(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】プラスチック用離型剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20221124BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20221124BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20221124BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C08K5/103
C08K5/06
C08L83/04
(21)【出願番号】P 2020179356
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】多和田 華子
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119852(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163219(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/132834(WO,A1)
【文献】特開2016-102205(JP,A)
【文献】特開2002-86639(JP,A)
【文献】特開平11-140191(JP,A)
【文献】特開平8-188744(JP,A)
【文献】特開平7-70547(JP,A)
【文献】特開平1-95156(JP,A)
【文献】特開昭63-153108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
C08J7/04-7/06
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)成分、並びに(E)成分を含有し、平均粒径が200nmを超えて350nm以下のエマルジョンであることを特徴とするプラスチック用離型剤。
(A)下記一般式(1)で表され、25℃における動粘度が100~100,000mm
2/sであって、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ1質量%未満であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
(式中、R
1は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、水素原子、炭素数1~32の非置換の直鎖アルキル基、フェニル基のいずれかであり、Lは60から1,500の整数である。)
(B)アニオン性界面活性剤:0.1~18.0質量部、
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.1~10.0質量部、
【化2】
(R
2は炭素数8から24のアルキル基である。a、b、及びcは独立して0以上の整数であり、a+b+cの合計は8~30である。)
(E)水:50~100,000質量部。
【請求項2】
更に、(D)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0質量部未満、
C
mH
2m+1(OCH
2CH
2)
nOH (3)
(mは12~20の整数であり、nは4~50の整数である。)
を含むプラスチック用離型剤であって、前記(C)成分および前記(D)成分の含有量の合計が0.1~10.0質量部であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック用離型剤。
【請求項3】
前記(C)成分のHLBが12~18であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック用離型剤。
【請求項4】
前記(B)成分が、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩から選択される1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のプラスチック用離型剤。
【請求項5】
前記プラスチック用離型剤の25℃におけるpHが4.0~10.0であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のプラスチック用離型剤。
【請求項6】
前記プラスチックが食品容器包装用であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のプラスチック用離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物であるプラスチック用離型剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鮮度や衛生面の観点から、食品はプラスチックのトレー、シート、フィルム等で保護をして販売している。食品の種類や保管温度によりポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS)等の種々の食品容器包装用のプラスチックが使用されている。
【0003】
食品容器包装用のプラスチックはその製造工程においてシートやフィルムに成型した後ロール状に巻き取っている。通常ロールに巻き取る際は、シートやフィルムの表面に離型剤を塗布し、シートやフィルム同士が接着しないようにしている。
【0004】
また、シートやフィルムを成形する際、金型に離型剤を塗布することで金型から成形品をスムーズに離型させられるため、安定した連続生産が可能となる。
さらに、シートやフィルムを成型したケース、トレー、カップなどの成形品は重ねて保管されるが、そこに離型剤を塗工すると、ブロッキングすることなく1つ1つスムーズに取り外すことができる。
【0005】
離型性およびすべり性の観点から、食品容器包装用の合成樹脂の離型剤としては、25℃における動粘度が100~100,000mm2/sのオルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物が好適である。オルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物を離型剤としてプラスチックに塗布する場合は、オルガノポリシロキサンの濃度を0.1~5.0質量%になるように水で希釈し、ロータリーダンプニング、グラビア方式もしくはスプレー方式で塗工する。
【0006】
ロータリーダンプニングのような強い攪拌を伴う塗工方法では、エマルジョン自体が破壊され、ゲルやオイル浮き等を生じるおそれがある。ゲルやオイル浮きが発生している状態でエマルジョンをプラスチックに塗工すると、濡れムラが生じ、プラスチック同士の接着や、外観の不均一といった問題が生じる。
【0007】
また、プラスチックにノニオン界面活性剤を多く含むオルガノポリシロキサンのエマルジョンを塗布すると、ノニオン界面活性剤がプラスチックに含浸することでクラックが生じ、成形体にひびが入るといった問題が生じることがある。このようなクラックはプラスチックの中でも、特に二軸延伸ポリスチレンやポリスチレン(PS)で生じやすい。
従って、希釈安定性、機械安定性、保存安定性に優れ、濡れ性が良好、かつプラスチックに対してクラックを生じないオルガノポリシロキサンのエマルジョン型離型剤が求められている。
【0008】
日本では、2020年6月1日に施行された改正食品衛生法により食品用容器包装に使用できる原料の化学構造が定められている。さらに、ポリオレフィン等衛生協議会が、食品に直接接触する容器包装等に使用できるプラスチック原料を製品ごとに登録しており(ポジティブリスト制)、食品に直接接触する容器包装の用途では安全性が確認されている原料製品を使用することが推奨されている。
従って、食品容器包装向けプラスチック用離型剤には食品衛生法で使用が認可された化学構造を有し、ポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに登録された原料製品を使用し、かつ上記の目的課題を解決しうるオルガノポリシロキサンのエマルジョンが望まれている。
【0009】
これまでに上記問題を解決するために様々な方法が検討されている。
【0010】
