(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】金属張積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20221125BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20221125BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B32B15/08 K
B32B37/02
B29C63/02
(21)【出願番号】P 2022509950
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2021010348
(87)【国際公開番号】W WO2021193195
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020053323
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 稔
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/093427(WO,A1)
【文献】特開2014-128913(JP,A)
【文献】特開2004-358677(JP,A)
【文献】特開2019-135301(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154811(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/020818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C63/00-63/48
65/00-65/82
C08J 7/04- 7/06
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属張積層体を製造する方法であって、
積層体材料を連続的に熱圧着する工程であって、前記積層体材料が、互いに接する少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)と、前記一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)の外面に接してそれぞれ配設される少なくとも一対の金属箔(M,M)とで少なくとも構成され、
前記積層体材料中で前記少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)が互いに接した状態で積層体材料を熱圧着する、熱圧着工程と、
前記熱圧着工程後に互いに接する前記少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離する、熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程と、
を少なくとも備え、
分離される前記一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)は、少なくとも一方が、平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さい熱可塑性液晶ポリマーフィルムである、金属張積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属張積層体の製造方法であって、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの前記平面方向の結晶配向度fpが0.4~0.7の範囲内である、金属張積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属張積層体の製造方法であって、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの前記厚さ方向の結晶配向度fvが0.7~0.9の範囲内である、金属張積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の金属張積層体の製造方法であって、熱圧着工程が、連続等方圧プレスまたは一対の加圧ロール(r
1,r
2)による熱ロールプレスで行われる、金属張積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属張積層体の製造方法であって、
熱圧着工程において、前記積層体材料中で少なくとも一対の内層金属箔(M,M)が互いに接した状態で積層体材料の熱圧着を行い、
前記熱圧着工程後に互いに接する前記少なくとも一対の内層金属箔(M,M)間を分離する、金属箔分離工程を備える、
金属張積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の金属張積層体の製造方法であって、前記積層体材料が最外層金属箔(M
1,M
2)を有する、金属張積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の金属張積層体の製造方法であって、
積層体材料が、以下の(i)~(vi)のいずれかの順の配置である、金属張積層体の製造方法。
(i)M
1/F/F/M
2
(ii)M
1/F/F/M/M/F/M
2
(iii)M
1/F/M/M/F/F/M/M/F/M
2
(iv)M
1/F/F/M/M/F/F/M
2
(v)M
1/F/F/M/M/F/F/M/M/F/M
2
(vi)M
1/F/M/M/F/F/M/M/F/F/M/M/F/M
2
(ここで、M
1,M
2:最外層金属箔、F:熱可塑性液晶ポリマーフィルム、M:金属箔を示す)
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法であって、熱圧着の際に、一対の保護材(C
1,C
2)を介して前記積層体材料が熱圧着される、金属張積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、保護材(C
1)および/または保護材(C
2)が、耐熱性樹脂フィルム、耐熱性複合フィルム、および耐熱性不織布からなる群より選ばれた保護材である、金属張積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法であって、熱圧着温度が、積層体材料中の熱可塑性液晶ポリマーフィルムのうち最も低い融点を有する熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(Tm
L)に対して、(Tm
L-120)℃~(Tm
L)℃の範囲である、金属張積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法であって、熱圧着後の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)と熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)との剥離強度が0.3kN/m以下である、金属張積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法であって、積層体材料中で互いに接する熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点の差が、0~70℃の範囲である、金属張積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、日本国で2020年3月24日に出願した特願2020-053323の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本出願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、光学的に異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称することがある)からなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称することがある)の少なくとも一方の面に金属箔を積層させた金属張積層体(または熱可塑性液晶ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に金属層を備える金属張積層体)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、高耐熱性、低吸湿性、高周波特性等に優れた材料として知られており、近年は高速伝送用電子回路材料として注目されている。電子回路基板用途に用いる場合、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと銅箔に代表される金属箔との積層体が用いられるが、このような熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔とからなる積層体を製造する技術としては、熱プレス装置を使用して、その上下の熱板の間に所定の大きさに裁断された熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔を重ねて置き、真空状態で加熱圧着する方法が挙げられる。しかしながら、この方式はバッチ式であるため、生産効率が悪いという問題がある。
【0004】
これに対し、ロールトゥロール方式で、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔とを重ね合わせて連続的に熱圧着させる方法は、生産効率の点で有利である。特に、ロールトゥロール方式で製造するに当たり、工業的に生産性良く金属張積層体を製造する方法として、特許文献1(特許第5661051号公報)には、ロールトゥロール方式で、表裏両面がいずれも表面粗さ(Rz)2.0μm以下である離間フィルム(C)を用いて、一対の加圧ロール(r1、r2)間で(r1)/(B)/(A)/(C)/(A)/(B)/(r2)の順となるように、絶縁性フィルム(A)、金属箔(B)、及び離間フィルム(C)を重ねて熱圧着し、離間フィルム(C)から剥離して2つの片面金属張積層体を得る片面金属張積層体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、離間フィルムを中心として、2つの金属張積層体が上下対称に互いに離間フィルムに当接するように配置されてロールトゥロール方式で熱圧着を行うことを特徴としており、離間フィルムは、加圧ロールに導入されると同時に直接絶縁性フィルムと接触する。
【0007】
