(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221128BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20221128BHJP
H05H 1/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
H01L21/302 103
H01L21/302 101B
H01L21/302 101M
H05H1/46 A
H05H1/00 A
(21)【出願番号】P 2019053837
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 永典
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-246320(JP,A)
【文献】特開2008-091388(JP,A)
【文献】特開平10-242120(JP,A)
【文献】特開平09-036102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0106476(US,A1)
【文献】特開2001-313285(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
H05H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置内のプラズマ発光強度を測定する検出器を用いたプラズマ処理方法であって、
プラズマの生成領域を通り、前記プラズマ処理装置の内壁に至る第1の光軸を持つ第1のプラズマ発光強度を前記検出器で検出する工程と、
プラズマの生成領域を通らず、前記プラズマ処理装置の内壁に至る第2の光軸を持つ第2のプラズマ発光強度を前記検出器で検出する工程と、
検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度との差分又は比率に基づき、前記プラズマ処理装置の内壁の状態を判定する工程を、
有する、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記判定する工程は、判定した前記プラズマ処理装置の内壁の状態に応じて、前記プラズマ処理装置内のコンディショニングの開始及び終了の少なくともいずれかを判定する、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記コンディショニングは、ドライクリーニング、シーズニング及びプリコーティングの少なくともいずれかである、
請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記判定する工程は、検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度との差分が第1の閾値を越えたとき、ドライクリーニングを開始すると判定し、
検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度との差分が正常範囲に収まっている状態が第1の所定時間以上経過したとき、前記ドライクリーニングを終了すると判定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記判定する工程は、シーズニングを開始した後、検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度との差分が正常範囲に収まっている状態が第2の所定時間以上経過したとき、前記シーズニングを終了すると判定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記検出器は、検出する光の向きを変える機構を有し、
前記機構を用いて前記第1の光軸を持つ光及び前記第2の光軸を持つ光を検出する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記検出器は、前記第1の光軸を持つ光を検出する第1の検出器と、前記第2の光軸を持つ光を検出する第2の検出器とを有し、
前記第1の検出器から前記第1の光軸を持つ光を検出し、
前記第2の検出器から前記第2の光軸を持つ光を検出する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記検出する工程は、プラズマの生成領域を通らず、前記プラズマ処理装置の内壁の周方向の複数のポイントに至る複数の第2の光軸を持つ光を用いて測定した複数の第2のプラズマ発光強度を検出し、
前記判定する工程は、検出した前記第1のプラズマ発光強度と複数の前記第2のプラズマ発光強度のそれぞれとの差分又は比率に基づき、前記プラズマ処理装置の内壁の状態を判定する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記判定する工程は、検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度のそれぞれとの差分の少なくともいずれかが第1の閾値を越えたとき、ドライクリーニングを開始すると判定し、
