(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】化合物および光電変換素子
(51)【国際特許分類】
C07D 209/90 20060101AFI20221124BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20221124BHJP
H01L 27/30 20060101ALI20221124BHJP
H01L 51/42 20060101ALI20221124BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C07D209/90 CSP
H01L27/146 C
H01L27/30
H01L31/08 T
H01L31/10 A
(21)【出願番号】P 2018225990
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八代 有弘
(72)【発明者】
【氏名】吉川 栄二
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308602(JP,A)
【文献】国際公開第2016/025620(WO,A1)
【文献】特開2012-77153(JP,A)
【文献】特開2005-18019(JP,A)
【文献】特開平2-190390(JP,A)
【文献】特開2015-44994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表す。複数存在するR
1は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR
2は、同一であっても異なっていてもよい。mは、1~20の整数を表す。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。
Ar
1は、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい
多環式芳香族化合物のジイル基を表す。2個あるAr
1は、同一であっても互いに異なっていてもよい。C
1、C
2およびC
3は、前記
多環式芳香族化合物のジイル基を構成する炭素原子を表す。
Ar
2は、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい
多環式芳香族化合物のジイル基を表す。
Ar
1とAr
2とは、互いに結合して環を構成していてもよい。)
【化2】
(式(2)中、
R
1、R
2、mおよびAr
1は、前記と同じ意味を表す。複数存在するR
1は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR
2は、同一であっても異なっていてもよい。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。
Aは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。2個あるAは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
Ar
1とAとは、互いに結合して環を構成していてもよい。)
【化3】
(式(3)中、
R
1、R
2、mおよびAr
1は、前記と同じ意味を表す。複数存在するR
1は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR
2は、同一であっても異なっていてもよい。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。Ar
1とAとは、互いに結合して環を構成していてもよい。)
【請求項2】
式(1)において2個あるAr
1-(R
2)
mが互いに同一であり、2個ある-Ar
2-R
1が互いに同一である請求項1記載の化合物、式(2)において2個あるAr
1-(R
2)
mが互いに同一であり、2個ある-A-R
1が互いに同一である請求項1記載の化合物または式(3)において2個あるAr
1-(R
2)
mが互いに同一であり、2個ある-A-R
1が互いに同一である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられている活性層とを含み、該活性層が、請求項1または2に記載の化合物を含む、光電変換素子。
【請求項4】
前記活性層が、p型半導体材料およびn型半導体材料を含み、該p型半導体材料が、請求項1または2に記載の化合物である、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記n型半導体材料が、フラーレンである、請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記n型半導体材料が、C60フラーレンである、請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
光検出素子である、請求項3~6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換素子を備える、イメージセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、および該化合物を用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、陽極および陰極を含む一対の電極と、該一対の電極間に設けられる活性層とを少なくとも備える素子である。光電変換素子では、いずれかの電極を透明または半透明の材料から構成し、透明または半透明とした電極側から活性層に光を入射させる。活性層に入射した光のエネルギー(hν)によって、活性層において電荷(正孔および電子)が生成し、生成した正孔は陽極に向かって移動し、電子は陰極に向かって移動する。そして、陽極および陰極に到達した電荷は、素子の外部に取り出される。
【0003】
近赤外波長領域(波長700nm~2500nm)の光を用いて光電変換を行う光電変換素子(以下、近赤外光電変換素子という。)は、非可視光である近赤外光を検出することができるため、近赤外光検出器として利用することができる。
【0004】
近赤外光電変換素子を近赤外光検出器として用いることにより、人間の目では取得できない情報を電気信号として得ることができる。そして、得られた電気信号を任意好適な情報処理技術によって処理することで可視化することができるため、3Dイメージング、血流等の生体情報に基づいた診断などの様々な分野への近赤外光電変換素子の応用が期待されている(例えば、非特許文献1および2参照。)。
【0005】
また、近赤外光電変換素子の活性層の材料として、近赤外域に強い吸収を持ち、可視域に相対的に小さな吸収しか持たない可視光吸収が小さい材料の開発が試みられている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「近赤外グリッドパターンを用いたテクスチャ付き形状のワンショット計測手法」画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011) 2011年7月 P.1494-1501.
【文献】「近赤外線を利用した生体の可視化」Medical Photonics No.7 P.53-57.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光電変換素子は、搭載される光検出装置の用途に応じて、光電変換すべき光の波長が異なる。たとえば、特許文献1に記載の光電変換素子は、吸収極大波長が700nm~800nmであるが、吸収極大波長が800nm以上の光電変換素子が求められる場合もある。また特許文献1に記載の光電変換素子のように、光検出装置の用途に応じて、可視光域の吸収が小さい光電変換素子が求められる場合もある。さらに、光電変換効率または暗電流等の光検出感度に影響する特性の向上も求められている。このように、光電変換素子およびそれに適用される活性層の材料には、搭載される光検出装置の用途に合わせた特性(可視光域での光透過性、特定の波長での吸収、光電変換効率および暗電流など)の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、所定の構造を有する化合物、およびかかる化合物を活性層の材料として用いる光電変換素子により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は、下記[1]~[8]を提供する。
[1]下記式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表す。複数存在するR
1は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR
2は、同一であっても異なっていてもよい。mは、1~20の整数を表す。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。
Ar
1は、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい多環式芳香環のジイル基を表す。2個あるAr
1は、同一であっても互いに異なっていてもよい。C
1、C
2およびC
3は、前記多環式芳香環のジイル基を構成する炭素原子を表す。
Ar
2は、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい多環式芳香環のジイル基を表す。
Ar
