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特許7183159高屈折率を有する光安定性接着剤組成物、及びそのアセンブリ、物品、発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】高屈折率を有する光安定性接着剤組成物、及びそのアセンブリ、物品、発光素子
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20221128BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019531498
(86)(22)【出願日】2016-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 CN2016097272
(87)【国際公開番号】W WO2018039897
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2019-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】リウ、 プゥウエイ
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン、 ジャンボ
(72)【発明者】
【氏名】グー、 チュンフア
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246455(JP,A)
【文献】特開2014-201735(JP,A)
【文献】特開2009-120726(JP,A)
【文献】特開2009-209329(JP,A)
【文献】特開2012-046673(JP,A)
【文献】特表2014-516094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な、高屈折率の、非黄変性の光学的に透明な接着剤配合物であって:
1又は複数の非黄変性光安定性のアクリレート又はメタクリレート樹脂を、10~50重量%の範囲の量で、及び
1.70から4.50の範囲の屈折率を有するナノ粒子を、50~90重量%の範囲内の量で、
含み、
前記アクリレート又はメタクリレート樹脂は、
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

エトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレート(SR-348、ベンジルメタクリレート、および1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートからなる群より選択される1又は2種以上から誘導され、
得られる配合物は、1.61から2.0の範囲の屈折率を有し、かつ
得られる配合物は、その黄色度値が有意に増加することなく、少なくとも500時間、規格工業QUV試験に合格する、配合物。
【請求項2】
黄色度値Bが1未満である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記配合物が、エポキシ、ビニルエーテル、ビニルエステル、シアノアクリレート、シリコーン、シリコーン含有アクリレート、シリコーン含有ビニルエーテル、フリーラジカル重合することができる炭素-炭素二重結合を有する1若しくは複数のモノマー、又はそれらの任意の2種以上の混合物から誘導される非黄変性光安定性樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載の配合物。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、ZrO、TiO、又はそれらの任意の2種以上の混合物である、請求項1~のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、40nm未満の平均粒径を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、安定化金属酸化物ナノ粒子である、請求項1~のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、1又は複数のキャッピング剤の存在により安定化されている、請求項に記載の配合物。
【請求項8】
前記キャッピング剤が、ポリビニルアルコール、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、アラビアゴム、α-メタクリル酸、11-メルカプトウンデカン酸若しくはそのジスルフィド誘導体、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ステアリン酸、パルミチン酸、オクタン酸、デカン酸、ポリエチレングリコール若しくはそれらの誘導体、ポリアクリル酸若しくはアミノ変性ポリアクリル酸、2-メルカプトエタノール、デンプン、又はそれらの任意の2種以上の混合物である、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
前記ナノ粒子を安定化させることが企図されるキャッピング剤の量が、組成物の1~40重量パーセントの範囲にある、請求項又はに記載の配合物。
【請求項10】
1又は複数の流動添加剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、強化剤、フィルム柔軟剤、UV安定剤、エポキシ硬化触媒、硬化剤、光開始剤、又はそれらの2種以上の混合物をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の配合物のアリコートのみによって分離されている、第1の透明構成要素と第2の透明構成要素とを含むアセンブリ。
【請求項12】
アリコートが前記第1及び/又は第2の透明構成要素に塗布されたときに、1μmから1000μmの厚さを有する、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の配合物の硬化アリコートでそれに接着された第1の透明構成要素及び第2の透明構成要素を含む、物品。
【請求項14】
少なくともその光透過部分が、請求項1~10のいずれか1項に記載の配合物の硬化アリコートでそれに接着されている、発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた光安定性を有する高屈折率組成物、及びその使用方法に関する。本発明はまた、本発明の配合物及び方法を使用して作製されたアセンブリ及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、良好な光学特性を有する市販の高屈折率接着剤製品は存在しない。高屈折率値を有すると主張しているいくつかの実験サンプルは存在している。しかしながら、そのような材料は、光学特性に劣り、光安定性の問題(QUV性能が低い)を有することが示されている。これらは電子用途用の光学製品にとって極めて重要な特性である。
【0003】
本発明は、従来技術の配合物及び方法のこれら及び他の制限に対処するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、優れた光安定性及び良好な光学特性を有する高屈折率組成物が提供される。