検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度のそれぞれとの差分のすべてが正常範囲に収まっている状態が第1の所定時間以上経過したとき、前記ドライクリーニングを終了すると判定する、
請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記判定する工程は、検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度のそれぞれとの差分のすべてが正常範囲に収まっている状態が第2の所定時間以上経過したとき、シーズニングを終了すると判定する、
請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
処理容器と、前記処理容器内のプラズマ発光強度を測定する検出器と、制御部とを用いたプラズマ処理方法であって、
前記制御部は、
プラズマの生成領域を通り、プラズマ処理装置の内壁に至る第1の光軸を持つ第1のプラズマ発光強度を前記検出器で検出する工程と、
プラズマの生成領域を通らず、前記プラズマ処理装置の内壁に至る第2の光軸を持つ第2のプラズマ発光強度を前記検出器で検出する工程と、
検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度との差分又は比率に基づき、前記プラズマ処理装置の内壁の状態を判定する工程と、を実行する、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマの発光強度の変化によりエッチングの終点検出を行うドライエッチング装置が知られている。例えば、特許文献1は、半導体基板近傍のプラズマの発光強度を測定する第1の検出器と、第1の電極上に設置された被エッチング材料近傍のプラズマの発光強度を測定する第2の検出器とを具備し、第1の検出器が測定する発光強度と第2の検出器が測定する発光強度を演算し、その演算結果の変化によりエッチングの終点検出を行うことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OES(発光分光法)では、プラズマの発光強度を測定することでプラズマの状態を検出できる。プラズマは、プラズマ処理装置の内壁の状態の影響を受ける。よって、プラズマ処理装置の内壁の状態を制御することは重要である。
【0005】
本開示は、プラズマ処理装置の内壁の状態を精度良く判定することが可能なプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理装置内のプラズマ発光強度を測定する検出器を用いたプラズマ処理方法であって、プラズマの生成領域を通り、前記プラズマ処理装置の内壁に至る第1の光軸を持つ第1のプラズマ発光強度を前記検出器で検出する工程と、プラズマの生成領域を通らず、前記プラズマ処理装置の内壁に至る第2の光軸を持つ第2のプラズマ発光強度を前記検出器で検出する工程と、検出した前記第1のプラズマ発光強度と前記第2のプラズマ発光強度との差分又は比率に基づき、前記プラズマ処理装置の内壁の状態を判定する工程を、有する、プラズマ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、プラズマ処理装置の内壁の状態を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面模式図。
【
図4】一実施形態に係る発光強度の差分(壁の状態)を示す図。
【
図5】一実施形態に係るプラズマ発光強度の測定処理を示すフローチャート。
【
図6】一実施形態に係るシーズニング処理を示すフローチャート。
【
図7】一実施形態に係るコンディショニングの開始及び終了を説明するための図。
【
図8】一実施形態に係るドライクリーニング処理を示すフローチャート。
【
図9】一実施形態の変形例1に係るドライクリーニング処理を示すフローチャート。
【
図11】一実施形態の変形例2に係るシーズニング処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[プラズマ処理装置]
まず、一実施形態にかかるプラズマ処理方法を実行するプラズマ処理装置10について、
図1を参照しながら説明する。
図1(a)及び(b)は、一実施形態に係るプラズマ処理装置10の一例として、平行平板型の容量結合(CCP:Capacitively Coupled Plasma)プラズマ処理装置の断面模式図を示す。
【0011】
最初に、