特許文献1は環状シロキサンオリゴマーを乳化した状態で強酸によって開環重合を行なうことによって安定性良好なオルガノポリシロキサンエマルジョンが得られる。しかしながら、このような方法で得られるオルガノポリシロキサンエマルジョンはオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンを多く含有する。近年では、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンが欧州のREACH規制が定めた高懸念物質の候補となったことで上記環状シロキサンオリゴマーの含有量の低減が求められている。また、上記環状シロキサンオリゴマーを多量に含むことにより、プラスチックに塗工した際にクラックが生じやすくなる恐れがある。
【0011】
特許文献2は優れた濡れ性であり透明性も良好であるオルガノポリシロキサンエマルジョン離型剤組成物である。実施例ではノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが使用されているが、配合量が1.0%以上と多いためPSや二軸延伸ポリスチレンの離型剤として使用した場合にクラックを発生させる恐れがある。また、実施例ではアニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムが使用されているが、その分解物であるノニルフェノールが生物や生態系への環境負荷物質として懸念されているので、食品容器包装に用いるプラスチック用離型剤としての使用は推奨されない。
【0012】
特許文献3はフィルムの白化が少ないシリコーン離型剤組成物である。特許文献3の組成にはプロピレングリコールが含まれる。また、実施例ではノニオン系乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルを単独で使用しているが、ノニオン系乳化剤を単独で使用した場合、平均粒径は細かくならず、また安定性が悪い恐れがある。また、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの中でも、ポリオキシエチレン鎖が1~6のものは、合成樹脂、特にPSや二軸延伸ポリスチレンに対してクラックを生じさせる恐れがあるため、特許文献3の実施例のエマルジョンでもPSや二軸延伸ポリスチレンの離型剤として使用した場合にクラックを発生させる恐れがある。
【0013】
特許文献4は乳化する際にフェノキシエタノール類を配合した、粒度分布が狭く、安定性の優れたエマルジョンであるが、実施例の平均粒径はすべて1μm以上と大きく、希釈安定性や機械安定性が低いことが予想される。
【0014】
特許文献5はアルミダイキャスト向けアルキルアラルキル共変性シリコーンエマルジョン離型剤である。アルキルアラルキル共変性シリコーンは、プラスチックに対してジメチルポリシロキサンより離型性が低く、プラスチック用離型剤には適していない。
【0015】
特許文献6はアクリルゴムの加硫成型時に好適に用いられるソルビタン高級アルキルエステルおよびその他のノニオン界面活性剤を併用したシリコーン水分散型離型剤組成物である。シリコーンエマルジョンではアニオン界面活性剤を配合すると、エマルジョンのゼータ電位のマイナスの値が大きくなり、エマルジョン粒子同士の電子反発が強くなるため凝集しにくく、機械安定性が向上すると言われている。特許文献6ではアニオン界面活性剤の配合はなく、機械安定性が低いことが予想される。
【0016】
特許文献7はHLB10以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルによりオルガノポリシロキサンを乳化したエマルジョンである。特許文献6と同様にアニオン界面活性剤の配合はなく、機械安定性が低いことが予想される。
【0017】
特許文献8はオルガノポリシロキサンとアルキル鎖の炭素数が8~11であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとアニオン界面活性剤と水からなるシリコーンエマルジョン組成物である。炭素数が8~11であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むエマルジョンではプラスチックに塗工するとクラックを生じる恐れがある。
【0018】
特許文献9はオルガノポリシロキサンをポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびショ糖脂肪酸エステルで乳化したシリコーンエマルジョン組成物である。実施例にはポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてポリオキシエチレン(3)デシルエーテルを使用しているが、アルキル基の炭素数が10以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルはプラスチックに対してクラックを生じさせる恐れがある。
【0019】
特許文献10はオルガノポリシロキサンをポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテルまたはポリオキシエチレンイソステアリルエーテルにより乳化したシリコーンエマルジョンである。実施例では平均粒径が約400nmであり比較的大きく、希釈安定性や機械安定性が悪い恐れがある。
【0020】
特許文献11はオルガノポリシロキサンをアニオン界面活性剤および多価アルコールにより乳化したエマルジョンである。一般的にアニオン界面活性剤や多価アルコールは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤より表面張力を下げる機能は低い。特許文献11のエマルジョンは50倍に水で希釈したものの表面張力(25℃)が45mN/m以上と高く、また、ノニオン界面活性剤を含まないため、プラスチックに塗布した場合、濡れ性が悪くハジキを生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特公昭41-13995号公報
【文献】特開平8-188744号公報
【文献】特開2005-281409号公報
【文献】特開2000-169705号公報
【文献】特開2006-307009号公報
【文献】特開平8-283771号公報
【文献】特開2000-143814号公報
【文献】特開2004-331784号公報
【文献】特開2004-035820号公報
【文献】特開2003-073546号公報
【文献】特開平11-148012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記事情を鑑みなされたもので、遠心分離安定性、希釈安定性、機械安定性に優れ、プラスチックに塗工するときのはじきが少なく、かつプラスチックに対してクラックが生じにくいオルガノポリシロキサンのエマルジョンであるプラスチック用離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を達成するために、本発明は、下記(A)~(C)成分、並びに(E)成分を含有し、平均粒径が200nmを超えて350nm以下のエマルジョンであることを特徴とするプラスチック用離型剤を提供する。
(A)下記一般式(1)で表され、25℃における動粘度が100~100,000mm
2/sであって、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ1質量%未満であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
(式中、R
1は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、水素原子、炭素数1~32の非置換の直鎖アルキル基、フェニル基のいずれかであり、Lは60から1,500の整数である。)
(B)アニオン性界面活性剤:0.1~18.0質量部、
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.1~10.0質量部、
【化2】
(R
2は炭素数8から24のアルキル基である。a、b、及びcは独立して0以上の整数であり、a+b+cの合計は8~30である。)
(E)水:50~100,000質量部。
【0024】
本発明のプラスチック用離型剤であれば、遠心分離安定性、希釈安定性、機械安定性に優れ、プラスチックに塗工するときのはじきが少なく、かつプラスチックに対してクラックが生じにくいオルガノポリシロキサンのエマルジョンであるプラスチック用離型剤を提供することが可能となる。