しかしながら、絶縁性フィルムとして熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いる場合、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは熱可塑性樹脂であるため、加圧ロール間に導入される直前に熱により熱可塑性液晶ポリマーフィルムが軟化し、わずかに弛みが生じてしまうため、熱膨張係数や弾性率が異なる離間フィルムとの部分的な接触によりその部分にしわ等の外観不良が発生する。
【0008】
また、特許文献1では、離間フィルムを使わなかった場合には、液晶ポリマーフィルム同士の熱融着により外観不良が生じると記載しているように、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士を接触させた状態で加圧ロールに導入する場合にはそれらが接着してしまうという問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、しわ等の外観不良の発生を抑制し、効率よく金属張積層体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、複数の金属張積層体を製造するにあたり、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士が互いに接した状態に配置された積層体材料を連続的に熱圧着する場合であっても、少なくとも一方の熱可塑性液晶ポリマーフィルムに平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さい熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いると、熱圧着の際に離間フィルムを用いずに、互いに熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士が接していても、驚くべきことに、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士の接着性を抑制することができ、容易に分離することができること、さらに、得られた金属張積層体ではしわ等の外観不良の発生を抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様で構成されうる。
〔態様1〕
複数の金属張積層体を製造する方法であって、
積層体材料を連続的に熱圧着する工程であって、前記積層体材料が、互いに接する少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)と、前記一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)の外面に接してそれぞれ配設される少なくとも一対の金属箔(M,M)とで少なくとも構成され、
前記積層体材料中で前記少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)が互いに接した状態で積層体材料を熱圧着する、熱圧着工程と、
前記熱圧着工程後に互いに接する前記少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離する、熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程と、
を少なくとも備え、
分離される前記一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)は、少なくとも一方が、平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さい熱可塑性液晶ポリマーフィルムである、金属張積層体の製造方法。
〔態様2〕
態様1に記載の金属張積層体の製造方法であって、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの前記平面方向の結晶配向度fpが0.4~0.7(好ましくは0.5~0.6)の範囲内である、金属張積層体の製造方法。
〔態様3〕
態様1または2に記載の金属張積層体の製造方法であって、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの前記厚さ方向の結晶配向度fvが0.7~0.9(好ましくは0.7~0.8)の範囲内である、金属張積層体の製造方法。
〔態様4〕
態様1~3のいずれか一態様に記載の金属張積層体の製造方法であって、熱圧着工程が、連続等方圧プレスまたは一対の加圧ロール(r1,r2)による熱ロールプレスで行われる、金属張積層体の製造方法。
〔態様5〕
態様1~4のいずれか一態様に記載の金属張積層体の製造方法であって、
熱圧着工程において、前記積層体材料中で少なくとも一対の金属箔(M,M)が互いに接した状態で積層体材料の熱圧着を行い、
前記熱圧着工程後に互いに接する前記少なくとも一対の金属箔(M,M)間を分離する、金属箔分離工程を備える、
金属張積層体の製造方法。
〔態様6〕
態様1~5のいずれか一態様に記載の金属張積層体の製造方法であって、前記積層体材料が最外層金属箔(M1,M2)を有する、金属張積層体の製造方法。
〔態様7〕
態様6に記載の金属張積層体の製造方法であって、
積層体材料が、以下の(i)~(vi)のいずれかの順の配置である、金属張積層体の製造方法。
(i)M1/F/F/M2
(ii)M1/F/F/M/M/F/M2
(iii)M1/F/M/M/F/F/M/M/F/M2
(iv)M1/F/F/M/M/F/F/M2
(v)M1/F/F/M/M/F/F/M/M/F/M2
(vi)M1/F/M/M/F/F/M/M/F/F/M/M/F/M2
(ここで、M1,M2:最外層金属箔、F:熱可塑性液晶ポリマーフィルム、M:金属箔を示す)
〔態様8〕
態様1~7のいずれか一態様に記載の製造方法であって、熱圧着の際に、一対の保護材(C1,C2)を介して前記積層体材料が熱圧着される、金属張積層体の製造方法。
〔態様9〕
態様8に記載の製造方法であって、保護材(C1)および/または保護材(C2)が、耐熱性樹脂フィルム、耐熱性複合フィルム、および耐熱性不織布からなる群より選ばれた保護材である(好ましくは、保護材(C1)および保護材(C2)が、それぞれ耐熱性樹脂フィルム、耐熱性複合フィルム、および耐熱性不織布からなる群より選ばれた保護材である)、金属張積層体の製造方法。
〔態様10〕
態様1~9のいずれか一態様に記載の製造方法であって、熱圧着温度が、積層体材料中の熱可塑性液晶ポリマーフィルムのうち最も低い融点を有する熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(TmL)に対して、(TmL-120)℃~(TmL)℃(好ましくは(TmL-100)℃~(TmL)℃)の範囲である、金属張積層体の製造方法。
〔態様11〕
態様1~10のいずれか一態様に記載の製造方法であって、熱圧着後の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)と熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)との剥離強度が0.3kN/m以下(好ましくは0.2kN/m以下、より好ましくは0.1kN/m以下)である、金属張積層体の製造方法。
〔態様12〕
態様1~11のいずれか一態様に記載の製造方法であって、積層体材料中で互いに接する熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点の差が、0~70℃(好ましくは0~60℃、より好ましくは0~50℃)の範囲である、金属張積層体の製造方法。
【0012】
なお、請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成要素のどのような組み合わせも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲に記載された請求項の2つ以上のどのような組み合わせも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定の結晶配向度を有する熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いることにより、熱圧着後でも熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士を容易に分離することができるため、外観不良の発生が抑制された金属張積層体を、効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解される。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきでない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の参照番号は、同一部分を示す。図面は必ずしも一定の縮尺で示されておらず、本発明の原理を示す上で誇張したものになっている。
【
図1】本発明の第1の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の金属張積層体の製造方法では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に金属箔を積層させた金属張積層体を、連続的に複数セット製造することができる。
【0016】
(熱可塑性液晶ポリマーフィルム)
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、溶融成形できる液晶性ポリマーから形成される。この熱可塑性液晶ポリマーは、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーであって、溶融成形できる液晶性ポリマーであれば特にその化学的構成については限定されるものではないが、例えば、熱可塑性液晶ポリエステル、またはこれにアミド結合が導入された熱可塑性液晶ポリエステルアミド等を挙げることができる。
【0017】
また、熱可塑性液晶ポリマーは、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カーボネート結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合等のイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。
【0018】
本発明に用いられる熱可塑性液晶ポリマーの具体例としては、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知の熱可塑性液晶ポリエステルおよび熱可塑性液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。ただし、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを形成するためには、種々の原料化合物の組合せには適当な範囲があることは言うまでもない。