【0005】
本発明の特定の態様によれば、本発明の配合物及び方法を使用して作製されたアセンブリ及び物品もまた提供される。
【0006】
本発明によれば、先行技術の制限が克服されており、本発明の組成物の優れた性能、並びにそれを調製及び使用するための方法が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明によれば、安定な、高屈折率の、非黄変性の光学的に透明な(optically transparent)接着剤配合物が提供され、該配合物は:
1又は複数の非黄変性光安定性樹脂であって、前記樹脂は、硫黄含有化合物又はその芳香環間に実質的な共役を有するポリ芳香族化合物から誘導されたものではない、樹脂、及び
1.70から4.50の範囲の屈折率を有するナノ粒子
を含み、
得られる配合物は、約1.55から約2.0の範囲の屈折率を有し、かつ
得られる配合物は、その黄色度値が有意に増加することなく、規格工業QUV試験に少なくとも500時間の間合格する。
【0008】
いくつかの実施形態では、得られる配合物の屈折率は、約1.55から約2.0の範囲に入る。いくつかの実施形態では、得られる配合物の屈折率は、約1.55から約1.80の範囲に入る。いくつかの実施形態では、得られる配合物の屈折率は、約1.55から約1.74の範囲に入る。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明の配合物は:
約5~約98重量%の範囲の前記光安定性樹脂、及び
約2~約95重量%の範囲の高屈折率を有する前記ナノ粒子
を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明の配合物は:
約10~約50重量%の範囲の前記光安定性樹脂、及び
約50~約90重量%の範囲の高屈折率を有する前記ナノ粒子
を含む。
【0011】
いくつかの実施形態(例えば、屈折率が約1.55の場合)では、本発明の配合物は:
約5~約50重量%の範囲の前記光安定性樹脂、及び
約2~約40重量%の範囲の高屈折率を有する前記ナノ粒子
を含む。
【0012】
いくつかの実施形態(例えば、屈折率が約1.74の場合)では、本発明の配合物は:
約5~約30重量%の範囲の前記光安定性樹脂、及び
約70~約95重量%の範囲の高屈折率を有する前記ナノ粒子
を含む。
【0013】
本発明の配合物は、さらに、<1の黄色度値B、及び/若しくは約1μmから約1000μmの範囲の厚さを有し、且つ/又は前記配合物の透明度が少なくとも97%であると定義される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明の配合物は、<2の黄色度値Bを有し;いくつかの実施形態では、<3の黄色度値Bを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の配合物は、約10μmから約1000μmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、本発明の配合物は、約10μmから約500μmの範囲の厚さを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の配合物は透明度が少なくとも98%であり;いくつかの実施形態では、本発明の配合物は透明度が少なくとも99%であり;いくつかの実施形態では、本発明の配合物は透明度が少なくとも99.5%である。
【0017】
非黄変性、光安定性樹脂
多種多様な非黄変性光安定性樹脂が本発明における使用に企図される。本発明における使用に企図される非黄変性光安定性樹脂の例としては、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、ビニルエステル、シアノアクリレート、シリコーン、シリコーン含有アクリレート、シリコーン含有ビニルエーテル、フリーラジカル重合することができる1又は複数のモノマー、及びそれらの任意の2種以上の混合物がある。
【0018】
本明細書における使用に企図される非黄変性光安定性樹脂は、典型的には、老化及び/又は光、湿気、熱等への暴露の際に黄変する傾向がある不飽和硫黄含有化合物から誘導されたものではない。同様に、本明細書における使用に企図される非黄変性光安定性樹脂は、典型的には、その芳香環間に実質的な共役を有するポリ芳香族化合物から誘導されたものではなく、これは、そのような材料も老化及び/又は光、湿気、熱等への暴露の際に黄変する傾向があるためである。
【0019】
アクリレート
本発明の実施における使用に企図されるアクリレートは、当技術分野においてよく知られている。例えば、米国特許第5,717,034号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0020】
本明細書における使用に企図される例示的なアクリレートとしては、単官能性(メタ)アクリレート、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
例示的な単官能性(メタ)アクリレートとしては、フェニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレンアクリレート、アクリロイルオキシエチルスクシネート、脂肪酸アクリレート、メタクリロイルオキシエチルフタル酸、フェノキシエチレングリコールメタクリレート、脂肪酸メタクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、モノペンタエリスリトールアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、トリペンタエリスリトールアクリレート、ポリペンタエリスリトールアクリレート等が挙げられる。
【0022】
例示的な二官能性(メタ)アクリレートとしては、ヘキサンジオールジメタクリレート、ヒドロキシアクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、変性エポキシアクリレート、脂肪酸変性エポキシアクリレート、アミン変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシル化エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、トリシクロデカンジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
例示的な三官能性(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ポリエーテルトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート等が挙げられる。
【0024】
例示的な多官能性(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0025】
本発明の実施における使用に企図されるさらなる例示的なアクリレートとしては、米国特許第5,717,034号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。