【0025】
また、本発明のプラスチック用離型剤には、更に(D)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0質量部未満、
CmH2m+1(OCH2CH2)nOH (3)
(mは12~20の整数であり、nは4~50の整数である。)
を添加してもよく、前記(C)成分および前記(D)成分の含有量の合計が0.1~10.0質量部であることが好ましい。
【0026】
前記(C)成分および前記(D)成分の含有量の合計がこの範囲内にあると、本発明のプラスチック用離型剤の平均粒径が細かくなり、希釈安定性や機械安定性が良好となりやすく、かつクラックが生じにくい傾向がある。
また、(D)成分を含むことで本発明のプラスチック用離型剤の保存安定性、機械安定性、希釈安定性や濡れ性が高くなる傾向がある。一方で、プラスチックに対してクラックの発生を防止する観点から、(D)成分の含有量は少ないほど好ましい。
【0027】
さらに、前記(C)成分のHLBが12~18であることが好ましい。
前記(C)成分のHLBがこの範囲にあると、本発明のプラスチック用離型剤の平均粒径が細かくなり、希釈安定性や機械安定性が良好となる傾向がある。
【0028】
さらに、前記(B)成分が、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩から選択される1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
上記アニオン性界面活性剤は2020年6月1日に施行された食品衛生法により食品用容器包装の原料として認可されているからである。従って、本発明のプラスチック用離型剤は、食品容器包装等として使用される場合の安全性の面で好ましい。
【0029】
また、前記プラスチック用離型剤は25℃のpHが4.0~10.0であることが好ましい。
このようなプラスチック用離型剤であれば、高温で保管しても、前記(A)成分の構造が変化し、プラスチックに対する離型性に与える影響が少ないからである。
【0030】
前記プラスチック用離型剤は食品容器包装用のプラスチックに特に好適に用いることができる。
本発明のプラスチック用離型剤はノニルフェノールやオクチルフェノールといった、その分解物が生物や生態系への環境負荷物質となることが懸念される物質を含んでおらず、また、2020年6月1日に施行された食品衛生法のポジティブリストに記載された構造を有し、かつ「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準」に認可された原料のみで本発明のプラスチック用離型剤の組成を構成することが可能であり、そのようなプラスチック用離型剤は食品トレーや弁当、卵のパックなど、食品に直接接触する容器包装用の離型剤として好適だからである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、エマルジョンの粒径が十分に細かいため、希釈安定性、機械安定性、保存安定性(遠心分離安定性)が良好であり、プラスチックに対する濡れ性に優れ、プラスチックに対しストレスクラックが生じにくいプラスチック用離型剤を提供できる。また本発明のプラスチック用離型剤はポリオレフィン等衛生協議会が提供するポジティブリストに記載された原料で構成することが可能であり、食品容器包装向けに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上述のように、希釈安定性、機械安定性、保存安定性に優れ、濡れ性が良好、かつプラスチックに対してクラックを生じないオルガノポリシロキサンのエマルジョン型離型剤の開発が求められていた。
【0033】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、25℃における動粘度が100~100,000mm2/sのオルガノポリシロキサンを、アニオン性界面活性剤および特定の構造を有するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いて平均粒径が200nmを超えて350nm以下のエマルジョンにすることで、希釈安定性、機械安定性、保存安定性(遠心分離安定性)に優れ、濡れ性が良好で、かつプラスチックに対してクラックが生じにくいプラスチック用離型剤を調製できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0034】
以下、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
[プラスチック用離型剤]
本発明のプラスチック用離型剤は、下記(A)~(C)成分、並びに(E)成分を含有し、平均粒径が200nmを超えて350nm以下のエマルジョンであることを特徴とするプラスチック用離型剤である。
(A)下記一般式(1)で表され、25℃における動粘度が100~100,000mm
2/sであって、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ1質量%未満であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化3】
(式中、R
1は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、水素原子、炭素数1~32の非置換の直鎖アルキル基、フェニル基のいずれかであり、Lは60から1,500の整数である。)
(B)アニオン性界面活性剤:0.1~18.0質量部、
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.1~10.0質量部、
【化4】
(R
2は炭素数8から24のアルキル基である。a、b、及びcは独立して0以上の整数であり、a+b+cの合計は8~30である。)
(E)水:50~100,000質量部。
【0036】
[(A)オルガノポリシロキサン]
(A)下記一般式(1)で表される、25℃における動粘度が100~100,000mm
2/sのオルガノポリシロキサン:100質量部。
【化5】
【0037】
上記式(1)において、R1は同一もしくは異なってもよく、炭素数1~32の非置換の直鎖アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、および水素原子のいずれかである。炭素数1~32の直鎖の非置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基が挙げられる。R1として好ましくは炭素数1~20の直鎖の非置換のアルキル基、又はフェニル基であり、汎用性の観点からより好ましくはメチル基もしくはフェニル基である。また、離型性の観点から1分子中のR1の数の50モル%以上がメチル基であることが好ましい。
また、Lは60から1,500の整数であり、好ましくは、150から1,200である。
【0038】
上記(A)オルガノポリシロキサン中のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量はそれぞれ1質量%未満であり、好ましくはそれぞれ0.1質量%未満である。(A)オルガノポリシロキサン中にオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンが多く含まれると、乳化しにくくなる、もしくは平均粒径が大きくなる、もしくは保存安定性、希釈安定性、機械安定性が低下する、もしくはプラスチック塗工時にクラックが生じやすくなる恐れがある。
【0039】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は100~100,000mm2/sである。動粘度が100mm2/sより低いと、得られる組成物は充分な離型性を示さない。また、ポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに登録されているジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンの最低動粘度は100mm2/sである。一方で、(A)成分のオルガノポリシロキサンの動粘度が100,000mm2/sよりも大きいと、フィルム等に塗布した場合、該表面にベタツキが生じる恐れがある。好ましくは200~50,000mm2/sであり、より好ましくは300~15,000mm2/sである。
