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特許7183111めっき方法、めっき用の不溶性アノード、及びめっき装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】めっき方法、めっき用の不溶性アノード、及びめっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/12 20060101AFI20221128BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20221128BHJP
   C25D 17/12 20060101ALI20221128BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20221128BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20221128BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20221128BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C25D21/12 A
C25D17/00 H
C25D17/12 K
C25D7/12
H01L21/88 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019093404
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020186459
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】下村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】尾渡 晃
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-073889(JP,A)
【文献】特開2007-262448(JP,A)
【文献】特開2014-201835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/12
C25D 17/00
C25D 17/12
C25D 7/12
H01L 21/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通電極を形成するためのビア又はホールを有する基板を用意するステップと、
不溶性アノードが配置されるアノード槽と前記基板が配置されるカソード槽とが隔膜で仕切られためっき液槽を用意するステップと、
前記基板を前記めっき液槽内でめっきする際のアノード電流密度が0.4ASD以上1.4ASD以下となるように、前記基板を電解めっきするステップと、
を含み、
前記不溶性アノードは、
電源に接続される給電点と、
前記給電点を中心としたリング状のリング電極と、
前記給電点と前記リング電極とを接続する接続電極と、
を有する、めっき方法。
【請求項2】
前記リング電極は、第1直径の第1リング電極と、前記第1直径より小さい第2直径の第2リング電極と、を有する、請求項に記載のめっき方法。
【請求項3】
前記接続電極は、前記給電点と前記リング電極とを直線的に接続する、請求項又はに記載のめっき装置。
【請求項4】
前記不溶性アノードは、前記給電点を中心とする回転対称な形状である、請求項からの何れか1項に記載のめっき方法。
【請求項5】
前記不溶性アノードの前記給電点には、前記基板に面する部位を覆うカバーが取り付けられている、請求項からの何れか1項に記載のめっき方法。
【請求項6】
前記不溶性アノードは、アノードホルダに保持され、
前記アノードホルダは、前記基板に向いて開口する開口部を有し、
前記不溶性アノードの前記リング電極の寸法は、前記開口部の寸法よりも小さい、
請求項からの何れか1項に記載のめっき方法。
【請求項7】
前記隔膜は、イオン交換膜又は中性隔膜である、請求項1からの何れか1項に記載のめっき方法。
【請求項8】
めっき液槽内に配置されてめっきに使用されるめっき用の不溶性アノードであって、
電源に接続される給電点と、
前記給電点を中心としたリング状のリング電極と、
前記給電点と前記リング電極とを接続する接続電極と、
を備える、めっき用の不溶性アノード。
【請求項9】
めっき液を収容可能なめっき液槽と、
請求項に記載のめっき用の不溶性アノードと、
前記めっき液槽を、前記不溶性アノードが配置されるアノード槽と基板が配置されるカソード槽とに仕切る隔膜と、
を備えるめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法、めっき用の不溶性アノード、及びめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の表面に設けられた微細な配線用溝、ホール、又はレジスト開口部に配線を形成したり、半導体ウェハ等の表面にパッケージの電極等と電気的に接続するバンプ(突起状電極)を形成したりすることが行われている。この配線及びバンプを形成する方法として、例えば、電解めっき法、蒸着法、印刷法、ボールバンプ法等が知られているが、半導体チップのI/O数の増加、細ピッチ化に伴い、微細化が可能で性能が比較的安定している電解めっき法が多く用いられるようになってきている。
【0003】
