(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】反射防止膜、反射防止膜の製造方法、及び眼鏡型ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 1/118 20150101AFI20221125BHJP
G02B 25/00 20060101ALI20221125BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20221125BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221125BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221125BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G02B1/118
G02B25/00 Z
G02B13/16
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/02
(21)【出願番号】P 2018222794
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2017245565
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032945(JP,A)
【文献】国際公開第2011/161812(WO,A1)
【文献】特開2009-230045(JP,A)
【文献】特開2001-091706(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073881(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/151809(WO,A1)
【文献】特開2010-239003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0290118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止膜であって、
支持基材上に、ポジ型フォトレジスト材料から成り、前記支持基材に近い程寸法と屈折率が大きくなるパターンが形成されているものであることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
前記パターンのピッチが、400nm以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項3】
前記ポジ型フォトレジスト材料が、芳香族基を有する高分子化合物とフッ素を有する高分子化合物を含有し、該フッ素を有する高分子化合物が前記支持基材から離れた側に配向されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の反射防止膜。
【請求項4】
前記芳香族基を有する高分子化合物の波長590~610nmの可視光における屈折率が1.6以上であり、前記フッ素を有する高分子化合物の波長590~610nmの可視光における屈折率が1.5以下のものであることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜。
【請求項5】
前記ポジ型フォトレジスト材料が、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、及びシクロペンタジエニル錯体から選ばれる一つ以上の構造を有している繰り返し単位を85%以上含む高分子化合物を含有しているものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の反射防止膜。
【請求項6】
前記ポジ型フォトレジスト材料が、ヨウ素置換又は臭素置換のスチレン、ヨウ素置換又は臭素置換のフェニル(メタ)アクリレート、及びヨウ素置換又は臭素置換のフェニル(メタ)アクリルアミドのうちのいずれかを有している繰り返し単位を50%以上含む高分子化合物を含有しているものであることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の反射防止膜。
【請求項7】
前記パターンが、波長590~610nmの可視光における屈折率が1.45以下の低屈折率材料で覆われているものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の反射防止膜。
【請求項8】
前記反射防止膜が、波長400~800nmの可視光における透過率が80%以上のものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の反射防止膜。
【請求項9】
眼鏡型ディスプレイであって、前記眼鏡型ディスプレイの眼球側の基板上に液晶、有機EL、及びマイクロLEDから選択される自己発光型ディスプレイが設置され、該自己発光型ディスプレイの眼球側に焦点を結ぶための凸レンズが設置され、該凸レンズの表面に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の反射防止膜が形成されているものであることを特徴とする眼鏡型ディスプレイ。
【請求項10】
反射防止膜の製造方法であって、
支持基材上に、芳香族基を有する高分子化合物とフッ素を有する高分子化合物を含有するポジ型フォトレジスト材料をコートし、ベークによって前記フッ素を有する高分子化合物を膜表面に配向させ、その後露光と現像によって前記支持基材に近い程寸法と屈折率が大きくなるパターンを形成することを特徴とする反射防止膜の製造方法。
【請求項11】
前記パターンのピッチを、400nm以下とすることを特徴とする請求項10に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項12】
前記芳香族基を有する高分子化合物として、波長590~610nmの可視光における屈折率が1.6以上のものを用い、前記フッ素を有する高分子化合物として、波長590~610nmの可視光における屈折率が1.5以下のものを用いることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項13】
前記ポジ型フォトレジスト材料として、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、及びシクロペンタジエニル錯体から選ばれる一つ以上の構造を有している繰り返し単位を85%以上含む高分子化合物を含有しているものを用いることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項14】
前記ポジ型フォトレジスト材料として、ヨウ素置換又は臭素置換のスチレン、ヨウ素置換又は臭素置換のフェニル(メタ)アクリレート、及びヨウ素置換又は臭素置換のフェニル(メタ)アクリルアミドのうちのいずれかを有している繰り返し単位を50%以上含む高分子化合物を含有しているものを用いることを特徴とする請求項10から請求項
12のいずれか一項に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項15】
