(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】Alvarez-Macovski減衰モデルを使用した断層像再構成におけるX線ビームハードニング補正
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221124BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20221124BHJP
【FI】
A61B6/03 350X
A61B6/03 350J
G01N23/046
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019077112
(22)【出願日】2019-04-15
【審査請求日】2022-01-24
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チーヘン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ グレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】レイサム シェーン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シェパード エイドリアン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】キングストン アンドリュー
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0156684(US,A1)
【文献】特開昭53-017291(JP,A)
【文献】Qiheng Yang et al.,An Iterative method for Beam Hardening Corrections using the Alvarez-Makovski Model,3rd International Conference on Tomography of Materials and Strucures,2017年06月
【文献】Robert E. Alvarez and Albert Macovski,Energy-selective Reconstructions in X-ray Computerized Tomography,Physics in Medicine & Biology,1976年,Vol. 21, No. 5,pp. 733-744,ISSN: 0031-9155, doi: 10.1088/0031-9155/21/5/002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G01N 23/00 - 23/2276
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の断層像を再構成する方法であって、
順投影モデルを単純化する工程であって、前記順投影モデルがAlvarez-Macovski(AM)減衰モデルに基づくものであり、前記順投影モデルの単純化が、光電効果のみ、前記被検体全体で一定密度、前記被検体全体で一定原子番号、および密度が原子番号に比例することのうちの1つについて前記AM減衰モデルを単純化する、工程;ならびに
単純化された前記順投影モデルおよび逆投影を使用して被検体の反復再構成を実行する工程であって、第1のエネルギーで得られる前記被検体の測定画像データが、第1のエネルギーに関連する第1のスペクトルによって重みづけされた単純化された前記順投影の出力と比較され、前記反復再構成の前記逆投影が、単純化された前記順投影モデルに対して非随伴であり、前記逆投影は単色放射線を想定している、工程
を含む、断層像再構成方法。
【請求項2】
光電効果のみについての前記順投影モデルの前記単純化が、光電効果項のみが実装されるように前記AM減衰モデルにおけるコンプトン散乱効果項を無視することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一定密度についての前記順投影モデルの前記単純化が、密度を一定に設定して前記AM減衰モデルを投影することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
一定原子番号についての前記順投影モデルの前記単純化が、原子番号を一定に設定して前記AM減衰モデルを投影することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
密度が原子番号に比例することについての前記順投影モデルの前記単純化が、原子番号を、比例定数によって重み付けされた密度被検体パラメータに設定することと、前記AM減衰モデルにおける原子番号を置き換えることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
順投影モデルを単純化する工程が、変数の数を2から1に減少させることを含み、2つの前記変数が密度および原子番号を含み、前記変数の数を減少させることが、密度を原子番号の関数にするかまたは原子番号を密度の関数にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反復再構成の実行における残差を最小にする前記単純化を決定することに基づいて前記AM減衰モデルの前記単純化を決定する工程をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
単純化された前記順投影モデルを使用して前記被検体の前記反復再構成を実行する工程が、前記再構成におけるビームハードニングアーチファクトを低減する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
以下を備える、システム:
被検体を取り付けるためのステージ;
前記被検体を画像化するためのX線を提供するように接続されているX線源;
前記被検体を横切った後の前記X線を受け取るように接続されている検出器;ならびに
少なくとも前記X線源および前記検出器に接続されている制御器であって、前記制御器が、メモリに記憶されているコードを実行するように構成されている1つ以上のプロセッサを含むかまたはそれに接続されており、前記コードが実行されると、
順投影モデルを単純化することであって、前記順投影モデルが、Alvarez-Macovski(AM)減衰モデルに基づくものであり、前記順投影モデルの単純化が、光電効果のみ、被検体全体で一定密度、被検体全体で一定原子番号、および密度が原子番号に比例することのうちの1つについて前記AM減衰モデルを単純化する、こと、ならびに
単純化された前記順投影モデルおよび逆投影を使用して被検体の反復再構成を実行することであって、第1のエネルギーで得られる前記被検体の測定画像データが、第1のエネルギーに関連する第1のスペクトルによって重みづけされた単純化された前記順投影の出力と比較され、前記反復再構成の逆投影が、単純化された前記順投影モデルに対して非随伴であり、前記逆投影は単色放射線を想定している、こと
を前記制御器に行わせる、制御器。
【請求項10】
実行されると、前記制御器に、前記反復再構成の実行における残差を最小にする前記単純化を決定することに基づいて前記AM減衰モデルの前記単純化を決定させる、コードをさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
単純化された前記順投影モデルを使用して前記被検体の前記反復再構成を実行することが、前記再構成におけるビームハードニングアーチファクトを低減する、請求項
9または10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概してコンピュータ断層撮影を対象とし、より具体的には断層像再構成のビームハードニング補正を対象とする。
【背景技術】
【0002】
断層撮影、またはコンピュータ断層撮影(CT)は、任意の種類の侵入粒子または波の使用を通して通常得られる関心対象物の2D投影を結合することによって、対象物の三次元モデルを形成するプロセスである。断層撮影は、限定されないが、医学、歯科学、生物学、環境学、毒物学、鉱物学、およびエレクトロニクスなど、そのような様々な分野において幅広い用途を有する急速に進歩している画像化技術である。断層撮影プロセスは、X線システム、透過型電子顕微鏡(TEM)、および/または走査透過型電子顕微鏡(STEM)などの様々なツールを使用して、例えば、被検体の原子構造および化学分析などの様々なタイプの情報を取得する。3D断層撮影データセットは、典型的には、被検体を通して取得された一連の2D画像を異なる角度で逆投影することによって得られる。
【0003】
