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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】非接触式給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20221125BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20221125BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221125BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/90
H02M7/48 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019035857
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141496
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 明大
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526328(JP,A)
【文献】特開2012-55157(JP,A)
【文献】特開2017-216814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源部の正側に接続された第1、第3のスイッチ及び前記直流電源部の負側に接続された第2、第4のスイッチを具備するブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の出力側に設けられた共振キャパシタ及び一次コイルとを有して、二次コイルを備える受電装置に非接触で電力供給する非接触式給電装置において、
前記直流電源部の正側及び負側にそれぞれ接続されたスイッチA及びスイッチBと、
前記スイッチA及び前記スイッチBに一側が接続され、他側が前記共振キャパシタに前記ブリッジ回路を介して接続された補助キャパシタと、
前記第1、第2のスイッチの間で、前記補助キャパシタ及び前記ブリッジ回路の接点を基準として前記第1のスイッチ側に設けられたスイッチCと、
前記第1、第4のスイッチ及び前記スイッチCをON状態にし、前記第2、第3のスイッチ、前記スイッチA、BをOFF状態にして、前記直流電源部の正側からの電流が、前記第1のスイッチ、前記スイッチC及び前記共振キャパシタ経由で前記一次コイルに与えられる高キャパシタモードと、前記第4のスイッチ及び前記スイッチAをON状態にし、前記第1、第2、第3のスイッチ、前記スイッチB、CをOFF状態にして、前記直流電源部の正側からの電流が、前記スイッチA、前記補助キャパシタ及び前記共振キャパシタ経由で前記一次コイルに与えられる低キャパシタモードとを切り替える制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記高キャパシタモード及び前記低キャパシタモードの割合を変えて、キャパシタ容量を調整することを特徴とする非接触式給電装置。
【請求項2】
請求項1記載の非接触式給電装置において、前記第1、第2、第3、第4のスイッチ及び前記スイッチA、B、Cはそれぞれ、バルブデバイス及びダイオードが並列接続されたパワー半導体素子であることを特徴とする非接触式給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置に対して接触することなく給電する非接触式給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給電装置から受電装置に対し非接触で給電を行う設備においては、給電装置の一次側コイルと受電装置の二次側コイルの位置ずれが発生すると、伝送電力及び伝送効率が低下することから、一次側コイルと二次側コイルの位置ずれに対する補償が重要である。
この点に関連して、特許文献1には、距離センサを用いてキャパシタ容量を調整するシステムが記載されている。このシステムでは、複数のキャパシタが並列接続されており、各キャパシタに対応するスイッチを切り替えてキャパシタ容量が調整される。本システムは、距離センサ及び多数のキャパシタ及び多数のスイッチの追加を要し、制御精度が距離センサの精度に依存するという点が問題として挙げられる。更に、キャパシタ容量の可変はキャパシタの並列接続の切り替えで行われるため、キャパシタ容量を連続的に変化させることができず、補償の制御精度が低下する傾向があった。
【0003】