前記パターンを形成した後、該パターンを波長590~610nmの可視光における屈折率が1.45以下の低屈折率材料で覆うことを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の反射防止膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浅い角度から入射される可視光を反射せずに取り入れるためおよび可視光を反射せずに浅い角度で放出させるための反射防止膜、該反射防止膜の製造方法、及び反射防止膜を用いた眼鏡型ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実(VR)用の器具の開発が進んでいる。ゴーグルタイプのVRを取り付けて、映画を鑑賞することが出来るし、遠く離れた人同士があたかも隣にいるように会話することも出来る(特許文献1)。かつてSF映画で示された時空を飛び越えたような映像を身近に体験することが出来る様になってきている。
【0003】
高度な仮想現実感を得るために、ゴーグルの軽量化や薄膜化に向けた検討が行われている。また、ゴーグルそのものをより軽量な眼鏡タイプにする必要があるし、眼鏡もかけずにVRを体験できる仕組みも必要となってくる。空間に像を形成する技術としてホログラフィーが知られている。これを用いるとゴーグルや眼鏡無しでVRを体験することが出来る。干渉性の高いコヒーレントなレーザー干渉のホログラフィーによって空間像を形成するが、近年レーザーの軽量コンパクト化、低価格化、高品質化、高強度化に伴ってホログラフィーが身近になってきている。光を伝搬させる層から垂直方向に光を採りだし、ホログラフィーを使ってこれを投影する技術が提案されている(特許文献2)。これは、眼鏡の水平方向に光を伝搬させ、これを回折によって垂直な目の方向に画像を投影する仕組みである。
【0004】
ホログラフィーは、回折するためのパターンの精度と解像度の変化によって画像の解像度やコントラストが変化する。現時点では、画像の解像度とコントラストでは液晶や有機ELディスプレイの方が遙かに良好である。
【0005】
ヘッドマウントディスプレイを、軽量な眼鏡タイプのディスプレイにすることが出来れば大幅な軽量化が可能となる。この場合、大幅に薄くて斜入射な光を投影するための技術、間近の物体に焦点を合わせるための薄型のレンズ構成、浅い角度の光を反射させずに投影するための高性能な反射防止膜材料が必要となる。
【0006】
ディスプレイの目側に反射防止膜を設けることは古くから提案されている(特許文献3)。これによって、ディスプレイから投影された画像が、強度の損失無く高コントラストな状態で見ることが出来る。反射防止膜として、多層の反射防止膜が有効であることも示されている(特許文献4)。様々な波長の可視光と、様々な角度の光に対して反射防止を行うためには、多層の反射防止膜が有利である。
【0007】
蛾の目(モスアイ)構造を有する反射防止膜が提案されている(非特許文献1)。蛾が暗闇でも光を高効率で感知することが出来る原因は、その目の表面の微細な突起が繰り返された構造による。これを人工的に形成した反射防止膜が提案されている(特許文献5)。波長より微細で、先端が細く基板面が太い高屈折率な密集のピラーを形成して、先端では屈折率が低く、基板面では屈折率が高くなる様な状態となる。あたかも多層の反射防止膜の場合と同様の効果をモスアイ構造によって得ることが出来る。
【0008】
モスアイ構造による反射防止膜は、版を樹脂に押し当てて場合によっては加熱しながら樹脂を変形させるインプリント技術によって形成される。インプリント法では、版の消耗によってパターンが形成できなくなる欠点がある。また、モスアイ構造自体はピラーの間にゴミが付着したり、ピラーが折れたりすると反射防止機能が低下する欠点も有する。
【0009】
モスアイ構造に於いて、パターンのトップ部分にフッ素を含有する樹脂を使うことが提案されている(特許文献6)。この場合、膜表面のフッ素含有量を増やすために、フッ素ガス処理によってフッ素化している。
【0010】
フッ素を含有する低屈折率レジストが提案されている(特許文献7、8、9)。フッ素を含有する基の中でもフルオロアルコール基は酸性を有しているためにアルカリ親和性が高く、現像中の膨潤を防いでくれるメリットがある。
【0011】
フッ素を多く含有するポリマーと、フッ素を全く含有しないかフッ素含有率が少ないポリマーとブレンドし、スピンコート後にフッ素を多く含有するポリマーを膜表面に配向させ、撥水性を向上させる液浸リソグラフィーレジストが提案されている(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平6-236432号公報
【文献】米国特許20130021392A1
【文献】特開平5-215908号公報
【文献】特開平5-264802号公報
【文献】特開2004-77632号公報
【文献】WO2005/096037号公報
【文献】特開2005-321765号公報
【文献】特開2005-320516号公報
【文献】特開2002-234916号公報
【文献】特開2007-297590号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】Optica Acta : International Journal of Optics, Vol29, p993-1009 (1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明は上記事情に鑑み、光に対して低反射となる反射防止効果を得ることが出来る反射防止膜、その製造方法、及び眼鏡型ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明では、
反射防止膜であって、
支持基材上に、フォトレジスト材料から成り、前記支持基材に近い程寸法と屈折率が大きくなるパターンが形成されているものである反射防止膜を提供する。
【0016】
本発明のような反射防止膜であれば、光に対して低反射となる反射防止効果を得ることが出来るものとなる。
【0017】
また、前記パターンのピッチが、400nm以下のものであることが好ましい。
【0018】
パターンピッチがこのようなものであれば、パターン上での乱反射を防止することが出来る。
【0019】
また、前記フォトレジスト材料が、芳香族基を有する高分子化合物とフッ素を有する高分子化合物を含有し、該フッ素を有する高分子化合物が前記支持基材から離れた側に配向されたものであることが好ましい。
【0020】
また、前記芳香族基を有する高分子化合物の波長590~610nmの可視光における屈折率が1.6以上であり、前記フッ素を有する高分子化合物の波長590~610nmの可視光における屈折率が1.5以下のものであることが好ましい。
【0021】
また、前記フォトレジスト材料が、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、及びシクロペンタジエニル錯体から選ばれる一つ以上の構造を有している繰り返し単位を85%以上含む高分子化合物を含有しているものであることが好ましい。
【0022】
また、前記フォトレジスト材料が、ヨウ素置換又は臭素置換のスチレン、ヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリレート、及びヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリルアミドのうちのいずれかを有している繰り返し単位を50%以上含む高分子化合物を含有しているものであることが好ましい。