1とAr
2とは、互いに結合して環を構成していてもよい。)
【化2】
(式(2)中、
R
1、R
2、mおよびAr
1は、前記と同じ意味を表す。複数存在するR
1は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR
2は、同一であっても異なっていてもよい。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。
Aは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。2個あるAは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
Ar
1とAとは、互いに結合して環を構成していてもよい。)
【化3】
(式(3)中、
R
1、R
2、mおよびAr
1は、前記と同じ意味を表す。複数存在するR
1は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR
2は、同一であっても異なっていてもよい。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。Ar
1とAとは、互いに結合して環を構成していてもよい。)
[2]式(1)において2個あるAr
1-(R
2)
mが互いに同一であり、2個ある-Ar
2-R
1が互いに同一である請求項1記載の化合物、式(2)において2個あるAr
1-(R
2)
mが互いに同一であり、2個ある-A-R
1が互いに同一である請求項1記載の化合物または式(3)において2個あるAr
1-(R
2)
mが互いに同一であり、2個ある-A-R
1が互いに同一である、[1]に記載の化合物。
[3]陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられている活性層とを含み、該活性層が、[1]または[2]に記載の化合物を含む、光電変換素子。
[4]前記活性層が、p型半導体材料およびn型半導体材料を含み、該p型半導体材料が、[1]または[2]に記載の化合物である、[3]に記載の光電変換素子。
[5]前記n型半導体材料が、フラーレンである、[4]に記載の光電変換素子。
[6]前記n型半導体材料が、C60フラーレンである、[5]に記載の光電変換素子。
[7]光検出素子である、[3]~[6]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[8][7]に記載の光電変換素子を備える、イメージセンサー。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、近赤外光電変換素子が搭載される光検出装置の用途に必要とされる特性を有する光電変換素子、およびかかる光電変換素子に用いられる材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、化合物P1-1の溶液吸収スペクトルおよび化合物P1-1の成膜吸収スペクトルを示す。
【
図2】
図2は、化合物P5-1の溶液吸収スペクトルおよび化合物P5-1の成膜吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態の説明において、共通して用いられる用語について説明する。
【0013】
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0014】
「置換基を有していてもよい」とは、その化合物または基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、および1個以上の水素原子の一部または全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様を含む。
【0015】
「置換基」の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、およびニトロ基が挙げられる。
【0016】
「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が含まれる。
【0017】
「アルキル基」は、特に断らない限り、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐状または環状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
【0018】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、アダマンチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-n-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基等の置換基を有するアルキル基が挙げられる。
【0019】
「アリール基」は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。
【0020】
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、およびこれらの基がアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0021】
「アリーレン基」は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を2個を除いた残りの原子団を意味する。
【0022】
「アルコキシ基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状または環状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0023】
アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、およびラウリルオキシ基が挙げられる。
【0024】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0025】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、9-アントリルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、およびこれらの基がアルキル基、アルコキシ基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0026】
「アルキルチオ基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状および環状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0027】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、およびトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0028】
「アリールチオ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0029】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基(ここで、「C1~C12」は、その直後に記載された基の炭素原子数が1~12であることを示す。以下、他の基においても同様である。)、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、およびペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0030】
「1価の複素環基」とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちの1個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。1価の複素環基には、「1価の芳香族複素環基」が含まれる。「1価の芳香族複素環基」は、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。1価の複素環基および1価の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。ヘテロ原子の例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子が挙げられる。
【0031】
1価の複素環基および1価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、およびニトロ基が挙げられる。
【0032】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
【0033】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、およびジベンゾホスホールが挙げられる。
【0034】
芳香族複素環式化合物のうち、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、およびベンゾピランが挙げられる。
【0035】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2~60であり、好ましくは4~20である。
