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  • 特許-高いAhR活性化能を有する乳酸菌 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】高いAhR活性化能を有する乳酸菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20221124BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20221124BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221124BHJP
   A23L 33/135 20160101ALN20221124BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61K35/747
A61P37/06
A61P37/08
A61P43/00 107
A23L33/135
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021037225
(22)【出願日】2021-03-09
(62)【分割の表示】P 2016201382の分割
【原出願日】2016-10-13
(65)【公開番号】P2021101711
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-03-09
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02003
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】逸見 隼
(72)【発明者】
【氏名】狩野 宏
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136942(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/033151(WO,A1)
【文献】Semin. Immunopathol.,2013年,Vol. 35,pp. 671-675
【文献】Immunol. Cell Biol.,2010年,Vol. 88,pp. 685-689
【文献】Immunity,2013年,Vol. 39,pp. 372-385
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
A23L 5/40-5/49
A23L 31/00-33/29
A61K 35/747
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HeXS34細胞に37℃、24時間の菌体処理(凍結乾燥菌体の重量濃度が50mg/mL)を加えることで、PBS群と比較して14倍以上のSEAP活性を有するLactobacillus johnsoniiを含有する、芳香族炭化水素レセプター(AhR)活性化により自己免疫疾患またはアレルギーを抑制するための経口摂取用組成物であり、
Lactobacillus johnsoniiとして、Lactobacillus johnsonii JCM2012TまたはLactobacillus johnsonii OLL203565(受託番号:NITE BP-02003)を含有する、経口摂取用組成物
【請求項2】
Lactobacillus johnsoniiとして、その培養物、分泌物、死菌体、またはその破砕物を含有する、請求項1に記載の経口摂取用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族炭化水素レセプター(AhR)を活性化することで、腸内において炎症の抑制作用を発揮する乳酸菌に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族炭化水素レセプター(Aryl hydrocarbon receptor:AhR)は、ほとんどの細胞、組織に発現が見られる、bHLH-PASファミリーに属する転写因子であり、リガンドの結合によって様々な遺伝子の転写活性化を引き起こすことが知られている。AhRのリガンドとしては、ダイオキシンやポリ塩化ビフェニルなどの化合物が知られている。
【0003】
免疫学的な知見として、AhRの活性化は、制御性T細胞の誘導やTh17細胞の分化の抑制を通して、I型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症といった自己免疫性疾患の改善や、ピーナッツアレルギー等の食物アレルギーの改善に寄与することが知られている。このことから、AhRの活性化能が高い物質や素材等は、自己免疫疾患やアレルギー等の過剰な免疫応答を抑制できる有用な物質である可能性が考えられる。
【0004】
これまで、AhRの活性化能の高い物質や素材等について、様々な探索検討がされている。例えば、特許5919193号公報(特許文献1)では、AhRの活性化能を有する乳酸菌として、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp. cremoris、Streptococcus thermophilusが記載されている。特開2011-162482号公報(特許文献2)には、芳香族炭化水素レセプターを活性化する物質を有効成分として含有する腸がん抑制剤が記載されており、具体的な有効成分として、インドール誘導体やフラボノイド類が記載されている。しかし、更にAhRの活性化能が高く、かつ、摂取しやすい形態であり、安全で副作用のない物質や素材等が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許5919193号公報
【文献】特開2011-162482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景から、本発明では、摂取しやすい形態であり、安全で副作用のない素材として乳酸菌に着目した。本発明では、これまでにない高いAhRの活性化能を有する乳酸菌を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは、身近で手軽に摂取できる素材として所定の乳酸菌に着目し、AhRの活性化能について詳細に検討した。そして、その結果として、乳酸菌の中でも、一定の条件を満たすLactobacillus johnsoniiやLactobacillus crispatusが顕著なAhRの活性化能を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、次の通りとなる。
[1]Lactobacillus johnsoniiを含有する、芳香族炭化水素レセプター(AhR)活性化のための経口摂取用組成物。
[2]HeXS34細胞に37℃、24時間の菌体処理(凍結乾燥菌体の重量濃度が50mg/mL)を加えることで、PBS群と比較して14倍以上のSEAP活性を有するLactobacillus johnsoniiを含有する、[1]に記載の経口摂取用組成物。