【0019】
(1)芳香族または脂肪族ジオール(代表例は表1参照)
【表1】
【0020】
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
【表2】
【0021】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
【表3】
【0022】
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
【表4】
【0023】
これらの原料化合物から得られる熱可塑性液晶ポリマーの代表例として表5および6に示す繰り返し単位を有する共重合体を挙げることができる。
【0024】
【0025】
【0026】
これらの共重合体のうち、p-ヒドロキシ安息香酸および/または6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を少なくとも繰り返し単位として含む重合体が好ましく、特に、(i)p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との繰り返し単位を含む共重合体、または(ii)p-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、少なくとも一種の芳香族ジオールおよび/または芳香族ヒドロキシアミンと、少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸との繰り返し単位を含む共重合体が好ましい。
【0027】
例えば、(i)の共重合体では、熱可塑性液晶ポリマーが、少なくともp-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(A)のp-ヒドロキシ安息香酸と、繰り返し単位(B)の6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とのモル比(A)/(B)は、熱可塑性液晶ポリマー中、(A)/(B)=10/90~90/10程度であるのが望ましく、より好ましくは、(A)/(B)=15/85~85/15程度であってもよく、さらに好ましくは、(A)/(B)=20/80~80/20程度であってもよい。
【0028】
また、(ii)の共重合体の場合、p-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸(C)と、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、および4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジオール(D)と、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸(E)の、熱可塑性液晶ポリマーにおける各繰り返し単位のモル比は、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸(C):前記芳香族ジオール(D):前記芳香族ジカルボン酸(E)=(30~80):(35~10):(35~10)程度であってもよく、より好ましくは、(C):(D):(E)=(35~75):(32.5~12.5):(32.5~12.5)程度であってもよく、さらに好ましくは、(C):(D):(E)=(40~70):(30~15):(30~15)程度であってもよい。
【0029】
また、芳香族ヒドロキシカルボン酸(C)のうち6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位のモル比率は、例えば、85モル%以上であってもよく、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であってもよい。芳香族ジカルボン酸(E)のうち2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰り返し単位のモル比率は、例えば、85モル%以上であってもよく、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であってもよい。
【0030】
また、芳香族ジオール(D)は、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、フェニルヒドロキノン、および4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテルからなる群から選ばれる互いに異なる二種の芳香族ジオールに由来する繰り返し単位(D1)と(D2)であってもよく、その場合、二種の芳香族ジオールのモル比は、(D1)/(D2)=23/77~77/23であってもよく、より好ましくは25/75~75/25、さらに好ましくは30/70~70/30であってもよい。
【0031】
また、芳香族ジオール(D)に由来する繰り返し単位と芳香族ジカルボン酸(E)に由来する繰り返し単位とのモル比は、(D)/(E)=95/100~100/95であることが好ましい。この範囲をはずれると、重合度が上がらず機械強度が低下する傾向がある。
【0032】
なお、本発明にいう光学的に異方性の溶融相を形成し得るとは、例えば試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。
【0033】
熱可塑性液晶ポリマーとして好ましいものは、融点(以下、Tm0と称す)が、例えば、200~360℃の範囲のものであり、好ましくは240~350℃の範囲のもの、さらに好ましくはTm0が260~330℃のものである。なお、融点は、示差走査熱量計を用いて、熱可塑性液晶ポリマーサンプルの熱挙動を観察して得ることができる。すなわち、熱可塑性液晶ポリマーサンプルを室温(例えば、25℃)から10℃/minの速度で昇温して完全に溶融させた後、溶融物を10℃/minの速度で50℃まで冷却し、再び10℃/minの速度で昇温した後に現れる吸熱ピークの位置を、熱可塑性液晶ポリマーサンプルの融点として求める。
【0034】
また、熱可塑性液晶ポリマーは、溶融成形性の観点から、例えば、(Tm0+20)℃におけるせん断速度1000/sでの溶融粘度30~120Pa・sを有していてもよく、好ましくは溶融粘度50~100Pa・sを有していてもよい。
【0035】
前記熱可塑性液晶ポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマー、各種添加剤、充填剤等を添加してもよい。
【0036】
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、例えば、前記熱可塑性液晶ポリマーの溶融混練物を押出成形して得られる。押出成形法としては任意の方法のものが使用されるが、周知のTダイ法、インフレーション法等が工業的に有利である。特にインフレーション法では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加えられ、MD方向、TD方向に均一に延伸できることから、MD方向とTD方向における分子配向性、誘電特性等を制御した熱可塑性液晶ポリマーフィルムが得られる。
【0037】
例えば、Tダイ法による押出成形では、Tダイから押出した溶融体シートを、熱可塑性液晶ポリマーフィルムのMD方向だけでなく、これとTD方向の双方に対して同時に延伸して製膜してもよいし、またはTダイから押出した溶融体シートを一旦MD方向に延伸し、ついでTD方向に延伸して製膜してもよい。
【0038】
また、インフレーション法による押出成形では、リングダイから溶融押出された円筒状シートに対して、所定のドロー比(MD方向の延伸倍率に相当する)およびブロー比(TD方向の延伸倍率に相当する)で延伸して製膜することにより、後述の結晶配向度fを制御することができる。
【0039】
このような押出成形の延伸倍率は、MD方向の延伸倍率(またはドロー比)として、例えば、1.0~10程度であってもよく、好ましくは1.2~7程度、さらに好ましくは1.3~7程度であってもよい。また、TD方向の延伸倍率(またはブロー比)として、例えば、1.5~20程度であってもよく、好ましくは2~15程度、さらに好ましくは2.5~14程度であってもよい。
【0040】
熱可塑性液晶ポリマーの熱物性や所望の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの厚み、他の製造条件等が影響するため、ドロー比およびブロー比の具体的な関係を示すことはできないが、上記ドロー比およびブロー比の範囲内において、ドロー比よりブロー比を大きくする等で調整することにより、平面方向の結晶配向度fpおよび厚さ方向の結晶配向度fvを特定の関係に制御することができる。
【0041】
また、必要に応じて、公知または慣用の熱処理を行い、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点および/または熱膨張係数を調整してもよい。熱処理条件は目的に応じて適宜設定でき、例えば、熱可塑性液晶ポリマーの融点(Tm0)に対して、(Tm0-10)℃以上(例えば、(Tm0-10)~(Tm0+30)℃程度、好ましくは(Tm0)~(Tm0+20)℃程度)で数時間加熱することにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(Tm)を上昇させてもよい。
【0042】
熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(Tm)は、例えば、270~380℃であってもよく、好ましくは280~370℃の範囲のものであってもよい。なお、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(Tm)は、示差走査熱量計を用いて、熱可塑性液晶ポリマーフィルムサンプルの熱挙動を観察して得ることができる。すなわち、熱可塑性液晶ポリマーフィルムサンプルを室温(例えば、25℃)から10℃/minの速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの位置を、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(Tm)として求めることができる。
【0043】
熱可塑性液晶ポリマーフィルムの厚みは、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、多層回路基板の絶縁層の材料に用いることを考慮すると、10~500μmであってもよく、好ましくは15~250μm、より好ましくは25~180μmであってもよい。
【0044】
(金属箔)