なお、上記動粘度は、JIS Z 8803:2011記載のキャノン-フェンスケ粘度計によって測定した、25℃における動粘度の値を指すものとする。ただし、前記動粘度の値が20,000mm2/sを超える場合は、上記JIS規格に記載の単一円筒型回転粘度計によって測定した25℃における粘度の値を、25℃の密度の測定値で除した値を採用する。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは25℃における動粘度が上記の範囲であればよく、1種を単独で用いても2種以上混合しても良い。
【0040】
[(B)アニオン性界面活性剤]
(B)成分のアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ジアルキルリン酸エステル塩等のアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、N-アシルタウリン酸塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミノ酸塩等が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0041】
日本では、本発明のプラスチック用離型剤を食品容器包装用のプラスチックに使用する場合は、2020年6月1日に施行された食品衛生法のポジティブリストに記載されている構造を有する物質を使用する必要がある。例えば、以下の構造のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。アルキル硫酸エステル塩はアルキル基の炭素数が8~22であり、塩としてはナトリウム、カリウム、アンモニウムである。アルキルスルホン酸塩はアルキル基の炭素数が8~22であり、塩としてはナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムである。アルキルベンゼンスルホン酸塩はアルキル基の炭素数が8~22であり、塩としてはナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムである。アルキルナフタレンスルホン酸塩はアルキル基が10~20であり、塩としてはナトリウムである。アルキルスルホコハク酸塩はアルキル基の炭素数が4~22であり、塩としてはナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム塩である。アルキルリン酸エステル塩はアルキル基の炭素数が8~22であり、塩としてはカリウム、トリエタノールアミン塩である。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩はアルキル基の炭素数が10~20であり、塩としてはナトリウムまたはアンモニウム塩である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩はアルキル基の炭素数が12~18であり、塩としてはジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンである。
【0042】
また、食品衛生法では容器包装の原材料ごとに合成樹脂区分が定められており、ポジティブリストに記載された物質は合成樹脂区分ごとにそれぞれ使用制限量が定められている。したがって、本発明のプラスチック用離型剤を食品容器包装用のプラスチックに使用する場合は、上記使用制限量を超えない量で配合する必要がある。
【0043】
上記の食品衛生法に適合するアニオン性界面活性剤のうちポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに記載された界面活性剤を選択することがより好ましい。
例えば、ポリプロピレンやポリスチレンへの塗布用途として、アルキルスルホン酸塩(炭素数は10~20、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(炭素数は9~20、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩)、アルキルスルホコハク酸塩(炭素数は4~16、塩としてはナトリウム塩)、アルキル硫酸エステル塩(炭素数は8~20、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩)等が挙げられる。
また、例えば、ポリエチレンテレフタレートへの塗布用途として、アルキルスルホン酸塩(炭素数は10~20、塩としてはナトリウム塩)やアルキルベンゼンスルホン酸塩(炭素数は9~20、塩としてはナトリウム塩)、アルキルスルホコハク酸塩(炭素数は4~16、塩としてはナトリウム塩)、アルキル硫酸エステル塩(炭素数は4~16、塩としてはナトリウム塩)等が挙げられる。
【0044】
乳化剤である(B)成分アニオン性界面活性剤は(A)成分であるオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~18.0質量部である。好ましくは0.15~15.0質量部、より好ましくは0.2~12.0質量部である。0.1質量部より少ないと、本発明のプラスチック用離型剤の機械安定性が低下する恐れがある。一方で、18.0質量部より多いと、離型性が低下する恐れがある。
(B)成分のアニオン性界面活性剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
[(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル]
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.1~10.0質量部。
【化6】
(R
2は炭素数8から24のアルキル基である。a、b、及びcは独立して0以上の整数であり、a+b+cの合計は8~30である。)
【0046】
前述と同様に、本発明のプラスチック用離型剤を食品容器包装用のプラスチックに使用する場合は、食品衛生法のポジティブリストに記載されているものを使用する必要があり、上記式(2)のR2の炭素数が8~24、a+b+cの合計が4以上の構造が該当する。また、ポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに記載された界面活性剤を選択することがより好ましく、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンへの塗布用途として炭素数が12~18、a+b+cの合計が20の構造が該当する。
その中でもa+b+cの合計が20であり、かつアルキル基R2の炭素数が12であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、16であるポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、18であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートは食品添加物としての使用が認められていることから、本発明のプラスチック用離型剤を食品容器包装用のプラスチックに使用する場合に好適である。
なお、a+b+cの合計が8未満では乳化性が不十分で安定性が不良となる。一方、30より大きいと粘度が高く、または固体状となり取り扱い性が低下する。
【0047】
(B)成分のアニオン性界面活性剤だけでは(A)成分のオルガノポリシロキサンに対する乳化力が弱く、十分な保存安定性、機械安定性、希釈安定性を得られないが、ノニオン性界面活性剤を配合することで保存安定性、機械安定性、希釈安定性を向上させることができる。また、ノニオン性界面活性剤はプラスチックに塗工した際にクラックが生じやすいとされるが、その中でも(C)成分のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは比較的生じにくいという特長がある。
【0048】
(C)成分のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。(C)成分のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLBは12~18とすることができ、好ましくは14~18である。HLBがこれらの範囲内であれば、乳化力が良く、安定性良好なプラスチック用離型剤を得られるため好ましい。