これに対し、非特許文献1には、4つのパワー半導体素子とキャパシタにより構成されるキャパシタ容量可変回路を採用したシステムが記載されている。このシステムは、距離センサを要さず、更に、一次側コイルと二次側コイルの位置ずれに対してキャパシタ容量を連続的に可変させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5010061号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】磯部高範、若杉一幸、嶋田隆一、「直列補償装置MERSを用いた非接触給電の高効率化」パワーエレクトロニクス学会誌、Vol.37、pp.81-88(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載のシステムは、4つのパワー半導体素子(スイッチ素子)の追加が必要となるのに加え、キャパシタ容量可変回路が受電装置に設けられるため、受電装置全体の大きさに制約がある等の理由で、受電装置側にキャパシタ容量可変回路を設けられない場合に対応できないという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、スイッチ素子の増加を抑制した上でキャパシタ容量を可変する仕組みを具備した非接触式給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る非接触式給電装置は、直流電源部の正側に接続された第1、第3のスイッチ及び前記直流電源部の負側に接続された第2、第4のスイッチを具備するブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の出力側に設けられた共振キャパシタ及び一次コイルとを有して、二次コイルを備える受電装置に非接触で電力供給する非接触式給電装置において、前記直流電源部の正側及び負側にそれぞれ接続されたスイッチA及びスイッチBと、前記スイッチA及び前記スイッチBに一側が接続され、他側が前記共振キャパシタに前記ブリッジ回路を介して接続された補助キャパシタと、前記第1、第2のスイッチの間で、前記補助キャパシタ及び前記ブリッジ回路の接点を基準として前記第1のスイッチ側に設けられたスイッチCと、前記第1、第4のスイッチ及び前記スイッチCをON状態にし、前記第2、第3のスイッチ、前記スイッチA、BをOFF状態にして、前記直流電源部の正側からの電流が、前記第1のスイッチ、前記スイッチC及び前記共振キャパシタ経由で前記一次コイルに与えられる高キャパシタモードと、前記第4のスイッチ及び前記スイッチAをON状態にし、前記第1、第2、第3のスイッチ、前記スイッチB、CをOFF状態にして、前記直流電源部の正側からの電流が、前記スイッチA、前記補助キャパシタ及び前記共振キャパシタ経由で前記一次コイルに与えられる低キャパシタモードとを切り替える制御手段とを備え、前記制御手段は、前記高キャパシタモード及び前記低キャパシタモードの割合を変えて、キャパシタ容量を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る非接触式給電装置は、従来の設備に対し、追加されるスイッチ素子がスイッチA、B、Cであるため、増加するスイッチ素子を3つに抑制できる。そして、制御手段は、第1、第2、第3、第4のスイッチ及びスイッチA、B、CのON状態及びOFF状態の切り替えで高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合を変えて等価的にキャパシタ容量を調整するので、キャパシタ容量を可変する仕組みを具備している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る非接触式給電装置の回路図である。
図2】高キャパシタモード時に各信号出力部から出力する信号を示す説明図である。
図3】(A)は接続状態αでの電流経路を示す説明図であり、(B)は接続状態βでの電流経路を示す説明図である。
図4】低キャパシタモード時に各信号出力部から出力する信号を示す説明図である。
図5】(A)は接続状態γでの電流経路を示す説明図であり、(B)は接続状態δでの電流経路を示す説明図である。
図6】高キャパシタモード及び低キャパシタモードを1:1の割合にするための各信号出力部からの出力信号を示す説明図である。
図7】高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合と二次コイルの出力電圧の関係とをシミュレーションした結果を示すグラフである。
図8】相互インダクタンスが低下した状況下における静電容量が可変の場合と固定の場合の二次コイルの出力電圧を比較したシミュレーションした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る非接触式給電装置10は、直流電源部15の正側に接続されたスイッチ11(第1のスイッチ)、スイッチ13(第3のスイッチ)及び直流電源部15の負側に接続されたスイッチ12(第2のスイッチ)、スイッチ14(第4のスイッチ)を具備するブリッジ回路16と、ブリッジ回路16の出力側に設けられた共振キャパシタ17及び一次コイル18とを有して、二次コイル19を備える受電装置20に非接触で電力供給する装置である。以下、詳細に説明する。