本発明の製造方法に用いられる金属箔としては、特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウムまたはこれらの合金金属等であってもよく、導電性、取り扱い性、及びコスト等の観点から、銅箔やステンレス箔が好ましい。なお、銅箔としては、圧延法や電解法によって製造されるものを使用することができる。
【0045】
金属箔の厚みは、必要に応じて適宜設定することができ、例えば、5~50μm程度であってもよく、より好ましくは8~35μmの範囲であってもよい。また、金属箔には、通常施される粗化処理等の表面処理が行われていてもよい。
【0046】
(保護材)
本発明の製造方法には、必要に応じて保護材を用いてもよい。保護材としては、熱圧着後に隣接する金属箔から容易に剥離することができ、耐熱性を有する限り特に限定されず、非熱可塑性のポリイミドフィルムやアラミドフィルム、テフロン(登録商標)フィルム等の耐熱性樹脂フィルム;耐熱性複合フィルム(例えば、複数の耐熱性樹脂フィルムからなる複合フィルム、金属箔と耐熱性樹脂フィルムからなる複合フィルム);アルミニウム箔やステンレス箔等の金属箔;および、耐熱性繊維(例えば、耐熱性樹脂繊維、金属繊維)で構成された耐熱性不織布等が挙げられる。これらの保護材は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの保護材のうち、耐熱性および反発弾性に優れる観点から、耐熱性樹脂フィルム、耐熱性複合フィルム、および耐熱性不織布が好ましい。
【0047】
保護材の厚みは、必要に応じて適宜設定することができ、例えば、10~300μm程度であってもよく、好ましくは15~150μm、より好ましくは15~130μmの範囲であってもよい。また、保護材には、熱圧着後の金属箔との剥離性を向上させる目的で、片面もしくは両面に離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、保護材の少なくとも一方の面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等の耐熱性離型樹脂被膜を設ける方法等が挙げられる。
【0048】
(金属張積層体の製造方法)
本発明の金属張積層体の製造方法は、
積層体材料を連続的に熱圧着する工程であって、前記積層体材料が、互いに接する少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)と、前記一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)の外面に接してそれぞれ配設される少なくとも一対の金属箔(M,M)とで少なくとも構成され、前記積層体材料中で少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)が互いに接した状態で積層体材料を熱圧着する、熱圧着工程と、
前記熱圧着工程後に互いに接する少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離する、熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程と、
を少なくとも備える。
【0049】
熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよび金属箔は、積層体材料を形成して、連続的に熱圧着できる限りそれらの形態は特に限定されず、例えば、積層体材料を構成する各材料の巻き出しロールを準備し、所望の構成の積層体材料を形成できるように各巻き出しロールを配置してもよい。また、本発明の金属張積層体の製造方法は、巻き出しロールより巻き出した各材料を重ね合わせて、少なくとも熱圧着工程および分離工程を経て、巻き取りロールにより巻き取るロールトゥロール方式により行ってもよい。なお、本発明において、積層体材料とは、所望の複数の金属張積層体を製造するために所定の配置で重ね合わせるための材料をいう。
【0050】
ここで、積層体材料中の1つの金属張積層体を形成するための構成材料の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)は、単数であっても、複数であってもよい。また、金属箔(M)も、単数であっても、複数であってもよい。なお、複数含まれる場合は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0051】
さらに、積層体材料の各構成材料は、熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)の単体、および金属箔(M)の単体であってもよいし、熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)の一方の面に金属箔(M)が配設されている片面金属張積層体(M/F)であってもよい。したがって、熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)および金属箔(M)で構成された複数の金属張積層体を形成するための構成材料を巻き出すための複数の巻き出しロールを用いる場合、(i)熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)を巻き出すための巻き出しロール、(ii)金属箔(M)を巻き出すための巻き出しロール、および/または(iii)片面金属張積層体(M/F)を巻き出すための巻き出しロールが含まれていてもよい。これらの各構成材料は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、積層体材料の構成材料としての片面金属張積層体(M/F)は、両面金属張積層体(M/F/M)を製造するための材料として使用することができる。
【0052】
積層体材料は、互いに接する少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)と、前記一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)の外面に接してそれぞれ配設される少なくとも一対の金属箔(M,M)とで少なくとも構成されるような配置であればよく、積層体材料を形成するにあたって、各構成材料を巻き出しロールにより準備する場合、各巻き出しロールは、積層体材料中でM/F/F/Mの順の配置を含むように配置されていてもよい。
【0053】
本発明の金属張積層体の製造方法では、積層体材料中で互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)は、少なくとも一方が、平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さい熱可塑性液晶ポリマーフィルムである。本発明において、互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)のうちの少なくとも一方に特定の結晶配向度を有する熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いることにより、結晶が厚さ方向に配向しており層構造が発達しているためか、互いに接した当該一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)同士が熱圧着後に接着することを抑制でき、容易に分離することができることを見出した。
なお、積層体材料中で互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)の両方が、平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さい熱可塑性液晶ポリマーフィルムであることが好ましい。
【0054】
ここで、結晶配向度fとは、高分子の結晶領域の配向の度合いを与える指標をいい、平面方向の結晶配向度fpは0.5に近いほどフィルム平面の二軸方向に対する結晶の配向が等方に近いことを意味し、厚さ方向の結晶配向度fvは大きいほど(例えば、1.0に近いほど)フィルム厚さ方向に対する結晶の配向性が高いことを意味している。結晶配向度fは、理学電機株式会社製回転対陰極X線回折装置Ru-200を用い、X線出力は、電圧40kV、電流100mA、ターゲットCuKα(λ=1.5405A)を用いて以下のように測定することができる。結晶配向の変化は広角X線写真より求めることができる。まず、熱可塑性液晶ポリマーフィルムをMD方向に切り出し、サンプルホルダーに取り付け、平面方向の結晶配向度fpについてはThrough方向からX線を入射させ、厚さ方向の結晶配向度fvについてはEdge方向からX線を入射させ、イメージングプレートに回折像を露光する。そして、得られた回折像について、厚さ方向および平面方向(MD方向)のそれぞれを配向分布曲線に変換し、円周方向β角に対する回折強度の曲線のピークの半価幅Hから結晶配向度f(平面方向の結晶配向度fpおよび厚さ方向の結晶配向度fv)を以下の式(1)より算出することができる。
f=(180-H)/180 (1)
式中、Hは半価幅である。
また、半価幅Hは、広角X線回折測定による回折角2θ=15°~30°(例えば、約20°付近((110)面))を円環積分して得られる強度分布のピークの半価幅であってもよい。
【0055】
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムにおいて、積層体材料中で互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)のうちの少なくとも一方の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)は、平面方向の結晶配向度fpが0.4~0.7であってもよく、好ましくは0.5~0.6であってもよい。このような範囲にすることにより、熱圧着後において互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離する際に、MD方向とTD方向とで層間剥離の異方性を生じにくくなる傾向にあり、しわ等の外観不良の発生を抑制することができる。例えば、平面方向の結晶配向度fpが大きすぎる場合には、MD方向のみが層間剥離しやすくなる傾向にあり、これにより剥離面の表面形状が荒れ、外観不良を生じる場合がある。
【0056】
また、厚さ方向の結晶配向度fvは0.7~0.9であってもよく、好ましくは0.7~0.8であってもよい。このような範囲にすることにより、熱圧着後において互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離する際に、層間剥離がしやすくなる傾向にあり、しわ等の外観不良の発生を抑制することができる。例えば、厚さ方向の結晶配向度fvが小さすぎる場合には、熱圧着後に一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間で接着しやすくなる傾向にあり、剥離しにくいことによりしわ等の外観不良を生じる場合がある。