電解めっき法に用いるめっき装置は、半導体ウェハ等の基板を保持した基板ホルダと、アノードを保持したアノードホルダと、多種類の添加剤を含むめっき液を収容するめっき液槽とを有する。このめっき装置において半導体ウェハ等の基板表面にめっき処理を行うときは、基板ホルダとアノードホルダとがめっき液槽内で対向配置される。この状態で基板とアノードとを通電させることで、基板表面にめっき膜が形成される。なお、添加剤は、めっき膜の成膜速度を促進又は抑制する効果や、めっき膜の膜質を向上させる効果等を有する。
【0004】
従来、アノードとして、めっき液に溶解する溶解性アノード又はめっき液に溶解しない不溶性アノードが用いられている。不溶性アノードを用いてめっき処理を行った場合、アノードとめっき液との反応により酸素が発生する。めっき液の添加剤はこの酸素と反応して分解される。添加剤が分解されると、添加剤は上述した効果を失い、基板表面に所望の膜を得ることができないという問題がある(例えば、特許文献1参照)。これを防止するためには、めっき液中の添加剤の濃度が一定以上に保たれるように添加剤をめっき液に随時追加すればよい。しかしながら、添加剤は高価であるので、できる限り添加剤の分解を抑制することが望ましい。
【0005】
また、導体基板を多層に積層させる際に各層間を導通させるための手段として、基板の内部に上下に貫通する複数の銅等の金属からなる貫通電極を形成する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。図14は、貫通電極を有する基板の製造の一例を示す図である。まず、図14(A)に示すように、シリコン等からなる基材110の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、上方に開口する複数の貫通電極用凹部112を形成した基板Wを用意する。この貫通電極用凹部112の直径は、例えば1~100μm、特に10~20μmで、深さは、例えば70~150μmである。そして、基板Wの表面に、電解めっきの給電層としての銅等からなるシード層114をスパッタリング等で形成する。
【0006】
次に、基板Wの表面に電解銅めっきを施すことで、図14(B)に示すように、基板Wの貫通電極用凹部112の内部に銅めっき膜116を充填するとともに、シード層114の表面に銅めっき膜116を堆積させる。
【0007】
その後、図14(C)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)等により、基材110上の余剰な銅めっき膜116及びシード層114を除去し、加えて、貫通電極用凹部112内に充填した銅めっき膜116の底面が外部に露出するまで基材110の裏面側を研磨除去する。これによって、上下に貫通する銅(銅めっき膜116)からなる複数の貫通電極118を内部に有する基板Wを完成させる。
【0008】
貫通電極用凹部112は、直径に対する深さの比、即ちアスペクト比が一般に大きく、通常、このようなアスペクト比の大きな貫通電極用凹部112内に電解めっきによって成膜される銅(めっき膜)を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に充填するには長時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-11498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、めっき液中の添加剤の消耗を抑えるためにアノード付近で発生する酸素の量を減らす方法として、アノードの表面積を大きくし、めっき中のアノード電流密度を下げることが行われている。ここで、貫通電極を形成するためのアスペクト比の大きいビア又はホールを有する基板をめっきする際には、ボイド等の欠陥が生じないようにめっき中の電流は小さくされる。しかしながら、本発明者らの研究により、こうした貫通電極を形成する基板に対するめっき中も、添加剤の消耗が大きくなる場合があることが発見された。より具体的には、本発明者らの研究により、めっき中のアノード電流密度が小さすぎると、酸素の発生は減少するが代わりに次亜塩素酸の発生が増加し、増加した次亜塩素酸の影響によって添加剤の分解が促進されることが分かった。
【0011】
また、アノード電流密度を調整して添加剤の消耗を抑制するためにアノードの表面積を変更する場合、単純にアノードの表面積を変更すると、基板に形成されるめっきの均一性が損なわれるおそれがある。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、貫通電極を形成するためのビア又はホールを有する基板をめっきする際に、めっき液中の添加剤の消耗を抑制することができるめっき方法、不溶性アノード、及びめっき装置を提案することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、めっき方法が提案され、前記めっき方法は、貫通電極を形成するためのビア又はホールを有する基板を用意するステップと、不溶性アノードが配置されるアノード槽と前記基板が配置されるカソード槽とが隔膜で仕切られためっき液槽を用意するステップと、前記基板を前記めっき液槽内でめっきする際のアノード電流密度が0.4ASD(A/cm)以上1.4ASD以下となるように、前記基板を電解めっきするステップと、を含む。かかるめっき方法によれば、めっき中の酸素、及び次亜塩素酸の発生を抑制して、めっき液中の添加剤の消耗を抑制することができる。
【0014】
本発明の別の一実施形態によれば、めっき液槽内に配置されてめっきに使用されるめっき用の不溶性アノードが提案され、前記不溶性アノードは、電源に接続される給電点と、前記給電点を中心としたリング状のリング電極と、前記給電点と前記リング電極とを接続する接続電極と、を備える。かかるめっき用の不溶性アノードによれば、めっき中の酸素、及び次亜塩素酸の発生を抑制して、めっき液中の添加剤の消耗を抑制することができると共に、基板に形成されるめっきの面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。
