤポンプ22、空気圧縮機23(コンプレッサ)、冷却水ポンプ24などを備える。空気圧縮機23は、主ポンプ10の駆動機である内燃機関4を始動させる内燃機関始動用空気供給システム50の構成機器である。これらの補機20は、それぞれ2台ずつ設置され、2台中、1台は予備機とすることができるようになっている。
【0026】
図2は、第1実施形態に係る主ポンプ10の概略構成図である。
主ポンプ10は、図2に示すように、吸込水槽2に開口する吸込口11aと、吐出水槽3に開口する吐出口11bと、を有するケーシング11を備える。吸込水槽2、吐出水槽3には、吸込側,吐出側の水位を計測する水位計2a,3aが設けられている。ケーシング11には、横方向(水平方向)に延びるポンプ軸12が挿入されている。ポンプ軸12には、図示しないインペラ(羽根車)が接続されている。また、当該インペラの下流側かつ吐出口11bの上流側には、吐出弁13が設けられている。
【0027】
主ポンプ10は、内燃機関4によって駆動する。内燃機関4は、例えば、エアモーターなどによって始動するディーゼルエンジンである。内燃機関4の駆動軸4aには減速機5が連結され、減速機5には主ポンプ10のポンプ軸12が連結されている。内燃機関4を駆動することによって、減速機5を介してポンプ軸12が回転し、主ポンプ10によって吸込水槽2内の水が揚水されて、その水が吐出水槽3に吐出されるようになっている。
【0028】
真空ポンプ21は、主ポンプ10の起動時にケーシング11内の空気を吸引し、ケーシング11内を呼び水で満たす。真空ポンプ21は、ケーシング11に吸気ライン30(吸気配管)を介して接続されている。吸気ライン30には、ケーシング11内の呼び水の満水を検知するための満水検知器14と、吸気ライン30を開閉するための吸気弁31(電動弁又は電磁弁)と、が設けられている。
【0029】
真空ポンプ21は、電動機21aによって駆動する。この真空ポンプ21は、例えば水封式(具体的にはナッシュ式)真空ポンプであって、図1に示すように、その吸気側には補給水を給水する給水管32が接続され、排気側には給水された水及び吸い込んだ空気を排出する排出管33が接続されている。給水管32は、補水槽34と接続され、給水管32の開閉するための給水弁35(電動弁又は電磁弁)が設けられている。
【0030】
図1に示すギヤポンプ22は、内燃機関4の燃料を汲み上げるものである。このギヤポンプ22は、電動機22aによって駆動する。ギヤポンプ22は、燃料供給ライン40(燃料供給配管)に設けられている。燃料供給ライン40においては、ギヤポンプ22の駆動によって、燃料を貯蔵する地下貯油槽6から地上の所定高さに設置された燃料小出槽7に燃料が汲み上げられ、この燃料小出槽7から内燃機関4に燃料が供給される。燃料小出槽7に燃料を蓄えておくことで、ギヤポンプ22が駆動していない間でも、必要な供給圧で燃料を内燃機関4に供給することができる。
【0031】
空気圧縮機23は、内燃機関4を始動させる圧縮空気(始動用空気)を空気槽8へ充気するものである。この空気圧縮機23は、電動機23aによって駆動する。空気圧縮機23は、空気供給ライン50a(空気配管)に設けられている。空気供給ライン50aにおいては、空気圧縮機23の駆動によって圧気された圧縮空気が空気槽8に充気され、この空気槽8から内燃機関4に圧縮空気が供給される。空気槽8に圧縮空気を蓄えておくことで、圧縮空気を内燃機関4に供給して、始動することができる。
【0032】
冷却水ポンプ24は、内燃機関4を冷却する冷却水を組み上げるものである。この冷却水ポンプ24は、電動機24aによって駆動する。冷却水ポンプ24は、冷却水供給ライン60(冷却水供給配管)に設けられている。冷却水供給ライン60においては、冷却水ポンプ24の駆動によって冷却水槽61から冷却水が汲み上げられ、各内燃機関4を冷却する熱交換器4bに冷却水が供給される。なお、減速機5にも図示しない熱交換器を設置する場合、冷却水供給ライン60において、内燃機関4の熱交換器4bと減速機5の熱交換器とを直列に接続してもよい。
【0033】
図3は、第1実施形態に係る内燃機関始動用空気供給システム50の概略構成図である。
内燃機関始動用空気供給システム50は、図3に示すように、空気槽8に蓄えられた圧縮空気を内燃機関4に供給する始動用空気供給系統51を備える。始動用空気供給系統51は、図1に示すように、複数台(本実施形態では4台)の内燃機関4ごとに設置されている。すなわち、内燃機関始動用空気供給システム50は、4つの始動用空気供給系統51を備える。
【0034】
始動用空気供給系統51には、2台の空気槽8が設置されている。2台の空気槽8には、それぞれ、圧力計8aと、排出弁8bと、充気弁8cと、ドレン弁8dと、が設けられている。圧力計8aは、空気槽8の圧力レベルを計測するものである。また、排出弁8bは、空気供給ライン50aにおける空気槽8の下流側を開閉する開閉弁である。また、充気弁8cは、空気供給ライン50aにおける空気槽8の上流側を開閉する開閉弁である。そして、ドレン弁8dは、空気槽8に溜まったドレン(液体)を、空気槽8の底部から排出する開閉弁である。
【0035】
これら2台の空気槽8のうち、1台は予備とされている。本実施形態では、図3において紙面右側の空気槽8は「常用」とされ、排出弁8b、充気弁8cが開いている。一方、図3において紙面左側の空気槽8は「予備」とされ、排出弁8b、充気弁8cが閉じている。また、これら空気槽8に始動用空気を充気する2台の空気圧縮機23のうち、図3において紙面右側の空気圧縮機23は「常用」とされ、その下流側の供給弁23b(開閉弁)が開いている。また、図3において紙面左側の空気圧縮機23は「予備」とされ、その下流側の供給弁23b(開閉弁)が閉じている。なお、以下では、この状態をベースとして説明するが、空気槽8及び空気圧縮機23の「常用」と「予備」を適宜切り替えてもよい。