【0023】
フォトレジスト材料がこのようなものであれば、モスアイパターンを作り易く、より一層高い反射防止効果を得ることが出来る反射防止膜となる。
【0024】
また、前記パターンが、波長590~610nmの可視光における屈折率が1.45以下の低屈折率材料で覆われているものであることが好ましい。
【0025】
このような反射防止膜であれば、パターンの倒れにより反射防止効果が低下することを抑制できる。
【0026】
また、前記反射防止膜が、波長400~800nmの可視光における透過率が80%以上のものであることが好ましい。
【0027】
このような透過率の反射防止膜であれば、より高輝度でより高コントラストな光を見ることが出来る軽量で薄型の眼鏡型のヘッドマウントディスプレイに好適に用いることができる。
【0028】
また、本発明では、眼鏡型ディスプレイであって、前記眼鏡型ディスプレイの眼球側の基板上に液晶、有機EL、及びマイクロLEDから選択される自己発光型ディスプレイが設置され、該自己発光型ディスプレイの眼球側に焦点を結ぶための凸レンズが設置され、該凸レンズの表面に前記反射防止膜が形成されているものである眼鏡型ディスプレイを提供する。
【0029】
本発明のような眼鏡型ディスプレイであれば、高輝度で高コントラストな光を見ることが出来る軽量で薄型の眼鏡型のヘッドマウントディスプレイとして好適に用いることができる。
【0030】
また、本発明では、
反射防止膜の製造方法であって、
支持基材上に、芳香族基を有する高分子化合物とフッ素を有する高分子化合物を含有するフォトレジスト材料をコートし、ベークによって前記フッ素を有する高分子化合物を膜表面に配向させ、その後露光と現像によって前記支持基材に近い程寸法と屈折率が大きくなるパターンを形成する反射防止膜の製造方法を提供する。
【0031】
本発明のような反射防止膜の製造方法であれば、光に対して低反射となる反射防止効果を得ることが出来る反射防止膜を容易に製造することが出来る。
【0032】
また、前記パターンのピッチを、400nm以下とすることが好ましい。
【0033】
パターンピッチがこのようなものであれば、パターン上での乱反射を防止することが出来る反射防止膜を製造できる。
【0034】
また、前記芳香族基を有する高分子化合物として、波長590~610nmの可視光における屈折率が1.6以上のものを用い、前記フッ素を有する高分子化合物として、波長590~610nmの可視光における屈折率が1.5以下のものを用いることが好ましい。
【0035】
また、前記フォトレジスト材料として、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、及びシクロペンタジエニル錯体から選ばれる一つ以上の構造を有している繰り返し単位を85%以上含む高分子化合物を含有しているものを用いることが好ましい。
【0036】
また、前記フォトレジスト材料として、ヨウ素置換又は臭素置換のスチレン、ヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリレート、及びヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリルアミドのうちのいずれかを有している繰り返し単位を50%以上含む高分子化合物を含有しているものを用いることが好ましい。
【0037】
フォトレジスト材料としてこのようなものを用いれば、より一層高い反射防止効果を得ることが出来る反射防止膜を、より容易に製造できる。
【0038】
また、前記パターンを形成した後、該パターンを波長590~610nmの可視光における屈折率が1.45以下の低屈折率材料で覆うことが好ましい。
【0039】
このような工程を含む製造方法であれば、パターンが倒れ反射防止効果が低下することを抑制できる反射防止膜を製造できる。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明の反射防止膜であれば、高屈折率なポリマーをベースとするフォトレジストを使った露光と現像によって形成されたテーパー形状のパターンによって、モスアイ型の反射防止膜を形成することが出来る。これによって、浅い入射光および放出光においても可視光に対して低反射な反射防止効果を得ることが出来、高屈折率レンズと組み合わせることによって、目の近くに設置された液晶、有機EL、マイクロLED等から発生された光を高コントラストで高輝度な状態で見ることが出来る。また、本発明の反射防止膜の形成方法であれば、容易に本発明の反射防止膜を形成することができる。また、本発明の反射防止膜を用いた眼鏡型ディスプレイであれば、従来のヘッドマウントディスプレイを大幅に軽量かつ薄型にした眼鏡タイプのディスプレイを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】高屈折率レジストパターン形成後の本発明の反射防止膜の一例を示す概略断面図である。
【
図2】高屈折率レジストパターン形成し、その上に低屈折率膜を形成後の本発明の反射防止膜の一例を示す概略断面図である。
【
図3】高屈折率レジストパターン形成後の本発明の反射防止膜のパターンレイアウトの一例を示す概略上面観察図である。
【
図4】高屈折率レジストパターン形成後の本発明の反射防止膜の別のパターンレイアウトの一例を示す概略上面観察図である。
【
図5】本発明の眼鏡型ディスプレイを装着した場合の一例を示す概略断面図である。
【
図6】実施例における本発明の反射防止膜の光透過性を測定する方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
上述のように、優れた反射防止効果を得るために、空気側(目側)に低屈折率な膜、反対の光を発生させる側に高屈折率な膜、その間に徐々に屈折率が変化する多層膜を設置すると、優れた反射防止効果を発揮することが知られている。しかしながら、屈折率は物質が持っている固有の値であるため、屈折率を徐々に変化させるということは、それぞれ異なる屈折率の材料の膜を積層する必要があったため、屈折率の調整が困難であった。また、高屈折率の材料と低屈折率の材料をブレンドし、そのブレンド比率を変えながら積層する膜の屈折率を変える方法も考えられるが、高屈折率の材料と低屈折率の材料は極性が大きく異なることが多いため、ブレンドしても混ざらなく、これも一般的ではない。そこで、反射防止膜として前述したモスアイパターンを形成した膜を用いることが考えられる。一般的には、モスアイパターンは、樹脂膜を加熱しながらスタンパーと呼ばれるモールドを押しつけて加工するインプリント法で形成される。
【0043】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、モスアイパターンを露光と現像によって形成することが出来れば、スループットを大幅に高めることが出来、更に、モスアイパターンを形成するフォトレジストとして高屈折率で配向性のある材料を使うことによって、より一層高い反射防止効果を得ることが出来ることを見出し、本発明を完成させた。
【0044】
すなわち、本発明は、反射防止膜であって、