【0026】
本明細書における使用に企図されるさらなる例示的なアクリレート樹脂には、以下のような脂肪族アクリレートから誘導されたものがある:
【0027】
【化1】
【0028】
本明細書における使用に企図されるさらなる例示的なアクリレート樹脂としては、縮合/共役芳香環、又は2個以上のカルボニル基で直接連結された芳香環を含まない芳香族アクリレートから誘導されるアクリレート樹脂、例えば、以下のものが挙げられる:
【0029】
【化2】
【0030】
本明細書における使用に企図されるなおさらなる例示的なアクリレート樹脂としては、非縮合/非共役芳香環を有する化合物から誘導されるアクリレート樹脂、例えば、以下のものが挙げられる:
【0031】
【化3】
【0032】
本明細書での使用が企図されるさらなる例示的なアクリレート樹脂としては、以下から誘導されるアクリレート樹脂が挙げられる:
【0033】
【化4】
【0034】
エポキシ
多種多様なエポキシ官能化樹脂が本明細書での使用に企図され、例えば、ビスフェノールAをベースとする液状エポキシ樹脂、ビスフェノールAをベースとする固体型エポキシ樹脂、ビスフェノールFをベースとする液状エポキシ樹脂(例えば、Epiclon EXA-835LV)、フェノール-ノボラック樹脂をベースとする多官能性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、Epiclon HP-7200L)、ナフタレン型エポキシ樹脂等、及びそれらのいずれか2種以上の混合物である。
【0035】
本明細書における使用に企図される例示的なエポキシ官能化樹脂としては、脂環式アルコールのジエポキシド、水素化ビスフェノールA(Epalloy 5000として市販されている)、ヘキサヒドロフタル酸無水物の二官能性脂環式グリシジルエステル(Epalloy 5200として市販されている)、Epiclon EXA-835LV、Epiclon HP-7200L等、並びにそれらのいずれか2種以上の混合物が挙げられる。
【0036】
特定の実施形態では、エポキシ成分は、2種以上の異なるビスフェノール系エポキシの組み合わせを含んでもよい。これらのビスフェノール系エポキシは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、若しくはビスフェノールSエポキシ、又はそれらの組み合わせから選択してもよい。加えて、同じタイプの樹脂(例えば、A、F、又はS)内の2種以上の異なるビスフェノールエポキシを使用してもよい。
【0037】
本明細書における使用に企図されるビスフェノールエポキシの市販の例としては、ビスフェノールF型エポキシ(例えば、日本化薬(Nippon Kayaku)、日本からのRE-404-S、並びに大日本インキ化学工業(Dai Nippon Ink & Chemicals, Inc.)からのEPICLON 830(RE1801)、830S(RE1815)、830A(RE1826)、及び830W、並びにResolutionからのRSL 1738及びYL-983U)、並びにビスフェノールA型エポキシ(例えば、ResolutionからのYL-979及び980)が挙げられる。
【0038】
Dai Nipponから市販されている上記のビスフェノールエポキシは、ビスフェノールAエポキシをベースとする従来のエポキシよりもはるかに低い粘度を有する液体非希釈型エピクロロヒドリン-ビスフェノールFエポキシとして推奨されており、かつ、液体ビスフェノールAエポキシと類似した物性を有する。ビスフェノールFエポキシは、ビスフェノールAエポキシよりも低い粘度を有するが、その他の点ではこの2つの型のエポキシは同じであり、より粘度の低い、ひいては高流速のアンダーフィルシーラント材料を提供する。これら4つのビスフェノールFエポキシのEEWは、165~180である。25℃における粘度は、3,000~4,500cps(その粘度上限が4,000cpsであるRE1801を除く)である。加水分解性塩素含量は、RE1815及び830Wについては200ppm、そしてRE1826については100ppmと報告されている。
【0039】
Resolutionから市販されている上記のビスフェノールエポキシは、低塩素含量液体エポキシとして推奨されている。ビスフェノールAエポキシは、180~195のEEW(g/eq)、及び25℃で100~250cpsの粘度を有する。YL-979の全塩素含量は、500~700ppm、そしてYL-980の全塩素含量は、100~300ppmと報告されている。ビスフェノールFエポキシは、165~180のEEW(g/eq)、及び25℃で30~60の粘度を有する。RSL-1738の全塩素含量は、500~700ppm、そしてYL-983Uの全塩素含量は、150~350ppmと報告されている。
【0040】
ビスフェノールエポキシに加えて、本発明の配合物のエポキシ成分として、他のエポキシ化合物の使用が企図される。例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカーボネートのような脂環式エポキシを使用することができる。また、得られる樹脂材料の粘度を調整するため及び/又はTgを下げるために、単官能性、二官能性、又は多官能性反応剤希釈剤を使用してもよい。例示的な反応性希釈剤としては、ブチルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、又はポリプロピレングリコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
本明細書における使用に好適なエポキシとしては、フェノール化合物のポリグリシジル誘導体、例えば、商品名EPONで市販されているもの、例えば、ResolutionからのEPON 828、EPON 1001、EPON 1009、EPON 1031;Dow Chemical Co.からのDER 331、DER 332、DER 334、及びDER 542;並びに、日本化薬からのBREN-Sが挙げられる。他の好適なエポキシとしては、ポリオール等から調製されるポリエポキシド、及び、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体が挙げられ、後者は、例えば、Dow ChemicalからのDEN 431、DEN 438、及びDEN 439である。クレゾール類似体もまた、商品名ARALDITEで、例えば、Ciba Specialty Chemicals CorporationからのARALDITE ECN 1235、ARALDITE ECN 1273、及びARALDITE ECN 1299が市販されている。SU-8は、Resolutionから入手可能なビスフェノールA型エポキシノボラックである。アミン、アミノアルコール、及びポリカルボン酸のポリグリシジル付加物もまた本発明において有用であり、その市販の樹脂としては、F.I.C CorporationからのGLYAMINE 135、GLYAMINE 125、及びGLYAMINE 115;Ciba Specialty ChemicalsからのARALDITE MY-720、ARALDITE 0500、及びARALDITE 0510、並びにSherwin-Williams Co.からのPGA-X及びPGA-Cが挙げられる。
