(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】シリカゾルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/141 20060101AFI20221122BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C01B33/141
B01J27/24 M
(21)【出願番号】P 2019064631
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌明
(72)【発明者】
【氏名】篠田 潤
(72)【発明者】
【氏名】芦▲高▼ 圭史
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022552(WO,A1)
【文献】特開昭63-143901(JP,A)
【文献】中国実用新案第202342918(CN,U)
【文献】特開2013-014489(JP,A)
【文献】特開平01-278413(JP,A)
【文献】特開2005-060219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/113-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中でアルカリ触媒を用いてアルコキシシランまたはその縮合物を加水分解および重縮合させて、シリカゾル反応液を作製する工程と、
前記シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程、および前記シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により水置換する工程の少なくとも一方と、
を含む、シリカゾルの製造方法
であって、
前記超音波霧化分離法における超音波の振動数は、1.0MHz以上10.0MHz以下である、シリカゾルの製造方法。
【請求項2】
前記シリカゾル反応液を作製する工程は、
前記アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む液(A)に、
前記アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む液(B)と、水を含むpH5.0以上8.0未満の液(C1)と、を混合することを含む、請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項3】
前記シリカゾル反応液を作製する工程は、
前記アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む液(A)に、
前記アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む液(B)と、水を含みかつアルカリ触媒を含まない液(C2)と、を混合することを含む、請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項4】
前記アルコキシシランが、テトラメトキシシランである、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ触媒が、アンモニアおよびアンモニウム塩の少なくとも一方である、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ触媒が、アンモニアである、請求項5に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項7】
前記第1および第2の有機溶媒が、メタノールである、請求項2~6のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカゾルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカゾルの製造方法としては、水ガラスと呼ばれる珪酸ナトリウム溶液を出発原料とする製造方法が知られている。この製造方法では、珪酸ナトリウム溶液は、陽イオン交換樹脂で1度処理され、ナトリウムイオンを始めとするイオンを取り除くことにより出発原料としての純度を上昇させた後、シリカゾルの製造に用いられる。
【0003】
しかしながら、上記のような製造方法では、イオン交換による出発原料の高純度化に限界がある。
【0004】
そこで、高純度シリカゾルを得る方法として、特許文献1には、(a)加水分解可能なケイ素化合物を加水分解及び重縮合させてシリカゾルを製造する第一の工程と、(b)第一の工程で得られたシリカゾルを粒径に応じて一定シリカ濃度以下で濃縮並びにシリカゾル中の分散媒及びアルカリ触媒を水で置換し、pHを6.0~9.0とする第二の工程と、を含むシリカゾルの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、シリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇を招き、シリカゾルの高濃度化が困難となり、シリカゾルの経済性が低下するという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、シリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇を抑制または防止できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を積み重ねた。その結果、溶媒中でアルカリ触媒を用いてアルコキシシランまたはその縮合物を加水分解および重縮合させて、シリカゾル反応液を作製する工程と、前記シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程、および前記シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により水置換する工程の少なくとも一方と、を含む、シリカゾルの製造方法により、上記課題が解決されうることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇を抑制または防止できる手段が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】超音波霧化分離装置の一例を示す概略図である。