支持基材上に、フォトレジスト材料から成り、前記支持基材に近い程寸法と屈折率が大きくなるパターンが形成されているものである反射防止膜である。
【0045】
以下、本発明について図面を参照にして詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<反射防止膜>
本発明では、支持基材上に、フォトレジスト材料から成り、前記支持基材に近い程寸法と屈折率が大きくなるパターンが形成されているものである反射防止膜を提供する。
【0047】
本発明の反射防止膜の一例を示す概略断面図を
図1に示す。
図1の反射防止膜101は、支持基材11上に、フォトレジスト材料12からなり、支持基材11に近い程寸法が大きくなるパターン13(モスアイパターン)が形成された膜である。また、モスアイパターン13は、支持基材11に近い程屈折率も大きくなるものである。
【0048】
モスアイパターンの上方から観察したレイアウトは、
図3に示される様に縦横の配列であっても、
図4に示される配列であっても、それ以外の配列であっても構わないが、パターンのピッチが同じであり、パターンのサイズが同じであることが好ましい。パターンのサイズとピッチがそれぞれ同じになることによって、膜の屈折率が均一になるため、好ましい。
【0049】
また、本発明の反射防止膜は波長400~800nmの可視光における透過率が80%以上であることが好ましい。
【0050】
[支持基材に近い程寸法が大きくなるパターン(モスアイパターン)]
モスアイパターン13のピッチは可視光の波長よりも小さくすることが好ましい。これによって、モスアイパターン13上での乱反射を防止することが出来る。可視光の中で最も短波長なのは約400nmなので、パターンピッチは400nm以下が好ましく、更に好ましくは300nm以下である。
【0051】
モスアイパターン13の高さは50nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上800nm以下である。
【0052】
一般的なインプリント法で形成される樹脂フィルムの屈折率はおおよそ1.5であるが、本発明のようにフォトレジスト材料であれば、支持基材側はこれより高い屈折率で、支持基材から離れるにつれて屈折率が低くなるモスアイパターンとすることができる。このようなパターンであれば、より高い反射防止効果を発揮することが出来、より浅い光を放出あるいは入射することが可能となる。よって、フォトレジスト材料の支持基材側の屈折率は、波長590~610nmの可視光において1.6以上が好ましく、より好ましくは1.65以上であり、更に好ましくは1.7以上である。また、支持基材から離れた側の屈折率は、波長590~610nmの可視光において1.5以下が好ましい。
【0053】
モスアイパターン13は
図1に示されるように、上方のサイズを小さく、下の支持基材と接する面のサイズを大きくする必要がある。
図1に示されるモスアイパターン13の断面は三角形形状であるが、上部が平らな台形形状や、楕円を半分にした形状であっても構わない。何れにしても、これによって上方の屈折率が低くなり、下方の屈折率が高くなる。このようなテーパー形状のパターンを形成するには、高吸収のレジスト材料を使う方法と、低溶解コントラストのレジスト材料を使う方法がある。例えばナフタレンを含む構造を有するレジスト材料は、波長248nmのKrFエキシマレーザーや波長193nmのArFエキシマレーザーに適度な吸収を有しているので、これらのエキシマレーザーを使ったリソグラフィーによってモスアイパターンを形成することができるため、好ましい。
【0054】
フォトレジスト材料としては、支持基材に近い程屈折率が大きくなるような材料であれば特に限定されないが、例えば、高屈折率な高分子化合物と低屈折率な高分子化合物を混合し、該低屈折率な高分子化合物が膜表面に配向するようなフォトレジスト材料とすることができる。このとき、高屈折率な高分子化合物が芳香族基を有する高分子化合物、低屈折率な高分子化合物がフッ素を有する高分子化合物であれば、ベークによって低屈折率であるフッ素を有する高分子化合物が膜表面に配向するため、好ましい。芳香族基を有する高分子化合物の屈折率は1.6以上が好ましく、フッ素を有する高分子化合物の屈折率は1.5以下が好ましい。
【0055】
芳香族基を有する高分子化合物としては、縮合芳香族環を有する高分子化合物がより高屈折率であるためより好ましく、例えば、高屈折率な縮合芳香族環を有するレジスト材料としては、縮合芳香族環の酸不安定基を有するレジスト材料が、特開2010-237662号公報、特開2010-237661号公報、特開2011-150103号公報、特開2011-138107号公報、特開2011-141471号公報に例示されている。特開2002-119659号公報に記載のアセナフチレン、特開2014-119659号公報に記載のビニルフェロセン、特開2002-107933号公報に記載のヒドロキシビニルナフタレン、特開2007-114728号公報に記載のヒドロキシナフタレンメタクリレート等を含むレジスト材料も高屈折率であるため好ましい。また、特開平5-204157号公報に記載の臭素やヨウ素で置換されたヒドロキシスチレンを含むレジスト材料も高屈折率であるため好ましい。
【0056】
縮合芳香族環の酸不安定基を含有するモノマーとしては下記に例示するものを挙げることが出来る。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
ナフタレン構造を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記に例示するものを挙げることが出来る。
【0071】
【0072】
ヨウ素置換又は臭素置換のスチレン、ヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリレート、及びヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリルアミドのうちのいずれかを有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記に例示するものを挙げることが出来る。
【0073】
【0074】
【0075】
アントラセン構造を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記に例示するものを挙げることが出来る。
【0076】
【0077】
シクロペンタジエニル錯体を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記に例示するものを挙げることが出来る。また、下記のシクロペンタジエニル錯体は、フェロセンであることが好ましい。
【0078】
【0079】
【化19】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基、Raは水素原子又は酸不安定基、MはFe、Co、Ni、Cr、Ruである。)
【0080】
なお、上述した高分子化合物の中でも、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、及びシクロペンタジエニル錯体から選ばれる一つ以上の構造を有している繰り返し単位を85%以上含む高分子化合物を有しているフォトレジスト材料が好ましい。
【0081】