図2】本実施形態に係るアノードホルダの平面図である。
図3図2に示した3-3断面におけるアノードホルダ60の側断面図である。
図4】ホルダベースカバーを取り外した状態のアノードホルダの分解斜視図である。
図5】ホルダベースカバーを取り外した状態のアノードホルダの平面図である。
図6】本実施形態におけるめっき方法の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態におけるアノードの第1例を示す図である。
図8】本実施形態におけるアノードの第2例を示す図である。
図9】本実施形態におけるアノードの第3例を示す図である。
図10】本実施形態におけるアノードの第4例を示す図である。
図11】本実施形態におけるアノードの第5例を示す図である。
図12】本実施形態におけるアノードの第6例を示す図である。
図13】第2実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。
図14】貫通電極を有する基板の製造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るめっき方法、めっき用の不溶性アノード、及びめっき装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。図1に示すように、めっき装置は、内部にめっき液を保持するめっき液槽50と、めっき液槽50内に配置されたアノード40と、アノード40を保持するアノードホルダ60と、基板ホルダ18とを備えている。基板ホルダ18は、ウェハなどの基板Wを着脱自在に保持し、かつ基板Wをめっき液槽50内のめっき液に浸漬させるように構成されている。本実施形態に係るめっき装置は、めっき液に電流を流すことで基板Wの表面を金属でめっきする電解めっき装置である。アノード40としては、めっき液に溶解しない例えば酸化イリジウムまたは白金を被覆したチタンからなる不溶性アノードが用いられる。
【0018】
基板Wは、例えば、半導体基板、ガラス基板、または樹脂基板である。基板Wの表面にめっきされる金属は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、Sn-Ag合金、またはコバルト(Co)である。
【0019】
アノード40および基板Wは鉛直方向に延在するように、つまりアノード40および基板Wの板面が水平方向に向くように配置され、且つめっき液中で互いに対向するように配置される。アノード40はアノードホルダ60を介して電源90の正極に接続され、基板Wは基板ホルダ18を介して電源90の負極に接続される。アノード40と基板Wとの間に電圧を印加すると、電流は基板Wに流れ、めっき液の存在下で基板Wの表面に金属膜が形成される。
【0020】
めっき液槽50は、基板Wおよびアノード40が内部に配置されるめっき液貯留槽52と、めっき液貯留槽52に隣接するオーバーフロー槽54とを備えている。めっき液貯留槽52内のめっき液はめっき液貯留槽52の側壁を越流してオーバーフロー槽54内に流入するようになっている。
【0021】
オーバーフロー槽54の底部には、めっき液循環ライン58aの一端が接続され、めっき液循環ライン58aの他端はめっき液貯留槽52の底部に接続されている。めっき液循環ライン58aには、循環ポンプ58b、恒温ユニット58c、及びフィルタ58dが取り付けられている。めっき液は、めっき液貯留槽52の側壁をオーバーフローしてオーバ
ーフロー槽54に流入し、さらにオーバーフロー槽54からめっき液循環ライン58aを通ってめっき液貯留槽52に戻される。このように、めっき液は、めっき液循環ライン58aを通じてめっき液貯留槽52とオーバーフロー槽54との間を循環する。
【0022】
めっき装置は、基板W上の電位分布を調整する調整板(レギュレーションプレート)14と、めっき液貯留槽52内のめっき液を攪拌するパドル16とをさらに備えている。調整板14は、パドル16とアノード40との間に配置されており、めっき液中の電場を制限するための開口14aを有している。パドル16は、めっき液貯留槽52内の基板ホルダ18に保持された基板Wの表面近傍に配置されている。パドル16は例えばチタン(Ti)または樹脂から構成されている。パドル16は、基板Wの表面と平行に往復運動することで、基板Wのめっき中に十分な金属イオンが基板Wの表面に均一に供給されるようにめっき液を攪拌する。
【0023】
図2は、アノードホルダ60の平面図であり、図3は、図2に示した3-3断面におけるアノードホルダ60の側断面図であり、図4は、ホルダベースカバー63を取り外した状態のアノードホルダ60の分解斜視図であり、図5は、ホルダベースカバー63を取り外した状態のアノードホルダ60の平面図である。なお、図5においては便宜上、把持部64-2が透過した状態のアノードホルダ60が示されている。また、図4及び図5においては、便宜上、アノード40が取り外された状態のアノードホルダ60が示されている。また、本明細書において、「上」及び「下」はアノードホルダ60がめっき液槽50に鉛直に収容された状態における上方向及び下方向をいう。同様に、本明細書において、「前面」は、アノードホルダ60が基板ホルダと対向する側の面をいい、「背面」は前面と逆側の面をいう。
【0024】