なお、図1は等価回路であり、非接触式給電装置10及び受電装置20が有線接続されたように記載されているが、実際には非接触式給電装置10及び受電装置20は有線接続されていない。
【0011】
非接触式給電装置10は、図1に示すように、直流電源部15と、直流電源部15から直流電圧が印加されるブリッジ回路16と、直列に接続された共振キャパシタ17及び一次コイル18を備えている。
直流電源部15は、図1に記載されているように、直流電源のみで構成することもできるが、これに限定されない。例えば、交流電源と交流電源から出力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータとを具備する直流電源部を採用してもよい。本実施の形態では、直流電源部15にキャパシタ21を並列接続して、ブリッジ回路16に印加される交流電圧値の安定化を図っている。
【0012】
ブリッジ回路16は、スイッチ11、12が直列接続され、スイッチ13、14が直列接続され、スイッチ11、12とスイッチ13、14とが並列に配置されている。スイッチ11、12間には導線22の一端部が連結され、導線22の他端部は共振キャパシタ17の一側に接続されている。
二次コイル19と磁気結合する一次コイル18は共振キャパシタ17の他側に接続されている。
【0013】
直流電源部15の正側及び負側にはスイッチA及びスイッチBがそれぞれ接続されている。スイッチA、Bは直列に接続され、スイッチA、Bの間には、他端部がスイッチ11、12の間(本実施の形態では導線22の一端部)に接続された導線23の一端部が接続されている。導線23には、一側が導線23を介してスイッチA、Bに接続され、他側が導線23及び導線22(ブリッジ回路16)を介して共振キャパシタ17に接続された補助キャパシタ24が設けられている。即ち、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24は直列に接続されている。
【0014】
ブリッジ回路16のスイッチ11、12の間には、導線23の他端(補助キャパシタ24及びブリッジ回路16の接点に該当)を基準として、スイッチ11側にスイッチCが設けられている。
本実勢の形態では、スイッチ11、12、13、14及びスイッチA、B、Cはそれぞれ、主としてIGBTからなるバルブデバイスとダイオードが並列に接続されたパワー半導体素子である。
【0015】
スイッチ11、12、13、14及びスイッチA、Bそれぞれのダイオードは直流電源部15の正側に向かって電流が通過するように配置され、スイッチCのダイオードは直流電源部15の正側に向かって電流が通過できないように配置されている。以下、スイッチ11、12、13、14及びスイッチA、B、Cそれぞれについて、バルブデバイスが通電可能な状態にあるときをON状態と言い、バルブデバイスが通電不可能な状態(遮断状態)にあるときをOFF状態と言う。
【0016】
また、非接触式給電装置10は、スイッチ11、12、13、14及びスイッチA、B、CそれぞれのON状態及びOFF状態を切り替える制御回路(制御手段の一例)25を備えている。制御回路25には、スイッチ11、12、13、14及びスイッチA、B、Cにそれぞれ対応した信号出力部G1、G2、G3、G4、Ga、Gb、Gcが設けられている。スイッチ11は対応する信号出力部G1から1の信号が出力されてON状態となり、0(零)の信号が出力されてOFF状態となる。これは、スイッチ12、13、14及びスイッチA、B、Cとそれぞれに対応する信号出力部G2、G3、G4、Ga、Gb、Gcについても同様である。
【0017】
制御回路25は、スイッチ11、12、13、14及びスイッチA、B、CそれぞれのON状態及びOFF状態の切り替えによって、一次コイル18と共振する対象を共振キャパシタ17のみにするか、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24にするかの選択を行った上で、一次コイル18の電流の向きを切り替えて、一次コイル18及び二次コイル19を結合させ、一次コイル18から二次コイル19へのエネルギー伝送を行う。
【0018】
一次コイル18及び共振キャパシタ17を共振させる場合、制御回路25は、図2に示すように、スイッチ11、14及びスイッチCをON状態にし、スイッチ12、13及びスイッチA、BをOFF状態にする接続状態αと、スイッチ12、13及びスイッチCをON状態にし、スイッチ11、14及びスイッチA、BをOFF状態にする接続状態βとを交互に繰り返す。なお、図2図4図6についても同じ)において、横軸は時間軸であり、縦軸は信号出力部G1、G2、G3、G4、Ga、Gb、Gcの信号を意味する。
従って、接続状態α、βでは、スイッチA、BのOFF状態が維持され、スイッチCのON状態が維持される。
【0019】
接続状態αでは、図3(A)に示すように、直流電源部15の正側からの電流が、スイッチ11、スイッチC、導線22、共振キャパシタ17を順に経由して一次コイル18の一側に与えられ、一次コイル18の他側からスイッチ14を通過して直流電源部15の負側に送られる。よって、補助キャパシタ24は通電されない。