【
図2】超音波霧化分離装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、溶媒中でアルカリ触媒を用いてアルコキシシランまたはその縮合物を加水分解および重縮合させて、シリカゾル反応液を作製する工程と、前記シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程、および前記シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により水置換する工程の少なくとも一方と、を含む、シリカゾルの製造方法である。
【0012】
特許文献1に記載の技術では、シリカゾルを得た後に、加熱蒸留によりシリカゾルの濃縮および水置換を行っている。しかしながら、この技術では、シリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇を招き、シリカゾルの高濃度化が困難となり、シリカゾルの経済性が低下するという問題があることを、本発明者らは知見した。
【0013】
本発明者らが上記問題の原因を究明すべく検討を進めたところ、濃縮および水置換の工程で行われる加熱蒸留により、シリカゾル中のシリカ粒子を分散させる効果を有するアルカリ触媒も取り除かれてしまうという現象が起きていることを突き止めた。このため、シリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇を招いているのではないかと考えた。
【0014】
そこで、本発明者らがさらに検討を進めた結果、加水分解および重縮合反応後に得られるシリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程、およびシリカゾル反応液中の有機溶媒を超音波霧化分離法により水置換する工程の少なくとも一方を含む製造方法により、上記問題が解決することを見出した。
【0015】
本発明に係るシリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程、およびシリカゾル反応液中の有機溶媒を超音波霧化分離法により水置換する工程においては、従来の加熱蒸留のような、溶媒の沸点付近まで加熱するという操作を行わない。これにより、最終的に得られるシリカゾル中には、シリカ粒子を分散させる効果を有するアルカリ触媒が残存する。したがって、最終的に得られるシリカゾル中のシリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇を抑制または防止することができ、シリカゾルの高濃度化が容易となり、またシリカゾルの経済性を向上させることができる。
【0016】
ただし、上記メカニズムは推測に過ぎず、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
【0017】
以下、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0018】
[シリカゾル反応液を作製する工程]
本発明の一実施形態による製造方法は、溶媒中でアルカリ触媒を用いてアルコキシシランまたはその縮合物を加水分解および重縮合させてシリカゾル反応液を作製する工程を含む。この方法としては、特に制限されず、例えば、
(1)アルコキシシランおよび有機溶媒を含む液を、アルカリ触媒、水および有機溶媒を含む液に添加し、加水分解および重縮合を行う方法(2液反応型)
(2)アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む液(A)(本明細書中、「(A)液」とも称する)に、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む液(B)(本明細書中、「(B)液」とも称する)と、水を含むpH5.0以上8.0未満の液(C1)(本明細書中、「(C1)液」とも称する)と、を混合し、加水分解および重縮合を行う方法(3液反応型)
(3)アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む液(A)に、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む液(B)と、水を含みかつアルカリ触媒を含まない液(C2)(本明細書中、「(C2)液」とも称する)と、を混合し、加水分解および重縮合を行う方法(3液反応型)
等が挙げられる。これらの中でも、粒子径の揃ったシリカ粒子を安定して得られるという観点から、上記(2)または(3)の3液反応型の方法が好ましい。よって、以下では、上記(2)および(3)の方法について、詳細に説明する。なお、(2)の方法を「(2)法」、(3)の方法を「(3)法」とも称する。
【0019】
[アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む液(A)]
(2)法および(3)法の(A)液は共通しており、以下の説明も共通である。
【0020】
(A)液は、アルカリ触媒と水と第1の有機溶媒とを混合して調製することができ、さらに他の成分を含むことができる。
【0021】