図2図4に示すように、本実施形態に係るアノードホルダ60は、アノード40を収容する内部空間61を有する略矩形状のホルダベース62と、ホルダベース62の上部に形成された一対の把持部64-1,64-2と、同じくホルダベース62の上部に形成された一対のアーム部70-1,70-2と、を備える。また、アノードホルダ60は、ホルダベース62の前面を部分的に覆うホルダベースカバー63と、内部空間61を覆うようにホルダベースカバー63の前面に設けられた隔膜66と、隔膜66の前面に設けられた外縁マスク67と、を有する。なお、本実施形態では、アノードホルダ60の内部空間61が「アノード槽」に相当し、外部空間が「カソード槽」に相当する。
【0025】
図2及び図5に示すように、ホルダベース62は、その下部の外表面から内部空間61まで延在し、内部空間61に連通する孔71を有する。また、ホルダベース62は、その上部の把持部64-1,64-2間に、内部空間61の空気を排出するための空気排出口81を有する。ホルダベース62がめっき液に浸漬されたとき、めっき液が孔71から内部空間61に流入するとともに、内部空間61の空気が空気排出口81から排出される。また、アノード40として不溶性アノードを用いた場合、めっき処理中にアノード40から発生する酸素も、空気排出口81を通じて排出される。空気排出口81は、空気の排出を妨げないように形成された蓋83により閉止される。
【0026】
また、図3に示すように、ホルダベースカバー(基体)63の略中央部には、アノード40の径よりも大きい径を有する環状の開口63aが形成されている。ホルダベースカバー63は、ホルダベース62とともに内部空間61を形成する。隔膜66は、開口63aの前面に設けられ、内部空間61を閉鎖する。隔膜66の外周縁部の前方には、隔膜押え68が取り付けられ、隔膜押え68の前方に外縁マスク67が設けられる。また、ホルダベースカバー63の前面には、開口63aに沿って、例えばO-リング等からなる環状の第1のシール部材84が設けられる。隔膜押え68により隔膜66が第1のシール部材84に押圧されることで、開口63aが密閉される。即ち、第1のシール部材84は、隔膜
66と内部空間61との間を密閉することができる。これにより、隔膜66を介して内部空間61と外部空間とが仕切られる。
【0027】
隔膜66は、例えば陽イオン交換膜のようなイオン交換膜、又は中性隔膜である。隔膜66は、めっき液中の添加剤を通過させることなく、めっき処理時にアノード側からカソード側へ陽イオンを通過させることができる。隔膜66の具体的な一例として、(株)ユアサメンブレン製のユミクロン(登録商標)が挙げられる。
【0028】
外縁マスク67は、中央部に環状の開口を有する板状の部材であり、隔膜押え68の前面に着脱自在に取り付けられる。外縁マスク67は、めっき処理時のアノード40の表面の電場を制御するために設けられている。外縁マスク67の開口の径は、アノード40の外径よりも大きいものとしてもよいし、アノード40の外形より小さいものとしてもよい。また、アノードホルダ60は、外縁マスク67を有しなくてもよい。
【0029】
ホルダベースカバー63はホルダベース62に対してねじ結合や溶着などにより固定されており、ホルダベースカバー63とホルダベース62との結合部は密着されている。なお、ホルダベースカバー63とホルダベース62は一体に形成してもよい。
【0030】
図2図4及び図5に示すように、把持部64-1,64-2は、ホルダベース62の上部に形成された連結部62-1,62-2を介してホルダベース62と連結している。把持部64-1,64-2は、連結部62-1,62-2からホルダベース62の中央方向に延在して形成される。把持部64-1,64-2は、アノードホルダ60がめっき液槽50に搬送されるときに、図示しないチャックによって把持される。
【0031】
連結部62-1,62-2から外側方向に延在するアーム部70-1の下部には、アノード40に電圧を印加するための電極端子82が設けられている。電極端子82は、アノードホルダ60がめっき液槽に収容されたときに、電源90の正極に接続される。また、アノードホルダ60は、電極端子82から内部空間61の略中央部まで延在する給電部材89を有する。給電部材89は、略板状の導電部材であり、電極端子82と電気的に接続される。
【0032】
図3に示すように、給電部材89の前面には、例えばねじ等からなる固定部材88により、アノード40が固定されている。これにより、電極端子82及び給電部材89を介して電源90によりアノード40に電圧を印加することができる。
【0033】
ホルダベース62の略中央部、即ち固定部材88に対応する位置には、アノード40を交換するための環状の開口部62aが形成されている。開口部62aは、内部空間61の背面側に連通しており、蓋86により覆われる。ホルダベース62の背面側には、開口部62aに沿って、例えばO-リング等からなる環状の第2のシール部材85が設けられている。この第2のシール部材85により、開口部62aと蓋86との間が密閉される。
【0034】
蓋86は、アノード40を交換するときに取り外される。具体的には、例えばアノード40が耐用年数を経過したときに、オペレータにより蓋86が取り外され、開口部62aを介して固定部材88が取り外される。オペレータは外縁マスク67を隔膜押え68から取り外し、アノード40を内部空間61から取り出す。続いて、別のアノード40を内部空間61に収容し、開口部62aを介して固定部材88によりアノード40を給電部材89の前面に固定する。最後に、蓋86により開口部62aを封止し、外縁マスク67を隔膜押え68に取り付ける。
【0035】
ホルダベース62の背面には、重り87が取り付けられている。これにより、アノード
ホルダ60をめっき液に浸漬したときに、浮力によりアノードホルダ60が水面上に浮き上がることを防止することができる。
【0036】
図5に示すように、アノードホルダ60は、孔71を封止可能に構成された弁91と、弁91が閉じるように弁91を付勢するためのばね96と、ばね96の付勢力を弁91に伝達するためのシャフト93と、弁91の開閉を操作する操作部であるプッシュロッド95と、プッシュロッド95に加えられた力をシャフト93に伝達するための中間部材94と、をさらに備える。
