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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/00 20060101AFI20221125BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20221125BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20221125BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221125BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C08L25/00
C08L77/00
C08L101/12
C08K3/013
C08L71/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019059453
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020158634
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 良佑
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-319385(JP,A)
【文献】特開平08-311196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/00
C08L 77/00
C08L 101/12
C08K 3/013
C08L 71/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(A1)と、
ポリアミド(A2)と
を含む樹脂(A)、
相溶化剤(B)、
ゴム状弾性体(C)、及び
無機フィラー(D)を含み、
前記樹脂(A)は、ポリスチレン系樹脂(A1)とポリアミド(A2)とを質量比[(A1):(A2)]50:50~75:25で含み、並びに
前記相溶化剤(B)が、ポリスチレン系樹脂(A1)と相溶性を有し、ポリアミド(A2)と反応可能な極性基を有する、ポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂(A)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、50.0質量%以上94.5質量%以下含む、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記相溶化剤(B)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、1.0質量%以上10.0質量%以下含む、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ゴム状弾性体(C)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、2.0質量%以上30.0質量%以下含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機フィラー(D)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、0.5質量%以上20.0質量%以下含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記ゴム状弾性体(C)がジカルボン酸変性ゴム状弾性体である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記ゴム状弾性体(C)がフマル酸変性又は無水マレイン酸変性ゴム状弾性体である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機フィラー(D)がシラン系カップリング剤又はチタン系カップリング剤により処理されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
前記無機フィラー(D)がガラスフィラーである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
前記ガラスフィラーが、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ガラスクロス及びガラスビーズからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項11】
酸化防止剤(E)をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤(E)が、銅化合物、ヨウ素化合物、リン系化合物、フェノール系化合物及びイオウ系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項13】
前記酸化防止剤(E)が、銅化合物及びフェノール系化合物を少なくとも含む、請求項12に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(以下、SPSと略記することがある。)が優れた機械的強度、耐熱性、電気特性、吸水寸法安定性及び耐薬品性等を有することは既に知られていて、多くの用途が期待されている。中でも、SPSの優れた耐薬品性、耐熱性、電気特性及び吸水寸法安定性のため、電気・電子機器材料、車載・電装部品、家電製品、各種機械部品、産業用資材等における用途が注目を集めている。当該SPSとポリアミドとを混合して、強度、靭性、耐熱性、耐薬品性、成形加工性等のバランスに優れた樹脂組成物が得られることが知られている。
【0003】
SPSと、ポリアミドと、無機充填材とを含む樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記することがある。)の無水マレイン酸変性物が、無機充填材との接着性や、ポリアミド等の極性樹脂との相溶性の改良を目的として用いられる。例えば、SPS、ポリアミド、相溶化剤及び無機フィラーを含むポリスチレン系樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-248185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるポリスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂とポリアミド樹脂とがほぼ同量含まれており、このような組成では耐熱性の点で劣るという問題点を有する。
加えて、耐熱性や耐薬品性等のSPSが本来有する諸性能を十分発揮させるには成形時に十分結晶化している必要がある。十分に樹脂組成物を結晶化させるには、高温金型での成形が必要であるが、高温金型での成形を行う場合、離型時の変形を抑制するために、例えば無機フィラー量を増やす工夫等が必要となる。かかるフィラー量の増加により、伸びやひずみ等の靭性が低下するという課題もあった。
従って、SPSの有する高い耐熱性と伸びやひずみ等の靭性とを維持したまま、離型剛性に優れるポリスチレン系樹脂組成物を得ることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討の結果、SPSとポリアミドとを特定質量比で含むポリスチレン系樹脂、相溶化剤、ゴム状弾性体及び無機フィラーを有する組成物が上記課題を解決することを見出した。すなわち、本発明は以下に関する。
【0007】