そして、接続状態αから接続状態βに切り替えると、その切り替え直後、一次コイル18に蓄積されていたエネルギーにより、印加されている電圧とは逆向きの電流が生じる(このとき、共振キャパシタ17は通電され、補助キャパシタ24は通電されない)。
【0020】
その後、接続状態βでは、印加電圧に従った電流となり、図3(B)に示すように、直流電源部15の正側からの電流が、スイッチ13経由で一次コイル18の他側に与えられ、一次コイル18の一側から共振キャパシタ17、導線22及びスイッチ12を順に経由して直流電源部15の負側に送られるようになる。よって、補助キャパシタ24は通電されない。
【0021】
接続状態βから接続状態αに切り替えた直後で印加電圧とは逆向きの電流が生じている際も、共振キャパシタ17は通電され、補助キャパシタ24は通電されない。
従って、接続状態α、βの切り替えによる共振では、共振キャパシタ17は通電され、補助キャパシタ24は通電されない。よって、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24の静電容量(キャパシタ容量)をそれぞれC1及びCaとして(以下同様とする)、一次コイル18及び共振キャパシタ17は静電容量がC1で共振する。
【0022】
これに対し、一次コイル18、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24を共振させる場合、制御回路25は、図4に示すように、スイッチ14及びスイッチAをON状態にし、スイッチ11、12、13及びスイッチB、CをOFF状態にする接続状態γと、スイッチ13及びスイッチBをON状態にし、スイッチ11、12、14及びスイッチA、CをOFF状態にする接続状態δとを交互に繰り返す。従って、接続状態γ、δでは、スイッチ11、12及びスイッチCのOFF状態が維持される。
【0023】
接続状態γでは、図5(A)に示すように、直流電源部15の正側からの電流が、スイッチA、補助キャパシタ24(導線23)、導線22及び共振キャパシタ17を順に経由して一次コイル18の一側に与えられ、一次コイル18の他側からスイッチ14を通過して直流電源部15の負側に送られる。
接続状態γから接続状態δに切り替えると、切り替え直後、印加されている電圧とは逆向きの電流が生じる。このとき、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24は通電される。
【0024】
その後、接続状態δでは、印加電圧に従った電流となり、図5(B)に示すように、直流電源部15の正側からの電流が、スイッチ13経由で一次コイル18に与えられ、一次コイル18から共振キャパシタ17、導線22、補助キャパシタ24(導線23)及びスイッチBを順に経由して直流電源部15の負側に送られるようになる。
接続状態δから接続状態γに切り替えた直後で印加電圧とは逆向きの電流が生じている際も、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24は通電される。
従って、接続状態γ、δの切り替えによる共振では、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24が共に通電され、一次コイル18、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24は、容量がCa×C1/(Ca+C1)、即ち、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24を直列接続した合成容量で共振する。
【0025】
本実施の形態では、一次コイル18及び共振キャパシタ17が静電容量C1で共振するモード(接続状態α、βを繰り返すモード)を高キャパシタモードと言い、一次コイル18、共振キャパシタ17及び補助キャパシタ24が静電容量Ca×C1/(Ca+C1)で共振するモード(接続状態γ、δを繰り返すモード)を低キャパシタモードと言う。
低キャパシタモードは高キャパシタモードに比べて静電容量が小さいことから、Q値が大きくなる。一次コイル18及び二次コイル19の間の距離が固定されている状態では、Q値が大きくなるにつれて、受電装置20において二次コイル19の出力電圧(受電装置20の負荷に対する出力電圧)は大きくなる。
【0026】
制御回路25は、高キャパシタモード及び低キャパシタモードの切り替えが可能であり、高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合(時間的な割合、デユーティ)を変えることができる。例えば、図6に示すようにスイッチ11、12、13、14及びスイッチA、BそれぞれのON状態及びOFF状態を切り替えることで、高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合を1:1にすることができる。