[3]Lactobacillus johnsoniiとして、その培養物、分泌物、死菌体、またはその破砕物を含有する、[1]または[2]に記載の経口摂取用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、これまでにない高いAhRの活性化能を有する乳酸菌を提供できる。本発明の乳酸菌や、例えばそれを用いて調製した発酵乳を摂取することで、AhRの活性化による抗炎症作用を得ることができる。特に、乳酸菌は食経験が豊富な食品であり、身近で手軽かつ安全に摂取できるので、自己免疫疾患やアレルギー等の過剰な免疫応答の抑制に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例において、表1に示した菌株のSEAP活性を比較した結果を示すグラフである。横棒は、各菌体の測定値の標準偏差を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、芳香族炭化水素レセプター(AhR)活性化能を有するLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiに関する。本発明において、「AhR活性化能」とは、AhR活性化によって開始されるシグナル伝達経路を活性化することができる能力のことをいい、活性化するメカニズムは何であってもよい。したがって、必ずしも菌体そのものがAhRのリガンドである必要はなく、例えば菌が産生する分泌物質がAhR活性化能を有していてもよいし、死菌体またはその破砕物などによってAhRが活性化されてもよい。したがって、本発明において特定の菌について言及する場合、生菌そのものだけでなく、死菌体またはその破砕物、該菌の培養物または分泌物も含まれる。
【0012】
本発明では、AhR活性化能の評価方法は特に限定されず、公知の方法で測定して評価できる。AhR活性化能の評価方法として、例えば、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)活性を指標にする方法や、所定のヒト細胞を用いて、in vitroでCYP1A1の発現量を測定する方法などが挙げられるが、簡便さの観点から、SEAP活性を測定し評価する方法が好ましい。
【0013】
本発明のLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiはAhR活性化能を有し、抗炎症性の効果を発揮することができる。したがって、本発明のLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiを抗炎症剤の有効成分として用いることができる。本発明のLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiを抗炎症剤の有効成分として用いる場合、生菌、死菌、培養物やその加工物を用いることが可能である。前記培養物とは、本発明のLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiの培養終了後の培養上清や培地成分をそのまま用いるものであり、前記加工物は、培養物に由来すればとくに限定されないが、例えば、培養物の濃縮、ペースト化、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥、液状化、希釈、破砕などの加工により得られる物が挙げられる。これらの加工には、公知の方法を適宜用いることができる。前記培養物中または前記加工物中において、本発明のLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiは、生菌であっても死菌であってもよい。摂取によって腸内有害菌の増殖を抑制して腸内環境を改善する、という観点から、好ましくは生菌として組成物中に含まれる。
【0014】
また本発明のLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsonii、その培養物、またはその加工物には、適宜、例えば、培地成分、経口経管摂取に適した添加物および水などの溶媒、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属、香料、薬学的に許容し得る担体、食品添加物などの任意成分を添加し、医薬組成物や食品組成物などの経口摂取用組成物とすることができる。
【0015】
本明細書において、「経口摂取用組成物」とは、経口摂取可能な全ての組成物を意味する。したがって、経口摂取用組成物には、これに限定するものではないが、例えば飲料品組成物、食品組成物、飼料組成物、医薬組成物、などが含まれる。
【0016】
本発明の飲料品組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsonii、その培養物およびその加工品から選択される1または2以上を含む。本発明の飲料品組成物にはさらに、Lactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiの生育を妨げない限り、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属(硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、炭酸カリウムなど)、香料やその他の配合物を含むことができる。かかる飲料品組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患の改善および/または予防効果を奏する。
【0017】
本発明の食品組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsonii、その培養物およびその加工品から選択される1または2以上を含む。本発明の食品組成物にはさらに、Lactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiの生育を妨げない限り、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属(硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、炭酸カリウムなど)、香料やその他の配合物を含むことができる。かかる食品組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患の改善および/または予防効果を奏する。
【0018】
糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテルなど)、食物繊維などが挙げられる。タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質などの動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳性ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖などの各種乳由来成分などが挙げられる。
【0019】
脂質としては、例えば、ラード、魚油など、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油などの動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油などの植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。
【0020】
本発明の飲料品組成物および食品組成物のカテゴリーや種類に制限はなく、機能性食品、特定保健用食品、特定用途食品、栄養機能食品、健康食品、介護用食品でもよく、また、菓子、乳酸菌飲料、チーズやヨーグルトなどの乳製品、調味料などであってもよい。飲食品の形状についても制限はなく、固形、液状、流動食状、ゼリー状、タブレット状、顆粒状、カプセル状など、通常流通し得るあらゆる飲食品形状をとることができ、各種食品(牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、栄養食品、冷凍食品、加工食品その他の市販食品など)に添加してもよい。上記飲食品の製造は、当業者の常法によって行うことができる。