【0036】
空気供給ライン50aにおける空気圧縮機23と空気槽8との間には、開閉弁52と、ドレン分離器53と、が設けられている。これら開閉弁52及びドレン分離器53は、始動用空気供給系統51に含まれる。開閉弁52は、常時開いており、始動用空気供給系統51を保守点検する場合などに閉じられる。ドレン分離器53は、空気供給ライン50aにおける開閉弁52の下流側に配置され、始動用空気に含まれるドレンを分離して系外に排出する。空気供給ライン50aにおけるドレン分離器53と充気弁8cとの間には、系内の温度を計測する温度計54と、系内の圧力を計測する圧力計55と、が設けられている。
【0037】
空気供給ライン50aにおける空気槽8(排出弁8b)の下流側には、内燃機関4に始動用空気を供給する始動弁50b(開閉装置:電動弁又は電磁弁)が設けられている。始動弁50bは、内燃機関4の始動時に開かれるものである。具体的には、始動弁50bが開き、エアモーターの駆動によって内燃機関4が単独で運転可能な所定の低速度(始動速度)に達したことを、図示しない回転計又は速度リレーで検知したら、始動弁50bは閉じられる。
【0038】
空気圧縮機23は、後述する制御装置100の制御の下、圧力計8a(または圧力計55であってもよい)の計測結果に基づいて駆動する。圧力計8aは、空気槽8の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを検知する。なお、高位レベル、低位レベルは、管理者によって設定可能な設定値とするとよい。制御装置100は、圧力計8aから低位レベルが検知されたときに空気圧縮機23を始動させ、圧力計8aから高位レベルが検知されたときに空気圧縮機23を停止させる。この空気圧縮機23としては、二次側(空気槽8)の圧力によらず、ほぼ一定の充気量を維持できる往復式(圧縮式)のコンプレッサを採用することが好ましい。
【0039】
ポンプ機場1は、上述した各構成機器の動作を統括的に制御する制御装置100を備える。制御装置100は、図示しないCPU等の演算部、RAM,ROM,ハードディスクドライブ(HDD),ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶部、各構成機器とデータのやり取りする出入力インターフェース等が、図示しないバスで接続されたものである。出入力インターフェースには、上述した各構成機器以外にも、図示しないディスプレイ等の表示装置、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
【0040】
記憶部には、演算部が読み出して実行するためのプログラムが格納されており、制御装置100はそのプログラムに従って、以下説明する内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知することができるようになっている。本実施形態の制御装置100は、空気槽8の圧力レベルが高位レベルから低位レベルまで低下する間に内燃機関4の始動回数を計測すると共に、当該始動回数に基づいて、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知する。
【0041】
内燃機関4の始動回数は、上述したように、始動弁50bが開き、内燃機関4が所定の低速度に達し、始動弁50bが閉じた回数、すなわち、始動弁50bの開閉回数をカウントすることで計測する。制御装置100は、当該始動回数と、予め設定した基準始動回数とを比較して、システムの異常を検知するようになっている。この基準始動回数は、管理者によって設定可能な設定値であり、例えば、工場試験時の記録、実機試運転時の記録などに基づいて設定するとよい。例えば、空気槽8の圧力レベルが高位レベルから低位レベルまで低下する間に、平均的に3回ほど内燃機関4を始動させることが可能であれば、当該基準始動回数を3回に設定するとよい。
【0042】
図4は、第1実施形態に係る内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知手法の一例を示す図である。
制御装置100は、図4に示すように、空気槽8を充気する度に、内燃機関4の始動回数と基準始動回数とを比較し、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の有無を判定する。具体的には、基準始動回数に対し、内燃機関4の始動回数が減少したとき(例えば、始動回数が3回未満に減少したとき)に、制御装置100は、内燃機関始動用空気供給システム50に異常(例えば、空気漏れなど)が発生したと判定する。
【0043】
また、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知精度を向上させるべく、内燃機関4の始動回数の変化の傾向に基づいて、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の有無を判定することが好ましい。すなわち、制御装置100は、空気槽8の充気回数ごとに計測される内燃機関4の始動回数を記憶部に蓄積し、例えば、図4に示すように、始動回数3回未満が2回連続で検知された場合、内燃機関始動用空気供給システム50に異常が発生したと判定するとよい。これにより、一時的な外的要因を排除して、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を精度よく検知することができる。
【0044】