CTは、過去30年間、非破壊画像技法として化石、貯留岩、土壌などの地質学的被検体の研究に従来から適用されてきた。可能な用途の数は、コンピュータマイクロ断層撮影(μCT)画像化技法が今やサブミクロンの分解能に達することができるようになるにつれて、分解能の増加とともに成長してきた。そのような使用の増加とともに、特にビームハードニング効果と呼ばれるものの補正に関して、新たな課題と機会が現れている。
【0004】
ビームハードニング効果は、少なくとも部分的には、スキャンされた材料とスキャンビームとの相互作用によるものであり、これは使用される特定のCTプロセスでは適切に説明され得ない。より具体的には、ビームハードニング効果は、スキャンビームのスペクトルの性質を考慮することの欠如によるものであり、さらに低エネルギースキャンビーム成分の検出の欠如によるものであり得る。低エネルギースキャンビーム成分の検出の欠如は、高エネルギースキャンビーム成分よりまさるスキャンされた材料中の低エネルギースキャンビーム成分の減衰によるものであり得る。
【0005】
概して、単一スキャンからの多色減衰データから断層像再構成を実行するには不十分な情報がある。それゆえに、被検体について仮定がなされない限り、ビームハードニングは計算的に解決できないと思われる問題を提示する。特定の場合(骨や組織の画像化など)をターゲットにする、あるいは大きな計算オーバーヘッドを必要とするといった多くの方法が提案されているが、μCT画像化に広く採用されている方法は見られない。近年X線画像化の他のアーチファクトが劇的に減少したので、それゆえに、ビームハードニングは、多くの状況において画像化アーチファクトの主要な原因の1つとなり、そして実験室ベースのX線断層撮影のための鍵となる課題の1つであり続けている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で提供されるのは、μCT画像化にとって広く関心のある状況で働くビームハードニング補正のための技法である。
より具体的には、本発明は以下を提供する:
[1] 順投影モデルを単純化する工程であって、前記順投影モデルがAlvarez-Macovski(AM)減衰モデルに基づくものであり、前記順投影モデルの単純化が、光電効果のみ、一定密度、一定原子番号、および密度が原子番号に比例することのうちの1つについて前記AM減衰モデルを単純化する、工程;ならびに
単純化された前記順投影モデルを使用して被検体の反復再構成を実行する工程であって、前記反復再構成が第1のスペクトルによって重み付けされ、前記反復再構成において使用される前記被検体の測定画像データが第1のエネルギーで得られ、かつ、前記反復再構成の逆演算が、単純化された前記順投影モデルに対して非随伴である、工程
を含む、断層像再構成方法;
[2] 光電効果のみについての前記順投影モデルの前記単純化が、光電効果項のみが実装されるように前記AM減衰モデルにおけるコンプトン散乱効果項を無視することを含む、[1]に記載の方法;
[3] 一定密度についての前記順投影モデルの前記単純化が、密度を一定に設定して前記AM減衰モデルを投影することを含む、[1]に記載の方法;
[4] 一定原子番号についての前記順投影モデルの前記単純化が、原子番号を一定に設定して前記AM減衰モデルを投影することを含む、[1]に記載の方法;
[5] 密度が原子番号に比例することについての前記順投影モデルの前記単純化が、原子番号を、比例定数によって重み付けされた密度被検体パラメータに設定することと、前記AM減衰モデルにおける原子番号を置き換えることと、を含む、[1]に記載の方法;
[6] 順投影モデルを単純化する工程が、変数の数を2から1に減少させることを含み、2つの前記変数が密度および原子番号を含み、前記変数の数を減少させることが、密度を原子番号の関数にするかまたは原子番号を密度の関数にすることを含む、[1]に記載の方法;
[7] 前記反復再構成の実行における残差を最小にする前記単純化を決定することに基づいて前記AM減衰モデルの前記単純化を決定する工程をさらに含む、[1]に記載の方法;
[8] 単純化された前記順投影モデルを使用して前記被検体の前記反復再構成を実行する工程が、前記再構成におけるビームハードニングアーチファクトを低減する、[1]に記載の方法;
[9] 高エネルギー低分解能スキャンから取得される前記被検体の高エネルギーデータが、前記単純化を決定するため、ならびに前記反復再構成において使用されるρおよび原子番号の初期値を決定するために使用される、[1]に記載の方法;
[10] 前記被検体の低エネルギー高分解能データが、前記反復再構成において使用される、[1]に記載の方法;
[11] 以下を備える、システム:
被検体を取り付けるためのステージ;
前記被検体を画像化するためのX線を提供するように接続されているX線源;
前記被検体を横切った後の前記X線を受け取るように接続されている検出器;ならびに
少なくとも前記X線源および前記検出器に接続されている制御器であって、前記制御器が、メモリに記憶されているコードを実行するように構成されている1つ以上のプロセッサを含むかまたはそれに接続されており、前記コードが実行されると、
順投影モデルを単純化することであって、前記順投影モデルが、Alvarez-Macovski(AM)減衰モデルに基づくものであり、前記順投影モデルの単純化が、光電効果のみ、一定密度、一定原子番号、および密度が原子番号に比例することのうちの1つについて前記AM減衰モデルを単純化する、こと、ならびに
単純化された前記順投影モデルを使用して被検体の反復再構成を実行することであって、前記反復再構成が第1のスペクトルによって重み付けされ、前記反復再構成において使用される前記被検体の測定画像データが第1のエネルギーで得られ、前記反復再構成の逆演算が、単純化された前記順投影モデルに対して非随伴である、こと
を前記制御器に行わせる、制御器;
[12] 光電効果のみについての前記順投影モデルの前記単純化を実行するための前記コードが、
実行されると、前記制御器に、光電効果項のみが実装されるように前記AM減衰モデルにおけるコンプトン散乱効果項を無視させる、コード
をさらに含む、[11]に記載のシステム;
[13] 一定密度についての前記順投影モデルの前記単純化を実行するための前記コードが、
実行されると、前記制御器に、密度を一定に設定して前記AM減衰モデルを投影させる、コード
をさらに含む、[11]に記載のシステム;
[14] 一定原子番号密度についての前記順投影モデルの前記単純化を実行するための前記コードが、
実行されると、前記制御器に、原子番号を一定に設定して前記AM減衰モデルを投影させる、コード
をさらに含む、[11]に記載のシステム;
[15] 密度が原子番号密度に比例することについての前記順投影モデルの前記単純化を実行するための前記コードが、
実行されると、原子番号を、比例定数によって重み付けされた密度被検体パラメータに設定することと、前記AM減衰モデルにおける原子番号を置き換えることとを前記制御器に行わせる、コード
をさらに含む、[11]に記載のシステム;
[16] 順投影モデルを単純化するための前記コードが、
実行されると、前記制御器に、変数の数を2から1に減少させるコードであって、2つの前記変数が密度および原子番号を含み、前記変数の数を減少させることが、密度を原子番号の関数にするかまたは原子番号を密度の関数にすることを含む、コード
をさらに含む、[11]に記載のシステム;
[17] 実行されると、前記制御器に、前記反復再構成の実行における残差を最小にする前記単純化を決定することに基づいて前記AM減衰モデルの前記単純化を決定させる、コード
をさらに含む、[11]に記載のシステム;
[18] 単純化された前記順投影モデルを使用して前記被検体の前記反復再構成を実行することが、前記再構成におけるビームハードニングアーチファクトを低減する、[11]に記載のシステム;
[19] 前記コードが、前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記制御器に高エネルギー低分解能スキャンから前記被検体の高エネルギーデータを取得させ、さらに、前記高エネルギーデータを、前記単純化を決定するため、ならびに前記反復再構成において使用される密度および原子番号の初期値を決定するために使用されるようにする、[11]に記載のシステム;ならびに
[20] 前記被検体の低エネルギー高分解能データが、前記反復再構成において使用される、[11]に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、本開示の一実施形態による、被検体のCTスキャンを取得し、ビームハードニングアーチファクトを補正するためのCTシステムの図解である。
【
図2】
図2は、反復再構成のための方法のフローダイヤグラムの一例である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による、Alvarez-Macovski(AM)モデルを使用した二重エネルギー反復再構成方法の一例である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による、ビームハードニング補正された再構成を得るために単純化AMモデルを使用して断層像再構成を実施するための一例の方法である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態による、パラメータ値を推定するための一例の方法である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態による、