【0042】
本明細書において場合により使用するための適切な単官能性エポキシ共反応性希釈剤としては、エポキシ成分の粘度よりも低い、通常、約250cps未満の粘度を有するものが挙げられる。
【0043】
単官能性エポキシ共反応性希釈剤は、炭素原子が約6~約28個のアルキル基を有するエポキシ基を有するべきであり、その例としては、C6-28アルキルグリシジルエーテル、C6-28脂肪酸グリシジルエステル、C6-28アルキルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0044】
そのような単官能性エポキシ共反応性希釈剤が含まれる場合、かかる共反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて、約0.5重量パーセント~約10重量パーセントの量で用いられるべきであり;いくつかの実施形態では、かかる共反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて、約0.25重量パーセント~約5重量パーセントの量で用いられるべきである。
【0045】
エポキシ成分は、組成物中に、約1重量パーセント~約40重量パーセントの範囲の量で存在すべきであり;いくつかの実施形態では、本発明の配合物は、約2重量パーセント~約18重量パーセントのエポキシを含み;いくつかの実施形態では、本発明の配合物は、約5~約15重量パーセントのエポキシを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書において用いられるエポキシ成分は、シラン変性エポキシ、例えば、以下を含む組成物である:
(A)下記構造に包含されるエポキシ成分:
【0047】
【化5】
(式中:
Yは、存在しても、又は存在しなくてもよく、そしてYが存在する場合、Yは、直接結合、CH、CH(CH、C=O、又はSであり、
ここでのRは、アルキル、アルケニル、ヒドロキシ、カルボキシ、及びハロゲンであり、そして
ここでのxは、1~4である);
(B)下記構造に包含されるエポキシ官能化アルコキシシラン:
【0048】
【化6】
(式中、
は、オキシラン含有部分構造であり、そして
は、1~10個の炭素原子を有する、アルキル若しくはアルコキシ置換アルキル、アリール、又はアラルキル基である);及び
(C)成分(A)と成分(B)との反応生成物。
【0049】
そのようなシラン変性エポキシの例は、芳香族エポキシ、例えば、ビスフェノールA、E、F、若しくはSエポキシ、又はビフェニルエポキシと、エポキシシランと、の反応生成物として形成され、ここで、該エポキシシランは以下の構造に包含される:
【0050】
【化7】
(式中、
は、オキシラン含有部分構造であり、その例としては、2-(エトキシメチル)オキシラン、2-(プロポキシメチル)オキシラン、2-(メトキシメチル)オキシラン、及び2-(3-メトキシプロピル)オキシランが挙げられ、そして
は、1~10個の炭素原子を有する、アルキル若しくはアルコキシ置換アルキル、アリール、又はアラルキル基である)。
一実施形態では、Rは2-(エトキシメチル)オキシランであり、Rはメチルである。
【0051】
シラン変性エポキシを調製するために使用される芳香族エポキシの理想的な構造としては、
【0052】
【化8】
(式中、
Yは、存在しても、又は存在しなくてもよく、そしてYが存在する場合、Yは、直接結合、CH、CH(CH、C=O、又はSであり、
は、アルキル、アルケニル、ヒドロキシ、カルボキシ、又はハロゲンであり、そして
xは、1~4である)
が挙げられる。
当然ながら、xが2~4である場合、芳香族エポキシの鎖延長型もこの構造に包含されるものと企図される。
【0053】
例えば、芳香族エポキシの鎖延長型は、下記構造に包含され得る:
【0054】
【化9】
【0055】
いくつかの実施形態では、シロキサン変性エポキシ樹脂は、下記構造を有する:
-(O-Si(Me)-O-Si(Me)(Z)-O-Si(Me)-O-Si(Me)
(式中:
Zは、-O-(CH-O-Ph-CH-Ph-O-(CH-CH(OH)-CH-O-Ph-CH-Ph-O-)-CH-オキシランであり、そして
nは、約1~4の範囲に入る)
【0056】
いくつかの実施形態では、シロキサン変性樹脂は、その反応を促進するのに好適な条件下で以下の成分の組み合わせを接触させることにより製造される:
【0057】
【化10】
(式中、“n”は、約1~4の範囲に入る)
【0058】
シラン変性エポキシはまた、芳香族エポキシ、エポキシシラン、及び芳香族エポキシとエポキシシランとの反応生成物の組み合わせであってもよい。反応生成物は、1:100~100:1の重量比、例えば1:10~10:1の重量比の芳香族エポキシとエポキシシランとから調製され得る。
【0059】
本発明の組成物における使用に企図されるエポキシモノマーの量は、得られる配合物が約1~20重量%の範囲の前記エポキシを含むのに十分な量である。特定の実施形態では、得られる配合物は、約2~18重量%の範囲の前記エポキシを含む。特定の実施形態では、得られる配合物は、約5~15重量%の範囲の前記エポキシを含む。
【0060】
エポキシモノマーと組み合わせてエポキシ硬化剤が場合により用いられる。例示的なエポキシ硬化剤としては、尿素、脂肪族及び芳香族アミン、アミンハードナー、ポリアミド、イミダゾール、ジシアンジアミド、ヒドラジド、尿素-アミンハイブリッド硬化系、フリーラジカル開始剤(例えば、ペルオキシエステル、ペルオキシカーボネート、ヒドロペルオキシド、アルキルペルオキシド、アリールペルオキシド、アゾ化合物等)、有機塩基、遷移金属触媒、フェノール、酸無水物、ルイス酸、ルイス塩基等が挙げられる。
【0061】
エポキシ硬化剤が存在する場合、本発明の組成物は、約0.1~2重量%の範囲のエポキシ硬化剤を含む。特定の実施形態では、本発明の組成物は、約0.5~5重量%の範囲のエポキシ硬化剤を含む。
【0062】
マレイミド、ナジイミド、又はイタコンイミド
本明細書における使用に企図されるマレイミド、ナジイミド、又はイタコンイミドは、それぞれ以下の構造:
【0063】
【化11】
(式中:
mは、1~15であり、
pは、0~15であり、
各Rは、水素又は低級アルキル(例えば、C1-5)から独立して選択され、そして
Jは、有機基又はオルガノシロキサン基を含む、一価又は多価の基である)
を有する化合物、及びその2種以上の組み合わせである。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、Jは、以下から選択される一価又は多価の基である:
-典型的には約6から約500個までの範囲の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル種であって、該ヒドロカルビル種は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、又はアルキニルアリールから選択されるが、ただし、Xが2以上の異なる種の組み合わせを含む場合のみ、Xはアリールであることができる、ヒドロカルビル種;