また、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知精度を向上させるべく、他の始動用空気供給系統51における内燃機関4の始動回数と比較して、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の有無を判定することが好ましい。すなわち、制御装置100は、図1に示す、複数の始動用空気供給系統51ごとに始動回数を計測すると共に、当該始動回数同士を比較し、例えば、ある特定の始動用空気供給系統51の始動回数が、その他の始動用空気供給系統51の始動回数よりも減少していた場合、内燃機関始動用空気供給システム50に異常が発生したと判定するとよい。これにより、異常が発生した始動用空気供給系統51を特定できると共に、仮に、適切な基準始動回数(閾値)を設定することが困難な場合であっても、相対的な評価により、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知することができる。
【0045】
内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知したら、図3に示すように、異常発生箇所を特定するべく、バルブ61を開けて検査用気体供給タンク60から空気供給ライン50aに検査用気体(例えば、着色気体)を供給することが好ましい。検査用気体供給タンク60は、検査用気体供給ライン62を介して、空気供給ライン50aの複数個所(A1…排出弁8bの下流側、A2…ドレン分離器53と充気弁8cとの間、A3…供給弁23bと開閉弁52との間)に接続されている。なお、検査用気体供給ライン62の接続箇所は、空気圧縮機23から空気槽8そして内燃機関4の間の全てに検査用気体が注入できればよい。これにより、空気漏れした箇所から検査用気体が漏れ出すので、内燃機関始動用空気供給システム50の異常発生箇所を視認することができる。
【0046】
このように、上述した本実施形態によれば、内燃機関4に始動用空気を供給する空気槽8と、空気槽8に始動用空気を充気する空気圧縮機23と、空気槽8の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計8aと、圧力計8aの計測結果に基づいて、空気圧縮機23を駆動させる制御装置100と、を備える、内燃機関始動用空気供給システム50であって、制御装置100は、空気槽8の圧力レベルが高位レベルから低位レベルまで低下する間に内燃機関4が始動した始動回数を計測すると共に、当該始動回数に基づいて、システムの異常を検知する、という構成を採用することによって、内燃機関4の始動不良を未然に防ぐことが可能となる。すなわち、空気槽8の圧力レベルが高位レベルから低位レベルまで低下する間に内燃機関4が始動した始動回数を計測することで、システムの異常の有無の簡易判定が可能となり、仮に、内燃機関4の始動回数が減少するのであれば、当該異常発生箇所を、空気槽8から内燃機関4(具体的には内燃機関始動装置(エアモーター又は分配弁))までの間に絞り込むことができる。したがって、内燃機関4の始動不良となる前に、早期に異常を検知し、整備や修繕などにより機能の回復を図ることで、内燃機関4の始動不良を未然に防ぐことが可能となる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0048】
第2実施形態では、制御装置100が、空気槽8の圧力レベルが高位レベルから低位レベルまで低下する間に、始動弁50bが空気供給ライン50aを開いた累計時間を計測すると共に、当該累計時間に基づいて、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知する点で、上記実施形態と異なる。
【0049】
図5は、第2実施形態に係る空気槽8の圧力と、始動弁50bを開いた時間との関係を示すグラフである。
図5に示す空気圧縮機起動条件とは、上述した空気槽8の低位レベル(空気圧縮機23が始動する圧力レベル)のことであり、例えば2.2MPaに設定されている。また、規定圧力とは、上述した空気槽8の高位レベル(空気圧縮機23が停止する圧力レベル)のことであり、例えば3.0MPaに設定されている。
【0050】
図5に示す例では、空気槽8は、規定圧力に充気された状態から空気圧縮機起動条件に至るまで、内燃機関4を3回始動させることが可能な構成となっている。ここでΔt1~Δt3とは、内燃機関4の始動回数が1~3回目における始動弁50bを開いた時間である。また、Δp1~Δp3とは、内燃機関4の始動回数が1~3回目における空気槽8の圧力変化(低下)量である。制御装置100は、Δt1~Δt3を加算した累計時間(ΣΔt)に基づいて、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知する。なお、内燃機関始動中(例えば図5に示すΔt3の間の任意の時間)に空気圧縮機起動条件に達した場合、その後の始動弁50bの開時間は累計時間に含まないようにするとよい。
【0051】
図6は、第2実施形態に係る内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知手法の一例を示す図である。
制御装置100は、図6に示すように、上述した累計時間と基準累計時間を比較し、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を判定する。具体的には、基準累計時間に対し許容値(許容範囲)を設定し、累計時間の実測値が、当該許容値の下方閾値または上方閾値を超えたときに、内燃機関始動用空気供給システム50に異常が発生したと判定する。例えば、始動弁50bを開いた累計時間が長くなる場合(+方向)、空気供給ライン50aにおける図示しないエアフィルタの詰まりなどが発生している可能性がある。また、始動弁50bを開いた累計時間が短くなる場合(-方向)、空気供給ライン50aにおける空気漏れなどが発生している可能性がある。なお、空気槽8における圧力低下の特性は、内燃機関4の始動方式(エアモーター方式、分配弁方式など)により異なるため、工場試験時の記録、実機試運転時の記録などに基づいて、基準累計時間を設定するとよい。