図1(a)に示すプラズマ処理装置10の構成について説明する。プラズマ処理装置10は、処理容器11と、その内部に配置された載置台12とを有する。処理容器11は、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる円筒形の容器であり、接地されている。載置台12は、基台16と、基台16の上に配置された静電チャック13とを有する。載置台12は、絶縁部材の保持部14を介して処理容器11の底部に配置されている。
【0012】
基台16は、アルミニウム等で形成されている。静電チャック13は、アルミナ(Al2O3)等の誘電体で形成され、ウエハWを静電吸着力で保持するための機構を有する。静電チャック13には、中央にてウエハWが載置され、外周にてウエハWの周囲を囲む環状のエッジリング15(フォーカスリングともいう)が載置される。
【0013】
処理容器11の側壁と載置台12の側壁の間には、環状の排気路23が形成され、排気口24を介して排気装置22に接続されている。排気装置22は、ターボ分子ポンプやドライポンプ等の真空ポンプから構成される。排気装置22は、処理容器11内のガスを排気路23及び排気口24に導き、排気する。これにより、処理容器11内の処理空間を所定の真空度に減圧する。
【0014】
排気路23には、処理空間と排気空間とを分け、ガスの流れを制御するバッフル板27が設けられている。バッフル板27は、例えば、アルミニウムから形成された母材の表面に耐腐食性を有する膜(例えば酸化イットリウム(Y2O3))を被覆した環状部材であり、複数の貫通孔が形成されている。
【0015】
載置台12は、第1の高周波電源17及び第2の高周波電源18に接続される。第1の高周波電源17は、例えば60MHzのプラズマ生成用の高周波電力(以下、「HFパワー」ともいう。)を載置台12に印加する。第2の高周波電源18は、例えば40MHzのイオン引き込み用の高周波電力(以下、「LFパワー」ともいう。)を載置台12に印加する。これにより、載置台12は下部電極としても機能する。
【0016】
処理容器11の天井の開口には、外周にリング状の絶縁部材28を介してシャワーヘッド20が設けられている。HFパワーが載置台12とシャワーヘッド20との間に容量的に印加され、主にHFパワーによりガスからプラズマが生成される。
【0017】
プラズマ中のイオンは載置台12に印加されたLFパワーにより載置台12に引き込まれ、載置台12に載置されたウエハWに衝突し、これにより、ウエハW上の所定膜が効率的にエッチング等される。
【0018】
ガス供給源19は、エッチング工程、クリーニング工程、シーズニング工程等の各プラズマ処理工程のプロセス条件に応じたガスを供給する。ガスは、ガス配管21を介してシャワーヘッド20内に入り、ガス拡散室25を経て多数のガス通気孔26から処理容器11内にシャワー状に導入される。
【0019】
図1(b)に示すプラズマ処理装置10は、
図1(a)に示すプラズマ処理装置10とほぼ同一構成を有するが、第1の高周波電源17の配置と後述する検出器40の構成が異なる。
図1(b)のプラズマ処理装置10では、第1の高周波電源17が、シャワーヘッド20に接続されている。第1の高周波電源17は、例えば60MHzのHFパワーをシャワーヘッド20に印加する。
【0020】
制御部30は、CPU、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。制御部30は、RAMに記憶されたレシピに設定された手順に従い、各種のプラズマ処理工程の制御や装置全体の制御を行う。
【0021】
かかる構成のプラズマ処理装置10においてプラズマ処理を行う際、まず、ウエハWが、搬送アーム上に保持された状態で図示しないゲートバルブから処理容器11内に搬入される。ウエハWは、静電チャック13上に載置される。ゲートバルブは、ウエハWを搬入後に閉じられる。静電チャック13の図示しない電極に直流電圧を印加することで、ウエハWは、クーロン力によって静電チャック13に吸着及び保持される。
【0022】
処理容器11内の圧力は、排気装置22により設定値に減圧され、処理容器11の内部が真空状態に制御される。所定のガスがシャワーヘッド20からシャワー状に処理容器11内に導入される。HFパワー及びLFパワーが載置台12に印加される。
図1(a)では、HFパワーは、載置台12に印加されるため、プラズマ生成領域Pは、ウエハWの近傍になる。
図1(b)では、HFパワーは、シャワーヘッド20に印加されるため、プラズマ生成領域Pは、シャワーヘッド20の近傍になる。
【0023】
主にHFパワーにより、導入されたガスからプラズマが生成され、プラズマの作用によりウエハWにエッチング等のプラズマ処理が実行される。プラズマ処理が終了した後、ウエハWは、搬送アーム上に保持され、処理容器11の外部に搬出される。この処理を繰り返すことで連続してウエハWが処理される。
【0024】
ウエハWをプラズマ処理している間、処理容器11の内部で発光した光が、側壁に設けられた窓41を介して、検出器40に入射される。
【0025】