図4の方法においてどの単純化を実施すべきかを判定するための一例の方法である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態による、分散データを使用する二重エネルギー方法の一例である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態によるCTシステムの一機能ブロックダイヤグラムの例である。
【
図9】
図9は、本明細書に開示されている技法を使用した再構成を非ビームハードニング補正の再構成例とともに図示する。
【
図10】
図10は、本明細書に開示されている技法を使用した再構成を非ビームハードニング補正の再構成例とともに図示する。
【0008】
同じ参照番号は、図面のいくつかの図全体にわたって、対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の詳細な説明
本発明の実施形態は、コーン形状のX線ビームおよび円形またはヘリカルスキャン(被検体)軌道を使用する、小さい対象物、特に円筒形被検体、のマイクロメートルスケールまたはナノメートルスケールのコンピュータ断層撮影のための断層撮影画像化装置に関連して以下に説明される。しかしながら、本明細書に記載の方法は一般に、コーンビームシステムおよびパラレルビームシステムの両方を含む広範囲の異なる断層撮影の方法および装置に適用可能であり、特定の装置タイプ、ビームタイプ、対象物タイプ、長さスケール、またはスキャン軌道に限定されないことを理解すべきである。
【0010】
本出願および特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数形も含む。加えて、用語「含む(includes)」は、「含む(comprises)」の意味である。さらに、用語「接続された」は、接続されたアイテム間の中間要素の存在を排除するものではない。
【0011】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法は多少なりとも制限的なものとして解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、単独で、ならびに種々の互いの組み合わせおよび部分的な組み合わせで、種々の開示された実施形態のすべての新規性および非自明性を有する特徴および態様を対象とする。開示されたシステム、方法、および装置は、任意の特定の態様または特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、開示されたシステム、方法および装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在する、または問題が解決されることも必要としない。いずれの実施理論も説明を容易にするためであるが、開示されたシステム、方法、および装置は、そのような実施理論に限定されない。
【0012】
開示された方法のうちのいくつかの実施は、便宜上、特定の順番で記載されているが、以下に記載される具体的な言葉によって特定の順序が要求されない限り、この説明方法が並び替えを包含することを理解されるものとする。例えば、順に記載される実施は、いくつかの場合では、並び替えまたは同時に実行されてもよい。さらに、単純化のために、添付の図面は、開示されたシステム、方法、および装置が、他のシステム、方法、および装置とともに使用することができる様々な方法を示さないことがある。加えて、説明は、開示された方法を説明するために、「生成する」および「提供する」等の用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の実施の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の実施は、特定の実施に応じて、様々であり、当業者には容易に認識できる。
【0013】
いくつかの例では、値、手順、または装置は、「最低」、「最良」、「最小」などと呼ばれる。そのような記載は、多くの使用されている機能的選択肢の中からの選択が可能であり、そのような選択が他の選択よりも優れている、より小さい、または他の選択肢である必要はないことを示すことを意図していることが理解されよう。
【0014】
上で簡単に述べたように、3Dコンピュータ断層撮影は、対象物の内部構造を調査するための主要な技法であり、その魅力はその便利さ、多用性および非破壊性から生じる。しかしながら、一連の2DX線放射線写真からの断層像再構成は、再構成において望ましくない特徴またはアーチファクトを生成する。これらのアーチファクトは、放射線写真からボリュームデータを構築するのに使用される反転技法における不完全性の結果である。これらのアーチファクトの原理的原因は、物理的スキャンプロセスを正確にモデル化することの失敗である。不正確な幾何学、下手な雑音モデル、および相対的な構成要素(または標本)の動きに対する補償の欠如を有する再構成技法は、典型的に、望ましくない結果を生成する。実験室ベースの断層撮影において、このカテゴリの中で最も観察可能なアーチファクトはしばしば、X線源から放出される多色スペクトルを無視することから生じるものである。反転において単純な単色モデルを仮定することが、ビームハードニングアーチファクトをもたらす。X線放射のスペクトルは、それが標本を透過するにつれてハードニングされる。低エネルギー(または軟)X線は、高エネルギー(または硬)X線よりまさって優先して減衰され、得られるX線ビームの平均エネルギーは結果としてより高い。より硬いX線ビームでは、標本はあまり減衰しないように見え、矛盾した測定データのセットをもたらす。スペクトル効果が再構成において考慮されない場合、ビームハードニングは、特徴的なカッピングおよびストリーキングアーチファクトを生成し、例えば
図9および10を参照。これらの望ましくない特徴は、再構成においてグレースケール減衰において変動を引き起こす。結果として、両方の対象物が同じ材料から作られている場合、それは目には不明瞭であり得、閾値ベースの自動セグメンテーションは不可能になる。
【0015】
ビームハードニングアーチファクトは、単一の材料の減衰値をその周囲の状況に依存させることによって投影プロセスの線形性を破壊する。これは、材料の単純かつ健全な識別を妨げ、それはi)歯科用CTのエナメル質に不規則性を見つける、ii)岩石物理学モデリングのためのマイクロCTにおける多孔質岩石の組成の識別、のような用途におけるX線画像化の使用にとって重大な障害である。当然のことながら、これらのアーチファクトを無力化するために多大な努力が払われてきた。アプローチは大きく3つのカテゴリに分類することができる:1)線形化、2)スペクトルフィルタリング、および3)反復再構成技法。
【0016】
エネルギーEの単色X線の場合、減衰係数μ(E)および厚さtを有する単一材料による減衰は、Beer-Lambertの法則に従ってモデル化される(下記式(1))。Beer-Lambertの法則に基づいて、強度I
0を有する初期X線の透過量Iは、下記式である。
【0017】
したがって、予測される減衰量-log(I/I0)は、材料の厚さとともに直線的に増加する。線形化技法は、くさびを画像化してくさびに沿った減衰の変化を材料の厚さで較正するなど、この線形関係を復元することに依存する。この方法は、単一の材料に対して有効であるが、各材料は固有の補正曲線を持っているため、マルチ材料被検体については近似値のままである。そのため、マルチ材料標本の補正は、アーチファクトを減らす可能性はあるが、それらを完全に除去することはできない。
【0018】
スペクトルの物理的フィルタリング(より単色になるための)は、X線源と標本との間に一定の厚さの何らかの既知の材料を挿入することによって達成される。これは、低エネルギーX線の大部分を除去する(すなわちフィルタ除去する)ことができ、画像化の前にX線スペクトルを効果的に事前ハードニングさせることができる。ビームハードニングの影響は大幅に減らすことができるが、X線束と信号対雑音比が犠牲になる。
【0019】
線形化もフィルタリングも、投影モデルの実際の物理をモデル化していないので、問題の症状の代わりに原因を扱わず、各特定のシナリオに関する追加の物理的情報を有さないすべての可能な場合において補正を実行することにおいて楽観的過ぎる。
【0020】
線形化およびフィルタリングの限界は、画像取得をより忠実にモデル化するために、投影プロセスにより多くの情報を組み入れる反復再構成方法の使用を動機付ける。実際のスキャンを「十分に良い」と見なされるまで徐々に近似するいくつかの方法が繰り返しスキーム内で開発されてきた。このアプローチは、様々な量の事前情報を使用し、または独自の単純化や追加の仮定を行う。