そして、制御回路25は、高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合を変えて、非接触式給電装置10側の共振に寄与する静電容量(キャパシタ容量)と共にQ値を連続的に変え、二次コイル19の出力電圧の大きさを調整する。
【0027】
従って、従来の設備に対し、二次コイル19の出力電圧の大きさを調整するために追加される電子部品等は、主として、非接触式給電装置10のスイッチA、B、Cの3つのスイッチと補助キャパシタ24となる。追加されるパワー半導体素子はスイッチA、B、Cの3つと少量であることから、結果として、非接触式給電装置10全体の発熱増加の抑制が可能である。
一方、受電装置20側には、原則、電子部品等の追加は不要である。
なお、受電装置20には、二次コイル19と共振回路を構成する共振キャパシタ28が設けられている。
【0028】
また、制御回路25は、ゼロ交差検波部、位相演算部、PI制御部等を有して構成され、導線22(ブリッジ回路16の出力側)の電流値及び電圧値を検出し、それぞれのゼロクロス点を基にそれぞれの位相情報を得て、電流値及び電圧値の力率が1(同じ位相)となるように制御する。本実施の形態では、一次コイル18に対する二次コイル19の基準位置として、高キャパシタモードで導線22の電流値及び電圧値の力率が1となる位置を設定している。制御回路25は、力率の低下(1より小さくなること)から、二次コイル19が基準位置に配置されていないのを検知可能であり、力率の低下を検出すると、高キャパシタモード及び低キャパシタモードの切り替えを行い、力率が1となるように高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合を調整する。
【実施例
【0029】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験について説明する。
第1の実験では、高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合と二次コイルの出力電圧との関係をシミュレーションした。シミュレーション結果を図7にグラフとして示す。
なお、シミュレーションでは、非接触式給電装置の共振キャパシタ及び補助キャパシタの各静電容量を68nFとした。
【0030】
図7のグラフは、縦軸がニ次コイルの出力電圧であり、横軸が全体に対する低キャパシタモードの比率(高キャパシタモードのみは0、低キャパシタモードのみは1、高キャパシタモード及び低キャパシタモードが1:1は0.5)を示す。
実験結果より、高キャパシタモード及び低キャパシタモードの割合を変えることで、二次コイルの出力電圧を調整できることが確認できた。
【0031】
第2の実験では、二次コイルの出力電圧が実効値で100V(ピーク値は141.4V)の状態から、一次コイルと二次コイルの間隔を広げて相互インダクタンスを50%にした際の二次コイルの出力電圧をシミュレーションした。シミュレーションは、高キャパシタモード及び低キャパシタモードを切り替える場合(キャパシタ接続切替回路有り、実線)と、非接触式給電装置側の共振回路の静電容量が固定の場合(キャパシタ接続切替回路無し、破線)とについて行った。シミュレーション結果を図8にグラフとして示す。
【0032】
実験結果より、非接触式給電装置側の共振回路の静電容量が固定の場合、二次コイルの出力電圧の実効値が100Vを大きく下回って、非接触式給電装置の共振キャパシタ及び受電装置の共振キャパシタの補償範囲外となった。これに対し、高キャパシタモード及び低キャパシタモードを切り替える場合、二次コイルの出力電圧の実効値を100Vに保つことができることが確認された。
【0033】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、非接触式給電装置側の共振キャパシタは複数であってもよい。
また、第1、第2、第3、第4のスイッチ及びスイッチA、B、Cはそれぞれ、IGBT及びダイオードが並列に接続されたパワー半導体素子に限定されず、例えば、第1、第2、第3、第4のスイッチ及びスイッチA、B、CそれぞれにMOSFETを採用することができる。
そして、制御手段は力率が予め定めた1以外の数値となるような制御を行ってもよいし、力率以外の値を基にした制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10:非接触式給電装置、11、12、13、14:スイッチ、15:直流電源部、16:ブリッジ回路、17:共振キャパシタ、18:一次コイル、19:二次コイル、20:受電装置、21:キャパシタ、22:導線、23:導線、24:補助キャパシタ、25:制御回路、28:共振キャパシタ、A、B、C:スイッチ、G1、G2、G3、G4、Ga、Gb、Gc:信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8