-典型的には約6から約500個までの炭素原子を有するヒドロカルビレン又は置換ヒドロカルビレン種であって、該ヒドロカルビレン種は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリールアルキレン、アリールアルケニレン、アルケニルアリーレン、アリールアルキニレン、又はアルキニルアリーレンから選択される、ヒドロカルビレン種、
-典型的には約6から約500個までの範囲の炭素原子を有する複素環又は置換複素環種、
-ポリシロキサン、又は
-ポリシロキサン-ポリウレタンブロックコポリマー、並びに、
以下から選択されるリンカーを有する、上記の1又は複数の組み合わせ:共有結合、-O-、-S-、-NR-、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-O-、-NR-C(O)-NR-、-S-C(O)-、-S-C(O)-O-、-S-C(O)-NR-、-O-S(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-S(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-O-C(O)-、-NR-O-C(O)-O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-O-C(S)-、-NR-O-C(S)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-O-C(S)-、-O-C(S)-O-、-O-C(S)-NR-、-NR-C(S)-、-NR-C(S)-O-、-NR-C(S)-NR-、-S-S(O)-、-S-S(O)-O-、-S-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-P(O)R-、-S-P(O)R-、又は-NR-P(O)R-(式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、又は置換アルキルである)。
【0065】
例示的な組成物としては、Jが以下であるものが挙げられる:オキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、オキシアルケニル、チオアルケニル、アミノアルケニル、カルボキシアルケニル、オキシアルキニル、チオアルキニル、アミノアルキニル、カルボキシアルキニル、オキシシクロアルキル、チオシクロアルキル、アミノシクロアルキル、カルボキシシクロアルキル、オキシクロアルケニル(oxycloalkenyl)、チオシクロアルケニル、アミノシクロアルケニル、カルボキシシクロアルケニル、複素環、オキシ複素環、チオ複素環、アミノ複素環、カルボキシ複素環、オキシアリール、チオアリール、アミノアリール、カルボキシアリール、ヘテロアリール、オキシヘテロアリール、チオヘテロアリール、アミノヘテロアリール、カルボキシヘテロアリール、オキシアルキルアリール、チオアルキルアリール、アミノアルキルアリール、カルボキシアルキルアリール、オキシアリールアルキル、チオアリールアルキル、アミノアリールアルキル、カルボキシアリールアルキル、オキシアリールアルケニル、チオアリールアルケニル、アミノアリールアルケニル、カルボキシアリールアルケニル、オキシアルケニルアリール、チオアルケニルアリール、アミノアルケニルアリール、カルボキシアルケニルアリール、オキシアリールアルキニル、チオアリールアルキニル、アミノアリールアルキニル、カルボキシアリールアルキニル、オキシアルキニルアリール、チオアルキニルアリール、アミノアルキニルアリール又はカルボキシアルキニルアリール、オキシアルキレン、チオアルキレン、アミノアルキレン、カルボキシアルキレン、オキシアルケニレン、チオアルケニレン、アミノアルケニレン、カルボキシアルケニレン、オキシアルキニレン、チオアルキニレン、アミノアルキニレン、カルボキシアルキニレン、オキシシクロアルキレン、チオシクロアルキレン、アミノシクロアルキレン、カルボキシシクロアルキレン、オキシシクロアルケニレン、チオシクロアルケニレン、アミノシクロアルケニレン、カルボキシシクロアルケニレン、オキシアリーレン、チオアリーレン、アミノアリーレン、カルボキシアリーレン、オキシアルキルアリーレン、チオアルキルアリーレン、アミノアルキルアリーレン、カルボキシアルキルアリーレン、オキシアリールアルキレン、チオアリールアルキレン、アミノアリールアルキレン、カルボキシアリールアルキレン、オキシアリールアルケニレン、チオアリールアルケニレン、アミノアリールアルケニレン、カルボキシアリールアルケニレン、オキシアルケニルアリーレン、チオアルケニルアリーレン、アミノアルケニルアリーレン、カルボキシアルケニルアリーレン、オキシアリールアルキニレン、チオアリールアルキニレン、アミノアリールアルキニレン、カルボキシアリールアルキニレン、オキシアルキニルアリーレン、チオアルキニルアリーレン、アミノアルキニルアリーレン、カルボキシアルキニルアリーレン、ヘテロアリーレン、オキシヘテロアリーレン、チオヘテロアリーレン、アミノヘテロアリーレン、カルボキシヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有二価又は多価環状部分構造、オキシヘテロ原子含有二価又は多価環状部分構造、チオヘテロ原子含有二価又は多価環状部分構造、アミノヘテロ原子含有二価又は多価環状部分構造、又はカルボキシヘテロ原子含有二価又は多価環状部分構造。
【0066】
シアネートエステル系樹脂
本発明の実施における使用に企図されるシアネートエステルモノマーは、加熱により環三量化して置換トリアジン環を形成する、2個以上の環形成シアネート(-O-C≡N)基を含有する。シアネートエステルモノマーの硬化の間には、脱離基も揮発性副産物も形成されないため、硬化反応は付加重合と呼ばれる。本発明の実施において使用され得る好適なポリシアネートエステルモノマーとしては、例えば、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)メタン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)-2,2-ブタン、1,3-ビス[2-(4-シアナトフェニル)プロピル]ベンゼン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、4,4’-ジシアナトジフェニル、ビス(4-シアナト-3,5-ジメチルフェニル)メタン、トリス(4-シアナトフェニル)エタン、シアン化ノボラック、1,3-ビス[4-シアナトフェニル-1-(1-メチルエチリデン)]ベンゼン、シアン化フェノールジシクロペンタジエン付加物等が挙げられる。本発明に従って用いられるポリシアネートエステルモノマーは、酸受容体の存在下、適切な二価又は多価フェノールとハロゲン化シアンとを反応させることによって容易に調製され得る。
【0067】