[1]シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(A1)と、ポリアミド(A2)とを含む樹脂(A)、相溶化剤(B)、ゴム状弾性体(C)、及び無機フィラー(D)を含み、前記樹脂(A)は、ポリスチレン系樹脂(A1)とポリアミド(A2)とを質量比[(A1):(A2)]50:50~75:25で含み、並びに前記相溶化剤(B)が、ポリスチレン系樹脂(A1)と相溶性を有し、ポリアミド(A2)と反応可能な極性基を有する、ポリスチレン系樹脂組成物。
[2]前記樹脂(A)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、50.0質量%以上94.5質量%以下含む、上記[1]に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[3]前記相溶化剤(B)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、1.0質量%以上10.0質量%以下含む、上記[1]又は[2]に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[4]前記ゴム状弾性体(C)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、2.0質量%以上30.0質量%以下含む、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[5]前記無機フィラー(D)を、ポリスチレン系樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、0.5質量%以上20.0質量%以下含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[6]前記ゴム状弾性体(C)がジカルボン酸変性ゴム状弾性体である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[7]前記ゴム状弾性体(C)がフマル酸変性又は無水マレイン酸変性ゴム状弾性体である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[8]前記無機フィラー(D)がシラン系カップリング剤又はチタン系カップリング剤により処理されている、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[9]前記無機フィラー(D)がガラスフィラーである、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[10]前記ガラスフィラーが、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ガラスクロス及びガラスビーズからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[9]に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[11]酸化防止剤(E)をさらに含む、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[12]前記酸化防止剤(E)が、銅化合物、ヨウ素化合物、リン系化合物、フェノール系化合物及びイオウ系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[11]に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[13]前記酸化防止剤(E)が、銅化合物及びフェノール系化合物を少なくとも含む、上記[12]に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、SPSの有する高い耐熱性と伸びやひずみ等の靭性とを維持したまま、離型剛性に優れるポリスチレン系樹脂組成物を得ることができる。本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、優れた離型剛性と、高い耐熱性と、優れた機械強度とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましい。
【0010】
本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(A1)と、ポリアミド(A2)とを含む樹脂(A)、相溶化剤(B)、ゴム状弾性体(C)、及び無機フィラー(D)を含み、前記樹脂(A)は、ポリスチレン系樹脂(A1)とポリアミド(A2)とを質量比[(A1):(A2)]50:50~75:25で含み、並びに前記相溶化剤(B)が、ポリスチレン系樹脂(A1)と相溶性を有し、ポリアミド(A2)と反応可能な極性基を有する。以下詳細に説明する。
【0011】
[樹脂(A)]
本発明のポリスチレン系樹脂組成物に含まれる樹脂(A)は、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(A1)と、ポリアミド(A2)とを質量比[(A1):(A2)]50:50~75:25で含む。樹脂(A)中のSPS(A1)の質量比が50未満になると、耐熱性や耐薬品性に劣るため好ましくない。樹脂(A)中のSPS(A1)の質量比が75を超えると、高温での離型剛性に劣り、得られる成形体の靭性等の機械物性に悪影響を与えるため好ましくない。
上記質量比[(A1):(A2)]は、好ましくは55:45~75:25、より好ましくは60:40~70:30である。
【0012】
<シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(A1)>
ポリスチレン系樹脂(A1)は、高度なシンジオタクチック構造を有するSPSである。本明細書において「シンジオタクチック」とは、隣り合うスチレン単位におけるフェニル環が、重合体ブロックの主鎖によって形成される平面に対して交互に配置(以下において、シンジオタクティシティと記載する)されている割合が高いことを意味する。
タクティシティは、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量同定できる。13C-NMR法により、連続する複数の構成単位、例えば連続した2つのモノマーユニットをダイアッド、3つのモノマーユニットをトリアッド、5つのモノマーユニットをペンタッドとしてその存在割合を定量することができる。
【0013】
本発明において、「高度なシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂」とは、ラセミダイアッド(r)で通常75モル%以上、好ましくは85モル%以上、又はラセミペンタッド(rrrr)で通常30モル%以上、好ましくは50モル%以上のシンジオタクティシティを有するポリスチレン、ポリ(炭化水素置換スチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体若しくは混合物、又はこれらを主成分とする共重合体を意味する。
【0014】
ポリ(炭化水素置換スチレン)としては、ポリ(メチルスチレン),ポリ(エチルスチレン),ポリ(イソプロピルスチレン),ポリ(tert-ブチルスチレン),ポリ(フェニルスチレン),ポリ(ビニルナフタレン)及びポリ(ビニルスチレン)等を挙げることができる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)及びポリ(フルオロスチレン)等を、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等を挙げることができる。ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)及びポリ(エトキシスチレン)等を挙げることができる。