【0037】
弁91は、孔71をホルダベース62の内部側から封止できるように、ホルダベース62の内部に配置される。シャフト93は、上下方向に沿ってホルダベース62の内部に配置される。シャフト93は、その一端が弁91に連結され、他端がばね96に連結される。これによりシャフト93は、ばね96の付勢力を弁91に伝達し、弁91が孔71をホルダベース62の内部側から封止するように弁91を付勢する。
【0038】
このようにアノードホルダ60が孔71を封止する弁91を備えることにより、アノードホルダ60をめっき液に浸漬して内部空間61にめっき液を満たした後に、孔71を封止することができる。これにより、アノード40近傍で酸素、次亜塩素酸、又は一価の銅が発生しても、外部空間と内部空間61とが仕切られているため、添加剤の分解の進行を抑制することができる。なお、めっき装置では、めっき液貯留槽52にベース液を入れた状態でめっき液貯留槽52内にアノードホルダ60を配置し、アノードホルダ60の内部空間61にベース液が満たされて封止された後に、めっき液貯留槽52内に添加剤を含む液体が入れられて外部空間におけるめっき液が用意されてもよい。こうすれば、アノードホルダ60の内部空間61に添加剤が含まれないため、アノード40近傍において添加剤が消耗されることをより抑制することができる。ただし、こうした例に限定されず、めっき液貯留槽52に添加剤を含むめっき液を入れた状態でめっき液貯留槽52内にアノードホルダ60を配置し、アノードホルダ60の内部空間61に添加剤を含むめっき液が満たされて封止されてもよい。
【0039】
次に、図6を参照して、本実施形態のめっき方法について説明する。なお、以下の説明では、説明の容易のためステップごとに順番に説明するが、めっき方法は、図6及び以下の説明の順番でステップが実行されることに限定されるものではない。つまり、各ステップは、矛盾が生じない限り、順番を入れ替えて実行されてもよい。
【0040】
本実施形態のめっき方法では、まず、貫通電極を形成するためのビア又はホールを有する基板Wが用意される(S10)。一例として、図14(A)に示すように、シリコン等からなる基材110の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、上方に開口する複数の貫通電極用凹部112を形成した基板Wが用意される。この貫通電極用凹部112の直径は、例えば1~100μm、特に5~20μmで、深さは、例えば70~150μmである。ただし、基板Wには、貫通電極用凹部(ビア)に代えて、又は加えて、上下に貫通したホールが形成されていてもよい。
【0041】
続いて、めっき液槽が用意される(S20)。本実施形態では、上記しためっき装置におけるめっき液槽50が用意される。めっき液槽50は、隔膜66によって、内部空間61(アノード40が配置されるアノード槽)と、外部空間(基板Wが配置されるカソード槽)とが仕切られている。
【0042】
次に、アノード40が設計および用意される(S30)。具体的には、基板Wをめっき液槽50内でめっきする際のアノード40での電流密度(以下、「アノード電流密度」という)が0.4ASD(A/cm)以上1.4ASD以下となるように、アノード40
は、その寸法および形状が設計されて用意される。これは、本発明者らの研究により、アノード電流密度が0.4ASD以上1.4ASD以下であるときに、めっき液中の添加剤の消耗を特に抑制できることが発見されたことに基づく。つまり、めっき時のアノード電流密度が大きいと(例えば1.4ASDを超えると)、アノード40付近で発生する酸素が多くなり、めっき液中の添加剤の消耗が大きくなる。一方、めっき時のアノード電流密度が小さすぎると(例えば0.4ASD未満になると)、アノード40付近で発生する次亜塩素酸が多くなり、めっき液中の添加剤の消耗が大きくなる。そして、めっき時のアノード電流密度が、0.4ASD以上、1.4ASD以下であるときに、めっき液中の添加剤の消耗を好適に抑制できる。このため、S30の処理では、めっき処理する基板W等に基づいて、めっき処理中のアノード電流密度が0.4ASD以上1.4ASD以下となるようにアノード40を設計して用意する。ここで、アノード40の設計は、アノード電流密度が0.4ASD以上であって、特に、0.5ASD以上、又は0.6ASD以上であるように設計されることが好ましい。また、アノード40の設計は、アノード電流密度が1.4ASD以下であって、特に、1.3ASD以下、1.2ASD以下、1.1ASD以下、又は1.0ASD以下であるように設計されることが好ましい。
【0043】
アノード40の設計の具体的な一例としては、まず、基板Wの面積および形状に応じてめっき時の電流量(又はカソード電流密度)が定められる。ここで、本実施形態では、基板Wには、貫通電極用凹部112が形成されており、ボイド等の欠陥が生じないように比較的小さな電流量が定められる。めっき時の電流量の設定については、公知の方法を用いてなされればよく、本発明の中核をなさないため詳細な説明は省略する。そして、設定された電流量に基づいて、アノード電流密度が所望の電流密度となるようにアノード40の寸法および形状を定めることにより、アノード40が設計される。こうした電流密度を満たすためのアノード40の好適な形状については後述する。
【0044】