【0057】
例えば、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、平面方向の結晶配向度fpと厚さ方向の結晶配向度fvとの差(fv-fp)は、0.05以上であってもよく、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であってもよい。平面方向の結晶配向度fpと厚さ方向の結晶配向度fvとの差(fv-fp)の上限は特に限定されないが、例えば、0.5以下であってもよい。
【0058】
積層体材料中で互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)は、互いに同一であっても、異なっていてもよく、例えば、これらの融点の差が、0~70℃の範囲であってもよく、好ましくは0~60℃の範囲、より好ましくは0~50℃の範囲であってもよい。
【0059】
積層体材料中の複数の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点が異なる場合、互いに接する一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)の融点は、いずれもが積層体材料中の他の熱可塑性液晶ポリマーフィルムが有する最も低い融点(TmL)を超えてもよい。本発明において、最も低い融点(TmL)とは、積層体材料に含まれる全ての熱可塑性液晶ポリマーフィルムがそれぞれ有する融点(Tm)のうち最も低い融点を意味する。
【0060】
また、積層体材料は、少なくとも一対の内層金属箔(M,M)が互いに接していてもよい。金属箔同士が接している部分は、熱圧着工程後に容易に分離することができるため、複数の金属張積層体(例えば、3以上の金属張積層体)を製造する際には、積層体材料中で一対の内層金属箔(M,M)が互いに接する部分を有していることが好ましい。なお、一対の内層金属箔(M,M)のうちの一方は、上述の一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)の外面に接してそれぞれ配設される一対の金属箔(M,M)のうちの一方を構成していてもよい。
【0061】
積層体材料の各構成材料の配置は、本発明の効果を損なわない限り、金属張積層体を形成する以外の材料が含まれていてもよく、例えば、一対の内層金属箔(M,M)との間に保護材(C)が配置されていてもよく、M/C/Mの順の配置を有していてもよい。
【0062】
積層体材料は、最外層金属箔(M1,M2)を有していてもよい。最外層金属箔(M1)および最外層金属箔(M2)がそれぞれ積層体材料の最外層を形成することにより、熱圧着工程において、加圧ロール等に接着して外観不良が生じることはなく、また、後述する一対の保護材(C1,C2)を介して積層体材料を熱圧着する場合においても、保護材が熱可塑性液晶ポリマーフィルムと接するのを避けることができるため、しわ等の外観不良が発生するのを抑制することができる。
【0063】
積層体材料は、以下の(i)~(vi)のいずれかの順の配置であってもよい。
(i)M1/F/F/M2
(ii)M1/F/F/M/M/F/M2
(iii)M1/F/M/M/F/F/M/M/F/M2
(iv)M1/F/F/M/M/F/F/M2
(v)M1/F/F/M/M/F/F/M/M/F/M2
(vi)M1/F/M/M/F/F/M/M/F/F/M/M/F/M2
【0064】
本発明の金属張積層体の製造方法では、熱圧着の際に、必要に応じて保護材(C)を重ねて熱圧着してもよい。保護材(C)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば用いる態様は制限されず、積層体材料の外側に配置してもよいし、積層体材料の構成材料として配置してもよい。例えば、熱圧着の際に、一対の保護材(C1,C2)を介して積層体材料が熱圧着されていてもよい。熱圧着工程において、積層体材料を挟み込むように保護材を最外層に配置することにより、積層体材料の内層への必要以上の熱伝導を抑制することができるためか、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)同士が接していても、互いの接着性を低減することができる。保護材(C)は、上述したように、耐熱性樹脂フィルム、耐熱性複合フィルム、および耐熱性不織布からなる群より選ばれた保護材であってもよい。また、しわ等の外観不良を抑制する観点から、積層体材料は、熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)と保護材(C)とが隣接しないように配置されていてもよい。
【0065】
また、本発明の金属張積層体の製造方法では、一対の保護材(C1,C2)を介して積層体材料が熱圧着する場合、保護材の水分量を低減させて金属張積層体において水分に由来する不具合が発生するのを抑制する観点から、熱圧着工程に先立って、一対の保護材(C1,C2)を加熱する保護材加熱工程をさらに備えていてもよい。
【0066】
保護材加熱工程では、一対の保護材(C1,C2)を加熱できる限り特に限定されず、ヒーター等の外部加熱手段により一対の保護材(C1,C2)を加熱してもよいし、加熱ロールにより一対の保護材(C1,C2)を加熱してもよい。また、例えば、熱圧着工程を連続等方圧プレスで行う場合には、一対の保護材(C1,C2)を予熱ドラムに外接させることにより、一対の保護材(C1,C2)を加熱してもよいし、熱圧着工程を一対の加圧ロール(r1,r2)による熱ロールプレスで行う場合には、一対の保護材(C1,C2)を加圧ロール(r1,r2)に外接させることにより、一対の保護材(C1,C2)を加熱してもよい。
【0067】
一対の保護材(C1,C2)を、加圧ロール(r1,r2)に外接させる場合、保護材と加圧ロールとが外接する時間は、保護材の種類、保護材の状態、加圧ロールの加熱温度等の各種条件により適宜設定することができるが、保護材から水分を除去する観点から、例えば、1.0秒以上であることが好ましく、例えば、1.0~200秒であってもよく、3.0~125秒であってもよい。
【0068】
保護材加熱工程は、熱圧着温度を基準として判断してもよく、例えば、熱圧着温度をT℃とする場合、保護材加熱工程の温度は、例えば、T-30~T+30℃であってもよく、好ましくはT-15~T+15℃であってもよい。
【0069】
保護材加熱工程では、加熱手段に応じて、加熱時間を適宜設定することができるが、例えば、保護材の水分含量が所定の範囲(例えば、1100ppm以下、900ppm以下、700ppm以下、または400ppm以下)になる範囲で加熱するのが好ましい。
【0070】
本発明の金属張積層体の製造方法では、熱圧着工程が、連続等方圧プレスまたは一対の加圧ロール(r1,r2)による熱ロールプレスで行われてもよい。連続等方圧プレスで行う場合、例えば、ダブルベルトプレスにより上下から一対のエンドレスベルトを介してプレスしてもよい。連続等方圧プレスでは、連続的にプレスする際に、単一の領域または複数の領域に分割して加熱または冷却してもよい。
【0071】
得られる複数の金属張積層体は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0072】
以下に、具体的な実施形態を、図面を参照しつつ、説明する。
図1は、第1の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
図1に示すように、第1の実施形態では、熱圧着工程を一対の加圧ロール(r
1,r
2)による熱ロールプレスで行う態様であり、一対の加圧ロール(r
1,r
2)の上流側に、一対の最外層金属箔(M
1,M
2)を巻き出す金属箔巻き出しロール11,11、および一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)を巻き出す熱可塑性液晶ポリマーフィルム巻き出しロール12,12を準備する。
【0073】
ここで、第1の実施形態では、一対の最外層金属箔(M1,M2)および一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)が、一対の加圧ロール(r1,r2)間で、r1/M1/F/F/M2/r2の順となるように、各巻き出しロールが配置される。
【0074】
具体的には、一対の加圧ロール(r1,r2)の上流側に、一対の最外層金属箔(M1,M2)を巻き出す金属箔巻き出しロール11,11がそれぞれ最外層となるように配置され、その内側に一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)を巻き出す熱可塑性液晶ポリマーフィルム巻き出しロール12,12が配置される。
【0075】
図1に示すように、一対の加圧ロール(r
1,r
2)に対して、各巻き出しロールを配置した後、各巻き出しロールから、矢印方向に示すように、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)、および一対の最外層金属箔(M
1,M
2)が巻き出され、一対の加圧ロール(r
1,r
2)に対して、矢印により示されるMD方向(またはラミネート方向)に導入される。
【0076】
一対の加圧ロール(r1,r2)には、積層体材料M1/F/F/M2がこの順で重ねて導入され、所定の加熱温度において、この積層体材料に対して圧力を加える。本発明の製造方法では、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)のうち少なくとも一方の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)の平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さいため、互いに接していても熱圧着後に一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)同士の分離が容易となる。そのため、外観不良の発生を抑制でき、保護材や離間材を使用しなくてもよいため、生産コストを低減することができ、効率よく金属張積層体を製造できる。
【0077】
加圧ロールとしては公知の加熱加圧装置を使用することができ、例えば、金属ロール、ゴムロール、樹脂被覆金属ロール等が挙げられる。一対の加圧ロール(r1,r2)は、互いに同一のものを用いても、異なるものを用いてもよい。例えば、加圧ロール(r1)は加熱の効率を高める観点から金属ロールであってもよく、また、加圧ロール(r2)は、加圧ロール(r1)と同様に金属ロールであってもよく、ゴムロールまたは樹脂被覆金属ロールであってもよい。
【0078】