(A)液に含まれるアルカリ触媒としては、従来公知のものを使用することができる。前記アルカリ触媒は、金属不純物等の混入を極力低減できるという観点から、アンモニア、およびアンモニウム塩の少なくとも一方であることが好ましく、優れた触媒作用の観点から、アンモニアがより好ましい。該アルカリ触媒は、単独でもまたは2種以上を混合しても用いることができる。
【0022】
(A)液に含まれる水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水を使用することが好ましい。
【0023】
(A)液に含まれる第1の有機溶媒としては、親水性の有機溶媒が用いられることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
【0024】
前記第1の有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。アルコール類を用いることで、シリカゾル反応液を水置換する際に、アルコール類と水とを容易に置換することができるという効果がある。有機溶媒の回収や再利用の観点から、アルコキシシランの加水分解により生じるアルコールと同一種類のアルコールを用いることが好ましい。
【0025】
アルコール類の中でもとりわけ、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの少なくとも一種がより好ましいが、アルコキシシランとしてテトラメトキシシランを用いる場合、第1の有機溶媒は、メタノールであることが好ましい。
【0026】
前記第1の有機溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合しても用いることができる。
【0027】
(A)液中のアルカリ触媒、水および第1の有機触媒の含有量は、特に制限されないが、所望の粒子径に合わせて、用いるアルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を変更でき、それぞれの含有量も適宜調整できる。本工程においては、(A)液中のアルカリ触媒の含有量を制御することにより、シリカ粒子の粒子径を制御することができる。例えば、アルカリ触媒としてアンモニアを用いる場合、アンモニアの含有量の下限は、加水分解触媒としての作用またはシリカ粒子の成長の観点から、(A)液全量(100質量%)に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、アンモニアの含有量の上限は特に制限はされないが、生産性とコストの観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。水の含有量の下限は、反応に用いるアルコキシシランまたはその縮合物の量に合わせて調整されるが、アルコキシシランの加水分解の観点から、(A)液全量(100質量%)に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量の上限は、後述の(B)液に対する相溶性の観点で、(A)液全量(100質量%)に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。第1の有機溶媒としてメタノールを用いる場合、メタノールの含有量の下限は、(B)液に対する相溶性の観点で、(A)液全量(100質量%)に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、メタノールの含有量の上限は、分散性の観点で、(A)液全量(100質量%)に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
[アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む液(B)]
(2)法および(3)法の(B)液は、共通しており、以下の説明も共通である。
【0029】
アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む液(B)は、アルコキシシランまたはその縮合物と第2の有機溶媒とを混合して調製することができる。アルコキシシランまたはその縮合物の濃度が高すぎることにより反応が激しく、ゲル状物が発生しやすくなること、および混和性の観点から、アルコキシシランまたはその縮合物を有機溶媒に溶解して調製することが好ましい。
【0030】
(B)液は、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含むことができる。
【0031】
(B)液に含まれるアルコキシシランまたはその縮合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、またはそれらの縮合物が挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。中でも、適当な加水分解反応性を有する観点から、テトラメトキシシランが好ましい。
【0032】
(B)液に含まれる第2の有機溶媒としては、親水性の有機溶媒が用いられることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
【0033】
前記第2の有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。アルコール類を用いることで、シリカゾル反応液を水置換する際に、水と容易に置換することができるという効果がある。また、有機溶媒の回収や再利用の観点から、アルコキシシランの加水分解により生じるアルコールと同一種類のアルコールを用いることが好ましい。アルコール類の中でもとりわけ、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどがより好ましいが、例えば、アルコキシシランとしてテトラメトキシシランを用いる場合、第2の有機溶媒は、メタノールであることが好ましい。前記第2の有機溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合しても用いることができる。また、(B)液に含まれる第2の有機溶媒は、有機溶媒の回収や再利用の観点から、(A)液に含まれる第1の有機溶媒と同じであることが好ましい。