検出器40は、入射する光の向きを変える機能を有し、第1の光軸L1を持つ光及び第2の光軸L2を持つ光を検出する。第1の光軸L1は、ウエハW近傍のプラズマ生成領域Pを通り、処理容器11の側壁11bに至る。入射する光の向きを変える機能を用いて、検出器40を天井に向けた後、検出器40は、第2の光軸L2を持つ光を検出する。第2の光軸L2は、プラズマ生成領域Pを通らず、処理容器11の天井壁11aに至る。
【0026】
図1(b)では、検出器40は、検出器40aと検出器40bとを有している。検出器40a、40bは、入射する光の向きを変える機能を有さない。第1の光軸L1を持つ光及び第2の光軸L2を持つ光は、異なる窓41a、41bを通過して処理容器11の内部から出射され、検出器40a、40bによりそれぞれ検出される。ただし、
図1(a)に示したように同じ窓を通過させるようにしてもよい。
【0027】
検出器40aは、第1の光軸L1を持つ光を検出する。第1の光軸L1は、シャワーヘッド20近傍のプラズマ生成領域Pを通り、処理容器11の側壁11bに至る。検出器40bは、第2の光軸L2を持つ光を検出する。第2の光軸L2は、プラズマ生成領域Pを通らず、処理容器11の側壁11bに至る。
【0028】
検出器40は、発光分光法(OES:Optical Emission Spectroscopy)を用いてプラズマの状態をモニタする。OESでは、試料中の対象元素を放電プラズマによって蒸発気化励起し、得られる元素固有の輝線スペクトル(原子スペクトル)の波長を定性し、発光強度から定量を行う。ただし、OESは、プラズマの状態をモニタする手法の一例であり、検出器40は、プラズマの状態をモニタできれば、使用する手法はOESに限られない。
【0029】
なお、
図2に示すように、検出器40は、アクチュエータ42の動力により上下、左右及び斜め方向に向きを変えることができる。かかる構成により、検出器40は、検出する第1の光軸L1及び第2の光軸L2を移動させることができる。また、検出器40は、第2の光軸L2'に移動させてもよいし、他の角度及び位置に移動させてもよい。これにより、複数方向のプラズマ発光強度を測定できる。そして、後述するように複数方向のプラズマ発光強度の差分に基づき、処理容器11の内壁の状態を判定できる。なお、同じ窓41を通過させて複数方向の光軸を有する光を検出した場合には、複数方向のプラズマ発光強度の差分を使用して内壁の状態を判定する際に、窓41の曇り等の影響をキャンセルできる。
【0030】
図3は、処理容器11内に所定流量のアルゴンガスを供給したときに、
図2に示す第1の光軸L1を持つ光を用いて所定波長の第1のプラズマ発光強度を測定した結果を、別流量で測定したときのプラズマ発光強度で規格化したものを「I
L1」にて示す。加えて、
図2に示す第2の光軸L2を持つ光を用いて所定波長の第2のプラズマ発光強度を測定した結果を、別流量で測定したときのプラズマ発光強度で規格化したものを「I
L2」にて示す。これによれば、第1の光軸L1を持つ光を用いて処理容器11の中心のプラズマの状態を測定した結果と、第2の光軸L2を持つ光を用いて処理容器11の端部のプラズマの状態を測定した結果と、には大きな変化はなかった。つまり、処理容器11の中心のプラズマの状態の測定結果と、処理容器11の端部のプラズマの状態の測定結果とは、外乱を同じだけ受けていることがわかった。
【0031】
そこで、シーズニングの所定枚数毎に第1の光軸L1を持つ光を用いて測定した第1のプラズマ発光強度(
図4(a)の黒丸(I
L1))と、同タイミングに第2の光軸L2を持つ光を用いて測定した第2のプラズマ発光強度(白丸(I
L2))の差分を算出する。
図2の例では、第1の光軸L1は、プラズマの生成領域Pを通る。よって、第1の光軸L1を持つ光を用いて測定される第1のプラズマ発光強度(黒丸(I
L1))は、プラズマの状態を示す。
【0032】
一方、第2の光軸L2は、プラズマの生成領域Pを通らず、処理容器11の天井壁に至る。よって、第2の光軸L2を持つ光を用いて測定される第2のプラズマ発光強度(白丸(IL2))は、プラズマの生成領域Pから拡散されたプラズマの状態と壁の状態を示す。
【0033】
したがって、
図4(a)に矢印にて示す第1のプラズマ発光強度と第2のプラズマ発光強度との差分を算出することによって、プラズマの状態と外乱とを打ち消すことができる。つまり、
図4(b)の第1のプラズマ発光強度と第2のプラズマ発光強度との差分(丸(I
L1-I
L2))に基づき、処理容器11の内壁の状態を判定することができる。
【0034】
[プラズマ発光強度の測定処理]
以下では、壁の状態を判定するために行うプラズマ発光強度の測定処理について、
図5を参照して説明する。
図5は、一実施形態に係るプラズマ発光強度の測定処理を示すフローチャートである。
【0035】
本処理が開始されると、検出器40は、発光分光法(OES)に基づきプラズマ生成領域Pを通る第1の光軸L1を持つ光を用いて第1のプラズマ発光強度を測定する(ステップS1)。次に、検出器40は、発光分光法に基づきプラズマ生成領域Pを通らない第2の光軸L2を持つ光を用いて第2のプラズマ発光強度を測定する(ステップS2)。