また、ヨウ素置換又は臭素置換のスチレン、ヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリレート、及びヨウ素置換又は臭素置換のベンゼン(メタ)アクリルアミドのうちのいずれかを有している繰り返し単位を50%以上含む高分子化合物を有しているフォトレジスト材料が好ましい。
【0082】
低屈折率なフッ素原子を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記に例示するものを挙げることが出来る。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【化23】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基、Raは水素原子又は酸不安定基である。)
【0087】
フッ素を有する高分子化合物は、酸不安定基を有していても有して無くても良いが、溶解コントラストを向上させるためには酸不安定基を有している方が好ましい。酸不安定基としては、上記フッ素含有の繰り返し単位のヒドロキシ基を酸不安定基で置換する場合と、フッ素を含有していない繰り返し単位のヒドロキシ基やカルボキシル基を酸不安定基で置換した繰り返し単位を共重合する場合を挙げることが出来る。
【0088】
フッ素を含有していない繰り返し単位のヒドロキシ基やカルボキシル基を酸不安定基で置換した繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記に示すものを挙げることが出来る。
【0089】
【化24】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基、Raは水素原子又は酸不安定基である。)
【0090】
酸不安定基Raは、種々選定されるが、同一でも異なっていてもよく、特に下記式(A-1)~(A-3)で置換された基で示されるものが挙げられる。
【0091】
【0092】
式(A-1)において、RL30は炭素数4~20、好ましくは4~15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1~6のトリアルキルシリル基、炭素数4~20のオキソアルキル基、又は上記式(A-3)で示される基を示し、三級アルキル基として具体的には、tert-ブチル基、tert-アミル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチルシクロペンチル基、1-ブチルシクロペンチル基、1-エチルシクロヘキシル基、1-ブチルシクロヘキシル基、1-エチル-2-シクロペンテニル基、1-エチル-2-シクロヘキセニル基、2-メチル-2-アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3-オキソシクロヘキシル基、4-メチル-2-オキソオキサン-4-イル基、5-メチル-2-オキソオキソラン-5-イル基等が挙げられる。A1は0~6の整数である。
【0093】
上記式(A-1)の酸不安定基としては、具体的にはtert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基、tert-アミロキシカルボニル基、tert-アミロキシカルボニルメチル基、1,1-ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1-ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1-エチル-2-シクロペンテニルオキシカルボニル基、1-エチル-2-シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1-エトキシエトキシカルボニルメチル基、2-テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2-テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0094】
更に、下記式(A-1)-1~(A-1)-10で示される置換基を挙げることもできる。
【0095】
【0096】
ここで、RL37は互いに同一又は異種の炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基、RL38は水素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。
【0097】
また、RL39は互いに同一又は異種の炭素数2~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基である。A1は前述の通りである。
【0098】
上記式(A-2)で示される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A-2)-1~(A-2)-69のものを例示することができる。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
式(A-2)において、RL31、RL32は水素原子又は炭素数1~18、好ましくは1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基等を例示できる。RL33は炭素数1~18、好ましくは1~10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0104】
【0105】
RL31とRL32、RL31とRL33、RL32とRL33とは結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL31、RL32、RL33はそれぞれ炭素数1~18、好ましくは1~10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、好ましくは環の炭素数は3~10、特に4~10である。
【0106】
上記式(A-2)で示される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン-2-イル基、2-メチルテトラヒドロフラン-2-イル基、テトラヒドロピラン-2-イル基、2-メチルテトラヒドロピラン-2-イル基等が挙げられる。
【0107】
また、下記式(A-2a)あるいは(A-2b)に示されるように、ポリマーの分子間あるいは分子内が架橋されていてもよい。
【0108】
【0109】
式中、RL40、RL41は水素原子又は炭素数1~8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、RL40とRL41は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはRL40、RL41は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。RL42は炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、B1、D1は0又は1~10、好ましくは0又は1~5の整数、C1は1~7の整数である。Aは、(C1+1)価の炭素数1~50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは-CO-O-、-NHCO-O-又は-NHCONH-を示す。