【0021】
いくつかの反復スキームの主な欠点はそれらの複雑さである。線形化方法に対して、反復ごとに多数の変数を最適化する必要があるか、または反復ごとに8つもの数の計算コストのかかる投影/逆投影演算が必要になる。したがって、再構成プロセスに減衰の正しい物理モデルを含めるという展望は望ましいが、統計的および物理的に正しい物理モデルを組み込む際の複雑さは、これらの方法が未だ広く採用されていないことを意味している。同様の理由で、収束を保証するために正確なセグメンテーションが要求されるため、多項式フィット方法は不十分である。セグメンテーションプロセスは、真の生命材料上のビームハードニングの影響のため厳密には難しいので、材料のアイデンティティが未知のとき、これは本当には実際的ではなく、それは多数のシナリオにおいてその適用を除外する。別の方法は、多色減衰が、各横断ピクセルの減衰係数に関して単色X線のエネルギーを線形に減少させることによって近似できるという仮定を利用する。この単色X線は、いったん材料から出てくると、材料内の同じ経路を通って進んだ多色X線と同じ強度を有するであろう。この近似は大まかな経験則になり得るが、一般的に確かにはそうではない。いずれにせよ、この方法はまた、被検体に応じてカスタマイズする必要があり、その物理的直感が明らかではないという2つの追加のパラメータをもたらすことによって追加の複雑さをもたらす。
【0022】
X線減衰のAlvarez-Macovski(AM)モデルは、2つの材料特性、すなわち材料密度ρと原子番号Zの関数である。二重エネルギー画像化とスペクトルの知識を組み合わせると、AMモデルは、減衰用の全多色モデルを取り扱うことができる。2つの未知の特性があるので、Eの関数として対象物の実際の減衰を解くために二組の独立した情報が提供されなければならない。二重エネルギー画像化において、これら2つのデータの組は異なるエネルギーでのスキャンである。二重エネルギー画像化は、減衰の多色モデルを考慮に入れるので、それは本質的に再構成プロセス中のビームハードニング補正を処理する。しかしながら、二重エネルギー方法は、通常のスキャンの2倍のスキャン時間および少なくとも2倍の再構成計算を必要とし、そして比較および分析のための2つのスキャンを一緒にするためにアラインメントプロセスが必要とされる。
【0023】
これらの問題に対処するために、本明細書に開示される技法は、反復スキーム内に多色X線減衰の物理を組み込むための単純で直接的な方法を含む。AMのX線減衰モデルに必要とされる2つの未知の材料特性を1つに減らすことができるいくつかの仮定が提案される。これらの単純化のうちの1つが決定されると、X線エネルギースペクトルが、補正を実行するために必要な唯一の物理的情報であり得る。これらの仮定を使用して、単一の指定されたX線エネルギーE0での標本減衰を再構成することができる。順プロセスは、1回、または多くて2回の投影演算で多色実験をシミュレートする。すべての誤差がE0にあると仮定することによって、随伴逆演算の必要性は無視することができ、逆プロセスは単に、被検体にわたって平均化された単一のエネルギーにおける逆投影のままである。
【0024】
いくつかの実施形態では、X線減衰のAMモデルは反復再構成において実施し得る。AMモデルは、光電効果に基づく減衰を対象とする項およびコンプトン散乱に基づく減衰を対象とする項を含む。X線減衰に関しては、X線の5~120keVのエネルギー領域における光子の材料減衰は、主に光電効果およびコンプトン散乱の効果によるものである。全被検体中の各部分の比率は、各材料および異なるエネルギーにおいて変わる。光電効果は、周回電子が光子を吸収し、その後それ自体射出されるときに起きる。単位距離当たりのこのような相互作用の確率(τ)は、下記の式(2)で与えられるように、単位ボリューム当たりの原子数(N)、原子番号(Z)、および光子のエネルギー(E)に関連する。
【0025】
O(Z)項は、単純化AMモデルでは無視することができるZの二次関数を指す。べき指数nとmは定数で、3と5との間の値を取ることができる。本明細書では、AMモデルの許容値として3の値を使用する。光子エネルギーに対する逆三乗関係は、光電効果による減衰がエネルギーの増加とともに急速に低下することを意味し、そのため、減衰長のわずかな違いでも減衰の大きな違いを異なるエネルギーで与え、それゆえ、光電効果がビームハードニングの効果の大部分を占める。
【0026】
対照的に、コンプトン散乱はX線領域にわたってはるかに安定したままである。コンプトン散乱は、高エネルギー光子が自由電子によって吸収され再放出されるが、その経路が元の方向からθだけ偏向されているときである。相互作用の確率はKlein-Nishina断面積によって与えられ、それは式(3)の形になる。
【0027】
したがって、全光子減衰の十分な実施には、光電効果とコンプトン散乱の両方を考慮する必要がある。組み合わせはAMモデルで提案されており、式(4)の形をとる。
ここで、エネルギーEでの単位長さμあたりの全材料減衰は、2つの現象の線形の組み合わせによって与えられる。K
1とK
2は実際の減衰曲線に当てはめなければならない2つの係数であり、nは通常4に設定される定数である。合理的には、この単純化はX線吸収エッジの影響を無視し、それゆえに、kエッジが通常のX線領域内にある高原子番号元素に対して正確なモデルになることはできない。しかしながら、それは吸収の一般的な形状を非常によくモデル化しており、それが減衰をちょうど2つの単一材料特性(密度ρおよび原子番号Z)まで減少させるという意味で単純である。
【0028】
図1Aおよび
図1Bは、本開示の一実施形態による、被検体のCTスキャンを取得してビームハードニングアーチファクトを補正するためのCTシステム100の図解である。システム100は、X線源102、被検体ステージ104、および検出器106を少なくとも含む。X線源102は、コーン形状のX線ビーム108を発生し、それは被検体ステージ104上に載置された対象物110を透過して検出器106に伝達される。コーン角およびファン角は、線源102において検出器106によって範囲を定められた垂直および水平の半角としてそれぞれ定義される。検出器106は、X線が照射されると可視光を発生するシンチレータと、シンチレータの背後に取り付けられ、シンチレータによって発生されたシンチレーションの空間的配置の二次元画像を表す画像データを発生するCCDまたはアモルファスシリコンフラットパネルセンサとを含み、こうして、対象物を透過したX線に対する二次元画像またはX線強度のマップを生成する。理解されるように、これらの画像の各々は、対象物を透過して検出器106に伝わるX線の方向に沿って投影されたときの、対象物の外部および内部構造特徴の両方を示す。検出器106によって発生された画像データは、その後の処理のためのシステムのコンピュータシステム(図示せず)内にバイナリデータの形で記憶された画像のセットとして取得される。画像は、被検体ステージ104を作動させて、連続する画像間で被検体110を小さい角度だけ回転させて(および、ヘリカルスキャンの場合においては、被検体または対象物110を小さい距離だけ並進もさせて)順次取得され、こうして対象物を通る異なる幾何学的投影を提供する。これらのステップは、被検体が少なくとも180°+ファン角の回転を受け、投影画像の完全なセットが取得されるまで、繰り返される。ヘリカルスキャンの場合においては、ステップは、被検体110が十分な線形垂直並進および回転を受けて、被検体の関心領域について完全な情報が得られるまで繰り返される。本開示は、被検体の軌道を図示するために線源102および検出器106に対して被検体110の移動を使用するが、その移動は相対的であると考えられるべきであり、いくつかの実施形態では、線源102/検出器106の対が代わりに被検体110に対して移動する。
【0029】
被検体110のX線画像は、回転および並進ステージの両方を作動させて、連続する画像間で被検体を少量だけ回転および並進させて順次取得され、こうして被検体110を通る一連の異なる幾何学的投影を提供する。上述のように、垂直並進と垂直軸周りの回転とを組み合わせて広範囲の可能な軌道を発生することができ、そのため、それらの軌道のうちの任意の軌道に沿って取得された対応する一連の投影が被検体110に関する完全な情報を提供することができる。そのような軌道は、例えば、サドル軌道、サークルプラスライン軌道の変形、および空間充填タイプの軌道を含むことができる。空間充填タイプの軌道は、被検体110の少なくとも一部の周りにアレイ状に間隔を空けられた複数の視野角を含む。
【0030】
述べたように、システム100のような、従来の実験室ベースのCTシステムは、カッピングおよびストリーキングのようなビームハードニングアーチファクトを含む被検体の再構成を提供し得る。例えば、