上記の構成単位を含む共重合体のコモノマー成分としては、上記スチレン系重合体のモノマーの他、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン及びオクテン等のオレフィンモノマー;ブタジエン、イソプレン等のジエンモノマー;環状オレフィンモノマー、環状ジエンモノマー、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸及びアクリロニトリル等の極性ビニルモノマーが挙げられる。
【0015】
上記ポリスチレン系樹脂のうち特に好ましいものとして、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(m-メチルスチレン)、ポリ(p-tert-ブチルスチレン)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(m-クロロスチレン)、ポリ(p-フルオロスチレン)を挙げることができる。
さらにはスチレンとp-メチルスチレンとの共重合体、スチレンとp-tert-ブチルスチレンとの共重合体、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体等を挙げることができる。
【0016】
SPS(A1)は、成形時の樹脂の流動性及び得られる成形体の強度の観点から、重量平均分子量が1×104以上1×106以下であることが好ましく、50,000以上500,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が1×104以上であれば、十分な強度を有する成形品を得ることができる。一方、重量平均分子量が1×106以下であれば成形時の樹脂の流動性にも問題がない。
本明細書において、重量平均分子量とは、特段の記載がない限り、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8321GPC/HT)、東ソー株式会社製GPCカラム(GMHHR-H(S)HTC/HT)を用い、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて145℃でゲル浸透クロマトグラフィー測定法により測定し、標準ポリスチレンの検置線を用いて換算した値である。単に「分子量」と略すことがある。
【0017】
SPS(A1)は、温度300℃、荷重1.2kgの条件下でMFR測定を行った場合に、2g/10分以上、好ましくは4g/10分以上であることが好ましい。この範囲であれば、成形時の流動性にも問題がない。また、SPS(A1)の上記MFR値が50g/10分以下、好ましくは30g/分以下であれば十分な機械的性質を有する成形品を得ることができる。
【0018】
SPS(A1)は、例えば不活性炭化水素溶媒中又は溶媒の不存在下で、チタン化合物、及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物(アルミノキサン)を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(例えば、特開2009-068022号公報)。
【0019】
<ポリアミド(A2)>
ポリアミドとして公知のポリアミドのすべてを使用することができる。
適切なポリアミドとしては、例えばポリアミド-4、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-3,4、ポリアミド-12、ポリアミド-11、ポリアミド-6,10、ポリアミド-4T、ポリアミド-6T、ポリアミド-9T、ポリアミド-10T、並びにアジピン酸及びm-キシリレンジアミンから得られるポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリアミド-6,6が好適である。
【0020】
芳香族ポリアミド樹脂は、芳香環を主鎖中にもつアミド結合を繰り返し構造単位として含有するポリアミド重合体であり、芳香族ジアミン成分とジカルボン酸成分とを常法によって反応させて得られる重合体、及びジアミン成分と芳香環を有するジカルボン酸成分とを常法によって反応させて得られる重合体の中から適宜選択して用いられる。
【0021】
芳香族ジアミン成分としては、例えば1,4-ジアミノベンゼン;1,3-ジアミノベンゼン;1,2-ジアミノベンゼン;2,4-ジアミノトルエン;2,3-ジアミノトルエン;2,5-ジアミノトルエン;2,6-ジアミノトルエン;オルト,メタ,パラの各キシリレンジアミン;オルト,メタ,パラの各2,2’-ジアミノジエチルベンゼン;4,4’-ジアミノビフェニル;4,4’-ジアミノジフェニルメタン;4,4’-ジアミノジフェニルエーテル;4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル;4,4’-ジアミノジフェニルケトン;4,4’-ジアミノジフェニルスルホンなどのベンゼン環を有するジアミン類を挙げることができる。芳香族ジアミン成分は、上記ベンゼン環を有するジアミン類単独であってもよいし、これを含有する限りにおいて、他のジアミン類、例えば脂肪族ジアミン類との混合物であってもよい。芳香環を有するジアミン類が二種以上混合して用いられてもよい。
【0022】
ジカルボン酸成分としては、例えばグルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸,ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類、これらのジカルボン酸類のエステルや酸塩化物などを挙げることができる。これらジカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、芳香環を有するω-アミノ-ω’-カルボキシ化合物を重合させることによっても芳香族ポリアミド樹脂が得られる。このような芳香環を有するω-アミノ-ω’-カルボキシ化合物としては、例えば4-アミノフェニルカルボキシメタン、1-(4-アミノフェニル)-2-カルボキシエタン、3-(4-アミノフェニル)-1-カルボキシプロパン,p-(3-アミノ-3’-カルボキシ)ジプロピルベンゼンなどを挙げることができる。
【0023】
好ましい芳香族ポリアミド樹脂は、ベンゼン環を有するジアミン類と脂肪族ジカルボン酸類とから誘導されるポリアミドであり、さらに好ましいものとして、キシリレンジアミンとアジピン酸とから誘導されるポリアミドを挙げることができる。
本発明のポリスチレン系樹脂組成物中のポリアミド(A2)として、上記したポリアミド1種のみを単独で含んでいてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0024】
[相溶化剤(B)]
相溶化剤(B)は、SPS(A1)と相溶性を有し、かつポリアミド(A2)と反応可能な極性基を有する化合物である。相溶化剤(B)はSPS(A1)とポリアミド(A2)との相溶性を向上させ、ドメインを微分散化し、各成分間の界面強度を向上させることを目的として配合される。
【0025】
SPS(A1)との相溶性を有する化合物とは、SPSとの相溶性を有する連鎖をポリマー鎖中に含有する化合物を指す。例えば、シンジオタクチックポリスチレン,アタクチックポリスチレン,アイソタクチックポリスチレン,スチレン系重合体,ポリフェニレンエーテル,ポリビニルメチルエーテル等を主鎖,ブロック鎖又はグラフト鎖として有する重合体が挙げられる。