【0110】
この場合、好ましくは、Aは2~4価の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキルトリイル基、アルキルテトライル基、炭素数6~30のアリーレン基であり、これらの基はヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、C1は好ましくは1~3の整数である。
【0111】
式(A-2a)、(A-2b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(A-2)-70~(A-2)-77のものが挙げられる。
【0112】
【0113】
次に、式(A-3)においてRL34、RL35、RL36は炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、又は炭素数2~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素などのヘテロ原子を含んでもよく、RL34とRL35、RL34とRL36、RL35とRL36とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、炭素数3~20の脂環を形成してもよい。
【0114】
式(A-3)に示される三級アルキル基としては、tert-ブチル基、トリエチルカルビル基、1-エチルノルボニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-エチルシクロペンチル基、2-(2-メチル)アダマンチル基、2-(2-エチル)アダマンチル基、tert-アミル基等を挙げることができる。
【0115】
また、三級アルキル基としては、下記に示す式(A-3)-1~(A-3)-18を具体的に挙げることもできる。
【0116】
【0117】
式(A-3)-1~(A-3)-18中、RL43は同一又は異種の炭素数1~8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6~20のフェニル基等のアリール基を示す。RL44、RL46は水素原子、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RL45は炭素数6~20のフェニル基等のアリール基を示す。
【0118】
更に、下記式(A-3)-19、(A-3)-20に示すように、2価以上のアルキレン基、アリーレン基であるRL47を含んで、ポリマーの分子内あるいは分子間が架橋されていてもよい。
【0119】
【0120】
式(A-3)-19、(A-3)-20中、RL43は前述と同様、RL47は炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又はフェニレン基等のアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。E1は1~3の整数である。
【0121】
上述した高屈折率な高分子化合物と低屈折率な高分子化合物は、特にパターン上部が低屈折率で、支持基材側が高屈折率なパターンを形成するためのポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適で、これらのような高分子化合物をベース樹脂とし、これに有機溶剤、酸発生剤、塩基性化合物、界面活性剤等を目的に応じ適宜組み合わせて配合してポジ型レジスト材料を構成することによって、露光部では前記高分子化合物が触媒反応により現像液に対する溶解速度が加速されるので、極めて高感度のポジ型レジスト材料とすることができ、レジスト膜の溶解コントラスト及び解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後に可視光に対して支持基材から離れた側が低屈折率で、支持基材近くになる程高屈折率なモスアイパターンを形成することが出来る。
【0122】
高屈折率な高分子化合物と低屈折率な高分子化合物のブレンド比率は、低屈折率な高分子化合物の重量を分子、高屈折率な高分子化合物の重量を分母とした場合、0.01以上0.5以下の範囲が好ましく用いられる。より好ましくは、0.05以上、0.4以下である。
【0123】
更に、レジスト材料に塩基性化合物を添加することによって、例えばレジスト膜中での酸の拡散速度を抑制し、解像度を一層向上させることができるし、界面活性剤を添加することによってレジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。
【0124】
レジスト材料は、後述の製造方法のパターン形成方法に用いる化学増幅ポジ型レジスト材料を機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート型酸発生剤等がある。
【0125】
酸発生剤の具体例としては、例えば特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載されているものを挙げることが出来る。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0126】
レジスト材料に配合することができる有機溶剤の具体例としては、例えば特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]、塩基性化合物(クエンチャー)としては段落[0146]~[0164]、界面活性剤としては段落[0165]~[0166]、溶解阻止剤としては特開2008-122932号公報の段落[0155]~[0178]に記載されているものを挙げることが出来る。特開2008-239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーを添加することもできる。更に、必要に応じて任意成分としてアセチレンアルコール類を添加することもでき、アセチレンアルコール類の具体例としては特開2008-122932号公報の段落[0179]~[0182]に記載されているものを挙げることが出来る。
【0127】
これらのものは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの形状精度を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0128】
なお、酸発生剤を配合する場合、その配合量はベース樹脂100質量部に対し0.1~50質量部であることが好ましい。塩基性化合物(クエンチャー)を配合する場合、その配合量はベース樹脂100質量部に対し0.01~20質量部、特に0.02~15質量部であることが好ましい。溶解阻止剤を配合する場合、その配合量はベース樹脂100質量部に対し0.5~50質量部、特に1.0~30質量部であることが好ましい。界面活性剤を配合する場合、その配合量はベース樹脂100質量部に対し0.0001~10質量部、特に0.001~5質量部であることが好ましい。
【0129】
有機溶剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し100~10,000質量部、特に200~8,000質量部であることが好ましい。
【0130】
[支持基材]