【0052】
また、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知精度を向上させるべく、始動弁50bを開いた累計時間の変化の傾向に基づいて、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の有無を判定することが好ましい。すなわち、制御装置100は、空気槽8の充気回数ごとに計測される始動弁50bを開いた累計時間を記憶部に蓄積し、現在の計測値と前回の計測値とを結ぶ直線と、前回の計測値と前々回の計測値とを結ぶ直線との角度の差θが、所定の角度以上であれば、異常の予兆を検知したと判定するとよい。この判定は、上述した内燃機関始動用空気供給システム50の異常判定の許容値未満で行うとよい。
【0053】
また、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知精度を向上させるべく、他の始動用空気供給系統51における始動弁50bを開いた累計時間と比較して、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の有無を判定することが好ましい。すなわち、制御装置100は、図1に示す、複数の始動用空気供給系統51ごとに始動弁50bを開いた累計時間を計測すると共に、当該累計時間同士を比較し、例えば、ある特定の始動用空気供給系統51の累計時間が、その他の始動用空気供給系統51の累計時間よりも増減していた場合、内燃機関始動用空気供給システム50に異常が発生したと判定するとよい。これにより、異常が発生した始動用空気供給系統51を特定できると共に、仮に、適切な基準累計時間(閾値)を設定することが困難な場合であっても、相対的な評価により、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知することができる。
【0054】
また、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知精度を向上させるべく、図3に示すように、場内に設けられた気温を計測する温度計56に基づいて、上述した基準累計時間を補正することが好ましい。すなわち、内燃機関4の始動回数一回当たりの始動用空気の消費量は、気温に応じて増減する。例えば、気温が低い場合は、始動用空気を大量に消費する。このため、気温に応じて基準累計時間を補正することで、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の検知精度を向上させることができる。例えば、制御装置100は、気温を0~5℃、5~10℃、10~20℃、20~30℃、30℃~に区分けしたそれぞれに対応する基準累計時間を記憶部に記憶しておくことで、適切な基準累計時間(閾値)を設定することが可能となる。
【0055】
また、内燃機関始動用空気供給システム50では、内燃機関4に始動用空気を供給する時間(=始動弁50b:開の時間)が一定時間を超過した場合、一旦始動弁50bを閉とし、再び、始動弁50bを開とする制御を行う場合(リトライ制御する場合)がある。このようなリトライが行なわれると、内燃機関4の健全度が低下している可能性があるため、そのリトライ回数などを記録し、内燃機関始動用空気供給システム50の異常と判定してもよい。
【0056】
このように、上述した第2実施形態によれば、内燃機関4に始動用空気を供給する空気槽8と、空気槽8に始動用空気を充気する空気圧縮機23と、空気槽8の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計8aと、圧力計8aの計測結果に基づいて、空気圧縮機23を駆動させる制御装置100と、を備える、内燃機関始動用空気供給システム50であって、空気槽8から内燃機関4へ始動用空気を供給する空気供給ライン50aと、空気供給ライン50aを開閉する始動弁50bと、を備え、制御装置100は、空気槽8の圧力レベルが高位レベルから低位レベルまで低下する間に始動弁50bが空気供給ライン50aを開いた累計時間を計測し、当該累計時間に基づいて、システムの異常を検知する、という構成を採用することによって、内燃機関4の始動不良を未然に防ぐことが可能となる。すなわち、空気槽8の圧力レベルが高位レベルから低位レベルまで低下する間に始動弁50bが開いた累計時間を計測することで、システムの異常の有無の簡易判定が可能となり、仮に、始動弁50bが開いた累計時間が増減するのであれば、当該異常発生箇所を、空気槽8から内燃機関4(具体的には内燃機関始動装置(エアモーター))までの間に絞り込むことができる。したがって、内燃機関4の始動不良となる前に、早期に異常を検知し、整備や修繕などにより機能の回復を図ることで、内燃機関4の始動不良を未然に防ぐことが可能となる。
【0057】
なお、第2実施形態では、図5に示すように、空気槽8が規定圧力の状態から空気圧縮機起動条件に至るまで、始動弁50bが複数回開閉した場合の累計時間を計測する構成について説明したが、図7に示すように、空気槽8が規定圧力の状態から空気圧縮機起動条件に至るまで圧力が低下する時間Δt、すなわち始動弁50bを複数回開閉しない場合、例えば規定圧力状態から1回だけ内燃機関4を起動した場合の累計時間を計測し、当該累計時間に基づいて、システムの異常を検知する構成であってもよい。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0059】
第3実施形態では、制御装置100が、空気圧縮機23を駆動させ、空気槽8の圧力レベルが低位レベルから高位レベルになるまでの圧力上昇時間を計測すると共に、当該圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知する点で、上記実施形態と異なる。