そして、S10で用意した基板W、及びS30で用意したアノード40を、S20で用意しためっき液槽50内に配置し、0.4ASD以上1.4ASD以下のアノード電流密度で電解めっきを行う(S40)。めっき中のアノード電流密度は、0.4ASD以上であって、特に、0.5ASD以上、又は0.6ASD以上であることが好ましい。また、めっき中の電流密度は、1.4ASD以下であって、特に、1.3ASD以下、1.2ASD以下、1.1ASD以下、又は1.0ASD以下であることが好ましい。このように、アノード電流密度が所定範囲内とされることにより、アノード40付近で酸素および次亜塩素酸が発生するのを抑制することができ、めっき液中の添加剤が消耗されることを抑制できる。
【0045】
次に、本実施形態のアノード40の具体的な形状の一例について説明する。図7は、本実施形態のアノードの第1例を示す図である。図7に示すアノード40Aは、アノードホルダ60を介して電源90に接続される給電点402と、給電点を中心としたリング状のリング電極410と、給電点402とリング電極410とを接続する接続電極404と、を有する。
【0046】
給電点402は、アノードホルダ60の給電部材89(図4参照)に接続される。本実施形態では、接続電極404とリング電極410とは、アノードホルダ60の給電部材89に直接に接続されておらず、給電点402を介して接続される。ただし、こうした例に限定されず、接続電極404とリング電極410との少なくとも一部が給電部材89に直接に接続されてもよい。給電点402は、前方(基板W側)から見て円形であり、給電部材89との取り付けのための複数の孔が形成されている。ただし、給電点402は、こうした形状に限定されず、電源90に接続可能に構成されていればよい。
【0047】
リング電極410は、アノード40Aの外縁を画定する。リング電極410の外径は、
アノードホルダ60の開口63aの径よりも小さいことが好ましい。また、リング電極410の外形は、基板Wの外形とほぼ相似形であることが望ましい。例えば、基板Wが円形であればリング電極410は円環形状であり、基板Wが四角形であればリング電極410は4辺で形成される四角の枠形状であることが望ましい。接続電極404は、図7に示す例では、直線状であり、給電点402とリング電極410とを接続する。接続電極404は、給電点402から所定角度ごとに複数設けられており、図7に示す例では、8本の接続電極404が給電点402を中心として放射状に設けられている。リング電極410と接続電極404とは、長手方向に垂直な平面である横断面として、略同一の断面形状を有してもよい。例えば、リング電極410および接続電極404のそれぞれは、横断面が共に正方形であってもよく、特に1辺を1mmとする正方形、1辺を2mmとする正方形、又は1辺を3mmとする正方形であってもよい。ただし、こうした例に限定されず、リング電極410及び接続電極404の横断面は、長方形、多角形、又は円形などであってもよい。
【0048】
アノード40をこうした形状とすることにより、基板Wに貫通電極を形成するためのめっき処理を行う際に、アノード電流密度を調整してめっき液中の添加剤が消耗されることを抑制できると共に、基板Wに形成されるめっきの面内均一性を高くすることができる。ここで、基板Wに形成されるめっきの面内均一性を向上させるため、アノード40は、給電点402を中心とした回転対称な形状であることが好ましい。
【0049】
続いて、アノード40の変形例について説明する。図8は、本実施形態のアノードの第2例を示す図である。図8に示すアノード40Bは、図7に示すアノード40Aと、リング電極410が異なり、リング電極410を除いて同一の形状である。アノード40Bは、リング電極410として、アノード40Bの外縁を画定する第1リング電極410aと、第1リング電極410bより径の小さい第2リング電極410bと、を有する。第1リング電極410aと第2リング電極410bとのそれぞれは、給電点402を中心として同心に設けられている。第1リング電極410aは、図7に示すアノード40Aのリング電極410と同様の構成であり、接続電極404を介して給電点402に接続される。アノード40Bでは、接続電極404は、その一端が給電点402に接続され、他端が第1リング電極410aに接続される。また、接続電極404は、一端と他端との間である中間部分において、第2リング電極410bに接続される。これにより、第2リング電極410bは、接続電極404を介して給電点402に接続される。第1リング電極410a及び第2リング電極410bのそれぞれは、アノード40Aのリング電極410と同様に、接続電極404と、略同一の横断面形状を有してもよい。
【0050】
図9は、本実施形態のアノードの第3例を示す図である。図9に示すアノード40Cは、図7に示すアノード40Aと、リング電極410が異なり、リング電極410を除いて同一の形状である。アノード40Cは、リング電極410として、アノード40Cの外縁を画定する第1リング電極410aと、第1リング電極410bより径の小さい第2リング電極410bと、第2リング電極410bより径の小さい第3リング電極410cと、を有する。第1~第3リング電極410a~410cのそれぞれは、給電点402を中心として同心に設けられている。第1リング電極410a及び第2リングで極410bは、図8に示すアノード40Bのリング電極と同様の構成であり、接続電極404を介して給電点402に接続される。アノード40Cでは、接続電極404は、中間部分において、第2リング電極410bと第3リング電極410cとに接続される。これにより、第2リング電極410b及び第3リング電極410cは、接続電極404を介して給電点402に接続される。第1~第3リング電極410a~410cのそれぞれは、アノード40Aのリング電極410と同様に、接続電極404と、略同一の横断面形状を有してもよい。なお、アノード40は、図7図9に示すように、1つ~3つのリング電極410を備えるものに限定されず、4つ以上のリング電極410を有してもよい。