【0034】
(B)液中のアルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒の含有量は、特に制限されず、所望の形状や粒子径などに合わせて適宜調整できる。例えば、アルコキシシランとしてテトラメトキシシランを、および第2の有機溶媒としてメタノールを用いた場合、テトラメトキシシランの含有量の上限は、(B)液の全量(100質量%)に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。また、テトラメトキシシランの含有量の下限は、(B)液の全量(100質量%)に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。このような含有量であれば、(A)液と混合した際の混和性が高まり、ゲル状物を生成しにくく、高濃度のシリカゾルを作製できる。
【0035】
[水を含むpH5.0以上8.0未満の液(C1)]
(2)法における(C1)液は、水を含みpH5.0以上8.0未満の液である。(C1)液は、水に加え、pH5.0以上8.0未満の範囲で、さらに他の成分を含むことができる。
【0036】
(C1)液のpHは、5.0以上8.0未満である。(C1)液のpHが8.0未満であると、反応液中において局所的に水酸化物イオンの濃度が高まることを抑制できるため、安定的に反応することができる。また、pHが5.0以上であると、反応液のゲル化を抑えることができる。(C1)液のpHは、反応液のゲル化をより抑えるとの観点から、好ましくは5.5以上であり、より好ましくは6.0以上である。
【0037】
(C1)液に含まれる水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水が好ましい。また、(C1)液は、得られるシリカ粒子の大きさを揃える、およびシリカ粒子の濃度を高濃度化できるとの観点から、アルカリ触媒を含まないことが好ましい。
【0038】
[水を含みかつアルカリ触媒を含まない液(C2)]
(3)法における(C2)液は、水を含みかつアルカリ触媒を含まない。(C2)液がアルカリ触媒を含まないことで、反応液中のアルカリ触媒の濃度が局所的に高くなることを抑制できるため、粒子径の揃ったシリカ粒子を得ることができる。
【0039】
(C2)液に含まれる水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水が好ましい。
【0040】
[反応液を作製する工程]
本工程においては、(A)液に、(B)液と、(C)液(本明細書中、(C)液とは、(C1)液および(C2)液の少なくとも一方を含む、包括的な概念とする)と、を混合して反応液を作製する。反応液中でアルコキシシランまたはその縮合物が加水分解および重縮合が進行することで、シリカゾル反応液が生成される。
【0041】
なお、本明細書中、「反応液」とは、アルコキシシランまたはその縮合物の加水分解および重縮合がこれから進行する状態(進行する前)の液を意味する。「シリカゾル反応液」とは、加水分解および重縮合が終了し、濃縮工程または水置換工程を行う前の液を意味する。「シリカゾル」とは、濃縮工程または水置換工程を行った後に得られる生成物を意味する。
【0042】
(A)液に、(B)液と(C)液とを混合する際の、(B)液および(C)液の添加方法は特に制限されない。それぞれほぼ一定量を同時に(A)液に添加してもよいし、(B)液と(C)液とを交互に(A)液に添加してもよい。あるいは、(B)液と(C)液とをアトランダムに添加してもよい。これら添加方法の中でも、反応液中の合成反応に用いる水の量の変化を抑制する観点から、(B)液および(C)液を同時に添加する方法を用いることが好ましく、(B)液および(C)液をそれぞれ一定量で同時に添加する方法を用いることがより好ましい。
【0043】
また、(A)液への(B)液および(C)液の添加方法は、反応液中のアルカリ触媒の濃度が局所的に高くなることを抑制できるとの観点から、(A)液に(B)液および(C)液を分割添加または連続添加する方法が好ましい。
【0044】
分割添加とは、(A)液に(B)液および(C)液を添加するに際し、(B)液および(C)液の全量を一括して添加するのではなく、2回以上に分けて非連続的にまたは連続的に添加することを意味する。分割添加の具体例としては、滴下が挙げられる。
【0045】
連続添加とは、(A)液に(B)液および(C)液を添加するに際し、(B)液および(C)液の全量を一括して添加するのではなく、添加を中断せずに連続的に添加することを意味する。
【0046】
(B)液や(C)液の液量によっても異なるが、(B)液および(C)液の全量を(A)液に添加する際に要する時間は、例えば10分以上であればよく、好ましくは15分以上であり、より好ましくは20分以上である。(B)液および(C)液を(A)液に添加する際に一定以上の時間をかけずに短時間で全量を投入すること、または(B)液および(C)液の全量を一気に(A)液に投入することは、反応液中での各成分の濃度の偏りが生じる虞がある。また、(B)液および(C)液の全量を(A)液に添加する際に要する時間の上限は、特に制限されず、生産性を考慮し、且つ、所望の粒子径に合わせて適宜調整することができる。
【0047】
(A)液に、(B)液と(C)液とを混合する際の、(B)液と(C)液の好ましい添加方法は、シリカ粒子の粒子径を揃えるとの観点から、(B)液と(C)液とを、それぞれほぼ一定量で同時に、且つ一定以上の時間で添加が完了する方法である。
【0048】