本発明に従ってポリシアネートエステルモノマーと場合により組み合わせることができるモノマーは、付加重合を受けるモノマーから選択される。そのようなモノマーとしては、ビニルエーテル、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、ジメタクリレート、ジプロパルギルエーテル、混合プロパルギルアリルエーテル、モノマレイミド、ビスマレイミド等が挙げられる。そのようなモノマーの例としては、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリアリルシアヌレート(trisallylcynurate)、1,1-ビス(4-アリルオキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-プロパルギルオキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-アリルオキシフェニル-4’-プロパルギルオキシフェニル)エタン、3-(2,2-ジメチルトリメチレンアセタール)-1-マレイミドベンゼン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0068】
本発明の実施における使用に企図されるさらなるシアネートエステルは、当技術分野においてよく知られている。例えば、米国特許第5,718,941号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0069】
シリコーン
本発明の実施における使用に企図されるシリコーンは、当技術分野においてよく知られている。例えば、米国特許第5,717,034号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0070】
オキセタン
オキセタン(すなわち、1,3-プロピレンオキシド)は、3個の炭素原子及び1個の酸素原子を有する4員環を有する、分子式C3H6Oを有する複素環式有機化合物である。オキセタンという用語はまた、一般に、オキセタン環を含有する任意の有機化合物も指す。例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2010,49,9052-9067におけるBurkhardら(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0071】
ポリエステル系樹脂
本発明の実施における使用に企図されるポリエステルとは、ポリオール(多価アルコールとしても知られている)と、飽和又は不飽和の二塩基酸との反応によって形成される縮合ポリマーを指す。使用される典型的なポリオールは、エチレングリコールのようなグリコールであり;一般的に使用される酸は、フタル酸及びマレイン酸である。エステル化反応の副生成物である水を連続的に除去して、反応を完了させる。不飽和ポリエステル及びスチレンのような添加剤の使用は、樹脂の粘度を低下させる。最初は液体の樹脂を、鎖を架橋することによって固体に変換する。これは、不飽和結合においてフリーラジカルを生成し、これが、連鎖反応において隣接する分子の他の不飽和結合に伝播し、プロセス中に隣接鎖を連結することによってなされる。
【0072】
ポリウレタン系樹脂
本発明の実施における使用に企図されるポリウレタンとは、カルバメート(ウレタン)結合によって連結された有機単位の鎖から構成されるポリマーを指す。ポリウレタンポリマーは、イソシアネートとポリオールとを反応させることによって形成される。ポリウレタンを製造するために使用されるイソシアネート及びポリオールは両方とも、1分子あたり平均して2個以上の官能基を含有する。
【0073】
ポリイミド系樹脂
本発明の実施における使用に企図されるポリイミドとは、イミド結合(すなわち、-C(O)-N(R)-C(O)-)によって連結された有機単位の鎖から構成されるポリマーを指す。ポリイミドポリマーは、種々の反応によって、すなわち、二無水物とジアミンとを反応させること、二無水物とジイソシアネートとの反応、等によって形成することができる。
【0074】
メラミン系樹脂
本発明の実施における使用に企図されるメラミンとは、メラミン(すなわち、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン)とホルムアルデヒドとから重合により製造される硬質の熱硬化性プラスチック材料を指す。そのブチル化された形態では、n-ブタノール及び/又はキシレンに溶解することができる。該メラミン系樹脂は、アルキド、エポキシ、アクリル、及びポリエステル樹脂のような他の樹脂と架橋するために使用することができる。
【0075】
尿素-ホルムアルデヒド系樹脂
本発明の実施における使用に企図される尿素-ホルムアルデヒドとは、アンモニア又はピリジンのような温和な塩基の存在下で加熱した尿素とホルムアルデヒドとから製造される非透過性の熱硬化性樹脂又はプラスチックを指す。
【0076】
本明細書における使用に企図される例示的な熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアクリレート(例えば、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリウレタン、フェノキシ、ポリエチルオキシアゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリグリコール、及びポリアクリル酸;ポリ(エチレングリコール)、芳香族ビニルポリマー、可撓性エポキシ、エポキシ官能基を有するポリマー、ポリカーボネート、ABS、PC/ABSアロイ、ナイロン、固有導電性ポリマー、シリコーンポリマー、シロキサンポリマー、ゴム、ポリオレフィン、ビニルポリマー、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリフェニレンエーテル、コポリエステルカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリアリレートエーテルスルホン又はケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン-EPDMブレンド、ブタジエン、スチレン-ブタジエン、ニトリル、クロロスルホネート、ネオプレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリエーテルエステル、スチレン/アクリロニトリルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ニトリルゴム、セルロース樹脂等、並びにそれらの任意の2種以上の混合物が挙げられる。
【0077】
任意添加物