図9を参照されたい。これらのアーチファクトは、典型的には、線源102によって提供されるX線のスペクトルコンテンツを考慮することの欠如が一因である。X線源のスペクトルコンテンツを考慮することは、より高い信号対雑音比を提供し、より高品質の画像をもたらし得るが、被検体110による低エネルギーX線の減衰は、従来の再構成モデルによる所望の考慮を妨げ得る。例えば、典型的な再構成は、順および逆投影計算の両方を使用して実験をシミュレートすることを含む反復スキームを実施する場合がある。しかしながら、順方向実験のシミュレーションがX線ビームのスペクトルコンテンツを考慮することができない場合には、再構成の品質が不足している可能性がある。
【0031】
上記で論じたしたように、本明細書に開示されている断層撮影画像化プロセスは、反復再構成スキームで実施するための単純化された順投影モデルを決定することを含む。単純化の決定は、二重エネルギー反復再構成を実行することを含み得、ここで2つのエネルギーは、低エネルギー高分解能スキャン、および低分解能データから得られたダウンサンプリングされた低エネルギーデータであることができる。 低分解能データは、別個の高エネルギースキャンから、または低エネルギー高分解能スキャンの分散データに基づいて得られ得る。二重エネルギー反復再構成から得られた中間値は、密度ρおよび原子番号Zのような平均被検体パラメータを決定するために使用され得る。加えて、減衰推定値とともにX線源102のスペクトル情報を使用して、実施するのに最適な単純化を決定し得る。単純化が決定されると、単純化を使用して単一エネルギー反復スキームが実行されて、ビームハードニング補正(BHC)された断層像再構成を生成する。
【0032】
反復再構成スキームで実施される順投影は、本明細書で決定されるような完全AMモデルまたは単純化バージョンであり得る。上述したように、AMモデルは、X線減衰の主なメカニズムを考慮するモデルのために、さらにそれが線源102のスペクトルにわたるスケーリングに適用できるという理由で実施される。実施に関して、システム100は、被検体の1つ以上の再構成を実行するために、被検体110の低エネルギー高分解能スキャンを実行し得る。ビームハードニングアーチファクトを除去するために、システム100は、被検体110のビームハードニング補正(BHC)された再構成を提供するためにAMモデルへの単純化を使用して反復スキームを実行し得る。単純化の結果、単一エネルギーでのスキャンデータのみ、例えば低エネルギー高分解能スキャンデータが、再構成を計算するために必要とされる。しかしながら、以下により詳細に論じられるように、様々な他のパラメータおよび実施するための最良の単純化の初期決定もまた決定され得る。ただし、様々な他のパラメータおよびどの単純化を実施するかについての初期決定は、必要ではない可能性があることに留意すべきであり、その代わりに、初期推測が追加のアルゴリズムの代わりになり得る。
【0033】
例えば、すべての減衰を光電効果に起因させるなどの単純化についての推測がなされてもよく、AMモデルの関連する単純化は、単一エネルギー反復スキームにおいて実施されてもよい。ボリューム減衰についての追加の初期推定値も最初に作成し得るが、この推定値は、アルゴリズムが測定データに収束するにつれて改善される。また関連するのは、反復スキームで実施される逆投影演算である。述べたように、そのような反復スキームにおいて随伴逆投影を実施することは慣習的であるが、単純化されたAMモデルに対してもそうすることは計算的に負担が大きい可能性がある。そのように、被検体にわたって平均化された単一のエネルギーで単純な逆投影が代わりに用いられてもよく、それは随伴関係を壊す。しかしながら、この変更は、低計算オーバーヘッドで所望のBHC再構成を提供することが証明されている。様々なアルゴリズムおよび反復スキームは、以下でさらに詳細に論じられる。
【0034】
図2は、方法201の例示的フローダイヤグラムである。方法201は、当技術分野で知られているような反復再構成技法を図示する。方法201は、コンバイナ205で開始することができ、ブロック203からのボリューム推定値または平均減衰推定値のいずれかを逆投影213の出力と組み合わせる。データの組み合わせは、加算または乗算のいずれによっても実行され得る。最初は、逆投影213の出力はゼロであり得、203の値が順投影207に提供され、順投影207は、実験をシミュレートするために、すなわち被検体のX線減衰をシミュレートするために203の値を投影する。207の出力、すなわち実験のシミュレーションは、コンバイナ209に提供され、コンバイナ209は、シミュレーションの結果を測定データ211と比較する。比較は、減算または除算のいずれかによって実行され得、コンバイナ205によって実行されるプロセスの逆であり得る。コンバイナ209の結果は、逆投影を実行する逆投影213に提供される。逆投影は、望ましくは随伴逆投影、すなわち順投影207で実行されるものと逆の演算、であり得る。逆投影は、差分データを本質的に逆投影して、測定データを取得するために使用される線源をシミュレートする。逆投影213の出力は、初期推定値、すなわち203のデータ、と組み合わされるようにコンバイナ205に提供される。組み合わされたデータは次に方法201の別の反復を完了する。方法201は、シミュレートデータおよび測定データの収束が得られるまで反復され得る。
【0035】
反復再構成方法は、より良いボリューム推定値を連続的に生成しようとし、投影されたときに、測定データがこの推定値である可能性を最大にする。推定値の投影と測定データとの間の差分(必ずしも減算によるものではない)を計算し、それをボリューム空間に逆伝播して次の反復のための改善された推定値を与えることによって、推定値は各反復において改善される。任意の反復再構成技法の手順は、アルゴリズム1(下記参照)において一般化されている。本方法はその入力として測定データyを取り、そして再構成されたボリュームxを返す。4つの演算(4行目から7行目)のフレームワークは、典型的には、すべての反復方法について同じであり、違いは、これら4つの関数の選択と実施にある。差分関数の選択は、組み合わせ関数と対になっており、これは通常、(加算、減算)または(乗算、除算)の対である。同様に、逆投影関数は、投影関数と対になっており、これは通常、投影関数の随伴である。
1:反復手順(y、n) ◆n回の反復を有するスキャンyの反復再構成
2:x←初期化() ◆推定値の開始値を選択
3:I=1、2、3…nについて繰り返す
4:p←P(x) ◆現在の推定値を投影
5:Δ←d(p、y) ◆投影推定値とスキャンとの間の差分を計算
6:r←B(△) ◆差分を逆投影
7:x←a(r、x) ◆Xと組み合わせる
8:ループ終わり
9:手順終了
【0036】
いくつかの実施形態では、AMモデルは順投影207で実施されてもよい。しかしながら、AMモデルは少なくとも2つの変数を有するので、AMモデルを完全に解くためには、異なるエネルギーで方法201のマルチスキャンおよび/または別々の反復が必要となる可能性がある。加えて、AMモデルの随伴逆投影は、方法201の実施をさらに複雑にする可能性がある。
【0037】
図3は、本開示の一実施形態による、AMモデルを用いた二重エネルギー反復再構成方法301の一例である。方法301は、2つの異なる線源エネルギーで測定されたデータを使用し、それらの線源エネルギーの各々に関連付けられたスペクトルによってさらに重み付けされた被検体の再構成を提供し得る。方法301は、順投影になされた変更、第2の線源エネルギーの追加、および非随伴逆投影を伴って上述のアルゴリズム1に従う。しかしながら、最終結果は、被検体のビームハードニング補正(BHC)された再構成であり得る。
【0038】
二重エネルギー反復再構成を使用して完全AMモデルを実施することができるが、そのような実施は、追加のスキャン時間、追加の計算オーバーヘッド、およびより複雑な逆投影を必要とする2つの低エネルギー高分解能スキャンからのデータを必要とする。しかしながら、二重エネルギー反復再構成は、低分解能データと組み合わせて高分解能、低エネルギースキャンからのデータを使用することができ、これは、取得にかかる時間が短くなる。低分解能データは、高エネルギースキャン、例えば、本質的に事前ハードニングされている高エネルギーX線を使用するスキャン、または低分解能分散データから取得され得る。いずれの場合においても、両方のスキャンのX線スペクトルは、X線ビームのスペクトルコンテンツを考慮するために順投影をスケーリングするために使用されることになる。二重エネルギー反復再構成を実行することからの再構成は得られるが、それらの得られた再構成は、低分解能データまたは分散データを使用するために完全にビームハードニング補正されないことがある。しかしながら、ρZ3およびρのような、二重エネルギー再構成から得られた中間パラメータを、平均パラメータ値および簡素化を決定するために、AMモデルにするために、被検体のBHC再構成を得るために、本明細書に開示される他の方法では使用し得る。
【0039】