反応液を作製する際の(A)液、(B)液および(C)液の温度は、特に制限されない。ここで、反応液を作製する際の(A)液、(B)液および(C)液の温度とは、(A)液に、(B)液と(C)液とを添加する際の各液の温度である。反応液(各液)の温度を制御することにより、シリカ粒子の粒子径を制御できる。
【0049】
各液の温度の下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。また、各液の温度の上限は、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。温度が0℃以上であると、各液の凍結を防ぐことができる。一方で温度が70℃以下であると、有機溶媒の揮発を防ぐことができる。
【0050】
また、(A)液と(B)液と(C)液との温度は、同じでもよく、異なってもよいが、シリカ粒子の粒子径を揃える観点から、(A)液と(B)液と(C)液との温度の差が、20℃以内であることが好ましい。ここで、温度の差は、3液の中で、最も高い温度と、最も低い温度との差を意味する。
【0051】
本工程において、加水分解および重縮合反応は、減圧下、常圧下、加圧下のいずれの圧力条件下で行なうことも可能である。ただし、生産コストの観点から、常圧下で実施することが好ましい。反応温度、反応時間等は、従来公知の知見を適宜採用することができる。
【0052】
反応液中のアルコキシシランまたはその縮合物、水、アルカリ触媒ならびに第1および第2の有機溶媒のモル比は、特に制限されず、(A)液に含まれるアルカリ触媒や(B)液に含まれるアルコキシシランまたはその縮合物の含有量により、適宜調整することができる。
【0053】
シリカゾル反応液中のシリカ粒子の形状は、特に制限されず、球状であってもよく、非球状であってもよい。
【0054】
[シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程、シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により水置換する工程]
本発明の製造方法は、上記工程で得られたシリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程(以下、単に「濃縮工程」とも称する)、およびシリカゾル反応液を超音波霧化分離法により水置換する工程(以下、単に「水置換工程」とも称する)の少なくとも一方を含む。
【0055】
濃縮工程は、シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程である。水置換工程は、シリカゾル反応液中の有機溶媒を超音波霧化分離法により水置換する工程である。本発明の製造方法では、これら2つの工程のうち少なくとも一方を行う。これら2つの工程においては、従来の加熱蒸留のような、溶媒の沸点付近まで加熱するという操作を行わない。これにより、最終的に得られるシリカゾル中には、シリカ粒子を分散させる効果を有するアルカリ触媒が残存する。したがって、最終的に得られるシリカゾル中のシリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇を抑制または防止することができ、シリカゾルの高濃度化が容易となり、またシリカゾルの経済性を向上させることができる。
【0056】
本発明の製造方法においては、濃縮工程のみを行ってもよいし、水置換工程のみを行ってもよいし、濃縮工程を行った後に濃縮した液中の有機溶媒を水で置換する水置換工程を行ってもよいし、水置換工程を行った後に水で置換した液を濃縮する濃縮工程を行ってもよい。また、濃縮工程を複数回行ってもよく、その際濃縮工程と濃縮工程の間で水置換工程を行ってもよく、例えば、濃縮工程後、濃縮した液中の有機溶媒を水で置換する水置換工程を行い、さらにその水で置換した液を濃縮する濃縮工程を行ってもよい。
【0057】
<超音波霧化分離法>
上記濃縮工程および水置換工程で用いられる超音波霧化分離法は、溶質を含む溶液を超音波振動させてミストに霧化し、そのミストを凝集させて回収し、高濃度の溶質を含む溶液を分離する方法である。超音波霧化分離法は、例えば、
図1に示すような超音波霧化分離装置100を用いて行われる。以下、超音波霧化分離法を用いた濃縮工程について、
図1を適宜参照しながら、説明する。なお、
図2に示す超音波霧化分離装置200は、冷却回収塔が2基であること以外は
図1と同様の構成であるため、
図1を参照しながら説明する。
【0058】
図1は、超音波霧化分離装置の一例を示す概略図である。
図1に示す超音波霧化分離装置100は、シリカゾル反応液が供給される超音波霧化室1と、超音波霧化室1中のシリカゾル反応液を超音波振動させてミストに霧化する超音波振動子2と、超音波振動子2で超音波振動されて液面にできる液柱Pに搬送気体を吹き付けるノズル3と、供給されたミストを遠心分離するサイクロン5と、を備える。
【0059】
超音波霧化室1のシリカゾル反応液は、超音波振動されると、超音波霧化室1のシリカゾル反応液の一部がミストとして液面から霧化される。効率よくミストを発生させるには、シリカゾル反応液の液面を超音波振動させる。このことを実現するために、
図1に示す超音波霧化室1においては、シリカゾル反応液を充填している超音波霧化室の底に、超音波振動子2を上向きに配設することが好ましい。超音波振動子2は、底から液面に向かって上向きに超音波を放射して、液面を超音波振動させる。
【0060】
図1に示す超音波霧化室1は、超音波振動子2と、超音波振動子を超音波振動させる超音波電源(図示せず)と、を備える。超音波振動子2は超音波霧化室1の底に、水密構造で固定される。超音波振動子2は、1基のみ設けてもよいし2基以上設けてもよい。超音波振動子2の振動数は、特に制限されず適宜設定できるが、一例を挙げれば、1.0MHz以上10.0MHz以下の範囲である。
【0061】