【0036】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、1価の複素環基の具体例としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、およびこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0037】
「置換アミノ基」とは、置換基を有するアミノ基を意味する。置換アミノ基が有し得る置換基の例としては、アルキル基、アリール基、および1価の複素環基が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、または1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、通常2~30である。
【0038】
置換アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0039】
「アシル基」は、炭素原子数が通常2~20であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、およびペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0040】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子または窒素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例としては、アルジミン、ケチミン、およびアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基等で置換された化合物が挙げられる。
【0041】
イミン残基は、通常炭素原子数が2~20であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0042】
【0043】
「アミド基」は、アミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20であり、好ましくは1~18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、およびジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0044】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常4~20である。酸イミド基の具体例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0045】
【0046】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、または1価の芳香族複素環基を表す。
【0047】
置換オキシカルボニル基は、炭素原子数が通常2~60であり、好ましくは炭素原子数が2~48である。
【0048】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、およびピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0049】
「アルケニル基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐状または環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
【0050】
アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、およびこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0051】
「アルキニル基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐状または環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
【0052】
アルキニル基は、置換基を有していてもよい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、およびこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0053】
<化合物>
本実施形態の化合物は、四角酸(スクアリン酸)型または五角酸(クロコン酸)型の母核構造を含み、この母核構造に窒素原子を含む2個の縮環構造が結合している化合物である。この2個の縮環構造は、製造をより容易にする観点から、同一の構造を有していることが好ましい。
【0054】
本実施形態の化合物は、近赤外波長領域に極大吸収波長(λmax)を有している。
【0055】
本実施形態の化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。式(1)で表される化合物には、syn-、anti-による異性体が存在するが、いずれであってもよい。
【0056】
【0057】
ここで、式(1)に含まれ得る構成要素について説明する。
R1およびR2は、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表す。複数存在するR1は、同一であっても異なっていてもよく、複数存在するR2は、同一であっても異なっていてもよい。mは、1~20の整数を表す。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。
R1およびR2は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナニル基、デシル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、塩素原子であることがより好ましい。
mは、1~10の整数であることが好ましく、1~5の整数であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0058】
Ar1は、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい多環式芳香環のジイル基を表す。2個あるAr1は、同一であっても互いに異なっていてもよい。2個あるAr1は、同一であることが好ましい。
環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい多環式芳香環のジイル基としては、例えば、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいナフタレンジイル基、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいアントラセンジイル基およびフェナントレンジイル基が挙げられ、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいナフタレンジイル基および環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいアントラセンジイル基が好ましい。
ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、が挙げられる。
【0059】
2個あるAr1は、いずれも環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい多環式芳香環のジイル基であることが好ましく、いずれも環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいナフタレンジイル基またはいずれも環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいアントラセンジイル基であることが好ましく、ナフタレンジイル基またはアントラセンジイル基であることがより好ましい。
【0060】
C1、C2およびC3は、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい多環式芳香環のジイル基を構成する炭素原子を表す。
【0061】
ここで、2個あるC2は、例えば、互いに独立に、構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいナフタレンジイル基の4a位あるいは8a位の炭素原子、または構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよいアントラセンジイル基の4a位、8a位、9a位あるいは10a位の炭素原子である。
【0062】
2個あるC2は、それぞれが同一である基に含まれ、同一の炭素位置番号を有する炭素原子であることが好ましい。
【0063】
Ar2は、環構造を構成する炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい多環式芳香環のジイル基を表す。
【0064】
Ar2の具体例としては、ベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基、チオフェンジイル基、ピリジンジイル基、イミダゾリジンジイル基、ピリジミンジイル基、および1,3,5-トリアジンジイル基が挙げられる。
【0065】
Ar1とAr2とは、互いに結合して環を構成していてもよい。
【0066】