【0036】
次に、制御部30は、測定を終了するかを判定する(ステップS3)。制御部30は、測定を終了すると判定すると、本処理を終了する。制御部30は、測定を終了しないと判定すると、次の測定時間になったかを判定する(ステップS4)。そして、制御部30は、次の測定時間になるまで待つ。制御部30は、次の測定時間になったと判定した場合、ステップS3に戻る。ステップS3以降において次の第1のプラズマ発光強度及び次の第2のプラズマ発光強度が測定される。かかる処理により、測定が終了するまで、ステップS3~S6が繰り返され、所定時間毎に第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度が測定される。所定時間毎に測定された第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度は、制御部30に送信される。
【0037】
[シーズニング処理]
次に、第1のプラズマ発光強度及び次の第2のプラズマ発光強度の差分を用いたシーズニング処理について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、一実施形態に係るシーズニング処理を示すフローチャートである。
図7は、一実施形態に係るコンディショニングの開始及び終了を説明するための図である。以下では、コンディショニング処理の一例として、シーズニング処理、ドライクリーニング処理を挙げて説明する。また、
図7の横軸は、時間を示すが、製品ウエハ及びダミーウエハの枚数で表示することも可能である。
【0038】
図6の処理が開始されると、制御部30は、シーズニング処理を開始するかを判定する(ステップS10)。
図7の例では、予め定められた時刻T
0にシーズニング処理を開始すると設定されている。よって、制御部30は、時刻T
0になると、シーズニング処理を開始すると判定し、処理容器11内のシーズニング処理を実行する(ステップS12)。シーズニング処理では、処理容器11内を安定化させるために、ウエハを処理するプロセス条件と同一条件でプラズマを生成し、処理容器11内にてプラズマ処理を行う。
【0039】
シーズニング処理中、所定間隔で検出器40から第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の測定値が制御部30に送られる。
図6に示すように、制御部30は、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の測定値を取得し、その差分を算出する(ステップS14)。
【0040】
次に、制御部30は、算出した差分が正常範囲内かを判定する(ステップS16)。
図7の黒丸は、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の差分(以下、単に「差分」ともいう。)を示す。
図7のシーズニング中では、最初と2番目に算出した差分は点線にて示した正常範囲外にプロットされている。一方、シーズニング中の3番目~6番目に算出した差分は正常範囲内にプロットされている。
【0041】
図6に示すように、制御部30は、ステップS16において、最初と2番目に算出した差分について、正常範囲外であると判定し、ステップS12に戻ってシーズニング処理を続行する。一方、制御部30は、ステップS16において、3番目~6番目に算出した差分について、正常範囲内であると判定し、ステップS18に進む。
【0042】
ステップS18において、制御部30は、正常範囲内になってから第2の所定時間以上経過したかを判定する。第2の所定時間は、予め設定された値であって、シーズニング処理により処理容器11内の環境が正常な状態に安定したと判断できる時間が設定されている。
【0043】
制御部30は、3番目~5番目に算出した差分に基づき、正常範囲内になってから第2の所定時間以上経過していないと判定し、ステップS12~ステップS18の処理を繰り返す。
【0044】
一方、ステップS18において、制御部30は、6番目に算出した差分に基づき、正常範囲内になってから第2の所定時間以上経過したと判定し、シーズニング処理を終了し(ステップS20)、本処理を終える。
図7の例では、時刻T
1においてシーズニング処理を終了する判断がなされる。
【0045】
これによれば、第1のプラズマ発光強度と第2のプラズマ発光強度との差分に基づき、処理容器11の内壁の状態が正常範囲かを判定する。そして、判定結果に基づき処理容器11内の内壁の状態が正常な状態に安定したと判断したときにシーズニングを終了すると判定する。
【0046】
[ドライクリーニング処理]
次に、第1のプラズマ発光強度及び次の第2のプラズマ発光強度の差分を用いたドライクリーニング処理について、
図8及び