支持基材は、特に限定されず、モスアイパターンを支持できればよく、下層膜でも、基板でもよい。下層膜は有機膜、無機膜どちらでも構わないし、下層膜を設けずに基板上に直接モスアイパターンを形成しても良いが、下層膜と基板は可視光に高透明であることが好ましい。更には基板と下層膜も高屈折率である方が好ましい。また、支持基材として基板を用いる場合、HMDS(Hexamethyldisilazan)処理した基板を用いることが好ましい。
【0131】
[低屈折率材料]
図2は、モスアイパターン13を低屈折率材料14で覆った本発明の反射防止膜の一例を示す概略断面図である。
図2に示されるように、フォトレジストの露光と現像で形成したモスアイパターン13のパターン間を、低屈折率材料14で埋めた反射防止膜111とすることも出来る。モスアイパターン13が倒れてしまうと反射防止効果が低下してしまうので、触ってもモスアイパターン13が倒れないようにするためにもモスアイパターン13の埋め込みは効果的である。
【0132】
モスアイパターンの埋め込み用の低屈折率材料としては、スピンコート可能な材料が好ましく、特にはフッ素系ポリマーを挙げることが出来る。また、低屈折率材料の屈折率としては、1.45以下であることが好ましい。テフロン(登録商標)系ポリマーの可視光領域での屈折率は1.35である。フルオロアルキル基がペンダントされたメタクリレートでも1.42付近である。例えば、特開2008-257188号公報にはフルオロアルコール基を有する低屈折率で架橋可能な下層膜が示されている。更に低屈折率な材料としては、ポーラスシリカ膜を挙げることが出来る。穴のサイズを大きくしたり割合を増やすことによって屈折率が下がり、屈折率1.25付近にまで下げることが出来る。
【0133】
モスアイパターンの埋め込み用の低屈折率材料は、レジストパターンを溶解させない溶剤に溶解させてモスアイパターン上にスピンコーティングすることが好ましい。レジストパターンを溶解させない溶剤としては、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、フッ素系溶剤を挙げることが出来る。
【0134】
本発明のモスアイ構造が形成された反射防止膜は、液晶、有機EL、マイクロLED等のディスプレイから発する画像を、高輝度、高コントラストで斜発光することが出来る。ディスプレイ側から発せられる光がディスプレイ側に戻る反射を防止するだけでなく、ディスプレイの反対側から斜入射する光の反射を防ぐことも可能である。
【0135】
<眼鏡型ディスプレイ>
また、本発明では、眼鏡型ディスプレイであって、前記眼鏡型ディスプレイの眼球側の基板上に液晶、有機EL、及びマイクロLEDから選択される自己発光型ディスプレイが設置され、該自己発光型ディスプレイの眼球側に焦点を結ぶための凸レンズが設置され、該凸レンズの表面に前記本発明の反射防止膜が形成されている眼鏡型ディスプレイを提供する。
【0136】
図5は、本発明の眼鏡型ディスプレイを装着した場合の一例を示す概略断面図である。眼鏡基板1の眼球側に自己発光型ディスプレイ2を有する。自己発光型ディスプレイ2は、液晶、有機EL、又はマイクロLEDのいずれかである。自己発光型ディスプレイ2の眼球側に、凸レンズ3を有する。凸レンズ3は、自己発光型ディスプレイ2から発せられた光の焦点を目5で結ぶためのものである。凸レンズ3の眼球側に、本発明の反射防止膜101を有する。反射防止膜101は、前述で説明した通りである。また、反射防止膜101の代わりに、反射防止膜111を用いてもよい。
【0137】
このような本発明の眼鏡型ディスプレイであれば、従来のヘッドマウントディスプレイを大幅に軽量かつ薄型にした眼鏡タイプのディスプレイを実現できる。
【0138】
<反射防止膜の製造方法>
また、本発明は、反射防止膜の製造方法であって、
支持基材上に、芳香族基を有する高分子化合物とフッ素を有する高分子化合物を含有するフォトレジスト材料をコートし、ベークによって前記フッ素を有する高分子化合物を膜表面に配向させ、その後露光と現像によって前記支持基材に近い程寸法と屈折率が大きくなるパターンを形成する反射防止膜の製造方法を提供する。
【0139】
このとき用いる支持基材、芳香族基を有する高分子化合物、フッ素を有する高分子化合物としては、前述した本発明の反射防止膜の説明で記載したものを用いることが出来る。
【0140】
本発明の反射防止膜の製造方法は、前記フォトレジスト材料を支持基材上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことが好ましい。
【0141】
この場合、前記高エネルギー線で露光する工程において、波長193nmのArFエキシマレーザー波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長365nmのi線、加速電圧電子ビームを光源として用いることができる。
【0142】
例えば、前述したフォトレジスト材料を、集積回路製造用の基板あるいは該基板上の被加工層(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜、薄膜ガラスやPEN、PET、ポリイミドなどのフレキシブル基板、又は有機EL、液晶、マイクロLEDが形成された素子上等)上に、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により、塗布膜厚が0.1~2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60~150℃、10秒~30分間、好ましくは80~120℃、30秒~20分間プリベークする。これにより、フッ素を有する高分子化合物を表面側に配向させることができる。従って、支持基材側の屈折率が高く、その反対側の屈折率が低いフォトレジスト膜とすることができる。
【0143】
次いで、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、軟X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、EUV等の高エネルギー線から選ばれる光源で、目的とするパターンを所定のマスクを通じて又は直接露光を行う。露光量は、1~200mJ/cm2程度、特に10~100mJ/cm2、又は0.1~100μC/cm2程度、特に0.5~50μC/cm2となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で好ましくは60~150℃、10秒~30分間、より好ましくは80~120℃、30秒~20分間PEBする。
【0144】
更に、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは3秒~3分間、より好ましくは5秒~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。
【0145】
モスアイパターンを形成するための露光に用いるマスクパターンとしては、例えば、特開2010-186064号公報に示されているものを用いることが出来る。すなわち、Y方向とX方向に配列されたラインアンドスペース、格子状のパターン、ドットパターン等を用いることが出来る。照明としては、X方向とY方向のダイポール照明を2回行う方法、クロスポール照明や輪帯照明で1回の露光を行う方法を挙げることが出来る。