また、一対の加圧ロール(r1,r2)の各加熱温度は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、積層体材料の態様や構成材料が非対称である場合、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点等を考慮して、一方の加圧ロールの加熱温度がもう一方の加圧ロールの加熱温度より高く設定されていてもよい。加圧ロール(r2)のほうが加圧ロール(r1)より加熱温度が高い場合、例えば、加圧ロール(r2)の加熱温度と加圧ロール(r1)の加熱温度との温度差は5~80℃であってもよく、好ましくは10~70℃、より好ましくは20~50℃であってもよい。
【0079】
また、熱圧着温度や加圧ロールの圧力条件については特に制限はないが、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔との間の接着性の向上、およびしわの発生を抑制する観点から、例えば、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(Tm)に対して、熱圧着温度は、(Tm-120)℃~(Tm)℃の範囲であってもよく、好ましくは(Tm-100)℃~(Tm)℃であってもよい。積層体材料中の複数の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点が異なる場合、熱圧着温度は、積層体材料中の熱可塑性液晶ポリマーフィルムのうち最も低い融点を有する熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点(TmL)に対して、(TmL-120)℃~(TmL)℃の範囲であってもよく、好ましくは(TmL-100)℃~(TmL)℃であってもよい。なお、熱圧着温度は、加圧ロール(r1,r2)の加熱温度であってもよく、一対の加圧ロール(r1,r2)の加熱温度が互いに異なる場合には、一対の加圧ロール(r1,r2)の加熱温度のうちいずれか高い加熱温度が熱圧着温度であってもよい。
【0080】
加圧圧力は1.0t/m(9.8kN/m)~15t/m(147kN/m)の範囲であってもよく、好ましくは1.5t/m(14.7kN/m)~12t/m(117.6kN/m)の範囲であってもよい。なお、加圧圧力は、加圧ロールに付与した力(圧着荷重)をワーク幅で除した値である。
【0081】
また、積層体材料を一対の加圧ロール(r1,r2)に通過させる速度は、熱圧着温度や加圧ロールの圧力条件、加圧ロールの大きさに応じて適宜設定することができるが、例えば、0.5~5.0m/minであってもよく、好ましくは1.0~4.0m/minであってもよい。
【0082】
本発明の製造方法では、熱圧着工程後に少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離する、熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程を備えており、例えば、一対の加圧ロール(r1,r2)を通過後、直ちに熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離してもよく、また、加圧ロールとは別に配設される少なくとも1つの分離ロールにより、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間を分離してもよい。
【0083】
本発明の製造方法では、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)のうち少なくとも一方の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)が平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さいため、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士が熱圧着で接着することを抑制でき、熱可塑性液晶ポリマーフィルム間で容易に分離することができる。例えば、熱圧着後の積層体における熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)と熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)との剥離強度は0.3kN/m以下であってもよく、好ましくは0.2kN/m以下、より好ましくは0.1kN/m以下であってもよい。なお、本発明において、剥離強度は、JIS C 6471:1995(90°方向引きはがし)に準拠して測定される剥離強度(引きはがし強さ)である。
【0084】
本発明の製造方法では、熱圧着工程後に、積層体を冷却させる冷却工程を備えていてもよい。例えば、必要に応じて、冷却ロールを加圧ロールの下流側に設けてもよい。冷却ロールは、分離ロールが設けられている場合には、加圧ロールと分離ロールとの間に設けるのが好ましい。冷却ロールは一対のロールで構成されていてもよいし、1つの単独ロールで構成されていてもよい。
【0085】
例えば、
図1に示す第1の実施形態では、熱圧着工程により得られた積層体M
1/F/F/M
2は、一対の加圧ロール(r
1,r
2)を通過後直ちにF/F間で分離され、2つの片面金属張積層体(M
1F,M
2F)が製造される。また、得られた片面金属張積層体は、それぞれ、金属張積層体巻き取りロール31,31により巻き取られる。なお、加圧ロールから各巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に1または複数のガイドロール等を配設し、誘導や張力の調整、拡幅等のために使用してもよい。
【0086】
また、
図2は、第2の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
図1と同じ役割を有する部材には、同じ符号をつけて、説明を省略する。
図2に示すように、第2の実施形態では、一対の加圧ロール(r
1,r
2)の上流側に、一対の最外層金属箔(M
1,M
2)を巻き出す金属箔巻き出しロール11,11、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)を巻き出す熱可塑性液晶ポリマーフィルム巻き出しロール12,12、および一対の保護材(C
1,C
2)を巻き出す保護材巻き出しロール13,13を準備する。
【0087】
ここで、第2の実施形態では、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)、一対の最外層金属箔(M1,M2)、および一対の保護材(C1,C2)が、一対の加圧ロール(r1,r2)間で、r1/C1/M1/F/F/M2/C2/r2の順となるように、一対の加圧ロール(r1,r2)の上流側に、各巻き出しロールが配置される。
【0088】
具体的には、一対の加圧ロール(r1,r2)の上流側に、一対の保護材(C1,C2)を巻き出す保護材巻き出しロール13,13がそれぞれ最外層となるように配置され、その内側に一対の最外層金属箔(M1,M2)を巻き出す金属箔巻き出しロール11,11が配置され、さらに、その内側に一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)を巻き出す熱可塑性液晶ポリマーフィルム巻き出しロール12,12が配置される。
【0089】
一対の加圧ロール(r1,r2)には、積層体材料M1/F/F/M2が一対の保護材(C1,C2)を介して、すなわち、C1/M1/F/F/M2/C2の順で重ねて導入される。一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)のうちの少なくとも一方の熱可塑性液晶ポリマーフィルムが特定の結晶配向度を有しているのに加え、さらに、積層体材料を挟み込むように保護材を最外層に配置することにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士の接着を抑制することができる。
【0090】
また、本発明の製造方法では、上述の熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程の他、少なくとも一方の互いに接する保護材と最外層金属箔とを分離する保護材分離工程を備えていてもよい。この場合、保護材分離工程および熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程は、いずれかの分離工程を先に行い、次いでもう一方の分離工程を行うように段階的に行ってもよく、保護材分離工程と熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程とを同時に行ってもよい。これらの分離工程を段階的に行う場合、熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程に先立って、保護材分離工程を行うのが好ましい。すなわち、保護材と最外層金属箔との分離、次いで一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム間の分離を段階的に行ってもよい。
【0091】
本発明の製造方法では、最外層に保護材が配置される場合、保護材を極めて容易に分離することができる。その結果、分離が困難である場合に起こりやすいシワの発生も抑制することができ、高品質な金属張積層体を生産性よく製造することができる。
【0092】
これらの分離工程は、公知または慣用の方法で行うことができ、例えば、分離工程では、一対の加圧ロール(r1,r2)を分離ロールとして用いて分離を行ってもよく、加圧ロールとは別に配設される少なくとも1つの分離ロールにより行うことができる。少なくとも1つの分離ロールは、一対の分離ロールであっても、単独で配設される複数の分離ロールであっても、これらの組み合わせであってもよい。また、分離ロールの順序は、適宜設定すればよく、いずれが上流側であってもよい。
【0093】
また、本発明の製造方法では、保護材分離工程を行わず、熱圧着工程後に得られた金属張積層体を保護材とともに金属張積層体と保護材とが重なった状態で巻き取ってもよい。
【0094】
例えば、
図2に示す第2の実施形態では、熱圧着工程により得られた積層体C
1/M
1/F/F/M
2/C
2は、一対の加圧ロール(r
1,r
2)を通過後、直ちにC
1/M
1間、M
2/C
2間およびF/F間で同時に分離が行われる。C
1/M
1間およびM
2/C
2間で分離された一対の保護材(C
1,C
2)は、それぞれ、保護材巻き取りロール32,32により巻き取られる。分離された一対の保護材(C
1,C
2)は、必要に応じて、再利用することができる。また、同時にF/F間で分離されることにより、2つの片面金属張積層体(M
1F,M
2F)が製造され、得られた片面金属張積層体は、それぞれ、ガイドロール21,21を経て、金属張積層体巻き取りロール31,31により巻き取られる。
【0095】