ポリアミド(A2)と反応可能な極性基とは、ポリアミドが有する極性基と反応しうる官能基を指す。具体的な例としては、酸無水物基,カルボン酸基,カルボン酸エステル基,カルボン酸ハライド基,カルボン酸アミド基,カルボン酸塩基,スルホン酸基,スルホン酸エステル基,スルホン酸塩化物基,スルホン酸アミド基,スルホン酸塩基,エポキシ基,アミノ基,イミド基,オキサゾリン基などが挙げられる。
【0026】
相溶化剤(B)の具体例としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA),スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体,末端カルボン酸変性ポリスチレン,末端エポキシ変性ポリスチレン,末端オキサゾリン変性ポリスチレン,末端アミン変性ポリスチレン,スルホン化ポリスチレン,スチレン系アイオノマー,スチレン-メチルメタクリレート-グラフトポリマー,(スチレン-グリシジルメタクリレート)-メチルメタクリレート-グラフト共重合体,酸変性アクリル-スチレン-グラフトポリマー,(スチレン-グリシジルメタクリレート)-スチレン-グラフトポリマー,ポリブチレンテレフタレート-ポリスチレン-グラフトポリマー,無水マレイン酸変性SPS,フマル酸変性SPS,グリシジルメタクリレート変性SPS,アミン変性SPS等の変性スチレン系ポリマー、(スチレン-無水マレイン酸)-ポリフェニレンエーテル-グラフトポリマー,無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル,フマル酸変性ポリフェニレンエーテル,グリシジルメタクリレート変性ポリフェニレンエーテル,アミン変性ポリフェニレンエーテル等の変性ポリフェニレンエーテル系ポリマー等が挙げられる。中でも変性ポリフェニレンエーテル、変性SPSが好適であり、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル、フマル酸変性ポリフェニレンエーテルがより好適である。
【0027】
上記変性ポリフェニレンエーテルは、変性剤を用いて公知のポリフェニレンエーテルを変性することにより得ることができるが、本発明の目的に使用可能であれば、この方法に限定されない。該ポリフェニレンエーテルは、公知の化合物であり、この目的のため、米国特許第3,306,874号,同3,306,875号,同3,257,357号及び同3,257,358号の各明細書を参照することができる。ポリフェニレンエーテルは、通常、銅アミン錯体触媒の存在下で、二置換または三置換フェノールを用いた酸化カップリング反応によって調製される。銅アミン錯体は、第一,第二及び第三アミンから誘導される銅アミン錯体を使用できる。
【0028】
ポリフェニレンエーテルの例としては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕,ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)及びポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)などが挙げられる。
【0029】
例えば上記ポリフェニレンエーテルの調製に使用されるフェノール系化合物の2種以上から誘導される共重合体等も用いることができる。さらに、ポリスチレンなどのビニル芳香族化合物と上記ポリフェニレンエーテルとのグラフト共重合体及びブロック共重合体も挙げられる。特に好ましくはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が用いられる。
【0030】
ポリフェニレンエーテルの変性に用いられる変性剤としては、同一分子内にエチレン性二重結合と極性基とを有する化合物が挙げられ、具体的には例えば無水マレイン酸,マレイン酸,フマル酸,マレイン酸エステル,フマル酸エステル,マレイミド及びそのN置換体、マレイン酸塩,フマル酸塩,アクリル酸,アクリル酸エステル,アクリル酸アミド,アクリル酸塩,メタクリル酸,メタクリル酸エステル,メタクリル酸アミド,メタクリル酸塩,グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらのうち特に無水マレイン酸、フマル酸及びグリシジルメタクリレートが好ましく用いられる。上記各種の変性剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
変性ポリフェニレンエーテルは、例えば溶媒や他樹脂の存在下、上記ポリフェニレンエーテルと変性剤とを反応させることにより得られる。変性の方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ロールミル,バンバリーミキサー,押出機などを用いて150~350℃の範囲の温度において溶融混練して反応させる方法、ベンゼン,トルエン,キシレンなどの溶媒中で加熱反応させる方法などを挙げることができる。さらに、反応を容易にするために、反応系にベンゾイルパーオキサイド;ジ-tert-ブチルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド;tert-ブチルパーオキシベンゾエート;アゾビスイソブチロニトリル;アゾビスイソバレロニトリル;2,3-ジフェニル-2,3-ジメチルブタン等のラジカル発生剤を存在させることも有効である。ラジカル発生剤の存在下に溶融混練する方法が特に好ましい。
【0032】
相溶化剤(B)として、極性基を有する変性SPSを用いることもできる。この変性SPSは、例えば変性剤を用いて上記したSPSを変性することにより得ることができるが、本発明の目的に使用可能であれば、この方法に限定されない。変性に用いるSPSについては特に制限はないが、特にスチレンと置換スチレンとの共重合体が他の成分との相溶性の点で好ましく用いられる。この共重合体の組成比については特に制限はないが、置換スチレン単位の含有量が3~50モル%の範囲にあるのが好ましい。この含有量が3モル%以上であれば変性が容易であり、50モル%以下であれば他の成分との相溶性を保つことができる。
【0033】
特に好ましい置換スチレンとしては、例えばメチルスチレン,エチルスチレン,イソプロピルスチレン,tert-ブチルスチレン,ビニルスチレンなどのアルキルスチレン,クロロスチレン,ブロモスチレン,フルオロスチレンなどのハロゲン化スチレン、クロロメチルスチレンなどのハロゲン化アルキルスチレン、メトキシスチレン,エトキシスチレンなどのアルコキシスチレンなどが挙げられる。これらの置換スチレンは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。SPSに対し、5質量%以下の使用量であれば、組成物の耐熱性を維持できるため、アタクチック構造をもつ上記重合体も使用可能である。
【0034】
上記SPSの変性に用いる変性剤としては、同一分子内にエチレン性二重結合と極性基とを有する化合物が使用できる。このような変性剤としては、例えば無水マレイン酸,マレイン酸,フマル酸,マレイン酸エステル,フマル酸エステル,マレイミド及びそのN置換体,マレイン酸塩,フマル酸塩,アクリル酸,アクリル酸エステル,アクリル酸アミド,アクリル酸塩,メタクリル酸,メタクリル酸エステル,メタクリル酸アミド,メタクリル酸塩,グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらの中で特に無水マレイン酸、フマル酸又はグリシジルメタクリレートが好ましく用いられる。これらの変性剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