【0021】
本発明のLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsonii、その培養物、またはその加工物は、上記のとおり、乳製品・発酵乳を含む一般飲食品に加工できる他、ヨーグルトやチーズなどの乳製品・発酵乳の製造用スターターとして利用することも可能である。スターターとする場合は、本発明のプロバイオティクスの生存および増殖に支障がない限り、また、乳製品製造に支障がない限り、他の微生物が混合されていてもよい。例えば、ヨーグルト用乳酸菌として主要な菌種であるLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus acidophilusなどと混合してもよく、その他、一般にヨーグルト用やチーズ用として用いられる菌種と混合してスターターとすることができる。上記スターターによる乳製品、発酵乳の製造は、常法に従って行うことができる。例えば、加温・混合・均質化・殺菌処理後に冷却した乳または乳製品に、上記スターターを混合し、発酵・冷却することにより、プレーンヨーグルトを製造することができる。
【0022】
本発明の飼料組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsonii、その培養物およびその加工品から選択される1または2以上を含む。本発明の飼料組成物にはさらに、Lactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiの生育を妨げない限り、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン類、生体必須微量金属(硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、炭酸カリウムなど)、香料やその他の配合物を含むことができる。かかる飼料組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患の改善および/または予防効果を奏する。
【0023】
本発明の医薬組成物は、典型的には、AhR活性化能を有するLactobacillus crispatusやLactobacillus johnsonii、その培養物およびその加工物から選択される1種または2種以上を含む。かかる医薬組成物は、摂取個体の腸内環境を改善し、炎症性疾患に対して治療、改善および/または予防効果を奏する。また、かかる医薬組成物は、投与経路はとくに限定されないが、経口的または非経口的に投与することが含まれ、例えば、経口投与、経管投与、経腸投与を例示できる。簡便かつ安全性の観点から、経口投与が好ましい。また剤型は、とくに限定されないが、投与経路に応じて適宜選択することができ、例えば、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、経皮吸収型製剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射剤、貼付剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤が挙げられる。
【0024】
本発明の医薬組成物に用い得る担体としては、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤などが医薬上許容される担体として挙げられるが、その他常用の担体を適宜使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などを挙げることができる。
【実施例
【0025】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は、本発明を限定するものではない。また、実施例で使用した微生物について、株名にJCMと記載された菌株は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室から入手した基準株である。株名にNCIMBと記載された菌株は、英国NCIMB研究所(National Collection of Industrial and Marine Bacteria)から入手した基準株である。株名にMEPと記載された菌株は、株式会社明治の保有菌株である。
【0026】
また、Lactobacillus johnsonii OLL203565は、2015年2月3日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号がNITE BP-02003として寄託されている菌株である。
[実施例]
HeXS34細胞の調製は、既報(Kasai et al.,Toxicol Appl Pharmacol.2006;211(1):11-19)に従って行った。簡潔には、2コピーのXREコンセンサス配列(tctcacgcaactccg)の下流にSEAP遺伝子を導入したpXRE-SEAPを、Hepa-1c1c7細胞(ネズミヘパトーマ細胞株、American Type Culture Collection (Manassas,VA, USA))に安定的に形質転換することにより、HeXS34細胞を調製した。
【0027】
そのHeXS34細胞を、MEMα培地(Invitrogen社製)に10%のウシ胎児血清(FBS)を添加した培地で維持し、その後、96ウェルプレートに、ウェル毎に1×10個/100μLで播種し、18時間培養した。次に、その細胞に、50mg/mLに調製した加熱殺菌済みの、表1に示した各乳酸菌体を10%添加した(終濃度;5mg/mL)。ネガティブコントロールには、菌体の代わりにPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を添加した。菌体添加後、37℃で24時間培養し、AhR活性化能の指標として培地上清中の分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)活性を測定した。SEAP活性は、Great EscAPe SEAP detection kit(Clontech社製)を用いて各検体につき3回測定し、得られた発光強度(LU)の平均値を評価に用いた。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例の各菌株のSEAP活性の測定結果を図1に示した。Lactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiでは、いずれの菌株においても、5000以上の発光強度が観察され、高いAhR活性化能を持つことが示唆された。Lactobacillus crispatusやLactobacillus johnsoniiの中で、もっともSEAP活性が低かったLactobacillus crispatus MEP201602においても、ネガティブコントロールの14.5倍ものSEAP活性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、これまでにない高いAhRの活性化能を有する乳酸菌を提供でき、その乳酸菌や、それを含む組成物を摂取することで、AhRの活性化による抗炎症作用を得ることができる。特に、乳酸菌は食経験が豊富な食品であり、身近で手軽かつ安全に摂取できるので、自己免疫疾患やアレルギー等の過剰な免疫応答の抑制に大きく寄与できる。
図1