方法301は、それぞれの線源エネルギーE0およびE1における被検体のボリューム推定値または減衰推定値の値を含む開始推定値303および305から開始し得る。ブロック303、305における開始値は、コンバイナ307、309にそれぞれ提供され、コンバイナは、逆投影343および345からのデータをそれぞれ加算するか乗算する。最初に、コンバイナ307および309は、ブロック303および305の推定値と組み合わせるために逆投影343、345からデータを受け取らないことがあるが、方法301の後続の反復は、逆投影ボックス343、345からのデータを組み合わせることを含む。コンバイナ307および309の出力は、プロセスブロック311に提供され、それはエネルギーE0およびE1で逆AMモデル計算を実行する。逆AMモデルは、例えば、式4の逆であり得る。入力データに基づいて、プロセスブロック311は、被検体の密度(ρ)および原子番号(Z)の値を決定する。中間被検体パラメータと呼び得るρおよびZの両方の値がブロック313に提供され、ρの値がブロック317に提供される。ブロック313は、AMモデルの光電効果項で使用されるρ*Z3の値を決定し、一方、ブロック317は、AMモデルのコンプトン散乱項で使用されるρの値を記憶する。
【0040】
ρZ3およびρの値は、それぞれ順投影ブロック315および319においてAMモデル(式4)を使用して別々に投影され、その別々の投影は、プロセスブロック321において、AMモデルを使用して各エネルギーEにおける投影をシミュレートするために組み合わされる。プロセスブロック321の結果は、両方のコンバイナ325および329に提供され、そこでそれらは、323および327からそれぞれスペクトル0および1によって重み付けされる。スペクトル0および1は、それぞれ線源エネルギーE0およびE1に関連付けられており、それはチャンバ内に被検体を入れずにシステム100を使用して測定され得る。ブロック331および333に示すように、コンバイナ325、329の出力は、AMモデルを使用して、それぞれスペクトル0および1にわたる投影推定値を提供する。次いで、これらの推定値はそれぞれコンバイナ335および337に提供され、コンバイナ335および337は、推定値を同じスペクトル0および1にわたる測定データと比較する。コンバイナ335および337は、上述のように、それぞれコンバイナ307および309によって実行されるものと逆の演算を実行し得る。比較の差分、または残差は、次に、逆投影343および345にそれぞれ提供され、それらは非随伴逆投影を実行する。非随伴逆投影は、単一エネルギーであってそれぞれのスペクトル0および1にわたらないエネルギーでの単純逆投影を含み得る。次に、逆投影343および345の出力は、それぞれコンバイナ307および309に提供され、それによって方法301の別の反復が起こり得る。方法301は、収束が得られるまで反復を続け得る。
【0041】
アルゴリズム1に要約されているような典型的な反復スキームは、例えば、
図2および
図3の形をとる。ここで、投影演算子は、次のように、対象物の減衰係数μに適用される線Lに沿った積分によって表される。
これはBeer-Lambertの法則によって強度に変換され、次のようになる。
【0042】
ビームハードニング補正を適用するには、この単色強度計算を次のように多色形式で置き換えなければならない。
ここで、μ(E)は、AMモデルによって与えられるエネルギーEでの減衰である。各エネルギーでの減衰の投影が得られ、強度に変換され、そしてそのエネルギーのスペクトル強度S(E)によって重み付けされる(例えば、方法301のブロック315、319から325、329を参照)。すべてのエネルギーEにわたるこれらの合計は、線Lに沿った最終強度を与える。式(7)から、投影演算子は各エネルギーEで適用されなければならないように見える。これは実際には必要でないかもしれないが、しかしながら、関連する材料特性が別々に投影されるとすれば(ブロック313から315、および317から319を参照)、各エネルギーにおける投影減衰量は、単純な加算およびスケーリング演算を通してこれから得ることができる。AMモデルを単純化することに関して、1つの単純化は1つだけの投影と1/E
3のファクタによるスケーリングとを必要とし(光電効果のみ)、一方、他の単純化(Zがρに比例すること)は、1/E
3のスケーリングファクタと要求されるf
KN(E)とを有する、2つの投影を必要とする。
【0043】
より顕著には、完全AMモデルを利用することは、2つのエネルギーでのスキャンによって提供される十分な情報を用いてのみ実行することができる。なおかつ、それゆえに単純化が望ましい。すべてのエネルギーでの減衰を得るために、そこから減衰をスケーリングすることができる基礎エネルギーE0の問題もある。
【0044】
AMモデルは、X線エネルギーの関数としてのX線減衰の必要な情報、および原子番号(Z)、原子量(A)、かつ電子密度(ρ)の材料特性を提供する。このモデルは、コンプトン散乱および光電効果を含む。A=2Zと仮定すると、これを2つの変数に低減する。そのような特性を提供することができる単一の材料からなる被検体のスキャンでは、AMモデルを再構成アルゴリズムに直接適用することができる。しかしながら、特に断層撮影の主目的が、密度および有効原子番号が未知だけではなくピクセルごとに異なり得るいくつかの未知の材料を含むスキャンのアイデンティティを決定することである場合、これはモデルの適用をいくらか制限する。再構成中にこれらの材料特性をどうにかして分離する方法が必要である。基本的にこれは不良設定問題である。断層像は、ピクセルあたりの減衰係数である単一量の情報のみを提供し、減衰の2つの成分を推測するのに十分なデータがない。これは、材料の密度と原子番号が独立した量であるという事実に由来する。したがって、完全AMモデルを実行するために必要な値を抽出するには、ある程度の当て推量が必要である。
【0045】
本明細書に開示される1つの技法、すなわちAMモデルの単純化は、2つの量の間の単純な関係、すなわちZとρとの間の線形関係、例えばZ=cρを含む。この単純化は、反復スキームで多色放射を用いた物理的減衰プロセスをモデル化する方法を提供するが、その実用性の程度は依然として疑問である。減衰に対する光電吸収およびコンプトン散乱の寄与は、計算され、その後別々に投影および逆投影される必要があるので、これは必然的にアルゴリズムの複雑さを増す。しかしながら、随伴逆投影演算に対する要件を緩和し、材料特性において単純な関係を仮定することによって、アルゴリズムは著しく単純化され得る。
【0046】
図4は、本開示の一実施形態に従ってビームハードニング補正された再構成を得るために単純化AMモデルを使用して断層像再構成を実施する一例の方法401である。方法401は、2つのエネルギーでのスキャンの代わりに単一のエネルギーでのスキャンからビームハードニング補正された再構成を取得し得るように、AMモデルに対する様々な単純化のうちの1つを実施する。方法401は、方法301を単純化したものであり、AMモデルの単純化を含み、今度は、方法401を実行するのに使用される変数を決定する。例えば、単純化がAMモデルの光電効果部分のみを使用することである場合、任意選択のプロセスブロック407、409、および413は省略されてもよい。これらの任意選択のプロセスブロックは、単純化が、ρに比例するZの設定をもたらす(それにはc
3ρ
4の値とρの値の計算が必要である)ときにのみ必要になり得ることに留意すべきである。いくつかの実施形態では、方法401は、ブロック403(ならびに必要に応じてブロック409および413)に含まれる値の初期推測を使用し、実施するAMモデルの単純化(例えば、比例による単純化または光電効果のみによる単純化)をランダムに選択して、実行され得る。しかしながら、他の実施形態では、方法401を実行する前に、方法301、501、および601を実行してc、ρ、およびZの初期値を決定し得、さらに、どの単純化が方法401で実施するのに最善であり得るかを決定する。両方のワークフローが本明細書で企図されるが、c、ρ、Z、および単純化の初期決定は、本明細書で開示される技法(順投影についてAMモデルを単純化し、反復スキームにおいて非随伴逆投影を使用する)に必須ではないことことに留意されたい。
【0047】
方法201および301と同様に、方法401は、403からの初期値を逆投影429の出力と組み合わせるコンバイナ405で開始し得る。しかしながら、最初は、逆投影429の出力はゼロであり得る。コンバイナ405によって実行される組み合わせは、加算または乗算であり得る。単純化に応じて、上述のように、コンバイナ405の出力は、プロセスブロック417に直接進んでもよいし、プロセスブロック407に進んでもよい。例えば、単純化が一定密度、一定原子番号、光電効果のみ、またはコンプトン散乱のみに基づく場合、プロセスブロック405の出力はプロセスブロック417に提供される。一方、単純化が、密度に比例する原子番号を設定することである場合、コンバイナ405の出力はプロセスブロック407に提供される。
【0048】