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の組成物は、1又は複数の流動添加剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、強化剤、フィルム柔軟剤、UV安定剤、エポキシ硬化触媒(例えばイミダゾール)、硬化剤(例えば、ジクミルペルオキシド)等、並びにそれらの任意の2種以上の混合物をさらに含んでもよい。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「流動添加剤」は、それらが導入される配合物の粘度を変える化合物を指す。そのような特性を付与する例示的な化合物としては、シリコンポリマー、エチルアクリレート/2-エチルヘキシルアクリレートコポリマー、ケトオキシムのリン酸エステルのアルキロールアンモニウム塩等、並びにそれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「接着促進剤」は、それらが導入される配合物の接着特性を増強する化合物を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「レオロジー調整剤」は、それらが導入される配合物の1又は複数の物理的特性を改変する添加剤を指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「強化剤」は、それらが導入される配合物の耐衝撃性を増強する添加剤を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「UV安定剤」は、ポリマーの劣化を引き起こす有害なUV照射を抑制又は吸収することができる添加剤を指す。今日一般的に使用されている安定剤には、UV吸収剤とヒンダードアミン光安定剤(HALS)の2つの主要な種類がある。
【0083】
UV吸収剤はUV線を吸収し、それらを熱エネルギーに放散させることによって機能する。UV吸収剤化合物としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン等が挙げられる。
【0084】
HALSは、UV線によって発生したフリーラジカル中間体を捕捉して、劣化を中和することによって作用する。いずれの場合も、ベースポリマー中に存在するUV添加剤との相互作用により、UV光の損傷作用はベースポリマー及び着色剤から逸らされる。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「フィルム柔軟剤」は、それを含有する配合物から調製されたフィルムに柔軟性を付与する薬剤を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「フェノール-ノボラックハードナー」は、反応基のさらなる相互作用に関与してそれらの架橋を増大させ、それによってその剛性を向上させる材料を指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「エポキシ硬化触媒」は、エポキシ含有部分構造のオリゴマー化及び/又は重合を促進する反応剤、例えばイミダゾールを指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「硬化剤」は、モノマー、オリゴマー、又はポリマー材料の硬化を促進するジクミルペルオキシドなどの反応剤を指す。
【0089】
ナノ粒子
本明細書における使用に企図されるナノ粒子としては、ZrO、TiO、Al、Sb(又はSbSb)、CdO、CaO、CuO、FeO、Fe、PbO、MnOMnO、SnO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe等、又はそれらの任意の2種以上の混合物が挙げられる。典型的には、前記ナノ粒子は40nm未満の平均粒径を有し;いくつかの実施形態では、前記ナノ粒子は25nm未満の平均粒径を有し;いくつかの実施形態では、前記ナノ粒子は4~10nmの範囲の平均粒径を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は安定化金属酸化物ナノ粒子である。安定化されると、ナノ粒子は、1又は複数の界面活性剤、例えばキャッピング剤(これは、ナノ粒子の成長を停止させ、凝集から安定化させるのに役立つ)の存在により安定化される。例示的なキャッピング剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、アラビアゴム、α-メタクリル酸、11-メルカプトウンデカン酸又はそのジスルフィド誘導体、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ステアリン酸、パルミチン酸、オクタン酸、デカン酸、ポリエチレングリコール及びそれらの誘導体、ポリアクリル酸及びアミノ変性ポリアクリル酸、2-メルカプトエタノール、デンプン等、並びにそれらの任意の2種以上の混合物が挙げられる。
【0091】
前記ナノ粒子を安定化させることが企図されるキャッピング剤の量は、組成物の約1~約40重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、約1~約30重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約1~約20重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約1~約10重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約1~約5重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、約2~約40重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、約2~約30重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約2~約20重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約2~約10重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約2~約5重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、約3~約40重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、約3~約30重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約3~約20重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約3~約10重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約3~約5重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、約4~約40重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、約4~約30重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約4~約20重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約4~約10重量パーセントの範囲に入り;いくつかの実施形態では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約4~約5重量パーセントの範囲に入る。
【0092】
希釈剤
本発明の特定の実施形態の実施には必要ではないが、例えば、より低い粘度、改善された分配性等の結果として本発明の配合物の取り扱いを容易にするために、任意選択で非反応性有機希釈剤を使用してもよい。