図7を参照して説明する。
図8は、一実施形態に係るドライクリーニング処理を示すフローチャートである。
【0047】
図8のドライクリーニング処理が開始されると、制御部30は、図示しない搬送アームを制御してウエハWを処理容器11内に搬入する(ステップS30)。次に、制御部30は、レシピに設定されたプロセス条件に基づいてHFパワー及びLFパワーを印加し、所定のガスを供給してプラズマを生成し、ウエハWにプラズマ処理を施す(ステップS32)。
【0048】
次に、制御部30は、プラズマ処理後、図示しない搬送アームを制御してウエハWを処理容器11から搬出入する(ステップS34)。次に、制御部30は、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の測定値を取得し、その差分を算出する(ステップS36)。そして、制御部30は、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の差分が第1の閾値を超えたかを判定する(ステップS38)。第1の閾値は、壁に付着物が堆積する等して処理容器11内の壁の状態が悪化し、ドライクリーニングが必要と判断される値に予め設定されている。
【0049】
ステップS38において、制御部30は、差分が第1の閾値を超えていないと判定すると、壁を含む処理容器11内のドライクリーニングを開始する必要はないと判断し、ステップS30に戻る。そして、制御部30は、次のウエハWを搬入し、ステップS32~S38の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS38において、制御部30は、差分が第1の閾値を超えていると判定すると、ドライクリーニングを実行する(ステップS40)。
【0051】
図7の例では、正常範囲の上限を第1の閾値とする。この場合、差分が第1の閾値を超えるまで、ウエハWの処理が実行される。
【0052】
図7では、時刻T
2の直前に示す差分が第1の閾値を超えている。よって、この時点でドライクリーニングを開始すると判断する。その結果、
図7の例では時刻T
2にドライクリーニングが開始されている。
【0053】
図8に示すように、制御部30は、算出した差分が正常範囲内かを判定する(ステップS42)。制御部30は、算出した差分が正常範囲内になるまで、ステップS40のドライクリーニング処理を続ける。ステップS42において、制御部30は、算出した差分が正常範囲内であると判定すると、正常範囲内になってから第1の所定時間以上経過したかを判定する。(ステップS44)。
【0054】
第1の所定時間は、予め設定された値であって、クリーニングにより処理容器11内の環境が正常な状態に安定したと判断できる時間が設定されている。
【0055】
制御部30は、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の差分に基づいて正常範囲内になってから第1の所定時間以上経過していないと判定すると、ステップS40~ステップS44の処理を繰り返す。
【0056】
一方、制御部30は、差分について、正常範囲内になってから第1の所定時間以上経過したと判定すると、ドライクリーニングを終了する(ステップS46)。そして、制御部30は、ステップS30に戻ってそれ以降の処理を繰り返す。
【0057】
図7の例では、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の差分が第1の閾値を超えた後、正常範囲内になってから第1の処理時間が経過した時刻T
3にドライクリーニングを終了する。
【0058】
これにより、
図7の時刻T
3~T
4まで次のウエハWの処理が行われる。そして、再び、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の差分が第1の閾値を超えると、ドライクリーニングが必要であると判定し、時刻T
4においてドライクリーニングが開始される。
【0059】
なお、
図8の例では、ドライクリーニングを終了した後、直ちにウエハWの処理を行ったが、これに限られない。例えば、ドライクリーニングを終了した後の所定時間、所定の膜をプリコーティングし、その後にウエハWの処理を行ってもよい。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態に係るプラズマ処理によれば、プラズマの状態を検出する第1のプラズマ発光強度と、プラズマの状態と壁の状態とを検出する第2のプラズマ発光強度との2つの測定値の差分から、壁の状態を判定する。これにより、判定した壁の状態から、シーズニングの終了、ドライクリーニングの開始及びドライクリーニングの終了を適正なタイミングに行うことができる。これにより、処理容器11内にパーティクルが発生する等、処理容器11内の環境を悪化させて、ウエハ処理の生産性が低下することを回避できる。
【0061】
[変形例1]
次に、
図9及び