【0049】
(C)成分であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの配合量は0.1~10.0質量部である。好ましくは0.2~8.0質量部、より好ましくは0.5~6.0質量部である。(C)成分の配合量が0.1質量部より少ないと、(A)成分であるオルガノポリシロキサンを乳化したエマルジョンの安定性が低下する恐れがある。一方で、10.0質量部より多いと、本発明のプラスチック用離型剤をプラスチックに塗工した際にクラックが生じる恐れがある。
【0050】
[(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル]
本発明では前記(A)~(C)成分、並びに(E)成分に加え、更に(D)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0質量部未満。
CmH2m+1(OCH2CH2)nOH (3)
(mは12~20の整数であり、nは4~50の整数である。)
を添加してもよい。
【0051】
上記式(3)のmは12~20の整数であり、好ましくは13~18の整数であり、より好ましくは13~16の整数である。mが12以上であれば、本発明のプラスチック用離型剤を塗工したプラスチックにクラックが生じにくくなる。一方で、20以下であれば、本発明のプラスチック用離型剤の粒径が細かくなりやすく、保存安定性、希釈安定性、機械安定性、濡れ性が高くなる傾向がある。また、アルキル基は分岐でも直鎖でもどちらでも使用可能であり、成分(A)のオルガノポリシロキサンの乳化のしやすさやプラスチックに塗工した際のクラックの生じにくさにより選択すればよい。
【0052】
上記式(3)のnは4~50の整数である。好ましくは4~30であり、より好ましくは4~25である。nが4以上であれば、本発明のプラスチック用離型剤を塗工したプラスチックにクラックが生じにくい。一方で、nが50以下であれば、上記式(3)のポリオキシエチレンアルキルエーテルが固体とならず、取扱いが容易である。
また、アルキル基が短く、かつポリオキシエチレン鎖が短いと、プラスチックにクラックが生じやすくなる。従って、アルキル基の短いポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用する際は、ポリオキシエチレン鎖の短いものは避けるべきである。具体的には、mが12~15の場合、nは8~50の整数が好ましく、mが16~20の場合、nは4~50の整数が好ましい。
【0053】
前記(D)成分は1種を単独で使用しても2種類以上併用してもよい。前記(D)成分のHLBは8~18とすることができ、好ましくは10~17であり、より好ましくは13~16である。良好な保存安定性、機械安定性、希釈安定性が得られない場合はHLBの15~18の高いものとHLBの8~12の低いものをHLB13~16になるように組み合わせて使用することにより、保存安定性、機械安定性、希釈安定性が向上する。一方で、HLBの8~12の(D)成分を多く含む場合、本発明のプラスチック用離型剤は、プラスチックにクラックを生じさせることを防止するため、そのような構造の(D)成分の配合量は少ない方が好ましい。
【0054】
ノニオン性界面活性剤の中でも前記(D)成分は前記(C)成分よりもプラスチックに塗工した際にクラックを生じやすいという特徴がある。したがって、例えば、前記(C)成分を配合することで安定性良好なプラスチック用離型剤が得られた場合には、前記(D)成分は配合しない方が好ましい。また、配合する場合にはクラックの発生を抑えるために上限を1.0質量部とすることが好ましい。
【0055】
前期(D)成分の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
前述と同様に、本発明のプラスチック用離型剤を食品容器包装用のプラスチックに使用する場合は、食品衛生法のポジティブリストに記載されているものを使用する必要があり、mが6~20、nが4以上の構造が該当する。さらに、ポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに記載された界面活性剤を選択することがより好ましく、ポリプロピレンやポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートへの塗布用途として炭素数mが12~20の構造が該当する。
【0057】
ノニオン界面活性剤である(C)成分、および(D)成分の合計は(A)成分100質量部に対して0.1~10.0質量部とすることができる。好ましくは、0.2~8.0質量部、より好ましくは0.5~6.0質量部である。0.1質量部以上であれば、良好な保存安定性、機械安定性、希釈安定性が得られ、かつプラスチックに塗工した際にハジキが生じにくくなる。一方で、10.0質量部以下であることが、プラスチック離型剤を塗工した際にクラックを防止する観点から好ましい。
【0058】
[(E)水]
【0059】
本発明のプラスチック用離型剤はオルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物であるが、(E)水を分散媒とすることを特徴とする。
(E)成分である水の配合量は50~100,000質量部である。好ましくは500~20,000質量部、より好ましくは2,000~10,000質量部である。(E)水が50質量部未満であると、本発明のプラスチック用離型剤をプラスチックに塗工した際にべたつき、塗工ムラ、クラックが生じる恐れがある上に、エマルジョン組成物の粘度が高くなってしまい好ましくない。一方で、(E)水が100,000質量部より多いと、機械安定性が低下し、希釈、攪拌後にオイル浮き等が生じる恐れがある上に、希釈倍率が高いと必要なエマルジョン組成物の量が増えてしまい、経済的に好ましくない状況となる。
【0060】
[その他成分]
本発明のプラスチック用離型剤には、(A)成分のオルガノポリシロキサンの分散性を向上させる目的等で、水溶性高分子を含んでいてもよい。水溶性高分子化合物は、特に限定されず、非イオン性水溶性高分子化合物、アニオン性水溶性高分子化合物、カチオン性水溶性高分子化合物、及び両イオン性水溶性高分子化合物が挙げられる。
【0061】
非イオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、ビニルアルコールの重合体、ビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体、アクリルアミドの重合体、ビニルピロリドンの重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ポリエチレングリコール、イソプロピルアクリルアミドの重合体、メチルビニルエーテルの重合体、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム等が挙げられる。
【0062】
アニオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、アクリル酸ナトリウムの重合体、アクリル酸ナトリウムとマレイン酸ナトリウムとの共重合体、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドの共重合体、スチレンスルホン酸ナトリウムの重合体、ポリイソプレンスルホン酸ナトリウムとスチレンとの共重合体、ナフタレンスルホン酸ナトリウムの重合体、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0063】
カチオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの重合体、ビニルイミダゾリンの重合体、メチルビニルイミダゾリウムクロライドの重合体、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、エピクロルヒドリン/ジメチルアミン重合体、エチレンイミンの重合体、エチレンイミンの重合体の4級化物、アリルアミン塩酸塩の重合体、ポリリジン、カチオンデンプン、カチオン化セルロース、キトサン、及びこれらに非イオン性基やアニオン性基を持つモノマーを共重合する等したこれらの誘導体等が挙げられる。
【0064】
両イオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸とアクリルアミドの共重合体、メタアクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸とアクリルアミドの共重合体、アクリルアミドの重合体のホフマン分解物等が挙げられる。
【0065】
本発明のプラスチック用離型剤には、防菌防腐剤や抗菌剤を含んでいてもよい。防菌防腐剤としては、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、イソチアゾリノン誘導体等、抗菌剤としては、安息香酸、サリチル酸、フェノール、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、p-クロロ-m-クレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノール等が挙げられる。また、この他にも香料、酸化防止剤、防錆剤、染料、充填剤、硬化触媒、有機粉体、無機粉体などを配合してもよい。
【0066】
[組成物の調製]
本発明のプラスチック用離型剤は(A)オルガノポリシロキサンを(B)アニオン性界面活性剤、(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および必要に応じて(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いて(E)水に乳化することで得ることができる。乳化は一般的な乳化分散機を用いて行えばよい。該乳化分散機としては、例えば、ホモディスパー等の高速回転遠心放射型攪拌機、ホモミキサー等の高速回転剪断型攪拌機、圧力式ホモジナイザー等の高圧噴射式乳化分散機、コロイドミル、超音波乳化機等が挙げられる。
【0067】
乳化する際の温度について、好ましくは0~80℃、より好ましくは10~60℃である。10℃~80℃の温度では乳化しやすく、製造した乳化物がより安定になる傾向がある。乳化する際、圧力は常圧だけでなく減圧もしくは加圧でもよい。減圧もしくは加圧下で乳化する場合、泡が混入しにくくなり効果的に乳化できることがある。減圧にする場合の圧力は、原料が揮発しないよう原料の蒸気圧より高いことが好ましい。また、乳化時間は、特に指定はなく目的の粒径になった時間とすればよいが、一般的には360分間以下とすることが好ましい。
【0068】
本発明のプラスチック用離型剤の平均粒径は200nmを超えて350nm以下である。好ましくは200nmを超えて300nm以下、より好ましくは200nmを超えて250nm以下である。
350nmより平均粒径が大きいと、希釈安定性および機械安定性が低下し、希釈や攪拌の際にオイル浮き等が生じる恐れがある。また、長期に保存した場合、濃淡分離を生じる恐れもある。他方、平均粒径が200nm以下のエマルジョンを製造するためには、一般に(A)オルガノポリシロキサンに対する(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルや(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどに代表されるノニオン性界面活性剤の含有量が多くなる傾向がある。このため、前記(C)及び/又は(D)の本発明の範囲内で平均粒径200nm以下を達成することは難しく、また本発明の範囲を超えて前記(C)や前記(D)を配合すると、離型性の低下やプラスチックに塗工した際にクラックが生じる恐れがある。
なお、本明細書において平均粒径とはレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径を示している。
【0069】
本発明のプラスチック用離型剤のpHは25℃において4.0~10.0であることが望ましい。好ましくは4.5~9.0、より好ましくは4.5~8.0である。pHが4.0~10.0の範囲内であれば、高温で保管した際に、(A)成分の構造が変化し、プラスチックに対する離型性に与える影響が少ない。
【0070】
上記により得られたエマルジョンは、食品包装用のプラスチックシートやその成形品等の離型剤、また金型成形時に用いる離型剤として極めて有用である。例えば(A)成分の含有量が0.1~2.0質量%である本発明のプラスチック用離型剤をローターダンプニング、グラビア方式もしくはスプレー方式で塗工できる。その塗布量は一般に乾燥基準で0.01~1.0g/m2、特に0.02~0.2g/m2が好適である。0.01g/m2以上であれば十分な離型性が得られ、また、1.0g/m2以下であれば、透明性およびベタつき感の観点から好ましい。
【0071】
食品容器包装用のプラスチックとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン・テトラシクロドデセンコポリマー、エチレン・2-ノルボルネンコポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレンコポリマー、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエンコポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリルスチレン、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0072】
本発明によれば、オルガノポリシロキサンをアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および必要に応じてポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いて水に乳化することで、優れた離型性を有し、かつ希釈安定性、機械安定性、保存安定性、濡れ性が良好で、さらにストレスクラックを生じにくいプラスチック用離型剤を提供することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0074】
下記実施例、および比較例で使用した各成分は以下の通りである。
[成分(A)、および比較用オルガノポリシロキサン]
(A1)オルガノポリシロキサン:下記一般式(4)で表され、25℃における動粘度9,980mm2/s、L1は550であり、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量は各100ppm以下である。
【0075】
【0076】
(A2)オルガノポリシロキサン:上記一般式(4)で表され、25℃における動粘度1,010mm2/s、L1は200であり、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量は各100ppm以下である。
【0077】
(A3)オルガノポリシロキサン:上記一般式(4)で表され、25℃における動粘度7,420mm2/s、L1は550であり、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量はそれぞれ約2質量%である。(A3)成分のオルガノポリシロキサンは(A1)成分のオルガンポリシロキサンにオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンが各2質量%となるように配合したものである。
【0078】
[成分(B)]
(B1)65%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(商品名:ネオペレックスG-65、花王(株)製)
(B2)ラウリル硫酸ナトリウム(商品名:NIKKOL SLS、日光ケミカルズ(株)製)
(B3)70%ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム水溶液
【0079】
[成分(C)、および比較用ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル]
(C1)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:レオドールTW-O120V、花王(株)製):下記一般式(2)で表され、R2は炭素数18のアルキル基であり、a+b+cの合計は20、HLBは15.0である。
(C2)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:レオドールTW-L120、花王(株)製):下記一般式(2)で表され、R2は炭素数12のアルキル基であり、a+b+cの合計は20、HLBは16.7である。