変性SPSは,例えば溶媒や他の樹脂の存在下、上記SPSと変性剤とを反応させることにより得られる。変性の方法については特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ロールミル,バンバリーミキサー,押出機などを用いて150~350℃の範囲の温度において溶融混練し、反応させる方法、またはベンゼン,トルエン,キシレンなどの溶媒中で加熱反応させる方法などを用いることができる。これらの反応を容易にするために、反応系にベンゾイルパーオキサイド,ジ-tert-ブチルパーオキサイド,ジクミルパーオキサイド,tert-ブチルパーオキシベンゾエート,アゾビスイソブチロニトリル,アゾビスイソバレロニトリル,2,3-ジフェニル-2,3-ジメチルブタンなどのラジカル発生剤を存在させることは有効である。ラジカル発生剤の存在下で溶融混練する方法が特に好ましい。これらの変性SPSの中で、無水マレイン酸変性SPS,フマル酸変性SPS,及びグリシジルメタクリレート変性SPSが好ましく用いられる。
【0036】
[ゴム状弾性体(C)]
ゴム状弾性体(C)としては特に限定されず、公知のものを使用することができる。
ゴム状弾性体としては、例えば、天然ゴム,ポリブタジエン,ポリイソプレン,ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR),水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB),スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR),水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP),スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS),スチレン-ブタジエンランダム共重合体,水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体,スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体,スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR),エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、あるいはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(ABS),メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS),メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS),オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS),アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレンコアシェルゴム(AABS),ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、又は変性されたこれらのゴム状弾性体などが挙げられる。
これらの中で、特に、SBR、SBS、SEB、SEBS、SIR,SEP、SIS、SEPS、コアシェルゴム又は変性されたこれらのゴム状弾性体等が好ましく用いられる。
【0037】
変性されたゴム状弾性体としては、例えば、スチレン-ブチルアクリレート共重合体ゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR),エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などを、極性基を有する変性剤、例えばジカルボン酸変性剤によって変性されたジカルボン酸変性ゴム状弾性体を挙げることができる。かかるジカルボン酸変性ゴム状弾性体としては、例えばフマル酸又は無水マレイン酸等によって変性を行ったフマル酸変性又はマレイン酸変性ゴム状弾性体等が挙げられる。
これらの中で、特にSEB,SEBS,SEP,SEPS,EPR,EPDMを変性したゴムが好ましく用いられる。変性されたゴム状弾性体を用いることにより、より優れた機械強度を有するポリスチレン系樹脂組成物が得られ、具体的にはジカルボン酸変性ゴム状弾性体を用いることが好ましい。より具体的には、マレイン酸変性SEBS,フマル酸変性SEBS,マレイン酸変性SEPS,マレイン酸変性EPR,マレイン酸変性EPDM,エポキシ変性SEBS,エポキシ変性SEPSなどが挙げられる。中でも特にマレイン酸変性SEBSを用いることが好ましい。本発明のスチレン系樹脂組成物は、これらのゴム状弾性体の1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上の組み合わせを含んでいてもよい。
【0038】
[無機フィラー(D)]
無機フィラーとしては、繊維状,粒状,粉状等公知の形状のものを用いることができる。繊維状フィラーとしては、ガラス繊維,炭素繊維,ウィスカー,セラミック繊維,金属繊維等が挙げられる。具体的に、ウィスカーとしてはホウ素,アルミナ,シリカ,炭化ケイ素等、セラミック繊維としてはセッコウ,チタン酸カリウム,硫酸マグネシウム,酸化マグネシウム等、金属繊維としては銅,アルミニウム,鋼等がある。フィラーの形状としてはクロス状,マット状,集束切断状,短繊維,フィラメント状のもの,ウィスカーがある。集束切断状の場合、長さが0.05~50mmであり,繊維径が5~20μmであるものが好ましい。クロス状,マット状の場合、長さが1mm以上、好ましくは5mm以上であるものが好ましい。
【0039】
粒状または粉状フィラーとしては、例えばタルク,カーボンブラック,グラファイト,二酸化チタン,シリカ,マイカ,炭酸カルシウム,硫酸カルシウム,炭酸バリウム,炭酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,硫酸バリウム,オキシサルフェート,酸化スズ,アルミナ,カオリン,炭化ケイ素,金属粉末,ガラスパウダー,ガラスフレーク,ガラスビーズ等が挙げられる。
【0040】
これら無機フィラーの中では特にガラスフィラーが好ましく、例えばガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ガラスクロス及びガラスビーズからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、優れた機械強度が得られるため、ガラス繊維が特により好ましい。
無機フィラー(D)は、SPS(B)との接着性を高めるために、カップリング剤で表面処理を施されていることが好ましい。
【0041】