また、
図3は、第3の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
図1および2と同じ役割を有する部材には、同じ符号をつけて、説明を省略する。
図3に示すように、第3の実施形態では、熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F)、一対の最外層金属箔(M
1,M
2)、金属箔(M)、および一対の保護材(C
1,C
2)が、一対の加圧ロール(r
1,r
2)間で、r
1/C
1/M
1/F/F/M/M/F/M
2/C
2/r
2の順となるように、一対の加圧ロール(r
1,r
2)の上流側に、各巻き出しロールが配置される。
【0096】
一対の加圧ロール(r1,r2)には、積層体材料M1/F/F/M/M/F/M2が一対の保護材(C1,C2)を介して、すなわち、C1/M1/F/F/M/M/F/M2/C2の順で重ねて導入される。
【0097】
ここで、保護材巻き出しロール13,13から巻き出された一対の保護材(C1,C2)は、一対の加圧ロールにおいて積層体材料と接触して導入される前に、それぞれ、加熱された一対の加圧ロール(r1,r2)に対して、所定の時間、外接する保護材加熱工程が行われる。
【0098】
保護材加熱工程では、一対の保護材(C1,C2)が、加圧ロール(r1,r2)の外周と接触することにより、一対の保護材(C1,C2)から水分を除去することが可能となる。そして、一対の最外層金属箔(M1,M2)と接触する前に、一対の保護材(C1,C2)の水分含量を低減させることで、積層体表面に気泡や積層不良等の不具合が生じるのを抑制することができる。保護材加熱工程において、加圧ロールの外周と接触する起点は、加圧ロールの大きさおよび加圧ロールの回転速度に応じて適宜設定することができ、所定の起点から、一対の保護材(C1,C2)が加圧ロールに沿うように保護材加熱工程が行われてもよい。なお、本発明における外接とは、保護材が所定の起点から加圧ロールの外周に沿うように接触して搬送されることを意味する。
【0099】
保護材巻き出しロールの位置は、一対の保護材(C1,C2)が、一対の加圧ロール(r1,r2)と接触することができる限り特に限定されず、保護材巻き出しロールから巻き出された保護材は、直接加圧ロールに外接されてもよいし、保護材巻き出しロールから巻き出された保護材は、一旦、1または複数のガイドロールを経てから加圧ロールに外接されてもよい。例えば、一対の保護材(C1,C2)を一対の加圧ロール(r1,r2)に対して外接させるための一対のガイドロールを備えていることが好ましい。
【0100】
例えば、
図3に示すように、一対の保護材(C
1,C
2)は、保護材巻き出しロール13,13から巻き出された後、直接一対の加圧ロール(r
1,r
2)に導入されるのではなく、一対の加圧ロール(r
1,r
2)の近傍に配置されたガイドロール21,21を通り、次いで、ガイドロール21,21から一対の加圧ロール(r
1,r
2)へと外接されてもよい。ガイドロール21,21により、一対の加圧ロール(r
1,r
2)の所望の場所に対して、一対の保護材(C
1,C
2)を外接させることができる。
【0101】
ガイドロールの設置箇所は、一対の保護材(C
1,C
2)を一対の加圧ロール(r
1,r
2)に対して外接させることができる限り特に限定されず、
図3では、ガイドロールは加圧ロールの近傍に配置されているが、ガイドロールは加圧ロールと接していてもよい。
【0102】
例えば、
図3では、熱圧着前に、保護材(C
1)を加圧ロール(r
1)に、保護材(C
2)を加圧ロール(r
2)に外接させる。このように、保護材を加圧ロールに外接させる(または抱かせる)ことにより、保護材に含まれる水分を除去することができるとともに、事前に保護材を熱圧着温度付近まで予熱することができる。保護材が加圧ロールに外接する距離は適宜設定することができるが、例えば、加圧ロールの1/8周以上であってもよく、1/4周以上であってもよく、1/2周以上であってもよい。
【0103】
本発明の製造方法では、積層体材料は、少なくとも一対の金属箔(M,M)が互いに接していてもよく、積層体材料中で少なくとも一対の金属箔(M,M)が互いに接した状態で積層体材料の熱圧着を行う場合、熱圧着工程後に互いに接する少なくとも一対の金属箔(M,M)間を分離する、金属箔分離工程を備えていてもよい。金属箔同士が接している部分は、熱圧着工程後に容易に分離することができ、例えば、熱圧着後の積層体における金属箔(M)と金属箔(M)との剥離強度は0.3kN/m以下であってもよく、好ましくは0.2kN/m以下、より好ましくは0.1kN/m以下であってもよい。
【0104】
熱可塑性液晶ポリマーフィルム分離工程、金属箔分離工程および保護材分離工程の各分離工程は、公知または慣用の方法で行うことができ、例えば、分離工程では、少なくとも1つの分離ロールにより、(i)一対の保護材(C1,C2)と一対の最外層金属箔(M1,M2)との分離、(ii)少なくとも一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)間の分離、(iii)少なくとも一対の金属箔(M,M)間の分離の少なくともいずれか1つの分離が行われてもよい。上記(i)、(ii)および(iii)の順番は、特に限定されず、これらのうちの複数を同時に行ってもよいし、段階的に行ってもよい。なお、一対の加圧ロール(r1,r2)を分離ロールとして用いてもよい。
【0105】
例えば、一対の分離ロールの間を通過させて、上記(i)、(ii)および(iii)を一度に行ってもよい。
または、一対の分離ロールの間を通過させて、(i)、(ii)および(iii)のうちのいずれか二つを一度に行ってもよく、残りの分離を単独の分離ロールにより段階的に行ってもよく、単独の分離ロールにより段階的に分離を行い、続いて、一対の分離ロールの間を通過させて残りの分離を行ってもよい。
【0106】
例えば、段階的に分離を行う場合、保護材と最外層金属箔との間、すなわち、C1/M1間、M2/C2間の分離を最初の分離工程として行い、その後、続いてまたは同時に、金属箔間M/M、および熱可塑性液晶ポリマーフィルム間F/Fから選択される、少なくとも1つの分離工程を行ってもよい。
【0107】
また、段階的に分離を行う場合、続いてまたは同時に、金属箔間M/M、および熱可塑性液晶ポリマーフィルム間F/Fから選択される少なくとも1つの分離工程を行い、その後、必要に応じて保護材分離工程を行ってもよい。
【0108】
例えば、
図3に示す第3の実施形態では、熱圧着工程により得られた積層体C
1/M
1/F/F/M/M/F/M
2/C
2は、第1の分離ロール41,41を通過することにより、C
1/M
1間およびM
2/C
2間で一対の保護材(C
1,C
2)が分離される。分離された一対の保護材(C
1,C
2)は、それぞれ、保護材巻き取りロール32,32により巻き取られる。分離された一対の保護材(C
1,C
2)は、必要に応じて、再利用することができる。その後、一対の保護材(C
1,C
2)が分離された積層体M
1/F/F/M/M/F/M
2は、第2の分離ロール42,42を通過することにより、M/M間で分離され、その後、第3の分離ロール43を通過することにより、F/F間で分離され、2つの片面金属張積層体(M
1F,MF)および1つの両面金属張積層体(M
2FM)が製造される。また、得られた金属張積層体は、それぞれ、金属張積層体巻き取りロール31,31,31により巻き取られる。2つの片面金属張積層体(M
1F,MF)は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
また、
図4は、第4の実施形態による金属張積層体の製造方法を説明するための側面模式図である。
図1と同じ役割を有する部材には、同じ符号をつけて、説明を省略する。
図4に示すように、第4の実施形態では、熱圧着工程を連続等方圧プレスで行う態様であり、一対の最外層金属箔(M
1,M
2)および一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)が、ダブルベルトプレスの一対のエンドレスベルト(b
1,b
2)間で、b
1/M
1/F/F/M
2/b
2の順となるように、ダブルベルトプレス51の上流側に、各巻き出しロールが配置される。
【0110】
熱圧着工程を連続等方圧プレスで行う場合、加圧帯全域にわたり実質的に均等な圧力をかけることができればよく、公知の装置を使用することができ、例えば、ダブルベルトプレスを好適に使用できる。ダブルベルトプレス51は、一対のエンドレスベルト(b1,b2)と、一対のエンドレスベルト(b1,b2)を掛け渡す加熱ドラム61,61および冷却ドラム62,62と、積層体材料を加熱加圧するために一対のエンドレスベルト(b1,b2)を加熱する加熱装置71,71と、積層体材料を冷却加圧するために一対のエンドレスベルト(b1,b2)を冷却する冷却装置72,72とを備える。エンドレスベルトとしては、公知の材質、形状(例えば、厚さ等)のものを使用することができ、例えば、金属ベルト、ゴムベルト等が挙げられるが、ステンレス製のエンドレスベルトを使用することが好ましい。一対のエンドレスベルト(b1,b2)は、それぞれ加熱ドラム61,61と冷却ドラム62,62との間に掛け渡されており、加熱ドラム61,61および冷却ドラム62,62が回転することにより周回移動する。
【0111】
一対のエンドレスベルト(b1,b2)には、積層体材料M1/F/F/M2がこの順で重ねて導入され、一対のエンドレスベルト(b1,b2)により圧接されながら加熱ドラム61,61および冷却ドラム62,62間を通過し、この間で実質的に均等に加圧することができる。ダブルベルトプレス51は、加熱ドラム61,61および加熱装置71,71により一対のエンドレスベルト(b1,b2)を加熱して、その領域を積層体材料が通過する間で加熱加圧することができる。そのため、積層体材料を一対のエンドレスベルト(b1,b2)を通過させて加熱加圧をすることにより熱圧着工程を行うことができ、熱圧着温度については特に制限はないが、上述の加圧ロールでの場合と同様の熱圧着温度を設定してもよい。また、ダブルベルトプレスにより熱圧着する場合、一対のエンドレスベルト(b1,b2)で所定の時間、積層体材料を面接触により加圧することができるため、熱圧着温度の温度条件は、全領域で一定の温度に設定してもよいし、段階的に温度を変更して設定してもよい。また、熱圧着の加圧圧力は、0.5~10MPaの範囲であってもよく、好ましくは1.0~5.0MPaの範囲であってもよい。熱圧着の時間は、熱圧着温度や用いる熱可塑性液晶ポリマーフィルムに応じて、装置の大きさや積層体材料の搬送速度を変更して設定することができるが、例えば、10~300秒であってもよく、30~240秒であってもよい。
【0112】