(C3)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:レオドールTW-O106V、花王(株)製):下記一般式(2)で表され、R2は炭素数18のアルキル基であり、a+b+cの合計は6、HLBは10.0である。
【0080】
【0081】
[成分(D)]
(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:エマルゲン123P、花王(株)製):一般式CmH2m+1(OCH2CH2)nOHで表され、mは12、nは23であり、HLBは16.9である。
【0082】
[成分(E)]
(E)水
【0083】
[その他成分]
安息香酸ナトリウム、クエン酸
【0084】
[実施例1]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水127.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物1を調製した。
【0085】
[実施例2]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C2)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水127.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物2を調製した。
【0086】
[実施例3]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水127gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物3を調製した。
【0087】
[実施例4]
(A2)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤0.4g、(B2)アニオン性界面活性剤0.2g、(B3)アニオン性界面活性剤0.2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル0.2g、および(E)水4gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してから(B1)アニオン性界面活性剤3.6g、(B2)アニオン性界面活性剤1.8g、(B3)アニオン性界面活性剤1.8g、および(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル1.8gを加えてホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いてさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水125.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物4を調製した。
【0088】
[実施例5]
(A2)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤0.4g、(B2)アニオン性界面活性剤0.2g、(B3)アニオン性界面活性剤0.2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル0.2g、および(E)水4gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してから(B1)アニオン性界面活性剤3.6g、(B2)アニオン性界面活性剤1.8g、(B3)アニオン性界面活性剤1.8g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル1.8g、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gを加えてホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いてさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水125gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物5を調製した。
【0089】
[比較例1]
(A3)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水127.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物6を調製した。
【0090】
[比較例2]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル6g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水131.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物7を調製した。
【0091】
[比較例3]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤8g、(B2)アニオン性界面活性剤4g、(B3)アニオン性界面活性剤4g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水119.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物8を調製した。
【0092】
[比較例4]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水129.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物9を調製した。
【0093】
[比較例5]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gおよび(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水129gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物10を調製した。
【0094】
[比較例6]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル2gおよび(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水127.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物11を調製した。
【0095】
[比較例7]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C3)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水127.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物12を調製した。
【0096】
[比較例8]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C3)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水127gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物13を調製した。
【0097】
[比較例9]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル7g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水122.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物14を調製した。
【0098】
[比較例10]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル2g、および(E)水4gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水125.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物15を調製した。