【0051】
図10は、本実施形態のアノードの第4例を示す図である。図10に示すアノード40Dは、図7に示すアノード40Aと、接続電極404が異なり、接続電極404を除いて同一の形状である。アノード40Dは、接続電極404として、上下方向と左右方向に延びて給電点402とリング電極410とを接続する電極が設けられている。つまり、図7に示すアノード40Aでは、給電点402から8方向に放射状に配置される接続電極404が設けられるものとしたが、図10に示すアノード40Dでは、給電点402から4方向に放射状に配置される接続電極404が設けられている。なお、アノード40は、図7及び図10に示すように、8方向、または4方向に放射状に配置される接続電極404を有するものに限定されず、任意の数の接続電極404を有してもよい。また、アノード40は、接続電極404の数にかかわらず、2つ以上のリング電極410を有してもよい。
【0052】
図11は、本実施形態のアノードの第5例を示す図である。図11に示すアノード40Eは、図7に示すアノード40Aと、接続電極404が異なり、接続電極404を除いて同一の形状である。上記した図7に示すアノード40Aは、接続電極404として、直線状の複数の電極を有するものとしたが、図11に示すアノード40Eは、複数の接続電極404のそれぞれが曲線状となっている。なお、こうした場合にも、アノード40Eが給電点402を中心として回転対称の形状であるように、接続電極404が形成されていることが好ましい。なお、図8図10に示す例においても、接続電極404が曲線状とされてもよい。
【0053】
図12は、本実施形態のアノードの第6例を示す図である。図12に示すアノード40Fは、給電点402にカバー420が取り付けられている点を除いて、図7に示すアノード40Aと同一である。カバー420は、基板Wに形成されるめっきの均一性が向上するように、給電点402における前面(基板Wに対向する面)を覆う。カバー420は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)等の絶縁性の高い樹脂で形成することができる。図12に示す例では、カバー420は、給電点402よりも大きい径の円形状である板状部421と、板状部421から後方に突出する嵌合部422と、を有する。板状部421は、アノード表面の電場を制御するために設けられており、基板Wに形成されるめっきの均一性が向上するように、シミュレーション、又は実験等により寸法が定められるとよい。また、嵌合部422は、カバー420と給電点402との取り付けのために設けられている。嵌合部422の内周面は、給電点402の外周側面と対応する形状となっており、また、嵌合部422は、給電点402から伸びる接続電極404に対応した複数の凹部を有する。こうした構成により、カバー420は、前方から給電点402に嵌合部422を嵌合させて取り付けることができる。ただし、こうした例に限定されず、カバー420は、ネジなどの締結具、又は接着剤などを用いて、給電点402に取り付けられてもよい。給電点402の前方を覆うカバー420が設けられることにより、基板Wに形成されるめっきの均一性の向上を図ることができる。なお、カバー420は、図8図11に示すアノード40B~Eに対して取り付けられてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。第2実施形態に係るめっき装置では、隔膜66が、アノードホルダ60ではなく、調整板14における開口14aに取り付けられている点で、第1実施形態に係るめっき装置と異なる。以下の説明では、第1実施形態と重複する説明については省略する。
【0055】
第2実施形態に係るめっき装置では、めっき液貯留槽52にシールドボックス160が配置され、これによって、めっき液貯留槽52の内部は、シールドボックス160内部のアノード槽170と、外部のカソード槽172と、に区分されている。図13に示す例では、アノード40を保持するアノードホルダ60と調整板14とがアノード槽170の内
部に配置され、パドル16と基板ホルダ18(カソード)とがカソード槽172の内部に配置されている。
【0056】
シールドボックス160は、調整板14の開口14aに対応する位置に開口160aを有している。また、調整板14の開口14aを画定する筒状部は、シールドボックス160の開口160a内に嵌合されている。こうした構成により、アノード槽170とカソード槽172とは、調整板14の開口14aを通じて連通される。そして、第2実施形態では、調整板14の開口14aに隔膜66が取り付けられ、隔膜66によってアノード槽170とカソード槽172とが仕切られている。なお、隔膜66は、調整板14におけるアノード槽170側から取り付けられるものとしてもよいし、カソード槽172側から取り付けられるものとしてもよい。また、隔膜66は、任意の方法で調整板14に取り付けられてもよく、一例として、環状の隔膜押え68によって調整板14に取り付けられる。
【0057】
第2実施形態のめっき装置では、カソード槽172内のめっき液は、めっき液貯留槽52の側壁をオーバーフローしてオーバーフロー槽54内に流入されるようになっている。一方、アノード槽170内のめっき液は、オーバーフローしないように構成されている。また、アノード槽170には、開閉弁186が設置された液排出ライン190が接続されている。こうした液排出ライン190によって、例えば隔膜66を交換する際に、アノード槽170内のめっき液(ベース液)を排出することができる。
【0058】