式(1)で表される化合物としては、2個あるAr1-(R2)mが互いに同一であり、2個ある-Ar2-R1が互いに同一である化合物が好ましい。
【0067】
式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式で表される化合物P1-1~化合物P1-24が挙げられる。
【0068】
【0069】
【0070】
合成が容易な点から、式(1)としては、化合物P1-1~化合物P1-4および化合物P1-17~化合物P1-20が好ましく、化合物P1-1および化合物P1-17~化合物P1-20がより好ましい。
【0071】
化合物P1-1の溶液状態での極大吸収波長(λmax)は894nmであり、薄膜としたときの極大吸収波長は791nmである。
【0072】
本実施形態の化合物の例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。式(2)で表される化合物には、syn-、anti-による異性体が存在するが、いずれであってもよい。
【0073】
【0074】
ここで、式(2)に含まれ得る構成要素について説明する。
R1、R2、m、Ar1、C1、C2およびC3は、前記定義のとおりである。
Aは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。2個あるAは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0075】
Aの具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、チオフェニレン基、ナフチレン基、チオフェニレン基、ピリジレン基、および1,3,5-トリアジリレン基が挙げられる。Aは、炭素原子数2~12のアルキレン基であることが好ましい。
【0076】
置換基を有していてもよいアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、メチルエチレン基、メチルプロパンジイル基およびジメチルメチレン基が挙げられ、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、メチルエチレン基、メチルプロパンジイル基およびジメチルメチレン基であることが好ましく、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基であることがより好ましい。
【0077】
Ar1とAとは、互いに結合して環を構成していてもよい。このような環の構造の例としては、下記式で表される構造が挙げられる。
【0078】
【0079】
式(2)で表される化合物としては、2個あるAr1-(R2)mが互いに同一であり、2個ある-A-R1が互いに同一である化合物が好ましい。
【0080】
式(2)で表される化合物の具体例としては、下記式で表される化合物P2-1~P2-24および化合物P3-1~P3-16が挙げられる。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
合成が容易な点から、式(2)としては、化合物P2-1~化合物P2-4、化合物P2-13、化合物P2-17~化合物P2-20および化合物P3-1~化合物P3-10であることが好ましく、化合物P2-1および化合物P3-1であることがより好ましい。
【0085】
本実施形態の化合物の例としては、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。式(2)には、syn-、anti-による異性体が存在するが、いずれであってもよい。
【0086】
【0087】
ここで、式(3)に含まれ得る構成要素について説明する。
R1、R2、Ar1、m、C1、C2、C3、およびAは、前記定義のとおりである。
Ar1とAとは、互いに結合して環を構成していてもよい。このような環の構造の例としては、下記式で表される構造が挙げられる。
【0088】
【0089】
式(3)で表される化合物としては、2個あるAr1-(R2)mが互いに同一であり、2個ある-A-R1が互いに同一である化合物が好ましい。
【0090】
式(3)で表される化合物の具体例としては、下記式で表される化合物P4-1~化合物P4-24および化合物P5-1~化合物P5-9が挙げられる。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
合成が容易な点から、式(3)としては、化合物P4-1~化合物P4-4、化合物P4-13、化合物P4-17~化合物P4-20、化合物P5-1~P5-4、化合物P5-6および化合物P5-9が好ましく、化合物P4-1および化合物P5-1がより好ましい。
【0095】
本実施形態の化合物は、近赤外波長領域のうち、好ましくは波長800nm~1200nmにおいて高い吸収を示し、より好ましくは波長850nm~1100nmにおいて高い吸収を示す。本実施形態の化合物は、可視光波長域の光の透過性が高いことが好ましい。
【0096】
<化合物の製造方法>
本実施形態の化合物は、例えば、ACS Appl.Mater.Interfaces 2018, 10, 11063-11069.に記載の製造方法を参考にして、製造(合成)することができる。具体的には、N-置換ナフトラクタム化合物を合成し、これを使用して製造することができる。以下、本実施形態の化合物の製造方法についてより具体的に説明する。
【0097】
(1)上記式(2)および(3)で表される化合物であって、-A-R1で表される基がアルキル基である化合物(例えば、化合物P3-1)は、下記のスキームに従って製造することができる。ここでは、化合物P3-1の製造方法を例にとって説明する。
【0098】
【0099】
具体的には、まず、N-アルキルナフトラクタム化合物を合成するにあたり、通常のアルキル化反応を用いることができる。
【0100】
例えば、ベンズ[cd]インドール―2-オンを、非プロトン性溶媒中で、ブロモアルカン、および塩基の存在下で加熱処理することで、N-アルキル化を行うことができる。
【0101】
用いられ得る塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような無機塩基が挙げられる。反応を加速するためにN,N-ジメチルアミノピリジンのような添加剤をさらに用いることができる。
【0102】
次いで、得られたN-アルキルナフトラクタム化合物を、エーテル系溶媒中、メチルマグネシウムハライドのようなグリニャール試薬と反応させたのち、塩酸を含む氷水に滴下し、エーテル系溶媒を留去後、ろ過して沈殿を除くことで、塩酸塩水溶液を得ることができる。
【0103】
用いられ得るエーテル系溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルが挙げられる。
【0104】
次に、得られた塩酸塩水溶液を、ヨウ化カリウム水溶液に滴下してイオン交換することでヨードニウム塩を得ることができる。ヨードニウム塩が析出してくる場合には、ろ過することにより取り出すことができる。さらに、得られた析出物は、イオン交換水、酢酸エチルで洗浄することが好ましい。
【0105】
得られたヨードニウム塩を、クロコン酸(五角酸)(またはスクアリン酸(四角酸))と脱水縮合させることで、化合物P3-1(本実施形態にかかる化合物)を得ることができる。
【0106】
ヨードニウム塩は、クロコン酸(五角酸)またはスクアリン酸(四角酸)1分子に対して、2分子を脱水縮合させるため、クロコン酸またはスクアリン酸に対して、1.5~5.0倍モル量用いることが好ましく、1.8~3.0倍モル量用いることがより好ましい。
【0107】
脱水縮合は加熱条件で行うことが好ましく、反応温度としては80℃~150℃が好ましく、90℃~130℃がより好ましい。
【0108】
ヨードニウム塩、クロコン酸(五角酸)またはスクアリン酸(四角酸)の溶解性を確保しやすいことから、アルコール系溶媒と芳香族系溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。減圧留去での除去しやすさの観点から、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールなどが好ましく、芳香族系溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどが好ましい。
【0109】
反応終了後、反応溶媒を減圧留去したのち、アルコール系溶媒に溶解して再結晶することで、化合物P3-1(本実施形態の化合物)を得ることができる。アルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが挙げられる。
【0110】
(2)上記式(1)で表される化合物であって、-Ar2-R1で表される基がアリール基である化合物(例えば、化合物P1-1)は、下記のスキームに従って製造することができる。ここでは、化合物P1-1の製造方法を例にとって説明する。
【0111】
【0112】
具体的には、まず、N-アリールナフトラクタム化合物を合成するにあたり、例えば、N-フェニルナフチルアミンを、エーテル系溶媒中、n-ブチルリチウムで処理してリチオ化したのちに、二酸化炭素を反応させることで、N-フェニル置換したN-アリールナフトラクタム化合物とアミノカルボン酸化合物との混合物を得ることができる。
【0113】
エーテル系溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどを用いることができる。
【0114】