また、ダブルベルトプレス51は、冷却装置72,72および冷却ドラム62,62により一対のエンドレスベルト(b1,b2)を冷却して、その領域を積層体材料が通過する間で冷却加圧することができる。そのため、積層体材料を一対のエンドレスベルト(b1,b2)を通過させて冷却加圧をすることにより冷却工程を行うことができる。なお、第4の実施形態のダブルベルトプレス51では、加熱領域に加えて、冷却領域も設けているが、全領域を加温領域にする等所望の温度設定に変更してもよく、その場合、冷却工程は、冷却ロールをダブルベルトプレス装置の下流側に設けることにより冷却してもよい。
【0113】
例えば、
図4に示す第4の実施形態では、ダブルベルトプレス51で熱圧着工程および冷却工程を経て得られた積層体M
1/F/F/M
2は、第1の分離ロール41,41を通過することにより、F/F間で分離され、2つの片面金属張積層体(M
1F,M
2F)が製造される。また、得られた片面金属張積層体は、それぞれ、金属張積層体巻き取りロール31,31により巻き取られる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
【0115】
[融点]
示差走査熱量計(株式会社島津製作所製)を用いて、熱可塑性液晶ポリマーフィルムから所定の大きさをサンプリングして試料容器に入れ、室温から400℃まで10℃/minの速度で昇温した際に現れる吸熱ピークの位置を熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点Tmとした。
【0116】
[膜厚]
膜厚は、デジタル厚み計(株式会社ミツトヨ製)を用い、得られたフィルムをTD方向に1cm間隔で測定し、中心部および端部から任意に選んだ10点の平均値を膜厚とした。
【0117】
[結晶配向度]
理学電機株式会社製回転対陰極X線回折装置Ru-200を用い、X線出力は、電圧40kV、電流100mA、ターゲットCuKα(λ=1.5405A)を用いて以下のように測定した。まず、熱可塑性液晶ポリマーフィルムをMD方向に切り出し、サンプルホルダーに取り付け、平面方向の結晶配向度fpについてはThrough方向からX線を入射させ、厚さ方向の結晶配向度fvについてはEdge方向からX線を入射させ、イメージングプレートに回折像を露光した。そして、得られた回折像について、厚さ方向および平面方向(MD方向)のそれぞれを配向分布曲線に変換し、円周方向β角に対する回折強度の曲線において、約20°付近((110)面)を円環積分して得られる強度分布のピークの半価幅Hから結晶配向度f(平面方向の結晶配向度fpおよび厚さ方向の結晶配向度fv)を以下の式(1)より算出した。
f=(180-H)/180 (1)
【0118】
[外観評価]
得られた金属張積層体を目視により観察し、長さ20m以上において、しわ、スジ、変形、ふくれが観察されないものをA、観察されたものをBとして評価した。
【0119】
(参考例)
p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃である熱可塑性液晶ポリマーを溶融押出し、インフレーション成形法により、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを製造した。膜厚が50μmで、fpが0.5、fvが0.7のフィルムをタイプA、fpが0.8、fvが0.8のフィルムをタイプBとする。
また、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の共重合物(モル比:80/20)で、融点が325℃である熱可塑性液晶ポリマーを溶融押出し、インフレーション成形法により、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを製造した。膜厚が100μmで、fpが0.6、fvが0.8のフィルムをタイプC、fpが0.5、fvが0.7のフィルムをタイプD、fpが0.5、fvが0.5のフィルムをタイプEとする。
【0120】
(実施例1)
参考例で得られたタイプAの熱可塑性液晶ポリマーフィルム、金属箔として電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製、「CF-H9A-DS-HD2」、厚み12μm)、および保護材としてポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、「アピカルNPI」、厚み75μm)をそれぞれ巻き出しロールとして準備した。これらの巻き出しロールを
図2に示すように、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)、一対の電解銅箔(M
1,M
2)、および一対のポリイミドフィルム(C
1,C
2)が、一対の加圧ロール(r
1,r
2)間で、r
1/C
1/M
1/F/F/M
2/C
2/r
2の順となるように各巻き出しロールを配置した。
【0121】
一対の加圧ロール(r1,r2)に、積層体材料M1/F/F/M2を、一対のポリイミドフィルム(C1,C2)を介して導入した。一対の加圧ロール(r1,r2)として直径が300mmの金属ロールを用い、金属ロールの表面温度を230℃、加圧圧力を8t/mに設定し、一対のポリイミドフィルム(C1,C2)で挟み込んだ積層体材料C1/M1/F/F/M2/C2を、速度3.0m/minで加圧ロール(r1,r2)を通過させて熱圧着させた。
【0122】
熱圧着後、
図2に示すように、一対の加圧ロール(r
1,r
2)を通過後、当該一対の加圧ロール(r
1,r
2)を用いて、熱可塑性液晶ポリマーフィルム間を良好に分離することができ、その後、2つの片面銅張積層体を得て、巻き取りロールでそれぞれ巻き取った。得られた銅張積層体について、外観評価結果を表7に示す。
【0123】
(実施例2)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムを参考例で得られたタイプCの熱可塑性液晶ポリマーフィルムに変更し、金属ロールの表面温度を255℃、加圧圧力を12t/mとした以外は、実施例1と同様に銅張積層体を作製した。なお、熱圧着後の熱可塑性液晶ポリマーフィルム間の分離は容易にすることができた。得られた銅張積層体について、外観評価結果を表7に示す。
【0124】
(実施例3)
参考例で得られたタイプDの熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよび金属箔として電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製、「CF-T8」、厚み35μm)をそれぞれ巻き出しロールとして準備した。
図4に示すように、一対の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F,F)、および一対の電解銅箔(M
1,M
2)が、一対のエンドレスベルト(b
1,b
2)間で、b
1/M
1/F/F/M
2/b
2の順となるように各巻き出しロールを配置した。
【0125】
一対のエンドレスベルト(b1,b2)に、積層体材料M1/F/F/M2を導入した。加熱ドラムとして直径が0.8mの金属ドラムを用い、一対のエンドレスベルト(b1,b2)の表面温度を230℃、加圧圧力を3MPaに設定し、積層体材料M1/F/F/M2を、速度1m/minでエンドレスベルト(b1,b2)を通過させて熱圧着させた。
【0126】
熱圧着後、
図4に示すように、第1の分離ロールで熱可塑性液晶ポリマーフィルム間を良好に分離することができ、その後、2つの片面銅張積層体を得て、巻き取りロールでそれぞれ巻き取った。得られた銅張積層体について、外観評価結果を表7に示す。
【0127】
(比較例1)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムを参考例で得られたタイプBの熱可塑性液晶ポリマーフィルムに変更した以外は、実施例1と同様に銅張積層体を作製したが、熱圧着後、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士で接着したため、熱可塑性液晶ポリマーフィルム間の分離が困難であり、得られた銅張積層体は、しわが発生してしまった。
【0128】
(比較例2)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムを参考例で得られたタイプEの熱可塑性液晶ポリマーフィルムに変更した以外は、実施例2と同様に銅張積層体を作製したが、熱圧着後、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士で接着したため、熱可塑性液晶ポリマーフィルム間の分離が困難であり、得られた銅張積層体は、しわが発生してしまった。
【0129】
【0130】
表7に示すように、実施例1~3では、平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvよりも小さい熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いたため、熱圧着後の熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士の剥離性が良好であり、得られる銅張積層体にはしわ等の外観不良は見られなかった。
【0131】
一方、比較例1および2では、用いた熱可塑性液晶ポリマーフィルムは平面方向の結晶配向度fpが厚さ方向の結晶配向度fvより小さくなかったため、熱圧着後、熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士が接着してしまい、分離は困難であり、得られた銅張積層体にはしわが発生している。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の製造方法によれば、金属張積層体を効率よく製造することができ、得られた金属張積層体は、電気・電子分野や、事務機器・精密機器分野、パワー半導体分野等において用いられる部品、例えば、回路基板(特にミリ波レーダ用基板)として有効に用いることができる。
【0133】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0134】
11・・・金属箔巻き出しロール
12・・・熱可塑性液晶ポリマーフィルム巻き出しロール
13・・・保護材巻き出しロール
21・・・ガイドロール
31・・・金属張積層体巻き取りロール
32・・・保護材巻き取りロール
41,42,43・・・分離ロール
51・・・ダブルベルトプレス
61・・・加熱ドラム
62・・・冷却ドラム
71・・・加熱装置
72・・・冷却装置
r1,r2・・・加圧ロール
b1,b2・・・エンドレスベルト
M1,M2・・・最外層金属箔
F・・・熱可塑性液晶ポリマーフィルム
C1,C2・・・保護材
M・・・金属箔
M1F,M2F,MF,M2FM・・・金属張積層体