【0060】
また、第3実施形態の制御装置100は、通常運転モードと、管理運転モードとを備える。通常運転モードは、空気槽8の圧力を設定値以上に保つ目的で空気圧縮機23を運転させる通常の運転モードである。この通常運転モードには、空気圧縮機23を単独で運転する単独運転モード、空気圧縮機23を複数台で運転する連動運転モード、空気槽8の圧力低下に伴い空気圧縮機23を自動運転させる自動運転モードなどが含まれる。
【0061】
管理運転モードは、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知する運転モードである。管理運転モードのとき、制御装置100は、例えば、図3に示すドレン弁8d(以下、管理運転用開閉弁と称する場合がある)を開き、空気槽8の圧力レベルを低位レベル(空気圧縮機起動条件)まで低下させた後、空気圧縮機23を駆動させ、空気槽8の圧力レベルが低位レベルから高位レベルになるまでの圧力上昇時間を計測する。
【0062】
この管理運転モードは、定期的(例えば、月1回程度)に行われるように設定することが好ましい。なお、制御装置100は、上述した通常運転モードによる運転が行われるときには、管理運転モードによる定期的な運転が実行されないように、インターロック処理するようになっている(後述する図8参照)。
【0063】
図8及び図9は、第3実施形態に係る制御装置100による制御フローである。なお、図8及び図9に示すN号機とは、4台の主ポンプ10のいずれか一つを意味している。
図8に示すように、先ず、制御装置100は、図示しないタイマー等により予め設定された点検タイミングとなったら、運転モードを管理運転モードに切り替える(ステップS1)。次に、制御装置100は、管理運転モードの起動条件が成立する諸条件を確認する(ステップS2)。起動条件には、主ポンプ10が運転中でない、吸込水槽2の内水位が規定水位以下、管理運転用開閉弁であるドレン弁8dが閉、といった排水運転が実施されない条件と管理運転の準備が完了している条件の確認が含まれる。
【0064】
次に、制御装置100は、空気圧縮機23を駆動させる(ステップS3)。そして、制御装置100は、空気槽8の圧力レベルが高位レベル(規定圧力)になっているか否かを確認する(ステップS4)。そして、圧力計8aが高位レベルを検知したら、制御装置100は、空気圧縮機23を停止させる(ステップS5)。
【0065】
図9に示すように、次に、制御装置100は、ドレン弁8dを開き(ステップS6)、空気槽8の圧力レベルが低位レベル(空気圧縮機起動条件)になる(ステップS7)までの圧力低下時間ΔT1を計測する。
その後、制御装置100は、空気圧縮機23を起動する(ステップS8)と同時に、ドレン弁8dを閉じる(ステップS8-1)。なお、ドレン弁8dを閉じてから、空気圧縮機23を起動してもよい。
【0066】
次に、制御装置100は、空気圧縮機23を起動し(ステップS8)、空気槽8の圧力レベルが高位レベルになる(ステップS9)までの圧力上昇時間ΔT2を計測する。そして、圧力計8aが高位レベルを検知したら、制御装置100は、空気圧縮機23を停止させる。
【0067】
その後、制御装置100は、その状態(ステップS10)を一定時間保ち、空気槽8の圧力レベルが所定の圧力レベル(高位レベル未満、低位レベルより高い)になる(ステップS11)までの自然圧力低下時間ΔT3を計測する。なお、自然圧力低下時間ΔT3の計測は、管理運転モードでなくても個別に実施してもよい。但し、自然圧力低下時間ΔT3の計測中に、始動弁50bが開いた、若しくは、空気圧縮機23が運転した場合、自然圧力低下時間ΔT3をリセットするとよい。
最後に、制御装置100は、ΔT1~ΔT3のデータを記憶部に記憶すると共に、当該データに基づき、内燃機関始動用空気供給システム50の異常の有無を判定し、異常がある場合には、図示しない表示装置に、故障表示などをさせる。
以上により、内燃機関始動用空気供給システム50の管理運転が終了する。
【0068】
制御装置100は、圧力上昇時間ΔT2と、予め設定した基準圧力上昇時間とを比較して、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知する。具体的には、上述した第2実施形態と同様(図6と同様)に、基準圧力上昇時間に対し許容値(許容範囲)を設定し、累計時間の実測値が、当該許容値の下方閾値または上方閾値を超えたときに、内燃機関始動用空気供給システム50に異常が発生したと判定するとよい(図6参照)。例えば、圧力上昇時間ΔT2が長くなる場合(+方向)、空気圧縮機23の劣化、空気供給ライン50aの各種弁類(逆止弁など)の固着や、空気槽8からの空気漏れ、空気槽8より上流側の空気供給ライン50aにおける空気漏れが発生している可能性がある。
なお、空気槽8に予備基が設置される場合、その予備基(予備空気槽)に切り替えて異常が再検出されるか確認してもよい。再検出されなかった場合には、その空気槽8に異常(空気漏れ)がある事が特定できる。
【0069】
図10は、第3実施形態に係る基準圧力上昇時間の設定手法(内燃機関4(主ポンプ10)が1台の場合)の一例を示す図である。
基準圧力上昇時間(すなわち、空気槽8の充気時間tの理論値)は、空気槽8の容量に基づいて変化する。例えば、場内の気圧をP0[MPa]、場内の温度をT0[℃]とし、空気槽8内の初期の圧力をP1(<Pmax)[MPa]、空気槽8内の初期の温度をT1(=T0)[℃]、空気槽8(及び空気供給ライン50aの容量)をV[m]とする。
【0070】