次いで、溶媒留去して得られた混合物を熱処理することで、N-アリールナフトラクタム化合物に収束させることができる。反応温度としては、130℃~200℃が好ましい。
【0115】
以下、得られたN-アリールナフトラクタム化合物を、上記(1)にかかる製造方法におけるN-アルキルナフトラクタム化合物の代わりに用いる以外は同様にして、本実施形態にかかる化合物P1-1を得ることができる。
【0116】
<光電変換素子>
本実施形態の光電変換素子は、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層とを含み、該活性層が式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物を含む光電変換素子である。
【0117】
本実施形態の光電変換素子は、近赤外波長領域(波長700nm~2500nm)に強い吸収を持つ近赤外光電変換素子である。
【0118】
本実施形態の光電変換素子は、活性層が式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物を含むので、近赤外波長領域のうち、好ましくは波長800nm~1200nmにおいて高い光電変換効率を有し、より好ましくは波長850nm~1100nmにおいて高い光電変換効率を有する。式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物は、可視光波長域の光を透過させることができるため、本実施形態の光電変換素子は、可視光波長域の光に基づく信号を低減しつつ、近赤外波長域の光を効果的に検出することができる。
【0119】
ここで、本実施形態の光電変換素子が備え得る構成要素について説明する。
(基板)
光電変換素子は、通常、基板(支持基板)上に設けられる。基板上には、陰極および陽極を含む電極が形成され得る。支持基板に接合するように陽極が配置される態様は順積層構造と称され、支持基板に接合するように陰極が配置される態様は逆積層構造と称される。本実施形態の光電変換素子は、いずれの態様をとることもできる。
【0120】
基板の材料は、有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板である場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(すなわち、基板から遠い側の電極)が透明または半透明の電極とされることが好ましい。
【0121】
(電極)
透明または半透明の電極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウムスズオキサイド(ITO)、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明または半透明の電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体等の有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明または半透明の電極としては、導電性物質のナノ粒子、導電性物質のナノワイヤまたは導電性物質のナノチューブを含む、エマルション(乳濁液)やサスペンション(懸濁液)、金属ペーストなどの分散液、溶融状態の低融点金属等を用いて塗布法により形成してもよい。導電性物質としては、金、銀などの金属、ITO(インジウムスズ酸化物)などの酸化物、カーボンナノチューブ等が挙げられる。なお、電極は、特表2010―525526号に記載されているように、導電性物質のナノ粒子またはナノファイバーが、導電性ポリマーなどの所定の媒体中に分散して配置された構成を有していてもよい。
透明または半透明の電極は、陽極であっても陰極であってもよい。また、基板(支持基板)に接合するように設けられる電極は、陽極であっても陰極であってもよい。両方の電極が透明であれば、可視光波長域の光の透過性が高い光電変換素子を得ることができる。
【0122】
一方の電極が透明または半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料としては、例えば、金属、および導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、およびこれらのうちの2種以上の合金、または、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステンおよび錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、およびカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0123】
(活性層)
本実施形態の光電変換素子は、活性層が、p型半導体材料(電子供与性化合物)およびn型半導体材料(電子受容性化合物)を含み、該p型半導体材料が、式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物である。
【0124】
活性層は、単層または複数の層が積層された形態をとりうる。単層の活性層は、電子受容性化合物(n型半導体材料)および電子供与性化合物(p型半導体材料)を含有している。
【0125】
活性層が含み得るp型半導体材料およびn型半導体材料において、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちのいずれであるかは、選択された化合物同士のHOMOまたはLUMOのエネルギー準位から相対的に決定することができる。
【0126】
複数の層が積層された活性層は、例えば、p型半導体材料を含有する第1の半導体層と、n型半導体材料を含有する第2の半導体層とを積層した積層体から構成される。この場合、第1の半導体層は、第2の半導体層に対して陽極寄りに配置される。
【0127】
活性層の材料として用いられるn型半導体材料は、後述する活性層の形成工程に適用できることを条件として、特に限定されない。
【0128】
n型半導体材料としては、フラーレンおよびフラーレン誘導体から選ばれる1種以上が好ましい。特に活性層が、蒸着法により形成される場合にはフラーレンを用いることが好ましく、塗布法により形成される場合にはフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0129】
フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、およびC84フラーレンが挙げられる。フラーレン誘導体の例としては、これらのフラーレンの誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を意味する。
【0130】
フラーレン誘導体の例としては、下記式(N-1)~式(N-4)で表される化合物が挙げられる。
【0131】
【0132】
式(N-1)~式(N-4)中、Raは、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、またはエステル構造を有する基を表す。複数個あるRaは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0133】
Rbは、アルキル基、またはアリール基を表す。複数個あるRbは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0134】
Raで表されるエステル構造を有する基の例としては、下記式(19)で表される基が挙げられる。
【0135】
【0136】
式(19)中、u1は、1~6の整数を表す。u2は、0~6の整数を表す。Rcは、アルキル基、アリール基、または1価の複素環基を表す。
【0137】
C60フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0138】
【0139】
C70フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0140】
【0141】
フラーレン誘導体の具体例としては、[6,6]-フェニル-C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]-フェニル-C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6」-フェニル-C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、及び[6,6]-チエニル-C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0142】
活性層の厚さは、通常、1nm~100μmが好ましく、より好ましくは2nm~1000nmであり、さらに好ましくは5nm~500nmであり、特に好ましくは20nm~200nmである。光電変換素子が、例えば太陽電池である場合には、活性層の厚さは、500nm~1000nmであることが好ましい。光電変換素子が、例えば光検出素子である場合には、活性層の厚さは、500nm~1000nmであることが好ましい。
【0143】
(中間層)
本実施形態の光電変換素子は、光電変換効率といった特性を向上させるためのさらなる構成要素として、電荷輸送層(電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層)といった付加的な中間層を備えていてもよい。
【0144】