図10を参照して、一実施形態の変形例1に係るドライクリーニング処理について説明する。
図9は、一実施形態の変形例1に係るドライクリーニング処理を示すフローチャートである。
図10は、一実施形態に係る検出器40の一例を示す図である。
図9の変形例1に係るドライクリーニング処理の各ステップのうち、
図8のドライクリーニング処理と同じ処理を行うステップには、同一のステップ番号が付与されている。
【0062】
図10に示すように、変形例1に係るドライクリーニング処理では、制御部30は、処理容器11の壁を周方向に略均等に3つ以上の光軸を持つ光を検出器40で検出する。
図10の例では、5本の光軸を持つ光を検出する。複数の検出器40を用いて処理容器11の壁を周方向に略均等に3つ以上の光軸を持つ光を検出してもよい。第1の光軸L1は、プラズマの生成領域Pを通り、処理容器11の側壁に至る。第1の光軸L1を持つ光は、第1のプラズマ発光強度を測定するために使用される。第2の光軸L2~L5は、プラズマの生成領域Pを通らず、処理容器11の側壁に至る。第2の光軸L2~L5を持つ光は、第2のプラズマ発光強度をそれぞれ測定するために使用される。
【0063】
図9の処理が開始されると、ステップS30~S34のウエハ処理が行われる。次に、制御部30は、第1の光軸L1を持つ光を用いて測定された第1のプラズマ発光強度及び第2の光軸L2~L5を持つ光をそれぞれ用いて測定された第2のプラズマ発光強度の測定値を取得する。そして、制御部30は、取得した第1のプラズマ発光強度とそれぞれの第2のプラズマ発光強度との差分を算出する(ステップS50)。これにより、第1のプラズマ発光強度と複数の第2のプラズマ発光強度のそれぞれとの差分(複数の差分)が算出される。
【0064】
次に、制御部30は、算出した差分の少なくともいずれかが第1の閾値を超えたかを判定する(ステップS52)。制御部30は、算出した差分のすべてが第1の閾値を超えていないと判定した場合、ドライクリーニングを開始する必要はないと判断する。そして、制御部30は、ステップS30に戻り、次のウエハWを搬入し、ステップS32~S34、S50、S52の処理を繰り返す。
【0065】
ステップS52において、制御部30は、算出した差分の少なくともいずれかが第1の閾値を超えたと判定すると、ドライクリーニングを実行する(ステップS40)。
【0066】
次に、制御部30は、算出した差分のすべてが正常範囲内かを判定する(ステップS54)。算出した差分のすべてが正常範囲内にあるとき、処理容器11の側壁の周方向における複数のポイント(
図10のポイントR1~R5)のすべてにおいて側壁の状態が正常であると判定できる。これにより、壁のコンディションが周方向で均一であることを確認できる。
【0067】
よって、制御部30は、算出した差分のすべてが正常範囲内になるまで、ステップS40のドライクリーニング処理を続ける。ステップS54において、制御部30は、算出した差分のすべてが正常範囲内であると判定すると、正常範囲内になってから第1の所定時間以上経過したかを判定する。(ステップS44)。
【0068】
制御部30は、第1のプラズマ発光強度と第2のプラズマ発光強度のそれぞれの差分のすべてが正常範囲内になってから第1の所定時間以上経過したと判定されるまで、ステップS40、S54、S44の処理を繰り返す。
【0069】
制御部30は、すべての差分が正常範囲内になってから第1の所定時間以上経過したと判定すると、ドライクリーニングを終了する(ステップS46)。そして、制御部30は、ステップS30に戻ってステップS30以降の処理を繰り返す。
【0070】
以上に説明した変形例1に係るクリーニング処理によれば、壁のコンディションが周方向で均一であることを確認できる。これにより、周方向において壁の状態の均質性を確認でき、ドライクリーニングの開始及び終了をより適正なタイミングに行うことができる。ただし、光軸が壁へ向かうポイントは周方向に均一でなくてもよい。例えば、光軸が向かうポイントは、側壁や天井壁に点在させてもよい。これにより、処理容器11内の内壁の全体の状態を精度良く把握することができる。
【0071】
なお、変形例1では、クリーニング処理について説明したが、これに限られず、シーズニングの終了条件にも使用できる。例えば、
図6のステップS18において、すべての差分が正常範囲内になってから第2の所定時間以上経過したと判定したときに、シーズニングを終了させてもよい。
【0072】
[変形例2]
具体的に、
図11を参照して、一実施形態の変形例2に係るシーズニング処理について説明する。
図11は、一実施形態の変形例2に係るシーズニング処理を示すフローチャートである。
図11の変形例2に係るシーズニング処理の各ステップのうち、
図6のシーズニング処理と同じ処理を行うステップには、同一のステップ番号が付与されている。
【0073】
変形例2に係るシーズニング処理では、制御部30は、シーズニング処理を開始すると判定すると(ステップS10)、処理容器11内のシーズニング処理を実行する(ステップS12)。