この状態から、空気槽8内の圧力をP2(=Pmax)[MPa]、空気槽8内の温度をT2(=T0)[℃](すなわち、充気前後で場内温度と等温に落ち着くと仮定する)になるまでの空気槽8への充気量をV1とすると、理想気体の条件下では、ダルトンの法則、ボイル・シャルルの法則から、以下の関係式(1)が成り立ち、V1を式(2)で算出することができる。
【0071】
【数1】
【0072】
【数2】
【0073】
そして、空気圧縮機23からの平均充気量をV´[m/min]とすると、充気時間t(基準圧力上昇時間)は、式(3)で算出することができる。なお、平均充気量は、設置されている空気圧縮機23の特性曲線から算出可能である。
【0074】
【数3】
【0075】
図11は、第3実施形態に係る基準圧力上昇時間の設定手法(内燃機関4(主ポンプ10)が複数台の場合)の一例を示す図である。
本実施形態のように、内燃機関4が複数台あり、内燃機関4ごとに始動用空気供給系統51を備え、始動用空気供給系統51のそれぞれが、空気供給ライン50aを介して空気圧縮機23と接続されている場合、基準圧力上昇時間(接続された全ての空気槽8の充気時間tの理論値)は、次のように設定するとよい。
【0076】
仮に、場内の気圧をP0[MPa]、場内の温度をT[℃]とし、1号機の内燃機関4に始動用空気を供給する空気槽8の圧力をP1[MPa]、温度をT[℃]とし、2号機の内燃機関4に始動用空気を供給する空気槽8の圧力をP2(>P1)[MPa]、温度をT[℃]とし、3号機の内燃機関4に始動用空気を供給する空気槽8の圧力をP3(>P2)[MPa]、温度をT[℃]とする。また、1~3号機の空気槽8の容量Vは等しいものとする。
【0077】
図12及び図13は、第3実施形態に係る基準圧力上昇時間の設定手法(内燃機関4(主ポンプ10)が複数台の場合)の計算手法を説明するための説明図である。
図12上図に示すように、P1は空気圧縮機起動条件(低位レベル)であり、Pmaxは規定圧力(高位レベル)であるとする。また、このとき、P1<P2<P3<Pmaxの関係が成立しているものとする。この状態から図12下図に示すように、1号機の空気槽8の圧力がP2に上昇するまでの充気量V1-1は、式(4)で算出することができる。
【0078】
【数4】
【0079】
そして、空気圧縮機23からの平均充気量をV´1-1[m/min]とすると、充気時間t1-1は、式(5)で算出することができる。
【0080】
【数5】
【0081】
また、図12下図に示す状態から図13上図に示すように、1~2号機の空気槽8の圧力がP3に上昇するまでの充気量V1-2は、式(6)で算出することができる。
【0082】
【数6】
【0083】
そして、空気圧縮機23からの平均充気量をV´1-2[m/min]とすると、充気時間t1-2は、式(7)で算出することができる。
【0084】
【数7】
【0085】
また、図13上図に示す状態から図13下図に示すように、1~3号機の空気槽8の圧力がPmaxに上昇するまでの充気量V1-3は、式(8)で算出することができる。
【0086】
【数8】
【0087】
そして、空気圧縮機23からの平均充気量をV´1-3[m/min]とすると、充気時間t1-3は、式(9)で算出することができる。
【0088】
【数9】
【0089】
結論として、総充気時間t(基準圧力上昇時間)は、式(10)で算出することができる。
【0090】
【数10】
【0091】
このように、上述した第3実施形態によれば、内燃機関4に始動用空気を供給する空気槽8と、空気槽8に始動用空気を充気する空気圧縮機23と、空気槽8の圧力レベルのうち、少なくとも高位レベルと低位レベルを計測する圧力計8aと、圧力計8aの計測結果に基づいて、空気圧縮機23を駆動させる制御装置100と、を備える、内燃機関始動用空気供給システム50であって、制御装置100は、空気圧縮機23を駆動させ、空気槽8の圧力レベルが低位レベルから高位レベルになるまでの圧力上昇時間ΔT2を計測すると共に、当該圧力上昇時間に基づいて、システムの異常を検知する、という構成を採用することによって、内燃機関4の始動不良を未然に防ぐことが可能となる。すなわち、空気槽8の圧力レベルが低位レベルから高位レベルになるまでの圧力上昇時間ΔT2を計測することで、システムの異常の有無の簡易判定が可能となり、仮に、圧力上昇時間ΔT2が増加などするのであれば、当該異常発生箇所を、空気圧縮機23から空気槽8までの間に絞り込むことができる。したがって、内燃機関4の始動不良となる前に、早期に異常を検知し、整備や修繕などにより機能の回復を図ることで、内燃機関4の始動不良を未然に防ぐことが可能となる。
【0092】
また、本実施形態のように、内燃機関4が複数台設置されており、内燃機関4ごとに、空気槽8、圧力計8aを含む始動用空気供給系統51を備え、始動用空気供給系統51のそれぞれが、空気圧縮機23と接続されている場合、制御装置100は、空気圧縮機23を駆動させ、始動用空気供給系統51の全てにおいて空気槽8の圧力レベルが低位レベルから高位レベルになるまでの合計の圧力上昇時間ΔT2を計測すると共に、当該合計の圧力上昇時間と基準圧力上昇時間(上述した総充気時間t)とを比較して、システムの異常を検知するとよい。これにより、全ての始動用空気供給系統51に対して、一回の管理運転でシステムの異常を検知することが可能となる。
【0093】
なお、始動用空気供給系統51ごとに、システムの異常検知を行う場合には、図14に示すように、開閉弁52に代えて管理用電磁弁52A(切替装置)を設置するとよい。管理用電磁弁52Aによって空気圧縮機23との接続を切り替え、始動用空気供給系統51ごとに圧力上昇時間ΔT2を計測すると共に、当該圧力上昇時間ΔT2同士を比較して、システムの異常を検知することにより、異常の原因が、空気圧縮機23側なのか空気供給ライン50a側にあるのかを特定することができる。例えば、空気圧縮機23が共通で、始動用空気供給系統51ごとに圧力上昇時間ΔT2が異なる場合、異常の原因は、始動用空気供給系統51側にあると判定することができる。