無機フィラーの表面処理に用いられるカップリング剤としては、例えばシラン系カップリング剤又はチタン系カップリング剤等を挙げることができる。中でもシラン系カップリング剤で表面処理を施すことが、樹脂成分との相溶性の観点から特に好ましい。シラン系カップリング剤の具体例としては、トリエトキシシラン,ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン,γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン,γ-アミノプロピルトリエトキシシラン,N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン,γ-クロロプロピルトリメトキシシラン,γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,γ-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ)シラン,N-メチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン,3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン,3-4,5-ジヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン,ヘキサメチルジシラザン,N,N-ビス(トリメチルシリル)ウレア,3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン等が挙げられる。これらの中でも、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン,エポキシシランが好ましい。
【0042】
チタン系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート,イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート,イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート,テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,テトラ(1,1-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,イソプロピルトリオクタノイルチタネート,イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート,イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート,イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート,イソプロピルトリクミルフェニルチタネート,イソプロピルトリ(N-アミドエチル,アミノエチル)チタネート,ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート,ジイソステアロイルエチレンチタネートなどが挙げられる。これらの中でも、イソプロピルトリ(N-アミドエチル,アミノエチル)チタネートが好ましい。
【0043】
上記カップリング剤を用いた無機フィラーの表面処理は、通常の公知の方法で行うことができ、特に制限はない。例えば、上記カップリング剤の有機溶媒溶液若しくは懸濁液をサイジング剤として充填剤に塗布するサイジング処理、ヘンシェルミキサー,スーパーミキサー,レーディゲミキサー,V型ブレンダ-などを用いての乾式混合処理、スプレー法,インテグラルブレンド法,ドライコンセントレート法による処理等、無機フィラーの形状に適切な方法で行うことができる。中でも、サイジング処理,乾式混合処理,スプレー法により表面処理を行うことが好ましい。
上記のカップリング剤とともに、例えばガラス用フィルム形成性物質を併用することができる。このフィルム形成性物質には、特に制限はなく、例えばポリエステル系,ウレタン系,エポキシ系,アクリル系,酢酸ビニル系,ポリエーテル系等の重合体が挙げられる。
【0044】
本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、50.0質量%以上94.5質量%以下含むことが好ましい。樹脂組成物の合計100質量%中の樹脂(A)量が上記範囲にあれば、離型剛性、耐熱性及び靭性等の機械強度に優れる樹脂組成物を得ることができる。本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、より好ましくは60.0質量%以上、さらに好ましくは65.0質量%以上、よりさらに好ましくは70.0質量%以上含み、好ましくは90.0質量%以下、さらに好ましくは90.0質量%未満、よりさらに好ましくは86.0質量%未満含む。
【0045】
本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、相溶化剤(B)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、1.0質量%以上10.0質量%以下含むことが好ましい。相溶化剤(B)の量が1.0質量%以上であれば、優れた機械強度を得ることができ、かつ生産性にも優れる。相溶化剤(B)の量が10.0質量%以下であれば、耐薬品性を良好に保つことができる。本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、相溶化剤(B)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上含み、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%未満含む。
【0046】
本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、ゴム状弾性体(C)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、2.0質量%以上30.0質量%以下含むことが好ましい。ゴム状弾性体(C)の量が2.0質量%以上であれば、優れた機械強度を有するポリスチレン系樹脂組成物を得ることができる。ゴム状弾性体(C)の量が30.0質量%以下であれば、樹脂組成物の耐熱性や耐薬品性に悪影響を与えない。本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、ゴム状弾性体(C)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、より好ましくは3.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上、よりさらに好ましくは10.0質量%以上含み、より好ましくは25.0質量%以下、よりさらに好ましくは20.0質量%以下含む。
【0047】
本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、無機フィラー(D)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、0.5質量%以上20.0質量%以下含むことが好ましい。無機フィラー(D)の量が0.5質量%以上であれば、十分な離型剛性を得ることができる。無機フィラー(D)の量が20.0質量%以下であれば、ポリスチレン系樹脂組成物の機械物性に悪影響を与えない。本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、無機フィラー(D)を、樹脂組成物の合計100質量%に基づいて、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上、さらにより好ましくは4.5質量%以上、さらにより好ましくは5.0質量%以上含み、より好ましくは15.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、さらにより好ましくは7.5質量%以下、さらにより好ましくは6.0質量%以下含む。無機フィラーをマスターバッチ化することなく、サイドフィードホッパーから添加する場合には、1.0質量%以上とすることがより好ましい。
【0048】