超音波霧化室1で霧化されたシリカゾル反応液のミストは、送風ノズル3から噴射される搬送気体により、ノズル4を経由してサイクロン5に流入される。このミストには、例えば、有機溶媒(例えばメタノール)、水、アルカリ触媒(例えばアンモニア)、およびごく少量のシリカ粒子が含まれる。搬送気体の例としては、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、または空気を単独で用いてもよく、これらを混合させたものでもよい。搬送気体は、コンプレッサー、有圧ファン、またはエアーポンプなどの気体加圧機30により送風ノズル3に供給される。搬送気体の流量は、特に制限されず装置のスケールによって適宜設定できる。
【0062】
搬送気体は、循環して使用されるが、搬送気体を外部に排気しないので、シリカゾル反応液が外部に漏れることはない。また、空気を使用してランニングコストを低減することができる。空気を使用する場合、循環させないで使用することもできる。空気を循環させない装置としては、例えば、新鮮空気を気体供給器で吸入して、送風ノズル3の近傍に供給する装置が挙げられる。
【0063】
ミストを含む搬送気体は、分離機であるサイクロン5に供給され、遠心分離される。サイクロン5は、流入口11と、遠心力で外側に加速されて内面に沿って落下する第2の排気成分を排出する下方排出口13と、中心に集まる第1の排気成分を上方に排気する上方排出口12とを備える。サイクロン5は、流入口11から流入されるミストを内部で回転させて遠心分離する。サイクロン5の内部で回転されるミストは、粒子径によって遠心力が異なる。ミストが受ける遠心力は、ミストの質量に比例する。したがって、粒子径が大きいミストは、大きな遠心力を受けてサイクロン5の内面に移動し、内面に沿って落下して下方排出口13から排出される。小さいミストやミストから気化された気体は質量が小さく、中心に集められて上方排出口12から排出される。
【0064】
シリカゾル反応液の一部をミストに霧化して、搬送気体によりサイクロン5にミストを供給すると、ミストに含まれる有機溶媒やアルカリ触媒の多くは上方排出口12から排出され、水やごく一部同伴していたシリカ粒子はミストの状態で下方排出口13から排出される。
【0065】
分離機としては、サイクロン以外にも、デミスターなど供給されるミスト混合気体を粒径や質量で分離できる他の全てのものを使用することができる。また、
図1や
図2では、サイクロンを1基有する装置を示しているが、サイクロンは2基以上であってもよい。
【0066】
サイクロン5の上方排出口12から排出される搬送気体を冷却して有機溶媒を回収する回収部としては、例えば、
図1に示すような、搬送気体を冷却して有機溶媒を凝集させる冷却用熱交換器を内蔵する冷却回収塔(21、22、23)が挙げられる。冷却用熱交換器は、熱交換パイプに冷却用の冷媒や冷却水を循環させて、搬送気体を冷却することができ、熱交換パイプにフィンを固定して、熱交換の効率を向上させることもできる。この冷却回収塔(21、22、23)は、流入される搬送気体に含まれる有機溶媒を冷却用熱交換器で冷却しながら凝集させて、回収液タンク(24、25、26)に回収する。冷却回収塔23から排出された搬送気体は、ライン23aを経由し気体加圧機30により超音波分離室1に送られる。冷却回収塔の設定温度は、使用する溶媒の種類によって、適宜設定すればよい。
【0067】
なお、
図1では冷却回収塔が3基である例を、
図2では冷却回収塔が2基である例をそれぞれ示しているが、無論これらに制限されるものではなく、冷却回収塔は1基でもよいし、4基以上であってもよい。
【0068】
超音波霧化室1には、ポンプ10を用いて、反応液タンク6からシリカゾル反応液が連続的に供給される。超音波霧化室1においては、供給される全てのシリカゾル反応液をミストとして霧化させない。これは、超音波霧化室1の液量が一定である方が、超音波振動子2で超音波振動されて液面にできる液柱Pのサイズも一定となるため、霧化を安定的に行う上で好ましいからである。なお、超音波霧化室1へのシリカゾル反応液の供給方法は、バッチ式でもよい。反応液タンク6は、必要に応じて、ヒーター8を備えたバス9により加熱されてもよい。
【0069】
濃縮工程は、シリカゾル反応液を濃縮する工程である。本工程を行うことにより、シリカゾルの高濃度化が可能となり、シリカゾルの経済性を向上することが出来る。
【0070】
濃縮工程においては、上記した超音波霧化分離法を用いる。具体的には、例えば、
図1や
図2に示す超音波霧化分離装置(100、200)において、反応タンク6内のシリカゾル反応液量を一定以上に保つようにシリカゾル反応液7aを添加して、濃縮する方法が挙げられる。
【0071】
水置換工程は、シリカゾル中の有機溶媒を水で置換する工程である。本工程を行うことにより、シリカゾル反応液中に含まれている未反応物も除去することができ、長期間安定な水置換したシリカゾルを得ることができる。
【0072】
水置換工程においては、上記した超音波霧化分離法を用いる。具体的には、例えば、
図1や
図2に示す超音波霧化分離装置(100、200)において、反応液タンク6内のシリカゾル反応液の液量を一定以上に保つように水7bを添加して、水置換する方法が挙げられる。
【0073】
本工程で用いる水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水を用いることが好ましい。
【0074】
以上のようにして、シリカゾルを得ることができる。
【0075】
本発明の製造方法により得られるシリカゾル中のシリカ粒子の物性値は、例えば平均二次粒子径、体積基準90%粒子径(D90)、体積基準50%粒子径(D50)、体積基準10%粒子径(D10)などにより評価することができる。
【0076】
シリカ粒子の平均二次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは10nm以上300nm以下である。なお、シリカ粒子の平均二次粒子径の値は、例えば、動的光散乱法により体積平均粒子径として測定できる。