【0094】
また、図9に示すように、圧力低下時間ΔT1を計測し、監視することにより、例えば、圧力低下時間ΔT1が長くなった場合、空気槽8の二次側での固着・詰まりなどの異常を検知することができる。
さらに、図9に示すように、自然圧力低下時間ΔT3を計測し、例えば、号機ごとで比較することで、空気の漏れが自然的なものか、空気供給ライン50aの破損によるものかを判定することができる。
なお、上述した圧力低下時間ΔT1、圧力上昇時間ΔT2、自然圧力低下時間ΔT3の計測は、管理運転時に限らず、通常運転時に行ってもよい。
【0095】
なお、実排水運転終了後、空気槽8の圧力が規定圧力を下回る号機が有る場合、空気圧縮機23を起動して、全台規定圧力まで回復させることで、内燃機関4の始動不良を未然に防ぐことが可能となる。特に、空気槽8への充気には時間を要するため(空気槽8を充気する時間は一台当たり30~60min程度)、予め充気しておけば、実排水運転時において万一、始動失敗した場合でも、リトライ回数が確保され、信頼性を確保できる。
【0096】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0097】
第4実施形態では、制御装置100が、空気槽8の内圧の自然低下に基づいて、システムの異常を検知する点で、上記実施形態と異なる。
【0098】
図15は、第4実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
図15に示すように、制御装置100は、図示しないタイマー等により予め設定された点検タイミングとなったら、空気槽8の内圧の自然低下の検知を開始する(ステップS21)。先ず、制御装置100は、空気圧縮機23を駆動させ、検知対象の空気槽8(No.X)を満充気状態(例えば3.0MPa)とする(ステップS22)。空気槽8が満充気状態となったら、制御装置100は、空気圧縮機23を停止させる(ステップS23)。
【0099】
次に、制御装置100は、空気圧縮機23の停止から経過した時間の計測を開始すると共に、空気槽8が設置されている室内温度の計測を開始する(ステップS24)。なお、この間に、空気槽8から内燃機関4に始動用空気が供給された場合(ステップS25が「Yes」の場合)、空気槽8の内圧の低下は自然低下でなくなるため、制御装置100は、経過時間と室内温度の計測をリセットし(ステップS27)、ステップS21に戻る。
【0100】
一方、この間に空気槽8から内燃機関4に始動用空気が供給されなかった場合(ステップS25が「No」の場合)、制御装置100は、経過時間と室内温度の計測の開始から予め設定されたシステム異常の不検知の設定日数(例えば10日)が経過したか否かを判定する(ステップS26)。計測開始から不検知の設定日数が経過した場合(ステップS26が「Yes」の場合)、制御装置100は、システムに異常は無いとして、経過時間と室内温度の計測をリセットし(ステップS27)、ステップS21に戻る。
【0101】
制御装置100は、計測開始から不検知の設定日数が経過するまでの間に(ステップS26が「No」の場合)、空気槽8の内圧が管理用の閾値(例えば2.7MPa)以下に低下したか否かを判定する(ステップS28)。空気槽8の内圧が管理用の閾値より大きい場合(ステップS28が「No」の場合)、ステップS25に戻る。なお、内温度の影響で、空気槽8の内圧が低下する場合もあるため、管理用の閾値はそれを考慮した値とするとよい。つまり、制御装置100は、室内温度に基づいて、管理用の閾値を補正してもよい。
【0102】
一方、空気槽8の内圧が管理用の閾値以下に低下した場合(ステップS28が「Yes」の場合)、制御装置100は、図示しない表示装置に、空気槽8から空気漏れが生じているなどの警告表示などをさせる(ステップS29)と共に、空気漏れの発生日時、経過時間、室内温度などを表示させる(ステップS30)。なお、このとき、経過時間と室内温度の計測を停止すると共に、計測値をリセットしてもよい。
【0103】
また、制御装置100は、空気槽8の内圧が著しく低下した場合、ステップS31に移行してもよい。ステップS31では、空気槽8の内圧が第2の管理用の閾値(例えば2.5MPa)以下に低下したか否かを判定する。この第2の管理用の閾値は、ステップS28の管理用の閾値よりも小さい値に設定するとよい。これにより、ステップS28では、軽度のシステム異常(軽故障)、ステップS31では、重度のシステム異常(重故障)を検知することができる。
【0104】
空気槽8の内圧が第2の管理用の閾値より大きい場合(ステップS31が「No」の場合)、ステップS25に戻る。一方、空気槽8の内圧が第2の管理用の閾値以下に低下した場合(ステップS31が「Yes」の場合)、制御装置100は、図示しない表示装置に、空気槽8から重度の空気漏れが生じているなどの第2警告表示などをさせる(ステップS29)と共に、空気漏れの発生日時、経過時間、室内温度などを表示させる(ステップS30)。なお、このとき、経過時間と室内温度の計測を停止すると共に、計測値をリセットしてもよい。
以上により、空気槽8の内圧の自然低下に基づいて、システムの異常を検知することができる。
【0105】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0106】
第5実施形態では、制御装置100が、空気圧縮機23による空気槽8の充気時間に基づいて、システムの異常を検知する点で、上記実施形態と異なる。
【0107】
図16は、第5実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