このような中間層に用いられる材料としては、従来公知の任意好適な材料を用いることができる。中間層の材料としては、例えば、フッ化リチウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、および酸化物が挙げられる。
【0145】
また、中間層に用いられる材料としては、例えば、酸化チタン等の無機半導体の微粒子、およびPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4-スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)が挙げられる。
【0146】
本実施形態の光電変換素子は、陽極と活性層との間に、正孔輸送層を備えていてもよい。正孔輸送層は、活性層から電極へと正孔を輸送する機能を有する。
【0147】
陽極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。陽極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、陽極への正孔の注入を促進する機能を有する。正孔輸送層(正孔注入層)は、活性層に接していてもよい。
【0148】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェンおよびその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、および酸化モリブデン(MoO3)が挙げられる。
【0149】
本実施形態の光電変換素子は、陰極と活性層との間に、電子輸送層を備えていてもよい。電子輸送層は、活性層から陰極へと電子を輸送する機能を有する。電子輸送層は、陰極に接していてもよい。電子輸送層は活性層に接していてもよい。
【0150】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、酸化亜鉛のナノ粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子、ポリアルキレンイミンを主鎖として含み、エチレンオキシドが主鎖中の窒素原子に付加した変性体であるエトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)、およびPFN-P2が挙げられる。
【0151】
(封止層)
光電変換素子は、封止層を含んでいてもよい。封止層は、例えば、基板から遠い方の電極側に設けることができる。封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)または酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することができる。
【0152】
(光電変換素子の用途)
本実施形態の光電変換素子は、電極間に電圧を印加した状態で、透明または半透明の電極側から光を照射することにより、光電流を流すことができ、光検出素子(光センサー)として動作させることができる。また、光センサーを複数集積することによりイメージセンサーとして用いることもできる。
【0153】
また、本実施形態の光電変換素子は、光が照射されることにより、電極間に光起電力を発生させることができ、太陽電池として動作させることができる。太陽電池を複数集積することにより薄膜太陽電池モジュールとすることもできる。
【0154】
(光電変換素子の適用例)
本実施形態にかかる光電変換素子は、特に近赤外光波長域において大きな吸収を有し、可視光波長域の吸収が小さい式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物を活性層の材料として用いるので、近赤外光検出器として有用である。
【0155】
本実施形態の光電変換素子は、3Dイメージング、VR(仮想現実)、拡張現実(AR)、MR(混合現実)向けのデバイスに適用される光検出素子、撮像素子、イメージセンサーとして好適に用いることができる。
【0156】
<光電変換素子の製造方法>
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、特に限定されない。本実施形態の光電変換素子は、既に説明した各構成要素を形成するにあたり選択された材料に好適な形成方法により製造することができる。
【0157】
(電極の形成方法)
電極の形成方法としては、従来公知の任意好適な形成方法を用いることができる。電極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、およびめっき法が挙げられる。
【0158】
(中間層の形成方法)
中間層の製造方法は、特に限定されない。中間層が、既に説明した無機材料または低分子材料により構成される場合には、真空蒸着法、真空加熱蒸着法などの材料に応じた任意好適な方法により形成することができる。
【0159】
また本実施形態の光電変換素子の中間層などの機能層が、溶媒に可溶である材料、特に高分子化合物により構成される場合には、インクを用いる塗布法によっても製造することができる。
【0160】
本実施形態の光電変換素子の製造方法において適用される塗布法は、材料と、溶媒とを含むインクを塗布対象に塗布して塗膜を得る工程(i)と、該塗膜から溶媒を除去する工程(ii)とを含む。以下、塗布法に含まれる工程(i)および工程(ii)について説明する。
【0161】
工程(i)
インクを塗布対象に塗布する方法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。塗布法としては、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、またはキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、またはバーコート法がより好ましく、スリットコート法またはスピンコート法がさらに好ましい。
【0162】
インクは、光電変換素子およびその製造方法に応じて選択された塗布対象に塗布される。インクは、光電変換素子の製造工程において、基板または光電変換素子が有する機能層上に塗布されうる。よって、インクの塗布対象は、製造される光電変換素子の層構成および層形成の順序によって異なる。例えば、光電変換素子が、基板/陽極/正孔輸送層/活性層/電子輸送層/陰極の層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合(順積層構造)であって、正孔輸送層を塗布法により形成する場合には、インクの塗布対象は、陽極となる。また、例えば、光電変換素子が、基板/陰極/電子輸送層/活性層/正孔輸送層/陽極の層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合(逆積層構造)であって、正孔輸送層を塗布法により形成する場合には、インクの塗布対象は、活性層となる。
【0163】
工程(ii)
インクの塗膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗膜から溶媒を除去して固化膜とする方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、ホットプレートを用いて直接的に加熱する方法、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0164】
塗布法により機能層を形成する工程は、前記工程(i)および工程(ii)以外に、本発明の目的および効果を損なわないことを条件としてその他の工程を含んでいてもよい。
【0165】
インク
塗布法に用いられるインクは、溶液であってもよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等の分散液であってもよい。本実施形態のインクは、所定の機能層形成用のインクであって、選択された機能性材料(p型半導体材料および/またはn型半導体材料)と、溶媒とを含み得る。
【0166】
溶媒は、選択された材料に対する溶解性、乾燥条件に対応するための特性(沸点など)を考慮して選択すればよい。
溶媒は、置換基(例えば、アルキル基、ハロゲン原子)を有していてもよい芳香族炭化水素(以下、単に芳香族炭化水素という。)を含むことが好ましい。
【0167】
このような芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、テトラリン、インダン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン(o-ジクロロベンゼン)が挙げられる。
【0168】
溶媒は1種のみの芳香族炭化水素を含んでいても、2種以上の芳香族炭化水素を含んでいてもよい。溶媒は、1種のみの芳香族炭化水素を含むことが好ましい。
【0169】
溶媒は、好ましくは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、プソイドクメン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、インダン、クロロベンゼンおよびo-ジクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含み、より好ましくは、o-キシレン、プソイドクメン、テトラリン、クロロベンゼンまたはo-ジクロロベンゼンを含む。
【0170】
溶媒は、芳香族炭化水素以外の溶媒をさらに含んでいてもよい。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル溶媒が挙げられる。
【0171】