【0077】
体積基準90%粒子径(D90)、体積基準50%粒子径(D50)および体積基準10%粒子径(D10)は、例えば、本発明の製造方法により得られるシリカゾル中のシリカ粒子の積算体積の90%、50%および10%に達するまで、動的光散乱法による粒子径の小さいシリカ粒子から順にシリカ粒子の体積を積算したとき、最後に積算されるシリカ粒子の粒子径の値を用いることができる。
【0078】
本発明の製造方法により得られるシリカゾル中のシリカ粒子の体積基準90%粒子径(D90)は、特に制限されないが、好ましくは15nm以上400nm以下である。本発明の製造方法により得られるシリカゾル中のシリカ粒子の体積基準10%粒子径(D10)は、特に制限されないが、好ましくは5nm以上150nm以下である。
【0079】
本発明の製造方法により得られるシリカゾル中のシリカ粒子の濃度は、得られるシリカ粒子の粒子径により異なるが、例えば、平均二次粒子径が10nm以上300nm以下である場合、好ましくは0.1質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上40質量%以下である。
【0080】
また、本発明の製造方法により得られるシリカゾル中には、アルカリ触媒が含まれている。アルカリ触媒は、シリカ粒子を分散させる効果を有するため、本発明の製造方法により得られるシリカゾルは、シリカ粒子の凝集やシリカゾルの粘度上昇が抑制または防止されたものとなり、高濃度化が容易となり、経済性に優れたシリカゾルとなりうる。
【0081】
アルカリ触媒がアンモニアである場合を例にとれば、シリカゾル中のアンモニアの濃度は、好ましくは0.02質量以上0.30質量%以下であり、より好ましくは0.04質量%以上0.25質量%以下である。なお、シリカゾル中のアンモニアの濃度は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0082】
本発明の製造方法により得られるシリカゾルの粘度は、25℃で、好ましくは1mPa・s以上20mPa・s以下という低いものとなる。よって、該シリカゾルは、高濃度化が容易となり、経済性に優れたシリカゾルとなり得る。
【0083】
なお、シリカゾルの粘度は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0084】
本発明の製造方法により得られるシリカゾルのpHは、好ましくは8.0以上13.0以下であり、より好ましくは8.5以上12.0以下である。シリカゾルのpHは、実施例に記載の方法により測定できる。
【0085】
本発明の製造方法によれば、シリカゾルに含まれる金属不純物、例えば、Al、Ca、B、Ba、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Sr、Ti、Zn、Zr、U、Thなどの金属不純物の合計の含有量を1ppm以下とすることができる。
【0086】
本発明の製造方法は、シリカゾル反応液を作製する工程、シリカゾル反応液を超音波霧化分離法により濃縮する工程、およびシリカゾル反応液を超音波霧化分離法により水置換する工程以外の工程をさらに含んでもよい。
【実施例】
【0087】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件下で行われた。
【0088】
<シリカゾル反応液の調製>
メタノール1222.7gに純水178.9gおよびアンモニア23.6gを混合した(A)液に、メタノール76.0gにテトラメトキシシラン(TMOS)1014.8gを溶解した(B)液および純水240.6gの(C)液を、各液の温度を41℃に保ちながら150分かけて滴下し、シリカゾル反応液を作製した。
【0089】
株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフィー GC-14Bにより測定したシリカゾル反応液中のメタノールの濃度は約90質量%以下であり、平沼産業株式会社製の自動滴定装置COM-1700Aにより測定したシリカゾル反応液中のアンモニアの濃度は0.87質量%であった。また、株式会社堀場製作所製のpH測定装置F-72を用いて測定したシリカゾル反応液のpHは、10.9であった。
【0090】
また、シリカゾル反応液に含まれるシリカ粒子の体積平均粒子径(Mv)、体積基準90%粒子径(D
90)、および体積基準10%粒子径(D
10)を、マイクロトラック・ベル株式会社製、UPA-UT151を用いて測定した。測定結果を下記表1に示す
(実施例1)
<超音波霧化分離法を用いた濃縮工程>
上記で得られたシリカゾル反応液2100gを用い、
図1に記載の超音波霧化分離装置を使用して、以下の条件で、超音波霧化分離法による濃縮工程を行った:
超音波振動子2の振動数:1.6MHz(48V、0.625A)
搬送気体(空気)の搬送速度:40L/min
第1の冷却回収塔21、第2の冷却回収塔22の設定温度:10℃
第3の冷却回収塔23の設定温度:-20℃
霧化分離実施時のシリカゾル反応液の液温:35℃から55℃の間を保持。
【0091】
反応液タンク内のシリカゾル反応液の液量が低下するたびに、別途で用意した上記と同様のシリカゾル反応液2100gを添加し、反応液タンク内のシリカゾル反応液の液量が一定に保持されるようにした。シリカゾル反応液2100gの添加が終了し、シリカゾル濃縮液を得た。
【0092】
得られたシリカゾル濃縮液2100gを用い、
図1に記載の装置を使用して、上記と同様の条件で、メタノールが1質量%以下となるまで、超音波霧化分離法による水置換工程を行った。
【0093】
反応液タンク内のシリカゾル反応液の液量が低下するたびに、別途で用意した超純水を添加し、反応液タンク内のシリカゾル反応液の液量が一定に保持されるようにした。超純水6073.2gの添加が終了し、シリカゾルを得た。
【0094】