方法401は、方法301の単純化されたバージョンであるので、フローの詳細は、簡潔さのために論じない。しかしながら、単純化のインパクトと、どのようにそれらが実施され得るかについては論じる。また、逆投影429において実行される逆投影は非随伴投影であることも繰り返し述べられるべきであり、例えば、それはプロセスブロック411および/または417において実行される投影の逆ではない。概して、単一のX線エネルギーにおける断層像マッピング減衰を決定するためにアルゴリズムのファミリが提案されている。アルゴリズムは、いくつかの最尤反復再構成方法と組み合わされたAMモデルの様々な単純化(2つの材料特性から単一の変数へそれを減らすために)によって発生される。単純化のすべてにおいて、逆投影演算が「単色」放射線を想定する典型的な逆投影演算から変更されずに、物理データ測定をより正確にシミュレートする順方向モデルを生成することが望ましい。
【0049】
1つの単純化は、密度ρが一定であると仮定することであり、これは、被検体の様々な組織によって吸収された造影剤を有する生物学的被検体などの被検体において類似密度の異なる材料を区別するのに役立ち得る。一定密度ρ値の効果的な選択は、この単純化の実施において重要な問題である。
【0050】
別の単純化は、原子番号Zが一定であると仮定することであり、これは、被検体が単一の材料からなるが、気孔率(例えば密度)の程度が異なる場合に適用可能であり得る。この単純化におけるエネルギースケーリングは、光電効果とコンプトン散乱の両方を考慮に入れており、単純化のため、反復毎に1回の投影演算しか必要としない場合がある。Zの値の選択は、先験的な知識に基づいてなされ得る。
【0051】
別の単純化は、すべての減衰が完全に光電効果によるものであると仮定することである。このアプローチは非常に単純化されているように見えるかもしれないが、ほとんどの不一致は、光電吸収が減衰を支配する低エネルギーで起こるため、単純化は、ビームハードニングアーチファクトに効果的な定性的補正を生成する。単純化には、光電効果の1/E3スケーリングが含まれ、これは、2つの異なるエネルギー間の減衰の差は、AMモデルの光電部分においては、そのモデルのコンプトン散乱部分のfKN(E)スケーリングと比較すると、はるかに顕著であることを意味する。スケーリングは、プロービングX線のスペクトルに対するAMモデルの光電効果部分の感度およびビームハードニングの効果を強調し得る。加えての利点は、これが方法401の反復ごとに1回の投影演算しか必要としないことであり得る。
【0052】
第4の単純化は、すべての減衰が完全にコンプトン散乱によるものであると仮定することであり、これは光電効果のみの単純化の逆であり得、光電効果のみを無視し得る。この単純化は、本明細書に列挙された他のものよりも適用可能性が低い可能性があるが、利用可能な単純化の完全な説明を提供するために含まれる。この単純化は、非常に硬いスペクトル、例えば高エネルギーのみ、のX線および/または完全に非常に軽い元素からなる被検体を使用する断層撮影に使用され得る。この単純化の実施はまた、方法401の反復ごとに1回の投影演算しか必要としない可能性がある。
【0053】
最後の単純化は、原子番号Zが密度ρに比例すると仮定することである。例えば、Zはcρに比例してもよく、cは比例定数である。cの例は、4.88前後であり得、これは周期表の中央近くにある材料の妥当なモデルを提供する。AMモデルの光電効果とコンプトン散乱成分との間の関係を仮定する代わりに、提案された関係は、光電効果およびコンプトン散乱係数ρZ
3=c
3ρ
4とρとの間にある。この仮定のために、順方向モデルにおいて2つの投影演算が必要とされることに注意されたい。
であるため、1つはρ
4用、1つはρ用である。
【0054】
さらに例示するために、AMモデルおよび少なくとも方法401におけるそれらの実施に関して、上記の単純化をさらに詳細に論じる。これらの単純化は、反復スキームの各々において順方向モデルを修正するために使用される。もちろん、順方向モデルを変更するだけでは、慣習的に急速な収束を提供する逆演算(この場合においては逆投影)との随伴関係を壊す。この理論上の不適合性にもかかわらず、これらの方法のすべてがシミュレートされた多色スキャンで健全に振舞い、そして妥当な速度で収束することが観察された。
【0055】
原子番号が密度に比例する
Z=cρという設定に基づいて完全AMモデルを単純化すると、次のようになる。
そしてスケーリングは、次式となる。
これは、光電効果のみの単純化などの他の単純化と比較して追加のステップを必要とし得る。第一に、あらゆるピクセルに対して、式(8)を使用するためにρを解く必要がある。その後、ρおよびρ
4の両方の投影が行われる。エネルギースケーリングは、スケーリングが2つの成分ρおよびρ
4に関して線形であるが、μに関して線形ではないために投影後に行われる。要約すれば、
(a)各ピクセルにおけるρ値を得るために単純化されたAM方程式を解き、それはρおよびρ
4を提供し、
(b)ρを投影し、
(c)ρ
4を投影し、
(d)式(9)ならびに投影データP(ρ)およびP(ρ
4)から各エネルギーについての投影減衰を得、そして
(e)投影減衰量を強度に変換し、式(7)のスペクトルによる重み付けの後に組み合わせる。
【0056】
減衰は完全に光電効果による
光電効果のみの単純化は、AMモデルのコンプトン散乱成分を無視し、次のようになる。
ここでK
1
’は、すべての定数の組み合わせで、スケーリングは次のようになる。
スケーリングは、投影演算の後に行われることに留意。これは、すべての材料の減衰が同じ1/E
3曲線上にあるために可能であり、そのため、別のエネルギーでの投影減衰を得るために、投影内の各ピクセル内のすべての異なる材料が均等にスケーリングされる。したがって、投影演算は、以下によって正確に要約することができる。
(a)減衰係数値の現在の推定値を投影し、それがエネルギーE
0にあると仮定し、
(b)各エネルギーにおける投影減衰を得るために、式(11)によってE
0における投影減衰をスケーリングし、そして
(c)投影減衰を強度に変換し、式(7)のようにスペクトルによる重み付けの後に組み合わせる。
【0057】
減衰は完全にコンプトン散乱による
この単純化は、上記の光電効果のみの単純化と同様である。しかしながら、これはAMモデルのコンプトン散乱成分のみを含む。これは、光電効果による減衰が最も大きく変動し、それ故にビームハードニングアーチファクトの大部分の原因となるので、著しく有用性が低い。この単純化を実施すると、以下の縮小AMモデルをもたらす。
スケーリングすると、比率は次のようになる。
投影演算も上記と同様である。
【0058】
原子番号が被検体全体を通して一定である
有効原子番号Zが被検体全体を通してほぼ一定であると仮定される場合、密度ρが唯一の変数となり、結果として、画像全体に対して所定のZで十分である。この単純化に基づくAMモデルは、次式にまとめられる。
投影演算後のスケーリングアルゴリズムを次のスケーリングによって定数に関して適用すると、次式になる。
【0059】
密度が被検体全体を通して一定である
密度が被検体全体を通してほぼ一定であると仮定される場合、被検体の外側の空間のボリュームの密度を考慮に入れる必要があり得る。これは方法を複雑にし得る一方で、この違いを説明することはかなり簡単である。ここで、想定することができる2つの値の密度があり、標本の内側のρと、標本の外側の0gm/cm
3である。しかしながら、P(ρZ
3)=ρP(Z
3)およびP(ρ)=ρP(B)であることに留意されたい、ここで、Bはボリュームのバイナリセグメンテーションである。Z
3は、次のようにボリュームμ(E
0)から求めることができる。
Bは、Z
3>0ならば1、そうでなければ0と定義することによって、このボリュームから計算できる。次いで、任意のエネルギーEでの標本の投影減衰は、次のように計算され得る。
セグメント化されたボリュームBは、後続の反復であまり変化しない可能性が高く、P(B)が最初の反復で計算され、次いでその後のすべての反復での再利用のために記憶され得ることに留意されたい。
【0060】
順演算はもはや線形ではないということを再び述べる必要があるかもしれず、線形行列乗算の状況においてのみ可能である随伴演算の従来の考えは破綻する。しかしながら、随伴演算の概念を順守し、ボリューム空間の単色データおよび強度/減衰空間の多色データを有する作業の一貫性を維持する擬似随伴演算を作成することは依然としてできる。これらの方法は、特に反復にわたって質量(またはボリューム空間画像の減衰値の合計)を保存する適切な正規化ファクタを見つけることになると、経験的に得られる。各逆演算はその順方向モデルと対になっているので、5つの対応する擬似随伴演算、すなわち、上述の各仮定に対して1つを必要とする。各順方向モデルに対して、利用可能な2つの逆演算があり、それは、単色の場合のように修正されていない逆投影;および経験的に得られた擬似随伴逆投影降下法である。少なくともこれら2つの演算が利用可能であるが、順投影との随伴関係を壊す、修正されていない逆投影をここで説明する。