[その他成分]
本発明のポリスチレン系樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で一般に使用される熱可塑性樹脂,酸化防止剤,架橋剤,架橋助剤,核剤,可塑剤,離型剤,着色剤及び/または帯電防止剤等のその他成分を添加することができる。これらは樹脂組成物に添加してもよく、または予め樹脂(A)に添加していてもよい。上記その他成分をいくつか例示するが、中でも酸化防止剤(E)を含むことが好ましい。
【0049】
<酸化防止剤(E)>
酸化防止剤(E)は特に限定されず、銅化合物、ヨウ素化合物、リン系化合物、フェノール系化合物及びイオウ系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0050】
銅化合物としては、例えば塩化銅,臭化銅及びヨウ化銅等の無機ハロゲン化銅、硫酸銅,硝酸銅及びリン酸銅等の無機酸の銅塩、酢酸,サリチル酸銅,ステアリン酸銅,オレイン酸銅,安息香酸銅,ギ酸銅,プロピオン酸銅,シュウ酸銅,セバシン酸銅,乳酸銅,モンタン酸銅,アジピン酸銅,イソフタル酸銅,ピロリン酸銅及びアンモニア銅等の有機酸の銅塩、あるいは無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン,ベンズイミダゾール,2-メルカプトベンズイミダゾールなどの錯体化合物などが挙げられる。これらの中でも、塩化銅,臭化銅,ヨウ化銅及び硝酸銅が特に好ましく用いられる。上記銅化合物は一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ヨウ素化合物としては、ヨウ化カリウム,ヨウ化マグネシウム及びヨウ化アンモニウムなどがあり、ヨウ素単体であってもよい。上記ヨウ素化合物は一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤として上記銅化合物とヨウ素化合物との双方を含む態様を挙げることができ、例えばヨウ化銅とヨウ化カリウムとを含む酸化防止剤を用いることができる。
【0051】
リン系化合物としては、特にトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト,トリス(モノおよびジ-ノニルフェニル)ホスファイト等のモノホスファイトやジホスファイト等のリン系化合物を挙げることができる。ジホスファイトとしては、以下の一般式(I)で表されるリン系化合物を用いることができる。
【化1】

(式中、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基,炭素数3~20のシクロアルキル基あるいは炭素数6~20のアリール基を示す。)
【0052】
上記一般式(I)で表されるリン系化合物の具体例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト;ジオクチルペンタエリスリトールジホスファイト;ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては既知のものを使用することができ、その具体例としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジフェニル-4-メトキシフェノール;2,2'-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール);2,2'-メチレンビス〔4-メチル-6-(α-メチルシクロヘキシル)フェノール〕;1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン;2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);1,1,3-トリス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン;2,2-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-n-ドデシルメルカプトブタン;エチレングリコール-ビス〔3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチレート〕;1,1-ビス(3,5-ジメチル-2-ヒドロキシフェニル)-3-(n-ドデシルチオ)-ブタン;4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール);1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン;2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロン酸ジオクタデシルエステル;n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート;ペンタエリスリトールテトラキス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}などが挙げられる。
【0053】
その他にも、アミン系酸化防止剤,硫黄系酸化防止剤などを単独で、あるいは混合して用いることができる。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、上記酸化防止剤の1種を単独で、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。中でも、耐熱性の観点から、酸化防止剤として、銅化合物及びフェノール系化合物を少なくとも含むことが好ましい。酸化防止剤の量は、組成物の合計100質量%に基づいて、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.3質量%以下である。酸化防止剤の量が0.1質量%以上であれば長期耐熱性を得ることができる。酸化防止剤の量が2.0質量%以下であれば、酸化防止剤のブリードを抑制することができ、外観に悪影響を与えない。ここで、酸化防止剤を複数種用いる場合には、その合計量が上記範囲に入るものとする。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アタクチック構造のポリスチレン,アイソタクチック構造のポリスチレン,AS樹脂,ABS樹脂などのスチレン系重合体をはじめ、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル,ポリカーボネート,ポリフェニレンオキサイド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホンなどのポリエーテル,ポリアミド,ポリフェニレンスルフィド(PPS),ポリオキシメチレンなどの縮合系重合体、ポリアクリル酸,ポリアクリル酸エステル,ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系重合体、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリ4-メチルペンテン-1,エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン、あるいはポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリフッ化ビニリデンなどの含ハロゲンビニル化合物重合体など、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