得られたシリカゾルについて、上記<シリカゾル反応液の調製>と同様の方法で、シリカゾル中のメタノールの濃度、シリカゾル中のアンモニアの濃度、およびシリカゾルのpH、ならびにシリカゾルに含まれるシリカ粒子のMv、D90、およびD10を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0095】
(実施例2)
上記<シリカゾル反応液の調製>と同様の方法で得られたシリカゾル反応液1500gを用い、
図2に記載の超音波霧化分離装置を使用して、以下の条件で、メタノールが1質量%以下となるまで、超音波霧化分離法による水置換工程を行った:
超音波振動子2の振動数:1.6MHz(48V、0.625A)
搬送気体(空気)の搬送速度:40L/min
第1の冷却回収塔21、第2の冷却回収塔22の設定温度:-20℃
霧化分離実施時のシリカゾル反応液の液温:35℃から55℃の間を保持。
【0096】
反応液タンク内のシリカゾル反応液の液量が低下するたびに、別途で用意した超純水を添加し、反応液タンク内のシリカゾル反応液の液量が一定に保持されるようにした。超純水4284.3gの添加が終了し、シリカゾルを得た。
【0097】
得られたシリカゾルについて、上記<シリカゾル反応液の調製>と同様の方法で、シリカゾル中のメタノールの濃度、シリカゾル中のアンモニアの濃度、およびシリカゾルのpH、ならびにシリカゾルに含まれるシリカ粒子のMv、D90、およびD10を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0098】
(比較例1)
上記<シリカゾル反応液の調製>と同様の方法で得られたシリカゾル反応液を用い、マントルヒーターを使用して、加熱蒸留による濃縮およびメタノールが1質量%以下となるまで、水置換を行った。
【0099】
容器内にシリカゾル反応液500gを仕込み、マントルヒーターにより容器を加熱し、加熱蒸留を行った。シリカゾル反応液の液量が低下するたびに、別途で用意した上記と同様のシリカゾル反応液500gを添加し、容器内のシリカゾル反応液の液量が一定に保持されるようにした(濃縮)。シリカゾル反応液500gの添加が終了し、シリカゾル濃縮液を得た。
【0100】
シリカゾル濃縮液を得た後、再びマントルヒーターにより容器を加熱し、シリカゾル反応液の液量が低下するたびに、別途で用意した超純水を添加し、容器内のシリカゾル反応液の液量が一定に保持されるようにした(水置換)。超純水1000gの添加が終了し、シリカゾルを得た。
【0101】
得られたシリカゾルについて、上記<シリカゾル反応液の調製>と同様の方法で、シリカゾル中のメタノールの濃度、シリカゾル中のアンモニアの濃度、およびシリカゾルのpH、ならびにシリカゾルに含まれるシリカ粒子のMv、D90、およびD10を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0102】
(比較例2)
上記<シリカゾル反応液の調製>と同様の方法で得られたシリカゾル反応液を用い、マントルヒーターを使用して、メタノールが1質量%以下となるまで、加熱蒸留による水置換を行った。
【0103】
容器内にシリカゾル反応液500gを仕込み、マントルヒーターにより容器を加熱した。シリカゾル反応液の液量が低下するたびに、別途で用意した超純水を添加し、容器中のシリカゾル反応液の液量が一定に保持されるようにした。超純水1484gの添加が終了し、シリカゾルを得た。
【0104】
得られたシリカゾルについて、上記<シリカゾル反応液の調製>と同様の方法で、シリカゾル中のメタノールの濃度、シリカゾル中のアンモニアの濃度、およびシリカゾルのpH、ならびにシリカゾルに含まれるシリカ粒子のMv、D90、およびD10を測定した。
【0105】
また、シリカゾルの粘度は下記の方法により測定した。
【0106】
<シリカゾルの粘度測定>
柴田科学株式会社製、粘度計キャノン・フェンスケ100号(粘度計定数0.015)、同200号(粘度計定数0.1)、および同300号(粘度計定数0.25)を100℃のエアバスで十分に乾燥させたのち、室温に戻した。なお、実施例1および2のシリカゾルには100号を用い、比較例1のシリカゾルには300号を用い、比較例2のシリカゾルには200号を用いた。
【0107】
室温に戻したキャノン・フェンスケを逆さまにして、装置内にサンプルを充填した。25℃のウォーターバスを用意したのち、液温も同温となるよう、ウォーターバス内に十分浸漬させた。その後、流出時間を計測するため、キャノン・フェンスケの上下を元に戻し、装置記載の測時標線間の移動時間をストップウォッチで計測した。また、別途アントンパール社製の携帯密度・比重・濃度計にてサンプルの密度を測定した。得られた値から、下記式により粘度を算出した。
【0108】
【0109】
測定結果を下記表1に示す。
【0110】
【0111】
上記表1から明らかなように、実施例1および2で得られたシリカゾルは、アルカリ触媒であるアンモニアが残存していることが分かった。また、実施例1および2で得られたシリカゾルは、低い粘度となっており、高濃度化が容易で、シリカゾルの経済性を向上させ得ることが分かった。
【0112】
一方、比較例1および2で得られたシリカゾルは、アンモニアが残存しておらず、粘度が高くなっており、高濃度化が困難であることが分かった。
【符号の説明】
【0113】
1 超音波霧化室、
1a 循環ライン、
2 超音波振動子、
3 送風ノズル、
4 ノズル、
5 サイクロン、
6 反応液タンク、
7a シリカゾル反応液、
7b 水、
8 ヒーター、
9 バス、
10 ポンプ、
11 流入口、
12 上方排出口、
13 下方排出口、
13a、23a ライン、
21 第1の冷却回収塔、
22 第2の冷却回収塔、
23 第3の冷却回収塔、
24、25、26 回収液タンク、
30 気体加圧機、
100、200 超音波霧化分離装置、
P 液柱。