【0099】
[比較例11]
(A1)オルガノポリシロキサン60g、(B1)アニオン性界面活性剤4g、(B2)アニオン性界面活性剤2g、(B3)アニオン性界面活性剤2g、(C1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル5g、(D)ポリオキシエチレンアルキルエーテル4g、および(E)水2gを容量300mLのプラスチック容器に入れ、ホモディスパー(プライミクス(株)製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpmで攪拌することで乳化し、全体が乳化してからさらに2,000rpmで5分間攪拌した。この乳化物に更に(E)水120.5gを加えてホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで10分間攪拌することにより希釈し、安息香酸ナトリウム0.4g、およびクエン酸0.1gを加え、さらにホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて1,000rpmで1分間攪拌することにより溶解し、乳化組成物16を調製した。
【0100】
上記実施例、比較例について、平均粒径、pH、遠心分離安定性、水希釈安定性、機械安定性、PETフィルムに対する濡れ性、二軸延伸ポリスチレンフィルムに対するストレスクラックの評価を行った。評価方法の詳細を以下に説明する。
【0101】
[平均粒径]
乳化組成物1~16をイオン交換水で10倍に希釈し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、Partica LA-960)を用いて測定した体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径である。
【0102】
[pH]
乳化組成物1~16をpHメータ((株)堀場製作所製、LAQUA F-52)、および電極((株)堀場製作所製、9615S-10D)を用いて測定した25℃におけるpH値である。
【0103】
[遠心分離安定性]
乳化組成物1~16を容量約15mLのポリプロピレン製遠沈管(Thermo Fisher Scientific, Inc.製)に入れて、小型卓上遠心機((株)コクサン製、H-19FM)で3,000rpm(遠心力は約1,000×g)、15分間回転させた後、遠沈管の上層部、および下層部から各1.0gずつ採取し、アルミシャーレに入れて105℃で3時間加熱し、不揮発分を下記式(5)より算出した。
不揮発分(%)=(1-乾燥減量(g)/採取量(g))×100 (5)
上層部の不揮発分を下層部の不揮発分で除した値が1に近いほど、経時での濃淡分離が生じにくく、保存安定性が高いと考えられるため、下記基準で評価した。
○:0.95≦上層部の不揮発分/下層部の不揮発分≦1.05
×:上層部の不揮発分/下層部の不揮発分<0.95
1.05<上層部の不揮発分/下層部の不揮発分
本明細書においては「○」を良好、「×」を不良と判断する。
【0104】
[水希釈安定性]
乳化組成物1~16を容量200mLのガラスビーカーに2g入れ、さらに水98gを加えて希釈した。室温で22時間静置した後の外観を確認し、下記の基準で評価した。
○:濃淡分離することなく、均一な外観を示す。
表面にオイルスポットや干渉膜を生じない、または1~3割程度干渉膜が生じる。
△:濃淡分離することなく、均一な外観を示す。
表面に僅かにオイルスポットが生じる、または3~6割程度干渉膜が生じる。
×:濃淡分離が生じ、不均一な外観を示す。
表面にオイルスポットが生じる、または6割以上干渉膜が生じる。
本明細書においては「○」および「△」を良好、「×」を不良と判断する。
【0105】
[機械安定性]
乳化組成物1~16を容量200mlのプラスチック容器に10g入れ、さらに水90gを加え、ホモミクサー(プライミクス(株)製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて3,000rpmで10分間攪拌した。室温で22時間静置した後の外観を確認し、下記の基準で評価した。
○:濃淡分離することなく、均一な外観を示す。
表面にオイルスポットや干渉膜を生じない、または1~3割程度干渉膜が生じる。
△:濃淡分離することなく、均一な外観を示す。
表面に僅かにオイルスポットが生じる、または3~6割程度干渉膜が生じる。
×:濃淡分離が生じ、不均一な外観を示す。
表面にオイルスポットが生じる、または6割以上干渉膜が生じる。
本明細書においては「○」および「△」を良好、「×」を不良と判断する。
【0106】
[濡れ性]
乳化組成物1~16をイオン交換水で10倍に希釈し、ワイヤーバーNo.3(R.D.Specialties,U.S.A製)によりPETフィルム(商品名:ルミラーS-10(厚さ50μm)、東レ(株)製)に塗工する。目視ではじきの発生の有無を確認する。
○:全体に濡れる
△:一部にはじきを生じる
×:塗工後すぐに全体にはじきを生じる
本明細書においては「○」および「△」を良好、「×」を不良と判断する。
【0107】
[クラック性]
乳化組成物1~16をイオン交換水で20倍に希釈し、ガーゼで二軸延伸ポリスチレンフィルム(商品名:OPSシート、旭化成製)に塗工する。直径40mmの円筒に乳化組成物を塗布したOPSシートを巻き付け、目視でクラックの発生の有無を確認する。
○:筒に巻き付け後300秒以内にクラックが生じない
×:筒に巻き付け後300秒以内にクラックが生じる
本明細書においては「○」を良好、「×」を不良と判断する。
【0108】
評価結果を表1に記載する。下記において、「部」は質量部を意味する。なお、成分(B1)、および成分(B3)の組成については、製品としての配合部数に加えて括弧内に有効成分としての配合部数を記載する。例えば、成分(B1)は有効成分65%であるため、2部配合した場合には「2(1.3)」と記載する。
【0109】
【0110】
以上の評価結果から、本発明のプラスチック用離型剤は遠心分離安定性、希釈安定性、機械安定性に優れ、濡れ性が比較的良好で、かつプラスチックに対してクラックが生じにくいことがわかる。
【0111】
成分(A)中にオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンをそれぞれ約2%含有する比較例1では機械安定性等がやや低下し、およびクラック性が不良となった。
【0112】
成分(B)を含まず、成分(C)のみで成分(A)を乳化した比較例2では濡れ性が向上したが、遠心分離安定性、水希釈安定性、機械安定性、およびクラック性が不良となった。一方で、過剰量の成分(B)で乳化した比較例3ではクラック性は良好であるが、遠心分離安定性、および濡れ性が不良となった。
【0113】
成分(B)のみで成分(A)を乳化した比較例4、および成分(B)と成分(D)で成分(A)を乳化した比較例5では粒径が大きくなり、遠心分離安定性、水希釈安定性、機械安定性、および濡れ性が不良となった。また、成分(B)と比較例5よりも多量の成分(D)で成分(A)を乳化した比較例6では粒径が細かくなり、遠心分離安定性、水希釈安定性、機械安定性、および濡れ性が改善したがクラック性が不良となった。
【0114】
成分(B)、および本発明の成分(C)とは異なり、下記一般式(2)で表され、R
2が炭素数18のアルキル基、a+b+cの合計が6であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルで成分(A)を乳化した比較例7では、粒径が大きくなり、遠心分離安定性が不良となった。また、比較例7で使用した界面活性剤に加え、成分(D)で成分(A)を乳化した比較例8では、粒径が細かくなったが、遠心分離安定性は不良となった。
【化9】
【0115】
成分(B)、および過剰量の成分(C)で成分(A)を乳化した比較例9では、クラック性が不良となった。
【0116】
実施例1と同様の配合組成であるが、成分(E)の配合部数を増量することで平均粒径を350nmより大きくした比較例10では、遠心分離安定性、機械安定性が不良となった。一方で、成分(D)の配合部数を増量することで平均粒径を200nmより小さくした比較例11では、クラック性が不良となった。
【0117】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。