【0093】
存在する場合、例示的な有機希釈剤は、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、飽和炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、テトラデカン)、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グリコールエーテル、エチレングリコールのモノアルキル又はジアルキルエーテル等)、ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート等);二塩基エステル(例えば、DBE-9)、アルファ-テルピネオール、ベータ-テルピネオール、ケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコール、高沸点アルコール及びそのエステル、グリコールエーテル、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、複素芳香族化合物(例えば、N-メチルピロリドンなど)など、並びにそれらの任意の2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0094】
物品/アセンブリ
本発明の別の態様によれば、本発明に係る配合物のアリコート及び/又はそのような配合物の硬化アリコートのみによって分離された第1の透明構成要素及び第2の透明構成要素を含む物品/アセンブリが提供される。
【0095】
本発明の配合物のアリコートは、約1μmから約1000μmの厚さで前記第1及び/又は第2の透明構成要素に塗布することができる。
【0096】
本明細書における使用に企図される好適な基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ガラス、窒化ケイ素パッシベーションを有するSiダイ、ポリイミドパッシベーションを有するSiダイ、BT基板、ベアSi、SR4基板、SR5基板等が挙げられる。
【0097】
当業者には容易に認識されるように、本発明の配合物とその基材との間の接着性は、様々な方法で、例えば、ASTM規格クロスカットテープ試験によってD3359-97試験法に準拠して決定することができる。典型的には、配合物と基材との間の接着性は、ASTM規格クロスカットテープ試験によってD3359-97試験法に準拠して決定した場合に、少なくともレベル1Bである。いくつかの実施形態では、少なくともASTMレベル1Bに匹敵する接着性が観察される(すなわち、元々接着していたフィルム表面の少なくとも35%がテープ試験に供された後も基材に付着したままである)。本発明の特定の実施形態では、少なくともASTMレベル2Bに匹敵する接着性が観察される(すなわち、元々接着していた配合物の少なくとも65%がテープ試験に供された後も基材に付着したままである)。本発明の特定の実施形態では、少なくともASTMレベル3Bに匹敵する接着性が観察される(すなわち、元々接着していた配合物の少なくとも85%がテープ試験に供された後も基材に付着したままである)。本発明の特定の実施形態では、少なくともASTMレベル4Bに匹敵する接着性が観察される(すなわち、元々接着していた配合物の少なくとも95%がテープ試験に供された後も基材に付着したままである)。本発明の特定の実施形態では、少なくともASTMレベル5Bに匹敵する接着性が観察される(すなわち、元々接着していた配合物の100%がテープ試験に供された後も基材に付着したままである)。
【0098】
本発明のさらに別の態様によれば、発光素子であって、少なくともその光透過部分が本発明に係る配合物の硬化アリコートでそれに接着されている発光素子が提供される。
【実施例
【0099】
本発明の様々な態様は、以下の非限定的な実施例によって説明される。実施例は説明を目的としたものであり、本発明の実施を何ら限定するものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変形及び修正がなされ得ることが理解されるであろう。当業者は、本明細書に記載の試薬及び成分を合成又は商業的に入手する方法を容易に知っている。
【0100】
例1
本発明に係る例示的な配合物を、以下の成分を組み合わせることによって調製する:
【0101】
【表1】
【0102】
以下の表に要約したように、得られた配合物について様々な性能特性を評価した:
【0103】
【表2】
【0104】
上述の表を検討すると、本発明に係る例示的な配合物は優れた透明度(transparency)及び屈折率を有すること、及びこれらの望ましい特性は1000時間のQUV老化にばく露しても実質的に維持されることが明らかである。
【0105】
例2
本発明に係る別の例示的な配合物を、以下の成分を組み合わせることによって調製する:
【0106】
【表3】
【0107】
以下の表に要約したように、得られた配合物について様々な性能特性を評価した:
【0108】
【表4】
【0109】
上述の表を検討すると、本発明に係る例示的な配合物は優れた透明度及び屈折率を有すること、及びこれらの望ましい特性は500時間のQUV老化にばく露しても実質的に維持されることが明らかである。
【0110】
例3
本発明に係るさらに別の例示的な配合物を、以下の成分を組み合わせることによって調製する:
【0111】
【表5】
【0112】
以下の表に要約したように、得られた配合物について様々な性能特性を評価した:
【0113】
【表6】
【0114】
上述の表を検討すると、本発明に係る例示的な配合物は優れた透明度及び屈折率を有すること、及びこれらの望ましい特性は500時間のQUV老化にばく露しても実質的に維持されることが明らかである。
【0115】
例4
高芳香族性樹脂をベースとする比較配合物を、以下の成分を組み合わせることによって調製する:
【0116】
【表7】
【0117】
以下の表に要約したように、得られた配合物について様々な性能特性を評価した:
【0118】
【表8】
【0119】
上述の表を検討すると、高芳香族性樹脂である2-フェニルフェノキシエチルアクリレートをベースとする配合物の透明度及び黄色度(yellow index)は、500時間のQUV老化にばく露すると良好ではないことが明らかである。
【0120】
本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が上記の説明の当業者には明らかであろう。そのような改変もまた添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。
【0121】
本明細書において言及された特許及び刊行物は、本発明が属する当業者の水準の指標である。これらの特許及び刊行物は、各個々の出願又は刊行物が参照により本明細書に具体的かつ個別に組み込まれているのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
前述の説明は、本発明の特定の実施形態の例示であるが、それらの実施に対する限定を意図するものではない。以下の特許請求の範囲が、そのすべての均等の範囲を含めて、本発明の範囲を定めることが意図される。