核剤としては、アルミニウムジ(p-tert-ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等公知のものから任意に選択して用いることができる。具体的な商品名としては、株式会社ADEKA製のアデカスタブNA-10、アデカスタブNA-11、アデカスタブNA-21、アデカスタブNA-30、アデカスタブNA-70、大日本インキ化学工業株式会社製のPTBBA-AL等が挙げられる。なお、これらの核剤は一種のみを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。核剤の配合量は特に限定されないが、SPS樹脂100質量部に対して好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.04~2質量部である。
【0056】
離型剤としては、ポリエチレンワックス,シリコーンオイル,長鎖カルボン酸,長鎖カルボン酸金属塩等公知のものから任意に選択して用いることができる。これらの離型剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。離型剤の配合量は特に限定されないが、SPS樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.2~1質量部である。
【0057】
<成形体>
本発明のポリスチレン系樹脂組成物は、SPSを始めとする成分(A)~(D)と、必要に応じて上記その他成分とを配合・混練して組成物を得る。配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサーなどで予備混合して、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
上記の溶融混練した本発明のポリスチレン系樹脂組成物、または得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等により各種成形体を製造することができる。特に、溶融混練により得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形体の製造に好適に用いることができる。
【実施例
【0058】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0059】
<I>ペレットの作成
表に記載する割合(質量%)で各成分を配合し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。続いて、37mmのシリンダ径を有する二軸スクリュー混練機(東芝機械社製:TEM35B)を用いて、スクリュー回転数200rpm、バレル温度330℃で、ガラス繊維(D)をサイドフィードしながら樹脂組成物を混練し、ペレットを作製した。得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間乾燥した。
【0060】
上述した通り乾燥後に得られたペレット(樹脂組成物)について評価した。実施例及び比較例における物性評価は以下の通り行った。
(1)離型剛性
上記<I>で得られたペレットを用い、射出成形機[住友重機械工業社製 SH100A]を用い、成形条件として、シリンダ温度290℃、金型温度150℃、成形サイクル38秒(冷却時間18秒)を用い、JIS K 7139:2015に準拠し、ダンベル型引張試験片(タイプA)を成形した。成形した際のダンベル型試験片の変形有無を目視で確認し、以下の通り評価した。
A:変形なし
B:わずかに変形あり
C:変形があり、続く物性試験に影響あり。
【0061】
(2)耐熱性
上記(1)と同じ成形条件を用いて、JIS K 7139:2015に準拠し、ダンベル型引張試験片(タイプA)を得た。この試験片を、ISO 527-1:2012(第2版)に準拠して、引張試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG5000B)にて、初期チャック間距離100mm、引張速度5mm/分の室温条件で、引張試験を行って引張破断強度(MPa)をまず測定した。
上記ダンベル型引張試験片を、150℃にて、1000時間オーブンに入れて暴露処理を行った。試験片をオーブンから取り出し、引張試験に供して、暴露処理前後での引張強度保持率を求めた。引張試験は上述した通り、ISO 527-1:2012(第2版)に準拠して行った。
【0062】
(3)曲げ試験
上記(1)と同じ成形条件を用いて、ダンベル型試験片(タイプA)を成形した。該ダンベル型試験片から、80mm×10mm×厚み4mmの試験片を切り出し、ISO 178:2010に準拠して曲げ破壊ひずみを測定した。以下の通り評価した。
A:曲げ破壊ひずみ(%)が4.0%以上
B:曲げ破壊ひずみ(%)が3.0%以上4.0%未満
C:曲げ破壊ひずみ(%)が3.0%未満
評価B以上であれば、靭性に優れる。
【0063】
実施例1~10,比較例1~6
表に示す割合(質量%)で各成分を配合し、上記成形条件に従って各種評価を行った。用いた成分は以下の通りである。
SPS(A1):[ザレック90ZC,出光興産(株)製,重量平均分子量200,000、MFR9.0g/10分(温度300℃、荷重1.2kg)]
ポリアミド(A2):ナイロン6,6[Ascend Performance Materials 社製,Vydyne(登録商標)50BWFS]
相溶化剤(B):フマル酸変性ポリフェニレンエーテル[出光興産(株)製,CX-1]
ゴム状弾性体(C1):スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン含有量33質量%,クラレ(株)製,商品名セプトン8006,MFR:0.0g/10分(No Flow)(温度230℃、荷重2.16kg),表中では「Sep. 8006」と略記。
ゴム状弾性体(C2):マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体:(旭化成(株)製,タフテック M1913,スチレン/エチレンブチレン質量比=30/70,MFR(温度230℃、荷重2.16kg)=5g/10分、酸価=10mgCH3ONa/g),表中では「M1913」と略記。
無機フィラー(D1):ECS03T-249H[日本電気硝子(株)製,Eガラス,繊維状(チョップドストランド長さ3mm),繊維断面略真円形状(φ10.5μm),シランカップリング剤処理],表中では「T-249H」と略記。
無機フィラー(D2):ECS03T-595[日本電気硝子(株)製,Eガラス,繊維状(チョップドストランド長さ3mm),繊維断面略真円形状(φ13.0μm),シランカップリング剤処理],表中では「T-595」と略記。
酸化防止剤(1):ペンタエリスリトールテトラキス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}:[BASFジャパン(株)製,Irganox 1010],表中では「Irg 1010」と略記。
酸化防止剤(2):ヨウ化銅/ヨウ化カリウム化合物:[PolyAd社製,AL-120FF]
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
実施例1~10の結果から、本発明の構成を有するポリスチレン系樹脂組成物は、離型剛性に優れ、かつ高い耐熱性及び高い靭性を有することがわかる。比較例1から、樹脂(A)中の(A1):(A2)比が本発明の範囲外(SPS(A1)比が高い)となると機械強度に劣ることがわかる。比較例2は無機フィラーを含まない組成物であり、離型剛性に劣る。比較例3~6からは、樹脂(A)中の(A1):(A2)比が本発明の範囲外となる(SPS(A1)量が低い)と、耐熱性に劣ることが分かる。