また、第2実施形態のめっき装置では、めっき液循環ライン58aに、ベース液供給ライン158が接続されている。このベース液供給ライン158は、基板Wのめっき中にめっき液をめっき液貯留槽52に供給するためのものではなく、めっき処理を行うために最初にめっき液貯留槽52にベース液を供給する、いわゆる建浴のためにのみ使用されるものである。ベース液供給ライン158には、第1の供給弁151が設けられている。また、第2実施液体のめっき装置では、めっき液循環ライン58aと液排出ライン190とを接続する接続ライン192が設けられている。接続ライン192には、第2の供給弁152が設けられている。さらに、第2実施形態のめっき装置には、カソード槽172に添加剤を供給するための添加剤供給ライン159が設けられている。添加剤供給ライン159には、第3の供給弁153が設けられている。通常は、第1~第3の供給弁151~153は閉じられている。
【0059】
こうした第2実施形態のめっき装置によれば、建浴時にのみ第1の供給弁151と第2の供給弁152とが開かれ、ベース液供給ライン158からのベース液が液排出ライン190及びめっき液循環ライン58aを通ってアノード槽170及びカソード槽172内に供給される。そして、第3の供給弁153が開かれることにより、カソード槽172にのみ添加剤が供給される。こうした構成により、アノード槽170に添加剤が含まれないため、アノード40近傍において添加剤が消耗されることを抑制できる。
【0060】
以上説明した第2実施形態のめっき装置においては、めっき液貯留槽52がシールドボックス160と調整板14とによって、アノード槽170とカソード槽172とに区分されている。そして、調整板14の開口14aに、隔膜66が設けられている。こうした構成においても、第1実施形態のめっき装置と同様に、貫通電極を形成するための基板Wをめっきする際に、0.4ASD以上1.4ASD以下のアノード電流密度で基板Wをめっきすることにより、めっき処理中の酸素、及び次亜塩素酸の発生を抑制して、めっき液中の添加剤の消耗を抑制することができる。
【0061】
以上説明した本実施形態は、以下の形態としても記載することができる。[形態1]形態1によれば、めっき方法が提案され、前記めっき方法は、貫通電極を形成するためのビア又はホールを有する基板を用意するステップと、不溶性アノードが配置されるアノード槽と前記基板が配置されるカソード槽とが隔膜で仕切られためっき液槽を用意するステッ
プと、前記基板を前記めっき液槽内でめっきする際のアノード電流密度が0.4ASD以上1.4ASD以下となるように、前記基板を電解めっきするステップと、を含む。かかるめっき方法によれば、めっき中の酸素、及び次亜塩素酸の発生を抑制して、めっき液中の添加剤の消耗を抑制することができる。
【0062】
[形態2]形態2によれば、形態1において、前記不溶性アノードは、電源に接続される給電点と、前記給電点を中心としたリング状のリング電極と、前記給電点と前記リング電極とを接続する接続電極と、を有する。形態2によれば、基板に形成されるめっきの面内均一性を高くすることができる。
【0063】
[形態3]形態3によれば、形態2において、前記リング電極は、第1直径の第1リング電極と、前記第1直径より小さい第2直径の第2リング電極と、を有する。
[形態4]形態4によれば、形態2又は3において、前記接続電極は、前記給電点と前記リング電極とを直線的に接続する。
[形態5]形態5によれば、形態2から4において、前記不溶性アノードは、前記給電点を中心とする回転対称な形状である。
【0064】
[形態6]形態6によれば、形態2から5において、前記不溶性アノードの前記給電点には、前記基板に面する部位を覆うカバーが取り付けられている。形態6によれば、カバーによってアノード表面の電場を制御して、基板に形成されるめっきの面内均一性の向上を図ることができる。
【0065】
[形態7]形態7によれば、形態2から6において、前記不溶性アノードは、アノードホルダに保持され、前記アノードホルダは、前記基板に向いて開口する開口部を有し、前記不溶性アノードの前記リング電極の寸法は、前記開口部の寸法よりも小さい。
【0066】
[形態8]形態8によれば、形態1から7において、前記隔膜は、イオン交換膜又は中性隔膜である。
【0067】
[形態9]形態9によれば、めっき液槽内に配置されてめっきに使用されるめっき用の不溶性アノードが提案され、前記アノードは、電源に接続される給電点と、前記給電点を中心としたリング状のリング電極と、前記給電点と前記リング電極とを接続する接続電極と、を備える。形態9によれば、めっき中の酸素、及び次亜塩素酸の発生を抑制して、めっき液中の添加剤の消耗を抑制することができると共に、基板に形成されるめっきの面内均一性を向上させることができる。
【0068】
[形態10]形態10によれば、めっき装置が提案され、めっき液を収容可能なめっき液槽と、形態9に記載のめっき用の不溶性アノードと、前記めっき液槽を、前記不溶性アノードが配置されるアノード槽と基板が配置されるカソード槽とに仕切る隔膜と、を備える。形態10によれば、形態9のめっき用のアノードを備え、形態9と同様の効果を奏することができる。
【0069】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0070】
14…調整板
14a…開口
16…パドル
18…基板ホルダ
40、40A~40F…アノード(不溶性アノード)
50…めっき液槽
52…めっき液貯留槽
54…オーバーフロー槽
60…アノードホルダ
61…内部空間
62…ホルダベース
63…ホルダベースカバー
66…隔膜
67…外縁マスク
68…隔膜押え
402…給電点
404…接続電極
410…リング電極
410a…第1リング電極
410b…第2リング電極
410c…第3リング電極
420…カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14