【0074】
シーズニング処理中、制御部30は、所定間隔で検出器40から第1の光軸L1を持つ光を用いて測定された第1のプラズマ発光強度及び第2の光軸L2~L5を持つ光をそれぞれ用いて測定された第2のプラズマ発光強度の測定値を取得する。そして、制御部30は、取得した第1のプラズマ発光強度とそれぞれの第2のプラズマ発光強度との差分を算出する(ステップS60)。これにより、第1のプラズマ発光強度と複数の第2のプラズマ発光強度のそれぞれとの差分(複数の差分)が算出される。
【0075】
次に、制御部30は、算出したすべての差分が正常範囲内かを判定する(ステップS62)。制御部30は、算出した複数の差分の中に正常範囲外があると判定した場合、ステップS12に戻ってシーズニング処理を続行する。一方、制御部30は、算出したすべての差分が正常範囲内であると判定した場合、ステップS18に進む。
【0076】
ステップS18において、制御部30は、算出したすべての差分が正常範囲内になってから第2の所定時間以上経過したかを判定する。制御部30は、算出したすべての差分が正常範囲内になってから第2の所定時間以上経過していないと判定した場合、ステップS12に戻ってシーズニング処理を続行する。
【0077】
一方、制御部30は、算出したすべての差分が正常範囲内になってから第2の所定時間以上経過したと判定した場合、シーズニング処理を終了し(ステップS20)、本処理を終える。
【0078】
以上に説明した変形例2に係るシーズニング処理によれば、壁のコンディションが周方向で均一であることを確認できる。これにより、周方向において壁の状態の均質性を確認でき、シーズニングの終了をより適正なタイミングに行うことができる。
【0079】
第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度は、OESを用いて所定の一波長の第1のプラズマ発光強度及び所定の一波長の第2のプラズマ発光強度を測定した。そして、上記実施形態及び変形例では、測定した第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の差分(減算)を用いて壁の状態を判定したが、これに限られない。例えば、測定した第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の比率(除算)を用いて壁の状態を判定してもよい。測定した第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の比率(除算)により、壁の状態とプラズマの状態との関係を規格化できる。これにより、規格化した壁の状態とプラズマの状態との関係に基づき、壁の状態を判定できる。
【0080】
また、上記実施形態及び変形例では、第1の所定時間及び第2の所定時間を使用したが、時間に替えてダミーウエハの枚数を用いてもよい。例えば、シーズニング時及びドライクリーニング時にダミーウエハを搬入する場合には、搬入したダミーウエハの枚数に基づき、
図6のステップS18、
図8及び
図9のステップS44の判定を行ってもよい。
【0081】
また、第1のプラズマ発光強度及び第2のプラズマ発光強度の測定タイミングは、同時であってもよいし、同時でなくても概ね連続する時間であればよい。
【0082】
また、本実施形態及び変形例では、処理容器11内のコンディショニング処理の一例として、シーズニング処理、ドライクリーニング処理を挙げて説明したが、これに限られない。コンディショニング処理は、処理容器11内に所定膜(SiO2膜)の保護膜を被覆するプリコーティングを行ってもよい。この場合、保護膜は、ウエハ処理時のプロセス条件と異なる条件でプラズマ処理を行うことにより形成されてもよい。
【0083】
今回開示された一実施形態に係るプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0084】
本開示のプラズマ処理装置は、ALD(Atomic Layer Deposition )装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP),Inductively Coupled Plasma(ICP),Radial Line Slot Antenna, Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR),Helicon Wave Plasma(HWP)のどのタイプでも適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 プラズマ処理装置
12 載置台(下部電極)
11 処理容器
13 静電チャック
15 エッジリング
16 基台
17 第1の高周波電源
18 第2の高周波電源
20 シャワーヘッド(上部電極)
27 バッフル板
30 制御部
40 検出器