インクは、溶媒、p型半導体材料、n型半導体材料の他に、本発明の目的および効果を損なわない限度において、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、紫外線に対する安定性を増すための光安定剤といった任意の成分を含んでいてもよい。
【0172】
インクの調製
インクは、公知の方法により調製することができる。例えば、選択された複数種類の溶媒を混合して混合溶媒を調製し、混合溶媒に既に説明した材料を添加して混合し、材料を溶解または分散させることにより、調製することができる。溶媒と材料とを、溶媒の沸点以下の温度で加温して混合してもよい。
【0173】
溶媒および材料とを混合した後、得られた混合物をフィルターを用いてろ過し、得られたろ液をインクとして用いてもよい。フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂で形成されたフィルターを用いることができる。
【0174】
(活性層の形成方法)
本実施形態の光電変換素子の活性層は、p型半導体材料として、式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物と、n型半導体材料として、フラーレンを用いて製造することが好ましい。
【0175】
活性層の形成方法としては、従来公知の任意好適な形成方法を用いることができる。活性層は、既に説明した中間層の形成方法と同様の塗布法により形成してもよい。
【0176】
既に説明した材料を用いて形成される本実施形態の活性層の好適な形成方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子線加熱蒸着法などの真空蒸着法が挙げられる。本実施形態の光電変換素子の活性層は、より具体的には、式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物およびフラーレンを用いて、これらの材料を同時に真空蒸着する共蒸着法またはフラッシュ蒸着法により形成することが好ましい。
【実施例】
【0177】
以下、本発明にかかる実施例について説明する。本発明は下記の実施例に限定されない。
【0178】
(I)NMR分析
NMR測定は、測定対象となる化合物を重クロロホルムに溶解させたサンプルを用いて、NMR装置(JEOL社製400MHzNMR装置、JNM-ECZ400S/L1)により実施した。
(II)UV-vis吸収スペクトル分析
測定対象となる化合物5mgをクロロホルム0.995gに溶解させ、溶解液Iを得た。得られた溶解液0.16gとクロロホルム0.84gとを混合した混合溶液IIを得た。得られた混合溶液I0.1gとクロロホルム4.9gとを混合した混合溶液IIIを測定溶液とした。
測定装置(Varian社製 Cary 5E UV-VIS―NIR Spectrophotometer)にて、測定溶液の300-1200nmの吸収スペクトルを測定した。得られたスペクトルを、溶液吸収スペクトルと称する。
溶解液Iを、スピンコート法により、ガラス基板上に成膜し、測定サンプルを得た。測定装置(Varian社製 Cary 5E UV-VIS―NIR Spectrophotometer)にて、測定サンプルの300-1200nmの吸収スペクトルを測定した。得られたスペクトルを成膜吸収スペクトルと称する。
【0179】
<合成例1>化合物P1-1の合成
(a)1-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドール-2-オンの合成
下記のスキームに従って、1-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドール-2-オンを合成した。
【0180】
【0181】
窒素ガス雰囲気下、N―フェニル-1-ナフチルアミン7.13g(32.5mmol)を脱水ジエチルエーテル260mLに溶解して溶解液を得た。
【0182】
得られた溶解液を0℃に氷冷し、n-ブチルリチウムの2.6Mヘキサン溶液100mL(関東化学社製、260mmolのn-ブチルリチウムを含有する。)を、20分間かけて滴下して混合し、混合液を得た。
【0183】
得られた混合液を20℃に昇温し、3時間撹拌することによりリチオ化処理を行った。
【0184】
次に、リチオ化処理された反応溶液を、窒素ガス雰囲気下、大過剰のドライアイスに、移送して、カルボキシ化処理を行った。
【0185】
カルボキシ化処理された反応液を氷冷し、2N塩酸でpH4-5となるように中和した。
【0186】
中和された反応液を酢酸エチル400mLで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、さらにろ過した後、酢酸エチルを減圧留去してスラリーを得た。
【0187】
得られたスラリーを窒素ガス雰囲気下、170℃で2時間加熱した。その後、放冷し常温に戻すことにより固体を得た。
【0188】
得られた固体をヘキサンおよびトルエンの混合溶媒(混合比:3/1)を用いて再結晶することにより精製して、N-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドール-2-オン 6.34g(25.9mmol、収率79.5%)を得た。1H-NMRの結果を以下に示す。
【0189】
1H-NMR(ppm,CDCl3):8.17(d,1H)、8.09(d,1H)、7.78(t,1H)、7.64~7.38ppm(m,7H)、7.03(d,1H)。
【0190】
(b)2-メチル-1-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドリウム ヨージドの合成
下記のスキームに従って、2-メチル-1-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドリウム ヨージドを合成した。
【0191】
【0192】
窒素ガス雰囲気下、N-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドール-2-オン1.22g(5.0mmol)を脱水テトラヒドロフラン4.6mLに溶解して溶解液を得た。
得られた溶解液に、23℃で、メチルマグネシウムクロリド(12.8mmol)の1.0Mテトラヒドロフラン溶液12.8mLを10分間かけて滴下した。得られた反応液を55℃に昇温し、2時間撹拌した。
次に、反応液を、濃塩酸1.9mLを氷水23mLに希釈した希釈液に滴下した。テトラヒドロフランを減圧留去した後、析出物をろ過してろ液を得た。
【0193】
得られたろ液を、ヨウ化カリウム1.66g(10.0mmol)を脱イオン水23mLに溶解した溶解液に移送したところ、赤茶色の懸濁液が得られた。懸濁液から析出物をろ別し、析出物を脱イオン水、次いで酢酸エチルで洗浄して、50℃で真空乾燥させることにより、2-メチル-1-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドリウム ヨージド0.444g(1.20mmol、収率23.9%)を得た。1H-NMRの結果を以下に示す。
【0194】
1H-NMR(ppm,CDCl3):9.15(d,1H)、8.70(d,1H)、8.32(d,1H)、8.15(t,1H)、7.92(d、1H)、7.83(t,1H)、7.80~7.70ppm(m,5H)、3.44(s,3H)。
【0195】
(c)2-[[2-ヒドロキシ-3-[(1-フェニルベンズ[cd]インドール-2(1H)-イリデン)メチル]-4-オキソ-2-シクロブテン-1-イリデン]メチル]-1-フェニル-ベンズ[cd]インドリウム(化合物P1-1)の合成
下記のスキームに従って、2-[[2-ヒドロキシ-3-[(1-フェニルベンズ[cd]インドール-2(1H)-イリデン)メチル]-4-オキソー2-シクロブテン-1-イリデン]メチル]-1-フェニル-ベンズ[cd]インドリウムを合成した。
【0196】
【0197】
窒素ガス雰囲気下、1-ブタノール6.8mLと、トルエン6.8mLとを混合した混合液を、107℃まで昇温した。得られた混合液にスクアリン酸0.0613g(0.537mmol)を溶解させた後、2-メチル-1-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドリウム ヨージド0.399g(11.07mmol)をさらに溶解し、溶解液を2時間加熱還流した。
放冷後の溶解液に対し、溶媒を減圧留去し、エタノールを用いて再結晶することにより、2-[[2-ヒドロキシ-3-[(1-フェニルベンズ[cd]インドール-2(1H)-イリデン)メチル]-4-オキソ-2-シクロブテン-1-イリデン]メチル]-1-フェニル-ベンズ[cd]インドリウム0.215g(0.381mmol、収率71.9%)を得た。1H-NMRの結果を以下に示す。
【0198】
1H-NMR(ppm,CDCl3):9.24(d,2H)、7.98(d,2H)、7.86(t,2H)、7.68~7.46ppm(m,12H)、7.42(t,2H)、6.81(d,2H)、6.28(s,2H)。
【0199】
(II)に記載の方法に従って、化合物P1-1の溶液吸収スペクトルおよびP1-1の成膜吸収スペクトルを測定した。その結果を
図1に示す。
【0200】
<合成例2>化合物P2-1の合成
2-[[2-ヒドロキシ―3-[(1―フェニルベンズ[cd]インドール―2(1H)-イリデン)メチル]-4、5-ジオキソー2-シクロペンテン―1-イリデン]メチル]-1-フェニル-ベンズ[cd]インドリウム(化合物P2-1)を下記のスキームに従って合成した。
【0201】
【0202】