【0146】
このような本発明の反射防止膜の製造方法であれば、浅い入射光および放出光においても可視光に対して低反射な反射防止効果を得ることが出来る反射防止膜を容易に製造することが出来る。
【実施例】
【0147】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0148】
モスアイパターンを形成するための高屈折率材料と低屈折率材料として、下記ラジカル重合によって得られた高屈折率レジストポリマー1~8と低屈折率レジストポリマー1~5を用意した。また、支持基材として下層膜を形成するための下層膜レジストポリマー1を用意した。
【0149】
高屈折率レジストポリマー1
重量平均分子量(Mw)=6,800
分子量分布(Mw/Mn)=1.91
【化36】
【0150】
高屈折率レジストポリマー2
重量平均分子量(Mw)=7,100
分子量分布(Mw/Mn)=1.61
【化37】
【0151】
高屈折率レジストポリマー3
重量平均分子量(Mw)=7,900
分子量分布(Mw/Mn)=1.67
【化38】
【0152】
高屈折率レジストポリマー4
重量平均分子量(Mw)=8,800
分子量分布(Mw/Mn)=1.77
【化39】
【0153】
高屈折率レジストポリマー5
重量平均分子量(Mw)=8,800
分子量分布(Mw/Mn)=1.77
【化40】
【0154】
高屈折率レジストポリマー6
重量平均分子量(Mw)=8,800
分子量分布(Mw/Mn)=1.77
【化41】
【0155】
高屈折率レジストポリマー7
重量平均分子量(Mw)=7,600
分子量分布(Mw/Mn)=1.63
【化42】
【0156】
高屈折率レジストポリマー8
重量平均分子量(Mw)=8,800
分子量分布(Mw/Mn)=1.77
【化43】
【0157】
低屈折率レジストポリマー1
重量平均分子量(Mw)=9,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.69
【化44】
【0158】
低屈折率レジストポリマー2
重量平均分子量(Mw)=9,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.69
【化45】
【0159】
低屈折率レジストポリマー3
重量平均分子量(Mw)=5,100
分子量分布(Mw/Mn)=1.59
【化46】
【0160】
低屈折率レジストポリマー4
重量平均分子量(Mw)=5,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.54
【化47】
【0161】
低屈折率レジストポリマー5
重量平均分子量(Mw)=9,600
分子量分布(Mw/Mn)=1.75
【化48】
【0162】
下層膜レジストポリマー1
重量平均分子量(Mw)=8,400
分子量分布(Mw/Mn)=1.98
【化49】
【0163】
光酸発生剤:PAG1、PAG2、PAG3(下記構造式参照)
【化50】
【0164】
塩基性化合物:Quencher1、2(下記構造式参照)
【化51】
【0165】
【0166】
【0167】
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、
CyH(シクロヘキサノン)
【0168】
高屈折率レジストポリマー、低屈折率レジストポリマーを、3M製の界面活性剤FC-4430を100ppm含有する溶剤と表1の組成でブレンドし、シリコンウェハー上にスピンコートし、110℃で60秒間ベークして、250nm膜厚のフォトレジスト膜を形成した。この膜の屈折率を分光エリプソメトリで測定した。結果を表1に記す。
【0169】
【0170】
高屈折率レジストポリマー、低屈折率レジストポリマー、光酸発生剤、塩基性化合物、3M製の界面活性剤FC-4430を100ppm含有する溶剤を表2の組成でブレンドし、シリコンウェハー上にスピンコートし、110℃で60秒間ベークして、250nm膜厚のフォトレジスト膜を形成した。
【0171】
【0172】
下層膜ポリマー、架橋剤、熱酸発生剤、3M製の界面活性剤FC-4430を100ppm含有する溶剤を表3の組成でブレンドし、シリコンウェハー上にスピンコートし、200℃で60秒間ベークして架橋させて、200nm膜厚の下層膜を形成した。この膜の屈折率を分光エリプソメトリで測定した。結果を表3に記す。
【0173】
【0174】
三井デュポンフロロケミカル製テフロン(登録商標)AFポリマー、溶剤を表4の組成でブレンドし、シリコンウェハー上にスピンコートし、100℃で60秒間ベークして架橋させて、250nm膜厚の低屈折率オーバーコート膜を形成した。この膜の屈折率を分光エリプソメトリで測定した。結果を表4に記す。
【0175】
【0176】
合成石英基板上に下層膜溶液を塗布し、上記スピンコート法とベーク条件と同様に200nm膜厚のUDL-1膜を形成した。その上に同じ条件でフォトレジスト用液を塗布し110℃で60秒間ベークして250nm膜厚のフォトレジスト膜を形成した。これをニコン製KrFエキシマレーザースキャナーS-206D(NA0.82、ダイポール照明)、6%ハーフトーン位相シフトマスクを使って、130nmラインアンドスペースのX方向のパターンと、同じ場所にこのX方向のパターンに交差する様に130nmラインアンドスペースのY方向のパターンを露光した。露光後、表5に記載の温度で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像し、前記ラインアンドスペースパターンの直交部分にピラーパターンを形成した。
【0177】
現像したパターンの断面写真を観察し、側壁角度70~80度のテーパー形状のピッチ260nmのピラーパターンが形成されていることを観察した。
【0178】
比較例2と3では、レジスト膜のパターニング露光を行わなかった。
【0179】
実施例12では、パターンを形成した後に、上述と同様の条件で低屈折率オーバーコート膜を形成し、
図2のようにパターン間をTCL-1で埋め込んだ。また、比較例3では、フォトレジスト膜の上に同様の条件でTCL-1膜を形成した。
【0180】
図6に示すように、反射防止膜101が形成されていない合成石英基板の裏側に幅1mmのスリットが付いた遮光膜103を付けてここを点光源とし、白色1200ルーメンの蛍光灯タイプのLED照明104を取り付けてこれを照射し、反射防止膜101上でこれの角度60度における光照度を測定した。同様に比較例1~3についても測定した。結果を表5に示す。
【0181】
【0182】
表5に示されるように、実施例1~13で製造した本発明の反射防止膜は、透過した光の照度が高いものであった。一方、比較例1~3では、本発明の反射防止膜よりも、透過した光の照度が低かった。
【0183】
以上のことから、本発明の反射防止膜であれば、光に対して低反射となる反射防止効果を得ることができることが明らかになった。
【0184】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0185】
1…眼鏡基板、 2…自己発光型ディスプレイ、 3…凸レンズ、 5…目、
101、111…反射防止膜、 11…支持基材、 12…高屈折率材料、
13…モスアイパターン、 14…低屈折率材料、
102…合成石英基板、 103…遮光膜、 104…LED照明。