【0061】
図5は、本開示の一実施形態に従ってパラメータ値を推定するための方法の一例501である。推定されたパラメータは、本明細書に開示された他の方法で引き続き使用されてもよく、所与の再構成においてどの単純化を実施するかをさらに決定するために使用されてもよい。単純化の決定は、
図6に関して説明される。パラメータが推定され単純化が決定されると、方法401は決定された単純化を使用して実行され得る。例えば、すべての方法はシステム100によって実行されてもよい。
【0062】
入力ρZ3およびρは、低分解能スキャンからのデータ、高エネルギースキャンからのデータ、または分散データと組み合わされた、ダウンサンプリングされた低エネルギーデータを使用して二重エネルギー方法301を実行することから得られ得る(分散データに基づく方法については
図7を参照)。プロセスブロック313および317からの中間パラメータは、それぞれ方法501のための初期入力を提供する。中間値は、方法301が、低分解能スキャンからのデータ、高エネルギースキャンからのデータ、または分散データと組み合わされた、ダウンサンプリングされた低エネルギーデータを使用して収束すると、方法501によって使用され得る。
【0063】
パラメータ値決定は、平均密度ρ、平均原子番号Z、およびZ=cρで使用される比例定数cを決定する。プロセスブロック509によって提供される平均密度は、被検体について見出された密度の平均値であり得る。平均原子番号Zは、次の平均値として見出され得る。
被検体において。そして、比例定数cは、被検体全体で平均した次式で求められる。
【0064】
図6は、本開示の一実施形態による方法301においてどの単純化を実施すべきかを決定するための一例の方法601である。方法601は、初期推定値およびエネルギーE
0でのスペクトルに基づいて、単純化のすべてを使用して投影を実行し、次いで投影データをE
0での測定データと比較することを含む。例えば、初期推定値はブロック603において提供され、スペクトル情報はブロック605において提供され、それらは両方ともプロセスブロック607に提供される。プロセスブロック607では、本明細書で論じられる単純化の各々について、ブロック603および605からのデータを使用して投影が実行され、対応するブロック609から617に提供される出力を有する。次いで、ブロック609から617の出力は、低エネルギーデータを使用して二重エネルギー方法301の結果と比較される。その後、二重エネルギー方法の結果に最も近い単純化が、方法401において実施するために選択される。
【0065】
図7は、本開示の実施形態による分散データを使用する二重エネルギー方法701の一例である。方法701は、E
0、E
1、およびスペクトル0以外は方法301と同様であり得る。方法701は、二重エネルギー反復スキームを実行するために高エネルギー低分解能スキャンデータを置き換え、代わりにスペクトル0での低エネルギーデータの分散を使用する。分散データは、例えばより高いエネルギーにスキューされた、X線エネルギーE
0によってスケーリングされたスペクトルで得られた減衰データと等価であることに留意されたい。このように、分散データは、高エネルギースキャンの代わりに使用されてもよい。
【0066】
図8は、本開示の一実施形態によるCTシステム800の一例の機能ブロック図である。CTシステム800は、CTシステム100の一例であり得、被検体のCTスキャンを取得し、被検体110などの被検体のBHC再構成を提供するために使用し得る。CTシステム800は、制御器820、メモリ822、ステージ824、プログラム826、検出器828、および線源830を少なくとも含むことができる。概して、CTシステム800は、本明細書に記載されているように被検体の断層像再構成を生成し得る。
【0067】
制御器820は、マイクロ制御器、CPU、1つまたは複数のコンピューティングコアなどであってよい。制御器820は、CTシステム800の複数の態様を制御することができ、CTシステム800の様々な他の構成要素に接続して、それらからデータを受信し、それらに制御信号を提供するようにすることができる。例えば、制御器820は、プログラム826に記憶されているコードを実行して、CTシステム800に被検体の低分解能および高分解能のスキャンを実行させ得る。加えて、検出器828によって取得されたスキャンデータは、制御器820に提供することができる。呼応して、制御器820は、方法201から701によって例示されているような一配列のアルゴリズムをデータに対して実行して再構成を提供し得、それはビームハードニング補正であってもよい。上述のように、アルゴリズムはプログラム826の一部であり得る。
【0068】
メモリ822は、データおよび命令を保持するように接続された揮発性または不揮発性メモリであってよい。メモリ822の一部であってよいプログラム826は、ステージ、線源、および検出器を制御するなどの、CTシステム800の様々な役割を実行するための演算命令およびコードを、他の様々な補助構成要素とともに備えることができる。
【0069】
ステージ824は、制御器820によって提供された制御信号に応答して被検体を支持し、その移動を提供することができる。制御信号は、メモリ822および/またはプログラム826に格納されているステージ制御命令を実行している間に、制御器820が発生することができる。例えば、ステージ制御は、例えば、螺旋またはジグザグパターンなどの所望の軌道に従ってステージを移動させることができる。
【0070】
検出器828は、被検体を通過したX線を検出し、かつ、それらの強度を記録することができる。X線の強度は、被検体を通過することからの減衰のせいで低減される可能性がある。減衰量は、被検体を画像化するためおよび再構成を生成するために使用されるデータとなることができる。画像データまたはスキャンデータは、処理のために制御器820に提供されてよく、または後の処理のためにメモリ822に記憶されてもよい。加えて、検出器828は、制御器820からの制御信号に応答して動かされてもよい。検出器828は、被検体の形状、大きさを考慮するために、または所望の視野(FOV)を得るために調整され得る。
【0071】
線源830は、被検体にX線を供給し、制御装置820によって制御されることができる。例えば、線源830は、制御器820からの制御信号に応答して、所望の強度でX線を発生させることができ、また被検体に対してある方向に移動することができる。線源830は、被検体の形状、大きさを考慮するために、または所望の視野(FOV)を得るために調整され得る。
【0072】
本発明の範囲から逸脱することなく、多くの改変が当業者には明らかであろう。
【0073】
図9および
図10は、本明細書で開示された技法を使用した再構成を非ビームハードニング補正の再構成例とともに図示する。
図9は、アルミニウムおよび大理石の棒の断層像再構成を含み、アルミニウムが左側にある。画像Aは、補正されていない再構成であり、カッピング(明るいエッジ部)およびストリーキング(2本の棒の間の影部分)アーチファクト示している。画像Bは、光電効果についての単純化を使用した同じもののBHC再構成であり、それに対し、画像Cは、密度が原子番号に比例することによる単純化を使用したBHC再構成である。見られるように、両方の単純化は再構成を改善する。しかしながら、光電効果の単純化は、少なくとも目で見ると、カッピングはわずかだけ改善されてストリーキングの発生はより少なくなっている。一方で、比例による単純化は、いくらかのストリーキングを含むが、カッピングはより少なくなっている。それでも、両方のBHC再構成は、2本のロッド間のコントラストの改善を含み、それは材料識別における改善につながっている。
【0074】
図10は同じシーケンスの画像であるが、画像にはテフロン製ロッド(下)、ガラス製ロッド(上)、アクリル製ロッド(右上)が含まれている。やはり、両方の単純化とも画質を改善し、様々な程度の改善を有してアーチファクトを低減している。
【0075】
開示された技法を例示するために本明細書で論じられた実施形態は、限定的であると見なされるべきではなく、実施の例を提供するだけである。当業者は、開示された技法がどのように実施され得るかについての他の無数の方法を理解するであろう、それらは本明細書において企図されそして本開示の範囲内にある。
【符号の説明】
【0076】
102 X線源
104 被検体ステージ
106 検出器
108 コーン形状のX線ビーム
110 被検体または対象物
201 方法
205 コンバイナ
209 コンバイナ
301 方法
307 コンバイナ
309 コンバイナ
325 コンバイナ
329 コンバイナ
335 コンバイナ
337 コンバイナ
401 方法
405 コンバイナ
501 方法
601 方法
701 方法
800 CTシステム
820 制御器
822 メモリ
824 ステージ
826 プログラム
828 検出器
830 線源