窒素ガス雰囲気下、1-ブタノール7.4mLと、トルエン7.4mLとを混合した混合液を107℃まで昇温した。次いで、混合液にクロコン酸0.0846g(0.60mmol)を溶解させた後、2-メチル-1-フェニル-(1H)-ベンズ[cd]インドリウム ヨージド0.442g(1.19mmol)をさらに溶解した溶解液を、3時間加熱還流した。
放冷後の溶解液に対し、溶媒を減圧留去し、エタノールを用いて再結晶することにより、2-[[2-ヒドロキシ-3-[(1-フェニルベンズ[cd]インドール-2(1H)-イリデン)メチル]-4、5-ジオキソ-2-シクロペンテン-1-イリデン]メチル]-1-フェニル-ベンズ[cd]インドリウム0.334g(0.564mmol、収率94.8%)を得た。
【0203】
<合成例3>化合物P3-1の合成
下記のスキームに従って、化合物P3-1を合成した。
【0204】
【0205】
窒素ガス雰囲気下、1-ブタノール48.5mLと、トルエン48.5mLとを混合した混合液を107℃まで昇温した。得られた混合液にクロコン酸0.387g(3.393mmol)を溶解させた後、ACS Appl.Mater.Interfaces 2018, 10, 11063-11069に記載の方法を参考にして合成した2-メチル-1-オクチル-(1H)-ベンズ[cd]インドリウム ヨージド2.764g(6.786mmol)をさらに溶解した溶解液を、3時間加熱還流した。
放冷後の溶解液に対し、溶媒を減圧留去し、エタノールを用いて再結晶することにより、化合物P3-1 0.963g(収率44.4%)を黒褐色固体として得た。
【0206】
<比較合成例1>化合物CP-1の合成
ACS Appl.Mater.Interfaces 2018, 10, 11063-11069に記載の方法を参考にして、下記のスキームに従って、化合物CP-1を合成した。
【0207】
【0208】
<合成例5>化合物P5-1の合成
(a)Acta Cryst. 2004, E60, o2252±o2254に記載の方法を参考にして、上記スキームに従って4-(ジメチルアミノ)ピリジニウム 2-ブトキシ―3-ジシアノメチレン-4-オキソシクロブト-1-エン-1-オレートを合成した。
【0209】
【0210】
23℃にて、マロノニトリル(7.03g、106.5mmoL)をトルエンに溶解し溶解液を得た。得られた溶解液に、3,4-ジブトキシ-3-シクロブテン―1,2-ジオン(24.56g、108.5mmoL)を加え、溶液を得た。得られた溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(12.75g、104.4mmoL)を加え、30分間撹拌すると結晶が析出した。吸引ろ過して得た結晶をトルエンとジエチルエーテルで洗浄し、4-(ジメチルアミノ)ピリジニウム 2-ブトキシ―3-ジシアノメチレン-4-オキソシクロブト-1-エン-1-オレートを30.60g得た。収率86.1%。
【0211】
(b)化合物P5-1の合成
【0212】
【0213】
窒素雰囲気下、4-(ジメチルアミノ)ピリジニウム 2-ブトキシ―3-ジシアノメチレン-4-オキソシクロブト-1-エン-1-オレート 40.9mg(0.120mmol)、2-メチル―1―オクチル―(1H)-ベンズ[cd]インドリウム ヨージド 97.8mg(0.240mmol)を溶解し溶解液を得た。得られた溶解液と1-ブタノール 1.7mL、トルエン 1.7mLとを混合した。得られた混合液を、107℃まで昇温し、2時間加熱還流した。放冷後の混合液に対し、溶媒を減圧留去しエタノールを用いて再結晶することにより、黒褐色固体である化合物P5-1 52.4mg(収率63.7%)を得た。1H-NMRおよびUV-vis吸収スペクトルの結果を以下に示す。
1H-NMR(ppm,CDCl3):8.77(t,2H)、8.02(d,2H)、7.84(t,2H)、7.64(d,2H)、7.55(t,2H)、7.16(d,2H)、6.82(s,2H)、4.21(t,4H)、1.93(quintet,4H)、1.49(quintet,4H)、1.38(quintet,4H)、1.34-1.20(m、12H)、0.87(t,6H)。
【0214】
(II)に記載の方法に従って、化合物P5-1の溶液吸収スペクトルおよびP5-1の成膜吸収スペクトルを測定した。その結果を
図2に示す。
【0215】
合成例1および合成例5で得られた化合物は、近赤外域に強い吸収を示し、可視域に相対的に小さな吸収を示した。
【0216】
<実施例1>
(近赤外光電変換素子の製造)
上記合成例1により得られた化合物(p型半導体材料)P1-1を用いて近赤外光電変換素子を製造する。本実施例において製造される近赤外光電変換素子は、陽極、正孔輸送層(電子ブロック層)、活性層、電子輸送層(ホールブロック層)および陰極を含む。
【0217】
具体的には、ITO層が設けられたガラス基板のうちのITO層をパターニングして陽極としたガラス基板を準備し、アセトン超音波洗浄、次いでUVオゾン洗浄を行う。
次に、ポリエチレンイミンを含む溶液を用いて、スピンコート法により当該溶液を、陽極が設けられている側に塗布し、塗布膜を加熱乾燥することにより、正孔輸送層を形成する。
【0218】
次いで、正孔輸送層上に、上記合成例1により得られたp型半導体材料である化合物P1-1とn型半導体材料であるC60フラーレンとを真空加熱蒸着法により共蒸着して、活性層を形成する。
【0219】
次に、活性層上に、酸化モリブデン(MoO3)を真空加熱蒸着法により蒸着して、電子輸送層を形成する。
【0220】
次いで、電子輸送層上に、Agを蒸着法により蒸着して陰極を形成することにより、近赤外光電変換素子を製造する。
【0221】
陰極の形成後、上記各層を具備するガラス基板を大気に暴露することなくグローブボックス中に移送し、UV硬化型エポキシ樹脂を塗布したガラス板を貼り合わせ、UV光を照射することにより、UV硬化型エポキシ樹脂を硬化して、近赤外光電変換素子を封止する。
【0222】
(近赤外光電変換素子の評価)
近赤外光波長領域における光電変換特性を評価するために、近赤外光電変換素子の分光感度を分光感度測定装置(分光計器社製 、CEP2000)を用いて評価する。
【0223】
<実施例2>
(近赤外光電変換素子の製造)
上記合成例2により得られたp型半導体材料である化合物P2-1を用いて近赤外光電変換素子を製造する。本実施例の近赤外光電変換素子は、陽極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層および陰極を含む。
【0224】
具体的には、ITO層が設けられているガラス基板のうちのITO層をパターニングして陽極をとしたガラス基板を準備し、アセトン超音波洗浄、次いでUVオゾン洗浄を行う。
【0225】
次に、ポリエチレンイミンの溶液を用いて、スピンコート法により当該溶液を、陽極が設けられている側に塗布し、塗布膜を加熱乾燥することにより、正孔輸送層を形成する。
【0226】
次いで、正孔輸送層上に、上記合成例2により得られたp型半導体材料である化合物P2-1とn型半導体材料であるC60PCBMとを重量比を1:3(p型半導体材料:n型半導体材料)としてクロロホルムに溶解させた溶液を、スピンコート法により塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を加熱乾燥することにより活性層を形成する。
【0227】
次に、活性層上に、酸化モリブデン(MoO3)を、真空加熱蒸着法により蒸着して、電子輸送層を形成する。
【0228】
次いで、電子輸送層上に、Agを蒸着法により蒸着して陰極を形成することにより、近赤外光電変換素子を製造する。
【0229】
陰極の形成後、上記各層を具備するガラス基板を大気に暴露することなくグローブボックス中に移送し、UV硬化型エポキシ樹脂を塗布したガラス板を貼り合わせ、UV光を照射することにより、UV硬化型エポキシ樹脂を硬化して、近赤外光電変換素子を封止する。
【0230】
(近赤外光電変換素子の評価)
近赤外光波長領域における特性を評価するために、近赤外光電変換素子の分光感度を分光感度測定装置(分光計器社製、CEP2000)を用いて評価する。
【0231】
<実施例3>
(近赤外光電変換素子の製造および評価)
化合物P1-1の代わりに、化合物P3-1を用いた以外は、実施例1と同様にして、近赤外光電変換素子を製造し、評価する。
【0232】
<実施例4>
(近赤外光電変換素子の製造および評価)
化合物P1-1の代わりに、化合物P3-1を用いた以外は、実施例2と同様にして、近赤外光電変換素子を製造し、評価する。
【0233】
<実施例5>
(近赤外光電変換素子の製造および評価)
化合物P1-1の代わりに、化合物P5-1を用いた以外は、実施例1と同様にして、近赤外光電変換素子を製造し、評価する。
【0234】
<実施例6>
(近赤外光電変換素子の製造および評価)
化合物P1-1の代わりに、化合物P5-1を用いた以外は、実施例2と同様にして、近赤外光電変換素子を製造し、評価する。
【0235】
<比較例1>
(近赤外光電変換素子の製造および評価)
化合物P1-1の代わりに、化合物CP-1を用いた以外は、実施例1と同様にして、近赤外光電変換素子を製造し、評価する。
【0236】
<比較例2>
(近赤外光電変換素子の製造および評価)
化合物P1-1の代わりに、化合物CP-1を用いた以外は、実施例2と同様にして、近赤外光電変換素子を製造し、評価する。
【0237】
実施例1~6の近赤外光電変換素子は、近赤外波長領域における光電変換効率に優れ、可視光域における光電変換効率が低い。