図16に示すように、先ず、制御装置100は、図示しないタイマー等により予め設定された点検タイミングとなったら、運転モードを管理運転モードに切り替える(ステップS41)。このとき、空気槽8(No.A、No.B)の内圧は、手動または自動制御により、計測開始時の所定の内圧(後述するステップS44,S45の2.7MPa)よりも下げるとよい。
【0108】
次に、空気圧縮機23を手動起動させ(ステップS42)、管理運転モードの起動条件が成立すると、制御装置100は、空気圧縮機23による空気槽8の充気運転を開始させる(ステップS43)。空気圧縮機23の充気運転によって、空気槽8(No.A、No.B)の内圧が、所定の内圧(例えば2.7MPa)以上になったら(ステップS44,S45)、制御装置100は、2.7MPaから3.0MPa(満充気)までの充気時間の計測を開始する(ステップS46)と共に、空気槽8が設置されている室内温度の計測を開始する(ステップS47)。
【0109】
空気槽8(No.A、No.B)の内圧が、満充気(例えば3.0MPa以上)になったら(ステップS48,S49)、制御装置100は、空気圧縮機23を停止させる(ステップS50)。そして、制御装置100は、図示しない表示装置に、検知の日時、充気時間、運転した空気圧縮機23のナンバー、室内温度などを表示する(ステップS51)。さらに、制御装置100は、経過時間と室内温度の計測を停止し、計測値をリセットする(ステップS52)。
【0110】
なお、空気槽8の充気時間が、所定の警告値以上の場合(ステップS53)、充気時間が通常よりも長いとして、制御装置100は、図示しない表示装置に、充気時間の異常を表示する警告を出させる(ステップS54)。そして、制御装置100は、図示しない表示装置に、検知の日時、充気時間、運転した空気圧縮機23のナンバー、室内温度などを表示させる(ステップS55)。
【0111】
さらに、空気槽8の充気時間が、第2警告値(ステップS53の警告値よりも大きい値)以上の場合(ステップS56)、充気時間が通常よりも異常に長いとして、制御装置100は、図示しない表示装置に、充気時間の異常を表示する第2警告(重故障警告など)を出させる(ステップS57)。そして、制御装置100は、図示しない表示装置に、検知の日時、充気時間、運転した空気圧縮機23のナンバー、室内温度などを表示させる(ステップS58)。
以上により、空気圧縮機23による空気槽8の充気時間に基づいて、システムの異常を検知することができる。
【0112】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0113】
第6実施形態では、制御装置100が、空気圧縮機23の連続運転時間に基づいて、システムの異常を検知する点で、上記実施形態と異なる。
【0114】
図17は、第6実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
図17に示すように、先ず、制御装置100は、運転モードを自動運転モードに切り替える(ステップS61)。次に、空気槽9の圧力レベルが低位レベル(空気圧縮機起動条件)になり、空気圧縮機23が起動したら(ステップS62)、制御装置100は、空気圧縮機23による連続運転時間の計測を開始する(ステップS63)。
【0115】
空気圧縮機23による運転によって空気槽8の圧力レベルが低位レベルから高位レベルになり、空気圧縮機23が停止したら(ステップS64)、制御装置100は、空気圧縮機23の連続運転時間の計測を停止し、計測値をリセットする(ステップS65)。
【0116】
一方で、空気圧縮機23の連続運転時間(例えば、通常1時間程度)が、予め設定した最大連続運転時間(例えば、2時間)を超過した場合(ステップS66)、制御装置100は、図示しない表示装置に、連続運転時間の異常を表示する警告を出させる(ステップS67)。そして、制御装置100は、図示しない表示装置に、検知の日時、連続運転時間、室内温度などを表示させる(ステップS68)。
以上により、空気圧縮機23の連続運転時間に基づいて、システムの異常を検知することができる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0118】
例えば、上述した第1実施形態では、内燃機関4の始動回数に基づいて、内燃機関始動用空気供給システム50の異常を検知すると説明したが、内燃機関4の停止時においても、始動時よりも消費量は少ないが圧縮空気を消費するため、始動回数に加え、停止回数もカウントすることで、より精度の高い管理が可能となる。
【0119】
また、例えば、第1実施形態においても、上述した第2実施形態と同様に、温度計56に基づいて、基準始動回数を補正してもよい。例えば、制御装置100は、気温が0~10℃で基準始動回数が2回とし、気温が10℃~で基準始動回数が3回としてもよい。
【0120】
また、例えば、第1~第6実施形態の構成及び制御フローの置換、組み合わせは適宜行うことができる。
【符号の説明】
【0121】
1…ポンプ機場(ポンプ設備)、4…内燃機関、4a…駆動軸、4b…熱交換器、5…減速機、8…空気槽、8a…圧力計、8b…排出弁、8c…充気弁、8d…ドレン弁、10…主ポンプ(ポンプ)、20…補機、23…空気圧縮機、23a…電動機、23b…供給弁、50…内燃機関始動用空気供給システム、50a…空気供給ライン(空気配管)、50b…始動弁(開閉装置)、51…始動用空気供給系統、52…開閉弁、52A…管理用電磁弁(切替装置)、53…ドレン分離器、54…温度計、55…圧力計、56…温度計、60…検査用気体供給タンク、61…バルブ、62…検査用気体供給ライン、100…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
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